JP7000126B2 - 熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター - Google Patents

熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター Download PDF

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Description

本発明は、モーター等の耐火処理のために使用される熱膨張性耐火カバー部材に関する。
モーターは、熱による損傷・機能低下が生じやすい機器であり、従来、火災等の熱からモーターを防護するために、熱膨張性耐火シートを用いた耐火処理が行われている。熱膨張性耐火シートは、例えば特許文献1に開示されるような膨張黒鉛製のシートであり、モーターの外面に貼り付けられる。
特開2005-3056号公報
しかしながら従来の熱膨張性耐火シートは、モーターの構造が複雑な場合などに、モーターに貼り付けることが困難であった。また、熱膨張性耐火シートを貼り付けることが不可能なシャフト等のモーターの可動部分に対しては、耐火処理のために特殊な部品を使用する必要があり、多大な手間を要していた。
本発明の目的は、モーター等の処理対象物に対する耐火処理のために使用される熱膨張性耐火カバー部材であって、耐火処理の手間を軽減可能な熱膨張性耐火カバー部材を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
項1.処理対象物の耐火処理を行うために使用される熱膨張性耐火カバー部材であって、
少なくとも一部が熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から形成されて、前記処理対象物の周囲を囲むことの可能な筒体と、
前記筒体を前記処理対象物に連結固定することが可能な連結固定部位とを有している、熱膨張性耐火カバー部材。
項2.前記連結固定部位として、前記処理対象物と嵌合することで、前記筒体を前記処理対象物に連結固定させることの可能な嵌合部位を備える、項1に記載の熱膨張性耐火カバー部材。
項3.前記連結固定部位として、前記筒体の内面及び又は前記筒体の端部に形成された爪状部を備え、
前記爪状部を前記処理対象物に係止させることで、前記筒体が前記処理対象物に連結固定される、項1又は2に記載の熱膨張性耐火カバー部材。
項4.前記連結固定部位として、前記筒体の壁及び/又は他の前記連結固定部位を貫通する締結部材を備え、
前記筒体の内側に延び出た前記締結部材の範囲を、前記処理対象物に押し当てること、或いは、前記処理対象物に挿通させることで、前記筒体が前記処理対象物に連結固定される、項1乃至3のいずれかに記載の熱膨張性耐火カバー部材。
項5.前記筒体は、熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物から形成された部分を有する、項1乃至4のいずれかに記載の熱膨張性耐火カバー部材。
項6.前記処理対象物は、シャフトが本体部から延び出ているモーターであって、
前記筒体は、前記シャフト及び前記本体部の周囲を囲むことが可能であり、
前記連結固定部位は、前記筒体を前記本体部に連結固定することが可能である、項1乃至5のいずれかに記載の熱膨張性耐火カバー部材。
本発明の熱膨張性耐火カバー部材によれば、筒体が樹脂組成物から形成されていることで、筒体が耐火性に優れる。そして、この筒体で処理対象物の周囲を囲むようにしていることで、処理対象物の構造が複雑であったり、回転等の動作を行う可動部分が処理対象物に含まれていたとしても、特殊な部品を用いることなく、処理対象物に耐火処理を行うことができる(すなわち処理対象物の周囲を筒体で囲むことができる)。したがって、本発明の熱膨張性耐火カバー部材によれば、耐火処理の手間を軽減できる。
本発明の実施形態の熱膨張性耐火カバー部材を示す斜視図である。 耐火処理の対象物であるモーターを示す斜視図である。 本発明の実施形態の熱膨張性耐火カバー部材を処理対象物であるモーターに連結固定した状態を示す斜視図である。 変形例の熱膨張性耐火カバー部材を処理対象物であるモーターに連結固定した状態を示す斜視図である。 変形例の熱膨張性耐火カバー部材を処理対象物であるモーターに連結固定した状態を示す斜視図である。
本発明の実施形態の熱膨張性耐火カバー部材を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態の熱膨張性耐火カバー部材1を示す斜視図である(図1は、後述する筒体5の内部を示すために、筒体5の一部を切り欠いて示している)。図2は、耐火処理の対象物2を示す斜視図である。図3は、熱膨張性耐火カバー部材1を処理対象物2に連結固定した状態を示す斜視図である。
図1や図3に示す本実施形態の熱膨張性耐火カバー部材1は、図2や図3に示す処理対象物2の耐火処理を行うために使用される。処理対象物2は、本体部3からシャフト4が延び出ているモーターである(以下、処理対象物2であるモーターを、モーター2と記す)。本体部3の内部(図示せず)には、シャフト4と一体のローターや、ローターと相互作用してトルクを発生させるステーターや、シャフト4を支えるベアリングが設けられており、ローターの回転がシャフト4に伝達されることで、シャフト4が回転する。上記のモーター2は、熱による損傷・機能低下が生じやすい機器であり、本実施形態では、火災等の熱でモーター2に損傷・機能低下が生じることを防止すべく、熱膨張性耐火カバー部材1が使用される。
図1や図3に示すように、熱膨張性耐火カバー部材1は、筒体5と、連結固定部位6とを有している。筒体5は、モーター2の周囲を囲むことが可能なものである。具体的には、筒体5は、その長さL1が、モーター2の長さL2(本体部3の一端3aからシャフト4の先端4aまでの長さ)以上とされ、筒体5の中央の空洞7が、モーター2の本体部3の外形に対応した断面を有している。このため、筒体5は、本体部3の周囲を囲むことの可能な範囲8(図3)と、シャフト4の周囲を囲むことの可能な範囲9(図3)と、を有しており、モーター2の全体の周囲を囲むことが可能である。なお図示の例では、モーター2の本体部3の外形の輪郭を略円形で示し、筒体5を略円筒状で示しているが、図1~図3は、モーター2や筒体5の大まかな構造を示す概略図であって、モーター2や筒体5の形状を上記の形状に制限するものではない。
連結固定部位6は、モーター2の本体部3との嵌合によって、筒体5を本体部3に連結固定可能なである。図1や図3の例では、筒体5の範囲8の内面から突出する凸部によって、連結固定部位6が構成されている(以下、連結固定部位6である凸部を、凸部6と記す)。この凸部6は、筒体5と一体に成形されるものであり、筒体5の内周全周に亘って延びる環状を呈している。
本体部3の外面には、凹部10が形成されている。この凹部10は、凸部6に対応した断面を有するものであって、本体部3の外周全周に亘って延びる環状を呈している。
熱膨張性耐火カバー部材1は、図3に示すように、モーター2を筒体5の内部に押し込み(すなわち、モーター2の外側に筒体5を被せて)、筒体5の範囲8の内側に本体部3を位置させ、筒体5の範囲9の内側にシャフト4を位置させて、凸部6(連結固定部位)を本体部3の凹部10に嵌合させる簡易な作業によって、モーター2の耐火処理を完了可能なものである。この耐火処理が完了した状態では、凸部6と凹部10との嵌合によって、筒体5がモーター2の本体部3に連結固定されているとともに、筒体5の範囲8が本体部3の周囲を囲み、筒体5の範囲9がシャフト4の周囲を囲んでいる。また筒体5の空洞7の径がシャフト4の径よりも大きいことで、筒体5の範囲9とシャフト4との間には隙間が存在しており、筒体5がシャフト4の回転の妨げにならないようになっている。なお上記耐火処理の作業に関して、凸部6が形成された筒体5の横断面では、筒体5の内径が本体部3の外径よりも小さいが、筒体5を構成する材料(後述の樹脂組成物)が弾性を有することで、筒体5の内部にモーター2の全体を押し込むことが可能とされる。
熱膨張性耐火カバー部材1を構成する筒体5や凸部6は、樹脂成分や熱膨張性黒鉛等を含む樹脂組成物から形成される。この樹脂組成物は、上記の樹脂成分や熱膨張性黒鉛等を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の装置を用いて混練することで得られるものであり、熱膨張性耐火カバー部材1は、上記の混練で得られた樹脂組成物を公知の方法で成形したものである。
樹脂組成物に含まれる樹脂成分としては、公知の成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質の中でも、耐寒性、耐熱性、耐油性等の特性を柔軟に調整できる性質を有しているものが好ましい。より柔軟特性で扱い易い樹脂組成物を得るためには、塩ビ系樹脂に可塑剤を加えたものが好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
樹脂組成物に含まれる熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP-EG」、ADT社製「ADT-351」「ADT-501」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、熱膨張性黒鉛を10~350重量部の範囲で含むことが好ましい。
さらに前記樹脂組成物は、無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、粒径18μmの「ハイジライトH-31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
熱膨張性耐火カバー部材1を構成する樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、無機充填材を30~400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性黒鉛および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50~600重量部の範囲であることが好ましい。
さらに前記樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
Figure 0007000126000001
化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6~16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6~16のアリール基、または、炭素数6~16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチル-ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t-ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
さらに熱膨張性耐火カバー部材1を構成する樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
熱膨張性耐火カバー部材1を構成する樹脂組成物として、容易に入手可能な市販品を使用でき、この市販品として、例えば、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等が挙げられる。
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3~50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
以上に説明した本実施形態の熱膨張性耐火カバー部材1によれば、筒体5が熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から形成されることで、筒体5が耐火性に優れている。そして、この耐火性に優れた筒体5でモーター2の周囲を囲むようにしていることで、回転するシャフト4がモーター2に含まれていたり、或いは、モーター2の構造が複雑であったとしても、特殊な部品を用いることなく、モーター2の耐火処理を行うことができる。すなわち、モーター2の構造に応じて筒体5の形状・寸法等を適宜調整すれば、モーター2の周囲を筒体5で囲んで、火災等の熱からモータ-2が防護される状態にすることができる。以上のことから、本実施形態の熱膨張性耐火カバー部材1によれば、耐火処理の手間を軽減できる。
また本実施形態の熱膨張性耐火カバー部材1によれば、モーター2を筒体5の内部に押し込み(すなわち、モーター2の外側に筒体5を被せて)、凸部6(連結固定部位)を本体部3の凹部10に嵌合させて、筒体5を本体部3に連結固定するという簡易な作業を行うことで、モーター2の周囲を筒体5で囲んだ状態にすることができる。この点からも本実施形態によれば、耐火処理の手間を軽減できる。
また火災が発生した際には、筒体5がモーター2の周囲を囲んでいることで、災がモーター2に当たらないとともに、筒体5に含まれる熱膨張性黒鉛が熱膨張してモーター2との間の隙間を埋める。以上のことから、モーター2に伝わる熱の量を小さく抑えることができので、モーター2に損傷・機能低下が生じることを確実に防止できる。
なお本発明の熱膨張性耐火カバー部材は、上記実施形態に示すものに制限されず、種々改変することができる。
例えば上記実施形態では、筒体5の全体を、熱膨張性黒鉛等を含む樹脂組成物から形成したが、筒体5の全体を熱膨張させる必要がない場合には、筒体5の一部のみを熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から形成し、筒体5が熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物から形成された部分を有していてもよい。例えば、筒体5の範囲8と本体部3とを密着させる場合には、筒体5の範囲8を熱膨張させる必要がないので、筒体5の範囲9のみを熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から形成し、筒体5の範囲8については、熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物から形成してもよい。以上のようにすることで、熱膨張性耐火カバー部材1の材料コストを安価に抑えることができる。また、筒体5を構成する材料に、金属などの樹脂組成物以外の材料が含まれていてもよい。
また、凸部6や凹部10の形状は、上記実施形態に示す形状に限定されず、筒体5を本体部3に連結固定させることの可能な様々な形状とすることができる。例えば、筒体5の内周回りに間隔をあけて形成した複数の凸部6と、モーター2の本体部3の外周回りに間隔をあけて形成した複数の凹部10とを、嵌合させることで、筒体5を本体部3に連結固定させてもよい。或いは、筒体5の長手方向に位置がずれるように形成した複数の凸部6と、本体部3の長手方向に位置がずれるように形成した複数の凹部10とを、嵌合させることで、本体部3を筒体5に連結固定させてもよい(例えば、筒体5の長手方向の一端に形成した凸部6と、本体部3の長手方向の一端に形成した凹部10とを嵌合させ、筒体5の長手方向の中央に形成した凸部6と、本体部3の長手方向の他端に形成した凹部10とを嵌合させるようにしてもよい)。また、筒体5に形成する凸部6の数・位置や、本体部3に形成する凹部10の数・位置も、筒体5や本体部3の形状・寸法等に応じて適宜設定され得る。また、上記とは逆に、筒体5の内面に形成した凹部(連結固定部位)と、本体部3の外面に形成した凸部とを嵌合させることで、筒体5を本体部3に連結させてもよい。
また、モーター2の本体部3との嵌合によって、筒体5を本体部3に連結固定する連結固定部位は、上述した筒体5の内面に形成される凸部や凹部に限られない。例えば、連結固定部位6は、筒体5の壁を貫通する溝や切り欠けであってもよい。この場合、上記の溝や切り欠け(連結固定部位)が、本体部3に形成された凸部と嵌合させることで、筒体5を本体部3に連結固定できる。
また、筒体5をモーター2の本体部3に連結固定する連結固定部位は、上述した本体部3との嵌合によるものに限られない。例えば図4に示す変形例の熱膨張性耐火カバー部材11のように、筒体5の内面に、連結固定部位である爪状部20を形成し、この爪状部20(連結固定部位)を、本体部3に係止させることで、筒体5を本体部3に連結固定させてもよい。
また或いは、図5に示す変形例の熱膨張性耐火カバー部材12のように、筒体5を本体部3に連結固定する連結固定部位は、筒体5の壁を貫通するビスやボルト等の締結部材30であってもよい。この場合、筒体5の内側に延び出た締結部材30(連結固定部位)の範囲を、本体部3に押し当てること、或いは、本体部3に挿通させることで、筒体5が本体部3に連結固定される。なお上記の「筒体5の内側に延び出た締結部材30(連結固定部位)の範囲を、本体部3に押し当てること、或いは、本体部3に挿通させること」とは、以下の(1)~(3)の場合を包含するものであり、図5は、以下の(1)の場合を示している。
(1)筒体5の内側に延び出た締結部材30の平らな先端を、本体部3の外面に押し付けること。
(2)筒体5の内側に延び出た締結部材30の範囲を、本体部3の外面に形成される孔にねじ込むこと。
(3)筒体5の内側に延び出た締結部材の尖った先端を、本体部3の外面に突き当てること。
連結固定部位についても、筒体5と同様に熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から形成することもできる。また、連結固定部位を熱膨張させる必要性が無い場合には、熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物や金属などの樹脂組成物以外の材料から形成することも可能である。
また上記の例では、モーター2の全体を筒体5で囲んでいるが、例えば、耐火処理の必要性に乏しい部分がモーター2に含まれていたり、或いは、本体部3を支持する土台など必ず露出させないといけない部分がモーター2に含まれる場合には、モーター2の上記の部分を筒体5の外側に延び出させてもよい。この場合、例えば、筒体5に形成される孔或いは溝から、モーター2の上記の部分を筒体5の外側に延び出させること、或いは、筒体5の端にある開口から、モーター2の上記の部分を筒体5の外側に延び出させることが行われる。
また、モーター2の本体部3が複雑な形状を呈している場合には、例えば、筒体5は、複数の分割体を連結することで組み立てられるものであってよい。この場合には、複数の分割体の各々を本体部3の外面に沿うように配置するとともに、螺子や接着材等の公知の手段で複数の分割体を連結することで筒体5を完成させて、この筒体5によってモーター2の周囲(本体部3やシャフト4の周囲)を囲むことが行われる。以上のようにすれば、モーター2の本体部3が複雑な形状を呈していたとしても、筒体5でモーター2の周囲(本体部3やシャフト4の周囲)を囲んだ状態にすることができる
また、本発明の熱膨張性耐火カバー部材1によって耐火処理が行われる処理対象は、上記のモーター2に限定されない。本発明の熱膨張性耐火カバー部材1は、筒体5の形状や寸法等を適宜調整することで、モーター2以外の様々な機器の耐火処理に使用できる。また、耐火処理の対象がモーター2以外の機器である場合にも、上記例と同様、筒体5を処理対象物に連結固定する連結固定部位として、以下の(1)~(5)を使用できる。
(1)処理対象物との嵌合により、筒体を処理対象物に連結固定させることの可能な嵌合部位(連結固定部位)。
(2)筒体の内面に形成される爪状部(連結固定部位)であって、処理対象物に係止されることで、筒体を処理対象物に連結固定することが可能な爪状部(連結固定部位)。
(3)筒体5の壁を貫通する締結部材(連結固定部位)であって、筒体5の内側に延び出た範囲を、処理対象物に押し当てること、或いは、処理対象物に挿通させることで、筒体を処理対象物に連結固定することが可能な締結部材(連結固定部位)。
(4)筒体の一方の端部側に形成される爪状部(連結固定部位)(一実施形態では、筒体の一方の端部から筒体の外方に突出した爪状部)であって、処理対象物に係止されることで、筒体を処理対象物に連結固定することが可能な爪状部(連結固定部位)。
(5)前記(1)の嵌合部位や前記(2)や(4)の爪状部(他の前記連結固定部位)を貫通するビスやボルト等の締結部材(連結固定部位)であって、筒体の内側に延び出た前記締結部材の範囲を、処理対象物に押し当てること、或いは、処理対象物に挿通させることで、筒体を前記処理対象物に連結固定させることの可能な締結部材(連結固定部位)。
なお本発明の熱膨張性耐火カバー部材には、前記(1)の嵌合部位(連結固定部位)と、前記(2)の爪状部(連結固定部位)と、前記(3)の締結部材(連結固定部位)と、前記(4)の爪状部(連結固定部位)とのうち、いずれか1つ或いは複数を設けることができる。また本発明の熱膨張性耐火カバー部材には、前記(5)の締結部材(連結固定部位)を、前記(1)の嵌合部位(他の連結固定部位)や前記(2)や(4)の爪状部(他の連結固定部位)と共に、設けることができる。
1,11,12 熱膨張性耐火カバー部材
2 モーター(処理対象物)
3 本体部
4 シャフト
5 筒体
6 連結固定部位

Claims (5)

  1. 熱膨張性耐火カバー部材付きのモーターであって、
    前記モーターは、回転するシャフトが本体部から延び出たものであって、
    前記熱膨張性耐火カバー部材は、
    少なくとも一部が熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物から形成されて、前記シャフト及び前記本体部の周囲を囲む筒体と、
    前記筒体を前記本体部に連結固定する連結固定部位とを有する、熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター。
  2. 前記熱膨張性耐火カバー部材は、前記連結固定部位として、前記本体部と嵌合することで、前記筒体を前記本体部に連結固定する嵌合部位を備える、請求項1に記載の熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター
  3. 前記熱膨張性耐火カバー部材は、前記連結固定部位として、前記筒体の内面及び/又は前記筒体の端部に形成された爪状部を備え、
    前記爪状部を前記本体部に係止させることで、前記筒体が前記本体部に連結固定される、請求項1又は2に記載の熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター
  4. 前記熱膨張性耐火カバー部材は、前記連結固定部位として、前記筒体の壁及び/又は他の前記連結固定部位を貫通する締結部材を備え、
    前記筒体の内側に延び出た前記締結部材の範囲を、前記本体部に押し当てること、或いは、前記本体部に挿通させることで、前記筒体が前記本体部に連結固定される、請求項1乃至3のいずれかに記載の熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター
  5. 前記筒体は、熱膨張性黒鉛を含まない樹脂組成物から形成された部分を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の熱膨張性耐火カバー部材付きのモーター
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