JP6988673B2 - 銅合金ターゲット及びその製造方法 - Google Patents
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Description
銅合金ターゲットを工業的に量産する場合、鍛造して得た柱状の銅合金鋳塊に対して、鍛造や圧延、切断を行い板状に作製し、その後、機械加工を施して所定の長さ、幅及び厚さを有する製品として完成させる。
近年、電子部品の小型化がますます進み、電極膜や配線膜等のサイズや形状もより微細化が進んでおり、微細化した電極膜や配線膜等には、要求される特性範囲が非常に狭くなってきている。
そこで、本発明者らは、スパッタリング成膜に用いた経過時間と、スパッタリング成膜により形成された被膜を構成する銅合金の組成、及び被膜が形成された電極膜や配線膜の特性(例えば、電気抵抗値等)との関係について、調査・分析を行った。その結果、上述したバラツキの原因が、銅合金ターゲット内の組成差により生じており、その組成差は銅合金ターゲットの製造に用いる、鋳造により作製した柱状の銅合金鋳塊にあることを見出した。
このため、銅とニッケルからなる金属材料を溶解して作製した銅合金溶湯を用いて鋳造した柱状の銅合金鋳塊の場合、銅合金鋳塊の全領域にわたって組成が均一化するものと考えられていた。
次に、作製した夫々の円柱状の銅合金鋳塊について、高さ方向に沿って半分に切断し、図5(b)に示す切断面の各位置でのニッケル含有量を測定した。ニッケル含有量の測定は、切断面の各位置をドリルにより深さ20mm掘削し、掘削により得た切削屑をサンプルとして採取し、採取したサンプルに対しICP分析装置を用いて定量分析することにより行った。そして、この測定値を用いて、夫々の銅合金鋳塊の全測定位置におけるニッケル含有量の最大値と当該銅合金鋳塊の全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を当該銅合金鋳塊の全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率と、夫々の銅合金鋳塊の全測定位置におけるニッケル含有量の最小値と当該銅合金鋳塊の全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を当該銅合金鋳塊の全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率とを、当該銅合金鋳塊におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値として算出した。
そのときの夫々の銅合金鋳塊の各測定位置におけるニッケル含有量及び夫々の銅合金鋳塊におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値を次の表1−1〜1−3に示す。
なお、図5(b)中、A、B、Cは夫々の円柱状の銅合金鋳塊の切断面における高さ方向の位置を示し、1〜11は切断面における径方向の位置を示している。また、表1−2、1−3中、「エリア1−3」は径方向の位置1〜3と高さ方向の位置A〜Cとで特定される測定位置の集合領域、「エリア5−7」は径方向の位置5〜7と高さ方向の位置A〜Cとで特定される測定位置の集合領域、「エリア4−8」は径方向の位置4〜8と高さ方向の位置A〜Cとで特定される測定位置の集合領域、「エリア9−11」は径方向の位置9〜11と高さ方向の位置A〜Cとで特定される測定位置の集合領域、「エリア全体」は径方向の位置1〜11と高さ方向の位置A〜Cとで特定される測定位置の集合領域(全測定位置)を夫々示している。
詳しくは、径方向の周辺位置(径方向位置1〜3、9〜11)のエリア(エリア1−3、9−11)におけるニッケル含有量の平均値は、試料1(第1の銅合金鋳塊)では30.1、30.2質量%、試料2(第2の銅合金鋳塊)では30.1質量%となっているのに対し、径方向の中央位置(径方向位置4〜8)のエリア(エリア4−8)におけるニッケル含有量の平均値は、試料1、試料2のいずれも31.2質量%となっており、さらに、径方向の中央位置(径方向位置5〜7)のエリア(エリア5−7)におけるニッケル含有量の平均値は、試料1、試料2のいずれも31.5質量%となっていることが認められた。
また、径方向の中央位置(径方向位置5〜7)のエリア(エリア5−7)におけるニッケル含有量の最大値は、試料1では32.3質量%、試料2では32.6質量%で、全測定位置(エリア全体)におけるニッケル含有量の最大値となっていることが認められた。
そのときの夫々のエリア内の全測定位置のニッケル含有量の平均値及び夫々のエリアにおけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値を、エリア全体の全測定位置におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値とともに次の表1−4に示す。
そして、本発明者らは、この着想に基づいて銅とニッケルとからなる銅合金ターゲットを作製し、銅合金ターゲットを用いてスパッタリング成膜を行うと、スパッタリング成膜に用いた経過時間の違いによる、スパッタリング成膜により形成された被膜を構成する銅合金の組成のバラツキを極力抑えられることを見出し、本発明の銅合金ターゲット及びその製造方法を導出するに至った。
本実施形態の銅合金ターゲットは、銅とニッケルとの合金からなり、ニッケルが10質量%を超えて質量50%以下の割合で含有されている銅合金ターゲットであって、銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と銅合金ターゲット全領域のニッケル含有量の平均値との差を銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値が、3%以下となっている。
本実施形態の銅合金ターゲットのように、銅とニッケルとからなる合金におけるニッケル含有量を、10質量%を超えて質量50%以下にすれば、耐食性・耐熱性・耐酸化性が向上し、スパッタリングにより形成される電極膜や配線膜等の電気抵抗値を向上させることができる。
一方、銅合金ターゲット中のニッケル含有量が10質量%以下であると、十分な耐食性・耐熱性・耐酸化性が得られないため、好ましくない。
なお、銅とニッケルとの合金からなる銅合金ターゲットにおけるニッケル含有量は、50質量%で抵抗値が最大となり、50%を超えると、抵抗値が低下する。
本実施形態の銅合金ターゲットのように、銅合金ターゲットの各領域のニッケル含有量のバラツキ(銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値との差を銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値の最大値)を低減させることにより、スパッタリングに用いた経過時間の違いによる、スパッタリングにより形成された電極膜や配線膜等を構成する銅合金の組成のバラツキを極力抑えることができ、電極膜や配線膜等の特性のバラツキを最小限に抑えることができる。
なお、近年の小型化、薄膜化の進んでいる電子部品に電極膜や配線膜を形成する際、銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と銅合金ターゲット全領域のニッケル含有量の平均値との差を銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値が、3%以下を満たすことが必要であり、より好ましくは、1%以下であるのがよい。
本実施形態の銅合金ターゲットの製造方法では、真空溶解炉で銅、ニッケルを溶解して銅合金溶湯を作製し、作製した銅合金溶湯を用いて鋳造を行い、柱状の銅合金鋳塊を作製し、銅合金鋳塊を作製後に、銅合金鋳塊を高さ方向に沿って半分に切断し、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し5%〜10%の相似比となる相似領域を少なくとも有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する、中央の柱状部分を切削し除去する。銅合金鋳塊を作製後に、銅合金鋳塊の中央の柱状部分を切削などにより除去した後に、銅合金鋳塊を高さ方向に沿って半分に切断してもよい。
本実施形態の銅合金ターゲットの製造方法のように、切削し除去する中央の柱状部分を、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し5%〜10%の相似比となる相似領域を少なくとも有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有するようにすれば、作製した銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値との差を銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値を3%以下に抑えることができ、スパッタリングに用いた経過時間の違いによる、スパッタリングにより形成された電極膜や配線膜等を構成する銅合金の組成のバラツキが極力抑えられ、電極膜や配線膜等の特性のバラツキを最小限に抑えることができる。
これに対し、切削し除去する中央の柱状部分を、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し5%の相似比となる相似領域を有さないようにすると、切削し除去する中央の柱状部分の高さを銅合金鋳塊と同じ高さにしても、作製した銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値との差を銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値を3%以下に抑えることが困難になり、スパッタリング成膜に用いた経過時間の違いにより、スパッタリング成膜により形成された被膜を構成する銅合金の組成のバラツキを十分に抑えることができない。
また、中央の柱状部分を、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し10%を超えた相似比となる相似領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有するようにして、銅合金鋳塊を切削し除去しても、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し10%の相似比となる相似領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有するようにして、銅合金鋳塊を切削し除去した場合と比べて、作製した銅合金ターゲットの各領域のニッケル含有量のバラツキを抑える効果は殆ど変わらない。このため、作製する材料の無駄をなくすためには、上記中央の柱状部分は、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し10%の相似比となる相似領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有するようにするのが好ましい。
なお、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し5%〜10%の相似比となる相似領域を少なくとも有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有すれば、切削し除去する中央の柱状部分は、銅合金鋳塊と相似、非相似のいずれの形状でもよく、例えば、除去に要する工数や、除去による銅合金の損失量等を判断材料として、コストの観点から最適な形状を選択することができる。
鍛造を行う際の上記加熱は、銅合金鋳塊を塑性変形し易くするために行うものである。しかし、銅合金鋳塊に対する鍛造を行う際の加熱温度が該銅合金の固相線以上の温度になると、一部の組成が溶け出して銅合金の組成が変動してしまったり、溶け出した部分がボイドになったり、溶け出した合金により加熱装置が故障してしまったりする虞があるため、好ましくない。一方、銅合金鋳塊に対する鍛造を行う際の温度が低すぎると、銅合金鋳塊が硬すぎて加工性が悪くなり、クラックを生じてしまったりする場合があるため、好ましくない。
しかるに、本実施形態の銅合金ターゲットを構成する金属の融点は、銅が約1,085℃、ニッケルが1,455℃であり、全率固溶である銅ニッケル合金の融点はその間の温度であり、銅合金ターゲットの製造方法に用いる銅合金鋳塊における固相線が最も低い温度は銅の約1,085℃であるため、中心部を切削した銅合金鋳塊に対して鍛造を行う際に加熱する第1の温度は、銅の融点を下回り、かつ極力加工性を向上させるため1,000℃以上の温度とする。
本発明の銅合金鋳塊などの合金の塊に鍛造や圧延等の加工を施すと、一般に合金組織にひずみが生じ硬化する。硬化が進むと変形しづらくなり割れを生じる虞がある。そこで、上述のように銅合金鋳塊の鍛造や鍛造後の圧延処理を行う際には、材料を一旦加熱させ、合金組織内のひずみを解放させた後に、所定の厚さに調整された板体を形成する。材料の加熱は、加工後の材料内に生じるひずみ量に応じて適宜行う。
熱間圧延時の温度は、高温であるほど加工性は向上するが、その分、酸化し易くなり、表面に酸化被膜が作られてしまい易くなる。
そこで、鍛造した銅合金鋳塊を熱間圧延する際に加熱する第2の温度は、900℃±100℃の範囲内の温度とする。
冷間圧延は、製品としての銅合金ターゲットを形成するための板体の表面状態(凹凸)や、厚さ精度の調整のために行う。
熱間圧延後の板体は、板体が冷却するとともに収縮するが、加熱時の温度のバラツキや形成されるひずみ量のバラツキなどにより、表面に凹凸が形成されたり、また、収縮後の厚さの精度が悪くなったりすることがあり、精度の高い板体を製造することは困難である。
銅合金ターゲットの製造においては、最終的な製品にする際に、板体表面の酸化被膜を除去するとともに平滑性を出すために、板体の表面を切削する等の機械加工を行い、製品形状とサイズを調整する。このときの切削量を極力少なくするためには、機械加工する前段階の母材としての板体を精度良く製造することが必要である。
そこで、本実施形態の製造方法では、熱間圧延後の板体に対し、冷間圧延を行い、板体の表面状態や厚さ精度の調整を行う。冷間圧延後の板体は、熱間圧延のような処理後の冷却が無いため、加工後の変形量を極力少なくすることができる。
なお、冷間圧延は、冷間圧延前の板体に対して、最終的な板体の加工率が5%以上となるようにして行う。
加工率が5%未満であると、熱間圧延時に生じた表面の凹凸などが十分に解消される前に、所定の厚さになってしまう場合があるため好ましくない。
<銅合金ターゲットの製造>
実施例及び比較例の夫々において、ニッケル含有量が30質量%となるように、銅とニッケルとからなる金属材料を夫々準備し、次の処理を施すことにより銅合金ターゲットを製造した。
チャンバー内を0.009Pa以下まで真空引きした後、アルゴンガスを500Paまで導入した高周波溶解炉を用いて、ニッケル含有量が30質量%となるように、夫々の添加量を予め調整した、銅とニッケルとからなる金属材料を溶解して銅合金溶湯を作製し、上記圧力下で10分間保持した後に黒鉛鋳型に鋳込んで、底面の直径100mm、高さ140mmの円柱状の銅合金鋳塊を作製した。
実施例1では、作製した円柱状の銅合金鋳塊を高さ方向に沿って半分に切断した。
次に、半分に切断された夫々の半円柱状の銅合金鋳塊の底面における中央の直径5mmにわたる半円領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する半円柱状部分(銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し5%の相似比となる相似領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する、中央の柱状部分)に相当する部分を切削し除去した。
次に、中央の直径5mmにわたる半円領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する半円柱状部分が切削された夫々の半円柱状の銅合金鋳塊を1,000℃に加熱し、1,000℃に加熱した夫々の銅合金鋳塊に対し鍛造を行った。
次に、鍛造した夫々の銅合金鋳塊を900℃に加熱し、900℃に加熱した夫々の銅合金鋳塊に対し加工率を多段階に変化させて熱間圧延を繰り返し行い、長さ250mm、幅120mm、厚さ16mmの板体を2枚形成した。量産のスパッタ装置では、このサイズの板体もスパッタリングにより電極膜や配線膜等を形成する銅合金ターゲットとして使用されていることから、この板体の内1枚を銅合金ターゲットとして使用される板体におけるニッケル濃度分布測定用の試料とした。
次に、熱間圧延した残り1枚の板体に対し加工率5%以上で冷間圧延を行い、約6mm厚の板体を形成した、
その後、板体に900℃で熱処理を施し、機械加工により、上面約0.2mm、下面約0.5mmを切削して、板体の厚さを約5mmとし、更に、板体を切断し、直径75mm、厚さ5mmの円盤状の銅合金ターゲットを作製し、スパッタリング評価用の試料とした。
実施例2では、作製した円柱状の銅合金鋳塊を高さ方向に沿って半分に切断後に、半分に切断された夫々の半円柱状の銅合金鋳塊の底面における中央の直径10mmにわたる半円領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する半円柱状部分(銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し10%の相似比となる相似領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する、中央の柱状部分)を切削し除去した。
次に、実施例1と同様に鍛造し、鍛造後に熱間圧延を繰り返し行い、長さ240mm、幅120mm、厚さ16mmの板体を2枚形成し、1枚を銅合金ターゲットとして使用される板体におけるニッケル濃度分布測定用の試料とした。
その後、残り1枚の板体に対し、実施例1と同様に冷間圧延を行い、約6mm厚の板体を形成し、その後、実施例1と同様に熱処理を施し、機械加工により直径75mm、厚さ5mmの円盤状の銅合金ターゲットを作製し、スパッタリング評価用の試料とした。
比較例1では、作製した円柱状の銅合金鋳塊に対し、実施例1、2におけるような切断処理及び中央の円柱状部分の除去処理を行うことなく、1,000℃に加熱し、1,000℃に加熱した銅合金鋳塊に対し鍛造を行った。なお、評価用の試料を2種類作製するために、比較例1では円柱状の銅合金鋳塊を2つ使用した。
次に、実施例1と同様に鍛造し、鍛造後に熱間圧延を繰り返し行い、長さ523mm、幅120mm、厚さ16mmの板体を2枚形成し、1枚を銅合金ターゲットとして使用される板体におけるニッケル濃度分布測定用の試料とした。
その後、残り1枚の板体に対し、実施例1と同様に冷間圧延を行い、約6mm厚の板体を形成し、その後、実施例1と同様に熱処理を施し、機械加工により直径75mm、厚さ5mmの円盤状の銅合金ターゲットを作製し、スパッタリング評価用の試料とした。
比較例2では、作製した円柱状の銅合金鋳塊を高さ方向に沿って半分に切断後に、実施例1、2におけるような中央の円柱状部分の除去処理を行うことなく、1,000℃に加熱し、1,000℃に加熱した夫々の銅合金鋳塊に対し鍛造を行った。
次に、実施例1と同様に、鍛造後に熱間圧延を繰り返し行い、長さ260mm、幅120mm、厚さ16mmの板体を2枚形成し、1枚を銅合金ターゲットとして使用される板体におけるニッケル濃度分布測定用の試料とした。
その後、残り1枚の板体に対し、実施例1と同様に冷間圧延を行い、約6mm厚の板体を形成し、その後、実施例1と同様に熱処理を施し、機械加工により直径75mm、厚さ5mmの円盤状の銅合金ターゲットを作製し、スパッタリング評価用の試料とした。
実施例1、2、比較例1、2の夫々における、熱間圧延により形成した板体と、最終的に作製した銅合金ターゲットを試料として用いて、以下の評価を行った。
図2は本発明の各実施例にかかる銅合金ターゲットとして使用される板体における、ニッケル含有量の測定位置を示す説明図で、(a)は実施例1の板体の長さ方向及び幅方向において特定される各測定位置を示す平面図、(b)は実施例2の板体の長さ方向及び幅方向において特定される各測定位置を示す平面図、(c)は(a)、(b)夫々の板体の幅方向及び厚さ方向において特定される各測定位置を示す断面図である。図3は本発明の各比較例にかかる銅合金ターゲットとして使用される板体における、ニッケル含有量の測定位置を示す説明図で、(a)は比較例1の板体の長さ方向及び幅方向において特定される各測定位置を示す平面図、(b)は比較例2の板体の長さ方向及び幅方向において特定される各測定位置を示す平面図、(c)は(a)、(b)夫々の板体の幅方向及び厚さ方向において特定される各測定位置を示す断面図である。
そして、夫々の板体に対し、長さ方向における測定位置A側の端部(図2(a)、図2(b)、図3(a)、図3(b)における左側)から測定位置Aの境界部までを切断し、測定位置Aの端面が現れるようにした。
次に、測定位置Aの端面に対し、幅方向及び厚さ方向で特定される9箇所の測定位置(図2(c)、図3(c)参照)の夫々を、図2(a)、図2(b)、図3(a)、図3(b)に示すように、φ3mmのドリルで深さ20mm掘削した。
そして、掘削して得られた切削屑をサンプルとして採取し、採取したサンプルに対し所定のICP分析装置を用いて定量分析を行い、ニッケル含有量を測定した。
その他の測定位置に関しても、夫々の板体に対し、長さ方向における夫々の測定位置(測定位置B、C又はD)の境界部までを切断し、当該測定位置の端面が現れるようにし、当該測定位置の端面に対し、幅方向及び厚さ方向で特定される9箇所の測定位置の夫々を、φ3mmのドリルで深さ20mm掘削し、掘削して得られた切削屑をサンプルとして採取し、採取したサンプルに対し所定のICP分析装置を用いて定量分析を行い、ニッケル含有量を測定した。そして、この測定値を用いて、夫々の板体の全測定位置におけるニッケル含有量の最大値と当該板体の全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を当該板体の全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率と、夫々の板体の全測定位置におけるニッケル含有量の最小値と当該板体の全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を当該板体の全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率とを、当該板体におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値として算出した。
実施例1、2及び比較例1、2の夫々における、熱間圧延により形成した、銅合金ターゲットとして使用される板体の各測定位置でのニッケル含有量及び板体におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値を次の表2−1〜2−4に示す。
図4は本発明の各実施例及び比較例の銅合金ターゲットを用いてスパッタリングによりガラス基板に形成された被膜に対する抵抗値の測定方法を示す説明図である。
本評価では、実施例1、2、比較例1、2の夫々における、作製した銅合金ターゲットを用いて、縦横の長さ50mm、厚さ0.1mmのガラス基板に対し、所定のスパッタリング装置により、スパッタリングを行い、所定のスパッタリング経過時点でのスパッタリングにより形成された電極膜や配線膜等となる被膜におけるニッケル含有量及び電気抵抗値を測定した。
その後、スパッタリング装置を作動し、シャッターを開けてスパッタリングを行い、ガラス基板に膜厚が0.5μmの被膜を形成した後、シャッターを閉じ、スパッタリング装置の作動を一旦停止し、スパッタリング被膜が形成されたガラス基板を取り外し、新しいガラス基板を設置した。
また、このときの被膜が形成されたガラス基板を所定の経過時点における評価試料とした。
その後、シャッターを閉めた状態で、再度スパッタリング装置を作動してスパッタリングを行い、累積スパッタ時間が所定の時間経過した時点でスパッタリング装置の作動を一旦停止し、初回のスパッタ試験と同様に、銅合金ターゲットが掘られた量(深さ)の測定、ガラス基板への被膜形成を行った。
これらの処理を繰り返すことで、各スパッタリング経過時間における0.5μm厚のスパッタリング被膜が形成された評価試料を得た。
なお、本評価において評価試料を得る経過時点は、0.5(h)、1、5(h)、10(h)、15(h)、20(h)、25(h)、30(h)とした。
その後、夫々の評価試料ごとにガラス基板に形成された被膜を融解し、所定のICP分析装置を用いて定量分析を行い、ニッケル含有量を測定した。そして、この測定値を用いて、夫々の被膜の全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最大値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を当該被膜の全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率と、夫々の被膜の全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最小値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を当該被膜の全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率とを、当該被膜におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値として算出した。
実施例1、2、比較例1、2の夫々における、作製した銅合金ターゲットを用いた、所定のスパッタリング経過時点での、銅合金ターゲットが掘られた量(深さ)、スパッタリングによりガラス基板に形成された被膜のニッケル含有量及び被膜におけるニッケル含有量のバラツキの評価用数値、並びに被膜の電気抵抗値及び被膜における電気抵抗値のバラツキの評価用数値を次の表3−1〜3−3及び表4−1〜4−3に示す。
評価結果1:銅合金ターゲットとして使用される板体の各測定位置におけるニッケル含有量のバラツキ評価結果
実施例1、2の銅合金ターゲットとして使用される板体は、表2−1、2−2に示すように、「全測定位置におけるニッケル含有量の最大値と全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全測定位置におけるニッケル含有量の最小値と全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が、実施例1では2.0%、実施例2では1.0%と、いずれも3%以下に収まり、板体の各測定位置におけるニッケル含有量のバラツキが小さく抑えられることが認められる結果となった。
これに対し、比較例1、2の銅合金ターゲットとして使用される板体は、表2−3、2−4に示すように、「全測定位置におけるニッケル含有量の最大値と全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全測定位置におけるニッケル含有量の最小値と全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が、比較例1では5.3%、実施例2では4.6%に及び、いずれも3%を大きく超え、板体の各測定位置におけるニッケル含有量のバラツキが大きくなることが認められる結果となった。
表3−1、3−2に示すように、実施例1、2の銅合金ターゲットの母材となる板体(評価1に用いた銅合金ターゲットとして使用される板体と同じ組成及びサイズの板体)から作製された銅合金ターゲットをスパッタリングに用いて形成された被膜は、「全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最大値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最小値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が、実施例1では1.3%、実施例2では0.6%となり、スパッタリング経過時間の違いによる、スパッタリングにより形成された電極膜や配線膜等となる被膜におけるニッケル含有量のバラツキが小さく抑えられることが認められる結果となった。
これに対し、比較例1、2の銅合金ターゲットの母材となる板体から作製された銅合金ターゲットをスパッタリングに用いて形成された被膜は、表3−1、3−3に示すように、「全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最大値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最小値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が、比較例1では4.2%、比較例2では3.8%となり、スパッタリング経過時間の違いによる、スパッタリングにより形成された電極膜や配線膜等となる被膜におけるニッケル含有量のバラツキが大きくなることが認められる結果となった。
これに対し、比較例1、2の銅合金ターゲットの母材となる板体から作製された銅合金ターゲットをスパッタリングに用いて形成された被膜は、表4−1、4−3に示すように、「全スパッタリング経過時点における電気抵抗値の最大値と全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値との差を全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全スパッタリング経過時点における電気抵抗値の最小値と全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値との差を全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が、比較例1では5.0%、比較例2では4.3%となり、スパッタリング経過時間の違いによる、スパッタリングにより形成された電極膜や配線膜等となる被膜における電気抵抗値のバラツキが大きくなることが認められる結果となった。
特に、銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し10%の相似比となる相似領域を有し、銅合金鋳塊と同じ高さを有する中央の柱状部分を切削し除去して作製した実施例2の銅合金ターゲットとして使用される(板体の「全測定位置におけるニッケル含有量の最大値と全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全測定位置におけるニッケル含有量の最小値と全測定位置のニッケル含有量の平均値との差を全測定位置のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が1.0%となる)板体と同じ組成及びサイズの板体を母材として用いて作製した銅合金ターゲットをスパッタリングに用いて形成された電極膜や配線膜等となる被膜は、銅合金ターゲットの「全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最大値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全スパッタリング経過時点におけるニッケル含有量の最小値と全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値との差を全スパッタリング経過時点でのニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が0.6%、「全スパッタリング経過時点における電気抵抗値の最大値と全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値との差を全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値で割った百分率の絶対値」と、「全スパッタリング経過時点における電気抵抗値の最小値と全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値との差を全スパッタリング経過時点での電気抵抗値の平均値で割った百分率の絶対値」と、における最大値が0.3%となり、スパッタリング経過時間の如何にかかわらず、バラツキが極めて小さい電極膜や配線膜等となる被膜を形成することが認められる。
Claims (6)
- 銅とニッケルとの合金からなり、ニッケルが10質量%を超えて50質量%以下の割合で含有されている銅合金ターゲットであって、
前記銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と前記銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値との差を前記銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値が、3%以下であることを特徴とする銅合金ターゲット。 - 前記銅合金ターゲットの全領域内の各位置における、当該位置でのニッケル含有量と前記銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値との差を前記銅合金ターゲットの全領域のニッケル含有量の平均値で割った百分率の絶対値が、1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の銅合金ターゲット。
- 真空溶解炉で銅、ニッケルを溶解して銅合金溶湯を作製する工程と、
作製した前記銅合金溶湯を用いて鋳造を行い、柱状の銅合金鋳塊を作製する工程と、
前記銅合金鋳塊を作製後に、該銅合金鋳塊の底面の中心から該底面の外縁に向けて、該底面に対し5%〜10%の相似比となる相似領域を少なくとも有し、前記銅合金鋳塊と同じ高さを有する、中央の柱状部分を該銅合金鋳塊から除去する工程と、
前記銅合金鋳塊を作製後に、該銅合金鋳塊を高さ方向に沿って半分に切断する工程と、
を有することを特徴とする銅合金ターゲットの製造方法。 - 前記中央の柱状部分が除去され、高さ方向に沿って半分に切断された前記銅合金鋳塊を、1,000℃以上であって銅の融点を下回る第1の温度に加熱し、前記第1の温度に加熱した前記銅合金鋳塊に対し鍛造を行う工程を有することを特徴とする請求項3に記載の銅合金ターゲットの製造方法。
- 鍛造した前記銅合金鋳塊を900℃±100℃の範囲内の第2の温度に加熱し、前記第2の温度に加熱した前記銅合金鋳塊に対し加工率を多段階に変化させて熱間圧延を繰り返し行い、第1の厚さを有する板体を形成する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の銅合金ターゲットの製造方法。
- 熱間圧延した前記板体に対し加工率5%以上となるように冷間圧延を行い、第2の厚さを有する板体を形成した後、該板体に熱処理を施し、熱処理を施した該板体に対し機械加工を施して銅合金ターゲットの製品を完成させる工程を有することを特徴とする請求項5に記載の銅合金ターゲットの製造方法。
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