JP2023050150A - 変性エポキシ樹脂及びカチオン電着塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】低活性の触媒を用いた場合や低温の場合での硬化性、及び、貯蔵安定性に優れ、塗料を構成した際に塗膜仕上がり性及び防食性(付きまわり性)に優れる変性エポキシ樹脂を提供すること。また、該変性エポキシ樹脂又はその変性物が水性媒体に分散された水性樹脂分散体、及び、該変性エポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料を提供すること。【解決手段】エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)と、必要に応じて用いられる、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)と、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価である化合物(γ)と、を含む化合物を反応して得られる変性エポキシ樹脂であって、下記式(1)で示される変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.10以上である変性エポキシ樹脂。式(1):平均多官能化度(X1)=変性エポキシ樹脂の1分子当たりの末端数-2【選択図】なし

Description

本発明は、変性エポキシ樹脂及びカチオン電着塗料に関する。詳しくは、特定の成分を反応させて得られる変性エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂又はその変性物が水性媒体に分散された水性樹脂分散体、変性エポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料、これらの製造方法に関する。
エポキシ樹脂は、機械的強度、接着性、耐薬品性等の特性に優れており、塗料の塗膜形成樹脂として広く用いられている。
塗料のうち、電着塗料は、塗装作業性が優れ形成した塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される金属製品(例えば、自動車部品、電気機器部品及びその他の工業用機器等)の塗装に広く利用されている。
カチオン電着塗料は、カチオン性樹脂(例えば、アミノ基含有エポキシ樹脂等)である塗膜形成樹脂と、硬化剤(例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物等)と、硬化触媒とを、水性媒体中に溶解又は分散した形態で提供される。この塗料組成物を塗装浴に用い、被塗物を陰極として通電し、被塗物上に析出塗膜を形成させた後、該析出塗膜を加熱することによって、架橋硬化された塗膜が形成される。
カチオン電着塗料においては、架橋反応を促進する硬化触媒として、有機錫化合物が一般的に用いられてきた。しかし、有機錫化合物は、触媒性能は非常に高いものの、安全性や環境面で問題があり使用が規制される可能性から、有機錫化合物に代わる触媒が求められてきた。その代替品として、ビスマス化合物や亜鉛化合物等を用いることが検討されているが、高価であったり、触媒効果が不十分であったり、塗料中で不安定であったりする問題があった。
また、有機錫化合物の触媒を用いる場合でも、硬化性能をできるだけ高める必要があった。
通常、架橋硬化による塗膜形成は、160℃以上の加熱により行われる。しかし、乾燥炉の条件や被塗物の形状などによって、狙いの温度よりも低い温度で焼付けをする部位もある。また、エネルギーコスト削減のために、低温(80~160℃、好ましくは80~130℃)の低温焼付けで行なうことが求められてきている。
低温での焼付けを行なうためには、低温硬化性のブロック化ポリイソシアネート化合物を硬化剤に用いることが一般に行われてきた。しかし、低温での反応性を高めた電着塗料では、長期の貯蔵安定性(浴安定性)が不十分となり、その結果、塗膜の仕上がり性や防食性などが劣る場合があった。
また、複雑な形状の被塗物の防食性を高めるために付きまわり性を高める必要があった。
特許文献1には、多官能化されたエポキシ樹脂が記載されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂は、電着塗料に用いられるものではない。また、硬化性、特に、低活性の触媒を用いた場合での硬化性、塗料の貯蔵安定性について検討されていない。
特許文献2、3には、カプロラクトン付加物やフェノール系化合物によって変性されたエポキシ樹脂をアミン変性したアミン変性エポキシ樹脂を用いた電着塗料が記載されている。しかしながら、これらの電着塗料においても、硬化特性、特に低温硬化性、塗料の貯蔵安定性について検討されていない。
中国特許出願公開第104628995号明細書 特開2016-135848号公報 特開2001-279168号公報
本発明が解決しようとする課題は、低活性の触媒を用いた場合や低温の場合での硬化性、及び、貯蔵安定性に優れ、塗料を構成した際に塗膜仕上がり性及び防食性(付きまわり性)に優れる変性エポキシ樹脂を提供することである。また、該変性エポキシ樹脂又はその変性物が水性媒体に分散された水性樹脂分散体、及び、該変性エポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分を反応させて得られる変性エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂又はその変性物が水性媒体に分散された水性樹脂分散体、及び、前記変性エポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料によって、前記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、以下のとおりである。
項1:エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)と、
必要に応じて用いられる、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)と、
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価である化合物(γ)と、
を含む化合物を反応して得られる変性エポキシ樹脂であって、
下記式(1)で示される変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.10以上である変性エポキシ樹脂。
式(1):
平均多官能化度(X1)=変性エポキシ樹脂の1分子当たりの末端数-2
項2:前記化合物(β)を含有し、前記化合物(α)、前記化合物(β)、及び前記化合物(γ)の合計固形分質量を基準として、前記化合物(α)が1質量%以上70質量%以下、前記化合物(β)が1質量%以上50質量%以下、及び前記化合物(γ)が10質量%以上90質量%以下の含有割合である、項1に記載の変性エポキシ樹脂。
項3:前記化合物(β)のエポキシ基と反応する官能基が、フェノール性水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、1級及び/又は2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基である、項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂。
項4:項1~3のいずれか1項に記載の変性エポキシ樹脂において、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、変性エポキシ樹脂。
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000
項5:前記化合物(γ)が、アミノ基を有さない化合物(γ1)を含有する、項1~4のいずれか1項に記載の変性エポキシ樹脂。
項6:前記化合物(γ)が、アミノ基を有さない化合物である、項1~5のいずれか1項に記載の変性エポキシ樹脂。
項7:項1~6のいずれか1項に記載の変性エポキシ樹脂の末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)又は下記構造式(2)で表される有機基を有する変性エポキシ樹脂。
Figure 2023050150000001
〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~13のアルキルオキシメチル基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表し、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
Figure 2023050150000002
〔式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~13のアルキルオキシメチル基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表し、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基を表す。〕
項8:項1~7のいずれか1項に記載の変性エポキシ樹脂が水性媒体に分散している水性樹脂分散体。
項9:項1~7のいずれか1項に記載の変性エポキシ樹脂及びアミン付加エポキシ樹脂を含むエポキシ系樹脂と、硬化剤とを含有するカチオン電着塗料。
項10:下記式(3)で示されるカチオン電着塗料に含まれるエポキシ系樹脂の平均多官能化濃度(Y2)が0.10以上である、項9に記載のカチオン電着塗料。
式(3):
カチオン電着塗料に含まれるエポキシ系樹脂の平均多官能化濃度(Y2)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000×(変性エポキシ樹脂量÷全てのエポキシ系樹脂量)
項11:項9又は10に記載のカチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗膜形成方法。
項12:エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)と、
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上の官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)と、
を少なくとも反応させてエポキシ樹脂(X)を製造し、
次いで、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価である化合物(γ)を少なくとも反応させる変性エポキシ樹脂の製造方法であって、
下記式(1)で示される変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.10以上である変性エポキシ樹脂の製造方法。
式(1):
平均多官能化度(X1)=変性エポキシ樹脂の1分子当たりの末端数-2
項13:下記式(2)で示される変性エポキシ樹脂の平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、項12に記載の変性エポキシ樹脂の製造方法。
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000
項14:項12又は13に記載の製造方法で得られた変性エポキシ樹脂及びアミン付加エポキシ樹脂を含むエポキシ系樹脂と、硬化剤とを混合する、カチオン電着塗料の製造方法。
項15:項14に記載の製造方法で得られたカチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗膜形成方法。
本発明により、低活性の触媒を用いた場合や低温の場合での硬化性、及び、貯蔵安定性に優れ、塗料を構成した際の塗膜仕上がり性及び防食性(付きまわり性)に優れる変性エポキシ樹脂が提供される。また、該変性エポキシ樹脂又はその変性物が水性媒体に分散された水性樹脂分散体、及び、該変性エポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料が提供される。
さらに、本発明により、低活性の触媒を用いた場合や低温の場合での硬化性、貯蔵安定性、塗膜仕上がり性及び防食性に優れた水性樹脂分散体及び電着塗料が提供される。
本発明において、「変性エポキシ樹脂」とは、エポキシ基を有する樹脂及び/又はエポキシ化合物のエポキシ基と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物とが反応した樹脂を示し、エポキシ基を有しなくてもよい。
本発明において、「エポキシ系樹脂」とは、エポキシ基を有する樹脂及び/又はエポキシ化合物のエポキシ基と、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物とが反応した樹脂を含有し、エポキシ基を含有しなくてもよい。
本発明において、「エポキシ」を「EP」と省略する場合がある。
本発明において、「多官能」とは官能基を有する化合物の官能価数又はその合計が2より大きい事である。ただし、本発明においては、エポキシ樹脂の末端エポキシ基と反応性官能基含有化合物との反応により生成及び/又は導入された官能基が2つ以上あったとしても、この末端部分は1官能としてカウントする。さらに、エポキシ樹脂の分子内部の2級水酸基については、反応性が低いこと等から、前記官能価数に含めないものとする。本発明において、多官能における「官能基」とは、実質的に、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの硬化剤と反応できる反応性の官能基のことである。
また、本発明では、化合物中の官能基数として、例えば「1つ」有することを、「1官能」、「1個」、「1価」などと呼ぶ場合がある。
[変性エポキシ樹脂]
本発明の変性エポキシ樹脂は、エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)と、必要に応じて用いられる、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)と、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価である化合物(γ)と、を含む化合物を反応して得られる変性エポキシ樹脂であって、下記式(1):
平均多官能化度(X1)=変性エポキシ樹脂の1分子当たりの末端数-2
で示される変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.10以上である変性エポキシ樹脂である。
本発明の変性エポキシ樹脂は、(i)前記化合物(α)と、前記化合物(β)と、前記化合物(γ)と、を少なくとも反応させて得られたもの、及び/又は、(ii)前記化合物(α)と、前記化合物(γ)と、を少なくとも反応させて得られたものである。
<変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)>
例えば、1つの分子が3つの末端に分かれている場合、Xは1となり、全く多官能化していない直鎖状の変性エポキシ樹脂の場合、Xは0となる。平均多官能化度(X1)の値が大きいほど1分子当たり多官能化していることになる。
なお、変性エポキシ樹脂の末端に多官能型の変性剤(例えば、ジメチロールプロピオン酸などのカルボン酸系化合物)を反応させることによる、変性エポキシ樹脂末端の多官能化については、立体障害による反応性低下が起こるため、本発明の「多官能化」には定義しない。また、変性エポキシ樹脂内部の2級水酸基に関しても反応性の観点から本発明の「多官能化」には定義しない。
本発明の「多官能化」とは、変性エポキシ樹脂の主骨格が分岐しているものである。
本発明の変性エポキシ樹脂は、その硬化性、特に低活性の触媒を用いた場合や低温における硬化性、及び、貯蔵安定性に優れるものである。さらに、当該変性エポキシ樹脂を用いて塗料、特に電着塗料を調製した際に、塗膜仕上り性及び防食性(付きまわり性)に優れるものである。
この特性は、変性エポキシ樹脂の多官能化度と密接に関係している。特に、変性エポキシ樹脂の多官能化度として、変性エポキシ樹脂1分子当たりの平均多官能化度(X1)を採用し、その範囲を特定の範囲とすることで、前記特性を好適なものとすることができる。
多官能化した変性エポキシ樹脂を得る方法としては、(1)エポキシ化合物(エポキシ基は1個以上、好ましくは2個以上)と、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である多官能化剤(化合物(β))とを少なくとも反応させる方法(多官能化剤による多官能化)、(2)エポキシ化合物の分子内部の2級水酸基と、(別の)エポキシ化合物の末端エポキシ基のうち少なくとも1個とを反応させ多官能化させる方法(炊き込みによる多官能化)があり、いずれも好適に用いることができる。多官能化した変性エポキシ樹脂を安定的に製造する観点から、少なくとも前記(1)の方法を用いることが好ましい。
前記(1)の方法(多官能化剤による多官能化)で多官能化した変性エポキシ樹脂を得る場合において、多官能化剤による変性エポキシ樹脂1分子当たりの平均多官能化度(N)は、下記式;
多官能化剤による平均多官能化度(N)=Σ〔(各多官能化剤の価数-2)×各多官能化剤の基本配合量〕
により求めることができる。
ここで、各多官能化剤の「基本配合量」は下記方法により求めることができる。
(基本配合の算出方法)
各原材料の基本配合量(mol)=各原材料の配合量(mol)×基本配合倍数
※各原材料の配合量(mol)=各原材料の配合質量(g)/各原材料の分子量
※基本配合倍数=2/(エポキシ基の数(mol)-末端封止剤を除くエポキシ基と反応する官能基の数(mol)-多官能化剤による多官能数)
※末端封止剤:フェノール性水酸基を1つだけ有するモノフェノール化合物、モノカルボン酸など
※エポキシ基と反応する官能基:フェノール性水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、1級及び/又は2級アミノ基など
※多官能化剤による多官能数=(多官能化剤の価数-2)×多官能化剤の配合量(mol)
前記(2)の方法(炊き込みによる多官能化)は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基と、(別の)エポキシ樹脂が有する2級水酸基とを反応させる方法である。
この場合において、炊き込みによる変性エポキシ樹脂1分子当たりの平均多官能化度(M)は、下記式;
炊き込みによる平均多官能化度(M)=(2-m)/(1-m)-2
により求めることができる。
※m:基本配合におけるエポキシ過剰量
ここで、基本配合におけるエポキシ過剰量(EP過剰量)は、以下のように算出される。
基本配合におけるEP過剰量=基本配合におけるEP基の数(mol)-基本配合におけるEP基と反応する官能基の数(mol)
なお、本発明の変性エポキシ樹脂におけるEP過剰量は、樹脂固形分を基準として、通常0~5mmol/g、好ましくは0~2mmol/g、より好ましくは0~1.5mmol/gである。
そして、変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)は、多官能化剤による平均多官能化度(N)及び炊き込みによる平均多官能化度(M)から、次の式;
平均多官能化度(X1)=(N+2)×(M+1)-M-2
を用いて算出することができる。
本発明の変性エポキシ樹脂において、変性エポキシ樹脂1分子当たりの平均多官能化度(X1)は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.6~10.0の範囲内、さらに好ましくは0.7~6.0の範囲内、特に好ましくは1.3~3.7の範囲内とすることができる。
<変性エポキシ樹脂の平均多官能化濃度(Y1)>
本発明の変性エポキシ樹脂は、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.1以上であることが好ましい。
式(2):
平均多官能化濃度(Y1)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000
ここで、変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、以下のように算出される。
変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw=Σ(基本配合における各原料の配合量(mol)×各原料の分子量)
多官能化剤に含まれる、3官能以上の多官能化剤成分の1分子当りの平均官能基数は、エポキシ基と反応する官能基の官能価数が1の場合、次の式を用いて算出される。
平均官能基数=Σ(各多官能化剤成分の含有割合÷各多官能化剤成分の分子量×各多官
能化剤成分の官能基数)/Σ(各多官能化剤成分の含有割合÷各多官能化剤成分の分子量)
本発明の変性エポキシ樹脂における硬化性、特に低活性の触媒を用いた場合や低温における硬化性、及び、貯蔵安定性や、当該変性エポキシ樹脂を用いて電着塗料を調製した際の塗膜仕上がり性及び防食性(付きまわり性)等の特性は、変性エポキシ樹脂の多官能化度に加えて、変性エポキシ樹脂の平均多官能化濃度と密接に関係している。特に、変性エポキシ樹脂の多官能化度として、変性エポキシ樹脂1分子当たりの平均多官能化度(X1)と、平均多官能化濃度(Y1)を採用し、それぞれの範囲を特定の範囲とすることで、前記特性を好適なものとすることができる。
本発明の変性エポキシ樹脂において、変性エポキシ樹脂の固形分1g当たりの平均多官能化濃度(Y1)は、通常0.10(mmol/g)以上、好ましくは0.10~5.00(mmol/g)の範囲内で、より好ましくは0.40~3.00(mmol/g)の範囲内、さらに好ましくは0.40~2.00(mmol/g)の範囲内とすることができる。
平均多官能化濃度(Y1)は、質量当たりの多官能化度を規定しており、Y1の数値が大きいほど官能基が多く樹脂の反応性が高いことになる。
前記多官能化度及び/又は多官能化濃度が高い場合は樹脂の合成時にゲル化又は増粘が起こり、塗膜の仕上がり性が悪化することになる。また、低い場合は防食性や耐油ハジキ性が低下することになる。
<エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)>
エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)は、本発明の変性エポキシ樹脂の構成成分の1つであり、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有する化合物である。本発明において、エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)が1分子中に有するエポキシ基の数は、好ましくは2~8であり、より好ましくは、2~6であり、さらに好ましくは2~4であり、最も好ましくは2である。
エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、少なくとも300、好ましくは400~4,000、さらに好ましくは800~2,500の範囲内の重量平均分子量を有するものが好ましい。また、そのエポキシ当量も特に限定されないが、例えば、少なくとも160、好ましくは180~2,500、さらに好ましくは400~1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)としては、例えば、ポリフェノール系化合物とエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)との反応によって得られたエポキシ化合物、分子中にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ化合物、ダイマー酸ジグリシジルエステル等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明においては、ポリフェノール系化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られたエポキシ化合物が好適に用いられる。
エピハロヒドリンと反応させるポリフェノール系化合物としては、公知のものを制限なく用いることができる。例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)としては、分子中にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ化合物を用いることができる。通常、このようなエポキシ化合物は、(a)エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するエポキシ化合物と、アルキレンオキシド又はポリアルキレンオキシドを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法、(b)前記ポリフェノール系化合物と、エポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するポリアルキレンオキシドとを反応せしめてポリアルキレンオキシド鎖を導入する方法などにより得ることができる。また、既にポリアルキレンオキシド鎖を含有しているエポキシ化合物を用いてもよい(例えば、特開平8-337750号公報参照。)。
ポリアルキレンオキシド鎖中のアルキレン基としては、炭素数が2~8のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基がより好ましく、プロピレン基が特に好ましい。
前記のポリアルキレンオキシド鎖の含有量は、電着塗料形成時の安定性、仕上り性及び防食性向上の観点から、変性エポキシ樹脂の固形分質量を基準にして、ポリアルキレンオキシドの構成成分としての含有量で、通常1.0~15質量%、好ましくは2.0~9.5質量%、より好ましくは3.0~8.0質量%の範囲内が適当である。
エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)としては、ダイマー酸ジグリシジルエステルを用いることができる。このようなエポキシ化合物は、不飽和脂肪酸を二量化して得られるダイマー酸にグリシジル基を導入したものであり、炭素数10~150の直鎖状、分岐状、及び/又は環状の炭化水素基を有することが好ましい。
前記不飽和脂肪酸としては、公知のものを制限なく用いることができるが、エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)の柔軟性及び疎水性の観点から、炭素数11~22の高級不飽和脂肪酸が好ましい。
前記高級不飽和脂肪酸としては、公知のものを制限なく用いることができ、具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、分岐オクタデセン酸、分岐ヘキサデセン酸、ウンデシレン酸等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明においては、エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)として、エピハロヒドリンと、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックから選ばれる1種以上を反応して得られるエポキシ化合物の1種以上を用いることが好ましい。
特に好ましくは、ポリフェノール系化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるエポキシ化合物であって、ビスフェノールAから誘導される下記式で表されるエポキシ化合物が挙げられる。
Figure 2023050150000003
市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
なお、前述したとおり、前記式における変性エポキシ樹脂の分子内部の2級水酸基は多官能としての官能基に含めないものとする。また、例えば前記式の末端エポキシ基と反応性官能基含有化合物が反応して得られた変性エポキシ樹脂において、該エポキシ基が反応して現れた水酸基も本発明における多官能としての官能基に含めないものとする。
<エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)>
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)は、本発明の変性エポキシ樹脂の構成成分として必要に応じて用いることができ、該変性エポキシ樹脂を多官能化する多官能化剤として好適に用いることができる。
本発明において、「エポキシ基と反応する官能基」としては、例えば、1級アミノ基(官能価数2)、2級アミノ基(官能価数1)、アルコール性水酸基(官能価数1)、フェノール性水酸基(官能価数1)、イソシアネート基(官能価数1)、カルボキシル基(官能価数1)、メルカプト基(官能価数1)、スルホン酸基(官能価数1)及びカルボン酸無水物基(官能価数2)等が挙げられる。
前記化合物(β)は、3価以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物、3価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、3価以上のアミノ基を有するアミン系化合物、3価以上のカルボキシル基を有するカルボン酸系化合物又はその無水物、3価以上のアルコール性水酸基を有するアルコール系化合物からなる群より選ばれる1種以上を含有することができる。
また、1級アミノ基、2級アミノ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基及びカルボン酸無水物基を、分子中に官能基の官能価数の合計が3価以上となるように有する化合物であってもよい。例えば、ジアミノ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジアミノフェノール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
(3価以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物)
3価以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物は、芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)を分子内に3個以上有する化合物の1種以上である。
3価のフェノール系化合物としては、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシヒドロキノン、5-メチルピロガロール、没食子酸、1,8,9-トリヒドロキシアントラセン、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,4”-エチリジントリス(2-メチルフェノール)、4,4’-(2-ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2-メチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,6-ビス(4-ヒドロキシ―3,5-ジメチルベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1-〔α-メチル-α-(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕-3-〔α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1-〔α-メチル-α-(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕-4-〔α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ-α,α-ジメチルベンジル)-エチルベンゼン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
4価以上のフェノール系化合物としては、例えば、2,2’-メチレンビス[6-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-p-クレゾール、4-[ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]ベンゼン-1,2-ジオール、1,1,2,2-テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタン、α,α,α’,α”-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレン、1,4,9,10-テトラヒドロキシアントラセン、2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、ヘキサヒドロキシベンゼン、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン水和物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、フェノール系化合物(フェノール、クレゾール、ビスフェノール系化合物等)成分とアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等)とを触媒の存在下で縮合反応させて得られるフェノール樹脂類からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。例えば、下記構造式(A)
Figure 2023050150000004
(式(A)中、nは1~20の整数、pは0~4の整数、qは0~3の整数、rは0~4の整数を表す。R21~R23は、それぞれ独立に1価の基である。R22は、n個の繰返し単位毎に異なっていてもよい。芳香環にR21、R22及び/又はR23が複数ある場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R21~R23は、互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される化合物、フェノールノボラック樹脂類、クレゾールノボラック樹脂類、ビスフェノール系ノボラック樹脂類(ビスフェノールAノボラック樹脂等)、ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールビフェニレン樹脂、フェノール変性トルエンホルムアルデヒド樹脂、ピッチ又は油類とフェノール系化合物とホルムアルデヒドとの共縮合樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明においては、3価以上のフェノール系化合物として、前記構造式(A)で表される化合物の1種以上を用いることが好ましい。前記構造式(A)のR21~R23に関しては、水素又は炭素を有する有機基が好ましい。炭素を有する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~20の1価のアルキル基が挙げられる。
(3価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物)
3価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物としては、イソシアネート基を分子内に3個以上有する化合物の1種以上が用いられる。
例えば、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル(リジンエステルトリイソシアネート)、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、ビシクロヘプタントリイソシアネート、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート、下記構造式(B)
Figure 2023050150000005
(式(B)中、nは1以上の整数である。)
で表されるクルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート](ポリメリックMDI)、クルードTDI[クルードトリレンジイソシアネート]等の各種ポリイソシアネートのクルード化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等のトリマーやイソシアヌレート等であって、分子中に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
さらに、これらの3価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、クルード化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
3価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物は、前記イソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物であってもよい。
前記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。前記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明においては、3価以上のイソシアネート基を含む化合物として、好ましくは、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、芳香脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、芳香族ジイソシアネートのイソシアヌレート化物、ポリイソシアネートのクルード化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化物、クルードMDI(ポリメリックMDI)、クルードTDIからなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
(3価以上のアミノ基を有するアミン系化合物)
3価以上のアミノ基を有するアミン系化合物としては、1級又は2級のアミノ基を有する化合物であり、1級アミノ基(2価)及び/又は2級アミノ基(1価)を分子内に有しアミン系化合物の価数が3価以上である化合物の1種以上が用いられる。
例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、2,2’-ジアミノジエチルアミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、2,2’-ビス(メチルアミノ)-N-メチルジエチルアミン、トリアミノベンゼン、トリアミノナフタレン、テトラアミノベンゼン、テトラアミノナフタレン、トリエチレンテトラミン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルスルホン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルケトン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルメタン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルシクロヘキサン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルフルオレン、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルチオエーテル、2,2-イソプロピリデンビス(3,4-ジアミノベンゼン)、2,2-ビス(3,4-ジアミノフェニル)プロパン、2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(3,4-ジアミノベンゼン)、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
(3価以上のカルボキシル基を有するカルボン酸系化合物又はその無水物)
3価以上のカルボキシル基を有するカルボン酸系化合物又はその無水物としては、無水物基となっていてもよいカルボキシル基を分子内に3個以上有する化合物の1種以上が用いられる。
例えば、ブタントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、4,4’-オキシジフタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸、これらの無水物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
(3価以上のアルコール性水酸基を有するアルコール系化合物)
3価以上のアルコール性水酸基を有するアルコール系化合物としては、アルコール性水酸基を分子内に3個以上有する化合物の1種以上が用いられる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリオキシイソブタン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシエチレンプロピレントリオール、ペンタエリスリトール等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、1級アミノ基、2級アミノ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基及びカルボン酸無水物基を、分子中にあわせて3つ以上有する化合物であってもよい。例えば、ジアミノ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジアミノフェノール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
<エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価であ
る化合物(γ)>
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価であ
る化合物(γ)は、本発明の変性エポキシ樹脂の末端を封止又は鎖延長する末端封止剤又は鎖延長剤として好適に用いることができる。
本発明において、「エポキシ基と反応する官能基」としては、前記化合物(β)における「エポキシ基と反応する官能基」と同じ官能基が挙げられる。
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価であ
る化合物(γ)は、本発明の変性エポキシ樹脂の構成成分として含有され、例えば、1価又は2価の、フェノール系化合物、アルコール系化合物、カルボン酸系化合物、イソシアネート系化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
また、前記化合物(γ)はアミノ基を有さない化合物(γ1)を含有することが好ましく、さらに前記化合物(γ)がアミノ基を有さないことが好ましい。
2価のフェノール系化合物としては、分子内に芳香環に結合した水酸基を2個有する化合物である。2価のフェノール系化合物としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-フェニル)-2,2-プロパン、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,2,2-エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビフェノール等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明においては、エポキシ基と反応する3価以上の官能基を有する化合物(β)として、前記構造式(A)で表される化合物を含む場合、1分子中に1つ以上の活性水素を有する化合物として下記構造式(C)
Figure 2023050150000006
(式(C)中、sは0~4の整数、tは0~4の整数を表す。R31、R32は、それぞれ独立に1価の基である。芳香環にR31及び/又はR32が複数ある場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R31及び/又はR32は、互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される化合物を含むことが好ましい。
2価アルコール系化合物としては、例えば、アルキレングリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等)、グリセリン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
2価カルボン酸系化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、ダイマー酸、これらの酸無水物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
2価のイソシアネート系化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、オキサジアジントリオン、クルード化合物であるジイソシアネート化合物;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ジイソシアネート化合物は、前記ジイソシアネート又はその誘導体中のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物であってもよい。ブロック剤としては、前記3価以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物のブロック剤と同様のものが用いられる。
本発明においては、ジイソシアネート化合物として、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、モノメリックMDI(下記構造式(B’)で表され、n=0である化合物)
Figure 2023050150000007
からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価であ
る化合物としては、モノフェノール系化合物(フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ニトロフェノール等)、モノアルコール系化合物(オキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル等)、モノカルボン酸系化合物(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-エチルヘキサン酸(オクチル酸)、カプロン酸、カプリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシプロピバリン酸、乳酸、クエン酸等)、メルカプトアルカノール(メルカプトエタノール等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、後述するエポキシ基と反応する1価の官能基を有する化合物(γ1-1-1)を好適に用いることができる。
エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価であ
る化合物(γ)としては、アミノ基を有さない化合物(γ1)を含有することが好ましく、本発明の変性エポキシ樹脂が化合物(γ1)由来のアミン価を実質的に有さないことが好ましい。なお、「化合物(γ1)由来のアミン価を実質的に有さない」とは、化合物(γ)を有する変性エポキシ樹脂において、化合物(γ1)由来のアミン価が10mgKOH/g以下であることであり、5mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/gであることがさらに好ましい。
また、前記化合物(γ1)としては、化合物(γ)中にエポキシ基と反応する、官能価数が1価の官能基を有する化合物(γ1-1)を含有することが好ましい。化合物(γ)中にエポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価の化合物(γ1-1)と、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が2価の化合物(γ1-2)の両方を含有することがより好ましい。
<各成分の配合量>
本発明の変性エポキシ樹脂の製造に使用する、前記化合物(α)、必要に応じて用いられる前記化合物(β)、及び前記化合物(γ)の配合量は、目的とするエポキシ当量等に応じて適宜調整することができる。
例えば、化合物(α)、化合物(β)、及び化合物(γ)の合計固形分質量を基準として、各成分の配合量を以下の範囲とすることができる。
・化合物(α):例えば0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、例えば80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下。
・化合物(β):0質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、例えば50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下。
・化合物(γ):例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、例えば95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下。
多官能化剤である化合物(β)の含有量が50質量%を超えると、変性エポキシ樹脂の反応性が高くなりすぎ、合成時にゲル化したり、塗料の貯蔵安定性に劣るものになったりするおそれがある。
<変性エポキシ樹脂の製造方法>
本発明の変性エポキシ樹脂の第一の製造方法としては、前記化合物(α)、必要に応じて用いられる化合物(β)、及び化合物(γ)を混合して、例えば、適当な溶媒中で、約80~約190℃、好ましくは約90~約170℃の温度で1~6時間程度、好ましくは1~5時間程度反応させる方法が挙げられる。
本発明においては、多官能化剤である化合物(β)を用いることで、変性エポキシ樹脂を多官能化することができる。また、例えば、1分子中に活性水素を2つ持つ化合物(エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が2価の化合物(γ))により、変性エポキシ樹脂を鎖延長することができる。
本発明の変性エポキシ樹脂の第二の製造方法としては、前記化合物(α)と、前記化合物(β)と、を少なくとも反応させてエポキシ樹脂(X)を製造し、次いで、前記化合物(γ)を、少なくとも反応させる方法が挙げられる。反応温度は第一の製造方法と同様に行うことができる。
なお、第二の製造方法で得られる変性エポキシ樹脂においても、平均多官能化度(X1)は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.6~10.0の範囲内、さらに好ましくは0.7~6.0の範囲内、特に好ましくは1.3~3.7の範囲内とすることができ、平均多官能化濃度(Y1)は、通常0.10(mmol/g)以上、好ましくは0.10~5.00(mmol/g)の範囲内で、より好ましくは0.40~3.00(mmol/g)の範囲内、さらに好ましくは0.40~2.00(mmol/g)の範囲内とすることができる。
変性エポキシ樹脂の製造方法に際して用いられる溶媒は、反応系においてエポキシ化合物等と反応することなく溶媒としての機能を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール等のアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
<変性エポキシ樹脂の重量平均分子量>
本発明の変性エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、塗料を構成した際の塗膜仕上がり性、防食性(付きまわり性)等の観点から、通常500~50,000の範囲内であり、さらに1,000~20,000の範囲内であり、さらに特に1,500~10,000の範囲内であることが好ましい。
本明細書における重量平均分子量は、特に記載がない限り、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を用い、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
<変性エポキシ樹脂の末端官能基>
前記変性エポキシ樹脂は、末端官能基の一部又は全部がエポキシ基以外のものであることが好ましい。
前記化合物(γ)が、前記化合物(γ1-1)を含有する時に、変性エポキシ樹脂の末端が化合物(γ1-1)により封鎖され、末端官能基の一部又は全部がエポキシ基以外のものになり得る。
なかでも、本発明の変性エポキシ樹脂の末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)又は下記構造式(2)で表される有機基を有することが好ましい。
Figure 2023050150000008
〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~13のアルキルオキシメチル基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表し、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
Figure 2023050150000009
〔式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~13のアルキルオキシメチル基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表し、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基を表す。〕
前記末端の変性エポキシ樹脂は、前記化合物(α)と、前記化合物(γ1-1-1)とを反応せしめることによって製造することが出来る。
前記化合物(γ1-1-1)としては、例えば、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシブトキシ)フェニル]プロパン、複素環式化合物(γ1-1-1-1)とジオール化合物(γ1-1-1-2)との反応物、ヒドロキシアルキルクロライドとジオール化合物(γ1-1-1-2)との反応物などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、複素環式化合物(γ1-1-1-1)とジオール化合物(γ1-1-1-2)とを反応せしめて得られる変性剤が好ましい。
前記複素環式化合物(γ1-1-1-1)としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
また、前記ジオール化合物(γ1-1-1-2)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールEなどのポリフェノール化合物が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
前記複素環式化合物(γ1-1-1-1)と前記ジオール化合物(γ1-1-1-2)の反応は、通常、適当な溶媒中で、約60~約250℃、好ましくは約70~約200℃の温度で1~25時間程度、好ましくは1~12時間程度で行なうことができる。前記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
前記化合物(α)と前記化合物(γ1-1-1)を反応せしめることによって、樹脂末端の少なくとも一部が前記構造式(1)又は前記構造式(2)で表される有機基を有する変性エポキシ樹脂を製造することができる。
[水性樹脂分散体]
本発明の水性樹脂分散体は、前記変性エポキシ樹脂を、水性媒体に分散させることにより得られる。水性媒体への分散方法としては、前記変性エポキシ樹脂と乳化剤(高極性樹脂を含む)とを含む混合溶液と水性媒体を混ぜる方法、高極性官能基を付加した変性エポキシ樹脂溶液と水性媒体を混ぜる方法などがあり、いずれも好適に用いることができる。
本発明において、「水性樹脂分散体」とは、前記水性媒体中に前記変性エポキシ樹脂成分が溶解せずに粒子状態で存在している状態のものをいう。
水性樹脂分散体中の変性エポキシ樹脂の含有量は、固形分を基準として、10~90質量%以上が好ましい。
前記変性エポキシ樹脂と後述するアミン付加エポキシ樹脂を含むエポキシ系樹脂と、硬化剤(ブロック化ポリイソシアネート化合物など)とを混合して、水性媒体に分散することが好ましい。その場合、硬化剤は、ブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
また、前記エポキシ系樹脂(変性エポキシ樹脂とアミン付加エポキシ樹脂を含む)と硬化剤の混合比(質量比)は、前記エポキシ系樹脂/前記硬化剤としての固形分比で1/99~99/1が好ましく、30/70~90/10がより好ましく、40/60~85/15がさらに好ましい。
変性エポキシ樹脂を分散させる際に用いられる水性媒体は、水及び/又は親水性溶媒を主成分(溶媒中に50質量%以上含有)とする溶媒である。その他の溶媒として、例えば、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、及びエーテルアルコール系溶媒、あるいはこれらの混合物等を含んでいてもよい。
ここで、親水性溶媒としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、グライム系溶媒(例えばエチレングリコールジメチルエーテル等)、ジグライム系溶媒(例えばジエチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール等)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明の水性樹脂分散体は、前記変性エポキシ樹脂又は前記エポキシ系樹脂と、硬化剤以外に、中和剤、乳化剤、触媒等の添加剤、その他の樹脂成分などを必要に応じて含有することができる。
水性媒体中への前記変性エポキシ樹脂又は前記エポキシ系樹脂の分散は、前記変性エポキシ樹脂又は前記エポキシ系樹脂と、必要に応じて含有できるその他の樹脂成分を含んだ樹脂溶液に対して撹拌しながら水性媒体を加えてもよく、また、水性媒体に対して樹脂溶液を撹拌しながら加えてもよく、また、水性媒体と樹脂溶液とを混合してから撹拌してもよい。分散温度としては、100℃未満が好ましく40~99℃がより好ましく、50~95℃がさらに好ましい。得られた分散物の樹脂固形分濃度は、5~80質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
[電着塗料]
本発明の電着塗料は、本発明の変性エポキシ樹脂及び/又はその変性物を含むものであれば、カチオン電着塗料、アニオン電着塗料のいずれでもよい。
<カチオン電着塗料>
本発明のカチオン電着塗料は、塗膜形成樹脂成分として、本発明の変性エポキシ樹脂と、アミン付加エポキシ樹脂と、硬化剤を含有する。
カチオン電着塗料の製造方法としては、まず、変性エポキシ樹脂と、アミン付加エポキシ樹脂と、硬化剤を混合した溶液に、水性媒体を混合して水性樹脂分散体を製造し、さらに水性樹脂分散体に後述する顔料ペーストとその他の成分を混ぜてカチオン電着塗料を製造する方法が好適である。
前記変性エポキシ樹脂、アミン付加エポキシ樹脂、及び硬化剤の含有量としては、樹脂固形分を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
・変性エポキシ樹脂:1~70質量%、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%。
・アミン付加エポキシ樹脂:1~95質量%、好ましくは10~85質量%、より好ましくは30~75質量%。
・硬化剤:1~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~45質量%。
<アミン付加エポキシ樹脂>
前記アミン付加エポキシ樹脂としては、前記化合物(α)とアミン化合物とを少なくとも反応させて得ることができる。
前記アミン付加エポキシ樹脂の原料として用いる化合物(α)としては、エポキシ基を2個有する化合物が好ましく、市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
また、前記化合物(γ)として挙げた2価のフェノール系化合物等を反応させて分子量を延ばすこともできる。
前記アミン化合物としては、エポキシ基との反応性を有するアミン化合物であれば特に限定されない。例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミン等のモノ-アルキルアミン又はジ-アルキルアミン;モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミン、N-ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-tert-ブチルアミノ-1,2-プロパンジオール、N-メチルグルカミン、N-オクチルグルカミン等のアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノブチル)アミン等のアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン等の芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1-メチルピペラジン、3-ピロリジノール、3-ピぺリジノール、4-ピロリジノール等の複素環を有するポリアミン;前記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1~30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;前記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;前記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
アミン付加エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、塗料を構成した際の塗膜仕上がり性、防食性(付きまわり性)等の観点から、通常1,000~50,000の範囲内であり、さらに1,300~20,000の範囲内であり、さらに特に1,600~10,000の範囲内であることが好ましい。アミン付加エポキシ樹脂のアミン価としては、水分散性と塗料を構成した際の塗膜防食性向上の点から、樹脂固形分を基準として、通常11mgKOH/g以上であり、15~200mgKOH/gの範囲内が好ましく、30~150mgKOH/gの範囲内がより好ましい。本明細書におけるアミン価は、JIS K
7237-1995に準じて測定して得られる、樹脂固形分当たりのアミン価(mgKOH/g)である。
本発明のカチオン電着塗料は、本発明の変性エポキシ樹脂とアミン付加エポキシ樹脂を少なくとも含む塗膜形成樹脂成分と、少なくとも前記変性エポキシ樹脂と硬化可能な硬化剤とを必須成分として含有する。
必要に応じて、その他の樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など)、硬化触媒、顔料、水等の溶媒、添加剤(界面活性剤、表面調整剤、硬化助触媒、中和剤等)を含有していてもよい。
本発明のカチオン電着塗料は、下記式(3)
式(3):
カチオン電着塗料に含まれるエポキシ系樹脂の平均多官能化濃度(Y2)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000×(変性エポキシ樹脂量÷全てのエポキシ系樹脂量)
で示されるカチオン電着塗料に含まれるエポキシ系樹脂の平均多官能化濃度(Y2)が0.1(mmol/g)以上(好ましくは0.1~5mmol/gの範囲内、より好ましくは0.4~3.0mmol/gの範囲内、さらに好ましくは0.4~2.0mmol/gの範囲内)である。
なお、前記の平均多官能化濃度(Y2)は、カチオン電着塗料に含有している全てのエポキシ系樹脂(変性エポキシ樹脂、アミン付加エポキシ樹脂など)の平均多官能化濃度(Y2)である。
なお、前記「エポキシ系樹脂」とは、エポキシ化合物(前記化合物(α)など)とその他の化合物を反応して得られた樹脂を含むものであり、前記変性エポキシ樹脂及びアミン付加エポキシ樹脂を含む。
(硬化剤)
本発明のカチオン電着塗料に含まれる硬化剤は、活性水素含有基と反応する既知の化合物を制限なく使用できるが、特にブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることが好適である。
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とブロック剤との付加反応生成物である。また、必要に応じて、ブロック剤以外の活性水素含有化合物を用い、ブロック剤と共にポリイソシアネート化合物と反応させたものを用いることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、公知のものを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ポリメリックMDI、クルードTDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、MDI等(好ましくはクルードMDI等)の芳香族ポリイソシアネート化合物が防食性のためにより好ましい。
ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、付加によって生成するブロック化ポリイソシアネート化合物は常温(20±15℃)において安定であるが、塗膜の焼付け温度(例えば、約80~約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
ブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物;フェノール、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール系化合物;n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のアルコール系化合物;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸イソプロピル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、メチル-5-メチルピラゾール-3-カルボキシレート、3-メチル-5-フェニルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール-4-カルボキシアニリド等のピラゾール系化合物;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系化合物;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系化合物;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系化合物;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系化合物;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系化合物;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
なかでも、ブロック剤としては、ピラゾール系化合物、活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、フェノール系化合物、ラクタム系化合物及びアルコール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(硬化触媒)
本発明のカチオン電着塗料は、本発明の変性エポキシ樹脂とアミン付加エポキシ樹脂を少なくとも含む塗膜形成樹脂成分と、少なくとも前記変性エポキシ樹脂と硬化可能な硬化剤との硬化反応を促進する硬化触媒を含んでいてもよい。硬化触媒は、特に限定されないが、例えば、ビスマス化合物を含んでいてもよい。さらに、ビスマス化合物に加えて、例えば、亜鉛化合物、錫化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物等の無機化合物;フォスファゼン化合物、アミン化合物、4級塩化合物等の有機化合物;これらの複合物等からなる群より選ばれる1種以上の硬化触媒を併用することができる。
なお、塗膜硬化性の向上を目的として、硬化触媒として、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の有機錫化合物を用いることができるが、昨今の有機錫化合物に対する環境規制から、有機錫化合物を用いないことが好ましい。
有機錫化合物の代替触媒として、ビスマス化合物、又は、ビスマス化合物と、亜鉛化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物等の無機化合物;フォスファゼン化合物、アミン化合物、4級塩化合物等の有機化合物;これらの複合物等からなる群より選ばれる1種以上の硬化触媒を用いること、若しくは硬化触媒を実質的に用いないことが、環境面への配慮の観点から更に好ましい。
本発明のカチオン電着塗料は、硬化触媒として環境面・安全面から、ビスマス化合物を含むことが好ましい。
ビスマス化合物としては、金属ビスマス、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、臭化ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、ケイ酸アルミン酸ビスマス、アルミン酸ビスマス、ホウ酸ビスマス、リン酸ビスマス、炭酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等の無機ビスマス化合物、ギ酸ビスマス、酢酸ビスマス、サリチル酸ビスマス、クエン酸ビスマス、安息香酸ビスマス、没食子酸ビスマス、シュウ酸ビスマス、乳酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、ジメチロールプロピオン酸ビスマス、ジアルキルジチオカルバミン酸ビスマス、トルエンスルホン酸ビスマス、トリフェニルビスマス等の有機ビスマス化合物、等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明のカチオン電着塗料におけるビスマス化合物の配合割合は、樹脂固形分100質量部を基準にして、0.1~10質量部であり、0.5~6質量部であることが好ましい。
(顔料)
本発明のカチオン電着塗料は、顔料を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、着色顔料、防錆顔料、体質顔料等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
これらの顔料は、顔料分散ペーストとして塗料に混合することが好適である。例えば、顔料分散用樹脂、顔料、及び中和剤等の各種添加剤を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストとして調製したものを、カチオン電着塗料に用いることができる。
顔料としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカ等の体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛等の防錆顔料としての機能を持つ金属化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
なお、本発明においては、シリカを用いる場合、その使用量は5質量%未満とされる。
顔料分散ペーストに配合されていてもよい顔料分散用樹脂としては、特に限定されない。例えば、水酸基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂、水酸基及びカチオン性基を有するアクリル樹脂、3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂、3級アミン型アクリル樹脂、4級アンモニウム塩型アクリル樹脂、3級スルホニウム塩型アクリル樹脂等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
顔料の配合量は、カチオン電着塗料の樹脂固形分100質量部当たり、1~100質量部、特に10~50質量部の範囲内が好ましい。
(一層型のカチオン電着塗料)
本発明のカチオン電着塗料は、一層型のカチオン電着塗料であることが好ましい。一層型カチオン電着塗料とは、塗料をカチオン電着塗装して加熱硬化した場合に、塗膜の厚さ方向の成分がほぼ均一となる一層の塗膜を形成する塗料である。
例えば、本発明の一層型のカチオン電着塗料は、電着塗装した塗膜の断面を顕微鏡で観察した場合に、二層分離(又は多層分離)していない塗膜を形成するカチオン電着塗料である。尚、顔料成分や樹脂成分などに多少の偏りがある場合であっても、断面観察で層と層の境界面が現れない場合は一層の塗膜である。
また、例えば、本発明の一層型のカチオン電着塗料は、一回の電着塗装により、下層部(金属基体表面側。以下同じ。)に、主として防食性樹脂(エポキシ系樹脂)が分布し、且つ上層部に主としてエポキシ系樹脂以外の樹脂が分布するような濃度勾配を有する複層膜を形成しないカチオン電着塗料である。
(カチオン電着塗装方法及び塗装物品)
本発明のカチオン電着塗料を用いたカチオン電着塗装方法は、前記カチオン電着塗料からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陰極として通電する工程を含む。
本発明のカチオン電着塗料が闘争された塗装物品は、前記カチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装して得ることができる。
カチオン電着塗料の被塗物としては、自動車ボディ、自動車部品、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属を含む被塗物であれば特に制限はない。
被塗物としての金属板としては、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等で表面を清浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
カチオン電着塗装方法としては、例えば、脱イオン水等で希釈して固形分濃度を約5~40質量%、好ましくは10~25質量%に、さらにpHを4.0~9.0、好ましくは5.5~7.0の範囲内に調整したカチオン電着塗料を浴として、通常、浴温15~35℃に調整し、負荷電圧100~400V、好ましくは150~350Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行う。カチオン電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
カチオン電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5~40μm、好ましくは10~30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機等の乾燥設備を用いて、塗装物品表面の温度で、160℃より高く、且つ200℃より低い温度が一般的であるが、本発明においては、エネルギーコスト削減の観点から、好ましくは160℃未満、より好ましくは80~130℃、特に好ましくは100~130℃である。焼付け時間は10~180分、好ましくは20~50分である。前記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
[エポキシ樹脂の製造]
<製造例1>
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、jER828EL(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量380)1140部、ビスフェノールA 456部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.1部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)200部を加え、160℃でエポキシ当量が約800になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。
次いで、ジエチレントリアミンのジケチミン化物(90%品)178部、ジエタノールアミン 137部を加え、120℃で4時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%のアミノ基を有する多官能ではない直鎖状のアミン付加エポキシ樹脂(A-0)溶液を得た。
得られたアミン付加エポキシ樹脂(A-0)の数平均分子量は約1900、アミン価が92mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0、平均多官能化濃度(Y1)が0であった。
<製造例2>
オートクレーブに、ビスフェノールA 228部、水酸化カリウム0.6部を仕込み、反応容器の窒素置換を行なった。そこにエチレンオキシドを44部加え、ゆっくりと約160℃まで昇温して反応終了後に冷却し、濃硫酸で中和した。次いでエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、明細書中の化合物(γ1-1-1)となる固形分80%の化合物(Z)溶液を製造した。
<実施例1-1>
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物、分子量375)1914部、ビスフェノールA610部、ジメチルベンジルアミン(触媒)3.8部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)280.4部を加え、150℃でエポキシ当量が555になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、製造例2の化合物(Z)を固形分換算で1522部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%の多官能のエポキシ樹脂(A-1)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-1)は、アミン価が0mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.15、及び、平均多官能化濃度(Y1)が0.1であった。
<実施例1-2>
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物、分子量375)2082部、ビスフェノールA292部、ジメチルベンジルアミン(触媒)3.6部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)263.7部を加え、150℃でエポキシ当量が397になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、化合物(Z)を固形分換算で1923部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%の多官能のエポキシ樹脂(A-2)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-2)は、アミン価が0mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が1.50、及び、平均多官能化濃度(Y1)が1.6であった。
<実施例1-3>
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物、分子量375)1915部、多官能化剤1(注1)275部、ビスフェノールA228部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)268.6部を加え、150℃でエポキシ当量が434になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、化合物(Z)を固形分換算で1793部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%の多官能のエポキシ樹脂(A-3)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-3)は、アミン価が0mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.8、及び、平均多官能化濃度(Y1)が0.41であった。
<実施例1-4>
撹拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物、分子量375)1928部、多官能化剤1(注1)533部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)273.4部を加え、150℃でエポキシ当量が475になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、化合物(Z)を固形分換算で1683部を加え、120℃で3時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%の多官能のエポキシ樹脂(A-4)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-4)は、アミン価が0mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が3.02、及び、平均多官能化濃度(Y1)が0.8であった。
<実施例1-5>
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA1054部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物、分子量375)378部、多官能化剤2(注2)21部、及びTBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.0部と、メチルイソブチルケトン(溶媒)をビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAと多官能化剤の合計質量の10%加え、160℃でエポキシ当量が727になるまで反応させた。次いで得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。次いで、化合物(Z)を固形分換算で544部加え、120℃で4時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%の多官能の変性エポキシ樹脂(A-5)溶液を得た。
得られたエポキシ樹脂(A-5)は、アミン価が0mgKOH/g、平均多官能化度(X1)が0.1、平均多官能化濃度(Y1)が0.05であった。
<実施例1-6~1-12>
下記表1の配合とする以外は実施例1-5と同様にして、多官能の変性エポキシ樹脂(A-6)~(A-12)溶液を製造した。
Figure 2023050150000010
(注1)多官能化剤1:下記構造式におけるp=q=r=0、R=R=R=Hの化合物であって、nが1以上である化合物の合計量に対する各nの値の化合物の含有割合が下記表2で示される混合物。平均官能基数8.4、重量平均分子量878。
Figure 2023050150000011
Figure 2023050150000012
(注2)多官能化剤2:トリメリット酸(分子量210、官能基数3)
(注3)多官能化剤3:ダイマー酸(混合品、詳細は下記表3に記載)
(注4)多官能化剤4:下記構造式の化合物(混合品、詳細は下記表3に記載)
Figure 2023050150000013
(nは0以上の整数)
Figure 2023050150000014
<比較例1-1>
撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却器を取りつけた反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ化合物、分子量375)1140部、ビスフェノールA456部、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド;触媒)1.1部及びメチルイソブチルケトン(溶媒)200部を加え、160℃でエポキシ当量が約800になるまで反応させ、得られた反応生成物をメチルイソブチルケトンで固形分80%となるまで希釈した。
次いで、ジメチロールプロピオン酸255部を加え、120℃で4時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加え、固形分75%の多官能ではない直鎖状の変性エポキシ樹脂(A-13)溶液を得た。得られた変性エポキシ樹脂(A-13)の数平均分子量は約1900、アミン価は0mgKOH/g、平均多官能化度(X1)は0、平均多官能化濃度(Y1)は0であった。
[カチオン電着塗料]
<顔料分散用樹脂の製造>
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、重量平均分子量350)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ダイセル化学工業社製商品名、ポリカプロラクトンジオール、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、90℃でエポキシ基が消失するまで反応させた。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する多官能ではない顔料分散用樹脂を得た。
<顔料分散ペーストの製造>
固形分60%の4級アンモニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー6.0部、カーボンブラック0.3部、水酸化ビスマス3部、及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
<ブロック化ポリイソシアネート化合物の製造>
反応容器中に、コスモネートM-200(商品名、三井化学社製、クルードMDI、NCO基含有率31.3%)270部、及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネート化合物を得た。
<実施例2-1>
製造例1で得られたアミン付加エポキシ樹脂60部(固形分)、実施例1-1で得られた変性エポキシ樹脂(A-1)40部(固形分)、ブロック化ポリイソシアネート化合物45部(固形分)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に撹拌した後、脱イオン水を強く撹拌しながら約15分間を要して滴下して固形分34%のエマルションを得た。
次に、上記エマルション294部(固形分100部)、顔料分散ペースト52.4部及び脱イオン水を加え、固形分20%のカチオン電着塗料(X-1)を製造した。カチオン電着塗料(X-1)の平均多官能化濃度(Y2)を表4に記載する。
得られたカチオン電着塗料を用いて電着塗装し、加熱硬化させて電着塗膜を得た。得られた電着塗膜について、仕上がり肌、防食性(塩水噴霧)、防食性(塩水浸漬)及び耐油ハジキ性を評価した。結果を併せて表4に記載する。
本発明においては、4つの評価のうち1つでも不合格「C」であった場合は不合格となる。なお、表中の樹脂含有量は全て固形分の値である。
<実施例2-2~2-12、及び比較例2-1>
下記表4の配合とする以外は全て実施例2-1と同様にして固形分20%のカチオン電着塗料(X-2)~(X-13)を製造した。各種評価結果を表4に記載する。
Figure 2023050150000015
<評価>
(仕上り肌)
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が19μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。続いて上記試験板の塗面を、サーフテスト301(ミツトヨ社製商品名、表面粗度計)を用いて、JIS B 601に定義される、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定し、以下の基準で評価した。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:表面粗度値(Ra)が0.15未満。
A:表面粗度値(Ra)が0.15以上でかつ0.25未満。
B1:表面粗度値(Ra)が0.25以上でかつ0.35未満。
B2:表面粗度値(Ra)が0.35以上でかつ0.45未満。
C:表面粗度値(Ra)が0.45以上。
(防食性(塩水噴霧))
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が19μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。続いて上記試験板の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z-2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの片側での錆、フクレ幅によって下記の評価基準に基づき評価を行った。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mm以下であり、防食性が非常に優れている。
A:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mmを超え、かつ3.0mm以下であり、防食性が良好である。
B:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で3.0mmを超え、かつ4.0mm以下であり、防食性は標準である。
C:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で4.0mmを超えており、防食性が劣る。
(防食性(塩水浸漬))
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が19μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。続いて上記試験板を、50℃の濃度5重量%の塩水に600時間浸漬した後、試験板を引き上げ、塗膜表面の水分を拭き取り除去し、ついで、塗膜表面にセロハン粘着テープを密着させ、瞬時にテープを剥離した。この剥離試験によって塗膜の剥がれた割合(%)を評価した。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が5%未満。
A:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が5%以上で、かつ10%未満。
B:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が10%以上で、かつ20%未満。
C:試験塗膜部に対して塗膜の剥がれた割合が20%以上。
(耐油ハジキ性)
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が19μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、ウェット膜を得た。
このウェット膜を水洗いし、30分間放置した後、焼付け過程で防錆用機械油(日本パーカライジング社製、商品名NOX-RUST320)0.2mlを均一に飛散付着させた。冷却後に塗膜表面を目視観察し、ハジキの個数及び大きさをカウントして、以下の評価基準に従って評価した。Sが最も良い評価であり、Cは不合格である。
S:塗膜表面にクレータの発生が全くない。
A:塗膜表面に10個未満のクレータが発生。
B:塗膜表面に10個以上のクレータが発生(いずれも直径3mm未満の大きさ。)。
C:塗膜表面に10個以上のクレータが発生(1個以上が直径3mm以上の大きさ。)。

Claims (15)

  1. エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)と、
    必要に応じて用いられる、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)と、
    エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価である化合物(γ)と、
    を含む化合物を反応して得られる変性エポキシ樹脂であって、
    下記式(1)で示される変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.10以上である変性エポキシ樹脂。
    式(1):
    平均多官能化度(X1)=変性エポキシ樹脂の1分子当たりの末端数-2
  2. 前記化合物(β)を含有し、前記化合物(α)、前記化合物(β)、及び前記化合物(γ)の合計固形分質量を基準として、前記化合物(α)が1質量%以上70質量%以下、前記化合物(β)が1質量%以上50質量%以下、及び前記化合物(γ)が10質量%以上90質量%以下の含有割合である、請求項1に記載の変性エポキシ樹脂。
  3. 前記化合物(β)のエポキシ基と反応する官能基が、フェノール性水酸基、イソシアネート基、カルボキシル基、1級及び/又は2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基である、請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂。
  4. 請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂において、下記式(2)で示される平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、変性エポキシ樹脂。
    式(2):
    平均多官能化濃度(Y1)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000
  5. 前記化合物(γ)が、アミノ基を有さない化合物(γ1)を含有する、請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂。
  6. 前記化合物(γ)が、アミノ基を有さない化合物である、請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂。
  7. 請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂の末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)又は下記構造式(2)で表される有機基を有する変性エポキシ樹脂。
    Figure 2023050150000016
    〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~13のアルキルオキシメチル基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表し、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
    Figure 2023050150000017
    〔式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~13のアルキルオキシメチル基を表す。Rは、水素原子又はメチル基を表し、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基を表す。〕
  8. 請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂が水性媒体に分散している水性樹脂分散体。
  9. 請求項1又は2に記載の変性エポキシ樹脂及びアミン付加エポキシ樹脂を含むエポキシ系樹脂と、硬化剤とを含有するカチオン電着塗料。
  10. 下記式(3)で示されるカチオン電着塗料に含まれるエポキシ系樹脂の平均多官能化濃度(Y2)が0.10以上である、請求項9に記載のカチオン電着塗料。
    式(3):
    カチオン電着塗料に含まれるエポキシ系樹脂の平均多官能化濃度(Y2)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000×(変性エポキシ樹脂量÷全てのエポキシ系樹脂量)
  11. 請求項9に記載のカチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗膜形成方法。
  12. エポキシ基を1つ以上有する化合物(α)と、
    エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が3価以上の官能基の官能価数の合計が3価以上である化合物(β)と、
    を少なくとも反応させてエポキシ樹脂(X)を製造し、
    次いで、エポキシ基と反応する官能基を有し、前記官能基の官能価数の合計が1価又は2価である化合物(γ)を少なくとも反応させる変性エポキシ樹脂の製造方法であって、
    下記式(1)で示される変性エポキシ樹脂の1分子当たりの平均多官能化度(X1)が0.10以上である変性エポキシ樹脂の製造方法。
    式(1):
    平均多官能化度(X1)=変性エポキシ樹脂の1分子当たりの末端数-2
  13. 下記式(2)で示される変性エポキシ樹脂の平均多官能化濃度(Y1)が0.10以上である、請求項12に記載の変性エポキシ樹脂の製造方法。
    式(2):
    平均多官能化濃度(Y1)=変性エポキシ樹脂の平均多官能化度(X1)÷変性エポキシ樹脂の重量平均分子量Mw×1000
  14. 請求項12又は13に記載の製造方法で得られた変性エポキシ樹脂及びアミン付加エポキシ樹脂を含むエポキシ系樹脂と、硬化剤とを混合する、カチオン電着塗料の製造方法。
  15. 請求項14に記載の製造方法で得られたカチオン電着塗料を含む電着塗料浴に被塗物を浸漬し、電着塗装する塗膜形成方法。
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