JP6984246B2 - 触媒構造体の製造方法、及び、水素の製造方法 - Google Patents

触媒構造体の製造方法、及び、水素の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アンモニアを含むガスから水素を安定的に製造するための触媒構造体の製造方法、及び、水素の製造方法に関する。
コークス炉から発生するコークス炉ガス(COG)中には、6〜10g/Nmのアンモニアが含有されているが、アンモニアは配管を腐食すると共に、COGを燃料として燃焼する際にNOxの発生原因となることから、事前に除去する必要がある。COGからアンモニアを除去する方法としては、一般にCOGを希硫酸で洗浄し、硫安(硫酸アンモニウム)を回収する方法が採用されている。ただ、本方法では、硫安の需要が市況に大きく左右される傾向がある。そこで、他のアンモニア処理方法として、例えば、高純度の液体アンモニアを製造するフォッサム法や、アンモニアを分離後に直接燃焼するコッパース法、触媒の存在下で燃焼するカールスチル法等も採用されている。
一方、昨今の地球温暖化に鑑み、水素を燃料源に利用することに着眼した水素社会へ向けた取り組みが本格化している。ここで、水素を製造する方法としては、化石資源、例えば、天然ガスや石油、石炭を改質する方法のほかに、水の電気分解などの方法も検討されている。しかし、いずれの方法も、炭化水素を原料とすることのほかに熱や電力が必要となるため、多量のCOが発生してしまうという問題がある。こうした中、種々の水素含有化合物からの脱水素による水素製造に向けた取り組みが進められており、特に、単位体積当たり、単位質量当たりの水素含有量が大きいアンモニアに注目が集まっている。アンモニアは、水素原子、及び、窒素原子のみから構成されているため、分解反応においてCOを排出しないことから、アンモニアを高効率で分解することができれば、CO排出がゼロの環境負荷のない水素製造方法になり得る。
アンモニアからの触媒を用いた脱水素反応については、アンモニア合成反応と表裏一体であるために古くから研究がなされ、触媒成分(すなわち、触媒活性種及び触媒担体)も多岐に亘って検討されている。触媒活性種としては、例えば、特許文献1に記載の8〜10族金属元素や、特許文献2に記載の白金族元素が知られている。また、触媒担体としても、アルミナはもちろんのこと、特許文献3に記載のシリカ、ジルコニア、チタニア、セリアなどや、特許文献4に記載の希土類酸化物などが知られている。これら触媒成分を一般的な粒子の形で充填した反応器を用いてアンモニアガスを短期間で大量に処理しようとすると(すなわち、当該反応器に大きな流量のアンモニアガスを流そうとすると)触媒層でのガス拡散が律速となって十分な触媒活性が得られない。このため、特許文献5に記載されるように、コージェライトを成分として多数の流路を成形したハニカム基材へ触媒成分の粒子を担持した触媒成形体とすることが提案されている。こうした中、特許文献6に記載されるように、コージェライトなどのセラミクスよりも熱伝導率が高く、熱容量が小さい金属で構成され多数の流路を保有するメタルハニカムへ触媒成分の粒子を担持した触媒成形体とすることも提案されている。特許文献6に記載された触媒成形体では、大量のアンモニアを短期間で処理して効率的に水素が製造できるほか、触媒担体を迅速かつ効率的に加熱することができるため、熱供給部が小型化できるとされている。
特開2010−207783号公報 特開2009−254979号公報 特開2010−240644号公報 特開2011−56488号公報 特開2012−5926号公報 特開2010−195642号公報 特開2009−297691号公報
しかしながら、メタルハニカムを構成する金属部分は薄板状であることが多い。そして、金属薄板上へ触媒粒子を担持する場合、薄板表面の平滑性が高いため、触媒粒子との密着性が必ずしも十分でなく、この結果、金属薄板と触媒粒子の界面で剥離が生じ、触媒性能が劣化するという課題があった。こうした課題に対し、特許文献7に記載のように薄板表面に特定の幾何学的粗さをもった活性アルミナの被覆層を形成する方法が提案されているが、触媒層との密着性については、改善の余地があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、アンモニアを含むガスから高い生産効率で水素を製造する際に用いる触媒として、金属基材構造体上に触媒粉末を被覆した触媒構造体を用い、触媒粉末が、金属基材構造体に対して密着性に優れ、界面で剥離して性能劣化することを抑制し、高濃度の水素を大量且つ安定的に製造することができる触媒構造体、当該触媒構造体の製造方法、及び、水素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべくアンモニアを原料として水素を製造するための触媒を鋭意検討した。この結果、本発明者は、金属基材から構成される金属基材構造体の表面を清浄化し、必要に応じて構造体上にアルミニウム酸化物を含む下地層を形成し(下地層の形成は無くてもよい)、その上にアルニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物から選ばれる1種の担体にルテニウムが担持されたルテニウム担持触媒を含む外表面層を形成した、触媒構造体を用いると、金属基材上にルテニウム担持触媒層を直接形成したときと比べて、ルテニウム担持触媒の剥離が抑制されることを見出した。更に、本発明者は、アンモニアの流通する方向に垂直な平面全体に亘って規則的な形状を有する貫通流路を金属基材構造体に形成し、これらの貫通流路上に上述した各層を被覆させることにより、大きな流量で原料ガスを流した際にも圧力損失が高くなることなく、高い効率で安定的にアンモニアを改質して水素を製造できることも見出した。
また、発明者等が更に鋭意検討した結果、金属基材構造体を脱脂した後に金属基材構造体を酸性水溶液及びアルカリ水溶液に浸漬して金属基材構造体上に凹凸をつける処理を行い、その後、凹凸のある表面へ、ゾルゲル法で調製したアルミニウム水酸化物のゲル溶液及びルテニウム担持触媒を順次被覆する方法を見出した。本発明者は、これらの知見に基づいて、本発明を為すに至った。本発明の要旨は、以下に記す通りである。
(1)アンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体の表面を清浄化する前処理工程と、
アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体に、ルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
前記前処理工程を施した構造体表面に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
前記前処理工程では、
有機溶剤を用いて前記金属基材構造体の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材構造体をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材構造体を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材構造体の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
(2)アンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体の表面を清浄化する前処理工程と、
前記前処理工程を施した構造体表面に、アルミニウム酸化物を含む下地層を形成する下地層形成工程と、
アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体に、ルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
前記下地層形成工程で形成された下地層に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
前記前処理工程では、
有機溶剤を用いて前記金属基材構造体の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材構造体をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材構造体を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材構造体の表面を処理することを特徴とするアンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
(3)金属基材の表面を清浄化する前処理工程と、
アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体にルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
前記前処理工程を施した金属基材の表面に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
前記前処理工程の後かつ前記外表面層形成工程の前、または前記外表面層形成工程の後のタイミングで、前記金属基材をアンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体とする工程を行い、
前記前処理工程では、
有機溶剤を用いて前記金属基材の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
(4)金属基材の表面を清浄化する前処理工程と、
前記前処理工程を施した金属基材の表面にアルミニウム酸化物を含む下地層を形成する下地層形成工程と、
アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体にルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
前記下地層形成工程で形成された下地層に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
前記前処理工程の後かつ前記下地層形成工程の前、前記下地層形成工程の後かつ前記外表面層形成工程の前、または前記外表面層形成工程の後のタイミングで、前記金属基材をアンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体とする工程を行い、
前記前処理工程では、
有機溶剤を用いて前記金属基材の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
(5)(1)〜(4)の何れか1項に記載の製造方法で製造された触媒構造体を用いた、アンモニアから水素を製造する方法であって、アンモニアを含むガスを、前記アンモニアガスの流通経路に流通させて、前記ガス中のアンモニアを前記ルテニウム担持触媒に接触させて、前記アンモニアを分解し、水素を製造することを特徴とする水素の製造方法。

以上説明したように本発明によれば、金属基材構造体と触媒粉末がこれらの界面で剥離して性能劣化することなく、アンモニアを原料として高濃度の水素を安定的に製造することが可能となる。
本実施形態の実施例1で用いた触媒構造体の模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本実施形態に係るアンモニアから水素を製造するための触媒構造体は、金属基材から構成される金属基材構造体と、金属基材構造体の表面に存在し、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体に、ルテニウムが担持されたルテニウム担持触媒を含む外表面層とを有するものである。又は、金属基材から構成される金属基材構造体と、金属基材構造体の表面に存在し、アルミニウム酸化物を含む下地層と、前記下地層の表面に存在し、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体に、ルテニウムが担持されたルテニウム担持触媒を含む外表面層とを有するものである。以下に順を追って説明する。
(1)金属基材構造体
金属基材構造体は、金属基材から構成される。金属基材の材質としては、アルミニウム及びステンレスが好適であり、ステンレスであればマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライトの二相系、及び析出強化鋼などが好適である。下地層および外表面層の被覆のしやすさという観点からは、アルミニウムを含有した鋼種がより好ましい。さらに、金属基材構造体は、アンモニアガスの流通経路を有するように形成される。金属基材構造体に形成される流通経路は、アンモニアが流通する方向に垂直な平面に亘って規則的な形状を有する貫通流路を含むことが好ましい。例えば、これらの貫通流路によってハニカム形状が形成されることが望ましいが、他の貫通孔の形状であっても構わない。また、基材としての金属基材は、伝熱性や基材の形状を付与する以外、反応に直接寄与しない。このため、触媒構造体の単位体積当たりに占める体積割合が小さい方がよく、金属基材の厚み(具体的には、貫通流路に垂直な方向の厚み)は好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下とすることが望ましい。下限値は特に制限されないが、形状を保つことができる程度の強度を有する厚みとすることが好ましい。また、高表面積化の観点から、セル(ここでは貫通流路)密度も高い方がよいが、例えば、セルに垂直な平面において100セル/インチ(15.5セル/センチ)以上、より好ましくは200セル/インチ(31セル/センチ)以上とすることが望ましい。上限値は特に制限されないが、例えば900セル/インチであってもよい。
また、触媒構造体を製造する際の製造フローとしては、金属基材の前処理工程→触媒担持工程→下地層形成工程→外表面層形成工程と、金属基材構造体形成工程とを有する。下地層形成工程は無くても構わないが、有った方が好ましい。また、金属基材構造体形成工程は、金属基材の前処理工程の前〜外表面層形成工程の後までの、どこでおこなっても構わない。
すなわち、金属基材を金属基材構造体とする金属基材構造体形成工程は、金属基材の前処理工程の前、若しくは、金属基材の前処理工程の後、若しくは、外表面層形成工程の前、若しくは、外表面層形成工程の後、のいずれでも構わない。また、下地層形成工程がある場合は、下地層形成工程の前であっても、下地層形成工程の後であってもよい。以下の説明では、金属基材及び金属基材構造体を「金属基材」と総称する。
(2)金属基材の前処理工程
金属基材上に形成する外表面層(すなわち、触媒層)、又は、下地層と外表面層の密着強度を高めるにあたっては、金属基材の表面を予め活性化することがさらに好ましい。金属基材は比較的平滑であるため、そのままでは、金属基材表面と下地層との界面の密着性が十分でない場合がある。そこで、以下の前処理工程を行うことが好ましい。具体的には、まず、金属基材表面の油分を除去するためにアルコールやアセトン等の揮発性のある有機溶剤で洗浄、乾燥する。その後、金属基材をアルカリ性水溶液へ浸漬して水洗、乾燥する。その後、金属基材を酸性水溶液へ浸漬して水洗、乾燥する。以上の前処理工程により、金属基材表面の金属結晶粒界の一部が溶解するので、金属基材の表面に凹凸が形成される。なお、前処理工程は省略されても良い。
したがって、金属基材の表面に粒子(触媒粒子または下地層のアルミナ粒子)を塗布した際、アンカー効果により前記粒子がより強固に金属基材の表面に密着する。すなわち、密着性を一段と改善することができる。ここで、アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウムをはじめとして一般的なものを用いることができる。アルカリ性水溶液のpHは特に制限するものではないが、例えば、9以上であることが好ましい。また、酸性水溶液としては、塩酸や硝酸など一般的なものであれば良い。また、pHも特に制限するものではないが、例えば、6以下が好ましい。前処理工程では、金属基材をまずアルカリ性水溶液へ一定時間浸漬する。その後、金属基材の表面に付着したアルカリ水溶液を除去するため、金属基材を純水で洗浄する。この際、洗浄効果を上げるために、超音波発生器を適宜用いることができる。その後、同様に金属基材を酸性水溶液に一定時間浸漬する。その後、金属基材の表面に付着した酸性水溶液を除去するため、金属基材を純水で洗浄して操作を完了する。各水溶液への浸漬時間は、用いる金属基材の鋼種、厚み、凹凸の程度、一連の操作の効率性等を考慮して適宜決めることができるため特に制限するものではないが、例えば、数分〜1時間程度とすることができる。加えて、浸漬時の各水溶液の温度も、同様に金属基材の鋼種、厚み、凹凸の程度、一連の操作の効率性等を考慮して適宜決めることができるが、例えば、室温〜90℃までの温度とすることができる。ここで、触媒または触媒粒子とは、(3)で記載の触媒担持工程で記載のルテニウム担持触媒を指す。
(3)触媒担持工程
外表面層に用いるルテニウム担持触媒(すなわち、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物から選ばれる1種の担体にルテニウムが担持されたもの)は、以下のようにして製造される。すなわち、ルテニウム担持触媒は、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物から選ばれる1種の担体上にルテニウム粒子が均一に高度に分散していることが好ましい。ルテニウム担持触媒は、例えば、多孔質な担体粒子に対してルテニウム化合物を含んだ溶液を接触させた後、乾燥、焼成することで作製される。詳細は後述する。ここで、担体粒子が多孔質となる場合、ルテニウム粒子は、担体粒子内部に存在し、且つ、外表面と繋がる開気孔の壁面にも担持されうる。ここで、担体の特性は、多孔質であれば特に制限するものではないが、例えば、比表面積は、ある程度大きい方が触媒担持量を増やせることから好ましい。ただし、比表面積が大きすぎると担体自体がもろくなる。具体的には、比表面積が10m/g未満である場合、担体上に担持されるルテニウム粒子が凝集して粗大化し、十分な触媒活性を得ることが困難となる可能性がある。一方、比表面積が600m/gを超える場合、担体自身が脆く強度が不十分になるのに加え、製造が複雑なために不経済となってしまう。そのため、比表面積は、10〜600m/gが好ましく、より好ましくは20〜550m/gである。また、担体の平均粒子径は金属基材自体の表面形状、反応器の形状、及び反応条件等によって適宜選択すればよく、特に制限するものではない。ただし、平均粒子径は、例えば、好ましくは0.1μm〜10mm、より好ましくは1μm〜5mmである。平均粒子径が0.1μm未満である場合、表面に担持されるルテニウムが不均質になりやすくなるか、あるいは、担持工程で担体同士が合体して粗大化しやすくなる可能性がある。一方、平均粒子径が10mmを超える場合、ルテニウムを微細に分散することが困難で十分な活性を得ることが困難となる可能性がある。ここで担体の平均粒子径は、下地層のアルミニウム酸化物粒子の場合と同様に測定することができる。また、比表面積は、窒素を用いたBET法で評価することができる。
また、ルテニウム担持触媒の作製に使用されるルテニウム化合物は特に制限されるものではないが、ルテニウムハロゲン化物、硝酸ルテニウム化合物、ルテニウムカルボニル化物、ルテニウムアンミン化物、ルテニウムニトロシル化物、過ルテニウム酸化合物、ルテニウム水和物などを好適に用いることができる。ルテニウム化合物は、適宜、水または有機溶媒に溶解させた状態で担体に担持させることができる。
また、ルテニウム担持触媒の製造では、上述のルテニウム化合物を用いて、担体にルテニウムを担持させることとなる。具体的には、担体表面に各化合物をインシピエントウエットネス法、蒸発乾固法等の通常の含浸法や、沈殿法、イオン交換法等により担持させた後、担体を乾燥、焼成することで外表面層形成の際に用いるルテニウム担持触媒粒子を得ることができる。ここで、乾燥について、乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜20時間とすることができる。乾燥温度も、特に限定されないが、例えば、50〜150℃とすることができる。さらに、焼成に関して、焼成時間は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20時間とすることができる。焼成温度は、担持した金属粒子が粗大化しないように適宜決定することができるが、例えば、200〜1000℃とすることができる。
ここで、ルテニウムの担持量としては、活性を発現するための最低量以上であり、担持したルテニウムの分散度が極端に低下して、ルテニウムの反応寄与効率が低下する担持量以下であれば良く、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%となるようにするのが望ましい。この範囲を下回ると活性を十分発現しない場合があり、また、この範囲を上回ると分散度が低下して、担持したルテニウムの利用効率が低下することがあり、不経済となるため、好ましくない。ここでいう担持量とは、担持したルテニウムが最終的に100%還元されるとは限らないため、100%還元されたと考えた場合の金属ルテニウムの質量が触媒質量全体(金属に換算したルテニウムと担体の合計質量)に占める割合を指す。また、これらの質量は、一般的な元素分析手法で測定することが可能であり、後述するように、例えば酸分解やアルカリ溶融等の前処理後のICP−AES法を好適に用いることができる。
さらに、助触媒を加えたルテニウム担持触媒の製造では、上述のルテニウム化合物と共に、後述の金属成分を担持させることもできる。具体的には、担体表面にルテニウム化合物に加えてカリウム化合物またはセシウム化合物またはナトリウム化合物のいずれかを上述と同様の通常の含浸法や沈殿法、イオン交換法等により担持させた後、乾燥、焼成することでルテニウム担持触媒粒子を得ることができる。ここで使用されるカリウム化合物、セシウム化合物、ナトリウム化合物は、特に制限されるものではないが、硝酸化物、塩化物、フッ化物、ヨウ化物、臭化物、酢酸化物、炭酸化物、硫化物、水酸化物、有機物などを好適に用いることができる。これら化合物は、適宜、水または有機溶媒に溶解させた状態で担体に担持させることができる。ここで、助触媒化合物を含浸担持する場合には、ルテニウムと同時に担持する(共含浸)こともできるし、ルテニウムを担持する前または後で別個に担持する(逐次含浸)こともできる。
ここで、助触媒の担持量としては、助触媒としての機能を発現するための最低量以上であり、担持した助触媒成分の分散度が極端に低下して、助触媒の反応寄与効率が低下する担持量以下であれば良く、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%となるようにするのが望ましい。この範囲を下回ると助触媒としての機能を十分発現しない場合があり、また、この範囲を上回ると分散度が低下して、担持した助触媒成分の利用効率が低下することや、ルテニウムの利用効率が低下することがあり、不経済となることがある。ここでいう助触媒の担持量とは、助触媒としての金属質量が触媒質量全体(金属に換算した助触媒元素とルテニウムと担体の合計質量)に占める割合を指す。また、これらの質量も、一般的な元素分析手法で測定することが可能であり、例えば酸分解やアルカリ溶融等の前処理後のICP−AES法を好適に用いることができる。
(4)外表面層形成工程
外表面層形成工程では、金属基材上にルテニウム担持触媒を含む外表面層を形成する。外表面層形成工程は、金属基材上に外表面層を均一な厚さで形成することができる方法であれば特に制限されない。外表面層形成工程は、例えば、アルコールなどの揮発性の高い室温で液体の溶媒中にルテニウム担持触媒粒子を分散させた溶液槽を作成した後、表面を清浄化した金属基材、または、清浄化したのち下地層で被覆した金属基材を浸漬、引き上げることで、金属基材の表面にルテニウム担持触媒粒子を付着させることができる。また、バインダー成分を適宜添加することもでき、有機バインダーや無機バインダーを好適に用いることができる。ここで、付着量が所定の割合に達していない場合、本操作を繰り返すことで付着量、すなわち、外表面層の厚さを調製することができる。また、ウォッシュコート法により触媒粒子を含有した溶液を金属基材上に塗布した後、余分な溶液をエアブローにより吹き飛ばすことで、ルテニウム担持触媒粒子の付着量を調整することもできる。ここで、当該金属基材に被覆するルテニウム担持触媒の量、すなわち被覆量は、好ましくは金属基材1Lあたり1〜500g(以下、g/Lと記載する)、より好ましくは10〜400g/Lである。被覆量が1g/L未満であれば触媒成分が少なくセルの内壁に触媒成分が十分被覆されないことがある。また、被覆量が500g/Lを超える場合にはセルが触媒成分により満たされて、ガスの流路を塞ぐ可能性がある。尚、外表面層は、金属基材の表面に一様に被覆されているのが望ましいが、想定される反応条件で求められる触媒活性を発揮できるのであれば必ずしも一様に被覆されてなくても良く、例えば、外表面層が金属基材の一部のみに被覆されていても良い。
尚、前記(2)金属基材の前処理工程の後に下記(5)の下地層を形成する場合、前記(4)外表面層形成工程の前に、以下に示す(6)下地層形成工程を実施する。
(5)下地層
アルミニウム酸化物を含む下地層は、後述する外表面層と金属基材との密着性を高めるために金属基材上に形成される。すなわち、金属基材の表面は比較的平滑で凹凸に乏しいために、ルテニウム担持触媒(すなわち、アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物から選ばれる1種の担体にルテニウムが担持されたもの)粉末を金属基材の表面に直接被覆した場合、金属基材との接触点が少なく、密着強度が不足して触媒層の剥離が起こり易かった。そこで、本実施形態においては、触媒粉末の粒径より小さく、触媒活性に悪影響を及ぼさない粒子で金属基材の表面を被覆することで、触媒粒子と金属基材との間に中間層(下地層)を形成する。これにより、触媒粒子そのものが有する活性は維持したまま触媒層全体の密着強度を改善することができる。
ここで、下地層は、アルミニウム酸化物を含む層であるが、好ましくは、アルミニウム酸化物で構成される。また、下地層は、金属基材の表面に一様に被覆されているのが望ましいが、金属基材の表面に外表面層を密着性良く被覆できるのであれば、必ずしも一様に被覆されてなくても良く、例えば、下地層が金属基材の一部のみに被覆されていても良い。下地層を構成する(すなわち、金属基材に直接接触する)アルミニウム酸化物の粒子径は、特に限定されないが、下地層の上に被覆される触媒粉末との密着強度を高める(すなわち、触媒粉末との接触点を増やす)観点から、触媒粉末より小さな粒径を有することが好ましい。具体的には、アルミニウム酸化物の粒子径の平均値である平均粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは0.001〜50μmである。ここに、アルミニウム酸化物の粒子径は、いわゆる球相当直径であり、平均粒子径は粒子径の算術平均値である。平均粒子径は、X線回折測定から得られたアルミニウム酸化物の回折ピークプロファイルから計算式で評価されうる。また、X線回折測定による評価方法の他、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いる評価方法、電子顕微鏡で直接観察する評価方法によっても平均粒子径を評価することができる。
また、アルミニウム酸化物の平均粒子径を上記範囲に調整する方法としては、例えば、後述するゾル溶液を調製する際の加水分解温度、エージング時の温度および時間を調整する方法が挙げられる。また、アルミニウム酸化物を固相焼結で作製する場合、得られたアルミニウム酸化物の焼結塊を、乳鉢等を用いた乾式法または遊星ボールミル等を用いた湿式法で粉砕する。この際、粉砕時間を調整することで平均粒子径を調整することができる。また、平均粒子径に対して大きすぎる粒子、すなわち上限粒子径をオーバーする粒子は篩い分け等により除去してもよい。なお、上限粒子径は特に制限されず、下地層に要求される特性等に応じて設定されれば良い。
(6)下地層形成工程
また、金属基材表面へアルミニウム酸化物を含む下地層を形成する方法としては、アルミニウム酸化物を含むゾル溶液を用いる方法が好適である。この方法では、まず、ゾルゲル法を用いてアルミニウム酸化物を含むゾル溶液を作製する。具体的には、アルミニウムアルコキシド(例えば、アルミニウムイソプロポキシド等)を酸性条件下で加水分解及び重縮合反応を行わせることによって、アルミニウムアルコキシドからアルコールを脱離する。これにより、均質且つ微細なアルミニウム水酸化物粒子が分散したゲル溶液を作製する。ゲル溶液は、所望の温度下で所望の時間エージングされる。ここで、酸性条件は、中性条件(pHが7〜8)よりpHが低ければ特に制限するものではなく、例えば、pHとして6以下が好ましい。また、加水分解温度、エージング時の温度および時間を調整することで、アルミニウム酸化物の平均粒子径及び粒子径分布を調整することができる。ゾル溶液は、具体的には、アルミニウム酸化物を主成分として含む。ここで、主成分とは、アルミニウム酸化物をゾル溶液の総質量に対して50質量%以上含むことを意味する。ゾル溶液中のアルミニウム酸化物の割合は多い方が好ましいが、ゾル溶液製造時に混入するアルミニウム酸化物等を含んでいても構わない。
ついで、金属基材をゲル溶液中に浸漬し、あるいは金属基材上にゲル溶液を塗布することで金属基材上に塗布層を形成する。ついで、塗布層を乾燥、必要に応じて焼成する。以上の工程により、金属基材上に下地層を形成する。ここで、乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜20時間とすることができる。乾燥温度も、特に限定されないが、例えば、50〜150℃とすることができる。さらに、焼成に関して、焼成時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜20時間とすることができる。焼成温度は、特に限定されないが、例えば、200〜1000℃とすることができる。
(7)水素の製造方法
次に、本実施形態に係るアンモニアからの水素の製造方法について説明する。本実施形態に係る水素の製造方法では、上述した本実施形態に係るアンモニアから水素を製造するための触媒を用いて、反応器内でアンモニアガスから水素を製造する。水素の製造は、アンモニアを含む原料ガスと本実施形態に係る触媒とを接触させることにより行うことができる。
上記の水素の製造に用いられるアンモニアを含む原料ガスとしては、特に制限するものではないが、例えば、アンモニアが全体の50体積%以上であるガスが、生産性の面から好ましい。例えば、COGからアンモニアを濃化したガスなどが好適に用いられ、アンモニアのほかにメタンなどの炭化水素、H、CO、CO、N、HS、HCN、SCNなどが含まれてもよい。尚、アンモニアを含む原料ガスは、コークス炉に限らずいかなる経路で製造されたものであってもよい。
また、アンモニアを含むガスと本実施形態に係る触媒との接触に用いられる反応器としては、特に限定されないが、例えば、固定床などの一般的な気相合成プロセス用反応器およびマイクロチャネル反応器等が挙げられる。
ここで、反応器の形状は、前記触媒構造体の形状を踏まえて、触媒構造体が安定に、且つ、隙間がなく充填できるものであれば特に制限するものではないが、例えば、反応器内部が円筒状、若しくは、角柱状の空間を備えていることが望ましい。こうした反応器の内部へ触媒構造体を充填する際には、ガス流路に沿って直列に複数個配列しても良いし、反応器内部の寸法との関係でガス流路と垂直な方向に複数個配列しても良い。また、ガス流路に沿った直列の配置の場合、各々の触媒構造体のセル形状またはセル密度が異なったものを配置しても良い。さらに、原料ガスの拡散や熱供給を改善する観点から、複数の触媒構造体の間隔を一定距離空けて配置することもできる。
反応器の材質としては、常温から900℃程度の高温までの環境において、所要の強度、剛性、耐久性、耐腐食性を有したものであればどのようなものでも使用することができる。例えば、変形する部品を用いる場合には、SUS310S等の耐熱ステンレス鋼、又は、インコネルやハステロイ等の耐熱ニッケル合金等の金属を、これ以外の部品に関しては、前記の材料に加えて、シリカ、アルミナ等の一般的な耐熱用セラミックスを用いることができる。尚、耐酸化性の低い材料を用いる場合には、炉内を非酸化性雰囲気、例えば、窒素雰囲気に維持することで、これらの材質を適用することができる。
アンモニアから水素を製造する反応を行う際には、担体に担持したルテニウムが還元された金属ルテニウムである必要がある。従って、運転終了操作あるいは設備保全操作によってルテニウムが酸化している可能性がある場合には、水素ガス等の還元性ガスを反応前に流通させて、アンモニア脱水素触媒の還元処理を行うことにより、円滑で早期な水素製造の状態へ立ち上げることができる。このような還元処理は、特に制限されないが、例えば300〜500℃の温度、0.1〜20時間で行うことができ、例えば、450℃、1時間で行うことができる。
水素の製造時における反応条件は、特に制限するものではなく、反応器の種類に応じ、従来適用されてきた条件を設定することができる。例えば、反応温度は、300〜900℃であることが好ましい。反応温度が300℃未満の場合は、触媒活性が殆ど発揮されず、目的とする水素ガスが得られないため好ましくない。一方、反応温度が900℃を超える場合は、反応器の耐熱構造化が必要になる等、改質装置が高価になるため経済的に不利となる。また、反応温度は、350〜800℃であることがより好ましい。また、反応圧力は、好ましくは0.002〜2MPa、より好ましくは0.004〜1MPaである。反応ガスの触媒に対する空間速度は、100〜300,000h−1、好ましくは、1,000〜200,000h−1である。本実施形態では、高い空間速度であっても、アンモニアガスから効率よく水素ガスを生成することができる。すなわち、1000h−1以上という高い空間速度であっても、アンモニアガスから効率よく水素ガスを生成することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例1)
[金属基材構造体の作成]
金属基材としてステンレス(鋼種:YUS205M1、概略成分:20Cr−5Al、アルミニウム約5質量%含有品)の100μm厚みの薄板を用いた。概略成分における数字は、鋼中に含まれる各金属元素の質量%を示す。まず、図1に示したようなサイズに薄板を切り出し、18等分の間隔で、山折、山折、谷折の順で繰り返し曲げていき、図1右に示したような形状にした。これにより、金属基材構造体を作製した。以下、本構造体を金属基材構造体Aと記す。また、他の金属基材構造体として、直径19mmφ、長さ50mm、100〜900セル/インチの円筒形メタルハニカム(鋼種:YUS205M1、板厚:30または50μm、フィン(波箔)形状:サイン波)を準備した。以下、本構造体を金属基材構造体Bと記す。金属基材構造体Bは後述する他の一部の実施例で使用される。
[金属基材構造体の前処理(活性化処理)]
次に、上記金属基材構造体Aを室温でアセトンに浸漬、引き上げ、乾燥することで、金属基材構造体の表面を脱脂した。その後、NaOH(和光純薬工業、198−13765)の1.5gを純水37.5mLに溶解したアルカリ溶液を約80℃にした中へ金属基材構造体を浸漬し、1時間保持した。その後、金属基材構造体を500mLの蒸留水に浸して2.5分間超音波を照射して洗浄する操作を2回繰り返した。その後、金属基材構造体を、塩酸(和光純薬工業、080−01061)12.5mLを純水で2倍に希釈した酸性溶液を室温で保持した中へ浸漬し、15分間保持した。その後、金属基材構造体を500mLの蒸留水に浸して約2時間程度超音波を照射して洗浄した。尚、後述する他の一部の実施例では、金属基材構造体Aの代わりに金属基材構造体Bを用いた。金属基材構造体Bを用いる場合には、外筒をパラフィルムで予め被覆した後に処理を行った。
[アルミニウム酸化物ゾル溶液の調製]
次に、アルミニウム酸化物の下地層を形成するためのゾル溶液(アルミニウムゾル)を調製した。具体的には、アルミニウムトリイソプロポキシド(ナカライテスク、01842−05)3.0gをビーカーに入れ、そこへ恒温槽で55℃に保温した蒸留水20mLを加え、アルミニウムトリイソプロポキシドが完全に溶けるまで撹拌棒で撹拌した。その後、硝酸(和光純薬工業、141−01361)1.5mLを加えて撹拌した後、ホルムアルデヒド(和光純薬工業、664−00406)1mLを加えてさらにかき混ぜた。その後ゾルを安定させるため、27℃に保持したインキュベーター内で48時間エージングした。以上の工程により、ゾル溶液を作製した。
[下地層の作製]
次に、前処理を施した金属基材構造体を、上記で作製したゾル溶液に浸漬、引き上げを数回繰り返して、ゾル溶液を塗布した。その後、金属基材構造体上にゾル溶液が均一に塗布されるように、金属基材構造体を180rpmで5秒ほど回転させた後、100℃で30分間保持して乾燥した。その後、金属基材構造体を引き続き500℃で1時間保持することで、金属基材構造体上して焼成した。その後、800℃で1時間保持して最終焼成することにより、基材上に約240mgのアルミナ層を形成させた。このようにして作成されたアルミナ粒子の平均粒子径は、X線回折測定から求めた結果、約0.003μmであった。
[ルテニウム担持触媒の作成]
アルミナ粉末(JRC−ALO−8、比表面積148m/g、平均粒子径2.2μm)(なお、後述する他の一部の実施例では、アルミナ粉末の代わりに、酸化マグネシウム粉末(JRC−MGO−3、比表面積36m/g、平均粒子径8.0μm)、酸化セリウム粉末(JRC−CEO−2、比表面積173m/g、平均粒子径4.5μm)、酸化ケイ素粉末(JRC−SIO−4、比表面積347m/g、平均粒子径3μm)、または酸化ジルコニウム粉末(JRC−ZRO−3、比表面積98m/g、平均粒子径3.4μm)を使用した)を蒸留水中に分散させた後、アスピレーターを用いて脱気しつつ、室温で12時間撹拌した。その後、塩化ルテニウム(III)n水和物(和光純薬工業、186−02633)(なお、後述する他の一部の実施例では、塩化ルテニウムの代わりに硝酸ルテニウム(III)溶液(田中貴金属)を使用した)をルテニウム換算で担体粉末に対して3質量%となるように秤量、添加し、さらに室温条件下で2時間撹拌した。なお、後述する他の一部の実施例では、上記酸化物担体にさらに助触媒を担持させた。上記酸化物担体に助触媒を担持させる場合には、上記硝酸ルテニウム(III)溶液と共に硝酸カリウム、硝酸セシウム、硝酸マグネシウムのうちいずれかの水溶液を所定量混合して、各担体と混合、攪拌した。得られたスラリー状の懸濁液を80℃で蒸発乾固し、120℃で2時間乾燥した。その後、500℃で5時間焼成してルテニウム担持触媒の粉末を調製した。
[触媒スラリーの作成]
ポリエチレン製の容器に2−プロパノール(和光純薬工業、166−04831)40mlを入れ、そこに上記触媒粉末1.0gを加えて分散させた。尚、触媒粉末は予め、メノウ乳鉢ですり潰して粒径を揃えた。
[下地層を被覆した金属基材構造体への触媒スラリーの塗布]
下地層を被覆した金属基材構造体を、前記触媒スラリー溶液に浸漬、引き上げを行って、下地層上に触媒を塗布した。その後、金属基材構造体を100℃で30分間保持して乾燥することにより、金属基材構造体の下地層上に外表面層を形成した。尚、金属基材構造体Bを用いる場合には、一連の処理が終了した後、外筒に被覆したパラフィルムを除去してから、後述の触媒活性評価に供した。
[触媒活性の評価]
上述した工程により、ルテニウム担持触媒を下地層に100mg担持させた触媒構造体を得た。この触媒構造体9.4cmを内径21.5mmφの石英製反応管の中央に石英ウールで固定し、さらに触媒層中央位置に熱電対を挿入した。ついで、これら固定床反応管を所定の位置にセットした。
改質反応を始める前に、まず反応器を窒素雰囲気下で450℃まで昇温した後、水素ガスを50mL/min流しながら1時間還元処理を行った。その後、アンモニアを主体とするガスとして、キャリアガスおよび校正ガスとして用いたヘリウムガスと混合した、アンモニア:ヘリウム=1:2、トータルで空間速度が100〜1200h−1になるよう各ガスを調整して導入し、常圧下、300〜600℃の各温度で反応させた後のガスをTCDガスクロマトグラフで分析することにより触媒性能を評価した。尚、出口から排出された生成ガスを水トラップ、硫酸トラップを経由させることにより、未反応なアンモニアを回収した。ここで、アンモニアの分解度合(アンモニア転化率)は、出口ガス中のアンモニア濃度により、以下の式で算出した。
アンモニア転化率(%)=1−{(排出されたアンモニアの体積量)/(供給されたアンモニアの体積量)}×100
反応温度を450℃に保持した中で、原料ガスの空間速度(流量と同義)を100〜1,200h−1にした条件で評価した。
Figure 0006984246
表1の結果、450℃という比較的低い温度下でも、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、比較的高い空間速度の領域までも、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。ここで水素選択率は、(水素生成量)×(2/3)/(アンモニア分解量)×100、窒素選択率は、(窒素生成量)×2/(アンモニア分解量)×100で定義される。
(実施例2)
金属基材構造体Aの代わりに金属基材構造体B(板厚50μm、セル密度400セル/インチ)を使用したこと、ルテニウム化合物として塩化ルテニウムの代わりに硝酸ルテニウム溶液を用いて外表面層を形成した他は、実施例1と同様の処理を行うことで、触媒構造体を作成した。こうして得られた触媒構造体を用いて触媒活性を評価する際、反応温度を425℃にするほかは、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は73.7%となり、実施例1より高いアンモニア分解活性が得られた。また、本化合物を出発にして調製した触媒粉末の場合にも、金属基材との密着性は高いままであり、1000時間反応後でも問題なかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例3)
反応温度を300〜800℃とするほかは、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表2の結果、反応温度が300℃以上であれば、アンモニアの分解反応が進行していることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例4)
空間速度を2,000〜200,000h−1とするほかは、すべて実施例1と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表3の結果、空間速度が高い条件であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例5)
表4に示すような金属箔厚み及びセル密度となるように成形した金属基材構造体Bを用いる他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表4の結果、いずれの金属箔厚み、セル密度であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例6)
金属基材構造体Bとして表4のRUN No.24を用い、触媒粒子の目付量を50、100、200、400g/Lとする他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表5の結果、同一のセル密度のハニカムに対して、目付量を増やしていくと、触媒被覆層が厚くなることで層内のアンモニアが拡散しにくくなるためか、若干分解反応が低下する傾向にあったが、いずれも高い割合で反応が進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例7)
金属基材として、表6に示す鋼種を用いて表4のRUN No.21の構造体を作成して用いる他は、全て実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。尚、表中の概略成分における数字は、鋼中に含まれる各金属元素の質量%を示す。
Figure 0006984246
表6の結果、どの鋼種から作成されたハニカム構造体を用いても、高い割合で分解反応が進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例8)
表7に示すような金属箔厚み及びセル密度となるように成形した円筒形ハニカムである金属基材構造体Bを用いた他は、実施例2と同様の工程を行うことで、触媒構造体を調製した。この触媒構造体の触媒活性を、反応温度を425℃とする他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表7の結果、いずれの金属箔厚み、セル密度であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例9)
ルテニウム化合物として、ドデカカルボニル三ルテニウム(和光純薬工業、043−24051)をテトラヒドロフランに溶解させた溶液を用いる他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は72.0%となり、実施例1とほぼ同様の高いアンモニア分解活性が得られた。また、本化合物を出発にして調製した触媒粉末の場合にも、金属基材との密着性は高いままであり、1000時間反応後でも問題なかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例10)
ゾル溶液を用いて被覆したアルミナ粉末の平均粒子径を表8のように調整した他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成し、RUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表8の結果、いずれのアルミナ粒子の平均粒子径であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例11)
ルテニウムを担持する担体のアルミナ粉末として表9の比表面積、平均粒子径のものを用いる他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成し、RUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表9の結果、いずれのアルミナ担体であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例12)
前処理工程を行わない他はすべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成し、触媒構造体の触媒活性をRUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は70.3%となり、実施例1に比べてやや低いアンモニア分解活性となった。また、1000時間反応した後、触媒層は若干剥離した部分が観察されたが、概ね密着性も問題ないことがわかった。ただ、この一部の剥離が触媒活性低下の原因と推察された。ただし、実用上問題なく、少なくとも後述する比較例よりも良好な結果が得られた。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例13)
ルテニウムを担持する担体粉末として表10の各酸化物を用いる他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成し、触媒構造体の触媒活性をRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表10の結果、いずれのアルミナ担体であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例14)
ルテニウムを担持する担体粉末として酸化セリウムを用い、ルテニウム担持量を表11に示す割合で担持してルテニウム担持触媒を調製する他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成し、触媒構造体の触媒活性を反応温度を400℃とする他はRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表11の結果、Ru担持量が多くなればなるほどアンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも性能の劣化は見られず、触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例15)
ルテニウムを10質量%、カリウム5質量%を酸化セリウム粉末に担持させることでルテニウム担持触媒を作製した後、このルテニウム担持触媒を400セル/インチのセル密度、板厚50μmを有した金属基材構造体Bの表面に触媒質量が300mgとなるように塗布して触媒構造体を作成する他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成した。また、触媒構造体の触媒活性を、反応温度を200〜500℃とする他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表12の結果、反応温度が200℃以上であれば、アンモニアの分解反応が進行していることを示唆している。また、400℃と比較的低い温度でも平衡転化率に達し、ほぼ全量分解された。加えて、1000時間反応後、いずれの触媒でも触媒性能の劣化は見られず、触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例16)
ルテニウムを10質量%、セシウム5質量%を酸化セリウム粉末に担持させることでルテニウム担持触媒を作製した後、このルテニウム担持触媒を400セル/インチのセル密度、板厚50μmを有した金属基材構造体Bの表面に触媒質量が300mgとなるように塗布して構造体を作成する他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成。また、触媒構造体の触媒活性を、反応温度を200〜500℃とする他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表13の結果、反応温度が200℃以上であれば、アンモニアの分解反応が進行していることを示唆している。また、400℃と比較的低い温度でも平衡転化率に達し、ほぼ全量分解された。加えて、1000時間反応後、いずれの触媒でも性能の劣化は見られず、触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例17)
ルテニウムを10質量%、ナトリウム5質量%を酸化セリウム粉末に担持させることでルテニウム担持触媒を作製した後、このルテニウム担持触媒を、400セル/インチのセル密度、板厚50μmを有した金属基材構造体Bの表面に触媒質量が300mgとなるように塗布して構造体を作成する他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成。また、触媒構造体の触媒活性を、反応温度を200〜500℃とする他は、すべて実施例1のRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表14の結果、反応温度が200℃以上であれば、アンモニアの分解反応が進行していることを示唆している。また、400℃と比較的低い温度でも平衡転化率に近い値に達し、ほとんど分解された。加えて、1000時間反応後、いずれの触媒でも性能の劣化は見られず、触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例18)
ルテニウムを担持する担体粉末として酸化セリウムを用い、ルテニウム担持量を3質量%として、助触媒にカリウムを表15に示す割合で担持してルテニウム担持触媒を調製する他は、すべて実施例1と同様にして触媒構造体を作成した。この触媒構造体の触媒活性を、反応温度を400℃とする他はRUN No.2と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表15の結果、カリウム担持量が0.5から5質量%までは多くなればなるほどアンモニアの分解反応が高い割合で進み、カリウムの担持効果が顕著に見られた。一方、カリウムの担持量が10質量%以上になると添加量に伴う性能向上は若干見られるもののほぼ横ばいとなっていた。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも性能の劣化は見られず、触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例19)
下地層を形成しなかった他はすべて実施例1と同様の処理を行うことで触媒構造体(触媒担体:アルミナ)を作成した。この触媒構造体の触媒活性を、RUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は70.0%となり、実施例1に比べてやや低いアンモニア分解活性となった。また、1000時間反応した後、アンモニア転化率は56.5%まで低下が見られた。反応終了後触媒構造体を解体したところ、触媒層が若干剥離した部分が観察され、この一部の剥離が触媒活性低下の原因と推察された。ただし、実用上問題なく、少なくとも後述する比較例よりも良好な結果が得られた。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例20)
下地層を形成しなかった他はすべて実施例1、13と同様にして触媒構造体(触媒担体:酸化セリウム)を作成した。この触媒構造体の触媒活性を、RUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は90.7%となり、実施例13のRUN No.53と同等の高いアンモニア分解活性となった。また、1000時間反応した後、アンモニア転化率は82.3%と高い性能を維持していた。反応終了後触媒構造体を解体したところ、触媒層はごく一部剥離した部分は観察されたが、概ね密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例21)
下地層を形成しなかった他はすべて実施例1、13と同様にして触媒構造体(触媒担体:酸化マグネシウム)を作成した。この触媒構造体の触媒活性を、RUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は74.1%となり、実施例13のRUN No.54と同等の高いアンモニア分解活性となった。また、1000時間反応した後、アンモニア転化率は66.7%と高い性能を維持していた。反応終了後触媒構造体を解体したところ、触媒層はごく一部剥離した部分は観察されたが、概ね密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例22)
下地層を形成しなかった他はすべて実施例1、13と同様にして触媒構造体(触媒担体:酸化ケイ素)を作成した。この触媒構造体の触媒活性を、RUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は69.8%となり、実施例13のRUN No.55と同等の高いアンモニア分解活性となった。また、1000時間反応した後、アンモニア転化率は58.3%と高い性能を維持していた。反応終了後触媒構造体を解体したところ、触媒層はごく一部剥離した部分は観察されたが、概ね密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例23)
下地層を形成しなかった他はすべて実施例1、13と同様にして触媒構造体(触媒担体:酸化ジルコニウム)を作成した。この触媒構造体の触媒活性を、RUN No.2と同様にして評価した。その結果、アンモニア転化率は66.6%となり、実施例13のRUN No.56と同等の高いアンモニア分解活性となった。また、1000時間反応した後、アンモニア転化率は60.0%と高い性能を維持していた。反応終了後触媒構造体を解体したところ、触媒層はごく一部剥離した部分は観察されたが、概ね密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(実施例24)
ルテニウム担持量を10質量%、カリウム担持量を5質量%として酸化セリウムに担持してルテニウム担持触媒を作成し、金属基材として板厚50μm、400セル/インチの金属基材構造体Bを使用し、触媒担持量を300mgとした他は、すべて実施例1と同様にして、触媒構造体を作成した。触媒構造体の触媒活性を、反応温度を400℃、原料ガス流量を空間速度が表14に示す条件となるように流すほかは、すべて実施例1と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表16の結果、空間速度が高い条件であっても、アンモニアの分解反応が高い割合で進んでおり、アンモニアの分解活性に優れていることを示唆している。また、1000時間反応後、いずれの触媒でも性能の劣化は見られず、触媒層の剥離は観察されず、密着性も問題ないことがわかった。尚、水素、窒素選択率は100%であった。
(比較例1)
触媒構造体の代わりに、調製したルテニウム担持アルミニウム酸化物触媒を粒径が250〜500μmとなるように粉砕、分級した粒子を100mg用いて反応器に充填した他は、すべて実施例1と同様にして評価した。
Figure 0006984246
表17の結果、触媒粒子の場合、低い空間速度下ではアンモニアの分解反応が高い割合で進んだものの、高い空間速度になるに従って、分解割合がかなり低下した。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (5)

  1. アンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体の表面を清浄化する前処理工程と、
    アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体に、ルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
    前記前処理工程を施した構造体表面に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
    前記前処理工程では、
    有機溶剤を用いて前記金属基材構造体の表面を脱脂した後に乾燥する工程と前記金属基材構造体をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と前記金属基材構造体を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより前記金属基材構造体の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
  2. アンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体の表面を清浄化する前処理工程と、
    前記前処理工程を施した構造体表面に、アルミニウム酸化物を含む下地層を形成する下地層形成工程と、
    アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体に、ルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
    前記下地層形成工程で形成された下地層に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
    前記前処理工程では、
    有機溶剤を用いて前記金属基材構造体の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材構造体をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材構造体を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材構造体の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
  3. 金属基材の表面を清浄化する前処理工程と、
    アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体にルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
    前記前処理工程を施した金属基材の表面に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
    前記前処理工程の後かつ前記外表面層形成工程の前、または前記外表面層形成工程の後のタイミングで、前記金属基材をアンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体とする工程を行い、
    前記前処理工程では、
    有機溶剤を用いて前記金属基材の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
  4. 金属基材の表面を清浄化する前処理工程と、
    前記前処理工程を施した金属基材の表面にアルミニウム酸化物を含む下地層を形成する下地層形成工程と、
    アルミニウム酸化物、セリウム酸化物、マグネシウム酸化物、ケイ素酸化物、及び、ジルコニウム酸化物からなる群から選ばれる1種の担体にルテニウムを担持させることでルテニウム担持触媒を作製する触媒担持工程と、
    前記下地層形成工程で形成された下地層に、前記触媒担持工程で作製されたルテニウム担持触媒を被覆し、その後、乾燥、焼成して、外表面層を形成する外表面層形成工程と、を有し、
    前記前処理工程の後かつ前記下地層形成工程の前、前記下地層形成工程の後かつ前記外表面層形成工程の前、または前記外表面層形成工程の後のタイミングで、前記金属基材をアンモニアガスの流通経路を有する金属基材構造体とする工程を行い、
    前記前処理工程では、
    有機溶剤を用いて前記金属基材の表面を脱脂した後に乾燥する工程と、前記金属基材をアルカリ性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程と、前記金属基材を酸性水溶液に浸漬した後に乾燥する工程とを行うことにより、前記金属基材の表面を処理することを特徴とする、アンモニアから水素を製造するための触媒構造体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で製造された触媒構造体を用いた、アンモニアから水素を製造する方法であって、アンモニアを含むガスを、前記アンモニアガスの流通経路に流通させて、前記ガス中のアンモニアを前記ルテニウム担持触媒に接触させて、前記アンモニアを分解し、水素を製造することを特徴とする水素の製造方法。
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