JP6995076B2 - カチオン電着塗料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、カチオン電着塗料組成物に関する。
従来から、カチオン電着塗料は塗装作業性が優れ形成した塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される自動車部品、電気機器部品及びその他の工業用機器等に広く利用されている。
一般に、カチオン電着塗料組成物は、カチオン性樹脂(例えば、アミノ基含有エポキシ樹脂等)と硬化剤(架橋剤ともいう。例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物等)からなる樹脂成分、および顔料分散樹脂で分散された顔料を含む顔料分散ペーストを含有している。この塗料組成物を塗装浴に用い、被塗物を陰極、また対極を陽極として通電し、被塗物上に析出塗膜を形成させた後、該析出塗膜を加熱することによって、架橋硬化された塗膜が形成される。
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、常温では樹脂と反応しないが、加熱されることでブロック剤が解離してイソシアネート基を再生し、活性水素を有する樹脂との架橋反応が進むものである。このため、可使時間に制限がなく、一液型塗料とすることができ、さらに活性水素を有する水やアルコールを媒体とする水性塗料への適用も可能となっている。
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物に用いられるブロック剤としては、フェノール系化合物、カプロラクタム系化合物、オキシム系化合物、活性メチレン系化合物、ピラゾール系化合物等の化合物が知られており、また、該ブロック剤の解離触媒としては、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドなどの有機錫化合物が一般的に用いられてきた。
しかし、有機錫化合物は、その触媒性能は非常に高いものの、近年その毒性が問題となっているため、有機錫化合物に代わる触媒が求められてきた。その代替品として、ビスマス系触媒、または亜鉛系触媒などの触媒が開発されている(特許文献1、特許文献2)。
特開2000-290542号公報 特開2012-152725号公報
しかし、従来のカチオン電着塗料組成物はいずれも錫系触媒を含むため、環境面の問題があった。また、金属系触媒はそれぞれが高価であったり、触媒効果が不十分であったり、塗料中で不安定であるという問題もあった。
本発明が解決しようとする課題は、実質的に錫系触媒以外の触媒を用い、硬化性、防食性及び仕上がり性を備えたブロック化ポリイソシアネート系の新規カチオン電着塗料組成物を提供することである。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、特定のイミダゾール変性物(C)並びに防錆剤(D)を用いてカチオン電着塗料組成物を作製することにより上記課題を解決できることを見いだした。従って、本発明は、以下の項を提供する:項1.アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、下記式(1)で示されるイミダゾール変性物(C)、及び防錆剤(D)を含有するカチオン電着塗料組成物。
Figure 0006995076000001
(式中、R、R、R及びRは同一でも異なっていても良く、水素原子又は炭素数1以上の有機基であり、該有機基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。また、R、R、R及びRのうち2種以上が互いに繋がって環状構造になっていてもよい。Xは酸素原子又は窒素原子であり、Xが酸素原子の場合、Yは存在せず、nは1である。Xが窒素原子の場合、Yは有機基であり、nは1以上の整数である。)
項2.カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、イミダゾール変性物(C)を0.01~10質量%含有する前記項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
項3.カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、防錆剤(D)を0.01~10質量%含有する前記項1又は2に記載のカチオン電着塗料組成物。
項4.前記項1~3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴に金属被塗物を浸漬し、電着塗装する塗装方法。
項5.前記項4に記載の塗装方法によって塗膜を形成し、次いで加熱硬化する工程を含む塗装物品の製造方法。
本発明によれば、実質的に錫系触媒以外の触媒を用い、硬化性、防食性及び仕上がり性を備えたブロック化ポリイソシアネート系の新規カチオン電着塗料組成物を提供することができる。
本発明は、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、特定のイミダゾール変性物(C)、及び防錆剤(D)を含有するカチオン電着塗料組成物に関する。以下、詳細に述べる。
本明細書において、アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチルプロピル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
本明細書において、アルケニル基としては、例えば、二重結合を少なくとも1個含む、炭素数1~10の直鎖状若しくは分枝状のアルケニル基が挙げられる。二重結合の数は、例えば1~2個、又は1個であり得る。より具体的には、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ペンテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1-ヘプテニル基、2-オクテニル基、3-ノネニル基、1-デセニル基等が挙げられる。
本明細書において、アルキニル基としては、例えば、三重結合を少なくとも1個含む、炭素数1~10の直鎖状若しくは分枝状のアルキニル基が挙げられる。三重結合の数は、例えば1~2個、又は1個であり得る。より具体的には、アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘプチニル基、2-オクチニル基、4-ノニニル基、6-デシニル基等が挙げられる。
本明細書において、シクロアルキル基としては、例えば、炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられる。より具体的には、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
本明細書において、シクロアルキルアルキル基としては、例えば、前述したアルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基等)であるアルキル部分に、前述したシクロアルキル基(炭素数3~10のシクロアルキル基等)であるシクロアルキル部分が1個結合した基であるシクロアルキルアルキルが挙げられる。より具体的には、シクロアルキルアルキル基としては、シクロプロピルメチル基、10-シクロプロピルデシル基、8-シクロブチルノニル基、3-シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、2-シクロオクチルエチル基、2-シクロノニルエチル基、シクロデシルメチル基等が挙げられる。
本明細書において、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
本明細書において、アルコキシ基としては、例えば、前述したアルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基等)が結合したオキシ基が挙げられる。より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-イソペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、アルコキシアルキル基としては、例えば、前記のアルコキシ基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルコキシ基等)を1個又は複数個有する前記のアルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基等)が挙げられる。より具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、デシルオキシメチル基、n-プロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、2-メトキシエチル基、1-メトキシ-n-プロピル基、3-メトキシ-n-プロピル基、2-エトキシ-n-ブチル基、4-メトキシ-n-ブチル基、5-メトキシ-n-ペンチル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基、7-メトキシ-n-ヘキシル基、8-メトキシ-n-オクチル基、9-メトキシ-n-ノニル基、10-メトキシ-n-デシル等が挙げられる。
本明細書において、チオアルコキシ基としては、例えば、前述したアルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基等)が結合したチオ基が挙げられる。より具体的には、チオメトキシ基、チオエトキシ基、n-チオプロポキシ基、チオイソプロポキシ基、n-チオブトキシ基、イソチオブトキシ基、tert-チオブトキシ基、n-チオペンチルオキシ基、n-イソチオペンチルオキシ基、n-チオヘキシルオキシ基、n-チオオクチルオキシ基、n-チオノニルオキシ基、n-チオデシルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、チオアルコキシアルキル基としては、例えば、前記のチオアルコキシ基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のチオアルコキシ基等)を1個又は複数個有する前記のアルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1~10のアルキル基等)が挙げられる。より具体的には、チオメトキシメチル基、チオエトキシメチル基、チオデシルオキシメチル基、n-チオプロポキシメチル基、n-チオブトキシメチル基、2-チオメトキシエチル基、1-チオメトキシ-n-プロピル基、3-チオメトキシ-n-プロピル基、2-チオエトキシ-n-ブチル基、4-チオメトキシ-n-ブチル基、5-チオメトキシ-n-ペンチル基、6-チオチオメトキシ-n-ヘキシル基、7-チオメトキシ-n-ヘキシル基、8-チオメトキシ-n-オクチル基、9-チオメトキシ-n-ノニル基、10-チオメトキシ-n-デシル等が挙げられる。
本明細書において、アリール基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、テトラヒドロナフチル基等が挙げられる。
本明細書において、アラルキル基としては、例えば、前記のアリール基を1個又は2個以上有する前記のアルキル基が挙げられる。より具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ナフチルメチル基、フルオレニルメチル基等が挙げられる。
本明細書において、複素環基としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択されるヘテロ原子を1個又は複数個(1~3個等)含む、単環式若しくは多環式の飽和又は不飽和の複素環基が挙げられる。より具体的には、モルホリノ基、ピロリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフェニル基、チアゾリジニル基、オキサゾリジニル基、イミダゾリル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、トリアゾロピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、メチレンジオキシフェニル基、ジヒドロチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられる。
本明細書において、モノ又はジ-アルキルアミノ基としては、例えば、前述したアルキル基が1個又は2個結合したアミノ基が挙げられる。より具体的には、N-メチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N-メチル-N-エチルアミノ基、N,N-ジ-n-プロピルアミノ基、N,N-ジイソプロピル基、N,N-ジ-n-ブチルアミノ基、N-sec-ブチルアミノ基、N-イソブチルアミノ基、N-tert-ブチルアミノ基、N,N-ジ-1-メチルプロピルアミノ基、N,N-ジ-n-ペンチルアミノ基、N,N-ジ-イソペンチルアミノ基、N-tert-ペンチルアミノ基、N,N-ジ-n-ヘキシルアミノ基、N-1,1-ジメチルプロピルアミノ基、N,N-ジ-n-ヘプチルアミノ基、N,N-ジ-n-オクチルアミノ基、N,N-ジ-2-エチルヘキシルアミノ基、N,N-ジ-n-ノニルアミノ基、N,N-ジ-n-デシルアミノ基等が挙げられる。
本明細書において、モノ又はジ-アルキルカルバモイルアミノ基としては、例えば、前述したアルキル基が1個又は2個結合したカルバモイル基が1個結合したアミノ基が挙げられる。より具体的には、(N-メチルカルバモイル)アミノ基、N,N-ジエチルカルバモイルアミノ基、(N-メチル-N-エチルカルバモイル)アミノ基、N,N-ジ-n-プロピルカルバモイルアミノ基、N,N-ジイソプロピルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-n-ブチルカルバモイルアミノ基、(N-sec-ブチルカルバモイル)アミノ基、(N-イソブチルカルバモイル)アミノ基、(N-tert-ブチル)カルバモイルアミノ基、N,N-ジ-1-メチルプロピルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-n-ペンチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-イソペンチルカルバモイルアミノ基、(N-tert-ペンチルカルバモイル)アミノ基、N,N-ジ-n-ヘキシルカルバモイルアミノ基、N-1,1-ジメチルプロピルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-n-ヘプチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-2-エチルヘキシルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-n-ノニルカルバモイルアミノ基、N,N-ジ-n-デシルカルバモイルアミノ基等が挙げられる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59-43013号公報参照)等を挙げることができる。
上記のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は、少なくとも300、好ましくは400~4,000、さらに好ましくは800~2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180~2,500、さらに好ましくは400~1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるものを使用することができる。
上記エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹
脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
Figure 0006995076000002
ここで、n=0~8で示されるものが好適である。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
また、上記エポキシ樹脂としては、樹脂骨格中にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ樹脂を使用することができる。通常、このようなエポキシ樹脂は、(α)エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するエポキシ樹脂と、アルキレンオキシド又はポリアルキレンオキシドを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法、(β)上記ポリフェノール化合物と、エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するポリアルキレンオキシドとを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法などにより得ることができる。また、既にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ樹脂を用いても良い。(例えば、特開平8-337750号 明細書参照)
ポリアルキレンオキシド鎖中のアルキレン基としては、炭素数が2~8のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基がより好ましく、プロピレン基が特に好ましい。
上記のポリアルキレンオキシド鎖の含有量は、塗料安定性、仕上り性及び防食性向上の観点から、アミノ基含有エポキシ樹脂の固形分質量を基準にして、ポリアルキレンオキシドの構成成分としての含有量で、通常1.0~15質量%、好ましくは2.0~9.5質量%、より好ましくは3.0~8.0質量%の範囲内が適当である。
上記(1)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用される第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ-もしくはジ-アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
上記(2)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ-及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1、2級混合ポリアミンのうち、例えば、ジエチレントリアミンなどにケトン化合物を反応させて生成させたケチミン化物を挙げることができる。
上記(3)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用される第1級モノ-及びポリアミン、第2級モノ-及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物、例えば、モノエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミンなどにケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
このようなアミノ基含有エポキシ樹脂(A)のアミン価としては、30~80mgKOH/g樹脂固形分の範囲、さらには40~70mgKOH/g樹脂固形分の範囲とすることが、水分散性と防食性向上の点から好ましい。
またアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、必要に応じて、変性剤により変性を図ることができる。このような変性剤は、エポキシ樹脂との反応性を有する樹脂又は化合物であれば特に限定されず、例えばポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、脂肪酸、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物を反応させた化合物、ε-カプロラクトンなどのラクトン化合物、アクリルモノマー、アクリルモノマーを重合反応させた化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物、エポキシ化合物も変性剤として用いることができる。これらの変性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
これらのうち、変性剤としては、特につきまわり性及び/又は防食性の観点から、少なくとも1種の飽和及び/又は不飽和脂肪酸を用いることが好ましい。使用しうる脂肪酸としては、炭素数8~22の長鎖脂肪酸が好ましく、例えば、カプリル酸、カプリン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。中でも、炭素数10~20の長鎖脂肪酸がより好ましく、炭素数13~18の長鎖脂肪酸がさらに好ましい。
上記のアミン化合物と変性剤のエポキシ樹脂への付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80~約170℃、好ましくは約90~約150℃の温度で1~6時間程度、好ましくは1~5時間程度で行なうことができる。
上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記の変性剤の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、仕上り性及び防食性向上の観点から、アミノ基含有エポキシ樹脂の固形分質量を基準にして、通常0~50質量%、好ましくは3~30質量%、より好ましくは6~20質量%の範囲内が適当である。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)としては、ポリイソシアネート化合物(b-1)とブロック剤(b-2)との付加反応生成物である。また、必要に応じて、ブロック剤(b-2)以外の活性水素含有化合物を用い、ブロック剤(b-2)と共にポリイソシアネート化合物(b-1)と反応することができる。
上記ポリイソシアネート化合物(b-1)としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
一方、前記ブロック剤(b-2)は、ポリイソシアネート化合物(b-1)のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、付加によって生成するブロック化ポリイソシアネート化合物(B)は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(例えば、約80~約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
上記ブロック剤(b-2)としては、例えば、オキシム系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、ラクタム系化合物、活性メチレン系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、イミド系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、カルバミン酸エステル系化合物、イミン系化合物、亜硫酸塩系化合物等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
オキシム系化合物としては、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどが挙げられる。フェノール系化合物としては、フェノール、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどが挙げられる。アルコール系化合物としては、n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどが挙げられる。ラクタム系化合物としては、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムなどが挙げられる。活性メチレン系化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸イソプロピル、アセチルアセトンなどが挙げられる。ピラゾール系化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、メチル-5-メチルピラゾール-3-カルボキシレート、3-メチル-5-フェニルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール-4-カルボキシアニリドなどが挙げられる。メルカプタン系化合物としては、ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどが挙げられる。酸アミド系化合物としては、アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどが挙げられる。イミド系化合物としては、コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。アミン系化合物としては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2-エチルイミダゾールなどが挙げられる。尿素系化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などが挙げられる。カルバミン酸エステル系化合物としては、N-フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。イミン系化合物としてはエチレンイミン、プロピレンイミンなどが挙げられる。亜硫酸塩系化合物としては、重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどが挙げられる。
イミダゾール変性物(C)
上記イミダゾール変性物(C)は、下記式(1)で示される化合物である。
Figure 0006995076000003
(式中、R、R、R及びRは同一でも異なっていても良く、水素原子又は炭素数1以上の有機基であり、該有機基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。また、R、R、R及びRのうち2種以上が互いに繋がって環状構造になっていてもよい。Xは酸素原子又は窒素原子であり、Xが酸素原子の場合、Yは存在せず、nは1である。Xが窒素原子の場合、Yは有機基であり、nは1以上の整数である。)
、R、R及び/又はRが有機基である場合、当該有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、複素環基等の一価の有機基を挙げることができる。
Xは窒素原子であることが好ましく、Xが窒素原子である場合、Yで示される有機基としては、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。当該アリール基としては、前述したものが挙げられるが、フェニル基、ナフチル基等が好ましく、フェニル基がより好ましい。当該アラルキル基としては、前述したものが挙げられるが、フェニルアルキル基、ナフチルアルキル基等が好ましく、フェニルアルキル基がより好ましい。Yで示されるアリール基又はアラルキル基は、置換基を有していても、無置換でもよい。Yで示されるアリール基又はアラルキル基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、ハロゲン(好ましくは、塩素又はフッ素、より好ましくは塩素)、アルキル基等が挙げられる。アリール基又はアラルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は限定されないが、例えば、1~3個、好ましくは1~2個である。Yで示されるアリール基又はアラルキル基が2個以上の置換基を有する場合、置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
Yとしては、例えば、芳香族環を1個又は2個以上有する炭化水素基等が挙げられ、例えば、下記式(2)で表される2価の基が挙げられる。
Figure 0006995076000004
[式中、R及びRは同一又は異なって、水素又はアルキル基を示す。pは0以上の整数を示す。]
及び/又はRがアルキル基である場合、例えば、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3、より好ましくは炭素数1~2、より好ましくは炭素数1のアルキル基が挙げられる。R及びRは同一又は異なってもよいが、同一であることが好ましい。
pは0以上の整数であり、好ましくは1~4である。pが2以上の場合、複数の基
Figure 0006995076000005
[式中、R及びRは前記の通り。]
は、同一でも異なっていてもよい。また、式(2)における上記部分は、パラ位置で窒素と結合すること、従って、下記構造を示すことが好ましい。
Figure 0006995076000006
式中、R及びRは前記の通り。]
また、式(2)における
Figure 0006995076000007
の部分もパラ位置で窒素と結合すること、従って、下記構造を示すことが好ましい。
Figure 0006995076000008
また、Yとしては、例えば、下記式(3)で表される基が挙げられる。
Figure 0006995076000009
[式中、R、R10、及びR11は同一又は異なって、炭素数1以上の有機基であり、該有機基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。s及びtは、0又は1であり、s及び/又はtが0の場合、
Figure 0006995076000010
部分は、水素原子を示す。q、r、u、v及びwは、それぞれ独立して0~4の整数を示す。また、qが0の場合、s又はtの少なくともいずれか1つは1である。]。
当該実施形態において、上記式(3)で表される基は、3価以上の基であること、すなわち、上記式(3)において、s、t及びqの合計が3以上であることが好ましい。
本実施形態において、R、R10、及びR11で示される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、モノ又はジ-アルキルアミノ基(好ましくは、ジアルキルアミノ基)、モノ又はジ-アルキルカルバモイルアミノ基(好ましくは、ジアルキルカルバモイルアミノ基)等が挙げられる。
また、本発明の別の実施形態においては、R、R、R、R及びYのうち2種以上(典型的にはR、R、R、及びRのうち隣り合う2つ)が互いに繋がって環状構造になっていてもよい。
例えば、R、Rが互いに繋がって環状構造となる場合、下記式(4)のような構造を取りうる。
Figure 0006995076000011
[式中、R、R及びYは前記の通り。R12、R13、R14及びR15は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1以上の有機基であり、該有機基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。]。
当該実施形態において、R12、R13、R14及び/又はR15が有機基である場合、当該有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、複素環基等の一価の有機基を挙げることができる。
また、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15及びYが有機基である場合、当該有機基は、樹脂であってもよい。かかる樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂等が挙げられる。かかる実施形態において、R、R、R、R及びYにより示される樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは、300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは800以上である。
イミダゾール変性物(C)は、水溶性の低いもの、典型的には、水に溶解しないものを用いるのが好ましい。そのため、式(1)において、R、R、R、R、及びYから選ばれる少なくとも1種が、炭素数6以上の有機基であることが好ましく、炭素数8以上の有機基であることがより好ましく、炭素数21以上の有機基であることが更に好ましい。
一つの実施形態では、Yが炭素数21以上の有機基である。
別の実施形態では、R又はRが炭素数6~18(好ましくは6~12)の有機基であり、有機基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、又は複素環基である。
別の実施形態では、R及びRの一方が炭素数1~5の有機基であり、R及びR4の他方が炭素数6~18(好ましくは6~12)の有機基であり、Rの有機基及びRの有機基は独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、又は複素環基である。
別の実施形態では、R及びRの一方が炭素数1~5の有機基であり、R及びR4の他方が炭素数6~18(好ましくは6~12)の有機基であり、Rの有機基及びRの有機基は独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、又は複素環基であり、R及びRは水素である。
別の実施形態では、R及びRが炭素数6~18(好ましくは6~12)の有機基であり、Rの有機基及びRの有機基は独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、又は複素環基である。
別の実施形態では、R及びRが炭素数6~18(好ましくは6~12)の有機基であり、Rの有機基及びRの有機基は独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アルコキシアルキル基、チオアルコキシアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アラルキル基、又は複素環基であり、R及びRは水素である。
また、イミダゾール変性物(C)は、電荷を均衡にさせるため、同一分子内で対イオンを有することが好ましい。
イミダゾール変性物(C)の製造方法としては、例えば、以下の方法を採りうる。
式(1)中、Xが酸素原子である場合のイミダゾール変性物(C)(以下、イミダゾール変性物(C1)という)の製造方法:
下記式(5)
Figure 0006995076000012
[式中、R、R及びRは前記の通り。]
で表される含窒素有機化合物(以下、含窒素有機化合物(5)という。)と下記式(6)
Figure 0006995076000013
[式中、Rは前記の通り。]
で表される炭酸ジアルキル(6)(以下、炭酸ジアルキル(6)という。)とを反応させて、式(7)
Figure 0006995076000014
[式中、R、R、R、及びRは前記の通り。]
で表されるイミダゾール変性物(C1)を製造することができる。
含窒素有機化合物(5)として、好ましくは、1-メチルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-オクチルイミダゾール等が挙げられる。
炭酸ジアルキル(6)として好ましくは、炭酸ジメチル等が挙げられる。炭酸ジアルキル(6)の使用量は、含窒素有機化合物(5)1モルに対して通常1モル以上、好ましくは1~6モルである。
溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エトキシエタノール等の1価のアルコール溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオール溶媒、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル溶媒等が挙げられ、好ましくは1価のアルコール溶媒であり、特に好ましくはメタノールである。溶媒の使用量は、含窒素有機化合物(5)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
反応終了後は、反応液を濃縮し、溶媒を除去してイミダゾール変性物(C1)を単離できる。反応液中に未反応の含窒素有機化合物(5)及び炭酸ジアルキル(6)が残存している場合、反応液を濃縮することでこれらを除去することもできる。
式(1)中、Xが窒素原子である場合のイミダゾール変性物(C)(以下、イミダゾール変性物(C2)という)の製造方法:
下記式(8)
Figure 0006995076000015
[式中、Y及びnは式(1)に関して前述した通り。]
で表されるイソシアネート化合物(以下、イソシアネート化合物(8)という。)と前記イミダゾール変性物(C1)とを反応させて、式(9)
Figure 0006995076000016
[式中、R、R、R、R、Y及びnは式(1)に関して前述した通り。]
で表されるイミダゾール変性物(C2)を製造することができる。
本発明の1つの実施形態において、イミダゾール変性物(C2)のうち一部の化合物については、下記式(8’)
Figure 0006995076000017
[式中、Zは2価の有機基であり、mは1以上の整数である。nは式(1)に関して前述した通り。Zの有機基はそれ自体既知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、直鎖状、分岐状、及び/又は環状のアルキレン基などが挙げられる。]
で表されるイソシアネート化合物(以下、イソシアネート化合物(8’)という。)と前記イミダゾール変性物(C1)とを反応させる方法であって、当該反応の前、後及び/又はこれと同時に、さらに、イソシアネート基と反応するイミダゾール変性物(C1)以外の化合物(C3)(以下、化合物(C3)と示す)とを反応させて、下記式(9’)
Figure 0006995076000018
[式中、R、R、R、R、Z、m及びnは前記の通り。Aは、化合物(C3)に由来する有機基を示す。mが2以上の場合、Aは同一でも異なっていてもよい]
で表されるイミダゾール化合物(C2’)を得る方法によっても製造することができる。
上記イソシアネート化合物(8)及びイソシアネート化合物(8’)は、1分子中に1個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
1分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリレンイソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物の誘導体等を挙げることができる。
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4’-、2,4’-または2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-またはp-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
なかでも、1分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、フェニルイソシアネートが好ましい。1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDI又はクルードMDIがより好ましい。
これらのイソシアネート化合物(8)としては、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記式中、Aで示される有機基としては、モノ又はジ-アルキルアミノ基等が挙げられる。
イミダゾール変性物(C1)の使用量は、イソシアネート化合物(8)に含まれるイソシアネート基1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは1~3モルである。
溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、炭化水素溶媒が好適に使用される。炭化水素溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタン等の脂肪族ないし脂環式炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒等が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素溶媒及びハロゲン化芳香族炭化水素溶媒であり、特に好ましくはトルエン、キシレン及びクロロベンゼンである。溶媒は必要に応じて2種以上を混合して使用することもできる。
イミダゾール変性物(C1)として、含窒素有機化合物(5)と炭酸ジアルキル(6)との反応で得られた反応液を使用する場合、当該反応液中の溶媒をそのままイソシアネート化合物(8)とイミダゾール変性物(C1)との反応の溶媒として使用することができる。その際、必要に応じて溶媒を追加して反応を行っても良い。
溶媒を使用する場合、使用される溶媒の使用量は、イミダゾール変性物(C1)1質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは0.1質量部以上35質量部以下である。
反応温度は、特に制限されないが、溶媒の沸点以下であればよく、通常10℃以上、好ましくは40~200℃、特に好ましくは80~150℃である。
必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
反応終了後は、反応液を濃縮又はろ過により溶媒を除去することにより、イミダゾール変性物(C2)を得ることができる。また、得られたイミダゾール変性物(C2)は、再結晶等の方法により精製することができる。
防錆剤(D)
本発明のカチオン電着塗料に用いる防錆剤(D)として、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Al、Biからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属化合物を用いることができる。
具体的には、Ba系としては、リン酸バリウム、亜リン酸バリウムが挙げられる。Mg系としては、亜リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛マグネシウムが挙げられる。Ca系としては、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウムなどが挙げられ、MC-400WR、MC-400WZ(以上、キクチカラー社製、商品名、モリブデン酸カルシウム)、NP-1020C(東邦顔料、商品名、亜リン酸カルシウム)がある。Sr系としては、リン酸ストロンチウム、亜リン酸ストロンチウムが挙げられる。Zn系としては、亜リン酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化亜鉛が挙げられ、YM102NS(太平化学社製、商品名、亜リン酸亜鉛ストロンチウム)、P-W-2(キクチカラー社製、商品名、リン酸亜鉛)、ZP600(キクチカラー社製、商品名、亜リン酸亜鉛)などがある。Al系としては、亜リン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムが挙げられ、PM-303W(キクチカラー社製、商品名、リンモリブデン酸アルミニウム)、K-G105W、K-140W、K-84(以上、テイカ社製、商品名、トリポリリン酸アルミニウム)などがある。Bi系としては、無機系ビスマス含有化合物及び有機系ビスマス含有化合物が使用できる。無機系としては、ケイ酸ビスマス、水酸化ビスマス、三酸化ビスマス、硝酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマスなどがあげられる。このうち水酸化ビスマスが特に好適である。有機系としては、例えば、乳酸ビスマス、トリフェニルビスマス、没食子酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、酢酸ビスマス、ぎ酸ビスマス、2,2-ジメチロ-ルプロピオン酸ビスマスなどが挙げられる。
また、防錆剤(D)としては、上記に挙げた金属の複合金属化合物(2種類以上の金属を含む化合物)も好適に用いることができる。
これらの金属化合物は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができ、なかでも、防食性能と硬化性の観点からビスマス化合物を用いることが好ましい。
カチオン電着塗料組成物について
本発明のカチオン電着塗料組成物におけるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、及びブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の配合割合としては、上記成分(A)及び(B)の樹脂固形分合計質量100部を基準にして、成分(A)の固形分を50~90質量部、好ましくは55~85質量部、成分(B)の固形分を10~50質量部、好ましくは15~45質量部の範囲内であることが、塗料安定性が良好で、仕上がり性、防食性に優れた塗装物品を得る為にも好ましい。また、イミダゾール変性物(C)の配合割合としては、例えば、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、0.01~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.5~6質量%がさらに好ましい。また、防錆剤(D)の配合割合としては、例えば、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、0.01~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.5~6質量%がさらに好ましい。
イミダゾール変性物(C)と防錆剤(D)の合計量としては、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、0.02~15質量%が好ましく、0.2~12質量%がより好ましく、0.5~9質量%がさらに好ましい。
また、塗料中に含まれる樹脂全体のアミン価としては、樹脂固形分を基準として、アミン価が、通常20~100mgKOH/gの範囲内であり、25~90mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
配合割合や樹脂全体のアミン価が上記範囲を外れると、上記の塗料特性及び塗膜性能のいずれかを損うことがあり好ましくない。
本発明のカチオン電着塗料組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記樹脂(A)、及び化合物(B)、界面活性剤や表面調整剤等の各種添加剤を十分に混合して調合樹脂とした後、水分散化し、これに顔料分散ペースト、水や有機溶剤、中和剤などを十分に混合して得ることができる。上記中和剤としては、公知の有機酸を特に制限なく用いることができ、なかでもギ酸、乳酸、酢酸又はこれらの混合物が好適である。
イミダゾール変性物(C)に関しては、樹脂(A)、及び化合物(B)と共に水分散化しても良く、または顔料及び顔料分散樹脂と共に分散して顔料分散ペーストとして塗料に混合しても良い。
上記の顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤及び顔料を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製できる。
上記顔料分散用樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば水酸基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂、界面活性剤等、3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂、3級アミン型アクリル樹脂、4級アンモニウム塩型アクリル樹脂、3級スルホニウム塩型アクリル樹脂などを使用できる。
上記顔料としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料を添加することができる。
また、塗膜硬化性の向上を目的として、必要に応じて有機系触媒など公知の硬化触媒を使用することができる。
塗膜形成方法
本発明は、前述のカチオン電着塗料組成物からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陰極として通電する工程を含む、カチオン電着塗膜の形成方法を提供する。また、本発明は、前述のカチオン電着塗料組成物からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を通電して該被塗物に塗膜を形成する工程を含む、塗装物品の製造方法を提供する。
本発明のカチオン電着塗料組成物の被塗物としては、自動車ボディ、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属であれば特に制限はない。
被塗物としての金属鋼板としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
カチオン電着塗料組成物は、カチオン電着塗装によって所望の被塗物基材表面に塗装することができる。カチオン電着方法は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度が約5~40質量%とし、好ましくは10~25質量%とし、さらにpHを4.0~9.0、好ましくは5.5~7.0の範囲内に調整したカチオン電着塗料組成物を浴として、通常、浴温15~35℃に調整し、負荷電圧100~400V好ましくは150~350Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行う。電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5~40μm、好ましくは10~30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、通常100~200℃、好ましくは110~180℃の焼付け温度にて、時間としては10~180分間、好ましくは20~50分間、電着塗膜を加熱して行う。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
各種樹脂の重合方法、塗料の製造方法、評価試験方法などは当該技術分野で従来公知の方法を用いている。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能である。
各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
アミノ基含有エポキシ樹脂の製造
製造例1
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量350)1200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。
次に、ジエタノールアミン160部及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル480gを加え、固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂A-1溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂A-1は、アミン価59mgKOH/g、数平均分子量2100であった。
ブロック化ポリイソシアネート化合物の製造
製造例2
反応容器中に、コスモネートM-200(商品名、三井化学社製、クルードMDI、NCO基含有率 31.3%)270部、及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネートB-1を得た。
顔料分散用樹脂の製造
製造例3
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量350)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(商品名、ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、重量平均分子量約1250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、90℃でエポキシ基が消失するまで反応させた。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂を得た。
イミダゾール変性物の製造
製造例4 イミダゾール変性物C-1の製造
Figure 0006995076000019
窒素置換した500mLのオートクレーブに1-メチルイミダゾール82.1g(1.0mol)、炭酸ジメチル119.8g(1.0mol)及びメタノール83.1gを仕込み、120℃で22時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却後、減圧乾燥した。得られた白色固体をトルエンで洗浄後、減圧乾燥し、上記式(10)で表されるイミダゾール変性物C-1(1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート)を47.8g得た(収率34%)。また、本組成物は水に溶解した。
製造例5 イミダゾール変性物C-2の製造
Figure 0006995076000020
窒素置換した180mLのオートクレーブに1-ブチルイミダゾール25.9g(0.2mol)、炭酸ジメチル25.0g(0.3mol)、メタノール26.2gを仕込み、125℃で19時間撹拌後、更に130℃で4時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却し、上記式(11)で表されるイミダゾール変性物C-2をメタノール溶液として73.0g得た(イミダゾール変性物C-2純分34.3g、収率95%)。また、本組成物は水に溶解した。
製造例6 イミダゾール変性物C-3の製造
Figure 0006995076000021
窒素置換した3つ口フラスコに製造例4で得られたイミダゾール変性物C-1(1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート)3.0g(21mmol)、トルエン100mL及びフェニルイソシアネート2.5g(21mmol)を仕込み、110℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却後、減圧濃縮し、上記式で表されるイミダゾール変性物C-3を5.3g得た(上記式(12)で表される化合物純分4.9g、収率97%)。また、本組成物は水に溶解しなかった。
製造例7 イミダゾール変性物C-4の製造
Figure 0006995076000022
窒素置換した1L4つ口フラスコに、スミジュール44V20L(住化コベストロウレタン株式会社製、クルードMDI、イソシアネート含有率:33%)を52.9g(イソシアネート基として414.1mmol)、トルエン400mLを仕込み、混合物を氷冷(内温6℃)し、撹拌しながら、ジ(2-エチルヘキシル)アミン50.0g(207.1mol)/トルエン100mL溶液を滴下後、室温で1時間撹拌した。
得られた反応液に製造例4で得られたイミダゾール変性物C-1(1,3-ジメチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート)29.0g(207.1mmol)を添加し、110℃で2時間撹拌した。得られた反応混合液を減圧乾燥し、得られた濃縮残を水500mLで2回洗浄後、減圧乾燥し、イミダゾール変性物C-4を93.9g得た。イミダゾール変性物C-4は、上記式(13)で表される構造を有する化合物を含有する組成物であると推定される。また、本組成物は水に溶解しなかった。
製造例8 イミダゾール変性物C-5の製造
Figure 0006995076000023
窒素置換した180mLのオートクレーブに1-オクチルイミダゾール25.0g(139mmol)、炭酸ジメチル16.7g(185mmol)及びメタノール25.1gを仕込み、125℃で29時間撹拌した。得られた反応混合物を溶媒の沸点以下に冷却後、炭酸ジメチル8.5g(94mmol)を追加し、更に130℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却し、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートのメタノール溶液を44.0g得た(純分33.0g、収率99%)。
次いで、窒素置換した200mL試験管に1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレートのメタノール溶液4.0g(1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム-2-カルボキシレート純分3.0g(13mmol))、フェニルイソシアネート1.5g(13mmol)及びトルエン100mLを仕込み、110℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物を25℃に冷却後、減圧濃縮し、上記式(14)で表されるイミダゾール変性物C-5を3.3g得た(収率84%)。また、本組成物は水に溶解しなかった。
製造例9 イミダゾール変性物C-6の製造
Figure 0006995076000024
窒素置換した300mLの4つ口反応器にオクチルアミン77.5g(0.60mol)を仕込み、反応液を温度10度以下に冷却した。次いで、40%ホルムアルデヒド水溶液22.9g(ホルムアルデヒド純分0.30mol)と酢酸27.0g(0.45mol)の混合液を2時間かけて滴下し、0℃で30分間撹拌した。その後、室温に戻し、40%グリオキサール水溶液43.5g(グリオキザール純分0.30mol)を加え、得られた混合物を室温で20時間撹拌した。撹拌後、得られた反応混合物を、ヘプタン50gで3回洗浄し、得られた水層を減圧濃縮することで、1,3-ジオクチルイミダゾリウム アセテートを108.4g得た。
次いで、1,3-ジオクチルイミダゾリウム アセテート10.0g(0.03mol)、クロロベンゼン50.0g、モレキュラーシーブ4A3.0gを仕込み、窒素下で16時間静置した。その後、ろ過でモレキュラーシーブ4Aを除去し、得られた溶液を窒素置換した200mLの3つ口反応器に仕込み、N-フェニルカルバミン酸メチル15.4g(0.10mol)を加え、温度130度で4時間攪拌した。撹拌後、得られた反応混合物を減圧濃縮し、褐色固体を24.0g得た。得られた褐色液体をアルミナカラムで単離し、上記式(15)で表される化合物イミダゾール変性物C-6を得た。また、本組成物は水に溶解しなかった。
製造例10 イミダゾール変性物C-7の製造
Figure 0006995076000025
窒素置換した300mLの4つ口反応器に2-エチルヘキシルアミン77.5g(0.60mol)を仕込み、反応液を温度10度以下に冷却した。次いで、40%ホルムアルデヒド水溶液22.9g(ホルムアルデヒド純分0.30mol)と酢酸27.0g(0.45mol)の混合液を2時間かけて滴下し、温度0度で30分間撹拌した。その後、室温に戻し、40%グリオキサール水溶液43.5g(グリオキザール純分0.30mol)を加え、得られた混合物を室温で20時間撹拌した。撹拌後、得られた反応混合物を、ヘプタン50gで3回洗浄し、得られた水層を減圧濃縮することで、1,3-ジオクチルイミダゾリウム アセテートを108.4g得た。
次いで、1,3-ジオクチルイミダゾリウム アセテート10.0g(0.03mol)、クロロベンゼン50.0g、モレキュラーシーブ4A3.0gを仕込み、窒素下で16時間静置した。その後、ろ過でモレキュラーシーブ4Aを除去し、得られた溶液を窒素置換した200mLの3つ口反応器に仕込み、N-フェニルカルバミン酸メチル15.4g(0.10mol)を加え、温度130度で4時間攪拌した。撹拌後、得られた反応混合物を減圧濃縮し、褐色固体を24.0g得た。得られた褐色液体をアルミナカラムで単離し、上記式(16)で表される化合物イミダゾール変性物C-7を得た。また、本組成物は水に溶解しなかった。
顔料分散ペーストの製造
製造例11
製造例3で得た固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー5部、カーボンブラック0.3部、製造例4で得たイミダゾール変性物C-1(有効成分量)2部、水酸化ビスマス2部、及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストP-1を得た。
製造例12~27
配合を下記表1記載のように変更した以外は製造例11と同様にして、固形分55%の顔料分散ペーストP-2~17を得た。
Figure 0006995076000026
表中の配合量は全て有効成分量である。
尚、C-8及びC-9は下記化合物である。
C-8:1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド(東京化成工業社製、水に溶解)、
C-9:ジオクチル錫オキサイド(錫系触媒)。
カチオン電着塗料の製造
実施例1
製造例1で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂A-1 87.5部(固形分70部)、製造例2で得られたブロック化ポリイソシアネート化合物B-1 37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下して固形分34%のエマルションを得た。
次に、上記エマルション294部(固形分100部)、製造例11で得た顔料分散ペーストP-1 52.4部、脱イオン水350部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料X-1を製造した。
実施例2~15、比較例1~4
配合を下記表1記載のように変更した以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗料X-2~19を製造した。
また、後述する評価試験(硬化性、仕上がり性、防食性)の結果を表中に記載した。ジオクチル錫オキサイドを含有する塗料(X-16)に関しては、評価結果は合格レベルであるが本発明に従うイミダゾール変性物を含まない上に環境面(有毒性)で不合格であるため比較例とした。
Figure 0006995076000027
尚、表中の樹脂配合量は全て固形分での値である。
試験板の作成
化成処理(商品名、パルボンド#3020、日本パーカライジング社製、リン酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板(150mm(縦)×70mm(横)×0.8mm(厚))を被塗物として、実施例及び比較例で得た各々のカチオン電着塗料を用いて乾燥膜厚17μmとなるように電着塗装し、150℃と170℃で20分間焼付け乾燥して試験板(2種類)を得た。
<仕上がり性(表面粗度)>
得られた試験板(150℃焼付け)の塗面をサーフテスト301(商品名、株式会社ミツトヨ製、表面粗度計)を用いて、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定し、以下の基準で評価した。評価は、S~Bが合格であり、Cが不合格である。
S:表面粗度値(Ra)が、0.2未満、
A:表面粗度値(Ra)が、0.2以上、かつ0.25未満、
B:表面粗度値(Ra)が、0.25以上、かつ0.3未満、
C:表面粗度値(Ra)が、0.3以上、を示す。
<硬化性(ゲル分率)>
得られた試験板から、150℃及び170℃での硬化性(ゲル分率)を評価した。
評価は、A及びBが合格であり、Cが不合格である。
A:ゲル分率が、90%以上、
B:ゲル分率が、70%以上で、かつ90%未満、
C:ゲル分率が、70%未満、を示す。
なお、ゲル分率の測定は以下の手順により行った。
(1)塗装前の試験板質量(X)を測定する。
(2)電着塗装及び焼付けをして、硬化塗膜の試験板質量(Y)を測定する。
(3)上記試験板をアセトンに浸漬し、加熱・還流させた状態で5時間処理する。
(4)処理後の試験板を乾燥させた試験板質量(Z)を測定する。
(5)下記式により、ゲル分率(%)を計算する。
ゲル分率(%)=〔Z-X〕/〔Y-X〕×100
<防食性(150℃焼付け)>
得られた試験板(150℃焼付け)の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z-2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの片側での錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
評価は、A及びBが合格であり、Cが不合格である。
A:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mm以下、
B:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mmを超え、かつ3.0mm以下、
C:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で3.0mmを超える。

Claims (5)

  1. アミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、下記式(1)で示されるイミダゾール変性物(C)、及び防錆剤(D)を含有するカチオン電着塗料組成物。
    Figure 0006995076000028
    (式中、R、R、R及びRは同一でも異なっていても良く、水素原子又は炭素数1以上の有機基であり、該有機基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。また、R、R、R及びRのうち2種以上が互いに繋がって環状構造になっていてもよい。Xは酸素原子又は窒素原子であり、Xが酸素原子の場合、Yは存在せず、nは1である。Xが窒素原子の場合、Yは有機基であり、nは1以上の整数である。)
  2. カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、イミダゾール変性物(C)を0.01~10質量%含有する請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分の総量を基準として、防錆剤(D)を0.01~10質量%含有する請求項1又は2に記載のカチオン電着塗料組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴に金属被塗物を浸漬し、電着塗装する塗装方法。
  5. 請求項4に記載の塗装方法によって塗膜を形成し、次いで加熱硬化する工程を含む塗装物品の製造方法。
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