JP6371633B2 - ゴム組成物及びベルト被覆ゴム - Google Patents
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Description
本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]カーボンブラックを分散させたスラリー溶液とゴムラテックスとを混合して得られるウェットマスターバッチを用いて製造されたゴム組成物であって、
該カーボンブラックは、JIS K 6217−4:2008に基づき測定したジブチルフタレート吸油量(ml/100g)が60以上90以下であり、JIS K6217−7:2013に基づき測定した統計的厚さ比表面積(m2/g)が100以上150以下であり、
該ゴムラテックス100質量部に対して、該カーボンブラックが35質量部以上80質量部以下配合されたゴム組成物。
[2]ディスパーグレーダーで断面を観察し、観察結果を画像解析により二値化した際に、大きさ10μm以上の凝集塊の占める面積が該断面の総面積に対して1%以上10%未満である[1]に記載のゴム組成物。
[3]前記カーボンブラックの配合量は、50質量部以上65質量部以下である[1]又は[2]に記載のゴム組成物。
[4]前記ウェットマスターバッチにおけるゴム成分として天然ゴムを30質量%以上含有する[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5]前記ウェットマスターバッチにおけるゴム成分100質量部に対し、硫黄分が3質量部以上7質量部以下である[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のゴム組成物を用いたベルト被覆ゴム。
[7]金属部材との間の硬度差が20以下である[6]に記載のベルト被覆ゴム。
本発明のウェットマスターバッチ製造方法は、スラリー溶液を製造する工程と、スラリー溶液とゴムラテックス溶液とを液相で混合して混合物を製造する工程と、混合物を乾燥する工程とを含む。
スラリー溶液を製造する工程において用いるカーボンブラックは、特定グレードのカーボンブラックを用いて製造される。
塩基性水溶液に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、アンモニア等が好適に挙げられる。
塩基性水溶液に添加する塩基の量は、スラリー微粒化頻度を確保し、マスターバッチのゴム物性を向上させるという観点から、スラリー溶液の全量に対して0.06質量%以上0.1質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以上0.09質量%以下であることがさらに好ましい。
カーボンブラックの酸化処理は、乾燥したカーボンブラックを0.1%以上16%以下のオゾン雰囲気下に晒す処理により行うことが好ましい。オゾン雰囲気下でのカーボンブラックの酸化処理における処理温度は、常温〜100℃であり、処理時間は10秒〜300秒である。このカーボンブラックの酸化処理は、乾燥カーボンブラックをオゾンガスで直接酸化する手法であるので、後処理(水洗・乾燥)が必須ではなく、効率的かつ簡便でコストも抑制できる。
他方、粒度を小さくするためにスラリーに過度のせん断力をかけると、カーボンブラックのストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こす。かかる観点から、水分散スラリー溶液から乾燥回収した充填剤のDBP吸油量が、スラリーに投入する前のカーボンブラックのDBP吸油量の93%以上であることがより好ましく、96%以上であることがさらに好ましい。
混合物を製造する工程は、カーボンブラック分散スラリー溶液とゴム成分を含むゴムラテックス溶液との混合液を調製した後に、混合物を製造する工程である。
天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、酵素で処理した脱蛋白ラテックス、上記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。
合成ゴムラテックスとしては、例えばスチレン−ブタジエン重合体ゴム、合成ポリイソピレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、ポリクロロプレンゴム等のラテックスを使用することができる。
混合物を乾燥する工程として、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー、バンドドライヤー等の通常の乾燥機を用いることができるが、さらにカーボンブラックの分散性を向上させるためには、機械的せん断力をかけながら乾燥を行なうことが好ましい。これにより、加工性、補強性、ゴム物性に優れたゴムを得ることができる。この乾燥は、一般的な混練機を用いて行なうことができるが、工業的生産性の観点から、連続混練機を用いることが好ましい。さらには、同方向回転、あるいは異方向回転の多軸混練押出機を用いることがより好ましく、特に二軸混練押出機を用いることが好ましい。
このようにして、酸化処理されたカーボンブラックを用いたウェットマスターバッチを効率よく製造することができる。
本発明の実施の形態に係るゴム組成物は、上述の本発明の方法で得られた酸化処理されたカーボンブラックを用いたウェットマスターバッチを配合することにより得られる。ゴム組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、プロセス油、亜鉛華、スコーチ防止剤、ステアリン酸等の通常ゴム業界で用いられる各種薬品を添加することができる。
なお、断面観察において、ディスパーグレーダーは、TECH PRO社製を用いて行い、観察結果の画像解析は、RCBメソッドのX値を用いて評価した。
上記ウェットマスターバッチに追加して用いられる他のゴム成分としては、ジエン系合成ゴムが挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物等が挙げられる。
本発明で使用できる老化防止剤は、特に限定されるものではないが、例えばアミン系、フェノール系、有機ホスファイト系あるいはチオエーテル系などの老化防止剤を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
本発明のゴム組成物は、ゴム中にカーボンブラックが高分散、かつ、高度にパッキングされているので、金属部材に対しての剛性段差を小さくすることができ、さらに、金属部材に対する接着性の劣化を抑制することができる。そこで、本発明のゴム組成物は、上記特性に鑑みて、空気入りタイヤにおけるキャップトレッドとカーカスとの間に配置されるベルト被覆ゴムとして好適に使用される。
実施例1−7、比較例1−4における各種測定は下記の方法により行なった。
(1)カーボンブラックの性状測定(DBP給油量(ml/100g)、STSA(m2/g))
充填材のDBP吸油量は、JIS K 6217−4:2008に準拠して測定した。
STSAは、JIS K6217−7:2013に準拠して測定した。
(2)発熱性(tanδ)
TOYOSEIKI株式会社製スペクトロメーター(動的歪振幅1%、周波数52Hz、測定温度25℃)を使用して、tanδを求め、下式により算出した。
発熱性指数=(供試試験片のtanδ)/(比較例1試験片のtanδ)
発熱性は、数値が小さいほど低発熱性で優れている。
(3)耐亀裂進展性は、値が大きいほど補強性が高い。
(4)硬度
硬度は、JIS K6253−1993に従う、デュロメータ硬さ試験・タイヤA試験機を用いて、試験温度25℃にて測定した。
(5)硬度差
硬度差は、金属部材の硬度を100とした際、上記の方法にて測定した各ゴムの硬度との差異を求め、絶対値を取ったものを硬度差とした。
(1)スラリー溶液の調製
カーボンブラックの酸化処理として、乾燥したカーボンブラックを3%のオゾン雰囲気下に晒した。カーボンブラックの酸化処理における処理温度は25℃であり、処理時間は30秒である。酸化処理されたカーボンブラック(カーボンブラックA)のDBP吸油量は80(ml/100g)であり、STSAは120(m2/g)であった。
酸化処理されたカーボンブラックを水に10質量%の割合で入れ、ハイシアーミキサー(シルバーソン社製「LX800」)にて微分散させてスラリー液を作製した。この時の、スラリー溶液のpHは、10.0とした。ここで得られたスラリー液のカーボンブラックの粒度分布は、D90(90体積%粒径)=1μm以下であった。
(2)ウェットマスターバッチの調製
上記(1)で作製したスラリー溶液10kgと、10質量%に希釈した天然ゴムラテックス10kgとを攪拌しながら混合したのち、これを蟻酸にてpH4.5に調製して凝固させた。この凝固物をろ取し、充分に洗浄してウェット凝固物900gを得た。その後、計量カップに60g(固形分30g)ずつ量り取ったウェット凝固物を1分間隔で、神戸製鋼社製二軸連続混練機「KTX−30」に投入することで、酸化処理されたカーボンブラックを用いたマスターバッチを作製した。このマスターバッチにおいては、天然ゴムラテックス100質量部当りのカーボンブラックの量は56質量部であった。
(3)ゴム組成物の調製
上記(2)で作製したカーボンブラックを配合したウェットマスターバッチ160質量部に対して、老化防止剤(N−フェニル−N'−(1,3-ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」)1質量部、亜鉛華(白水化学株式会社製「1号亜鉛華」)3質量部、ステアリン酸(日本油脂株式会社製)1質量部、加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーCZ−G」)1質量部、及び硫黄(軽井沢精錬所株式会社製)2.2質量部を配合し、インターナルミキサーで混練してゴム組成物を得た(製法1)。得られたゴム組成物について、発熱性、耐亀裂進展性、硬度及び硬度差を評価した。結果を下記の表1に示す。
実施例2は、酸化処理により得られたカーボンブラック(カーボンブラックB)のDBP吸油量が60(ml/100g)であり、STSAが120(m2/g)であること以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例2のゴム物性評価を表1に示す。
実施例3は、酸化処理により得られたカーボンブラック(カーボンブラックC)のDBP吸油量が90(ml/100g)であり、STSAが120(m2/g)であること以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例3のゴム物性評価を表1に示す。
実施例4は、酸化処理により得られたカーボンブラック(カーボンブラックD)のDBP吸油量が80(ml/100g)であり、STSAが150(m2/g)であること以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例4のゴム物性評価を表1に示す。
実施例5は、酸化処理により得られたカーボンブラック(カーボンブラックE)のDBP吸油量が80(ml/100g)であり、STSAが100(m2/g)であること以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例5のゴム物性評価を表1に示す。
実施例6は、酸化処理により得られたカーボンブラック(カーボンブラックA)のDBP吸油量が80(ml/100g)であり、STSAが120(m2/g)であり、天然ゴムラテックス100質量部当りのカーボンブラックの量が35質量部であること以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例6のゴム物性評価を表1に示す。
実施例7は、酸化処理により得られたカーボンブラック(カーボンブラックA)のDBP吸油量が80(ml/100g)であり、STSAが120(m2/g)であり、天然ゴムラテックス100質量部当りのカーボンブラックの量が80質量部であること以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例7のゴム物性評価を表1に示す。
す。
比較例1は、実施例1の製法1における(1)スラリー溶液の調製、(2)ウェットマスターバッチの調製は行わず、マスターバッチ未使用製法である製法2として、(3)ゴム組成物の調製の際にウェットマスターバッチ160質量部の代わりに、天然ゴム(RSS#3)を100質量部、カーボンブラック(CABOT社「SHOBLACK N326」:カーボンブラックF)を55質量部用いた製法を採用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。比較例1のゴム物性評価を表1に示す。
比較例2は、実施例1の製法1における(1)スラリー溶液の調製、(2)ウェットマスターバッチの調製は行わず、マスターバッチ未使用製法である製法2として、(3)ゴム組成物の調製の際にウェットマスターバッチ160質量部の代わりに、天然ゴム(RSS#3)を100質量部、カーボンブラック(CABOT社「SHOBLACK N326」:カーボンブラックF)を60質量部用いた製法を採用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。比較例2のゴム物性評価を表1に示す。
比較例3は、実施例1の製法1における(1)スラリー溶液の調製、(2)ウェットマスターバッチの調製は行わず、マスターバッチ未使用製法である製法2として、(3)ゴム組成物の調製の際にウェットマスターバッチ160質量部の代わりに、天然ゴム(RSS#3)を100質量部、カーボンブラック(CABOT社「SHOBLACK N326」:カーボンブラックF)を71質量部用いた製法を採用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。比較例3のゴム物性評価を表1に示す。
<比較例4>
比較例4は、カーボンブラックとしてCABOT社「SHOBLACK N326」(カーボンブラックF)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。比較例4のゴム物性評価を表1に示す。
Claims (8)
- カーボンブラックを分散させたスラリー溶液とゴムラテックスとを混合して得られるウェットマスターバッチを用いて製造されたゴム組成物であって、
該カーボンブラックは、JIS K 6217−4:2008に基づき測定したジブチルフタレート吸油量(ml/100g)が60以上90以下であり、JIS K6217−7:2013に基づき測定した統計的厚さ比表面積(m2/g)が110以上130以下であり、
該ゴムラテックス100質量部に対して、該カーボンブラックが35質量部以上80質量部以下配合されたゴム組成物。 - ディスパーグレーダーで断面を観察し、観察結果を画像解析により二値化した際に、大きさ10μm以上の凝集塊の占める面積が該断面の総面積に対して1%以上10%未満である請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記カーボンブラックの配合量は、50質量部以上65質量部以下である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
- 前記ウェットマスターバッチにおけるゴム成分として天然ゴムを30質量%以上含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 前記カーボンブラックの表面平均酸性官能基量(μeq/m 2 )が0.15以上3.00未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 前記ウェットマスターバッチにおけるゴム成分100質量部に対し、硫黄分が3質量部以上7質量部以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 請求項1〜6に記載のゴム組成物を用いたベルト被覆ゴム。
- 金属部材との間の硬度差が20以下である請求項7に記載のベルト被覆ゴム。
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