JP6984269B2 - カーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの方法では、ゴムの分子鎖が切断されて劣化する懸念や大きな剪断力によりCNTが折れる懸念がある。これらの混練法はDRY−mix法と呼ばれており、本発明者が特許文献1,2に記載されている最もCNT分散が進むとされる実施例を追試したところ、得られる複合体は、後述の通り第2クリープの量は全クリープ量の28.1〜28.3%(比較例6)であり、本発明の25%以下には遠く及ばない結果であった。
すなわち、CNT及びカーボンブラックの水分散液をゴムラテックスと共凝固させるに際し、CNTを水にホモジナイザー等で超分散させたCNT水分散液と、カーボンブラックを水にホモジナイザー等で超分散させたカーボンブラック水分散液とを、ウォータージェット型湿式微細化装置で高圧ノズルより噴射させて強力に剪断衝突混合することで、CNTが独自に自己凝集することなく、カーボンブラックとCNTが強力に絡み合い、相互作用でCNTの繊維の隙間にカーボンブラックが入り込んだ状態でゴム中に良好に分散され、ポテンシャルエネルギー的に安定に配位したCNT/カーボンブラック/ゴムハイブリッド複合体が得られることを見出した。
<動的クリープ測定法>
カーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体160重量部にステアリン酸1.0重量部、酸化亜鉛3.0重量部、硫黄1.75重量部、加硫促進剤1.40重量部を添加混練し、得られた未加硫物を160℃の条件で加硫して、直径10cm、高さ20cmの円柱状の加硫サンプルを得、この加硫サンプルについて、回転剪断式試験装置を用いて周波数0.839Hz、剪断応力0.55〜0.70MPaで動的クリープを測定する。
まず、本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を製造方法について説明する。
CNTをホモジナイザー等で水に超分散させてカーボンナノチューブ水分散液(以下、「CNT水スラリー」と称す場合がある。)を調製する工程と、
カーボンブラックをホモジナイザー等で水に超分散させてカーボンブラック水分散液(以下、「カーボンブラック水スラリー」と称す場合がある。)調製する工程と、
得られたCNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーと混合し、この混合液をウォータージェット型湿式微細化装置を用いて高圧ノズルから噴射させて剪断衝突混合分散させることにより、CNTとカーボンブラックの混合分散液(以下、「混合水スラリー」と称す場合がある。)を得る工程と、
得られた混合水スラリーをゴムラテックスと共凝固させる工程と
を経てCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を製造する。
本発明で用いるCNTは、特に限定されることはなく、シングルウォール(単層)CNT、マルチウォール(多層)CNTなどが挙げられるが、本発明で用いるCNTは、繊維直径が細く、好ましくは繊維直径が8nm〜15nmで、アスペクト比が100以上、例えば100〜3,500であるものが好ましい。ここでいうアスペクト比とはCNTの長さの直径に対する比である。
CNTの繊維直径、アスペクト比は、電子顕微鏡により測定された値の平均値であるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
CNT水スラリーの製造方法は特に制限はないが、たとえばCNTに水を加えてスラリーを調製し、この水スラリーに分散剤を添加してホモジナイザーやビーズミル等で撹拌分散することで、所定のCNT水スラリーとすることが好ましい。
カーボンブラックとしては酸化処理されていない、窒素吸着比表面積30〜120m2/g及び/又はDBP吸油量50〜140ml/100gの非酸化カーボンブラックを用いることが、ゴムとのなじみがよく表面活性が高いことからゴムの補強性を高めることができるという観点から好ましい。酸化処理されたカーボンブラックでは、ゴムの補強性が劣ることから好ましくない。また、窒素吸着比表面積もDBP吸油量も上記範囲を外れるカーボンブラックではゴムの補強性が劣り好ましくない。なお、ここで、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217に準拠して測定される。また、カーボンブラックのDBP吸油量はJIS K6221Aに準拠して測定される。
カーボンブラック水スラリーの製造方法は特に制限はなく、CNT水スラリーに記載の分散剤を使用してもよいが、カーボンブラックの場合には分散剤は用いずホモジナイザー等で強撹拌することで調製することも可能である。
本発明では、ゴムラテックスとCNT及びカーボンブラックの水スラリーを共凝固する際に、CNTとカーボンブラックの相互作用を強化しておくことが重要である。このために、本発明では、CNTとカーボンブラックを別々にホモジナイザー等で水中に分散後、これらを混合し、混合液をウォータージェット型湿式微細化装置で両者を強力に剪断衝突混合させる。即ち、CNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーとをホモジナイザー等で20〜50分程度撹拌混合し、この混合液をウォータージェット型湿式微細化装置の高圧ノズルから噴射させて剪断衝突混合分散する。
ここで、剪断衝突混合分散とは、高圧ノズルから高速、高圧で噴射させることにより、大きな剪断力を加えて噴射液中のCNTとカーボンブラックを衝突させ、これらを高度に分散、混合することをさす。
また、噴射時の加圧力は200MPa以上、例えば200〜245MPa程度が好ましく、噴射速度は500m/sec以上、例えば500〜700m/sec程度とすることが好ましい。噴射時の加圧力や噴射速度が小さ過ぎると十分な剪断力を付加し得ない。ただし、加圧力や噴射速度には、ウォータージェット型湿式微細化装置の仕様から上限があり、通常、上記上限以下である。
なお、ウォータージェット型湿式微細化装置による剪断衝突混合分散は、複数回繰り返し行ってもよい。
本発明で用いるゴムラテックスのゴム種としては、ラテックス化が可能なものであれば特に制限はなく、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)等の1種または2種以上が挙げられる。
特にスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましく、とりわけSBRが好ましい。
乳化剤としては、例えば炭素数10〜18程度の長鎖直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。中でもナトリウム塩、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。ゴムラテックス中のゴム成分濃度は通常18〜25重量%程度である。
本発明では、上記のゴムラテックスと、前述のウォータージェット型湿式微細化装置を用いた剪断衝突混合分散で得られた混合水スラリーとを共凝固させる。
上記の共凝固工程の後は、生成した塊状の凝固クラムを分離して水洗、脱水し、80〜110℃程度で乾燥することで本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を得ることができる。
次に、本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体の諸物性について説明する。
なお、本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体は、以下の好適な物性を満たすものが得られる方法であれば、上記の本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体の製造方法に限らず、いかなる方法で製造されてもよい。
本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体は、以下の方法で測定された動的クリープにおいて、CNT/カーボンブラックのゴム中でポテンシャルエネルギーの低い安定した配位位置に転移する第2クリープが、全クリープ量の25%以下であることを特徴とする。
<動的クリープ測定方法>
カーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体160重量部にステアリン酸1.0重量部、酸化亜鉛3.0重量部、硫黄1.75重量部、加硫促進剤1.40重量部を添加混練し、得られた未加硫物を160℃の条件で加硫して、直径10cm、高さ20cmの円柱状の加硫サンプルを得、この加硫サンプルについて、回転剪断式試験装置を用いて周波数0.839Hz、剪断応力0.55〜0.70MPaで動的クリープを測定する。
本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体は、好ましくはバウンドラバーの含有量が22重量%以上とバウンドラバー量の多いものである。
ここでいうバウンドラバーとは、未加硫のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を溶剤(たとえばトルエン)で抽出した時、CNT/カーボンブラックと結合したまま抽出されずに残ったゴムであり、バウンドラバー量が多いということは、CNT/カーボンブラックとゴムの接点が多く、いわゆるゴムがCNT/カーボンブラックに強力に補強されていることを意味する。
バウンドラバー量は多い程好ましいが、通常その上限は28重量%である。
なお、バウンドラバー量は、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体は、ASTM D2663に準拠して測定したCNT/カーボンブラック分散度が好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上の、CNT/カーボンブラックの均一分散性に優れるものである。CNT/カーボンブラックの分散度は大きい程好ましく、通常、その上限は100%である。
なお、CNT/カーボンブラックの分散度は、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体の体積固有抵抗値は、好ましくは105Ω・cm以下、より好ましくは103Ω・cm以下である。体積固有抵抗値は、小さいほどCNT/カーボンブラック/ゴム複合体としての導電性性能に優れる。
なお、CNT/ゴム複合体の体積固有抵抗値は、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体に、架硫剤、架硫促進剤、その他、熱安定剤、老化防止剤、充填材、可塑剤、着色剤等の添加剤を所定の割合で添加して混練し、混練物をゴムの加硫条件で成形、加硫することにより、各種のCNT/カーボンブラック/ゴム複合体よりなる製品とすることができる。
CNT−1:クムホペトロケミカル社製 K−Nanos100T
直径:10nm
長さ:26μm、
アスペクト比(長さ/直径):2,600
CNT−2:Nanocyl社製 NC7000
直径:9.5nm
長さ:1.5μm
アスペクト比(長さ/直径):158
カーボンブラック:三菱ケミカル社製 ダイアブラックI(N220)
窒素吸着比表面積114m2/g、DBP吸油量114ml/100g
の非酸化カーボンブラック
ムーニー粘度:ML1+4(100℃)52
クロロプレンゴム:Denka社製 クロロプレンゴムM40
伸展油:JXホールディングス製 NSオイル(TDAE)
乳化剤:ハリマ化成社製 エトール7D
ステアリン酸:日本油脂製 ステアリン酸
酸化亜鉛:堺化学製 酸化亜鉛2種
加硫促進剤:三新化学製 サンセラーNS−G
以下の実施例及び比較例において得られたCNT/カーボンブラック/ゴム複合体の特性の評価方法は以下の通りである。
動的クリープは、回転剪断式試験装置(K.Fujimoto, T.Hatakeyama, Nihon Gomu Kyoukaishi,62,448(1989))を用い、一定速度で回転する円柱状の加硫サンプル(直径10cm、高さ20cmのゴム複合体の加硫物)に油圧シリンダーで一定荷重を与えながら連続的に回転させ、その動的歪を測定した。周波数は0.839Hz,剪断応力τは0.55MPa、0.70MPaの2段階で試験し、瞬間動的歪で規格化したクリープ歪、いわゆる動的クリープ歪の応力依存性を測定した。規格化は負荷時間t=0.1secの歪み(=瞬間歪)を基準にして算出した。なお、サンプル温度はサンプル中心部に取り付けたサーモカップルを用いスリップリングを通じ測定すると同時に、中心部の温度が23〜27℃の範囲になるよう強制空冷し制御した。
約0.5gのCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を1mm角に切断した後、精秤し、325メッシュの金網に包み60ccのトルエン中に浸漬させた。25℃で24時間浸漬した後、該325メッシュを取り出しトルエンを廃棄した。さらに新しいトルエン60ccを加えて24時間浸漬させた後、同様にトルエンを廃棄し、風乾、乾燥機で乾燥させた後、トルエンに溶出しなかったゴムの重量パーセントとして算出した。測定はn=2で行い、平均値をとった。
ASTM D2663(METHOD B)に準拠し、CNT及びカーボンブラック分散度を算出した。すなわち5μm以上の未分散凝集塊の面積パーセンテージを測定し、複合体中のCNT及びカーボンブラックの総面積から5μm以下に分散しているCNT及びカーボンブラックのパーセントを求めたものがCNT/カーボンブラック分散度%となる(5μm以上の未分散凝集塊の面積パーセントを100%からさし引いた値がCNT/カーボンブラック分散度%)。例えば5μm以上の未分散塊が全くない場合、CNT/カーボンブラック分散度は100%、CNT/カーボンブラック量10%が未分散塊として存在する場合のCNT/カーボンブラック分散度は90%となる。未分散塊が多いほどCNT/カーボンブラック分散度の値は小さくなる。
JISK7194に準拠し、試験片の抵抗が106Ωを超える場合は、ハイレスターUP(MCP−HT450)(三菱ケミカル(株)製)を、また106Ω以下の場合はロレスターGP(MCP−T600)(三菱ケミカル(株)製)を用いて25℃、湿度60%の雰囲気で測定し、これより下記式に従って算出した。
体積固有抵抗(Ω・cm)=試験片の抵抗×RCF×T(cm)
RCF:抵抗率補正係数
T :試験片の厚み(cm)
表1の重量部数に従ってCNT/カーボンブラック/ゴムウェットマスターバッチを製造した。製造例4はホモジナイザーでCNTとカーボンブラックを分散させた後、湿式微細化装置を用いず剪断衝突混合分散させなかった製造例であり、製造例5はカーボンブラックを用いずCNT/ゴムのみの製造例である。
<CNT水スラリーの調製>
CNT−1の35gに水1715gを加えて2重量%の水スラリーとし、分散剤としてリグニンスルホン酸ソーダとナフタレンスルホン酸ソーダをそれぞれ水に対して0.2重量%ずつ加え、ホモジナイザーにて30分撹拌した。
カーボンブラック315gに水7560gを加えて4重量%の水スラリーとし、ホモジナイザーで30分間撹拌し、カーボンブラック水スラリーを調製した。
上記で調製したCNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーを混合し、ホモジナイザーで5分撹拌した後、ウォータージェット型湿式微細化装置(スギノマシン製アルチティイザーHJP−25005)で、200MPaに加圧した0.14mm径のノズルにて500m/secの速度で噴射し強力に剪断衝突混合させた。こうしてCNTとカーボンブラックが強力に絡み合い、CNTの繊維の隙間にカーボンブラックが入り込んだCNT/カーボンブラック混合水スラリーを得た。
ゴム固形分21.7重量%のSBR1502ゴムラテックス3226g(SBRゴム量700g)に、稀釈水20107gを加え、上記で調製したCNT/カーボンブラック混合水スラリーを撹拌しながら加えた(CNT量35g、カーボンブラック量315g)。一方、伸展油である安全性アロマオイル「NSオイル」70gに、乳化剤として「エトール7D」に苛性ソーダを加えたもので乳化して加えた。これらを撹拌しながら塩類は加えず硫酸とポリアミンを滴下し、pH3.6として凝固を行った。生成した凝固クラムを水洗し、脱水機で水を絞り90℃の乾燥機で乾燥して、CNTが独自に自己凝集することがなくカーボンブラックとCNTが良好にゴム中に分散され、安定に配位したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を得た。
製造例1で調製したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を表2の配合処方にてバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し混練り物を得た。次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、60℃で5分間練り込み、未加硫ゴムを得た。
この未加硫ゴムを160℃の条件で加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は23.4重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は99.1%とSBR中にCNTとカーボンブラックが良好に分散していた。また、体積固有抵抗値は5.42×100Ω・cmであった。
動的クリープで測定された実施例1のCNT/カーボンブラックのゴム中で安定した配位位置に転移する第2クリープ量は、剪断力τ=0.55MPaでは全クリープ量の23.7%、剪断力0.70MPaでは全クリープ量の22.0%であった。第2クリープの量が少なく、もともとCNT/カーボンブラックがゴム中で安定に配位していたことがわかる。
ちなみに後述する比較例3(DRY−Mix)の第2クリープ量は、剪断力τ=0.55MPaでは全クリープ量の30.0%、剪断力0.70MPaでは全クリープ量の31.7%であり、安定配位に転移する第2クリープ量が多かった。これはもともとゴム中に安定に配位していなかったCNT/カーボンブラックが多いことを意味する。
<CNT水スラリーの調製>
CNT−1の70gに水3430gを加えて2重量%の水スラリーとし、分散剤としてリグニンスルホン酸ソーダとナフタレンスルホン酸ソーダをそれぞれ水に対して0.2重量%ずつ加え、ホモジナイザーにて30分撹拌した。
カーボンブラック280gに水6720gを加えて4重量%の水スラリーとし、ホモジナイザーで30分間撹拌し、カーボンブラック水スラリーを調製した。
上記で調製したCNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーを混合し、ホモジナイザーで5分撹拌した後、ウォータージェット型湿式微細化装置(スギノマシン製アルチティイザーHJP−25005)で、200MPaに加圧した0.14mm径のノズルにて500m/secの速度で噴射し強力に剪断衝突混合させた。こうしてCNTとカーボンブラックが強力に絡み合い、CNTの繊維の隙間にカーボンブラックが入り込んだCNT/カーボンブラック混合水スラリーを得た。
ゴム固形分21.7重量%のSBR1502ゴムラテックス3226g(SBRゴム量700g)に、稀釈水20107gを加え、上記で調製したCNT/カーボンブラック混合水スラリーを撹拌しながら加えた(CNT量70g、カーボンブラック量280g)。一方、伸展油である安全性アロマオイル「NSオイル」70gに、乳化剤として「エトール7D」に苛性ソーダを加えたもので乳化して加えた。これらを撹拌しながら塩類は加えず硫酸とポリアミンを滴下し、pH3.7として凝固を行った。生成した凝固クラムを水洗し、脱水機で水を絞り90℃の乾燥機で乾燥して、CNTが独自に自己凝集することがなくカーボンブラックとCNTが良好にゴム中に分散され、安定に配位したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を得た。
製造例2で調製したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を用い、表2の配合処方としたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴムを得、同様に加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は25.2重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は98.5%とSBR中にCNTとカーボンブラックが良好に分散していた。また、体積固有抵抗値は1.02×100Ω・cmであった。
動的クリープで測定された実施例2のCNT/カーボンブラックのゴム中で安定した配位位置に転移する第2クリープ量は、剪断力τ=0.55MPaでは全クリープ量の22.7%、剪断力0.70MPaでは全クリープ量の20.1%であった。第2クリープの量が少なく、もともとCNT/カーボンブラックがゴム中で安定に配位していたことがわかる。
ちなみに後述する比較例1(ウォータージェット型湿式微細化装置処理なし)の第2クリープ量は、剪断力τ=0.55MPaでは全クリープ量の31.0%、剪断力0.70MPaでは全クリープ量の29.2%であり、安定配位に転移する第2クリープ量が多かった。これはもともとゴム中に安定に配位していなかったCNT/カーボンブラックが多いことを意味する。
<CNT水スラリーの調製>
CNT−2の70gに水3430gを加えて2重量%の水スラリーとし、分散剤としてリグニンスルホン酸ソーダとナフタレンスルホン酸ソーダをそれぞれ水に対して0.2重量%ずつ加え、ホモジナイザーにて30分撹拌した。
カーボンブラック280gに水6720gを加えて4重量%の水スラリーとし、ホモジナイザーで30分間撹拌し、カーボンブラック水スラリーを調製した。
上記で調製したCNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーを混合し、ホモジナイザーで5分撹拌した後、ウォータージェット型湿式微細化装置(スギノマシン製アルチティイザーHJP−25005)で、200MPaに加圧した0.14mm径のノズルにて500m/secの速度で噴射し強力に剪断衝突混合させた。こうしてCNTとカーボンブラックが強力に絡み合い、CNTの繊維の隙間にカーボンブラックが入り込んだCNT/カーボンブラック混合水スラリーを得た。
ゴム固形分21.7重量%のSBR1502ゴムラテックス3226g(SBRゴム量700g)に、稀釈水20107gを加え、上記で調製したCNT/カーボンブラック混合水スラリーを撹拌しながら加えた(CNT量70g、カーボンブラック量280g)。一方、伸展油である安全性アロマオイル「NSオイル」70gに、乳化剤として「エトール7D」に苛性ソーダを加えたもので乳化して加えた。これらを撹拌しながら塩類は加えず硫酸とポリアミンを滴下し、pH3.6として凝固を行った。生成した凝固クラムを水洗し、脱水機で水を絞り90℃の乾燥機で乾燥して、CNTが独自に自己凝集することがなくカーボンブラックとCNTが良好にゴム中に分散され、安定に配位したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を得た。
製造例3で調製したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を用い、表2の配合処方としたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴムを得、同様に加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は22.7重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は99.0%とSBR中にCNTとカーボンブラックが良好に分散していた。また、体積固有抵抗値は8.42×100Ω・cmであった。
<CNT水スラリーの調製>
CNT−1の70gに水3430gを加えて2重量%の水スラリーとし、分散剤としてリグニンスルホン酸ソーダとナフタレンスルホン酸ソーダをそれぞれ水に対して0.2重量%ずつ加え、ホモジナイザーにて30分撹拌した。
カーボンブラック280gに水6720gを加えて4重量%の水スラリーとし、ホモジナイザーで30分間撹拌し、カーボンブラック水スラリーを調製した。
上記で調製したCNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーを混合し、ホモジナイザーで30分撹拌しCNT/カーボンブラック混合水スラリーを得た。なお、ウォータージェット型湿式微細化装置による衝突撹拌混合は行わなかった。
ゴム固形分21.7重量%のSBR1502ゴムラテックス3226g(SBRゴム量700g)に、稀釈水20107gを加え、上記で調製したCNT/カーボンブラック混合水スラリーを撹拌しながら加えた(CNT量70g、カーボンブラック量280g)。一方、伸展油である安全性アロマオイル「NSオイル」70gに、乳化剤として「エトール7D」に苛性ソーダを加えたもので乳化して加えた。これらを撹拌しながら塩類は加えず硫酸とポリアミンを滴下し、pH3.6として凝固を行った。生成した凝固クラムを水洗し、脱水機で水を絞り90℃の乾燥機で乾燥して、CNT/カーボンブラック/SBR複合体を得た。
製造例4で調製したCNT/カーボンブラック/SBR複合体を用い、表2の配合処方としたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴムを得、同様に加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は16.4重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は92.3%と、ゴム中にCNTが自己凝集した不良分散塊が散見された。また、体積固有抵抗値は2.23×101Ω・cmであった。
比較例1(ウォータージェット型湿式微細化装置処理なし)のCNT/カーボンブラックのゴム中で安定した配位位置に転移する第2クリープ量は、剪断力τ=0.55MPaでは全クリープ量の31.0%、剪断力0.70MPaでは全クリープ量の29.2%であり、安定配位に転移する第2クリープ量が多かった。これはもともとゴム中に安定に配位していなかったCNT/カーボンブラックが多いことを意味する。
<CNT水スラリーの調製>
CNT−1の70gに水3430gを加えて2重量%の水スラリーとし、分散剤としてリグニンスルホン酸ソーダとナフタレンスルホン酸ソーダをそれぞれ水に対して0.2重量%ずつ加え、ホモジナイザーにて30分撹拌した。その後、カーボンブラックスラリーは加えることなく、CNTスラリーのみをウォータージェット型湿式微細化装置(スギノマシン製アルチティイザーHJP−25005)で、200MPaに加圧した0.14mm径のノズルにて500m/secの速度で噴射し、CNT水スラリーを得た。
ゴム固形分21.7重量%のSBR1502ゴムラテックス3226g(SBRゴム量700g)に、稀釈水20107gを加え、上記で調製したCNT水スラリーを撹拌しながら加えた(CNT量70g)。これに撹拌しながら塩類は加えず硫酸とポリアミンを滴下し、pH3.4として凝固を行った。生成した凝固クラムを水洗し、脱水機で水を絞り90℃の乾燥機で乾燥して、CNT/SBR複合体を得た。
製造例5で調製したCNT/SBR複合体を用い、表2の配合処方としたこと以外は実施例1と同様にして未加硫ゴムを得、同様に加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/SBR複合体を薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNTの分散度は92.1%と、ゴム中にCNTが自己凝集した不良分散塊が散見された。また、体積固有抵抗値は1.31×101Ω・cmであった。
ウェットマスターバッチは用いずに、表2の配合処方にてSBR1502、CNT−1、カーボンブラック、進展油、ゴム薬品をバンバリーミキサーにてドライ練りを行った。まず、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し、次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて60℃で5分間練り込み、未加硫ゴムとした。次いで、この加硫ゴムを実施例1と同様に加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は16.3重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は89.1%と、ゴム中にCNTが自己凝集した不良分散塊が散見された。また、体積固有抵抗値は6.69×101Ω・cmであった。
ウェットマスターバッチは用いずに、表2の配合処方にてSBR1502、CNT−1、カーボンブラック、進展油、ゴム薬品をバンバリーミキサーにてドライ練りを行った。まず硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し、次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて60℃で5分間練り込み、未加硫ゴムとした。次いで、この加硫ゴムを実施例1と同様に加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は18.3重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は86.7%と、ゴム中にCNTが自己凝集した不良分散塊が散見された。また、体積固有抵抗値は9.42×100Ω・cmであった。
ウェットマスターバッチは用いずに、表2の配合処方にてSBR1502、CNT−2、カーボンブラック、進展油、ゴム薬品をバンバリーミキサーにてドライ練りを行った。まず硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し、次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて60℃で5分間練り込み、未加硫ゴムとした。次いで、この加硫ゴムを実施例1と同様に加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は15.8重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は91.2%と、ゴム中にCNTが自己凝集した不良分散塊が散見された。また、体積固有抵抗値は3.31×101Ω・cmであった。
ウェットマスターバッチは用いずに、ロール等で練るドライミックスで最もCNT分散がよいとされる特許文献1及び特許文献2のロール2段混合法で、表2の配合処方にてSBR1502、CNT−1、カーボンブラック、進展油、ゴム薬品のドライ練りを行った。特許文献1及び特許文献2を参考にし、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を、まず2軸オープンロール温度10〜20℃、ロール間隙1.5mmで練った後、ロールから取り出し、さらにロール間隙を0.3mmと狭くしてロール練りを行った。さらに薄通し10回を行った。次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて5分間練り込み、未加硫ゴムとした。次いで、この加硫ゴムを実施例1と同様に加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR複合体のバウンドラバー量は20.1重量%であった。また薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は94.1%と比較的良好であった。しかし、ゴム中にCNTの未分散塊は少量散見され、CNT分散状態は実施例のものに比べ劣っていた。また、体積固有抵抗値は1.53×101Ω・cmであった。
製造例2で調製したCNT/カーボンブラック/SBR複合体とクロロプレンゴム(CR)を表2の配合処方にてバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し混練り物を得た。次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、60℃で5分間練り込み、未加硫ゴムとした。次いで、この加硫ゴムを実施例1と同様に加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR/CR複合体を薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は98.2%とSBRとCR中にCNTとカーボンブラックが良好に分散していた。また、体積固有抵抗値は2.43×102Ω・cmであった。
ウェットマスターバッチは用いずに、表2の配合処方にてSBR1502、クロロプレンゴム(CR)、 CNT−1、カーボンブラック、進展油、ゴム薬品をバンバリーミキサーにてドライ練りを行った。まず硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し、次いで得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて60℃で5分間練り込み、未加硫ゴムとした。次いで、この加硫ゴムを実施例1と同様に加硫して加硫サンプルを製造した。
得られたCNT/カーボンブラック/SBR/CR複合体を薄膜に加硫プレスした光学顕微鏡での断面観察によるゴム中のCNT/カーボンブラックの分散度は89.5%と、ゴム中にCNTが自己凝集した不良分散塊が散見された。また、体積固有抵抗値は8.87×103Ω・cmであった。
すなわち、本発明による実施例1〜4では、CNTとカーボンブラックをゴムラテックスと共凝固する際に、CNT水スラリーとカーボンブラック水スラリーの混合液をウォータージェット型湿式微細化装置で高圧ノズルにより強力に衝突混合分散することで、CNTとカーボンブラックが強力に絡み合い、CNTが独自に自己凝集することなくカーボンブラックとCNTが相互作用により良好にゴム中に分散され、ポテンシャルエネルギー的に安定に配位したCNT/カーボンブラック/ゴムハイブリッド複合体が得られたことがわかる。こうして得られたCNT/カーボンブラック/ゴムハイブリッド複合体は、CNT/カーボンブラック分散度が良好(ASTM D2663に準拠した分散度が97%以上)で、バウンドラバー量が多く(22重量%以上)、動的クリープで測定されたCNT/カーボンブラックがゴム中で安定な配位位置に転移する第2クリープが、全クリープ量の25%以下と少なく、もともとポテンシャルエネルギー的に安定な配位に位置していたことがわかる。
ドライ練り(乾式法)である比較例3〜7では、SBRにCNTとカーボンブラックを練り込んでCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を作製したものであるが、CNT/カーボンブラック分散度が低く、バウンドラバーも少ない。また第2クリープも多く、導電性も本発明例に比べ劣り、本発明のような分散性に優れたCNT/カーボンブラック/ゴム複合体を得ることはできない。ドライ練りで最もCNT分散がよいとされる特許文献1や特許文献2のロール2段混合法(ロール間隙を2段階で混練)でも第2クリープは28%以上であり、本発明に比べ安定配位なCNT/カーボンブラック/ゴム複合体は得られなかった。
また、本発明によれば、実施例4のように他のポリマー(たとえばクロロプレンゴム:CR)とのブレンド使用でも安定配位とすることができ、様々な工業用品・部品などで有用な材料であることが分かる。
2 コップ
3 砂
Claims (5)
- 以下の動的クリープ測定法で測定された第2クリープが、全クリープ量の25%以下であり、
バウンドラバーを22重量%以上含み、
ASTM D2663に準拠したカーボンナノチューブ及びカーボンブラック分散度が98%以上である、カーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体。
<動的クリープ測定法>
カーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体160重量部にステアリン酸1.0重量部、酸化亜鉛3.0重量部、硫黄1.75重量部、加硫促進剤1.40重量部を添加混練し、得られた未加硫物を160℃の条件で加硫して、直径10cm、高さ20cmの円柱状の加硫サンプルを得、この加硫サンプルについて、回転剪断式試験装置を用いて周波数0.839Hz、剪断応力0.55〜0.70MPaで動的クリープを測定する。 - 体積固有抵抗値が105Ω・cm以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体。
- ゴムラテックスと、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックの水分散液とを共凝固することによりカーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体を製造する方法であって、
カーボンナノチューブを水に分散させて、カーボンナノチューブ濃度0.20重量%以上、1.0重量%以下のカーボンナノチューブ水分散液を調製する工程と、
カーボンブラックを水に分散させて、カーボンブラック濃度3.0重量%以上、8.0重量%以下のカーボンブラック水分散液を調製する工程と、
ウォータージェット型湿式微細化装置を用いて、該カーボンナノチューブ水分散液と該カーボンブラック水分散液の混合液を、噴射ノズル径0.1〜0.15mmの高圧ノズルから、噴射圧力200MPa以上、噴射500m/sec以上で噴射させて剪断衝突混合分散させることによりカーボンナノチューブとカーボンブラックの混合水分散液を得る工程と、
該混合水分散液をゴムラテックスと共凝固させる工程と
を含むカーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体の製造方法。 - 前記カーボンナノチューブの繊維直径が8nm〜15nmであり、アスペクト比が100以上である、請求項3に記載のカーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体の製造方法。
- 前記カーボンブラックが、窒素吸着比表面積30〜120m2/g及び/又はDBP吸油量50〜140ml/100gの非酸化カーボンブラックである、請求項3又は4に記載のカーボンナノチューブ/カーボンブラック/ゴム複合体の製造方法。
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