JP6613319B2 - 電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法 - Google Patents

電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法に関する。
近年世界保健機関などから提唱されている電磁波が人体へ種々の悪影響を及ぼす危険性、およびデバイスなどの安定動作のため、種々の電磁波から対象物を守る電磁波遮蔽材は今日多くの分野で広く用いられている。そのため、電磁波遮蔽能を有する金属を中心にさまざまな電磁波遮蔽材料が作成されている。しかし、金属を用いた電磁波遮蔽材料は薄膜化しにくいこと、フレキシブル性に劣ること、接着性に劣ること、塗布性に劣ることなど様々な問題があった。これらの問題を解決する方法として、電磁波吸収に基づく電磁波遮蔽能の高いナノ材料であるカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称す)をゴムや高分子に複合化する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、重合前は液状または有機溶媒に溶解して液状となる重合性組成物100質量部に対して直径1 nm〜200 nm、長さ1 μm〜20 μmの導電性ナノサイズ繊維状炭素材料を0.5〜20質量部添加し、溶液状態で混合し、重合して固化することにより得られる電磁波遮蔽性材料が記載されている。
また、特許文献2には、カーボンナノチューブ0.5〜20重量%および導電性繊維5〜50重量%を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる電磁波シールド材料が記載されている。
特開2005−191384号公報 特開2002−290094号公報
しかし、上述した電磁波遮蔽性材料では、カーボンナノチューブを単に熱可塑性樹脂に添加したのみであり、μmスケールまで薄膜化すると、二次元における空間閉じ込め効果によりカーボンナノチューブのネットワークの形成が阻害され、十分な電磁波遮蔽効果を得られていない。
本発明は、μmスケールまで薄膜化しても電磁波遮蔽性に優れる電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態によると、エラストマーもしくは高分子にカーボンナノチューブを分散してなるカーボンナノチューブとエラストマーもしくは高分子との電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料であり、前記複合材料は膜厚0.1 μm以上10 μm以下を備え、前記カーボンナノチューブは直径が20 nm以下、層数10層以下を備え、前記カーボンナノチューブは前記エラストマーもしくは前記高分子の総重量に対して0.1重量部以上80重量部以下含まれ、前記カーボンナノチューブは、前記エラストマーもしくは前記高分子中で連続なネットワークを構成し、前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料を、400℃以上の温度において窒素環境下で6時間保持したとき、前記エラストマーもしくは前記高分子が熱分解し、残留した前記カーボンナノチューブが構造体を成し、前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の初期の体積をV、残留した前記カーボンナノチューブの構造体の体積をVaとすると、Va/Vが0.5以上であり、前記エラストマーもしくは前記高分子を除去して得られた残留した前記カーボンナノチューブの構造体の空孔分布は、0.5 μmから10 μmの範囲において、dV/dlog(d)の値が0.6以下であり、10 nm以上10 μm以下の間に少なくとも1つ以上のピークを備え、周波数が100 Hz以上1 THz以下の範囲の任意の波長の電磁波に対する遮蔽能が0.1×10−1 db/μm以上である電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料が提供される。
前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の引き裂き強度は、10 MPa以上であってもよい。
前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の100℃における貯蔵弾性率が、10 Pa以上であってもよい。
前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料は、前記エラストマーに前記カーボンナノチューブを分散してなり、150℃におけるJIS K6251に準拠した引っ張り試験における引っ張り強さが10 Pa以上であってもよい。
前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料は、前記高分子に前記カーボンナノチューブを分散してなり、アイゾット衝撃強さが50 kJ/m以上であってもよい。
また、本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載の電磁波遮蔽電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を用いて形成される電磁波遮蔽材料が提供される。
また、本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を基材等に塗布、もしくはスプレーコート等によって形成される電磁波遮蔽材料が提供される。
また、本発明の一実施形態によると、解繊したカーボンナノチューブを用意し、前記解繊したカーボンナノチューブが物理的な接触による連続なネットワーク構造をエラストマーもしくは高分子中に構築し、且つ、前記カーボンナノチューブと前記エラストマーもしくは高分子とを成形・架橋硬化させることを備える電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法が提供される。
本発明によると、引き裂き強度や耐薬品性に優れ、数μmで電磁波遮蔽能を発現する電磁波遮蔽CNT高分子複合材料、それを用いたシール材料及びシーリング材料、及び電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の模式図であり、(a)は電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の一部を切断した図であり、(b)は電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100を燃焼させた後の構造体の模式図である。 本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100中のCNT構造体50の一部を拡大した連続ネットワークを示す模式図である。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料のCNTの充填量を示す図である。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料のCNT構造体の体積測定を示す図である。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料のCNT構造体の空孔分布を示す図である。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の1GHzにおける電磁波遮蔽測定の結果を示す表である。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の10GHzにおける電磁波遮蔽測定の結果を示す表である。 本発明の一実施例に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の特性を示す表である。
以下、図面を参照して本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法について説明する。なお、本発明の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料、電磁波遮蔽材料、及び電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本発明に係る電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料(以下、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料ともいう)は、エラストマーもしくは高分子にカーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)を複合化し、エラストマーもしくは高分子内にCNTの連続した緻密なネットワークを形成した材料である。電磁波遮蔽能をもたらすCNTは直径がnmオーダーのナノ材料であるため、本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料はμmスケールまで薄膜化しても、単位膜厚あたりの電磁波遮蔽能が低下せず、電磁波遮蔽材料として機能する。数μmまで薄膜化しても電磁波遮蔽効果が失われない膜の構造について以下に説明する。
一般的には、複合材料中のフィラーのネットワークは3次元的な連続ネットワークのほうが少ないフィラー添加量において形成され、2次元の連続ネットワークはより多量のフィラー添加を必要とする。また、原理的にはフィラーの直径の二倍以下の膜厚を有する膜中では、フィラー同士が物理的な接触を維持することができない。そのため、一般的な1次粒径が数μmのフィラーを用いた場合、数μmの膜厚にでは膜中で連続ネットワークが形成されなくなり、電磁波遮蔽能力も大幅に低下する。しかし、直径数nm程度のCNTをフィラーとして用いることによって、数μmの膜厚になっても膜中で連続ネットワークが形成され、電磁波遮蔽能を維持する。特にCNTを網目状の凝集体のように分散させることにより、より高い電磁波遮蔽能を示すようになる。この網目状の凝集体構造は、2次元画像で観察して測定された領域サイズ;10 μm以上を備え、3次元的に張り巡らされたCNTネットワークを備える。この網目状に分散されたCNTの添加量を20重量部以下に抑えることによりマトリックスの物性を保持することができ、脆化などの物性の低下を引き起こさない。
本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料は、エラストマーもしくは高分子にCNTを分散してなるCNTとエラストマーもしくは高分子との電磁波遮蔽CNT高分子複合材料である。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料は膜厚0.1 μm以上10 μm以下を備える。CNTは20 nm以下の直径と、10層以下の層数を備える。また、エラストマーもしくは高分子の総重量に対して、CNTは0.1重量部以上80重量部以下の範囲で含まれる。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料において、CNTは、エラストマーもしくは高分子中で連続なネットワークを構成する。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を、400℃以上、好ましくは600℃以上の温度において窒素環境下で6時間以上保持したとき、エラストマーもしくは高分子が熱分解し、残留したCNTが構造体を成す。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の初期の体積をV、残留したCNTの構造体の体積をVaとすると、Va/Vが0.5以上である。エラストマーもしくは高分子を除去して得られた残留したCNTの構造体の空孔分布が0.5 μmから10 μmの範囲において、縦軸dV/dlog(d)の値が0.6以下であり、空孔分布が10 nmから10 μmの間に少なくとも1つ以上のピークを備える。また、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の周波数が100 Hz以上1 THz以下の範囲の任意の波長の電磁波に対する遮蔽能が0.1×10−1db/μm以上である。
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の模式図である。図1(a)は電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の一部を切断した図であり、図1(b)は電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100を燃焼させた後の構造体の模式図である。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、CNT10と母材30を含み、母材30中にCNT10が高度に解繊し、相互に接触しながら構成される連続ネットワークを備えたカーボンナノチューブの構造体(以下、CNT構造体とも称す)50を有する。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100において、母材30はエラストマーもしくは高分子で構成される。図2は、本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100中のCNT構造体50の一部を拡大した連続ネットワークを示す模式図である。
本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に含まれるCNT10は、CNT10の束(バンドル)からCNT10が解繊した構造を有する。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100において、CNT10同士が互いに物理的に絡み合っており、高度に発達した連続ネットワークを形成する。
フィラーであるCNT10間の接触が緊密であればマトリックスである母材30が消失しても嵩密度は変化しないため、体積比は1となる。一方、CNT10間の接触が緊密ではなく、CNT10間に空隙が多くある場合には母材30が消失すると体積が収縮するため、体積比は0に近づく。すなわち、母材30の消失前後(熱処理前後)の体積比は、CNT10の連続ネットワークの緻密さを反映している。体積比が1に近づくほど電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、母材30のCNT10が連続ネットワークを形成しているため、電磁波を良好に遮蔽することが可能になる。
材料が入射した電磁波を透過させず、遮蔽するメカニズムとしては、界面での反射及び吸収による反射損と、材料内で電磁波のエネルギーをジュール熱に変える吸収損がある。電磁波の波長よりも厚さが短い、非磁性体の導電性フィラーを充填した遮蔽材の場合、反射損が主要な電磁遮蔽のメカニズムである。試料に垂直に入射する電磁波に対して反射損を向上させる、すなわち遮蔽能を向上させるためには、面内の導電率を上げることが重要である。導電率を上げるためには、フィラーであるCNTが母材の中で3次元的に導電ネットワークを形成することが重要である。
また電磁波の吸収損を向上させるためには、フィラーが電磁波を吸収し、それを熱エネルギーに変換することが必要である。そのためには、CNTが電磁波との相互作用をする必要がある。CNTと電磁波が最も大きく相互作用する点は、電磁波の電場の振幅が最も大きい点となる。吸収対象となる電磁波は波長や位相が様々な白色電磁波であるので、電磁波の振幅の最大となる点は様々である。シート中に構築された緻密なCNTの3次元ネットワーク構造は、白色電磁波と効率よく相互作用するため、電磁波の吸収損も大きくなると考えられる。
また、このようなCNT10の連続ネットワークを備える電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、力学的に頑強になり、化学的に安定になり、高い引き裂き特性等の優れた特性も示す。
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、400℃以上、好ましくは500℃、より好ましくは600℃以上において窒素雰囲気下で6時間以上保持したときに、残留したCNT10が構造体50を形成し、且つ、燃焼前の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の初期の体積Vに対する燃焼後に残留したCNT10の構造体50の嵩体積Vaとの比が0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、最も好ましくは0.9以上であり、1.0以下である。母材30を窒素雰囲気下で昇華させると、残留したCNT10はばらばらにならず、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料に対して体積変化のないCNT構造体50を形成する。これは、エラストマー内でCNT10同士が接触し、電子の移動に適した連続ネットワークを形成していることを意味する。このようなCNT構造体50は、反射損を向上させて電磁波を遮蔽するには好適である。また、CNT構造体50は、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に力学的な保持力を付与し、コンクリートの中の鉄筋のように母材30に頑強性や、優れた力学・化学特性を付与することもできる。
CNT10は、バンドルではなく、ばらばらに解繊することによって、CNT10と母材30の界面の面積が増加する。解繊したCNT10は、互いに物理的に接触しやすくなり、導電パスを形成しやすくなる。CNT10は物理的に接触している、もしくは非常に近接しているため、母材30が取り除かれてもCNT10同士の物理的な接触点15がCNT10の収縮を抑制して構造体としての形態を保持し、本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100においては、見かけの体積である嵩密度の低下が小さい。走査型電子顕微鏡(SEM)により観察されるCNT10の物理的な接触点15の間隔は1 μm以上100 μm以下程度である。CNT10の物理的な接触点15の間隔を測定する方法として、例えば、動的機械特性測定装置(DMA)がある。本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に対して、室温で周波数を0.001 Hz〜100 Hzまで変化させたとき、周波数に依存しない弾性率領域が現れる(プラトー領域)。プラトー領域における電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の貯蔵弾性率は10 Pa以上10 Pa以下である。本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100において、弾性率から物理な接触点15間の距離は推定可能である。一般的に、よく発達したCNTネットワークにおいては、接触点15間の推定距離は100 nm〜100 μmの範囲である。
(カーボンナノチューブの構造体の細孔分布)
電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、500℃において窒素雰囲気下で6時間以上保持したときに、残留したCNT構造体50の空孔分布が0.5 μmから10 μmの範囲において、dV/dlog(d)の値が0.6以下である。また、細孔径が1 nm以上100 μm以下、好ましくは1 nm以上20 μm以下、より好ましくは1 nm以上10 μm以下の範囲に1つ以上のピークを有する。ここで、空孔分布は、水銀圧入式のポロシメーターで計測することができる。ピークとは微分細孔容積が0になる点であり、かつ微分細孔容積が負から正になる点である。空孔径はCNT10とCNT10との距離に対応しており、このようなピークを有する電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は空孔径が小さく、CNT10の連続ネットワークが形成されているため、薄膜化してもCNT10のネットワーク構造が保持され、電磁波の反射損が大きい状態が保たれるために、遮蔽能が低下しない。また、CNT間隔か緻密であることから、材料をすり抜けて透過する電磁波がほとんどなく、良好で、信頼性の高い電磁波遮蔽材料を作製することが可能となる。
(電磁波遮蔽能)
本明細書において、電磁波遮蔽能は、ASTM−D4935により評価するものとする。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、CNT10として、後述する本発明者らが以前に報告した単層CNTを用いた場合、100 MHz(同軸線路治具)および1 GHz(同軸線路治具)及び10 GHz(X−band導波管治具)における電磁波遮蔽能が、0.1×10−1 db/μm以上、好ましくは0.2×10−1 db/μm以上、より好ましくは0.5×10−1 db/μm以上である。ただし、測定時での電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の膜厚は0.1 μm以上10 μm以下とする。一般に膜厚に比例して電磁波遮蔽能は低下するが、100 μm以下の薄膜では単位厚さあたりの電磁波遮蔽能は低下する。これは、電磁波を遮蔽するために必要な構造が薄膜化することにより壊れてしまうことに起因する。本発明において、CNT10は直径が数nmであるため、100 μm以下の膜厚まで電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100を薄膜化しても電磁波遮蔽に必要な構造、すなわち連続なネットワーク構造が維持できることから、上記膜厚あたりの電磁波遮蔽能を維持できる。この特徴によって、本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、塗布材料などの薄膜電磁波遮蔽材料として使用することが可能となる。
(引き裂き強度)
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の引き裂き強度(JIS K7128−3もしくはJIS K6252準拠)は、10 MPa以上、好ましくは20M Pa以上、より好ましくは30 MPa以上である。このような高い引き裂き強度を有する電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、破損箇所、傷などからクラックが進展しにくいために、製品信頼性に優れ、長期の安定した使用に対して好適である。本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、CNT10が母材30中で連続ネットワークを形成するためにクラックの進展を阻害するため、高い引き裂き強度を有する。
(100℃における弾性率)
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の100℃における貯蔵弾性率は10 Pa以上、好ましくは5×10 Pa以上である。このような100℃における高い弾性率は、母材30が軟化する高温下において、シーリング材料などとして用いることを可能にする。本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、CNT10が母材30中で連続ネットワークを形成するため、CNT10が母材30を力学的に補強し、母材30が軟化する100℃においてもシーリング材料として優れた機械特性を示し、好適である。
(引っ張り強さ)
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、150℃における引っ張り試験(JIS K6251準拠)における引っ張り強さが10 Pa以上、好ましくは2×10 Pa以上、より好ましくは10×10 Pa以上であり、10 Pa以下である。引っ張り強さが10 Paより小さいと外的な応力に対して簡単に破壊してしまい、材料としての強度が不十分である。一方、引っ張り強さが10 MPa以上であれば、ゴム弾性を示し、シーリング材料として使用可能である。本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100においては、母材30中にCNT10が連続ネットワークを形成している。CNT10は一般的なゴムなどの高分子材料とは異なり、昇温しても軟化することがない。そのため、150℃の温度においても十分な引っ張り強さを維持することが可能となる。
(アイゾット衝撃強さ)
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、アイゾット衝撃強さが50 kJ/m以上、好ましくは60 kJ/m以上、より好ましくは70 kJ/m以上である。アイゾット衝撃強さが1 kJ/mより弱いと、電磁波遮蔽材料を実製品に用いることは困難である。本明細書において、アイゾット衝撃強さは、JIS K 7110に基づいて評価することができる。
(燃焼温度)
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の燃焼温度が150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上、800℃以下である。燃焼温度が150℃より低いと、電磁波遮蔽材料を実製品に用いることは困難である。
(母材)
電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に含まれる母材30は、熱分解温度は150℃以上であれば、特に限定されない。母材30はエラストマーもしくは高分子であることが好ましい。母材30に用いるエラストマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CEO)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、スチレン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー;およびこれらの混合物が挙げられる。また、母材30は、架橋剤、架橋開始材、酸化防止剤などの添加物等をさらに含有していてもよい。
母材30に用いる高分子としては、例えば、汎用高分子、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、熱硬化性高分子が挙げられる。汎用高分子としては、ポリエチレン(HDPE,LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、メタロセン樹脂が挙げられる。汎用エンジニアリングプラスチックとしては、ポリアミドPA、ポリアセタールPOM、ポリカーボネートPC、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、液晶ポリマーLCP、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVOH)、接着性ポリオレフィンが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン(PUR)が挙げられるが、本発明に用いる高分子はこれらに限定されるものではない。
(カーボンナノチューブの比表面積)
電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に含まれるCNT10の比表面積は、200 m/g以上、好ましくは400 m/g以上、より好ましくは600 m/g以上であり、2000 m/g以下である。このような大きな比表面積を有するCNT10は、連続ネットワークを形成するために必要なCNT同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすく、好適である。また、比表面積が大きいCNT10は電磁波の照射に対して反射損が大きくなることから電磁波を反射遮蔽しやすくなるため、好適である。
(カーボンナノチューブの直径)
図1に示したように、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に含まれるCNT10は、CNT10が複数のCNT10と交差し、ファンデルワールス力により点で結合したネットワーク構造を有する。CNT10の直径は20 nm以下、好ましくは10 nm以下、より好ましくは7 nm以下、さらに好ましくは4 nm以下であり、1 nm以上である。このような小さな直径を有するCNT10は、比表面積が大きくなるため、連続ネットワークを形成するために必要なCNT同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすく、好適である。
また、CNT10の直径が小さくなるほどCNT10の比表面積は増加する傾向にあり、前述した理由でより電磁波を吸収しやすくなる。また、1.0 nm以下の直径のCNT10では金属型と半導体型のCNTが明確に分かれてしまい、半導体型のCNTが電磁波の反射に寄与しなくなるため、1.0 nm以上のCNTであることが望ましい。
(カーボンナノチューブの層数)
また、CNT10の層数は10層以下、好ましくは5層以下、より好ましくは2層以下、最も好ましくは単層である。ここで、CNTの層数とは透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した100本のCNTの層数の平均であり、二層CNTとは全体の半分本以上が二層のCNTであるもの、単層CNTとは全体の半分以上が単層CNTであるものをいう。層数が少ないほど、CNT10はフレキシブルで連続ネットワークを構築しやすいため、層数が少ないほど連続ネットワークを形成するために必要なCNT同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすく、好適である。
このような層数を有するCNT10は、電磁波により励起された電子がより広い領域を移動することができるため、より効果的に電磁波のエネルギーを反射もしくは吸収することができる。また、層数が少ないほど、CNT10は母材30との間に多くの界面を持つことから、電磁波に対してより電子を励起しやすくなり、効率よく電磁波のエネルギーを反射もしくは吸収することが可能である。
(カーボンナノチューブの長さ)
また、CNT10の長さは、1 μm以上であることが好ましく、より好ましくは5 μm以上、さらに好ましくは10 μm以上である。このような長尺なCNT10は、CNT間の結合点が多いため、形状保持性に優れたネットワーク構造を形成することを可能とする。なお、本発明においては、このような長尺なCNTを含むものであればよく、その製造方法等は特に限定されない。なお、上述した物性を備えた単層CNTは、国際公開第2006/011655号に記載された方法により製造することができる。また、多層CNTは、国際公開第2012/060454号、特表2004−526660号公報に開示された方法により製造することができる。
(カーボンナノチューブの含有量)
一実施形態において、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の総重量に対して、CNTを0.1重量部以上80重量部以下含み、好ましくは0.3重量部以上10重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上15重量部以下含む。CNTの含有量が0.1重量部より少ないと、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100に、十分に発達した連続ネットワークが形成されない。また、CNTの含有量が80重量部より多いと、母材30に由来する物性が十分に発揮されず、電磁波遮蔽材料に用いたときに要求される柔軟性や追従性を得ることができないため、好ましくない。
CNT構造体50の体積比は既存のいかなる手法を用いても計測することが可能であるが、デジタル顕微鏡でCNT構造体50のサイズを計測し、上面から面積を、厚みを横方向から計測し、底面積と高さの積により嵩体積を求めることが好適である。したがって、本明細書においては、CNT構造体50は、嵩体積により評価し、CNT10の体積を積算して算出するものではない。
(電磁波遮蔽材料)
本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100は、薄く、十分な電磁波遮蔽能を有する電磁波遮蔽材料として好適に用いることができる。本発明に電磁波遮蔽材料は、エラストマーもしくは高分子中にCNTの連続ネットワーク構造を有するため、基材の変形などに対してある程度の電磁波遮蔽能の安定性を有する。また、CNTの連続ネットワーク構造は、電磁波遮蔽材料の伸縮、変形、膨張に対して、母材の変形に追従し、壊れにくい。
また、本発明に電磁波遮蔽材料は、フレキシブルで、人体に無害なため、人体に張り付けて使用可能である。これは、本発明に電磁波遮蔽材料においては、人体に無害な高分子を母材として用い、人体に擦過傷などを生じさせず、幼児が扱っても目などを傷つけることがない材料であるためである。
(製造方法)
上述した本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の製造方法について説明する。なお、以下に説明する製造方法は一例であって、本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の製造方法は、これらに限定されるものではない。
本発明係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の製造方法は、従来の製造方法とは異なり、CNTを解繊し母材であるエラストマーもしくは高分子に複合化する工程と、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料にオープンロールを用いて硬化剤を加え分配し、成形体を得る工程とに分離したことを特徴の一つとする。このような2つの工程を経ることにより、CNTの連続ネットワークを母材中に構築することができ、電磁波遮蔽能や引き裂き強度を向上させることができる。すなわち、CNTに強いせん断力を加えると、CNTの束(バンドル)が解れる解繊と、CNTの切断の両方がおきる。CNTの高度に発達した連続ネットワークを構築するためには、CNTを切断することなくCNTを解繊し、アスペクト比の高いCNTを得ることが必要となる。また、CNTをゴムに混ぜる場合、CNTとエラストマーもしくは高分子は表面エネルギーが異なることからCNTは凝集する可能性がある。CNTが凝集するとCNTの高度に発達した連続なネットワーク構造を得ることが出来ない。そこで、CNTをできる限り位置的に乱雑に分配(配置)することによりネットワーク構造を構築する。連続ネットワークにより、電磁波遮蔽能や引き裂き強度に優れる電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を製造することが出来る。
本発明係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料において、CNTがバンドルではなく、解繊している事が重要である。ここで、「解繊」とは、繊維を解すことを意味する。「解す」とは、CNTがガス吸着法で測定可能な表面をバンドルから露出することを意味する。
また、本発明において、CNTが一カ所に固まって居らず、母材中に均一に分布していることが重要である。電磁波に励起された電子が電磁波遮蔽CNT高分子複合材料内を移動するためには、CNTが母材中に均一に分布していることが必要である。またCNT同士が互いに物理的に接触していることによって、連続な導電ネットワークが形成され、電磁波の反射損が大きくなり電磁波が遮蔽され、電磁波遮蔽能が向上する。
本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の製造に用いるCNTは、例えば、国際公開第2006/011655号(単層CNT)、国際公開第2012/060454号(多層CNT)、特表2004−526660号公報(多層CNT)に開示された方法により製造することができる。このような製造方法により製造されたCNTは、直径が小さく、層数が少ないため、非常に大きな比表面積を有する。このため、連続ネットワークを形成するために必要なCNT同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の電磁波遮蔽能や引き裂き強度を向上させることができ、好適である。
(CNT乾燥工程)
CNTは集合体として製造されるが、水分が吸着した状態では、水の表面張力により、CNT同士がくっついているため、CNTが非常にほどけにくくなり、エラストマー中での良好な分散性が得られない。CNTを180℃、好ましくは200℃以上に加熱し、10 Pa以下、好ましくは1 Pa以下で24時間以上、好ましくは72時間以上保持して、CNTの表面に付着した水を除去する。CNT表面の水分を除去することで、次工程での溶剤とのぬれ性を高め、解繊を容易にすることができる。これにより、CNTの連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料中の電磁波遮蔽能や引き裂き強度を向上させることができる。
(分級工程)
CNT集合体の大きさを所定の範囲にすることで、均一なサイズのCNT集合体とすることが好ましい。CNT集合体は、サイズの大きな塊状の合成品も含まれる。これらのサイズの大きな塊状のCNT集合体は分散性が異なるため、分散性が低下する。そこで、網、フィルター、メッシュ等を通過した、大きな塊状のCNT集合体を除外したCNT集合体だけを以後の工程に用いると、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料中でのCNTの分散性を高めることができる。
(プレ分散工程)
CNTを大きい凝集塊のまま分散機に投入すると詰まりの原因となるため、乾燥させたCNTに有機溶媒を加え、CNTを10 μm程度以下のバンドルまで解繊することにより、分散工程における歩留まりを改善することができる。プレ分散工程は、例えば、有機溶媒に添加した約0.1重量部のCNTをクロスヘッドスターラーで500 rpm以上、8h以上攪拌することで実施することができる。CNTを分散させる有機溶媒としては、例えば、MIBKを用いることができる。プレ分散工程を行うことにより、次工程である解繊工程において、より解繊が容易に進むようになる。解繊が進むことにより、連続ネットワークをエラストマーもしくは高分子中に構築することができ、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の電磁波遮蔽能や引き裂き強度が向上する。
(CNT解繊工程)
CNTをMIBKのような有機溶媒中で解繊する。既存の分散方法を採用できるが、特にジェットミルなどの乱流状のせん断力により分散する装置ではCNTへのダメージを低減して解繊することができる。特に、湿式ジェットミルは、溶媒中の混合物を高速流として、耐圧容器内に密閉状態で配置されたノズルから圧送するものである。耐圧容器内で対向流同士の衝突、容器壁との衝突、高速流によって生じる乱流、剪断流などによりCNTを分散させる。湿式ジェットミルとして、例えば、株式会社常光のナノジェットパル(JN10、JN100、JN1000)を用いた場合、分散工程における処理圧力は、10 MPa以上150 MPa以下の範囲内の値が好ましい。
これ以上高い圧力でせん断力を加えた場合、CNTは繊維軸方向に切断される。このことはCNTの欠陥を評価するラマン分光法により確かめられている。また10 MPa以下の圧力では、CNTを効率良く解繊することが出来ない。すなわち10 MPa〜150 Mpaの圧力で圧力を加えることによりCNTは切断よりも解繊がより進み、より高いアスペクト比を有するようになる。この高いアスペクト比はCNTが高度に発達した連続したネットワーク構造を構築するために必要である。また、本実施形態において、CNT集合体の分散工程には、スギノマシン社製のジェットミル(HJP−17007)を用いてもよい。
CNTを100 nm以下程度まで解繊することにより、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料中でのCNTとエラストマーもしくは高分子との界面の面積を増やすことができる。比表面積が大きいほど、連続ネットワークを形成するために必要なCNT同士の接触点が多くなるため、連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の電磁波遮蔽能や引き裂き強度が向上する。
(エラストマーもしくは高分子との混練工程)
得られたCNT分散液にエラストマーもしくは高分子を適量加え、CNT−エラストマー(又はCNT−高分子)溶液を作製する。エラストマー及び架橋剤、又は高分子の添加量を調整することにより、最終的なCNTの濃度を調整することができる。混練工程は、例えば、CNT分散液にエラストマー及び架橋剤、又は高分子を加え、ビーカー中で円錐状のマグネット攪拌子を用いて混合することにより行っても良い。この場合、室温で、100 rpm以上、12時間以上混合して、解繊したCNTとエラストマーもしくは高分子を混練することが望ましい。CNT及びエラストマーもしくは高分子に親和性の高い(溶解度パラメーターが近い)有機溶媒を用いることにより、CNTとエラストマーもしくは高分子が均等に分配される。この結果、連続ネットワークを形成しやすくなり、電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の電磁波遮蔽能や引き裂き強度を向上させることができる。
(溶媒除去工程)
ゴムの架橋剤および架橋開始剤をCNT分散液に加え、よく撹拌したのち、CNTの分散に用いた有機溶媒を除去する。このとき、CNT及びエラストマーもしくは高分子に親和性の高い(溶解度パラメーターが近い)有機溶媒を用いることにより溶媒蒸発過程においてもCNTとエラストマーもしくは高分子とが相分離することなく、均質な構造を保持することができる。溶媒除去工程は、例えば、80℃(もしくは有機溶媒の沸点の10℃以上50℃下の温度)の板(例えば、鉄板)上でCNT−エラストマー溶液(又はCNT−高分子溶液)の入ったビーカーを保持し、有機溶媒をある程度除去する。さらに真空オーブンで有機溶媒の沸点の20℃以上50℃以下の低い温度で保持することにより、有機溶媒を完全に除去することができる。ただし、架橋開始温度よりも昇温しないことが必要である。有機溶媒は、エラストマーもしくは高分子を劣化させる要因であるため、有機溶媒を確実に取り除いておくことが電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の電磁波遮蔽能や引き裂き強度の向上のためには重要である。このようにして、カーボンナノチューブ−エラストマーマスターバッチ(又はカーボンナノチューブ−高分子マスターバッチ)を得る。
通常、CNTゴムは二本ロールによって架橋剤および架橋開始剤を加え、よく練ったのちに金型を用いてプレス成型を行いシート状の成形体を得る。しかし、二本ロールではCNTのネットワークが破壊され、またプレス成型においてはゴムマトリックスが二次元方向に拡散することによりCNT同士の接点に対して応力が印加され、CNTネットワークの破壊が起こる。一方、CNT溶液から溶媒を乾燥させ成形体を得る工程においては、CNTはミクロブラウン運動を行いながら運動しており、その際混合エンタルピーを低減させるため、CNT同士の接触を増加させる。そのため、上記キャスト法により作成した試料は電磁波遮蔽材料として優れた特徴を有している。
また、本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料は、基材に吹き付けることにより製膜し、電磁波遮蔽材料として使用可能である。エラストマーもしくは高分子/CNT及び有機溶媒の溶液をスプレーコーター、ディップコーティング、その他溶液コーティング法によって成膜した際に、CNTの連続なネットワーク構造が構築され、更に導電性が発現し、優れた電磁波遮蔽性を付与することができる。
また、本発明に係る電磁波遮蔽CNT高分子複合材料は、上述したように、二軸混練機などの連続・大量生産に適した手法により製造可能であり、各種溶液成膜法での成膜が可能であるため、電磁波遮蔽材料の大面積化が容易に実現される。
比較例4
国際公開第O2006/011655号に記載した方法により製造した単層CNT(以下、SG−SWNTとも称する)と、3元フッ素ゴム(FKM)(ダイキン工業社製、Daiel−G912)を用い、比較例4の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を製造した。比較例4に用いた単層CNTは、TEMによる観察から、長さが100 μm、平均直径が3.0 nm、層数は1層であった。また、50 mgの塊を取り出し、これをBELSORP-MINI(株式会社日本ベル製)を用いて77Kで液体窒素の吸脱着等温線を計測した(吸着平衡時間は600秒とした)。この吸脱着等温線からBrunauer, Emmett, Tellerの方法で比表面積を計測したところ、約1000 m2/gであった。
単層CNTは、目開き0.8 mmの網の一方にCNT集合体を置き、網を介して掃除機で吸引し、通過したものを回収して、CNT集合体から、サイズの大きな塊状のCNT集合体を取り除き、分級を行った(分級工程)。
CNT集合体はカール・フィッシャー反応法(三菱化学アナリテック製電量滴定方式微量水分測定装置CA−200型)で測定した。CNT集合体を所定の条件(真空下、200℃に1時間保持)で乾燥後、乾燥窒素ガス気流中のグローブボックス内で、真空を解除してCNT集合体を約30 mg取り出し、水分計のガラスボートに移した。ガラスボートは、気化装置に移動し、そこで150℃×2分間加熱され、その間に気化した水分は窒素ガスで運ばれて隣のカール・フィッシャー反応によりヨウ素と反応させた。その時消費されたヨウ素と等しい量のヨウ素を発生させるために要した電気量により、水分量を検知した。この方法により、乾燥前のCNT集合体は、0.8重量部の水分を含有していた。乾燥後のCNT集合体では、水分が0.3重量部まで減少した。
分級したCNT集合体を100 mg正確に計量し、100 mlフラスコ(3つ口:真空用、温度調節用)に投入して、真空下で200℃に達してから12時間保持し、乾燥させた。乾燥が終了後、加熱・真空処理状態のまま、100℃以上の温度で、分散媒MIBK(メチルイソブチルケトン)(シグマアルドリッチジャパン社製)を20 ml注入しCNT集合体が大気に触れることを防いだ(乾燥工程)。
さらに、MIBK(シグマアルドリッチジャパン社製)を追加して300 mlとした。そのビーカーに撹拌子を入れて、ビーカーをアルミ箔で封印し、MIBKが揮発しないようにして、600 rpmで、12時間スターラーで常温撹拌した。
分散工程には、湿式ジェットミル(湿式ジェットミル(スギノマシン社製のジェットミル(HJP−7000)を用い、0.13 mmの流路を100 MPaの圧力で通過させ、120 MPaの圧力でさらに通過させてCNT集合体をMIBKに分散させ、重量濃度0.033重量部のCNT分散液を得た。
CNT分散液を更に常温で24時間、スターラーで撹拌した。この時、溶液を70℃まで昇温し、MIBKを揮発させ150 ml程度とした。この時のCNTの重量濃度は、0.075重量部程度となった(分散工程)。このようにして、本発明に係るCNT分散液を得た。
本実施例においては、フッ素を含む化合物として3元フッ素ゴム(FKM)(ダイキン工業社製、Daiel−G912)を用いた。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料全体の重量を100重量部とした場合、CNT含量が1重量部となるようにCNT分散液100 mlに、フッ素ゴム含量が99重量部となるようにフッ素ゴム100 mgを添加し、スターラーを用い、約300 rpm条件下で、室温で16時間攪拌し全量が50 ml程度になるまで濃縮した。これに架橋剤(トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、4phr)、架橋開始剤(パーヘキサ25B、1.5phr)を添加した。
十分に混合した溶液をビーカー等に流しこみ、80℃で2日間乾燥させた。さらに、80℃の真空乾燥炉に入れて、2日間乾燥させ有機溶媒を除去し、マスターバッチを得た。
乾燥させて得られた試料を170℃で10分間成形加熱し、さらに180℃で4時間以上熱処理することにより架橋を進行させ、比較例4の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を得た。
(実施例2)
実施例2においては、比較例4と同じSG−SWNTを用い、高分子を変更した。SG−SWNT(5重量部)と3元フッ素ゴム(FKM)(ダイキン工業社製、Daiel−G912)を用い、比較例4と同様の手法で、実施例2の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(実施例3)
実施例3においては、比較例4と同じSG−SWNTを用い、高分子を変更した。SG−SWNT(5重量部)とポリカーボネート(PC)(帝人社製、パンライト1250)を用い、解繊したCNTを含むPCを、二軸混練機(DSM Explore)を用いて200℃、50 rpmの条件で15分混錬し、試料回収後プレス機を用いて200℃、10分間加圧することにより実施例3の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(実施例4)
実施例4においては、比較例4と同じSG−SWNTを用い、高分子を変更した。SG−SWNT(5重量部)とエポキシ樹脂(Epoxy)(カネカ社製、カネエースMX)を用い、比較例4と同様の手法で、実施例4の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(実施例5)
実施例5においては、比較例4と同じSG−SWNT及び3元フッ素ゴムを用い、吹き付け膜を作製した。吹き付けには高精度卓上型液剤塗布ロボット(2200N−mini、三栄テック社製)を用いて、基板の温度を80℃に設定して行った。塗布領域は10 mm×10 mmとした。塗布はMIBK/SG−SWNT/3元フッ素ゴムの溶液であり、MIBKは全体の95%以上の重量を占めている。同一場所に対して10回塗布を行うことにより10 μmの膜厚の電磁波遮蔽膜を得た。
(実施例6)
実施例6においては、多層CNTとして、グラフェン層が5〜10層のCNanoを用いた。CNano−MWNT(5重量部)と3元FKM(ダイキン工業社製、Daiel−G912)を実施例2と同様の手法を用いて、実施例6の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(実施例7)
実施例7においては、多層CNTとして、グラフェン層を5〜10層を有するNanocylを用いた。Nanocyl−MWNT(5重量部)と3元FKM(ダイキン工業社製、Daiel−G912)を比較例4と同様の手法を用いて、実施例5の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(比較例1)
実施例2に対して、比較例1として、CNTに替えて、カーボンブラックを用いた。CB(東海カーボン、MAF,5重量部)と3元FKM(ダイキン工業社製、Daiel−G912)を実施例2と同様の手法を用いて、比較例1の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(比較例2)
実施例3に対して、比較例2として、CNTに替えて、カーボンブラックを用いた。CB(東海カーボン、MAF,5重量部)とポリカーボネート(PC)(帝人社製、パンライト1250)を実施例3と同様の手法を用いて、比較例2の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を作製した。
(比較例3)
比較例3として、エラストマーのみで試料を作製した。3元FKM単体にTAICとパーヘキサ25Bを加え、比較例3の試料を作製した。
(電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の成形、加工)
実施例〜4、6〜7及び比較例1〜の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を金型に入れ込み、真空ホットプレス中でガス抜きを3回行った。真空オーブン中、170℃で15分間保持し、ギアオーブン(大気圧)で180℃、4時間保持した。電磁波遮蔽CNT高分子複合材料によるシート状材料を得た。
(CNT充填量の測定)
比較例4の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、CNT充填量を以下の方法により測定した。示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA、STA7000、Hitachiハイテク)を用いて測定した。一次昇温は、窒素200 ml/minを供給し、1℃/minで、室温から800℃まで昇温させた。一次昇温においては、エラストマーのみ昇華し、残留成分がCNTである。CNT以外の炭素フィラーなどが含まれる場合には、二次昇温を行った。二次昇温は、純空気200 ml/minを供給し、1℃/minで、室温から800℃まで昇温させた。純空気中ではCNT、および炭素フィラーは既知の温度において燃焼し、重量減少を生じた。重量減少から、CNT充填量を算出した。CNT添加量の測定結果を図3に示す。
図3(a)はCNT充填量の測定結果を示す図であり、図3(b)は図3(a)の560℃付近の拡大図である。図3(b)の結果から、比較例4の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料には、1%のCNTが充填されていることが明らかとなった。
(CNT構造体の体積測定)
実施例及び比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、CNT体積を以下の方法により測定した。図4(a)に示したように、熱処理前の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の縦(H)の長さ(mm)、横(W)の長さ(mm)及び厚み(D)(mm)をマイクロメーターにより測定した。試料を管状炉にセットし、これを窒素雰囲気下、30℃〜400℃もしくは600℃までおおよそ20℃/分で昇温し、400℃以上、好ましくは600℃以上で、6時間熱処理することによりマトリックス成分を熱分解により除去した。CNT構造体の体積は、シート上の試料を縦(H’)の長さ(mm)、横(W’)の長さ(mm)及び厚み(D’)(mm)をマイクロメーターにより測定し、これを乗じることにより体積を求めた。
CNT構造体の体積測定結果を図4(b)に示す。図4(b)の上段は熱分解前の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料を示し、図4(b)の下段は熱分解により残留したCNT構造体を示す。実施例2の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では熱分解前の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料100の体積に対する熱分解後に残留したCNT10の構造体50の嵩体積との比が0.5以上となり、エラストマー内でCNT10同士が接触し、力学的な保持力を有する連続ネットワークを形成していることが明らかとなった。
(CNT構造体の空孔分布)
実施例及び比較例1及び4の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、CNT構造体の空孔分布を以下の方法により測定した。試料を管状炉にセットし、これを窒素雰囲気下、30℃〜600℃まで20℃/分で昇温し、600℃で1.5時間時間熱処理することによりマトリックス成分を熱分解により除去した。得られたCNT残留物の空孔径の分布を水銀ポロシメーター(Quantachrome社製 PoreMaster 60GT)により測定を行った。測定はWashburn法に準拠し、水銀圧は1.6 kPa〜420 MPaまで変化させた。
CNT構造体の空孔分布を図5に示す。実施例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では、残留したCNT構造体50の空孔分布において、0.5 μmから10 μmの範囲において、縦軸dV/dlog(d)の値が0.6以下であることが好ましい。母材30中にCNT10が高度に解繊し、CNT10同士が相互に接触しながら連続ネットワークを構成することが明らかとなった。一方、比較例1の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では、CNT構造体の空孔分布において0.5〜1 μm付近にブロードなピークが観察された。この結果から、比較例1の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料には大きな空隙が含まれ、連続ネットワークが形成されていないことが明らかとなった。
(電磁波遮蔽測定)
ASTM規格(ASTM D4935-10)に基づき、同軸導波管を対向させて、接合部に実施例又は比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の試料を挿入し、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いて、試料挿入時と非挿入時のレベル差から透過損失(S21パラメータ)を求め、S21から遮蔽量を計算した。冶具に試料を封入した際のS21と封入していない空の状態のS21をそれぞれ測定し、dBで表した両者の振幅の差から遮蔽量を定義する。1 MHz〜4.5 GHzにおいては同軸線路冶具を用い、VNAはアジレント・テクノロジーズ社のE5071Cを用いて測定した。それより高い周波数においては(上限周波数:110 GHz)、導波管線路冶具を用い、VNAとしてアジレント・テクノロジーズ社のN5222Aと周波数拡張モジュールを用いて、同様に測定を行った。単位厚さあたりの遮蔽量を算出するに当たっては、マイクロメーターを用いて5点試料の膜厚を測定し、その平均値を「試料の膜厚」とした。実施例及び比較例には100 μmの膜厚の試料を用いた。
図6に、実施例2、6、7及び比較例1の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、フィラーの充填量と、1 GHzの電磁波に対する遮蔽能との関係を示す。図7に、実施例2、6、7及び比較例1の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、10 GHzの電磁波に対する遮蔽能との関係を示す。また、図8に、実施例及び比較例の電磁波の遮蔽測定値を示す。比較例においては、電磁波の遮蔽能は認められなかった。一方、実施例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料に於いては、優れた電磁波の遮蔽能が認められた。
(引き裂き強度)
実施例及び比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、引き裂き強度を以下の方法により測定した。2 mm厚に成膜したCNTエラストマー複合材料を、打ち抜き刃を用いてJIS K−6252に定められる切り込み無しクレセント型に試料を切り出した。これにノッチ切り込み治具を用いて1 mmの切り込みを入れ、試料片を調製した。引っ張り試験器(オートグラフ、AG−X 10kN)を用いて、試験片を500 mm/minの速度で引っ張り、引き裂き強度を算出した。引き裂き強度は最大応力を膜厚で割った値である。
電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の引き裂き強度の測定結果を図8に示す。実施例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では引き裂き強度が25 N/mm以上であり、エラストマー内でCNT10同士が接触し、力学的な保持力を有する連続ネットワークを形成していることが明らかとなった。一方、比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では引き裂き強度が25 N/mm未満であり、連続ネットワークが十分に形成されず、力学的な保持力を得られないことが明らかとなった。
(100℃における弾性率)
実施例及び比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、100℃における貯蔵弾性率を測定した。動的粘弾性測定装置(RSA2000、TA instruments)を用い、窒素200 ml/minを供給し、5℃/minで、室温から100℃まで昇温させた。100℃で10分保持し、貯蔵弾性率を測定した。試料に加える変位は0.01%から1.0%の任意の変位とし、測定周波数は1Hzから100Hzの任意の周波数とした。
電磁波遮蔽CNT高分子複合材料の100℃における弾性率の測定結果を図8に示す。実施例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料においては10 Pa以上の優れた弾性率を示した。この結果から、実施例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料においては、エラストマーもしくは高分子内でCNT10同士が接触し、連続ネットワークを形成することにより、優れた弾性率を示すことが明らかとなった。
(引っ張り強さ)
実施例及び比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料について、引っ張り強さを以下の方法により測定した。精密万能試験機−引っ張り試験機(AutoGraph, AG−1kN)を用いて測定した。恒温槽で150℃に保持した。JIS K 6251に基づき測定を行った。
引っ張り強さの測定結果を図8に示す。実施例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では、引っ張り試験(JIS K6251準拠)における引っ張り強さが15 MPa以上となり、高温下においてもエラストマー特有のゴム弾性を維持することができることが明らかとなった。一方、比較例の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料では15 MPaより小さく、粘性的な性状となった。
(アイゾット衝撃強さ)
アイゾット衝撃試験は、JIS K7110に準拠して実験を行った。測定は5度行い、最大値と最小値を除いた3測定値の平均値を測定値とした。アイゾット衝撃強さの測定結果を図8に示す。実施例3の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料は、比較例2の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料に比して、耐衝撃性に優れることが明らかとなった。この結果から、実施例3の電磁波遮蔽CNT高分子複合材料においては、高分子内でCNT10同士が接触し、連続ネットワークを形成することにより、優れた耐衝撃性を示すことが明らかとなった。
10:CNT、15:接触点、30:母材、50:CNT構造体、100:電磁波遮蔽CNT高分子複合材料

Claims (9)

  1. エラストマーもしくは高分子にカーボンナノチューブを分散してなるカーボンナノチューブとエラストマーもしくは高分子との電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料であり、
    前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料は膜厚0.1 μm以上105 μm以下を備え、
    前記カーボンナノチューブは前記エラストマーもしくは前記高分子の総重量に対して重量部以上80重量部以下含まれ、
    前記エラストマーもしくは前記高分子を除去して得られた残留した前記カーボンナノチューブの構造体の空孔分布は、0.5 μmから10 μmの範囲において、dV/dlog(d)の値が0.6以下であり
    ASTM−D4935により評価した、周波数が100 Hz以上1 THz以下の範囲の任意の波長の電磁波に対する遮蔽能が、0.5×10-1 db/μm以上であることを特徴とする電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
  2. 前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の引き裂き強度は、10 MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
  3. 前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の100℃における貯蔵弾性率が、107 Pa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
  4. 前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料は、前記エラストマーに前記カーボンナノチューブを分散してなり、150℃におけるJIS K6251に準拠した引っ張り試験における引っ張り強さが107 Pa以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
  5. 前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料は、前記高分子に前記カーボンナノチューブを分散してなり、アイゾット衝撃強さが50 kJ/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
  6. 請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料を用いて形成されることを特徴とする電磁波遮蔽材料。
  7. 請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料を塗布して形成されることを特徴とする電磁波遮蔽材料。
  8. 前記カーボンナノチューブは、直径が20 nm以下、層数10層以下を備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
  9. 前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料は、400℃以上の温度において窒素環境下で6時間保持したとき、前記エラストマーもしくは前記高分子が熱分解し、残留した前記カーボンナノチューブが構造体を成し、前記電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料の初期の体積をV0、残留した前記カーボンナノチューブの構造体の体積をVaとすると、Va/V0が0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽カーボンナノチューブ高分子複合材料。
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