JP6997279B2 - エポキシ系樹脂及び電着塗料 - Google Patents
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Description
塗料のうち、電着塗料は、塗装作業性が優れ形成した塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される金属製品(例えば、自動車部品、電気機器部品及びその他の工業用機器等)の塗装に広く利用されている。
また、有機錫化合物の触媒を用いる場合でも、硬化性能をできるだけ高める必要があった。
低温での焼付けを行なうためには、低温硬化性のブロック化ポリイソシアネート化合物を硬化剤に用いることが一般に行われてきた。しかし、低温での反応性を高めた電着塗料では、長期の貯蔵安定性(浴安定性)が不十分となり、その結果、塗膜の仕上がり性や防食性などが劣る場合があった。
特許文献2、3には、カプロラクトン付加物やフェノール系化合物によって変性されたエポキシ樹脂をアミン変性したアミン変性エポキシ樹脂を用いた電着塗料が記載されている。しかしながら、これらの電着塗料においても、硬化特性、特に低温硬化性、塗料の貯蔵安定性について検討されていない。
項1: エポキシ基を1つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
項2: エポキシ基を1つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上であり、かつ、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)÷エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw×1000
項3: 前記エポキシ基と反応する官能基を有する化合物が、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物である、項1又は2に記載のエポキシ系樹脂。
項4: 前記3価以上のフェノール系化合物が、下記構造式(A)
で表される化合物を含む、項3に記載のエポキシ系樹脂。
項5: 3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物をさらに反応させて得られる、項3又は4のいずれかに記載のエポキシ系樹脂。
項6: 前記3価以上のフェノール系化合物とともに、下記構造式(B)
で表される化合物を反応させて得られるエポキシ系樹脂であって、3価以上のフェノール系化合物と構造式(B)の化合物の含有比率(質量比)が1/99~99/1の範囲内である、項4に記載のエポキシ系樹脂。
項7: 前記3官能以上のポリイソシアネートが、イソシアヌレート型イソシアネート及び/又はクルードMDIである、項3に記載のエポキシ系樹脂。
項8: 項1~7のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂と、アミン化合物とを反応させて得られる、アミノ基含有エポキシ樹脂。
項9: 項1~7のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂又はその変性物が、水性媒体に分散された、水性樹脂分散体。
項10: 項1~7のいずれか1項に記載のエポキシ系樹脂又はその変性物と、硬化剤とを含有する、アニオン電着塗料。
項11: 項8に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する、カチオン電着塗料。
項12: 項8に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する、一層型のカチオン電着塗料。
項13: エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、アミン化合物と、を少なくとも反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂、及び
硬化剤、を含有し、前記3価以上のフェノール系化合物が、下記構造式(A)
で表される化合物である、一層型のカチオン電着塗料。
項14: エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、アミン化合物と、を少なくとも反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂、及び、
硬化剤、を含有し、前記3価以上のフェノール系化合物が、下記構造式(A)
で表される化合物であり、
前記アミノ基含有エポキシ樹脂の含有量が、前記硬化剤以外の樹脂成分を100質量%とした場合に71質量%以上である、カチオン電着塗料。
項15: 前記エポキシ基を1つ以上有する化合物が、アミン変性されていない化合物である、項11~14のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
項16: 前記アミノ基含有エポキシ樹脂が、エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物を含む化合物と、3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物と、を反応させて得られる、項13~15のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
項17: 前記3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物が、下記構造式(B)
で表される化合物であって、3価以上のフェノール系化合物と構造式(B)の化合物の含有比率(質量比)が1/99~99/1の範囲内である、項16に記載のカチオン電着塗料。
項18: 前記3官能以上のポリイソシアネートが、イソシアヌレート型イソシアネート及び/又はクルードMDIである、項13~15のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
項19: さらにアクリル樹脂を含有し、
該アクリル樹脂の含有量が、全てのエポキシ樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした場合に30質量%未満であり、
該アクリル樹脂とエポキシ樹脂のSP値の差が絶対値で1.0未満である、項11~18のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
項20: エポキシ基を1つ以上有する化合物と、キシレンホルムアルデヒド樹脂ではない3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、を少なくとも反応させて得られるエポキシ系樹脂に対し、アミン化合物を反応させてアミノ基含有エポキシ樹脂を製造する工程と、
該アミノ基含有エポキシ樹脂及び硬化剤を混合してカチオン電着塗料を製造する工程と、を有するカチオン電着塗料の製造方法。
項21: 前記エポキシ基を1つ以上有する化合物が、アミン変性されていない化合物であり、製造されるカチオン電着塗料が一層型のカチオン電着塗料である、項20に記載のカチオン電着塗料の製造方法。
項22: 項11~19のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装して得られる塗装物品。
さらに、本発明の水性樹脂分散体及び電着塗料は、低活性の触媒を用いた場合や低温の場合での硬化性、貯蔵安定性、塗膜仕上がり性及び防食性に優れている。
本発明において、「多官能」とは官能基の数が2より大きい事である。ただし、本発明においては、エポキシ系樹脂の末端エポキシ基と反応性官能基含有化合物との反応により生成及び/又は導入された官能基が2つ以上あったとしても、この末端部分の官能基の数は1としてカウントする。さらに、エポキシ系樹脂の分子内部の2級水酸基については、反応性が低いこと等から、上記官能基の数に含めないものとする。本発明において、多官能における「官能基」とは、実質的に、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの硬化剤と反応できる反応性の官能基のことである。
<第1の態様に係るエポキシ系樹脂>
本発明の第1の態様に係るエポキシ系樹脂は、エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、を少なくとも反応させて得られる、エポキシ系樹脂である。
反応に際しては、必要に応じて、3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物及び/又はジイソシアネート化合物をさらに反応させることができる。
本発明の第1の態様に係るエポキシ系樹脂は、その硬化性、特に低活性の触媒を用いた場合の硬化性や低温における硬化性、貯蔵安定性、当該エポキシ系樹脂を用いて電着塗料を調製した際の塗膜の仕上がり性及び防食性に優れるものである。
エポキシ基を1つ以上有する化合物(エポキシ化合物)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有する化合物である。本発明において、エポキシ化合物が1分子中に有するエポキシ基の数は、好ましくは2~8であり、より好ましくは、2~6であり、さらに好ましくは2~4であり、最も好ましくは2である。
エポキシ化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、少なくとも300、好ましくは400~4,000、さらに好ましくは800~2,500の範囲内の重量平均分子量を有するものが好ましい。また、そのエポキシ当量も特に限定されないが、例えば、少なくとも160、好ましくは180~2,500、さらに好ましくは400~1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。エポキシ化合物としては、例えば、ポリフェノール系化合物とエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)との反応によって得られたエポキシ化合物、分子中にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ化合物、ダイマー酸ジグリシジルエステル等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明においては、ポリフェノール系化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ化合物が好適に用いられる。
ポリアルキレンオキシド鎖中のアルキレン基としては、炭素数が2~8のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基がより好ましく、プロピレン基が特に好ましい。
上記のポリアルキレンオキシド鎖の含有量は、電着塗料形成時の安定性、仕上り性及び防食性向上の観点から、エポキシ系樹脂の固形分質量を基準にして、ポリアルキレンオキシドの構成成分としての含有量で、通常1.0~15質量%、好ましくは2.0~9.5質量%、より好ましくは3.0~8.0質量%の範囲内が適当である。
上記不飽和脂肪酸としては、公知のものを制限なく用いることができるが、エポキシ化合物の柔軟性及び疎水性の観点から、炭素数11~22の高級不飽和脂肪酸が好ましい。
上記高級不飽和脂肪酸としては、公知のものを制限なく用いることができ、具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、分岐オクタデセン酸、分岐ヘキサデセン酸、ウンデシレン酸等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
なお、前述したとおり、上記式におけるエポキシ系樹脂の分子内部の2級水酸基は多官能としての官能基に含めないものとする。また、例えば上記式の末端エポキシ基と反応性官能基含有化合物が反応して得られた変性エポキシ系樹脂において、該エポキシ基が反応して現れた水酸基も本発明における多官能としての官能基に含めないものとする。
3価以上のフェノール系化合物は、芳香環に結合した水酸基を分子内に3個以上有する化合物の1種以上である。
3価のフェノール系化合物としては、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシヒドロキノン、5-メチルピロガロール、没食子酸、1,8,9-トリヒドロキシアントラセン、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチルフェノール)、4,4’-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2-メチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,6-ビス(4-ヒドロキシ―3,5-ジメチルベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1-〔α-メチル-α-(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕-3-〔α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1-〔α-メチル-α-(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕-4-〔α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ-α,α-ジメチルベンジル)-エチルベンゼン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
で表される化合物、フェノールノボラック樹脂類、クレゾールノボラック樹脂類、ビスフェノール系ノボラック樹脂類(ビスフェノールAノボラック樹脂等)、ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールビフェニレン樹脂、フェノール変性トルエンホルムアルデヒド樹脂、ピッチ又は油類とフェノール系化合物とホルムアルデヒドとの共縮合樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明においては、3価以上のフェノール系化合物として、上記の構造式(A)で表される化合物の1種以上を用いることが好ましい。上記構造式(A)のR1~R3に関しては、水素又は炭素を有する有機基が好ましい。炭素を有する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~20の1価のアルキル基が挙げられる。
3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物としては、イソシアネート基を分子内に3個以上有する化合物の1種以上が用いられる。
例えば、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル(リジンエステルトリイソシアネート)、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、ビシクロヘプタントリイソシアネート、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート、下記構造式(C)
で表されるクルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート](ポリメリックMDI)、クルードTDI[クルードトリレンジイソシアネート]等の各種ポリイソシアネートのクルード化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物としては、例えば、2価のフェノール系化合物、多価アルコール系化合物、多価カルボン酸系化合物、1分子中に活性水素を1つ有する化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
で表される化合物を含むことが好ましい。
多価カルボン酸系化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、ダイマー酸、これらの酸無水物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
1分子中に活性水素を1つ有する化合物としては、モノフェノール系化合物(フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ニトロフェノール等)、モノアルコール系化合物(オキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル等)、モノカルボン酸系化合物(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-エチルヘキサン酸(オクチル酸)、カプロン酸、カプリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシプロピバリン酸、乳酸、クエン酸等)、メルカプトアルカノール(メルカプトエタノール等)、アルカノールアミン(エタノールアミン等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、オキサジアジントリオン、クルード化合物であるジイソシアネート化合物;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
該ポリイソシアネートと反応し得る活性水素を有する化合物としては、3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物又はその誘導体のプレポリマーを形成する際に用いる化合物を用いることができる。また、ブロック剤としては、3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物又はその誘導体のブロック化ポリイソシアネートを形成する際に用いる化合物を用いることができる。
本発明の第1の態様のエポキシ系樹脂の製造に使用する、「エポキシ基を1つ以上有する化合物」、「3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物」、及び、必要に応じて用いられる「3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物及び/又はジイソシアネート化合物」それぞれの配合量は、目的とするエポキシ当量等に応じて適宜調整することができる。
例えば、「エポキシ基を1つ以上有する化合物」、「3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物」、及び、「3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物及び/又はジイソシアネート化合物」の合計固形分質量を基準として、各成分の配合量を以下の範囲とすることができる。
「エポキシ基を1つ以上有する化合物」:50~99.9質量%、好ましくは65~95質量%、より好ましくは65~92質量%。
「3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物」:0.1~50質量%、好ましくは0.2~30質量%、より好ましくは0.5~20質量%。
「3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物及び/又はジイソシアネート化合物」:0~49.9質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは1~30質量%。
「3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物」:0.1~99質量%、好ましくは0.5~95質量%、より好ましくは0.5~90質量%。
エポキシ化合物と、3価以上のフェノール系化合物との反応は、例えば、適当な溶媒中で、約80~約190℃、好ましくは約90~約170℃の温度で1~6時間程度、好ましくは1~5時間程度で行なうことができる。
本発明においては、3価以上のフェノール系化合物により、エポキシ系樹脂を多官能化することができる。また、例えば、1分子中に活性水素を2つ持つ化合物(2価のフェノール系化合物等)により、エポキシ系樹脂を鎖延長することができる。
本明細書における重量平均分子量は、特に記載がない限り、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を用い、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
本発明の第2の態様に係るエポキシ系樹脂は、エポキシ基を1つ以上有する化合物と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上である、エポキシ系樹脂である。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
以下、本明細書中においては「エポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)」を、「エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)」又は「平均多官能化度(X1)」という場合がある。
また、「エポキシ基と反応する官能基を有する化合物」としては、第1の態様に係るエポキシ系樹脂を得るために用いられる「3価以上のフェノール系化合物」、「3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物」及び「1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物」から選ばれる1種以上が挙げられる。
さらに、各成分の配合量も、第1の態様に係るエポキシ系樹脂と同様のものとすることができる。
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
により求めることができる。
例えば、1つの分子が3つの末端に分かれている場合、Xは1となり、全く多官能化していない直鎖状のエポキシ系樹脂の場合、Xは0となる。平均多官能化度(X1)の値が大きいほど1分子当たり多官能化していることになる。
なお、エポキシ系樹脂の末端に多官能型の変性剤(例えば、ジエチレントリアミンのケチミン化物やジエタノールアミンなどのアミン系化合物、及びジメチロールプロピオン酸などのカルボン酸系化合物)を反応させることによる、エポキシ系樹脂末端の多官能化については、立体障害による反応性低下が起こるため、本発明の「多官能化」には定義しない。また、エポキシ系樹脂内部の2級水酸基に関しても反応性の観点から本発明の「多官能化」には定義しない。
本発明の「多官能化」とは、エポキシ系樹脂の主骨格が分岐しているものである。
多官能化剤による平均多官能化度(N)=Σ〔(各多官能化剤の価数-2)×各多官能化剤の基本配合量〕
により求めることができる。
ここで、各多官能化剤の「基本配合量」は下記方法により求めることができる。
(基本配合の算出方法)
各原材料の基本配合量(mol)=各原材料の配合量(mol)×基本配合倍数
※各原材料の配合量(mol)=各原材料の配合質量(g)/各原材料の分子量
※基本配合倍数=2/(エポキシ基の数(mol)-末端封止剤を除くエポキシ基と反応する官能基の数(mol)-多官能化剤による多官能数)
※末端封止剤:一官能のアミン、酸など
※エポキシ基と反応する官能基:二官能以上のフェノール性水酸基やイソシアネート基、活性水素を2つ以上もつアミンのアミノ基など
※多官能化剤による多官能数=(多官能化剤の価数-2)×多官能化剤の配合量(mol)
この場合において、炊き込みによるエポキシ系樹脂1分子当たりの平均多官能化度(M)は、下記式;
炊き込みによる平均多官能化度(M)=(2-m)/(1-m)-2
により求めることができる。
※m:基本配合におけるエポキシ過剰量
ここで、基本配合におけるエポキシ過剰量(EP過剰量)は、以下のように算出される。
・基本配合におけるEP過剰量=基本配合におけるEP基の数(mol)-基本配合におけるEP基と反応する官能基の数(mol)
なお、本発明の第1~第3の態様に係るエポキシ系樹脂におけるEP過剰量は、樹脂固形分を基準として、通常0~5mmol/g、好ましくは0~2mmol/g、より好ましくは0~1.5mmol/gである。
平均多官能化度(X1)=(N+2)×(M+1)-M-2
を用いて算出することができる。
本発明の第2の態様に係るエポキシ系樹脂は、エポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が、0.30以上、好ましくは0.30~15.00の範囲内、より好ましくは0.60~13.00の範囲内、さらに好ましくは0.70~10.00の範囲内、特に好ましくは0.90~8.00の範囲内とすることができる。
本発明の第3の態様に係るエポキシ系樹脂は、エポキシ基を1つ以上有する化合物と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上であり、かつ、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.1以上である、エポキシ系樹脂である。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)÷エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw×1000
複数の多官能化度のエポキシ系樹脂を含む場合、前記の平均多官能化度(X1)及び平均多官能化濃度(Y1)の計算は、各エポキシ系樹脂の平均とする。
また、「エポキシ基と反応する官能基を有する化合物」としては、第1の態様に係るエポキシ系樹脂を得るために用いられる「3価以上のフェノール系化合物」、「3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物」及び「1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物」から選ばれる1種以上が挙げられる。
さらに、各成分の配合量も、第1の態様に係るエポキシ系樹脂と同様のものとすることができる。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
本発明の第3の態様に係るエポキシ系樹脂は、エポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が、0.30以上、好ましくは0.30~15.00の範囲内、より好ましくは0.60~13.00の範囲内、さらに好ましくは0.70~10.00の範囲内、特に好ましくは0.90~8.00の範囲内とすることができる。
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)÷エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw×1000
ここで、エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mwは、以下のように算出される。
エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw=Σ(基本配合における各原料の配合量(mol)×各原料の分子量)
多官能化剤に含まれる、3官能以上の多官能化剤成分の1分子当りの平均官能基数は、次の式を用いて算出される。
平均官能基数=Σ(各多官能化剤成分の含有割合÷各多官能化剤成分の分子量×各多官能化剤成分の官能基数)/Σ(各多官能化剤成分の含有割合÷各多官能化剤成分の分子量)
平均多官能化濃度(Y1)は、質量当たりの多官能化度を規定しており、Y1の数値が大きいほど官能基が多く樹脂の反応性が高いことになる。
上記多官能化度及び/又は多官能化濃度が高い場合は樹脂の合成時にゲル化又は増粘が起こり、塗膜の仕上がり性が悪化することになる。また、低い場合は防食性や耐油ハジキ性が低下することになる。
エポキシ基と反応する官能基としては、エポキシ基と反応できるものであれば特に限定はなく、例えば、カルボキシル基、1級又は2級のアミノ基、水酸基などが挙げられる。
上記のような場合(変性エポキシ樹脂)でも、平均多官能化度(X1)及び平均多官能化濃度(Y1)の計算は同様に行うことができる。
本発明のエポキシ樹脂は、アミノ基を有するアミノ基含有エポキシ樹脂であってもよい。
アミノ基含有エポキシ樹脂は、第1~第3の態様のエポキシ系樹脂のいずれかと、アミン化合物とを反応させて得ることができる。
前記第1の態様のエポキシ系樹脂と、アミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂としては、例えば、以下の(a)又は(b)が挙げられる。(a)エポキシ基を2つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物を含む化合物と、を少なくとも反応させて得られるエポキシ系樹脂と、アミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂であって、前記3価以上のフェノール系化合物が、下記構造式(A)
で表される化合物を含む、アミノ基含有エポキシ樹脂。
(b)エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、を少なくとも反応させて得られるエポキシ系樹脂に対し、アミン化合物を反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂であって、前記3価以上のフェノール系化合物がキシレンホルムアルデヒド樹脂ではない、アミノ基含有エポキシ樹脂。
第1~第3の態様のエポキシ系樹脂のいずれかを得る際に用いるエポキシ化合物としては、予めアミン化合物が反応されていないものを用いることが好ましい。
また、必要に応じて、第1~第3の態様のエポキシ系樹脂のいずれかを得る際に用いるエポキシ化合物として、予めアミン化合物が反応されたものを用いてもよい。この場合、アミン化合物の使用量は、アミノ基含有エポキシ樹脂のアミン価等が所望の値となるように適宜定めることができ、全アミン化合物に対して、99mol%以下とすることが好ましい。
アミン化合物としては、エポキシ系樹脂との反応性を有するアミン化合物であれば特に限定されない。例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミン等のモノ-アルキルアミン又はジ-アルキルアミン;モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、N-ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-tert-ブチルアミノ-1,2-プロパンジオール、N-メチルグルカミン、N-オクチルグルカミン等のアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノブチル)アミン等のアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン等の芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1-メチルピペラジン、3-ピロリジノール、3-ピぺリジノール、4-ピロリジノール等の複素環を有するポリアミン;上記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1~30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;上記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;上記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
第1の態様に係るエポキシ系樹脂(エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、を少なくとも反応させて得られる、エポキシ系樹脂)と、アミン化合物との反応は、例えば、適当な溶媒中で、約80~約190℃、好ましくは約90~約170℃の温度で1~6時間程度、好ましくは1~5時間程度で行なうことができる。
反応に際して用いられる溶媒としては、例えば、第1の態様に係るエポキシ系樹脂の製造に際して用いられたものと同様の溶媒を用いることができる。
アミノ基含有エポキシ樹脂のアミン価としては、水分散性と防食性向上の点から、樹脂固形分を基準として、通常5mgKOH/g以上であり、10~200mgKOH/gの範囲内が好ましく、30~150mgKOH/gの範囲内がより好ましい。
また、アミノ基含有エポキシ樹脂の重量平均分子量は、第1の態様に係るエポキシ系樹脂において記載したのと同様である。
本発明の水性樹脂分散体は、第1~第3の態様のエポキシ系樹脂及びそれらの変性物のいずれかから選ばれる1種以上のエポキシ系樹脂を、水性媒体に分散させることにより得られる。
例えば、第1~第3の態様のエポキシ系樹脂を、水性媒体中に分散させて得ることができる。また、(i)第1~第3の態様のエポキシ系樹脂のいずれかと、アミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂、及び/又は、(ii)第1~第3の態様のエポキシ系樹脂のいずれかを得る際に用いるエポキシ化合物として、予めアミン化合物が反応されたものを用いることで得られるアミノ基含有エポキシ樹脂を、酸化合物で中和して水性媒体中に分散させて得ることができる。
本発明において、「水性樹脂分散体」とは、上記水性媒体中に樹脂成分が溶解せずに粒子状態で存在している状態のものをいう。
水性樹脂分散体中の第1~第3の態様のエポキシ系樹脂及びそれらの変性物のいずれかから選ばれる1種以上のエポキシ系樹脂の含有量は、固形分を基準として、50質量%以上が好ましい。
前記水性樹脂分散体は、第1~第3の態様のエポキシ系樹脂及び/又はそれらの変性物と後述する硬化剤(ブロック化ポリイソシアネート化合物など)とを混合して、水性媒体に分散することが好ましい。その場合、エポキシ系樹脂及び/又はそれらの変性物としては、アミノ基含有エポキシ樹脂が好ましく、硬化剤は、ブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
また、エポキシ系樹脂及び/又はそれらの変性物と硬化剤の混合比(質量比)は、固形分で1/99~99/1が好ましく、30/70~90/10がより好ましく、40/60~85/15がより好ましい。
ここで、親水性溶媒としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、グライム系溶媒(例えばエチレングリコールジメチルエーテル等)、ジグライム系溶媒(例えばジエチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール等)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
中和当量としては、アミノ基1当量に対して酸化合物を0.2~1.5当量が好ましく、0.5~1.0当量がより好ましい。
水性媒体中へのアミノ基含有エポキシ樹脂の分散は、中和されたアミノ基含有エポキシ樹脂に対して撹拌しながら水性媒体を加えてもよく、また、水性媒体に対して中和されたアミノ基含有エポキシ樹脂を撹拌しながら加えてもよく、また、水性媒体と中和されたアミノ基含有エポキシ樹脂とを混合してから撹拌してもよい。分散温度としては、100℃未満が好ましく40~99℃がより好ましく、50~95℃がさらに好ましい。得られた分散物の樹脂固形分濃度は、5~80質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
本発明の電着塗料は、前記エポキシ系樹脂を含むものであれば、カチオン電着塗料、アニオン電着塗料のいずれでもよい。
カチオン電着塗料は、本発明の第1~第3の態様のエポキシ系樹脂、又は、当該エポキシ系樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂を、塗膜形成樹脂成分として含むことが好ましい。また、本発明の第1~第3の態様のエポキシ系樹脂、又は、当該エポキシ系樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂が水性媒体に分散された水性樹脂分散体を含むものでもよい。
アニオン電着塗料は、本発明の第1~第3の態様のエポキシ系樹脂を、塗膜形成樹脂成分として含むことが好ましい。また、本発明の第1~第3の態様のエポキシ系樹脂が水性媒体に分散された水性樹脂分散体を含むものでもよい。
本発明のカチオン電着塗料は、前記第1~第3の態様のエポキシ系樹脂を含む塗膜形成樹脂成分と、上記エポキシ系樹脂と硬化可能な硬化剤とを必須成分として含有する。必要に応じて、硬化触媒、顔料、水等の溶媒、添加剤(界面活性剤、表面調整剤、硬化助触媒、中和剤等)を含有していてもよい。上記エポキシ系樹脂としては、前記第1~第3の態様のエポキシ系樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(I)が好ましい。
本発明のカチオン電着塗料としては、例えば、前記[アミノ基含有エポキシ樹脂]に記載されているアミノ基含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する、カチオン電着塗料が挙げられる。
また、本発明のカチオン電着塗料としては、例えば、前記[アミノ基含有エポキシ樹脂]に記載されているアミノ基含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する、一層型のカチオン電着塗料が挙げられる。
例えば、本発明の一層型のカチオン電着塗料は、電着塗装した塗膜の断面を顕微鏡で観察した場合に、二層分離(または多層分離)していない塗膜を形成するカチオン電着塗料である。尚、顔料成分や樹脂成分などに多少の偏りがある場合であっても、断面観察で層と層の境界面が現れない場合は一層の塗膜である。
また、例えば、本発明の一層型のカチオン電着塗料は、一回の電着塗装により、下層部(金属基体表面側。以下同じ)に、主として防食性樹脂(エポキシ系樹脂)が分布し、且つ上層部に主としてエポキシ系樹脂以外の樹脂が分布するような濃度勾配を有する複層膜を形成しないカチオン電着塗料である。
カチオン電着塗料がアクリル樹脂を含有する場合、カチオン電着塗料におけるアクリル樹脂の含有量が、全てのエポキシ系樹脂(変性品を含む)とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした場合に、30質量%未満であることが防食性などの観点から好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが更に好ましい。
また、樹脂の相溶性と仕上がり性の観点から、少なくとも1種のエポキシ系樹脂とアクリル樹脂の溶解性パラメータ(SP値)の差が、絶対値で1.0未満であることが好ましく、0.5未満であることがより好ましい。SP値が近い樹脂を使用することで相分離のない塗膜を形成する事ができる。
実測の溶解性パラメーターは、濁点滴定法により測定された値であって、下記のK.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,VOL.12,2359~2370(1968年)の記載参照)に従い算出される。
実測の溶解性パラメーター(SP値)=(√Vml・δH+√Vmh・δD)/(√Vml+√Vmh)
Vml、Vmh、δH、δDは、測定温度20℃において、樹脂0.5g(固形分)をテトラヒドロフラン10mLに溶解した中に、n-ヘキサンを加えていき、底面の下に置いた新聞の4号活字が該ビーカー上部から透視し判読できる限界を濁点とし、濁点における滴定量H(mL)と、測定温度20℃において、樹脂0.5g(固形分)をテトラヒドロフラン10mLに溶解した中に、脱イオン水を加えたときの濁点における滴定量D(mL)とを、下記式に適用することにより算出される値である。
Vml=81.1×130.3/{(1-VH)×130.3+VH×81.1}
Vmh=81.1×18/{(1-VD)×18+VD×81.1}
VH=H/(10+H)
VD=D/(10+D)
δH=9.52×10/(10+H)+7.24×H/(10+H)
δD=9.52×10/(10+D)+23.43×D/(10+D)
なお、各溶剤の分子容(mL/mol)は、テトラヒドロフラン:81.1、n-ヘキサン:130.3、脱イオン水:18であり、各溶剤のSP値は、テトラヒドロフラン:9.52、n-ヘキサン:7.24、脱イオン水:23.43である。
カチオン性アクリル樹脂としては、例えば、カチオン塩基含有アクリルモノマー及びその他のモノマーをラジカル共重合することにより製造できる。カチオン性以外のアクリル樹脂の場合は、後述するその他のモノマーのみを用いることで製造することができる。
上記カチオン塩基含有アクリルモノマーは、具体的には、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有アクリルモノマー及びその4級塩化物;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルスルフェー卜などの4級アンモニウム塩基含有アクリルモノマー;4-(ジメチルスルホニオ)フェニルメタクリレートなどの3級スルホニウム塩基含有アクリルモノマーなどが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
なお、上記アクリル樹脂の水酸基価は、通常0~300mgKOH/gの範囲内、好ましくは30~200mgKOH/gの範囲内である。アクリル樹脂の重量平均分子量は、通常1000~200000の範囲内、好ましくは3000~50000の範囲内である。
アクリル樹脂のアミン価は、通常0~300mgKOH/gの範囲内、好ましくは10~150mgKOH/gの範囲内である。
下記式(3)で示されるアミノ基含有エポキシ樹脂(I)の平均多官能化度(X2)が、0.30以上、好ましくは0.30~15.00の範囲内、より好ましくは0.60~13.00の範囲内、さらに好ましくは0.70~10.00の範囲内、特に好ましくは0.90~8.00の範囲内とすることができる。
下記式(4)で示されるカチオン電着塗料に含まれるアミノ基含有エポキシ樹脂の平均多官能化濃度(Y2)が0.1(mmol/g)以上(好ましくは0.1~5の範囲内、より好ましくは0.4~3.0の範囲内、さらに好ましくは0.4~2.0の範囲内)である、カチオン電着塗料を用いることができる。
必要に応じて、硬化触媒、顔料、水等の溶媒、添加剤(界面活性剤、表面調整剤、硬化助触媒、中和剤等)を含有していてもよい。
なお、上記の平均多官能化濃度(Y2)は、カチオン電着塗料に含有している全てのアミノ基含有エポキシ樹脂の平均多官能化濃度(Y2)である。
平均多官能化度(X2)=アミノ基含有エポキシ樹脂(I)の1分子の末端数-2
式(4):
カチオン電着塗料に含まれるアミノ基含有エポキシ樹脂の平均多官能化濃度(Y2)=アミノ基含有エポキシ樹脂(I)の平均多官能化度(X2)÷アミノ基含有エポキシ樹脂(I)の重量平均分子量Mw×1000×(アミノ基含有エポキシ樹脂(I)量÷全てのアミノ基含有エポキシ樹脂量)
本発明のカチオン電着塗料に含まれる硬化剤は、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びアミノ樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
-ブロック化ポリイソシアネート化合物-
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とブロック剤との付加反応生成物である。また、必要に応じて、ブロック剤以外の活性水素含有化合物を用い、ブロック剤と共にポリイソシアネート化合物と反応させたものを用いることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、公知のものを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ポリメリックMDI、クルードTDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、MDI等(好ましくはクルードMDI等)の芳香族ポリイソシアネート化合物が防食性のためにより好ましい。
ブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物;フェノール、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール系化合物;n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のアルコール系化合物;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸イソプロピル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、メチル-5-メチルピラゾール-3-カルボキシレート、3-メチル-5-フェニルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール-4-カルボキシアニリド等のピラゾール系化合物;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系化合物;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系化合物;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系化合物;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系化合物;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系化合物;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
アミノ樹脂としては、公知のものを用いることができる。例えば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン又は尿素等の各種のアミノ基含有化合物を、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒド等の各種のアルデヒド化合物(ないしはアルデヒド供給物質)と反応せしめることによって得られるアルキロール基を有する種々のアミノ樹脂(例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等)、及び、該アルキロール基を有するアミノ樹脂を、メタノール、エタノール、n-ブタノール又はi-ブタノール(イソブタノール)等の各種の低級アルコールと反応せしめることによって得られる、種々のアルコキシアルキル基含有アミノ樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明のカチオン電着塗料は、硬化触媒として、公知の硬化触媒を制限なく用いることができる。例えば、ビスマス化合物、亜鉛化合物、錫化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物等の無機化合物;フォスファゼン化合物、アミン化合物、4級塩化合物等の有機化合物;これらの複合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
なお、塗膜硬化性の向上を目的として、触媒として、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の有機錫化合物を用いることができるが、昨今の有機錫化合物に対する環境規制から、有機錫化合物を用いないことが好ましい。
有機錫化合物の代替触媒として、亜鉛化合物、ビスマス化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物等の無機化合物;フォスファゼン化合物、アミン化合物、4級塩化合物等の有機化合物;これらの複合物等からなる群より選ばれる1種以上を硬化触媒として用いること、若しくは硬化触媒を実質的に用いないことが、環境面への配慮の観点から更に好ましい。
本発明のカチオン電着塗料は、硬化触媒として環境面・安全面から、ビスマス化合物を含むことが好ましい。
本発明のカチオン電着塗料における硬化触媒の配合割合は、樹脂固形分100質量部を基準にして、0.1~10質量部であり、0.5~6質量部であることが好ましい。
本発明のカチオン電着塗料に用いることができる顔料としては、例えば、着色顔料、防錆顔料、体質顔料等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
これらの顔料は、顔料分散ペーストとして塗料に混合することが好適である。例えば、顔料分散用樹脂、顔料、及び中和剤等の各種添加剤を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストとして調製したものを、カチオン電着塗料に用いることができる。
なお、本発明においては、シリカを用いる場合、その使用量は5質量%未満とされる。
顔料の配合量は、カチオン電着塗料の樹脂固形分100質量部あたり、1~100質量部、特に10~50質量部の範囲内が好ましい。
(a)エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、アミン化合物と、を少なくとも反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂、及び、硬化剤、を含有し、前記3価以上のフェノール系化合物が、下記構造式(A)
で表される化合物である、一層型のカチオン電着塗料。
で表される化合物であり、前記アミノ基含有エポキシ樹脂含有量が、前記ブロック化ポリイソシアネート化合物以外の樹脂成分を100質量%とした場合に71質量%以上である、カチオン電着塗料。
ここで、前記3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物としては、下記構造式(B)
で表される化合物であって、3価以上のフェノール系化合物と構造式(B)の化合物の含有比率(質量比)が1/99~99/1の範囲内であることが好ましい。
また、前記3官能以上のポリイソシアネートは、イソシアヌレート型イソシアネート及び/又はクルードMDIであることが好ましい。
本発明のカチオン電着塗料は、所定のアミノ基含有エポキシ樹脂及び硬化剤を含むカチオン電着塗料を構成できる製造方法であれば、特に限定されない。
例えば、エポキシ基を1つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物(キシレンホルムアルデヒド樹脂を除く)及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物と、を少なくとも反応させて得られるエポキシ系樹脂に対し、アミン化合物を反応させてアミノ基含有エポキシ樹脂を製造する工程と、該アミノ基含有エポキシ樹脂及び硬化剤を混合してカチオン電着塗料を製造する工程と、を有するカチオン電着塗料の製造方法が挙げられる。
本発明のカチオン電着塗料の製造方法においては、前記エポキシ基を1つ以上有する化合物は、アミン変性されていない化合物であることが好ましい。また、製造されるカチオン電着塗料が、一層型のカチオン電着塗料となることが好ましい。
本発明のカチオン電着塗料を用いたカチオン電着塗装方法は、前記カチオン電着塗料からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陰極として通電する工程を含む。
本発明のカチオン電着塗料を用いたカチオン電着塗料の塗装物品は、前記カチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装して得ることができる。
カチオン電着塗料の被塗物としては、自動車ボディ、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属を含む被塗物であれば特に制限はない。
被塗物としての金属板としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等で表面を清浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
本発明のアニオン電着塗料は、本発明のエポキシ系樹脂とカルボキシル基含有樹脂とを含む塗膜形成樹脂成分と、硬化剤とを必須成分として含有する。必要に応じて、エポキシリン酸エステル化合物、硬化触媒、顔料、水等の溶媒、添加剤(界面活性剤、表面調整剤、硬化助触媒、中和剤等)を含有していてもよい。
カルボキシル基含有樹脂は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する樹脂である。カルボキシル基含有樹脂は、少なくとも1個の水酸基をさらに有する樹脂であることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂としては、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができ、耐擦り傷性向上の面からアクリル樹脂が好適である。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を用い、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
本発明のアニオン電着塗料に含まれる硬化剤は、従来から公知の化合物を用いることができる。例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びアミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等)から選ばれる少なくとも1種であることが好適である。これらの中でも、耐衝撃性、副資材の付着性及び耐擦り傷性の面から、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びメラミン樹脂からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
また、ブロック化ポリイソシアネート化合物として、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、例えば、バーノックD-750、バーノックD-800、バーノックDN-950、バーノックDN-970もしくはバーノックDN-15-455(以上、DIC社製、商品名)、デスモジュールL、デスモジュールN、デスモジュールHL、デスモジュールILもしくはデスモジュールN3390(以上、バイエル社製、商品名)、タケネートD-102、タケネートD-202、タケネートD-110NもしくはタケネートD-123N(三井化学社製、商品名)、コロネートL、コロネートHL、コロネートEHもしくはコロネート203(東ソー社製、商品名)、デュラネート24A-90CX(旭化成社製、商品名)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、メラミン樹脂として、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、例えば、ユーバン20SE-60、ユーバン225(以上、いずれも三井化学社製、商品名)、スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821(以上、いずれもDIC社製、商品名)等のブチルエーテル化メラミン樹脂;スミマールM-100、スミマールM-40S、スミマールM-55(以上、いずれも住友化学社製、商品名)、サイメル202、サイメル232、サイメル235、サイメル254、サイメル266、サイメル272、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370(以上、いずれもオルネクス社製、商品名)、ニカラックMS17、ニカラックMX15、ニカラックMX430、ニカラックMX600(以上、いずれも三和ケミカル社製、商品名)、レジミン741(モンサント社製、商品名)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル232S、サイメル238、サイメル1130(以上、いずれもオルネクス社製、商品名)、スマミールM66B(住友化学社製、商品名)等のメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂;サイメルXV805(三井サイテック社製、商品名)、ニカラックMS95(三和ケミカル社製、商品名)等のメチル化とn-ブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明のアニオン電着塗料は、必要に応じて、エポキシ系樹脂にリン酸化合物を付加することにより得られるエポキシリン酸エステル化合物を含有できる。エポキシリン酸エステル化合物を配合することによって、耐衝撃性を向上できる。
エポキシ系樹脂としては、本発明の第1の態様のエポキシ系樹脂を用いることができる。また、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に変性剤を反応させた変性エポキシ樹脂等を用いることができる。
エポキシ系樹脂とリン酸化合物の反応は、50~180℃、好ましくは80~120℃で、触媒の存在下又は不存在下に行うことができる。
本発明のアニオン電着塗料に含まれる硬化触媒は、従来から公知の硬化触媒を制限なく用いることができる。例えば、本発明のカチオン電着塗料において挙げられた硬化触媒が好適である。
また、本発明のアニオン電着塗料は、硬化触媒として、例えば、n-ブチルベンゼンスルホン酸、n-アミルベンゼンスルホン酸、n-オクチルベンゼンスルホン酸、n-ドデシルベンゼンスルホン酸、n-オクタデシルベンゼンスルホン酸、n-ジブチルベンゼンスルホン酸、i-プロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、これらのスルホン酸のアミン中和物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明のアニオン電着塗料における硬化触媒の配合割合は、樹脂固形分100質量部を基準にして、0.1~10質量部であり、0.5~6質量部であることが好ましい。
本発明のアニオン電着塗料には、従来から公知の着色顔料、防錆顔料、体質顔料等からなる群より選ばれる1種以上を制限なく用いることができる。例えば、本発明のカチオン電着塗料が含むことができる顔料が好適である。これらの顔料は、本発明のカチオン電着塗料と同様に、顔料分散ペーストとした後に塗料に混合することが好適である。
本発明のアニオン電着塗料には、塩基性化合物を、カルボキシル基含有樹脂の中和及び/又はアニオン電着塗料浴のpHの調整のために含有してもよい。具体的には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2-アミノプロパノール、3-アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ-n-又はジ-iso-プロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール等の第3級モノアミン;並びにジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。上記塩基性化合物の配合割合は、中和当量として0.1~1.2当量、好ましくは0.2~0.8当量の範囲が好ましい。
本発明のアニオン電着塗料は、界面活性剤を、前記カルボキシル基含有樹脂の水分散性及び/又は塗料安定性を向上するために用いることができる。具体的には、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性イオン系界面活性剤のいずれでも用いることができる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性イオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明のアニオン電着塗料を用いたアニオン電着塗装方法は、前記アニオン電着塗料からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陽極として通電する工程を含む。
<比較例1-1>
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1893.8部、多官能化剤α(多官能化剤)41.6部、化合物γ10.5部、ビスフェノールA603.5部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)283.2部を加え、160℃でエポキシ当量が592になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン386.4部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(溶媒10%含有。以下「90%品」という。)185.1部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-1)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-1)は、アミン価が92mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.15、平均多官能化濃度(Y1)が0.101、及び、溶解性パラメーター10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1898.7部、多官能化剤α(多官能化剤)83.0部、化合物γ21.0部、ビスフェノールA514.8部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)279.7部を加え、160℃でエポキシ当量が546になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン418.5部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)184.5部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-2)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-2)は、アミン価が98mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.30、平均多官能化濃度(Y1)が0.202、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1908.8部、多官能化剤α(多官能化剤)167.6部、化合物γ42.4部、ビスフェノールA333.7部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)272.5部を加え、160℃でエポキシ当量が468になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン482.9部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)186.1部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-3)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-3)は、アミン価が109mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.61、平均多官能化濃度(Y1)が0.407、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1914.7部、多官能化剤α(多官能化剤)219.6部、化合物γ55.6部、ビスフェノールA228部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)268.6部を加え、160℃でエポキシ当量が434になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン519.2部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)181.3部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-4)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-4)は、アミン価が115mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.81、及び、平均多官能化濃度(Y1)が0.533、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1927.7部、多官能化剤α(多官能化剤)353.5部、化合物γ89.5部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)0.9部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)263.4部を加え、160℃でエポキシ当量が393になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン564.4部及びジエチレントリアミンのケチミン化物187.1部(90%品)を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-5)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-5)は、アミン価が124mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が1.50、平均多官能化濃度(Y1)が0.858、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1928.0部、多官能化剤α(多官能化剤)386.6部、化合物γ97.9部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)268.0部を加え、160℃でエポキシ当量が428になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン524部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)183.0部を加え、120℃で3時間反応させた。
さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-6)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-6)は、アミン価が116mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が2.02、平均多官能化濃度(Y1)が0.939、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1928.4部、多官能化剤α(多官能化剤)424.9部、化合物γ107.6部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)273.4部を加え、160℃でエポキシ当量が475になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン475.5部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)183.2部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-7)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-7)は、アミン価が108mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が3.02、平均多官能化濃度(Y1)が1.032、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1925.8部、多官能化剤β(多官能化剤)431.2部、化合物γ56.0部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)268.1部を加え、160℃でエポキシ当量が429になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン523.5部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)182.8部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-8)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-8)は、アミン価が116mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が3.06、平均多官能化濃度(Y1)が1.129、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1928.7部、多官能化剤α(多官能化剤)447.5部、化合物γ113.3部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)276.6部を加え、160℃でエポキシ当量が507になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン445.3部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)188.0部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-9)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-9)は、アミン価が103mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が4.04、平均多官能化濃度(Y1)が1.087、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1929.1部、多官能化剤α(多官能化剤)485.3部、化合物γ122.8部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)281.9部を加え、160℃でエポキシ当量が569になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン399.1部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)183.6部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-10)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-10)は、アミン価が94mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が8.00、平均多官能化濃度(Y1)が1.179、及び、溶解性パラメーターが10.6であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1929.2部、多官能化剤α(多官能化剤)499.7部、化合物γ126.5部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)283.9部を加え、160℃でエポキシ当量が597になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン381.1部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)182.6部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-11)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-11)は、アミン価が91mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が12.04、平均多官能化濃度(Y1)が1.214、及び、溶解性パラメーターが10.5であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1651.5部、HMDIヌレート859.1部、DMBnAm(N,N-ジメチルベンジルアミン;触媒)5.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)273.9部を加え、160℃でエポキシ当量が537になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン424.5部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)187.2部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-12)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-12)は、アミン価が99mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が1.54、平均多官能化濃度(Y1)が0.677、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1846.4部、クルードMDI 413.2部、モノメリックMDI 262.0部、DMBnAm(N,N-ジメチルベンジルアミン;触媒)5.1部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)280.3部を加え、160℃でエポキシ当量が556になるまで反応させた後、さらにビスフェノールA47.0部を加え、160℃でエポキシ当量が623になるまで反応させた。得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン367.8部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)183.4部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-13)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-13)は、アミン価が89mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が1.52、平均多官能化濃度(Y1)が0.592、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1914.3部、ビスフェノールA609.7部、ジメチルベンジルアミン(触媒)3.8部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)280.4部を加え、160℃でエポキシ当量が555になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン410.9部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)187.5部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-14)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-14)は、アミン価が97mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.15、平均多官能化濃度(Y1)が0.121、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)2081.6部、ビスフェノールA292.1部、ジメチルベンジルアミン(触媒)3.6部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)263.7部を加え、160℃でエポキシ当量が397になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン560.4部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)190.0部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-15)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-15)は、アミン価が124mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が1.50、及び、平均多官能化濃度(Y1)が2.133、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1902.4部、多官能化剤α(多官能化剤)28.7部、化合物γ7.3部、ビスフェノールA585.2部、ジメチルベンジルアミン(触媒)3.8部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)280.4部を加え、160℃でエポキシ当量が554になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン411.6部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)186.9部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-16)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-16)は、アミン価が97mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.15、平均多官能化濃度(Y1)が0.115、及び、溶解性パラメーターが10.7であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1944.2部、多官能化剤α(多官能化剤)300.9部、化合物γ76.2部、ビスフェノールA69.7部、ジメチルベンジルアミン(触媒)3.6部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)265.7部を加え、160℃でエポキシ当量が410になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、ジエタノールアミン544.4部及びジエチレントリアミンのケチミン化物(90%品)186.0部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能のエポキシ樹脂(A-17)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-17)は、アミン価が120mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が1.51、平均多官能化濃度(Y1)が0.986、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物)1885.5部、ビスフェノールA757.8部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.1部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)293.0部を加え、160℃でエポキシ当量が775になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。
次いで、ジエタノールアミン291.7部及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物(90%品)187.1部を加え、120℃で4時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能ではない直鎖状のエポキシ樹脂溶液(A-18)を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-18)は、アミン価が76mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0、平均多官能化濃度(Y1)が0、及び、溶解性パラメーターが10.8であった。
(エポキシ化合物)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂
三菱ケミカル社製、商品名jER828EL(官能基数2、エポキシ当量187、重量平均分子量375)
・多官能化剤α
下記構造式(A)におけるp=q=r=0、R1=R2=R3=Hの化合物であって、nが1以上である化合物の合計量に対する各nの値の化合物の含有割合が表1で示される混合物。平均官能基数8.4、重量平均分子量878。
・多官能化剤β
下記構造式(A)におけるp=q=r=0、R1=R2=R3=Hの化合物であって、nが1以上である化合物の合計量に対する各nの値の化合物の含有割合が表1で示される混合物。平均官能基数11.37、重量平均分子量1193。
・クルードMDI:下記構造式(C)で表され、n≧1の整数であり、NCO官能基数4.46、重量平均分子量573の化合物
・化合物γ
下記構造式(B)で表され、s=t=0、R4=R5=Hの化合物(分子量200)
・ビスフェノールA
<顔料分散用樹脂の製造>
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、重量平均分子量350)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ダイセル化学工業社製商品名、ポリカプロラクトンジオール、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、90℃でエポキシ基が消失するまで反応させた。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂(R)を得た。
(顔料分散ペースト(P1))
固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂(R)8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー6.0部、カーボンブラック0.3部、水酸化ビスマス3部、及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペースト(P1)を得た。
(顔料分散ペースト(P2))
固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂(R)8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド2部、及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペースト(P2)を得た。
反応容器中に、コスモネートM-200(商品名、三井化学社製、クルードMDI、NCO基含有率31.3%)270部、及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネート化合物(BNCO(B1))を得た。
(アクリル樹脂No.1)
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下110℃に加熱保持した。
さらに下記モノマー混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下し、その後さらにt-ブチルパーオクトエート0.5部を滴下して110℃で1.5時間保持した。続いてメチルイソブチルケトンを混合して固形分50%に調整し、アクリル樹脂No.1溶液を得た。
得られたアクリル樹脂No.1は、重量平均分子量12000、アミン価71mgKOH/g、水酸基価43mgKOH/g、溶解性パラメーター10.5であった。
(モノマー混合物)
メチルメタクリレート 65部
2-エチルヘキシルメタクリレート 5部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート 20部
t-ブチルパーオクトエート 4部
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下110℃に加熱保持した。
さらに下記モノマー混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下し、その後さらにt-ブチルパーオクトエート0.5部を滴下して110℃で1.5時間保持した。続いてメチルイソブチルケトンを混合して固形分50%に調整し、アクリル樹脂No.2溶液を得た。
得られたアクリル樹脂No.2は、重量平均分子量12000、アミン価71mgKOH/g、水酸基価43mgKOH/g、溶解性パラメーター10.1であった。
(モノマー混合物)
メチルメタクリレート 30部
2-エチルヘキシルメタクリレート 35部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート 20部
t-ブチルパーオクトエート 4部
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下ロートを備え付けた反応容器に、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、窒素雰囲気下110℃に加熱保持した。
さらに下記モノマー混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下し、その後さらにt-ブチルパーオクトエート0.5部を滴下して110℃で1.5時間保持した。続いてメチルイソブチルケトンを混合して固形分50%に調整し、アクリル樹脂No.3溶液を得た。
得られたアクリル樹脂No.3は、重量平均分子量12000、アミン価71mgKOH/g、水酸基価43mgKOH/g、溶解性パラメーター9.7であった。
(モノマー混合物)
メチルメタクリレート 5部
2-エチルヘキシルメタクリレート 65部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート 20部
t-ブチルパーオクトエート 4部
実施例1-1で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂(A-2)100部(固形分)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(BNCO)(B1)45部(固形分)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に撹拌した後、脱イオン水を強く撹拌しながら約15分間を要して滴下して固形分34%のエマルションを得た。
次に、上記エマルション294部(固形分100部)、顔料分散ペースト(P1)52.4部及び脱イオン水を加え、固形分20%のカチオン電着塗料(X-2)を製造した。
カチオン電着塗料(X-2)の平均多官能化濃度(Y2)を表2に記載する。
得られたカチオン電着塗料を用いて電着塗装し、加熱硬化させて電着塗膜を得た。得られた電着塗膜について、仕上がり肌、防食性(塩水噴霧)、防食性(塩水浸漬)及び耐油ハジキ性を評価した。結果を併せて表2に記載する。
アミノ基含有エポキシ樹脂及び顔料分散ペーストを表2~表4のものとしたほかは実施例2-1と同様にして、平均多官能化濃度(Y2)が表2~表4に記載されるものであり、固形分20%のカチオン電着塗料(X-2)~(X-26)を製造した。なお、実施例2-12は、アミノ基含有エポキシ樹脂として、15部のA-5と85部のA-18を用いた例であり、実施例2-13は、アミノ基含有エポキシ樹脂として、40部のA-5と60部のA-18を用いた例である。実施例2-12及び2-13における平均多官能化濃度(Y2)は、2種類のエポキシ系樹脂を混合した平均を計算しており、単位はmmol/gである。
また、同様に実施例2-18~2-21及び比較例2-5のカチオン電着塗料においても、アミノ基含有エポキシ樹脂(A-5)とアクリル樹脂No.1~3を含有するものである。
得られたカチオン電着塗料を用いて電着塗装し、加熱硬化させて電着塗膜を得た。
電着塗膜の断面を観察したところ、全て一層型の塗膜(境界面なし)であった。
得られた電着塗膜について、仕上がり肌、防食性(塩水噴霧)、防食性(塩水浸漬)及び耐油ハジキ性を評価した。結果を併せて表2~表4に記載する。
本発明においては、4つの評価のうち1つでも不合格「C」であった場合は不合格となる。
なお、表中の樹脂含有量は全て固形分の値である。
(仕上り肌)
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が20μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。続いて上記試験板の塗面を、サーフテスト301(ミツトヨ社製商品名、表面粗度計)を用いて、JIS B 601に定義される、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定し、以下の基準で評価した。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:表面粗度値(Ra)が0.15未満。
A:表面粗度値(Ra)が0.15以上でかつ0.25未満。
B1:表面粗度値(Ra)が0.25以上でかつ0.35未満。
B2:表面粗度値(Ra)が0.35以上でかつ0.45未満。
C:表面粗度値(Ra)が0.45以上。
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が20μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。続いて上記試験板の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z-2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの片側での錆、フクレ幅によって下記の評価基準に基づき評価を行った。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mm以下であり、防食性が非常に優れている。
A:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mmを超え、かつ3.0mm以下であり、防食性が良好である。
B:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で3.0mmを超え、かつ4.0mm以下であり、防食性は標準である。
C:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で4.0mmを超えており、防食性が劣る。
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が20μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。続いて上記試験板を、50℃の濃度5重量%の塩水に600時間浸漬した後、試験板を引き上げ、塗膜表面の水分を拭き取り除去し、ついで、塗膜表面にセロハン粘着テープを密着させ、瞬時にテープを剥離した。この剥離試験によって塗膜の剥がれた割合(%)を評価した。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が5%未満。
A:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が5%以上で、かつ10%未満。
B:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が10%以上で、かつ20%未満。
C:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が20%以上。
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が20μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、ウェット膜を得た。
このウェット膜を水洗いし、30分間放置した後、焼付け過程で防錆用機械油(日本パーカライジング社製、商品名NOX-RUST320)0.2mlを均一に飛散付着させた。冷却後に塗膜表面を目視観察し、ハジキの個数及び大きさをカウントして、以下の評価基準に従って評価した。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:塗膜表面にクレータの発生が全くない。
A:塗膜表面に10個未満のクレータが発生。
B:塗膜表面に10個以上のクレータが発生(いずれも直径2mm未満の大きさ。)。
C:塗膜表面に10個以上のクレータが発生(1個以上が直径2mm以上の大きさ。)。
本発明では、多官能化剤として、構造式(A)における「p=q=r=0、R1=R2=R3=H」の化合物(多官能化剤αと多官能化剤β)を実施例で使用しているが、例えば、「p=q=r=1、R1=R2=R3=メチル基(-CH3)」においても同等の性能を有することが確認できており、好適に使用することができる。
Claims (16)
- 下記エポキシ系樹脂1又はエポキシ系樹脂2と、アミン化合物とを反応させて得られる、アミノ基含有エポキシ樹脂。
<エポキシ系樹脂1>
エポキシ基を2つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
<エポキシ系樹脂2>
エポキシ基を2つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上であり、かつ、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)÷エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw×1000 - 下記エポキシ系樹脂1、エポキシ系樹脂2、又はそれらの変性物のいずれかが、水性媒体に分散された、水性樹脂分散体。
<エポキシ系樹脂1>
エポキシ基を2つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
<エポキシ系樹脂2>
エポキシ基を2つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上であり、かつ、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)÷エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw×1000 - 下記エポキシ系樹脂1、エポキシ系樹脂2、又はそれらの変性物のいずれかと、硬化剤とを含有する、アニオン電着塗料。
<エポキシ系樹脂1>
エポキシ基を2つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
<エポキシ系樹脂2>
エポキシ基を2つ以上有する化合物と、
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物と、
を少なくとも反応させて得られたエポキシ系樹脂であって、
下記式(1)で示されるエポキシ系樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.30以上であり、かつ、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、エポキシ系樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数-2
(式(1)中、「エポキシ系樹脂の1分子当たりの末端数」は、エポキシ系樹脂1分子における、エポキシ基を有する末端の数及びエポキシ基と反応する官能基を有する末端の数である。)
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=エポキシ系樹脂の平均多官能化度(X1)÷エポキシ系樹脂の重量平均分子量Mw×1000 - 前記エポキシ基と反応する官能基を有する化合物が、3価以上のフェノール系化合物及び/又は3官能以上のポリイソシアネートを含む化合物である、請求項1に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂。
- 前記エポキシ基と反応する官能基を有する化合物が、3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物をさらに含む、請求項4又は5に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂。
- 前記3官能以上のポリイソシアネートが、イソシアヌレート型イソシアネート及び/又はクルードMDIである、請求項4~7のいずれか1項に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂。
- 請求項1、4~8のいずれか1項に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する、カチオン電着塗料。
- 請求項1、4~8のいずれか1項に記載のアミノ基含有エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する、一層型のカチオン電着塗料。
- 前記エポキシ基を2つ以上有する化合物が、アミン変性されていない化合物である、請求項9又は10に記載のカチオン電着塗料。
- 前記アミノ基含有エポキシ樹脂が、エポキシ基を2つ以上有する化合物と、3価以上のフェノール系化合物を含む化合物と、3価以上のフェノール系化合物以外の1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物と、を反応させて得られる、請求項9~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
- 前記3官能以上のポリイソシアネートが、イソシアヌレート型イソシアネート及び/又はクルードMDIである、請求項9~11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。
- さらにアクリル樹脂を含有し、
該アクリル樹脂の含有量が、全てのエポキシ樹脂とアクリル樹脂の合計量を100質量%とした場合に30質量%未満であり、
該アクリル樹脂とエポキシ樹脂のSP値の差が絶対値で1.0未満である、請求項9~14のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料。 - 請求項9~15のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装して得られる塗装物品。
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