JP6978051B2 - 電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア及び現像剤 - Google Patents
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Description
本発明の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材は、芯材断面における結晶粒界の全長L1と芯材周囲長L2とが、2≦L1/L2≦9の関係を満足する。このようなフェライトキャリア芯材によれば、高バイアス下でも絶縁破壊せず、長期にわたり白斑やキャリア付着などの画像欠陥が抑制されるキャリアとすることができる。L1/L2が2未満であると絶縁破壊が起こりやすくなり、特に、高電界下及び耐刷によってコート層が薄くなったときにこの問題が顕著となる。一方、L1/L2が9を越えると、キャリア抵抗が高すぎて画像濃度が出にくくなる。L1とL2は、好ましくは3≦L1/L2≦8、より好ましくは4≦L1/L2≦7の関係を満足する。
[数1]
結晶粒界の全長L1 = [{(結晶粒の円相当径×π)の総和}−芯材周囲長]/2
[数2]
SF−2 = {(L3 2/S)/4π}×100
本発明の電子写真現像剤用キャリアは、上記フェライトキャリア芯材と、このフェライトキャリア芯材の表面に設けられた樹脂からなる被覆層とを備えたものである。キャリア特性はキャリア表面に存在する材料や性状に影響されることがある。したがって、適当な樹脂を表面被覆することによって、所望とするキャリア特性を、精度良く調整することができる。
本発明の電子写真現像剤用キャリアを製造するにあたり、まずフェライトキャリア芯材を作製する。キャリア芯材を作製するには、原材料を秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜24時間粉砕及び混合する。原料は特に限定されないが、好ましくは、(MnO)x(MgO)y(Fe2O3)zにおいて、x+y+z=100mol%を満たし、x、yが、それぞれ15〜60mol%、0.1〜35mol%であり、MnO、MgO及びFe2O3の一部が二価を取り得る元素の酸化物により置換された組成を有する。より好ましくは、(MnO)x(MgO)y(Fe2O3)zにおいて、x+y+z=100mol%を満たし、x、yが、それぞれ15〜60mol%、0.1〜35mol%であり,MnO、MgO及びFe2O3の一部がSrOで0.35〜5.0mol%置換された組成を有する。さらに好ましくは、(MnO)x(MgO)y(Fe2O3)zにおいて、x+y+z=100mol%を満たし、x、yが、それぞれ35〜45mol%、5〜15mol%となるように各酸化物を配合し、さらにこれにSrO又は最終的にSrOとなるSrCO3などを所定量配合し、MnO、MgO及びFe2O3の一部がSrOで0.4〜2.0mol%置換された組成を有する。このようにして得られた粉砕物を、加圧成型機等を用いてペレット化した後、700〜1200℃の温度で仮焼成する。
本発明の現像剤は、上記電子写真現像剤用キャリアとトナーとを含むものである。現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。このように調製された本発明の現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機などに使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機などにも適用可能である。
(1)フェライトキャリア芯材の作製
MnO:38mol%、MgO:11mol%、Fe2O3:50.3mol%及びSrO:0.7mol%になるように原料を秤量し、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で4.5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。MnO原料として四酸化三マンガンを、MgO原料として水酸化マグネシウムを、SrO原料として炭酸ストロンチウムを用いた。目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、得られたペレットをロータリー式電気炉にて1050℃で3時間加熱して仮焼成を行った。
得られたフェライトキャリア芯材について、各種特性の評価を以下のとおり行なった。
フェライトキャリア芯材の結晶粒界の全長L1と芯材周囲長L2を、次のようにして求めた。まず、試料を樹脂で埋包し、クロスセクションポリッシャ装置(CP装置、Gatan社製Model 693 ilion)を用いて、研磨断面を露出させた観察用サンプルを作製した。次に、このサンプルについて、EBSD(後方散乱電子回折)装置(EDAX社/(株)TSLソリューションズ製Pegasusシステム)を搭載したSEM(走査型電子顕微鏡)(Carl Zeiss社製SUPRA 55VP)を用いて、SEM観察及びEBSD解析を行なった。その際、加速電圧20kV、アパーチャー径60mm、High Current mode、試料傾斜角度70度、ステップサイズ0.2μm〜0.05μm、フェーズベースFe3O4の条件にて観察及び解析を行なった。また、測定及び解析用ソフトとして、(株)TSLソリューションズ製OIM Data Collection/OIM Analysisを用いた。
[数1]
結晶粒界の全長 = [{(結晶粒の円相当径×π)の総和}−芯材周囲長]/2
フェライトキャリア芯材において、形状係数SF−2の測定を、次のようにして行なった。すなわち、FE―SEM(日立ハイテクノロジーズ社製SU−8020)を用いてフェライト粒子を450倍視野にて撮影し、その画像情報を、インターフェースを介して画像解析ソフト(メディアサイバネティクス社製Image−Pro PLUS)に導入して解析を行い、投影面積(S)、投影周囲長(L3)を求めた。そして、下記式より、1粒子毎のSF−2を算出した。同様の操作を100粒子について行い、形状係数SF−2が150以下の粒子(小凹凸粒子)の割合(個数%)を求めた。
[数2]
SF−2 = {(L3 2/S)/4π}×100
フェライトキャリア芯材の体積平均粒径を、マイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製Model9320−X100)を用いて測定した。分散媒には水を用いた。まず、試料10gと水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を2〜3滴添加した。次いで、超音波ホモジナイザー(SMT.Co.LTD.製UH−150型)を用い、出力レベル4に設定し、20秒間分散を行った。その後、ビーカー表面にできた泡を取り除き、試料を装置へ投入した。粒径24μm未満の粒子の体積%(微粉量)も、同様に測定して算出した。
フェライトキャリア芯材の磁気特性を、振動試料型磁気測定装置(東英工業社製VSM−C7−10A)を用いて測定した。測定試料を、内径5mm、高さ2mmのセルに詰めて、この装置にセットし、次いで印加磁場を加え、最大1kOe(80kA)まで掃引した。その後、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作成した。このカーブのデータより、印加磁場1kOeにおける磁化を求めた。
フェライトキャリア芯材の見掛け密度を、JIS Z 2504に準拠して測定した。具体的には、次のようにして測定した。まず、粉末見掛け密度計として、漏斗、コップ、漏斗支持器、支持棒及び支持台から構成される装置を用いた。また、天秤として、秤量200gで感量50mgのものを用いた。測定の際には、試料を少なくとも150g以上とし、この試料を孔径2.5+0.2/−0mmのオリフィスを持つ漏斗に注ぎ、流れ出た試料がコップ一杯になってあふれ出るまで流し込んだ。あふれ始めたら直ちに試料の流入をやめ、振動を与えないようにコップの上に盛り上がった試料をへらでコップの上端に沿って平らにかきとった。その後、コップの側面を軽く叩いて、試料を沈ませコップの外側に付着した試料を除去して、コップ内の試料の重量を0.05gの精度で秤量した。得られた秤量値に0.04を乗じた数値を、JIS−Z8401(数値の丸め方)によって小数点以下第2位に丸め、[g/cm3]単位の見掛け密度とした。
フェライトキャリア芯材の電気抵抗を次のようにして測定した。すなわち、電極間間隔6.5mmにて非磁性の平行平板電極(10mm×40mm)を対向させ、その間に、試料200mgを秤量して充填した。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、500Vと1000Vの電圧を印加し、絶縁抵抗計(東亜ディーケーケー(株)製SM−8210)にて電気抵抗を測定した。なお、測定は、試料を温度20〜25℃、湿度50〜60%の恒温恒湿内に12時間以上暴露したのち行なった。
キャリア付着を評価するに際し、まずは、評価用現像剤を以下の方法に従って作製した。すなわち、シリコーン系樹脂(商品名:SR−2440、固形分20重量%、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、アミノシランカップリング剤(信越シリコーン社製KBM−603)をトルエン溶剤に溶解し、一軸式間接加熱型の乾燥機に入れてキャリア芯材に対して被覆し、さらに250℃で3時間焼き付けを行い、上記樹脂によって被覆されたキャリアを得た。このとき樹脂溶液はキャリア芯材に対する樹脂の固形分で1重量%となるように樹脂を秤量し、樹脂の固形分に対してアルミニウム系触媒(CAT−AC)を3重量%、アミノシランカップリング剤(KBM−603)を1重量%、溶媒として樹脂の固形分に対して10重量%となるようにトルエンをそれぞれ添加したものを使用した。そして、得られたキャリアを評価用現像剤とした。なお、この現像剤はキャリア付着評価用であるため、トナーは加えられていない。
A:付着キャリア数20個未満
B:付着キャリア数20個以上40個未満
C:付着キャリア数40個以上
仮焼成物粉砕の際に、ヨウ化カリウム添加量を0.1wt%とした以外は、例1と同様にして、フェライトキャリア芯材の作製及び評価を行なった。
仮焼成物粉砕の際に、平均粒径を1.5μmとしてヨウ化カリウムを加えず、本焼成条件を、焼成温度1200℃及び酸素濃度5.0容量%の雰囲気下とした以外は、例1と同様にして、フェライトキャリア芯材の作製及び評価を行なった。
仮焼成物粉砕の際に、平均粒径3.5μmとしてヨウ化カリウムを加えず、本焼成条件を、焼成温度1200℃及び酸素濃度5.0容量%の雰囲気下とした以外は、例1と同様にして、フェライトキャリア芯材の作製及び評価を行なった。
仮焼成物粉砕の際に、平均粒径3.5μmとしてヨウ化カリウムを加えず、本焼成条件を、焼成温度1270℃及び酸素濃度2.5容量%の雰囲気下とした以外は、例1と同様にして、フェライトキャリア芯材の作製及び評価を行なった。
仮焼成物粉砕の際に、平均粒径1.2μmとしてヨウ化カリウムを加えず、本焼成条件を、焼成温度1210℃及び酸素濃度2.5容量%の雰囲気下とした以外は、例1と同様にして、フェライトキャリア芯材の作製及び評価を行なった。
仮焼成物粉砕の際に、平均粒径1.0μmとしてヨウ化カリウムを加えず、本焼成条件を、焼成温度1140℃及び酸素濃度7.0容量%の雰囲気下とした以外は、例1と同様にして、フェライトキャリア芯材の作製及び評価を行なった。
MnO:38mol%、MgO:11mol%、Fe2O3:50.3mol%及びSrO:0.7mol%になるように原料を秤量し、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で4.5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。MnO原料として四酸化三マンガンを、MgO原料として水酸化マグネシウムを、SrO原料として炭酸ストロンチウムを用いた。このペレットから目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、ロータリー式電気炉にて1050℃で3時間加熱して仮焼成を行った。次いで、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いて、仮焼成物を平均粒径3.8μmになるまで粉砕した後、水を加え、さらに湿式のメディアミル(縦型ビーズミル、1/16インチ径のステンレスビーズ)を用いて10時間粉砕した。得られたスラリーに分散剤を適量添加し、バインダーとしてPVA(20%溶液)を固形分に対して0.2重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒及び乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行った。得られた造粒物を40kg/hrの供給速度でプロパン5Nm3/hr、酸素25Nm3/hrが供給されるフレームを通過させて本焼成物を得た。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別しフェライトキャリア芯材を得た。
例1〜8において、得られた評価結果は表2に示されるとおりであった。実施例である例1〜6において、フェライトキャリア芯材は、高バイアス印加時の絶縁性に優れるとともに、飛散キャリア数が少なかった。特に、結晶成長抑制剤としてヨウ化カリウムを用いて作製した実施例1と実施例2は、飛散キャリア数が少なくキャリア付着抑制の効果に優れたものとなった。一方、比較例である例7及び例8においては、絶縁性に若干劣るとともに、飛散キャリア数が多く、キャリア付着抑制の効果に劣るものとなった。これらの結果から、本発明によれば、高バイアス下でも絶縁破壊せず、長期にわたり白斑やキャリア付着などの画像欠陥を抑制できる電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア及び現像剤を提供できることが分かる。
Claims (9)
- 芯材断面における結晶粒界の全長L1と芯材周囲長L2とが、2≦L1/L2≦9の関係を満足する、電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材であって、
前記結晶粒界の全長L 1 は、L 1 =[{(結晶粒の円相当径×π)の総和}−芯材周囲長]/2の式により算出される値であり、
前記フェライトキャリア芯材が、(MnO) x (MgO) y (Fe 2 O 3 ) z において、x+y+z=100mol%を満たし、x、yが、それぞれ15〜60mol%、0.1〜35mol%であり、MnO、MgO及びFe 2 O 3 の一部がSrOで0.35〜5.0mol%置換された組成を有する、フェライトキャリア芯材。 - 形状係数SF−2が150以下である粒子を、個数基準で30%以上含む、請求項1に記載のフェライトキャリア芯材。
- 6.5mmギャップにおける、電圧1000V印加時のコア抵抗R1000(単位:Ω)と500V印加時のコア抵抗R500(単位:Ω)とが、5.0≦Log10(|R500−R1000|)≦11.0の関係を満足する、請求項1又は2に記載のフェライトキャリア芯材。
- 体積平均粒径が20〜80μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェライトキャリア芯材。
- 1kOe(80kA/m)における磁化が40〜75emu/gである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフェライトキャリア芯材。
- 見掛け密度が1.6〜2.6g/cm3である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフェライトキャリア芯材。
- 粒径24μm未満の粒子の割合が4.5体積%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェライトキャリア芯材。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載のフェライトキャリア芯材と、前記フェライトキャリア芯材の表面に設けられた樹脂からなる被覆層とを備えた、電子写真現像剤用キャリア。
- 請求項8に記載のキャリアと、トナーとを含む、電子写真現像剤。
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