[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
[MFP10の概要]
本実施形態では、図1~図6に示されるMFP10が説明される。MFP10は、インクジェット記録方式でシートに画像を記録する画像記録機能と、ファクシミリ機能とを有する複合機である。MFP10は、スキャン機能、及びコピー機能などの機能を有してもよい。MFP10は、ファクシミリ装置の一例である。
MFP10は、電話回線41を介して送信側ファクシミリ装置310と接続し、送信側ファクシミリ装置310からファクシミリデータを受信する。
以下では、MFP10が使用可能に水平面に設置された使用姿勢を基準として上下方向7が定義され、MFP10の開口13が形成された面を前面として前後方向8が定義され、MFP10を前面から見て左右方向9が定義される。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向9が水平方向に相当する。前後方向8及び左右方向9は、直交している。
MFP10は、概ね直方体形状の筐体14を有している。筐体14の内部には、図2及び図3に示されるように、給送トレイ15と、給送ローラ23と、搬送ローラ25と、複数のノズル29を有するヘッド21と、プラテン26と、排出ローラ27と、排出トレイ16と、装着ケース150と、タンク160とが位置している。
MFP10は、給送ローラ23及び搬送ローラ25を駆動させて、給送トレイ15に支持されたシートをプラテン26の位置まで搬送する。次に、MFP10は、タンク160からチューブ19を通じて供給されるインクを、ヘッド21にノズル29を通じて吐出させる。これにより、プラテン26に支持されたシートにインクが着弾して、シート上に画像が印刷される。そして、MFP10は、排出ローラ27を駆動させて、画像が印刷されたシートを排出トレイ16に排出する。
より詳細には、ヘッド21は、搬送ローラ25によるシートの搬送向きと交差する主走査方向(左右方向9と平行)に沿って往復移動するキャリッジ20に搭載されている。キャリッジ20は、不図示のモータの駆動力が伝達されて、主走査方向(図3の紙面と垂直な方向)に沿って移動する。MFP10は、搬送ローラ25によるシートの搬送が停止されている間に、主走査方向に沿ってキャリッジ20を移動させつつ、ヘッド21にノズル29を通じてインクを吐出させる。これにより、ヘッド21に対面するシートの一部の領域(以下、「1パス」と記載)に画像が印刷される。次に、MFP10は、次に画像が印刷されるべき領域がヘッド21に対面するように、搬送ローラ25にシートを搬送させる。そして、これらの処理を交互に繰り返し実行させることによって、1枚のシートに画像が印刷される。
[ディスプレイ28]
筐体14は、ディスプレイ28を有する。ディスプレイ28は、筐体14の前面に位置している。ディスプレイ28は、表示パネルの上にタッチセンサが配置された、所謂タッチパネルである。ただし、ディスプレイ28に代えて、或いはディスプレイ28とともに、表示パネル及び押しボタンが筐体14の前面に位置していてもよい。ディスプレイ28は、ユーザからの入力を受け付ける。ディスプレイ28及び押しボタンは、入力インタフェースの一例である。
[カバー87]
図2に示されるように、筐体14の前面14Aで且つ左右方向9の右端部には、開口85が形成されている。筐体14は、さらにカバー87を備える。カバー87は、開口85を被覆する被覆位置(図2(A)に示される位置)と、開口85を開放する開放位置(図2(B)に示される位置)との間を回動可能である。カバー87は、例えば、上下方向7における筐体14の下端近傍において、左右方向9に沿う回動軸線周りに回動可能に、筐体14によって支持されている。そして、開口85の奥に広がる筐体14内部の収容空間86には、カートリッジ200が装着される装着ケース150が位置している。
[装着ケース150]
装着ケース150は、図4に示されるように、接点152と、ロッド153と、装着センサ32と、液面センサ33と、ロックピン156とを備えている。装着ケース150には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応する4つのカートリッジ200が収容可能である。すなわち、装着ケース150は、接点152、ロッド153、装着センサ32、液面センサ33は、4つのカートリッジ200それぞれに対応して、4つずつ備えている。なお、装着ケース150に収容可能なカートリッジ200の数は、4つに限定されない。
装着ケース150は、装着されたカートリッジ200を収容する内部空間を有する箱形状である。装着ケース150の内部空間は、上端を画定する天壁と、下端を画定する底壁と、前後方向8の後端を画定する奥壁と、左右方向9の両端を画定する一対の側壁とで画定される。一方、装着ケース150の奥壁と対面する位置は、開口85となっている。すなわち、開口85は、カバー87が開放位置に位置したときに、装着ケース150の内部空間を、MFP10の外部に開放させる。
そして、カートリッジ200は、筐体14の開口85を通じて、装着ケース150に装着され、装着ケース150から抜かれる。より詳細には、カートリッジ200は、開口85を前後方向8の後ろ向きに通過して、装着ケース150に装着される。装着ケース150から抜かれるカートリッジ200は、開口85を前後方向8の前向きに通過する。
[接点152]
接点152は、装着ケース150の天壁に位置している。接点152は、天壁から装着ケース150の内部空間へ向けて下方に突出している。接点152は、装着ケース150にカートリッジ200が装着された状態において、カートリッジ200の後述する電極248に接する位置に位置している。接点152は、導電性を有しており、さらに上下方向7に沿って弾性的に変形可能である。接点152は、コントローラ130に電気的に接続されている。
[ロッド153]
ロッド153は、装着ケース150の奥壁から前方へ突出している。ロッド153は、装着ケース150の奥壁において、後述するジョイント180より上方に位置している。ロッド153は、カートリッジ200が装着ケース150に装着される過程において、カートリッジ200の後述する大気連通口221を通じて大気バルブ室214に進入する。ロッド153が大気バルブ室214に進入すると、後述する大気バルブ室214が大気に連通される。
[装着センサ32]
装着センサ32は、装着ケース150の天壁に位置している。装着センサ32は、カートリッジ200が装着ケース150に装着されているか否かを検出するためのセンサである。装着センサ32は、左右方向9に離間した発光部及び受光部を備える。装着ケース150にカートリッジ200が装着された状態において、カートリッジ200の後述する遮光リブ245は、装着センサ32の発光部及び受光部の間に位置する。換言すれば、装着センサ32の発光部及び受光部は、装着ケース150に装着されたカートリッジ200の遮光リブ245を挟んで、互いに対向した状態で位置している。
装着センサ32は、発光部から左右方向9に沿って照射された光が受光部で受光されたか否かに応じて、異なる信号(以下、「装着信号」と記載)を出力する。装着センサ32は、例えば、受光部で受光された光の受光強度が閾値強度未満であることに応じて、ローレベル信号をコントローラ130へ出力する。一方、装着センサ32は、受光部で受光された光の受光強度が閾値強度以上であることに応じて、ローレベル信号より信号強度の高いハイレベル信号をコントローラ130へ出力する。
[液面センサ33]
液面センサ33は、後述するアクチュエータ190の被検出部194が検出位置に位置しているか否かを検出するためのセンサである。液面センサ33は、左右方向9に離間した発光部及び受光部を備える。換言すれば、被検出部194が検出位置に位置するとき、液面センサ33の発光部及び受光部の間に、被検出部194が位置している。一方で、被検出部194が検出位置に位置していないとき、液面センサ33の発光部及び受光部の間に、被検出部194が位置していない。液面センサ33は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて異なる信号を出力する。液面センサ33は、例えば、受光部で受光された光の受光強度が閾値強度未満であることに応じて、ローレベル信号をコントローラ130へ出力する。一方、液面センサ33は、受光部で受光された光の受光強度が閾値強度以上であることに応じて、ローレベル信号より信号強度の高いハイレベル信号をコントローラ130へ出力する。液面センサ33は、第1液面センサの一例である。
[ロックピン156]
ロックピン156は、装着ケース150の内部空間の上端で且つ開口85付近において、左右方向9に沿って延びる棒状の部材である。ロックピン156の左右方向9の両端は、装着ケース150の一対の側壁に固定されている。ロックピン156は、4つのカートリッジ200が収容可能な4つの空間に亘って左右方向9に延びている。ロックピン156は、装着ケース150に装着されたカートリッジ200を、図6に示される装着位置に保持するためのものである。カートリッジ200は、装着ケース150に装着された状態で、ロックピン156に固定される。
[タンク160]
MFP10は、4つのカートリッジ200それぞれに対応して、4つのタンク160を備える。詳細には、マゼンタのインクが貯留されるカートリッジ200に対応して、マゼンタのインクが貯留されるタンク160と、シアンのインクが貯留されるカートリッジ200に対応して、シアンのインクが貯留されるタンク160と、イエローのインクが貯留されるカートリッジ200に対応して、イエローのインクが貯留されるタンク160と、ブラックのインクが貯留されるカートリッジ200に対応して、ブラックのインクが貯留されるタンク160と、を備える。4つのタンク160の構成は、概ね共通するため、以下では、1つのタンク160を説明する。
タンク160は、装着ケース150の奥壁よりさらに後方に位置している。タンク160は、図4に示されるように、上壁161と、前壁162と、下壁163と、後壁164と、不図示の一対の側壁とで構成されている。なお、前壁162は、各々が前後方向8にずれた複数の壁によって構成される。タンク160の内部は、液室171が形成されている。液室171は、第2液室の一例である。
タンク160を構成する壁のうち、少なくとも液面センサ33に対面する壁は、透光性を有している。これにより、液面センサ33が出力した光は、液面センサ33に対面する壁を透過することができる。後壁164の少なくとも一部は、上壁161、下壁163、及び側壁の端面に溶着されるフィルムでもよい。また、タンク160の側壁は、装着ケース150と共通でもよいし、装着ケース150とは独立していてもよい。さらに、左右方向9に隣接するタンク160の間は、不図示の隔壁によって仕切られている。
液室171は、流出口174を通じて不図示のインク流路に連通されている。流出口174の下端は、液室171の下端を画定する下壁163によって画定されている。流出口174は、ジョイント180(より詳細には、貫通孔184の下端)より下方に位置している。流出口174に連通された不図示のインク流路は、チューブ19に連通されている。これにより、液室171は、流出口174からインク流路及びチューブ19を通じて、ヘッド21と連通する。つまり、液室171に貯留されたインクは、流出口174からインク流路及びチューブ19を通じて、ヘッド21へ供給される。流出口174に連通されたインク流路及びチューブ19は、一端(流出口174)が液室171に連通され、且つ他端89(図3参照)がヘッド21に連通された流路である。。
液室171は、大気連通室175を通じて大気に連通されている。より詳細には、大気連通室175は、前壁162を貫通する貫通孔176を通じて液室171に連通されている。また、大気連通室175は、大気連通ポート177及び大気連通ポート177に接続された不図示のチューブを通じて、MFP10の外部に連通されている。すなわち、大気連通室175は、一端(貫通孔176)が液室171に連通され、且つ他端(大気連通ポート177)がMFP10の外部に連通された流路である。なお、大気連通室175は、大気連通ポート177及び不図示のチューブを通じて、大気に連通している。
[ジョイント180]
ジョイント180は、図4に示されるように、ニードル181と、ガイド182とを備えている。ニードル181は、内部に流路が形成された管である。ニードル181は、液室171を画定する前壁162から前方へ突出している。ニードル181の前端には、開口183が形成されている。また、ニードル181の内部空間は、前壁162を貫通する貫通孔184を通じて液室171に連通されている。ニードル181は、一端(開口183)がタンク160の外部に連通され、且つ他端(貫通孔184)が液室171に連通された流路である。ガイド182は、ニードル181の周囲に配置された円筒形状の部材である。ガイド182は、前壁162から前方に突出して、前端が開口している。
ニードル181の内部空間には、バルブ185と、コイルバネ186とが位置している。バルブ185は、ニードル181の内部空間において、閉塞位置と開放位置との間を、前後方向8に沿って移動可能である。バルブ185は、閉塞位置に位置すると開口183を閉塞する。またバルブ185は、開放位置に位置すると開口183を開放する。コイルバネ186は、バルブ185を開放位置から閉塞位置に移動させる向き、すなわち前後方向8に沿う前向きに付勢している。ニードル181の内部空間は、流路の一例である。
[アクチュエータ190]
図4に示されるように、液室171には、アクチュエータ190が位置している。アクチュエータ190は、液室171内に配置された不図示の支持部材によって、矢印198、199の向きに沿って回動可能に支持されている。アクチュエータ190は、図4の実線で示される第1状態と破線で示される第2状態との間を回動することができる。さらに、アクチュエータ190は、不図示のストッパ(例えば、液室171の内壁)によって、実線の位置より矢印198の向きへの回動が規制される。アクチュエータ190は、フロート191と、軸192と、アーム193と、被検出部194とを備える。アクチュエータ190は、検出物体の一例である。
フロート191は、液室171に貯留されるインクより比重が小さい材料で形成されている。軸192は、フロート191の右面及び左面から左右方向9に沿って突出している。軸192は、支持部材に形成された不図示の孔に挿入されている。これにより、アクチュエータ190は、軸192を中心として回動可能に支持部材によって支持される。アーム193は、フロート191から略上方へ延びている。被検出部194は、アーム193の先端部に位置している。すなわち、アーム193は、被検出部194と軸192との間に位置する。被検出部194は、上下方向7及び前後方向8それぞれに沿って延びる板状の部材である。被検出部194は、液面センサ33の発光部から出力された光を遮光する材料又は色で形成されている。
液室171に貯留されたインクの液面が基準位置P以上のとき、浮力によって矢印198の向きに回動されたアクチュエータ190は、ストッパによって図4の実線で示される検出位置に保持される。一方、インクの液面が基準位置P未満のとき、アクチュエータ190は、液面の降下に追従して矢印199の向きに回動する。これにより、アクチュエータ190の被検出部194は、検出位置とは異なる位置に移動する。被検出部194は、アクチュエータ190の一部であるため、当該被検出部194は、液室171に貯留されたインクの量に対応する位置に移動する。
基準位置Pは、上下方向7において、ニードル181の軸中心と同じ高さであり、且つ後述するインク供給口234の中心と同じ高さである。しかしながら、基準位置Pは、上下方向7における流出口174より上方の位置であれば、前述の位置に限定されない。他の例として、基準位置Pは、ニードル181の内部空間の上端や下端の高さでもよいし、インク供給口234の上端や下端の高さでもよい。
液室171に貯留されたインクの液面が基準位置P以上のとき、液面センサ33の発光部から出力された光が、検出位置に位置する被検出部194で遮られる。これにより、液面センサ33は、発光部からの光が受光部に到達しないので、ローレベル信号をコントローラ130へ出力する。一方、液室171に貯留されたインクの液面が基準位置P未満のとき、液面センサ33は、発光部から出力された光が受光部に到達するので、ハイレベル信号をコントローラ130へ出力する。すなわち、コントローラ130は、液室171に貯留されたインクの液面が基準位置P以上か否かを、液面センサ33から出力される信号によって検出することができる。基準位置Pは、第2所定位置の一例である。ローレベル信号「L」は、第1信号の一例である。以下では、ローレベル信号を「L」、ハイレベル信号を「H」として説明する場合がある。
[カートリッジ200]
カートリッジ200は、液体であるインクを内部に貯留する液室210(図3参照)を有する容器である。液室210は、第1液室の一例である。
液室210は、例えば、樹脂製の壁によって画定されている。カートリッジ200は、図5(A)に示されるように、上下方向7及び前後方向8それぞれに沿った寸法が、左右方向9に沿った寸法よりも大きい扁平形状である。なお、異なる色のインクが貯留されるカートリッジ200の外形形状は、同一でもよいし、異なっていてもよい。カートリッジ200を構成する壁のうちの少なくとも一部は、透光性を有している。これにより、ユーザは、カートリッジ200の液室210に貯留されたインクの液面をカートリッジ200の外部から視認することができる。以下の説明では、シアン、マゼンタ、イエローのインクを総称して「カラーのインク」と記載する場合がある。シアン、マゼンタ、イエローのインクは、カラー印刷剤の一例である。
カートリッジ200は、筐体201と、供給管230とを備える。筐体201は、後壁202と、前壁203と、上壁204と、下壁205と、一対の側壁206、207とで構成されている。なお、後壁202は、各々が前後方向8にずれた複数の壁によって構成されている。また、上壁204は、各々が上下方向7にずれた複数の壁によって構成されている。さらに、下壁205は、各々が上下方向7にずれた複数の壁によって構成されている。
カートリッジ200の内部空間には、図5(B)に示されるように、液室210、インクバルブ室213、及び大気バルブ室214が形成されている。液室210は、上部液室211と、下部液室212とを有する。上部液室211、下部液室212、及び大気バルブ室214は、筐体201の内部空間である。一方、インクバルブ室213は、供給管230の内部空間である。液室210は、インクを貯留する。大気バルブ室214は、液室210とカートリッジ200の外部とを連通させる。液室210は、第1液室の一例である。
液室210の上部液室211及び下部液室212は、筐体201の内部空間を仕切る隔壁215によって、上下方向7に隔てられている。そして、上部液室211及び下部液室212は、隔壁215に形成された貫通孔216によって連通されている。また、上部液室211及び大気バルブ室214は、筐体201の内部空間を仕切る隔壁217によって隔てられている。そして、上部液室211及び大気バルブ室214は、隔壁217に形成された貫通孔218によって連通されている。さらに、インクバルブ室213は、貫通孔219を通じて下部液室212の下端に連通されている。
大気バルブ室214は、カートリッジ200の上部において、後壁202に形成された大気連通口221を通じてカートリッジ200の外部に連通されている。すなわち、大気バルブ室214は、一端(貫通孔218)が液室210(より詳細には、上部液室211)に連通され、且つ他端(大気連通口221)がカートリッジ200の外部に連通されている。なお、大気バルブ室214は、大気連通口221を通じて、大気に連通している。また、大気バルブ室214には、バルブ222と、コイルバネ223とが位置している。バルブ222は、閉塞位置と開放位置との間を、前後方向8に沿って移動可能である。バルブ222は、閉塞位置に位置すると、大気連通口221を閉塞する。また、バルブ222は、開放位置に位置すると大気連通口221を開放する。コイルバネ223は、バルブ222を開放位置から閉塞位置に移動させる向き、すなわち前後方向8に沿う後ろ向きに付勢している。
カートリッジ200が装着ケース150に装着される過程において、ロッド153が大気連通口221を通じて大気バルブ室214内に進入する。大気バルブ室214内に進入したロッド153は、閉塞位置のバルブ222をコイルバネ223の付勢力に抗して前後方向8に沿う前向きに移動させる。そして、バルブ222が開放位置に移動することによって、上部液室211が大気に連通される。なお、大気連通口221を開放するための構成は、前述の例に限定されない。他の例として、大気連通口221を封止するフィルムをロッド153が突き破る構成でもよい。
供給管230は、筐体201の下部において、後壁202から前後方向8に沿う後ろ向きに突出している。供給管230は、その後端が開口されている。すなわち、インクバルブ室213は、貫通孔219を通じて連通された液室210と、カートリッジ200の外部とを連通させる。インクバルブ室213は、一端(貫通孔219)が液室210(より詳細には下部液室212)と連通され、且つ他端(後述するインク供給口234)がカートリッジ200の外部と連通されている。また、インクバルブ室213には、パッキン231と、バルブ232と、コイルバネ233とが位置している。
パッキン231の中央には、前後方向8に貫通したインク供給口234が形成されている。インク供給口234の内径は、ニードル181の外径より僅かに小さい。バルブ232は、閉塞位置と開放位置との間を、前後方向8に沿って移動可能である。バルブ232は、閉塞位置に位置すると、パッキン231と当接してインク供給口234を閉塞する。また、バルブ232は、開放位置に位置すると、パッキン231から離間してインク供給口234を開放する。コイルバネ233は、バルブ232を開放位置から閉塞位置に移動させる向き、すなわち前後方向8に沿う後ろ向きに付勢している。また、コイルバネ233の付勢力は、コイルバネ186より大きい。
カートリッジ200が装着ケース150に装着される過程において、供給管230がガイド182内に進入し、やがてニードル181がインク供給口234を通じてインクバルブ室213に進入する。このとき、ニードル181は、パッキン231を弾性変形させつつ、インク供給口234を画定する内周面に液密に接触する。カートリッジ200が装着ケース150へさらに挿入されると、ニードル181は、バルブ232をコイルバネ233の付勢力に抗して前向きに移動させる。また、バルブ232は、ニードル181の開口183から突出するバルブ185を、コイルバネ186の付勢力に抗して後ろ向きに移動させる。
これにより、図6に示されるように、インク供給口234及び開口183が開放されて、供給管230のインクバルブ室213と、ニードル181の内部空間とが連通される。すなわち、装着ケース150にカートリッジ200が装着された状態において、インクバルブ室213及びニードル181の内部空間は、カートリッジ200の液室210とタンク160の液室171とを連通させる流路を構成する。
また、装着ケース150にカートリッジ200が装着された状態において、液室210の一部と、液室171の一部とは、水平方向から見て互いに重なる。さらに、液室210の底部よりも液室171の底部の方が、下方に位置している。その結果、液室210に貯留されたインクは、接続された供給管230及びジョイント180を通じて、液室210の水頭と液室171の水頭との差によってタンク160の液室171に流出する。
図5に示されるように、上壁204には、突起241が形成されている。突起241は、上壁204の外面から上方に突出し且つ前後方向8に沿って延びている。突起241は、ロック面242と、傾斜面243とを有する。ロック面242及び傾斜面243は、上壁204より上方に位置している。ロック面242は、前後方向8に沿って前を向き且つ上下方向7及び左右方向9それぞれに沿って延びている(すなわち、上壁204と概ね直交する)。傾斜面243は、上方及び後方を向くように、上壁204に対して傾斜している。
ロック面242は、装着ケース150にカートリッジ200が装着された状態において、ロックピン156に当接される面である。傾斜面243は、カートリッジ200が装着ケース150に装着される過程において、ロックピン156をロック面242と当接する位置まで案内する面である。ロック面242とロックピン156とが当接した状態では、コイルバネ186、223、233の付勢力に抗して、カートリッジ200が図6に示される装着位置に保持される。
ロック面242より前方において上壁204から上方へと延びるようにして、平板状の部材が形成されている。この平板状の部材の上面は、カートリッジ200を装着ケース150から抜く際に、ユーザが操作する操作部244である。カートリッジ200が装着ケース150に装着された状態で且つカバー87が開放位置に位置しているとき、操作部244は、ユーザに操作可能となる。操作部244が下方へ押されると、カートリッジ200が回動することによって、ロック面242がロックピン156より下方へ移動する。その結果、カートリッジ200が装着ケース150から抜くことが可能となる。
図5に示されるように、上壁204の外面で且つ突起241より後方には、遮光リブ245が形成されている。遮光リブ245は、上壁204の外面から上方に突出し且つ前後方向8に沿って延びている。遮光リブ245は、装着センサ32の発光部から出力される光を遮光する材料又は色で形成されている。遮光リブ245は、装着ケース150にカートリッジ200が装着された状態において、装着センサ32の発光部から受光部に至る光路上に位置する。すなわち、装着センサ32は、装着ケース150にカートリッジ200が装着されていることに応じて、ローレベル信号をコントローラ130(図6)に出力する。一方、装着センサ32は、装着ケース150にカートリッジ200が装着されていないことに応じて、ハイレベル信号をコントローラ130に出力する。すなわち、コントローラ130は、装着ケース150にカートリッジ200が装着されているか否かを、装着センサ32から出力される信号によって検出することができる。
図5に示されるように、上壁204の外面で且つ前後方向8における遮光リブ245及び突起241の間には、ICチップ34が位置している。ICチップ34には、電極248が形成されている。また、ICチップ34は、不図示のメモリを備える。電極248は、ICチップ34のメモリと電気的に接続されている。電極248は、ICチップ34の上面において、接点152と導通可能に露出されている。すなわち、カートリッジ200が装着ケース150に装着された状態において、電極248は、接点152と導通する。コントローラ130は、接点152及び電極248を通じてICチップ34のメモリから情報を読み出し、接点152及び電極248を通じてICチップ34のメモリに情報を書き込むことができる。
ICチップ34のメモリは、カートリッジ200の種別情報、シリアルナンバー、及びカートリッジ残量値を記憶する。種別情報とは、カートリッジ200が小容量カートリッジであるか、又は、大容量カートリッジであるか、貯留するインクの色などを示す情報である。シリアルナンバーは、カートリッジ200を個々に識別する情報である。カートリッジ残量値は、カートリッジ200が貯留するインクの量を示す値である。なお、未使用のカートリッジ200では、カートリッジ残量値は、初期インク残量を示す初期残量値がメモリに記憶されている。
[コントローラ130]
MFP10は、コントローラ130を備える。コントローラ130は、図6に示されるように、CPU35、記憶部36、及び通信バス39を備えている。記憶部36は、ROM37、EEPROM61、及びRAM62を有する。
ROM37は、OS(Operating Systemの略)プログラム37Aや、制御プログラム37Bなどを記憶する。制御プログラム37Bは、後述の印刷処理などを行うプログラムである。OSプログラム37Aは、制御プログラム37Bとは異なるプログラムであり、さらに制御プログラム37Bで制御される動作とは異なる動作を制御するプログラムである。OSプログラム37A、及び制御プログラム37Bは、CPU35によって、アドレスに記述された命令が処理されることによって実行される。以下では、OSプログラム37A、及び制御プログラム37Bが実行されることによって処理される動作を、コントローラ130の動作として記載することがある。なお、コントローラ130は、OSプログラム37A、及び制御プログラム37Bが実行する動作の一部または全部を実現するICを用いたハード回路を有していてもよい。
EEPROM61は、MFP10の装置情報を記憶する。装置情報は、MFP10の識別情報を含む。MFP10の識別情報は、MFP10のMACアドレスやシリアルナンバーなどである。EEPROM61には、電源オフ後も保持すべき設定情報が格納される。
また、EEPROM61は、装着ケース150に装着される4つのカートリッジ200それぞれに対応付けて、換言すれば、カートリッジ200と連通されるタンク160それぞれに対応付けて、各種情報を記憶している。各種情報とは、例えば、第1排出値、第2排出値、初期カートリッジ残量値、初期タンク残量値、S_Emptyフラグ及びC_Emptyフラグを記憶する。また、EEPROM61は、シアン、マゼンタ、イエローのインクを貯留する3つのカートリッジ200それぞれに対応づけて、換言すれば、当該カートリッジ200と連通されるタンク160それぞれに対応づけて、残量フラグと、流入フラグとを記憶している。第1排出値、第2排出値、初期カートリッジ残量値、初期タンク残量値、S_Emptyフラグ及びC_Emptyフラグについては、後述の状態監視処理及び印刷処理で説明する。残量フラグ、及び流入フラグについては、後述の状態監視処理で説明する。
RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。
通信バス39には、ヘッド21や、通信インタフェース31(以下、通信I/F31と記載)や、装着センサ32や、液面センサ33や、接点152や、クロック30や、ディスプレイ28や、回線インタフェース51(以下、回線I/F51と記載)や、不図示のモータなどが接続されている。クロック30は、日時情報を出力する。
コントローラ130は、通信バス39を通じて不図示のモータを駆動させることによって、給送ローラ23、搬送ローラ25、及び排出ローラ27を回転させる。また、コントローラ130は、通信バス39を通じてヘッド21の駆動素子に駆動信号を出力することによって、ヘッド21からインク滴を吐出させる。
また、コントローラ130は、装着ケース150にカートリッジ200が装着されているか否かを装着センサ32を通じて検出する。さらに、コントローラ130は、液室171に貯留されたインクの液面が基準位置P以上か否かを液面センサ33を通じて検出する。
また、コントローラ130は、装着ケース150に装着されたカートリッジ200の電極248と、接点152とを通じて、ICチップ34のメモリに記憶された種別情報、シリアルナンバー、及びカートリッジ残量値を読み出す。さらに、コントローラ130は、装着ケース150に装着されたカートリッジ200の電極248と、接点152とを通じて、ICチップ34のメモリに記憶されたカートリッジ残量値の値を更新する。
また、コントローラ130は、回線I/F51を通じて電話回線41と接続し、送信側ファクシミリ装置310との間でファクシミリデータや各種信号の送受信を行う。
[MFP10の動作]
以下、図7~図10に示されるフローチャートを参照して、本実施形態に係るMFP10の動作を説明する。図7~図10に示される各処理は、コントローラ130のCPU35によって実行される。なお、以下の各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
[状態監視処理]
コントローラ130は、図7に示される状態監視処理を実行する。状態監視処理は、EEPROM61に記憶された残量フラグ及び流入フラグを更新する処理である。コントローラ130は、状態監視処理を定期的に繰り返し実行する。なお、コントローラ130は、シアン、マゼンタ、イエローのインクを貯留する3つのタンク160それぞれに対して、状態監視処理を独立して実行する。タンク160毎の状態監視処理は共通するので、以下、1つのタンク160に対応する状態監視処理のみを説明する。
まず、コントローラ130は、EEPROM61に記憶された残量フラグを読み出し、値について判断する(S101)。コントローラ130は、残量フラグの値が“OFF”であると判断したことに応じて(S101:OFF)、液面センサ33が出力する信号を取得し、信号について判断する(S102)。コントローラ130は、液面センサ33が出力する信号がローレベル信号であると判断したことに応じて(S102:L)、残量フラグに“ON”を代入し、流入フラグに“OFF”を代入し(S103)、状態監視処理を終了する。
コントローラ130は、残量フラグの値が“ON”であると判断したことに応じて、EEPROM61に記憶されたS_Emptyフラグを読み出し、値について判断する(S104)。
ここでS_Emptyフラグについて説明する。コントローラ130は、タンク160の液室171に貯留されたインクの液面が、タンク160からインクが流出する流出口174の上端に達する前にEEPROM61のS_Emptyフラグに「ON」を記憶させる。EEPROM61のS_Emptyフラグの値は、「ON」を記憶するまでは「OFF」を記憶している。なお、流出口174の上端にインクの液面が達すると、ヘッド21のノズルにエア(空気)が進入してしまう虞がある。ヘッド21のノズルに進入したエアがノズル内に滞留すると、ノズル内へのインクの進入が阻害されたり、ノズルからのインク滴の吐出が阻害されたりする虞が生じる。
すなわち、S_Emptyフラグは、ヘッド21のノズルにエアが進入することを防止するためのものである。コントローラ130は、後述のステップS15において、EEPROM61のS_Emptyフラグに「OFF」を記憶させ、ステップS65において、EEPROM61のS_Emptyフラグに「ON」を記憶させる。コントローラ130は、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「ON」であることに応じて、ヘッド21を通じたインクの排出を禁止する。また、コントローラ130は、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「OFF」であることに応じて、ヘッド21を通じたインクの排出を許容する。以下の説明では、S_EmptyフラグがONであるとき、タンク160がインクエンプティ状態であり、S_EmptyフラグがOFFであるとき、タンク160がインクエンプティ状態でない、と記載する場合がある。
コントローラ130は、S_Emptyフラグの値が“OFF”であると判断すると(S104:OFF)、状態監視処理を終了する。コントローラ130は、S_Emptyフラグの値が“ON”であると判断すると(S104:ON)、S_Empty報知画面をディスプレイ28に表示させる(S105)。S_Empty報知画面は、対応するタンク160がインクエンプティ状態になったことを、ユーザに報知するための画面である。S_Emptyフラグの値が“ON”であると判断することは、第2液室内の液面の位置が第1所定位置未満であると判断することの一例である。
コントローラ130は、S105を実行した後、残量フラグに“OFF”を代入し、ファクシミリのカラー受信を禁止する(S106)。コントローラ330は、カラー受信を禁止しているとき、カラー受信のDIS信号を送信せず、モノクロ受信のDIS信号を送出する(ファクシミリ送信処理(図8)のS146)。
コントローラ130は、S106を実行した後、又は、S102にて液面センサ33が出力する信号がハイレベル信号であると判断したことに応じて(S102:H)、EEPROM61の流入フラグの値について判断する(S107)。コントローラ130は、流入フラグの値が“OFF”であると判断すると(S107:OFF)、装着センサ32から装着信号を所定の時間間隔で取得する。次に、コントローラ130は、取得した装着信号がローレベル信号(以下、「L」と記載)からハイレベル信号(以下、「H」と記載)に変化し、さらに、取得した装着信号が「H」から「L」に変化したか否かを判断する(S108)。すなわち、装着信号の変化により、カートリッジ200が装着されたか否かが判断される。以下、コントローラ130が、取得した装着信号が「L」から「H」に変化し、さらに取得した装着信号が「H」から「L」に変化したか否かを判断する、ことを、コントローラ130が、カートリッジ200が装着されたか否かを判断する、とする。また、コントローラ130が、取得した装着信号が「L」から「H」に変化し、さらに、取得した装着信号が「H」から「L」に変化したと判断する(S108:Yes)ことを、コントローラ130が、カートリッジ200が装着されたと判断する、とする。
コントローラ130は、カートリッジ200が装着されていないと判断すると(S108:No)、状態監視処理を終了する。コントローラ130は、カートリッジ200が装着されたと判断すると(S108:Yes)、第1更新処理(S109)を実行する。 図10(A)に示される第1更新処理は、コントローラ130が、EEPROM61に記憶された初期カートリッジ残量値及び初期タンク残量値と、カートリッジ200のICチップ34に記憶されたカートリッジ残量値とを更新する処理である。第1更新処理の詳細は、図10(A)を参照して後述する。なお、第1更新処理が既に実行されている場合は、コントローラ130は、S109の第1更新処理を開始する必要がない。
コントローラ130は、図7に示されるように、第1更新処理が終了すると(S109)、EEPROM61のS_Emptyフラグに「OFF」を記憶させ、EEPROM61のC_Emptyフラグに「OFF」を記憶させ、EEPROM61の第1排出値及び第2排出値としてゼロを記憶させる(S110)。そして、コントローラ130は、S_Empty報知画面をディスプレイ28から消去する(S111)。
次に、コントローラ130は、第1更新処理にて更新され、RAM62に記憶されているカートリッジ残量値を読み出して、カートリッジ残量値について判断する(S112)。コントローラ130は、カートリッジ残量値がゼロであると判断すると(S112:No)、状態監視処理を終了する。コントローラ130は、カートリッジ残量値がゼロより大きいと判断したことに応じて(S112:Yes)、流入フラグに“ON”を代入し(S113)、状態監視処理を終了する。
コントローラ130は、S107にて、流入フラグの値が“ON”であると判断したことに応じて(S107:ON)、RAM62に記憶されているカートリッジ残量値を読み出して、カートリッジ残量値について判断する(S114)。コントローラ130は、カートリッジ残量値がゼロより大きいと判断したことに応じて(S114:Yes)、状態監視処理を終了する。コントローラ130は、カートリッジ残量値がゼロであると判断したことに応じて(S114:No)、流入フラグに“OFF”を代入し(S115)、状態監視処理を終了する。
以上説明した状態監視処理による残量フラグ及び流入フラグの更新について、具体例で説明する。残量更新処理は、インクエンプティ状態よりも多いインクが、タンク160の液室171に貯留された状態にて、残量フラグに“ON”が代入され、流入フラグに“OFF”が代入された状態で開始されるものとする。後述する印刷処理等によりインクが消費され、タンク160がインクエンプティ状態になると、コントローラ130は、S101にて“ON”と判断し、S104にてONと判断し、残量フラグに“OFF”を代入する(S106)。その後、カートリッジ200が交換されるまで(S108:No)、残量フラグ及び流入フラグは“OFF”のままとなる。カートリッジ200が交換され(S108:Yes)、カートリッジ残量値が0でないと判断されると(S112:Yes)、コントローラ130は、流入フラグに“ON”を代入する(S113)。交換されたカートリッジ200からタンク160へインクが流入し、タンク160の液室171の液面の位置が基準位置P以上になると、液面センサ33がローレベル信号を出力する。コントローラ130は、液面センサ33が出力する信号がローレベル信号であると判断したことに応じて(S102:L)、残量フラグに“ON”を代入し、流入フラグに“OFF”を代入する(S103)。
残量フラグの値は、以上説明したとおり、タンク160の液室171に貯留されたインクの量に応じて決定される。3つの残量フラグのうち少なくとも一つが“OFF”であるとき、カラーのファクシミリ受信が禁止される(S106)。3つの残量フラグの全てが“ON”であるとき、カラーのファクシミリ受信の禁止が解除される(S145)。流入フラグは、残量フラグが“OFF”であるときに、カートリッジ200からタンク160へインクが流入している状態か否かを示す情報である。流入フラグは、残量フラグが“OFF”になった後に、カートリッジ200が交換されたか否か、カートリッジ残量値が0であるか否かに応じて決定される。
[ファクシミリ受信処理]
コントローラ130は、回線I/F51を介して呼出信号を受信したことに応じて、図8に示されるファクシミリ受信処理を実行する。ファクシミリ受信処理は、上述した状態監視処理で更新された残量フラグ及び流入フラグの設定値に基づいて、送信側ファクシミリ装置310へCED信号やDIS信号を送信し、送信側ファクシミリ装置310から受信したファクシミリデータに含まれる画像をシートに記録させる処理である。
まず、コントローラ130は、送信側ファクシミリ装置310との間で回線を閉結し(S131)、送信側ファクシミリ装置310からのCNG信号を受信する(S132)。このとき、コントローラ130は、CNG信号を受信した時刻として現在時え刻をRAM62に記憶させる(S132)。
次に、コントローラ130は、ディスプレイ28のファクシミリ受信ボタンが押下されたか否かを判断する(S133)。コントローラ130は、押下されていないと判断すると(S133:No)、S133の処理を繰り返す。
コントローラ130は、受信ボタンが押下されたと判断すると(S133:Yes)、EEPROM61に記憶された残量フラグ及び流入フラグを取得する(S134)。受信ボタンが押下されたと判断することは、ファクシミリの受信を行うことを指定する操作入力を入力インタフェースを通じて受け付けることの一例である。
次に、コントローラ130は、取得した3つの残量フラグそれぞれの設定値を判断する(S135)。コントローラ130は、少なくとも1つの残量フラグが“OFF”であると判断したことに応じて(S135:No)、取得した3つの残量フラグ及び3つの流入フラグそれぞれの設定値を判断する(S136)。コントローラ130は、残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在しないと判断したことに応じて(S136:No)、S104でRAM62に記憶させた時刻と現在時刻とを対比して、CNG信号の受信からの経過時間を判断する(S137)。コントローラ130は、CNG信号の受信からの経過時間が閾値T1以下であると判断したことに応じて(S137:No)、S134~S137の処理を繰り返す。
閾値T1は、ファクシミリの通信規格に定められたCNG信号のタイムアウト時間よりも短い値に設定される。例えば、閾値T1は、38秒に設定される。閾値T1は、第2所定時間の一例である。
コントローラ130は、全ての残量フラグが“ON”であると判断したことに応じて(S135:Yes)、又は、残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在すると判断したことに応じて(S136:Yes)、又は、CNG信号の受信からの経過時間が閾値T1を越えたと判断したことに応じて(S137:Yes)、CED信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S138)。このとき、コントローラ130は、CED信号を送信した時刻として現在時刻をRAM62に記憶させる(S138)。
つまりコントローラ130は、S135、S136、又はS137のいずれかの処理にてYesと判断するまでの間、S138のCED信号の送出を行うことなく、S134~38の処理を繰り返し実行する。
次に、コントローラ130は、EEPROM61に記憶された残量フラグ及び流入フラグを取得し(S139)、取得した3つの残量フラグそれぞれの設定値を判断する(S140)。
コントローラ130は、少なくとも1つの残量フラグが“OFF”であると判断したことに応じて(S140:No)、取得した3つの残量フラグ及び3つの流入フラグそれぞれの設定値を判断する(S141)。コントローラ130は、残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在しないと判断したことに応じて(S141:No)、S138でRAM62に記憶させた時刻と現在時刻とを対比して、CED信号の送信からの経過時間を判断する(S142)。コントローラ130は、CED信号の送信からの経過時間が閾値T2以下であると判断したことに応じて(S142:No)、S139~S142の処理を繰り返す。
閾値T2は、ファクシミリの通信規格に定められたCED信号のタイムアウト時間よりも短い値に設定される。例えば、閾値T2は、73秒に設定される。閾値T2は、第3所定時間の一例である。閾値T1と閾値T2との和は、第1所定時間の一例である。
コントローラ130は、全ての残量フラグが“ON”であると判断したことに応じて(S140:Yes)、又は、残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在すると判断したことに応じて(S141:Yes)、又は、CED信号の送信からの経過時間が閾値T2を越えたと判断したことに応じて(S142:Yes)、EEPROM61に記憶された残量フラグを取得する(S143)。
次に、コントローラ130は、取得した残量フラグについて判断する(S144)。コントローラ130は、全ての残量フラグが“ON”であると判断したことに応じて(S144:Yes)、状態監視処理(図7)のS106で設定したカラー受信の禁止を解除し、カラー受信が可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S145)。コントローラ130は、少なくとも一つの残量フラグが“OFF”であると判断したことに応じて(S144:No)、モノクロ受信のみが可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S146)。
コントローラ130は、S145またはS146の処理を実行した後、ファクシミリの通信規格に定められた所定の通信を行う(S147)。例えば、コントローラ130は、回線I/F51を通じて、DCS信号を受信し、TCF信号を受信し、CFR信号を送信する。次に、コントローラ130は、回線I/F51を通じて、送信側ファクシミリ装置310からファクシミリデータ(PIX信号)を受信する(S148)。
次に、コントローラ130は、印刷処理を実行する(S149)。印刷処理は、受信したファクシミリデータに含まれる画像をシートに記録する処理である。印刷処理の詳細は、図10を参照して後述する。コントローラ130は、S148にてシート1枚分のファクシミリデータを受信したときに印刷処理を開始してもよいし、S148にて全てのファクシミリデータを受信した後に印刷処理を開始してもよい。
コントローラ130は、印刷処理を開始し(S149)、全てのファクシミリデータを受信(S148)した後、ファクシミリの通信規格に定められた所定の通信を行う(S150)。例えば、コントローラ130は、回線I/F51を通じて、EOP信号を受信し、MCF信号を送信し、DCN信号を受信する。コントローラ130は、S150にてDCN信号を受信した後に、受信側ファクシミリ装置310との回線接続を切断し(S151)、ファクシミリ受信処理を終了する。
[印刷処理]
次に図9を参照して、ファクシミリ受信処理(図8)のS149でコントローラ130が実行する印刷処理の詳細を説明する。なお、コントローラ130は、ファクシミリ受信処理のS149の他、MFP10に記録指示が入力されたことに応じて、印刷処理を実行する。記録指示は、画像データで示される画像をシートに記録する印刷処理をMFP10に実行させるための排出指示の一例である。記録指示の取得先は特に限定されないが、例えば、記録指示に対応するユーザ操作を操作パネル22を通じて受け付けてもよいし、不図示の通信インタフェースを通じて外部装置から受信してもよい。以下の説明では、送信側ファクシミリ装置310から受信したファクシミリデータと、その余の記録指示とを総称して「記録指示」と記載する。
まず、コントローラ130は、EEPROM61が記憶しているS_Emptyフラグの値が「ON」であるか「OFF」であるかを判断する(S11)。
コントローラ130は、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「ON」であると判断すると(S11:ON)、S_Empty報知画面をディスプレイ28に表示させる(S12)。S_Empty報知画面は、対応するタンク160がインクエンプティ状態になったことを、ユーザに報知するための画面である。
次に、コントローラ130は、装着センサ32から装着信号を所定の時間間隔で取得する。次に、コントローラ130は、取得した装着信号がローレベル信号(以下、「L」と記載)からハイレベル信号(以下、「H」と記載)に変化し、さらに、取得した装着信号が「H」から「L」に変化したか否かを判断する(S13)。
コントローラ130は、カートリッジ200が装着されていないと判断すると(S13:No)、装着センサ32から装着信号の定期的な取得を継続する。コントローラ130は、カートリッジ200が装着されたと判断すると(S13:Yes)、第1更新処理(S14)を実行する。
[第1更新処理]
図10(A)に示される第1更新処理は、コントローラ130が、EEPROM61に記憶された初期カートリッジ残量値及び初期タンク残量値と、カートリッジ200のICチップ34に記憶されたカートリッジ残量値とを更新する処理である。
まず、コントローラ130は、接点152を通じて、装着ケース150に装着されたカートリッジ200のICチップ34のメモリから、当該ICチップ34のメモリが記憶するカートリッジ残量値を読み出す(S31)。コントローラ130は、読み出したカートリッジ残量値を初期カートリッジ残量値としてEEPROM61に記憶させる(S32)。
また、コントローラ130は、タンク残量値をRAM62から読み出す(S33)。タンク残量値は、タンク160の液室171に貯留されているインクの量を示す値である。なお、電源オフなどによってRAM62にタンク残量値が記憶されていない場合、コントローラ130は、後述の第4更新処理と同様にして、タンク残量値を算出し、当該算出したタンク残量値をRAM62に記憶する。RAM62から読み出されるタンク残量値は、カートリッジ200が装着される直前にタンク160の液室171に貯留されていたインク残量を示す値である。換言すれば、タンク残量値は、カートリッジ200が抜かれた際にタンク160の液室171に貯留されていたインク残量を示す値である。コントローラ130は、RAM62から読み出したタンク残量値を初期タンク残量値としてEEPROM61に記憶させる(S33)
コントローラ130は、初期カートリッジ残量値及び初期タンク残量値を加算し、インクの総残量を示す総残量値を算出する(S34)。コントローラ130は、算出した総残量値から、新たなカートリッジ残量値及びタンク残量値を決定する(S35)。
具体的に説明すると、新たなカートリッジ200が装着ケース150に装着されると、カートリッジ200の液室210から、当該液室210に貯留されていたインクの一部がタンク160の液室171へと流出する。カートリッジ200の液室210からタンク160の液室171へのインクの流出は、カートリッジ200の液室210に貯留されたインクの水頭と、タンク160の液室171に貯留されたインクの水頭との差がほぼ無くなると、停止する。新たなカートリッジ残量値及び新たなタンク残量値は、カートリッジ200の液室210に貯留されたインクの水頭と、タンク160の液室171に貯留されたインクの水頭との差がほぼ無くなった状態でのインク残量を示す。
カートリッジ残量値及びタンク残量値は、例えばコントローラ130が、EEPROM61やROM37が記憶する計算式に基づく算出をすることで決定してもよい。或いは、カートリッジ残量値及びタンク残量値は、例えばコントローラ130が、EEPROM61やROM37が記憶するテーブルに基づいて決定してもよい。具体的に説明すると、カートリッジ200の液室210の形状及びタンク160の液室171の形状は、設計によって予め決められる。したがって、インクの総残量値が判れば、カートリッジ200に貯留されたインクの水頭とタンク160に貯留されたインクの水頭との差がほぼ無くなった状態におけるカートリッジ残量値及びタンク残量値も判る。EEPROM61やROM37は、総残量値からカートリッジ残量値及びタンク残量値を計算する計算式を予め記憶している。或いは、EEPROM61やROM37は、総残量値とカートリッジ残量値とタンク残量値との対応が示されたテーブルを予め記憶している。コントローラ130は、インクの総残量値と、当該計算式やテーブルと、により、新たなカートリッジ残量値及び新たなタンク残量値を決定する。
コントローラ130は、決定した新たなカートリッジ残量値をRAM62に記憶させるとともに、ICチップ34のメモリに記憶されたカートリッジ残量値を更新する(S36)。また、コントローラ130は、決定した新たなタンク残量値をRAM62に記憶させる(S37)。次に、コントローラ130は、クロック30が出力する日時情報を装着日時としてEEPROM61に記憶させ(S38)、第1更新処理を終了する。
コントローラ130は、図9に示されるように、第1更新処理が終了すると(S14)、EEPROM61のS_Emptyフラグに「OFF」を記憶させ、EEPROM61のC_Emptyフラグに「OFF」を記憶させ、EEPROM61の第1排出値及び第2排出値としてゼロを記憶させる(S15)。そして、コントローラ130は、S_Empty報知画面をディスプレイ28から消去する(S16)。コントローラ130は、ステップS16の処理の実行後に、ステップS11の処理を再び実行する。なお、C_Emptyフラグ、第1排出値、及び第2排出値については後述する。
コントローラ130は、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「OFF」であると判断すると(S11:OFF)、液面センサ33からの信号(以下、液面信号と記載)を取得する(S17)。その後、コントローラ130は、RAM62が記憶する画像データに従って、シートに印刷を行う(S18)。画像がシートに印刷されることにより、インクがヘッド21を通じて排出される。インクが排出されたことにより、タンク160におけるインクの液面が下がる。コントローラ130は、印刷の実行後(S18)、液面センサ33から液面信号を取得する(S19)。次に、コントローラ130は、ステップS17で取得した液面信号とステップS19で取得した液面信号との判断をする(S20)。以下、コントローラ130が、液面センサ33から取得するローレベル信号を「L」と記載することがある。また、コントローラ130が、液面センサ33から取得するハイレベル信号を、「H」と記載することがある。
コントローラ130は、ステップS17及びS19で取得した液面信号がともに「L」であると判断すると(S20:L→L)、第2更新処理(S21)を実行する。ステップS20で、コントローラ130が、ステップS17及びS19で取得した液面信号がともに「L」であると判断した際は、タンク160の液室171に貯留されたインクは、以下の状態である。すなわち、印刷の実行(S18)前のタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置が基準位置P以上(ステップS17で取得した液面信号が「L」)である。及び、印刷の実行(S18)後のタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置が基準位置P以上(ステップS19で取得した液面信号が「L」)である。すなわち、印刷の実行(S18)後、コントローラ130がステップS19で取得した液面信号が「L」である際の、カートリッジ200の液室210には、インクが存在している。
[第2更新処理]
図10(B)に示される第2更新処理は、コントローラ130が、印刷やメンテナンスにおいてヘッド21を通じて排出されたインクの量を示す第1排出値から、新たなカートリッジ残量値及びタンク残量値を決定する処理である。第1排出値は、例えば、ヘッド21に吐出させるインク1滴の量に、当該インク1滴が吐出される回数を乗じた値である。コントローラ130は、ヘッド21にインクの吐出を指示するごとに、指示に応じた第1排出値をカウントする。コントローラ130は、カートリッジ200の装着後から現在までにヘッド21が吐出した量に相当する第1排出値をカウントする。すなわち、第1排出値は、カートリッジ200の装着後から現在までにヘッド21が吐出したインクの量の積算値である。この第1排出値は、EEPROM61が記憶している。第1排出値は、排出量の一例である。
まず、コントローラ130は、初期カートリッジ残量値と初期タンク残量値とをEEPROM61から読み出す(S41)。次に、コントローラ130は、読み出した初期カートリッジ残量値と初期タンク残量値とを加算して総残量値を算出する(S42)。コントローラ130は、算出した総残量値から第1排出値を減算し、新たな総残量値を算出する(S43)。その後、コントローラ130は、上述と同様に、計算式やテーブルを用いて新たなカートリッジ残量値及び新たなタンク残量値を決定する(S44)。
コントローラ130は、決定した新たなカートリッジ残量値をRAM62に記憶させるとともに、ICチップ34に記憶されたカートリッジ残量値を更新する(S45)。また、コントローラ130は、決定した新たなタンク残量値をRAM62に記憶させ(S46)、第2更新処理を終了する。
コントローラ130は、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「OFF」であると判断すると(S11:OFF)、再び、ステップS17からS20までの処理を実行する。コントローラ130は、ステップS17で取得した液面信号が「L」であり、且つステップS19で取得した液面信号が「H」であると判断すると(S20:L→H)、第3更新処理(S22)を実行する。ステップS20で、コントローラ130が、ステップS17で取得した液面信号が「L」であり、且つS19で取得した液面信号が「H」であると判断した際は、タンク160の液室171に貯留されたインクは、以下の状態である。すなわち、印刷の実行(S18)前のタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置が基準位置P以上(ステップS17で取得した液面信号が「L」)である。及び、印刷の実行(S18)後のタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置が基準位置P未満(ステップS19で取得した液面信号が「H」)である。すなわち、印刷の実行(S18)中に、カートリッジ200の液室210内にあったインクが存在しなくなったのである。換言すれば、印刷の実行(S18)中にカートリッジ200の液室210に貯留されたインクが使い切られたことを意味する。
[第3更新処理]
図10(C)に示される第3更新処理は、コントローラ130が、初期カートリッジ残量値を第1所定値に更新し、かつ初期タンク残量値を第2所定値に更新する処理である。具体的に説明すると、印刷などによってヘッド21を通じて排出されたインクの量を示す第1排出値は、誤差を含む。例えば、コントローラ130は、ヘッド21に、ある特定の量のインクの吐出を指示したとしても、実際にヘッド21から吐出されるインクの量と、ヘッド21に指示した特定の量、とに差が生じる場合がある。この差は、例えば、上記インクの吐出を指示した時の温度が原因で生じることがある。温度が低くなるほど、インクの粘度が高くなるため、ノズル29を通じてインクが排出されにくくなるためである。さらに、コントローラ130は、ヘッド21に繰り返し上記の指示を行うと、繰り返し実際にヘッド21を通じて排出されるインクの量と、特定の量を繰り返した量とで、差がより開くこともある。つまり、印刷がされる度に、算出される第1排出値が示す量と、実際にヘッド21を通じて排出された量とでは、誤差が積算される可能性がある。
カートリッジ残量値は、上記第1排出値に従って決定されるため、カートリッジ残量値が示すインク残量と、実際の液室210に貯留されたインク残量と、に誤差が発生する。また、タンク残量値は、上記第1排出値に従って決定されるため、タンク残量値が示すインク残量と、実際の液室171に貯留されたインク残量と、に誤差が発生する。したがって、印刷がされる度に決定されるカートリッジ残量値及びタンク残量値は、積算された誤差を含む。第3更新処理は、積算された誤差をリセットする処理である。
具体的に説明すると、コントローラ130は、ICチップ34のメモリに記憶された初期カートリッジ残量値を第1所定値で更新する(S51)。第1所定値は、例えば「ゼロ」である。また、コントローラ130は、初期タンク残量値を第2所定値としてRAM62及びEEPROM61に記憶させる(S52)。第2所定値は、基準位置Pにインクの液面がある場合にタンク160の液室171に貯留されているインクの量を示す値である。第1所定値及び第2所定値は、例えば、ROM37に予め記憶される。
次に、コントローラ130は、EEPROM61のC_Emptyフラグに「ON」を記憶させる(S53)。C_Emptyフラグは、カートリッジ200がカートリッジエンプティ状態か否かを示す情報である。C_Emptyフラグには、カートリッジエンプティ状態であることに対応する値「ON」、或いはカートリッジエンプティ状態でないことに対応する値「OFF」が設定される。カートリッジエンプティ状態とは、カートリッジ200(より詳細には、液室210)にインクが実質的に貯留されていない状態である。換言すれば、カートリッジエンプティ状態とは、連通された液室210から液室171にインクが移動しない状態である。さらに換言すれば、カートリッジエンプティ状態とは、当該カートリッジ200に連通されたタンク160の液面が基準位置P未満の状態である。そしてコントローラ130は、第3更新処理を終了する。
コントローラ130は、ステップS11の処理で、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「OFF」であると判断すると(S11:OFF)、再び、ステップS17からS20までの処理を実行する。コントローラ130は、ステップS17及びS19で取得した液面信号がともに「H」であると判断すると(S20:H→H)、第4更新処理(S23)を実行する。ステップS20で、コントローラ130が、ステップS17及びS19で取得した液面信号が共に「H」であると判断した際は、タンク160の液室171に貯留されたインクは、以下の状態である。すなわち、印刷の実行(S18)前のタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置が基準位置P未満(ステップS17で取得した液面信号が「H」)である。及び、印刷の実行(S18)後のタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置が基準位置P未満(ステップS19で取得した液面信号が「H」)である。すなわち、印刷の実行(S18)の前後で、コントローラ130が、カートリッジ200の液室210には、インクが存在していない。
[第4更新処理]
図10(D)に示される第4更新処理は、コントローラ130が、タンク残量値を算出し、さらに、印刷を禁止するか否かを判断する処理である。まず、コントローラ130は、第2所定値に更新された初期タンク残量値をEEPROM61から読み出す(S61)。コントローラ130は、読み出した初期タンク残量値から第2排出値を減算し、新たなタンク残量値を算出する(S62)。第2排出値は、第1排出値と同様に、例えば、ヘッド21に吐出させるインク1滴の量に、当該インク1滴が吐出される回数を乗じた値である。コントローラ130は、ヘッド21にインクの吐出を指示するごとに、指示に応じた第2排出値をカウントする。コントローラ130は、液面センサ33から取得した液面信号が「L」から「H」に変化した後から、現在までにヘッド21が排出したインクの量を示す第2排出値をカウントする。すなわち、第2排出値は、液面センサ33から取得した液面信号が「L」から「H」に変化した後から現在までにヘッド21が排出したインクの量の積算値である。この第2排出値は、EEPROM61が記憶している。
コントローラ130は、算出した新たなタンク残量値を、RAM62に記憶させる(S63)。次に、コントローラ130は、カウントした第2排出値が閾値に到達したか否かを判断する(S64)。閾値は、ROM37やEEPROM61に予め記憶された値である。コントローラ130は、カウントした第2排出値が閾値に到達していないと判断すると(S64:No)、第4更新処理を終了する。一方、コントローラ130は、カウントした第2排出値が閾値に到達したと判断すると(S64:Yes)、EEPROM61のS_Emptyフラグに「ON」を記憶させ(S65)、第4更新処理を終了する。コントローラ130は、EEPROM61のS_Emptyフラグに「ON」が記憶されていると判断すると、印刷及びメンテナンスを含めて、ヘッド21を通じたインクの排出を禁止する。
閾値は、第2排出値が閾値に到達したときに、タンク160の液室171に貯留されたインクの液面が流出口174よりも若干上の位置になるような値とされる。詳しく説明すると、液面センサ33が検知する設計上の基準位置Pと、液面センサ33が実際に検知する基準位置Pとの間には、誤差がある場合がある。この誤差は、例えば、アクチュエータ190の動作の不具合等で発生したりする。閾値は、当該誤差が設計時に想定し得る最大の誤差であっても、第2排出値が閾値に到達したときに、タンク160の液室171に貯留されたインクの液面が流出口174に重ならないような値とされる。コントローラ130が、ヘッド21を通じたインクの排出を禁止することにより、ヘッド21にエアが混入することが抑制される。なお、閾値は、上述の誤差に加え、MFP10が傾斜した面に載置されることも考慮して、MFP10が所定の傾斜角度の面に載置されても、第2排出値が閾値に到達したときに、タンク160の液室171に貯留されたインクの液面が流出口174に重ならないような値とされてもよい。また、第2排出値は、第1排出値と同様に誤差を含む場合がある。閾値は、第2排出値が有する誤差が最大であっても、第2排出値が閾値に到達したときに、タンク160の液室171に貯留されたインクの液面が流出口174に重ならないような値とされてもよい。第2排出値が閾値に到達したときのタンク160の液室171に貯留されたインクの液面の位置は、第1所定位置の一例である。第2排出値が閾値に到達したと判断することは、第2液室内の液面の位置が第1所定位置未満であると判断することの一例である。
コントローラ130は、図9に示されるように、第2更新処理(S21)、第3更新処理(S22)、又は第4更新処理(S23)が終了すると、次ページがRAM62に記憶されているか否かを判断する(S24)。コントローラ130は、次ページがRAM62に記憶されていると判断すると(S24:Yes)、ステップS11の処理を再び実行する。
コントローラ130は、次ページがRAM62に記憶されていないと判断すると(S24:No)、4つのS_Emptyフラグそれぞれの設定値及び4つのC_Emptyフラグそれぞれの設定値を判断する(S25、S26)。
コントローラ130は、4つのS_Emptyフラグの少なくとも1つに“ON”が設定されていることに応じて(S25:ON)、S_Empty報知画面をディスプレイ28に表示させる(S27)。また、コントローラ130は、4つのS_Emptyフラグの全てに“OFF”が設定されており、且つ4つのC_Emptyフラグの少なくとも1つに“ON”が設定されていることに応じて(S25:OFF&S26:ON)、C_Empty報知画面をディスプレイ28に表示させる(S28)。
S27で表示されるS_Empty報知画面は、S12と同様であってもよい。また、C_Empty報知画面は、“ON”が設定されたC_Emptyフラグに対応するカートリッジ200がカートリッジエンプティ状態になったことを、ユーザに報知するための画面である。C_Empty報知画面は、例えば、カートリッジエンプティ状態のカートリッジ200に貯留されているインクの色、カートリッジ残量値及びタンク残量値を示す情報を含んでもよい。一方、コントローラ130は、4つのS_Emptyフラグ及び4つのC_Emptyフラグの全てに“OFF”が設定されていることに応じて(S26:OFF)、S27、S28の処理を実行せずに、印刷処理を終了する。
上述のように、コントローラ130は、ステップS18の印刷を実行する度に、印刷に使用したインクの量に応じてカートリッジ残量値及びタンク残量値を決定する。なお、上述の処理では、コントローラ130が、1ページ分の印刷を実行する度にカートリッジ残量値及びタンク残量値を決定する例を説明した。これに代えて、コントローラ130は、カートリッジ残量値及びタンク残量値を、1パスの印刷を実行する度に決定してもよい。また、コントローラ130は、第2更新処理、第3更新処理、及び第4更新処理を、印刷だけでなく、メンテナンスなどのためにヘッド21を通じてインクが排出されるごとに実行する。メンテナンスの実行指示は、排出指示の一例である。
以上説明した第1実施形態に係るMFP10における、ファクシミリ受信の動作について、具体例で説明する。
カラーインクの3つのタンク160に十分な量のインクが貯留され、S_Emptyフラグは全て“OFF”であるとする。状態監視処理により、3つの残量フラグは全て“ON”に設定され、3つの流入フラグは全て“OFF”に設定される。このとき、送信側ファクシミリ装置310から呼出信号を受信すると、MFP10のコントローラ130は、図8のS131~S134の処理を実行する。そして、3つの残量フラグが全て“ON”であることにより、コントローラ130は、S135、S140、及びS144にてYesと判断し、カラー受信のDIS信号を送信する(S145)。そして、S147~S151の処理が実行され、カラーでのファクシミリ受信が行われる。
カラーインクが貯留される3つのタンク160のうちに、インクエンプティ状態になり、カートリッジ200が交換されていないものが存在するとする。状態監視処理により、そのタンク160の残量フラグは“OFF”、流入フラグは“OFF”に設定される。送信側ファクシミリ装置310から呼出信号を受信すると、MFP10のコントローラ130は、S131~S134の処理を実行する。そして、残量フラグが“OFF”且つ流入フラグが“OFF”のタンク160が存在することにより、コントローラ130は、S136及びS141にてYesと判断し、S144にてNoと判断し、モノクロ受信のDIS信号を送信する(S146)。そして、S147~S151の処理が実行され、モノクロでのファクシミリ受信が行われる。
カラーインクが貯留される3つのタンク160のうちに、インクエンプティ状態になり、カートリッジ200が交換され、カートリッジ200からタンク160へインクが流入しているものが存在するとする。タンク160の液室171の液面は、基準位置P未満であるとする。状態監視処理により、そのタンク160の残量フラグは“OFF”、流入フラグは“ON”に設定される。その余のタンク160には、タンク160に十分な量のインクが貯留されており、残量フラグが“ON”、流入フラグが“OFF”であるとする。
このとき、送信側ファクシミリ装置310から呼出信号を受信すると、MFP10のコントローラ130は、S131~S134の処理を実行する。コントローラ130は、残量フラグが“OFF”であるタンク160が存在することにより、S135にてNoと判断する。コントローラ130は、残量フラグが“OFF”且つ流入フラグが“OFF”のタンク160が存在しないことにより、S136にてNoと判断する。カートリッジ200からタンク160へインクが流入して、タンク160の液室171の液面が基準位置P以上となるまで、またはCNG信号受信から閾値T1が経過するまで、コントローラ130はCED信号を送信せず、S134~S137の処理を繰り返す。CED信号の送信後(S138)も同様に、コントローラ130は、S140~S142の条件が満たされるまで、DIS信号を送信せず、S139~S142の処理を繰り返す。
そして、タンク160の液室171の液面が基準位置P以上となると、コントローラ130は、残量フラグに“ON”、流入フラグに“OFF”を代入する(S102:L&S103)。コントローラ130は、S140及びS144にてYesと判断し、カラー受信のDIS信号を送信する(S145)。そして、S147~S151の処理が実行され、カラーでのファクシミリ受信が行われる。
[本実施形態の効果]
本実施形態では、コントローラ130は、カラーインクが貯留されるタンク160について、S_Emptyフラグの設定値が“ON”であると判断したことに応じて(S104:ON)、カラーのファクシミリ受信を禁止する(S106)。そしてコントローラ130は、カートリッジ200が交換されたと判断した後に(S16:Yes)、ファクシミリ装置310からCNG信号を受信し(S132)、液面センサ33からローレベル信号を受信したことに応じて(S102:L&S144:Yes)、カラー受信の禁止を解除し、カラー受信が可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じてファクシミリ装置310へ送信する(S145)。従って、カラーインクの残量が所定液量未満のためカラー受信ができない状態であっても、モノクロ受信のDIS信号を送信せず、カートリッジ200が装着されてカラーインクの残量が所定液量以上になり、カラー受信が可能な状態になるのを待って、カラー受信のDIS信号を送信する。その結果、モノクロ受信を抑制し、カラー受信を行うことができる。
また、本実施形態では、コントローラ130は、CNG信号を受信してからの経過時間が所定時間を越える(S137:Yes&S142:Yes)前に、液面センサ33からローレベル信号を受信しなかったことに応じて(S144:No)、モノクロ受信のみが可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じてファクシミリ装置310へ送信する(S146)。従って、所定時間内にカラー受信が可能な状態にならなかった場合は、モノクロ受信のDIS信号を送信する。その結果、送信側ファクシミリ装置との通信がタイムアウトする事態を抑制することができる。また、所定時間が経過するまではモノクロ受信のDIS信号を送信せず、カラー受信が可能な状態になるのを待機することになる。その結果、カラー受信を行う可能性を高めることができる。
また、本実施形態では、コントローラ130は、CNG信号を受信してからの経過時間が閾値T1を越える(S137:Yes)前に、液面センサ33からローレベル信号を受信しなかったことに応じて(S135:No)、CED信号を回線I/F51を通じてファクシミリ装置310へ送信する(S138)。コントローラ130は、CED信号を送信してからの経過時間が閾値T2を越える(S142:Yes)前に、液面センサ33からローレベル信号を受信しなかったことに応じて(S140:No)、モノクロ受信のみが可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じてファクシミリ装置310へ送信する(S146)。従って、所定時間内(閾値T1+閾値T2)にカラー受信が可能な状態にならなかった場合は、モノクロ受信のDIS信号を送信する。その結果、送信側ファクシミリ装置との通信がタイムアウトする事態を抑制することができる。また、所定時間が経過するまではモノクロ受信のDIS信号を送信せず、CED信号の送信前の期間とDIS信号の送信前の期間の両方でカラー受信が可能な状態になるのを待機することになる。その結果、カラー受信を行う可能性を更に高めることができる。
また、本実施形態では、コントローラ130は、S_Emptyフラグの設定値が“ON”であると判断したタンク160と同じカラーのインクが貯留されたカートリッジ200のうちに、交換されていないカートリッジ200が存在する(S108:No、流入フラグ=OFF)と判断したことに応じて(S136:Yes&S141:Yes&S144:No)、モノクロ受信のみが可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じてファクシミリ装置310へ送信する(S146)。従って、カートリッジ200が交換されず、流入フラグが“OFF”であり、カラー受信が可能になる見込みがない場合には、モノクロ受信のDIS信号が送信される。その結果、不要な待機時間を抑制して、ファクシミリの受信処理を速やかに進めることができる。
[第1実施形態の変形例]
上記の第1実施形態では、コントローラ130が、S_Emptyフラグの設定値が“ON”であると判断したことに応じて(S104:ON)、残量フラグに“OFF”を設定しカラー受信を禁止する例が説明された。すなわち、コントローラ130が、第2排出値が閾値に到達したと判断したことに応じて(S64:Yes)、残量フラグが“OFF”となる例が説明された。コントローラ130が、第2排出値が閾値と異なる所定値に到達したことに応じて、残量フラグに“OFF”を設定してもよい。当該所定値は、閾値よりも小さい値であってもよい。所定値は、第2排出値が所定値に到達したときに、タンク160の液室171に貯留されたインクの液面が流出口174と基準位置Pとの間の位置になるような値であってもよい。
[第2実施形態]
上記の第1実施形態では、コントローラ130は、全てのタンク160の残量フラグの設定値が“ON”であると判断したことに応じて(S144:Yes)、カラー受信が可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S145)例が説明された。また、第1実施形態では、MFP10は液面センサ33を備え、残量フラグが“OFF”であるときに(S101:OFF)、液面信号が“L”であることに応じて(S102:L)、残量フラグが“ON”に設定される(S103)例が説明された。
本実施形態では、残量フラグの設定値が“ON”でないタンク160が存在する場合であっても、コントローラ130は、残量フラグが“OFF”且つ流入フラグが“OFF”であるタンクが存在しないと判断したことに応じて、カラー受信が可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する例を説明する。また、本実施形態では、残量フラグが“OFF”であるときに、総残量値から計算されるタンク残量値が第1所定残量値以上であることに応じて、残量フラグが“ON”に設定される(S103)例を説明する。すなわち、本実施形態では、MFP10は液面センサ33を備えなくてもよい。
本実施形態では、コントローラ130は、図7に示される状態監視処理に代えて、図11に示される状態監視処理を実行する。図8に示されるファクシミリ受信処理に代えて、図12に示されるファクシミリ受信処理を実行する。図9に示される印刷処理に代えて、図13(A)に示される印刷処理を実行する。図10に示される第2~第4更新処理に代えて、図13(B)に示される第5更新処理を実行する。なお、以下で説明する処理以外の処理は、上記実施形態で説明した処理と同じである。図11~図13に示される処理において、第1実施形態と同じ処理については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
図11を参照して、状態監視処理について説明する。コントローラ130は、第1実施形態と同様に、S101の処理を実行する。コントローラ130は、残量フラグの値が“OFF”であると判断したことに応じて(S101:OFF)、RAM62に記憶されているタンク残量を取得し、タンク残量値について判断する(S201)。タンク残量値は、図13(B)に示される第5更新処理のS44で決定される値である。第5更新処理の詳細は、図13(B)を参照して後述する。コントローラ130は、タンク残量値が第1所定残量値以上であると判断したことに応じて(S201:Yes)、残量フラグに“ON”を代入し、流入フラグに“OFF”を代入し(S103)、状態監視処理を終了する。コントローラ130は、S106を実行した後、又は、S201にてタンク残量値が第1所定残量値未満であると判断したことに応じて(S201:No)、EEPROM61の流入フラグの値について判断する(S107)。
図12を参照してファクシミリ受信処理について説明する。コントローラ130は、第1実施形態と同様に、S131~S133の処理を実行する。コントローラ130は、S133にて、受信ボタンが押下されたと判断すると(S133:Yes)、CED信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S138)。
次に、コントローラ130は、EEPROM61に記憶された残量フラグ及び流入フラグを取得し(S139)、取得した3つの残量フラグそれぞれの設定値を判断する(S140)。
コントローラ130は、少なくとも1つの残量フラグが“OFF”であると判断したことに応じて(S140:No)、取得した3つの残量フラグ及び3つの流入フラグそれぞれの設定値を判断する(S141)。
コントローラ130は、残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在しないと判断したことに応じて(S141:No)、又は、S140にて全ての残量フラグが“ON”であると判断したことに応じて(S140:Yes)、状態監視処理のS13で設定したカラー受信の禁止を解除し、カラー受信が可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S145)。残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在しないと判断することは、第2液室内の液面の位置が第1所定位置よりも高い第2所定位置以上になると判断することの一例である。
コントローラ130は、残量フラグが“OFF”であり、且つ、流入フラグが“OFF”であるタンク160が存在すると判断したことに応じて(S141:Yes)、モノクロ受信のみが可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じて送信側ファクシミリ装置310へ送信する(S146)。
コントローラ130は、S145またはS146の処理を実行した後、第1実施形態と同様に、S147~S151の処理を実行し、ファクシミリ受信処理を終了する。
図13(A)を参照して印刷処理について説明する。コントローラ130は、第1実施形態と同様に、ステップS11からS15までの処理及びステップS18の処理を実行する。コントローラ130は、ステップS11において、EEPROM61のS_Emptyフラグの値が「OFF」であると判断すると(S11:OFF)、ステップS18の処理を実行した後、第5更新処理を実行する(S29)。
図13(B)を参照して第5更新処理について説明する。コントローラ130は、第1実施形態で説明した第2更新処理(図10(B))と同様に、ステップS41からS46までの処理を実行する。ステップS46の実行後、コントローラ130は、ステップS43で算出した新たな総残量値が第3所定残量値未満か否かを判断する(S71)。第3所定残量値は、タンク160の液室171に貯留されたインクが使い切られたときのインク残量の理論値であり、ROM37又はEEPROM61に予め記憶される。
コントローラ130は、ステップS43で算出した新たな総残量値が第3所定残量値未満であると判断すると(S71:Yes)、EEPROM61のS_Emptyフラグに「ON」を記憶させ(S72)、第5更新処理を終了する。一方、コントローラ130は、ステップS43で算出した新たな総残量値が第3所定残量値未満でないと判断すると(S71:No)、ステップS43で算出した新たな総残量値が第2所定残量値未満か否かを判断する(S73)。
第2所定残量値は、カートリッジ200の液室210に貯留されたインクが使い切られた時点でのタンク160の液室171に貯留されたインク残量の理論値である。この第2所定残量値は、ROM37又はEEPROM61に予め記憶される。
コントローラ130は、ステップS43で算出した新たな総残量値が第2所定残量値未満でないと判断すると(S73:No)、第5更新処理を終了する。一方、コントローラ130は、ステップS43で算出した新たな総残量値が第2所定残量値未満であると判断すると(S73:Yes)、EEPROM61のC_Emptyフラグに「ON」を記憶させて(S74)、第5更新処理を終了する。
以上説明した第2実施形態に係るMFP10における、ファクシミリ受信の動作について、具体例で説明する。
カラーインクの3つのタンク160に十分な量のインクが貯留され、S_Emptyフラグは全て“OFF”であるとする。状態監視処理により、3つの残量フラグは全て“ON”に設定され、3つの流入フラグは全て“OFF”に設定される。このとき、送信側ファクシミリ装置310から呼出信号を受信すると、MFP10のコントローラ130は、図12のS131~S139の処理を実行する。そして、3つの残量フラグが全て“ON”であることにより、コントローラ130は、S140にてYesと判断し、カラー受信のDIS信号を送信する(S145)。そして、S147~S151の処理が実行され、カラーでのファクシミリ受信が行われる。
カラーインクが貯留される3つのタンク160のうちに、インクエンプティ状態になり、カートリッジ200が交換されていないものが存在するとする。状態監視処理により、そのタンク160の残量フラグは“OFF”、流入フラグは“OFF”に設定される。送信側ファクシミリ装置310から呼出信号を受信すると、MFP10のコントローラ130は、S131~S139の処理を実行する。そして、残量フラグが“OFF”且つ流入フラグが“OFF”のタンク160が存在することにより、コントローラ130は、S141にてYesと判断し、モノクロ受信のDIS信号を送信する(S146)。そして、S147~S151の処理が実行され、モノクロでのファクシミリ受信が行われる。
カラーインクが貯留される3つのタンク160のうちに、インクエンプティ状態になり、カートリッジ200が交換され、カートリッジ200からタンク160へインクが流入しているものが存在するとする。タンク160の液室171の液面は、基準位置P未満であるとする。状態監視処理により、そのタンク160の残量フラグは“OFF”、流入フラグは“ON”に設定される。その余のタンク160には、タンク160に十分な量のインクが貯留されてされており、残量フラグが“ON”、流入フラグが“OFF”であるとする。
このとき、送信側ファクシミリ装置310から呼出信号を受信すると、MFP10のコントローラ130は、S131~S134の処理を実行する。コントローラ130は、残量フラグが“OFF”であるタンク160が存在するため、S140にてNoと判断する。コントローラ130は、残量フラグが“OFF”且つ流入フラグが“OFF”のタンク160が存在しないため、S141にてNoと判断する。第1実施形態とは異なり、コントローラ130は、S141にてNoと判断したことに応じて、即時に、カラー受信のDIS信号を送信する(S145)。そして、S147~S151の処理が実行され、カラーでのファクシミリ受信が行われる。
[本実施形態の効果]
本実施形態では、コントローラ130は、カラーインクが貯留されるタンク160について、液室171の液面の位置が基準位置P未満であると判断したことに応じて(S11:H)、カラー受信を禁止する。そしてコントローラ130は、カートリッジ200が交換されたと判断した後に(S106:Yes)、ファクシミリ装置310からCNG信号を受信し(S132)、残量フラグの設定値が“OFF”、且つ、流入フラグの設定値が“OFF”であるタンク160が存在しないと判断したことに応じて(S141:No)、カラー受信の禁止を解除し、カラー受信が可能なことを示すDIS信号を回線I/F51を通じてファクシミリ装置310へ送信する(S145)。従って、従って、カラーインクの残量が所定液量未満のためカラー受信ができない状態であっても、モノクロ受信のDIS信号を送信せず、残量フラグと流入フラグの両方が“OFF”のためカラー受信が可能な状態になる見込みがない場合を除き、カラー受信のDIS信号を送信する。その結果、モノクロ受信を抑制し、カラー受信を行うことができる。
[変形例]
上記の実施形態では、ユーザが受信ボタンを押下したことに応じてファクシミリ受信の処理を行う、いわゆるマニュアルモードでの動作が説明された。CNG信号を検出しないときは通話処理を行い、CNG信号を検出したときは自動的にファクシミリ受信の処理を行う、いわゆるF/Tモードでの動作も可能である。また、閉結すると直ぐにファクシミリ受信の処理を行う、いわゆるFaxOnlyモードでの動作も可能である。
また、上述の実施形態では、アクチュエータ190を備える液面センサ33を説明した。しかしながら、液面センサ33は、タンク160またはカートリッジ200内のインクの液面の位置を検出できれば、アクチュエータ190を備える構成以外の構成を採用してもよい。例えば、液面センサ33は、液室171の後壁164にインクが接触しているか否かによって異なる反射率を有するプリズムを利用して、液室171におけるインクの液面を光学的に検出するセンサであってもよい。また、液面センサ33は、液室171内に挿入された電極棒であってもよい。
また、上述の実施形態では、水頭差によってインクがカートリッジ200からタンク160に流出する例を説明した。しかしながら、重力や、ポンプなどによってインクをカートリッジ200からタンク160に流出させてもよい。すなわち、本発明は、重力やポンプなどによってインクをカートリッジ200からタンク160に流出させる装置にも用いることができる。
上記の実施形態では、カートリッジ200が交換され、カートリッジ残量値が0でないことを条件に流入フラグの更新が行われる例が説明された。しかしながら、流入フラグの更新は、カートリッジ200のICチップ247のメモリに記憶されている情報に基づいて行われてもよい。例えば、コントローラ130は、装着されたカートリッジ200のICチップ247から読み出した情報が示すカートリッジ残量値が所定の閾値以上であると判断したことに応じて、流入フラグに“ON”を代入してもよい。例えば、コントローラ130は、ICチップ247のメモリに記憶されている情報に基づいて、装着されたカートリッジ200が新品であると判断したことに応じて、流入フラグに“ON”を代入してもよい。例えば、コントローラ130は、ICチップ247のメモリに記憶されている情報が示す装着されたカートリッジ200のシリアルナンバーが、当該カートリッジ200の前に装着されていたカートリッジ200のシリアルナンバーと異なると判断したことに応じて、流入フラグに“ON”を代入してもよい。
また、流入フラグの更新は、装着されたカートリッジ200のICチップ34のメモリ記憶された情報に基づいて決定されるインク流入時間に基づいて行われてもよい。インク流入時間は、カートリッジ200が装着されてから、カートリッジ200からタンク160へインクが流入することによって、タンク160の液室171の液面の位置が基準位置Pに到達するまでの時間の予測値である。例えば、コントローラ130は、決定されたインク流入時間が所定の閾値よりも小さいと判断したことに応じて、流入フラグに“ON”を代入してもよい。インク流入時間は、例えば、ICチップ34のメモリから読み出されたカートリッジ残量値とインク流入時間との対応を示すテーブル又は関数に基づいて決定されてもよい。インク流入時間は、所要時間の一例である。所定の閾値は、第4所定時間の一例である。
また、流入フラグの更新は、カートリッジ200に設けられた液面センサからの信号に基づいて行われてもよい。当該液面センサは、カートリッジ200の液室210の液面の位置が所定位置以上であるとき、ローレベル信号をコントローラ130へ出力し、液面の位置が所定位置未満であるとき、ハイレベル信号をコントローラ130へ出力する。コントローラ130は、カートリッジ200の液面センサからハイレベル信号を受信したことに応じて、流入フラグに“ON”を代入する。このような液面センサは、上記の実施形態における液面センサ33およびアクチュエータ190と同様の構成を、カートリッジ200に設けることで実現できる。また、当該液面センサは、プリズムを利用して液室210におけるインクの液面を光学的に検出するセンサであってもよいし、液室210内に挿入された電極棒であってもよい。カートリッジ200に設けられた液面センサは、第2液面センサの一例である。所定位置は、第3所定位置の一例である。ローレベル信号は、第2信号の一例である。