JP6987578B2 - ポーラス・スプリットン・ブロック - Google Patents
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Description
スプリットン・ブロックとして、例えば、特許文献1には、圧縮強さが100N/mm2以上であるセメントペースト硬化体またはセメントモルタル硬化体からなる円柱成形体を、直径方向に線載荷して割裂し、該割裂した面を露出してなる、スプリットン・ブロックが記載されている。
例えば、特許文献2には、基層を構成する即時脱型コンクリートと、表層を構成するポーラスコンクリートとが積層して一体成形されてなるとともに、上記即時脱型コンクリートと上記ポーラスコンクリートの境界は、凹凸形状が形成されてなるものであることを特徴とする積みブロックが記載されている。
これに対して、重量骨材を使用することで、空隙率が大きくても、製品重量を大きくすることが可能である。しかし、鉄鋼スラグ系重量骨材等の一般的な重量骨材は、重量骨材自身の強度や靱性が大きいことから、製造工程においてブロックを精度良く割ることが困難であったり、骨材部分が割れずに割面に残存する場合がある。このため、ブロックの割面に大きな凹凸が生じ、製品の寸法精度が低下することによる歩留まりの低下(不良品の発生率の増大)や、割面の意匠性の低下が起こる等の問題がある。
そこで、本発明の目的は、品質(空隙率が大きくても製品重量が大きく、かつ、寸法精度に優れること)、生産性、および、意匠性に優れたポーラス・スプリットン・ブロックを提供することである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] セメント、水、および、重晶石からなる粗骨材を含む水硬性組成物の硬化体を、少なくとも表面部分の一部として含むことを特徴とするポーラス・スプリットン・ブロック。
[2] 上記ポーラス・スプリットン・ブロックが、植生可能な積みブロックである前記[1]に記載のポーラス・スプリットン・ブロック。
[3] 前記[1]又は[2]に記載のポーラス・スプリットン・ブロックを製造するための方法であって、一対のポーラス・スプリットン・ブロックを製造するための型枠の中に、少なくとも表面部分の一部を形成させるための材料としての上記水硬性組成物を含む、上記ポーラス・スプリットン・ブロックのコンクリート材料を充填する充填工程と、上記充填工程で得られた上記型枠内の上記コンクリート材料を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程で得られた上記コンクリート材料の硬化体を2つに割裂して、割裂部分である表面部分が上記水硬性組成物の硬化体によって形成されている、上記ポーラス・スプリットン・ブロックを得る割裂工程、を含むポーラス・スプリットン・ブロックの製造方法。
セメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは15〜30質量部、より好ましくは17〜28質量部、特に好ましくは18〜25質量部である。該量が15質量部以上であれば、混練後の打設等の作業が可能な時間をより十分に確保することができ、成形性及び作業性をより向上させることができる。該量が30質量部以下であれば、連続空隙を十分に形成させて、透水性をより向上させることができ、かつ、硬化体の強度をより大きくすることができる。
重晶石の密度は、通常、3.5〜4.5g/cm3である。本発明では、水硬性組成物が重晶石からなる粗骨材を含むことで、ポーラス・スプリットン・ブロックの重量を大きくすることができる。また、重晶石は強度が小さいため、製造工程(後述)において、上記水硬性組成物を含む硬化体を2つに割裂する際に、重晶石からなる粗骨材が割れずに割面に残存することが起こりにくくなる。このため、製品の寸法精度が向上することで歩留まりが向上し、かつ、割面の意匠性(表面が滑らかであるため、外観が良好であること)を向上させることができる。
細骨材の例としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、及びスラグ細骨材、またはこれらの混合物等が挙げられる。水硬性組成物が細骨材を含むことによって、硬化後の乾燥による収縮を抑制することができる。
細骨材の粒度分布は、粒径4mm以下のものが90質量%以上であることが好ましい。
細骨材の配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは10〜130質量部、特に好ましくは20〜120質量部である。該配合量が150質量部以下であれば、硬化体の強度をより大きくすることができる。
セメント100質量部に対するセメント分散剤の配合量(複数の種類を用いる場合、合計量)は、固形分換算で、好ましくは0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.2〜1.8質量部、特に好ましくは0.4〜1.6質量部である。該量が0.1質量部以上であれば、混練後の打設等の作業が可能な時間をより十分に確保することができ、成形性及び作業性をより向上させることができる。該量が2.0質量部以下であれば、連続空隙を十分に形成させて、透水性をより向上させることができる。
セメントとセメント混和材の合計量中のセメント混和材の割合は、水硬性組成物の強度発現性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
また、透水性をより向上させ、植生可能な部分をより広くする観点から、ポーラス・スプリットン・ブロックの表面部分全てが、多孔質(ポーラス)の硬化体によって形成されていることが好ましい。また、製造の容易性、および、ブロックの質量を所望の製品重量とする観点から、ポーラス・スプリットン・ブロック全てが、上記水硬性組成物の硬化体からなるものであってもよい。
本発明のポーラス・スプリットン・ブロックは、透水性を有し、植生可能なものであることから、河川の護岸や、海岸や道路等の法面の擁壁等に用いられる積みブロックとして好適である。
本発明のポーラス・スプリットン・ブロックにおいて、水硬性組成物の硬化体の空隙率は、用途によっても異なるが、好ましくは10〜40%、より好ましくは13〜35%、特に好ましくは15〜25%である。該空隙率が10%以上であれば、ポーラス・スプリットン・ブロックが、より透水性に優れたものになる。該空隙率が40%以下であれば、ポーラス・スプリットン・ブロックの強度をより大きくすることができる。
ポーラス・スプリットン・ブロック1は、基層2と表層3からなる。基層2は、通常、地中に埋設される部分である。基層2は、例えば、即時脱型コンクリート等の硬化体からなるものである。即時脱型コンクリートの例としては、「JIS A 1150:2007(コンクリートのスランプフロー試験方法)」に準拠して測定したスランプフロー値が、好ましくは2cm以下、より好ましくは1cm以下、特に好ましくは0.5cm以下の普通コンクリート等が挙げられる。また、基層2は、上述の水硬性組成物の硬化体からなるものであってもよい。
表層3は、上述の水硬性組成物の硬化体からなるものである。
基層2及び表層3の境界面には、基層2から表層3が剥落しにくくする観点から、お互いに嵌合するような凹凸形状が形成されていてもよい。
本工程は、一対のポーラス・スプリットン・ブロックを製造するための型枠4の中に、少なくとも表面部分の一部を形成させるための材料としての上述した水硬性組成物を含む、ポーラス・スプリットン・ブロックのコンクリート材料(以下、「水硬性組成物B」ともいう。)9aを、型枠4内の空洞8に充填する工程である(図2(c)、(d)参照)。
水硬性組成物Bの調製方法としては、特に限定されるものではなく、二軸型ミキサーやパン型ミキサー等を用いて、各材料を混練すればよい。
本工程は、充填工程で得られた型枠4内の水硬性組成物B(9a)を硬化させる工程である。型枠内の水硬性組成物B(9a)の硬化は、例えば、振動締固め等によって行われる。
水硬性組成物Bの硬化後、脱型することで、一対のポーラス・スプリットン・ブロック10を得ることができる(図3(e)参照)。
[割裂工程]
本工程は、硬化工程で得られた一対のポーラス・スプリットン・ブロック10を、水硬性組成物Bの硬化体9bの略中央部分において2つに割裂して、表面部分が水硬性組成物Bの割裂体9cである、二つのポーラス・スプリットン・ブロック1を得る工程である(図3(f)参照)。
具体的には、型枠4に治具5を敷設することで、型枠4内に水硬性組成物Aを充填させるための空洞6を形成する(図2(a)参照)。次いで、空洞6に水硬性組成物A(7a)を充填し(図2(b)参照)、硬化させた後、治具5を取り除くことで、型枠4内に水硬性組成物Bを充填させるための空洞8を形成することができる(図2(c)参照)。その後、上述した充填工程〜硬化工程を行うことで、水硬性組成物Aの硬化体7bからなる基層と水硬性組成物Bの割裂体9cからなる表層からなるポーラス・スプリットン・ブロック1が対になったもの(一対のポーラス・スプリットン・ブロック10)を得ることができる(図3(e)参照)。
[使用材料]
(1) セメント;太平洋セメント社製、普通ポルトランドセメント、密度:3.16g/cm3
(2) 重晶石からなる粗骨材A;粒径:5〜20mm(粒径7〜20mmのもの:90質量%以上)、密度:4.10g/cm3
(3) 重晶石からなる粗骨材B;粒径:5〜25mm(粒径15〜25mmのもの:90質量%以上)、密度:4.10g/cm3
(4) 粗骨材A;砕石、粒径:5〜20mm(粒径7〜20mmのもの:90質量%以上)、密度:2.63g/cm3
(5) 粗骨材B;電気炉酸化スラグ、粒径:5〜20mm(粒径7〜20mmのもの:90質量%以上)、密度:3.58g/cm3
(6) 粗骨材C;電気炉酸化スラグ、粒径:5〜20mm(粒径5〜15mmのもの:90質量%以上)、密度:3.58g/cm3
(7) 細骨材;山砂、粒径:5mm以下(粒径4mm以下のもの:90質量%以上)、密度:2.57g/cm3
(8) 水;水道水
ポーラス・スプリットン・ブロックの目標空隙率を18%とし、セメント100質量部、水20質量部、細骨材50質量部及び、重晶石からなる粗骨材A629質量部を、強制二軸ミキサーに投入して混練を行った。次いで、混練物を一対のポーラス・スプリットン・ブロックを製造することが可能な型枠に充填した後、高振動加圧即時脱型成形機を用いて、72.5Hzの振動数、加圧力0.123MPaの条件で、11秒間、振動成形を行った。
なお、重晶石からなる粗骨材100体積%に対する、該粗骨材以外の混合物の体積比は、0.46であった。
脱型した後、得られた一対のポーラス・スプリットン・ブロックを、耐圧機および専用の鋼製治具によって割裂し、2個のポーラス・スプリットン・ブロックを得た。
得られたポーラス・スプリットン・ブロックの割裂面を目視したところ、凹凸の大きさは適度であり、表面が滑らかで意匠性に優れたものであった。
また、得られたポーラス・スプリットン・ブロックの4箇所において控長(図1においては、ブロック1の表層3の表面から基層2に向かう奥行の寸法)を測定し、控長の寸法差の最大値(控長の最大値と最小値の差)を算出した。
さらに、得られたポーラス・スプリットン・ブロックの単位容積質量(kg/リットルを測定した。
重晶石からなる粗骨材Aの代わりに、粗骨材Aを使用する以外は実施例1と同様にして、2個のポーラス・スプリットン・ブロックを得た。得られたポーラス・スプリットン・ブロックについて、実施例1と同様にして控長等を測定した。
また、得られたポーラス・スプリットン・ブロックの割裂面を目視したところ、やや大きい凹凸がみられ、意匠性に劣るものであった。
[比較例2]
重晶石からなる粗骨材Aの代わりに、粗骨材Bを使用する以外は実施例1と同様にして、2個のポーラス・スプリットン・ブロックを得た。得られたポーラス・スプリットン・ブロックについて、実施例1と同様にして控長等を測定した。
また、得られたポーラス・スプリットン・ブロックの割裂面を目視したところ、骨材が割れた形跡がなかった。このため、表面に大きな凹凸が見られ、意匠性に劣るものであった。
それぞれの結果を表1に示す。
重晶石からなる粗骨材Aの代わりに、重晶石からなる粗骨材Bを使用する以外は実施例1と同様にして、2個のポーラス・スプリットン・ブロックを得た。得られたポーラス・スプリットン・ブロックの割裂面を目視したところ、凹凸の大きさは適度であり、表面が滑らかで意匠性に優れたものであった(図4参照)。
[比較例3]
重晶石からなる粗骨材Aの代わりに、粗骨材Cを使用する以外は実施例1と同様にして、2個のポーラス・スプリットン・ブロックを得た。得られたポーラス・スプリットン・ブロックの割裂面を目視したところ、骨材が割れた形跡がなかった。このため、表面に大きな凹凸が見られ、意匠性に劣るものであった(図5参照)。
また、本発明のポーラス・スプリットン・ブロックの控長の寸法差の最大値(控長の最大値と最小値の差)は3mmであり、該数値は、「JIS A 5371:2016(プレキャスト無筋コンクリート製品)」に規定されている許容差(±5mm)の範囲内に収まっていることがわかる。
一方、比較例1のポーラス・スプリットン・ブロックの控長の寸法差の最大値は、6mmであり、該数値は、「JIS A 5371:2016(プレキャスト無筋コンクリート製品)」に規定されている許容差(±5mm)の若干範囲外であることがわかる。
また、比較例2のポーラス・スプリットン・ブロックの控長の寸法差の最大値は、8mmであり、該数値は、「JIS A 5371:2016(プレキャスト無筋コンクリート製品)」に規定されている許容差(±5mm)の範囲外であることがわかる。
さらに、図4〜5より、実施例2のポーラス・スプリットン・ブロックは、比較例3のポーラス・スプリットン・ブロックよりも意匠性に優れていることがわかる。
2 基層
3 表層
4 型枠
5 治具
6,8 空洞
7a 水硬性組成物A
7b 水硬性組成物Aの硬化体
9a 水硬性組成物B
9b 水硬性組成物Bの硬化体
9c 水硬性組成物Bの割裂体
10 一対のポーラス・スプリットン・ブロック
Claims (3)
- セメント、水、および、重晶石からなる粗骨材を含む水硬性組成物の硬化体を、少なくとも表面部分の一部として含み、
上記水の配合量が、上記セメント100質量部に対して15〜20質量部であり、
上記硬化体の空隙率が10〜18%であり、
上記粗骨材に対するペーストまたはモルタルの体積比((ペーストまたはモルタル)/粗骨材)が0.4〜0.6であることを特徴とするポーラス・スプリットン・ブロック。 - 上記ポーラス・スプリットン・ブロックが、植生可能な積みブロックである請求項1に記載のポーラス・スプリットン・ブロック。
- 請求項1又は2に記載のポーラス・スプリットン・ブロックを製造するための方法であって、
一対のポーラス・スプリットン・ブロックを製造するための型枠の中に、少なくとも表面部分の一部を形成させるための材料としての上記水硬性組成物を含む、上記ポーラス・スプリットン・ブロックのコンクリート材料を充填する充填工程と、
上記充填工程で得られた上記型枠内の上記コンクリート材料を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程で得られた上記コンクリート材料の硬化体を2つに割裂して、割裂部分である表面部分が上記水硬性組成物の硬化体によって形成されている、上記ポーラス・スプリットン・ブロックを得る割裂工程、
を含むポーラス・スプリットン・ブロックの製造方法。
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JP2017180343A JP6987578B2 (ja) | 2017-09-20 | 2017-09-20 | ポーラス・スプリットン・ブロック |
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