(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置を示す模式図である。インクを吐出する記録ヘッド102は、キャリッジ6に着脱自在に搭載されている。記録ヘッド102は、インク滴を吐出する吐出口が複数配された吐出口形成面を有している。記録ヘッドユニット100は、記録ヘッド102と、記録ヘッド102の各ノズルにインクを供給するためのインクタンク101とから構成されている。記録ヘッド102には、記録ヘッドを駆動する信号などを授受するコネクタが設けられている。キャリッジ6には、コネクタを介して記録ヘッド102に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダが設けられている。キャリッジ6は、ガイドシャフト9により案内支持されており、ガイドシャフト9が延在する方向に沿って往復移動可能に構成されている。キャリッジ6は、モータプーリ12、従動プーリ18およびタイミングベルト10等の駆動機構を介してキャリッジモータ11により駆動される。
オートシートフィーダ15には、記録媒体14が積載される。記録命令があると、給送モータ13が駆動され、駆動力がギアを介してピックアップローラ16に伝達される。これによりピックアップローラ16が回転し、オートシートフィーダ15に積載された記録媒体14は上部より1枚ずつ分離され記録装置内に給送される。記録装置内に給送された記録媒体14は、搬送ローラ8の回転力により搬送される。搬送ローラ8は、搬送モータ24により発生する回転力がギアを介して伝達されることによって回転する。搬送ローラ8は、対向する位置に設けられたピンチローラ17と共に記録媒体14を挟持しながら当該記録媒体を搬送する。また搬送ローラ8は、ベルト部材22を介して排出ローラ7と連結しており、搬送ローラ8が回転すると排出ローラ7も回転するように構成されている。排出ローラ7もまた、対向する位置に設けられた拍車ローラ21と共に記録媒体14を挟持しながら当該記録媒体を搬送する。搬送ローラ8の回転量と回転速度は、搬送ローラ8に取り付けられたコードホイール23のスリットの位置が不図示の回転角センサにより検知され、それらの情報が搬送モータ24の制御用ドライバにフィードバックされることで制御される。
搬送ローラ8と排出ローラ7の間であって記録ヘッド102の吐出口形成面と対向する位置には、プラテン19が配されている。プラテン19は、搬送される記録媒体14を下方より支持する。記録ヘッド102は、搬送される記録媒体14に対して、キャリッジ6が移動しているときに吐出口からインクを吐出することによって記録媒体14に1バンド分の画像を形成する。記録媒体14に1バンド分の画像が形成されると、記録媒体14は搬送ローラ8と排出ローラ7によって所定の搬送量だけ搬送される(間欠搬送)。この1バンド分の記録動作と間欠搬送動作とを繰り返すことによって記録媒体14の全体に画像が形成される。画像が形成された記録媒体14は、排出ローラ7によって記録装置外へ排出される。
キャリッジ6の移動領域内において記録媒体14に記録が行われる領域(記録領域)の外側には、吸引キャップ(キャップ)26が配されている。キャップ26は、非記録動作時にノズルの乾燥を防ぐために記録ヘッド102の吐出口形成面を覆うことができる。吸引ポンプ(ポンプ)25は、キャップ26が吐出口形成面を覆った状態において、キャップ26の内部を負圧にすることによって、記録ヘッド102からインクを吸引することができる。
図2は、本実施形態に係る記録ヘッドユニットを示す概略図である。記録ヘッドユニット100は、キャリッジ6に着脱自在に搭載される。記録ヘッドユニット100は、記録ヘッド102と、記録ヘッド102の各ノズルに供給されるインクを収容するインクタンク101(101a、101b、101c、101d)とから構成されている。本実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(Bk)の4つの独立のインクタンクが搭載されている。101aにはシアンインクが、101bにはマゼンタインクが、101cにはイエローインクが、101dにはブラックインクがそれぞれ収容されている。なお本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色のインクを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これらのうち3色以下のインクを用いたものであっても良いし、また他色のインクを加え4色以上のインクを用いたものであっても良い。他色のインクとは、例えばグレイインク、顔料ブラックインク、ライトシアンインク等である。
次に、図3、図4、及び図5を用いて記録ヘッド102の構成について詳細に説明する。図3は、記録ヘッドのインク流路を示す模式図である。本実施形態では、記録ヘッド102は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインク流路を有している。ここで、a〜dは各インクの色を示しており、aはシアン、bはマゼンタ、cはイエロー、dはブラックである。フィルタ部103には、金属製のフィルタが熱溶着されている。フィルタ部103は、インクタンクとの結合部であり、インクタンクからインクを導入するための毛管力を発生させる機能と、外部からのごみの侵入を防ぐ機能とを兼ね備えている。インク流路部104は、フィルタ部103からノズルへインクを導入するための流路である。インク流路部104は、インク共通液室105に連通している。インク共通液室105は、侵入した気泡が抜けるようにノズルが形成された方向に対して傾きを持って形成されている。
図4は、記録ヘッド102の吐出口形成面(ノズル形成面)をインク流路側から見た模式透過図である。吐出口形成面には、各色のインク共通液室105ごとに、第1の吐出口107Aが複数配された第1の吐出口列106Aと、第1の吐出口107Aより直径(ノズル径)が小さい第2の吐出口107Bが複数配された吐出口列106Bとがそれぞれ形成されている。本実施形態では、第1の吐出口107Aからは5plのインク滴を吐出することができ、第2の吐出口107Bからは1plのインク滴を吐出することができる。以下、第1の吐出口列106Aに配された第1の吐出口107Aを5plノズルまたは単に大ノズル、第2の吐出口列106Bに配された第2の吐出口107Bを1plノズルまたは単に小ノズル等と称する。5plノズルのノズル径は約16.4μmであり、1plノズルのノズル径は約9.2μmである。図4の吐出口形成面には、左から順にシアン(C)の5plノズル、シアン(C)の1plノズル、マゼンタ(M)の5plノズル、マゼンタ(M)の1plノズルがそれぞれ配された吐出口列が形成されている。さらに、イエロー(Y)の5plノズル、イエロー(Y)の1plノズル、ブラック(Bk)の5plノズル、ブラック(Bk)の1plノズルがそれぞれ配された吐出口列が形成されている。本実施形態では、5plノズル及び1plノズルはそれぞれ各色512個ずつ形成されており、各吐出口列に配された吐出口の間隔は600dpiである。
図5は、図4の吐出口列の一部を拡大した模式図である。105は共通液室、107Aは5plノズル、107Bは1plノズル、108はインク発泡室、109はインク共通液室105からインクを導入するためのインク導入部をそれぞれ示している。本実施形態に係る記録ヘッド102は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであり、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を複数有している。すなわち記録ヘッド102は、電気熱変換体に印加されるパルス信号によって熱エネルギーを発生させ、この熱エネルギーによってインク発泡室108内のインクに膜沸騰を起こし、膜沸騰の発泡圧力を利用してノズルの吐出口107よりインクを吐出する。
次に、本実施形態に係る吸引機構について説明をする。図6は、本実施形態に係る吸引機構の模式図である。吸引機構は、記録ヘッド102の吐出口形成面を覆う1つのキャップ26と、一端がキャップ26に接続されもう一端が不図示の廃インク吸収体に接続される吸引チューブ(チューブ)606と、チューブ606に配されたポンプ25とから構成されている。ポンプ25は、軸604と、軸604の周上に配された複数のコロ605とから構成されている。ポンプ25は、軸604が矢印方向へ回転することにより、コロ605とガイド603に保持される部分のチューブ606を順次押し潰し、チューブ606内を減圧する。その結果、キャップ26が記録ヘッド102の吐出口形成面を覆った状態において、キャップ26の内部に負圧を発生させ、記録ヘッド102からインクを吸引する吸引動作(通常吸引)を行うことができる。この吸引動作における吸引量は、予め規定されたコロ605の回転数や回転速度によって定められる。ポンプ25を所定の回転数回転させた後は、ポンプ25の駆動を停止する。そして、キャップ26を吐出口形成面から離間させる(キャップオープン)、またはキャップ26に接続された大気開放路に設けられた大気開放弁601を開けてキャップ26の内部を大気圧と連通する。
さらに本実施形態に係る吸引機構は、チューブ606から成る流路中にチャージ弁(開閉弁)602が配されている。チャージ弁602は、キャップ26とポンプ25との間の流路が連通する状態(開状態)とキャップ26とポンプ25との間の流路が連通しない状態(閉状態)とに切り替えるものである。チャージ弁602が閉状態のときにポンプ25を駆動してコロ605が配置された軸604を矢印方向へ回転すると、チャージ弁602よりコロ605側におけるチューブ606内は減圧され、チューブ606内に高い負圧が発生する。そして、ポンプ25を所定の回転数回転させた後にチャージ弁602を開状態に切り替えることによって、キャップ26を介して記録ヘッド102からインクを吸引する吸引動作(チャージ吸引)を行うことができる。当該吸引動作は、負圧を高めて(チャージして)吸引を行うため、上述したチャージ弁602を用いない吸引動作(通常吸引)よりも強い吸引力で記録ヘッド102からインクを吸引することができる。なお、チャージ弁602には、電磁弁などを用いても良いが、コストやサイズの観点から機械的にチューブを押圧する弁を用いるのが好適である。
図7は、本実施形態に係る制御構成を示すブロック図である。ROM701は、実行する制御プログラムや各種制御における設定値等を格納する。RAM702は、制御プログラムを実行する際のデータの展開、記録データ及び制御命令の記憶、各制御における制御変数の記憶等に用いる。タイマー回路703は、現在時刻に関する情報を取得可能な回路、または経過時間を計測可能な回路である。不揮発性メモリ704は、本体の電源をOFFにした状態でも制御で用いたパラメータ等を記憶することができ、本実施形態における制御では経過時間を算出する際の起点となる時刻の書き込みや読み出しに用いられる。制御回路700は、ROM701に格納された制御プログラムやRAM702に展開した制御プログラムを実行する。外部接続回路705は、インクジェット記録装置本体と外部のホスト装置との間を有線または無線で通信を行う際に、制御回路700がインターフェース及び制御信号を取り扱うための回路である。インクジェット記録装置には、外部接続回路705を介して、外部のホスト装置からインクジェット記録装置で記録する画像データ(記録命令)が入力される。またインクジェット記録装置に、外部接続回路705を介して現在時刻を入力しても良い。
制御回路700は、受信した画像データをRAM702上に展開する。さらに制御回路700は、RAM702上に展開されたデータに基づいて、記録ヘッドユニット駆動回路706を介して記録ヘッドユニット100の駆動を制御する。それと同時に、制御回路700は、キャリッジモータ駆動回路710を介してキャリッジモータ11の駆動を制御する。制御回路700による1回の記録動作の制御によって、キャリッジ6が移動しているときに記録ヘッドから記録媒体の所望の位置にインクを吐出させ記録媒体に1バンド分の画像を形成する。また制御回路700は、搬送モータ駆動回路712を介して搬送モータ24を制御することで記録媒体を間欠搬送する。また制御回路700は、回復モータ駆動回路708を介して回復モータ709を制御することで、記録ヘッド102から所定量のインクを吸引する吸引動作(通常吸引、チャージ吸引)を行う。また制御回路700は、回復モータ駆動回路708を介して回復モータ709を制御することで、キャップ26により吐出口形成面を覆うキャッピング動作やワイパーブレードにより吐出口形成面をワイピングするワイピング動作を行う。また制御回路700は、記録ヘッドユニット駆動回路706を介して記録ヘッドユニット100の駆動を制御することで、キャップ26に対して記録に寄与しない所定量のインクを吐出する予備吐出を行う。この場合の記録ヘッド102を駆動するパターンは、上記の記録動作と同様に、RAM702上に展開したデータ、ROM701上のデータ、または制御回路700で生成されたデータのいずれかに基づいたものである。
次に、本実施形態における吸引回復制御について説明する。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録ヘッド内の気泡の除去、記録ヘッド内の増粘・固着インクの排出、記録ヘッド内へのインク充填などを目的として、記録ヘッドからインクを吸引する吸引動作(回復動作)を実行可能である。この吸引回復制御は、記録ヘッドの装着時、インクタンクの交換時、プリンタドライバ等からのクリーニング実行命令(回復命令)を受けた時、記録動作の直前時等に実行される。ここで本実施形態における吸引回復制御は、通常吸引を行う通常吸引制御と、チャージ吸引を行うチャージ吸引制御との2つに大別される。以下、それぞれの吸引回復制御について詳細に説明する。
図8は、通常吸引制御を示すフローチャートである。通常吸引制御が開始されると、ステップ801で、キャップ26が記録ヘッド102に当接し記録ヘッド102の吐出口形成面を覆う(キャップクローズ)。次にステップ802で、大気開放弁601を閉じてキャップ26と大気の連通を遮断する。次に通常吸引制御では、ステップ803においてチャージ弁602を開放する(開状態)。ステップ804では、ポンプ25の回転を開始する。これにより、記録ヘッド102からインクを吸引する吸引動作(通常吸引)が開始される。ポンプ25を所定の回転数回転させた後、ステップ805で、ポンプ25の回転を停止する。これにより通常吸引が終了する。ステップ806で、大気開放弁601を開けてキャップ26の内部を大気と連通する。ステップ807で、再びポンプ25の回転を開始する。このようにキャップ26の内部を大気と連通した状態で吸引動作を行うことにより、キャップ26の内部に残留しているインクを排出することができる(空吸引)。ポンプ25を所定の回転数回転させた後、ステップ808で、ポンプ25の回転を停止し、空吸引を終了する。次にステップ809で、キャップ26を記録ヘッド102から離間させる(キャップオープン)。ステップ810で、不図示のワイパーブレード(ワイパ)により記録ヘッド102の吐出口形成面をワイピングした後、ステップ811で、記録ヘッドより記録に寄与しないインクを吐出する予備吐出を行う。そして通常吸引制御を終了する。なお、ここではステップ806において、キャップ26を記録ヘッド102から離間させずに大気開放弁601を開放することによりキャップ26の内部を大気と連通した。しかし本発明はこれに限定されず、キャップ26を記録ヘッド102から離間させることによりキャップ26の内部を大気と連通しても良い。
以上の通常吸引制御は、主に記録ヘッド内のインク流路、インク共通液室へのインク充填や気泡の除去を目的とした制御である。しかし、通常吸引制御による吸引動作では、1plノズルのような小ノズルにおける気泡の除去や増粘インクの排出が十分にできない場合がある。そこで本実施形態では、次に説明するチャージ吸引制御による吸引動作を行うことによって小ノズルにおける気泡の除去や増粘インクの排出を可能としている。
図9は、本実施形態に係るチャージ吸引制御を示すフローチャートである。チャージ吸引制御が実行されると、ステップ901で、キャップ26が記録ヘッド102に当接し記録ヘッド102の吐出口形成面を覆う(キャップクローズ)。次にステップ902で、大気開放弁601を閉じてキャップ26と大気の連通を遮断する。次にチャージ吸引制御で、ステップ903においてチャージ弁602を閉塞する(閉状態)。ステップ904で、ポンプ25の回転を開始する。これによりコロ605からチャージ弁602までのチューブ606内が減圧され負圧が高まる。このときの負圧は予め規定されたコロ605の回転数、回転速度によって定められる。その後、ステップ905でポンプ25の回転を停止し、ステップ906でチャージ弁602を開放する。これにより記録ヘッドからインクを吸引する吸引動作(チャージ吸引)が行われる。ステップ907で大気開放弁601を開けてキャップ26の内部を大気と連通する。次にステップ908で、再びポンプ25の回転を開始する。この動作(空吸引)によりキャップ26の内部に残留しているインクを排出した後、ステップ909でポンプの回転を停止し、当該空吸引を終了する。その後、ステップ910で、キャップ26を記録ヘッド102から離間させる(キャップオープン)。そして、ステップ911で不図示のワイパーブレードにより記録ヘッド102の吐出口形成面をワイピングした後、ステップ912で予備吐出を行う。そしてチャージ吸引制御を終了する。
以上のチャージ吸引によって、本実施形態における1plノズルのような小ノズルにおいても気泡や増粘インクを外部へ排出し、小ノズルの吐出性能を回復することが可能となる。
以上の通常吸引やチャージ吸引はインクジェット記録装置が記録動作を行う直前の回復制御(記録前回復制御)において実行される。次に本実施形態における記録前回復制御について図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における記録前回復制御を示すフローチャートである。
ステップ1001において記録命令を受けると、ステップ1002へ進み、回復要求フラグがONにセットされているか否かを判断する。回復要求フラグは、前回の通常吸引を伴う吸引回復制御を実行してからの経過時間が所定時間以上である場合、インクタンクの交換後、エラー復帰後などにONにセットされ、不揮発性メモリ704に記憶される。回復要求フラグがONにセットされる条件についての詳細な説明は後述する。ステップ1002で回復要求フラグがONにセットされていると判断された場合、次のステップ1003で通常吸引制御(図8)による通常吸引と、それに続くチャージ吸引制御(図9)によるチャージ吸引とを実行する。ステップ1004では、回復要求フラグをOFFにセットする。またチャージ吸引フラグがONにセットされている場合はチャージ吸引フラグをOFFにセットする。チャージ吸引フラグの説明については後述する。これらの吸引動作を実行した後、ステップ1005へ進み、記録動作を開始する。
ステップ1002において回復要求フラグがONにセットされていないと判断された場合、ステップ1006へ進み、チャージ吸引フラグがONにセットされているか否かを判断する。ステップ1006でチャージ吸引フラグがONにセットされていないと判断された場合、ステップ1005へ進み、記録動作を開始する。ステップ1006でチャージ吸引フラグがONにセットされていると判断された場合、次のステップ1007でチャージ吸引制御によるチャージ吸引のみを実行する。そしてステップ1008で、チャージ吸引フラグをOFFにセットする。その後、ステップ1005へ進み、記録動作を開始する。
ここで回復要求フラグをONにセットする条件について図11を用いて説明する。まずは図11(A)を用いて、インクタンク交換時に回復要求フラグがONにセットされる条件について説明する。ステップA1101において、ユーザーによりインクタンクの着脱が行われたか否かを判断する。ステップA1101でインクタンクの着脱が行われていない場合、回復要求フラグをONにセットすることなく、本処理を終了する。ステップA1101でインクタンクの着脱が行われたと判断された場合、ステップA1102へ進み、ユーザーがインクタンクを外してから装着するまでの時間(インクタンク未装着時間)が所定時間以上であるか否かを判断する。ここでは所定時間が10分である場合を例に説明する。ステップA1102においてインクタンク未装着時間が10分未満であった場合、回復要求フラグをONにセットすることなく、本処理を終了する。ステップA1102においてインクタンク未装着時間が10分以上であった場合、ステップA1103へ進み、回復要求フラグをONにセットした後、本処理を終了する。
次に、図11(B)を用いて、前回の通常吸引を伴う吸引回復制御を実行してから所定時間以上が経過した場合に回復要求フラグがONにセットされる条件について説明する。まずステップB1101において、前回の通常吸引を伴う吸引回復制御(図10のステップ1004)を実行してからの経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する。ここでは所定時間が10日である場合を例に説明する。ステップB1101で経過時間が10日未満であった場合、回復要求フラグをONにセットすることなく、本処理を終了する。ステップB1101で経過時間が10日以上であった場合、次のステップB1102へ進み、回復要求フラグをONにセットした後、本処理を終了する。
次に、図11(C)を用いて、前回の通常吸引を伴う吸引回復制御を実行してからこれまでに吐出されたインク量(ドット数)のカウント値が所定の閾値以上の場合に回復要求フラグがONにセットされる条件について説明する。まずステップC1101において、前回の通常吸引を伴う吸引回復制御(図10のステップ1004)を実行してからの各色、各吐出口列ごとに吐出されたインク滴(ドット)のカウント値(ドット数)を取得する。ここで、Dcount(5pl)_cはシアンの5plの吐出口列から吐出されたドット数、Dcount(1pl)_cはシアンの1plの吐出口列から吐出されたドット数を表している。同様に、Dcount(5pl)_mはマゼンタの5plの吐出口列から吐出されたドット数、Dcount(1pl)_mはマゼンタの1plの吐出口列から吐出されたドット数を表している。また、Dcount(5pl)_yはイエローの5plの吐出口列から吐出されたドット数、Dcount(1pl)_yはイエローの1plの吐出口列から吐出されたドット数をそれぞれ表している。なお、これらのドット数に関する情報は不揮発性メモリ704に記憶される。
ステップC1102では、シアンの5plの吐出口列とシアンの1plの吐出口列から吐出されたドット数の和が閾値以上であるか否かを判断する。本実施形態では、閾値が5.0×10^8である場合を例に示す。ステップC1102で、シアンのドット数の和が閾値以上であると判断された場合、ステップC1105へ進み、回復要求フラグをONにセットして、本処理を終了する。ステップC1102でシアンのドット数の和が閾値未満であると判断された場合、次のステップC1103へ進む。ステップC1103では、マゼンタの5plの吐出口列とマゼンタの1plの吐出口列から吐出されたドット数の和が閾値以上であるか否かを判断する。ここでも同様に閾値が5.0×10^8である場合を例に示す。ステップC1103でマゼンタのドット数の和が閾値以上であると判断された場合、ステップC1105へ進み、回復要求フラグをONにセットして、本処理を終了する。ステップC1103でマゼンタのドット数の和が閾値未満であると判断された場合、次のステップC1104へ進む。ステップC1104では、イエローの5plの吐出口列とイエローの1plの吐出口列から吐出されたドット数の和が閾値以上であるか否かを判断する。ここでも同様に閾値が5.0×10^8である場合を例に示す。ステップC1104でイエローのドット数の和が閾値以上であると判断された場合、ステップC1105へ進み、回復要求フラグをONにセットして、本処理を終了する。ステップC1104でイエローのドット数の和が閾値未満であると判断された場合、回復要求フラグをONにセットすることなく、本処理を終了する。
次に、本実施形態に係るチャージ吸引フラグをONにセットする条件について図12を用いて説明する。図12(A)は、記録動作を開始したとき(図10のステップ1005)に実行される制御を示すフローチャートである。まずステップA1201において、受信した記録モードが1plノズルを使用する記録モードであるか否かを判別する記録モード判別制御を実行する。記録モードは、選択された記録媒体の種類、画質モード、記録データ内のインクの種類などに関する情報を読み取ることによって判別される。図13(A)は、選択された記録媒体の種類と使用するノズルの種類を示す対応表である。記録を行うために選択された記録媒体の種類によっては使用するノズルの種類が限定される場合がある。例えば図13(A)に示すように、普通紙を用いる場合、使用するノズルは5plノズルのみであり、1plノズルは使用しない。一方、光沢紙のような特殊紙を用いる場合は、使用するノズルは5plノズル、1plノズルの双方となる。このように記録媒体の種類に応じて使用するノズルが定められている場合、記録データのヘッダ等に付加された記録媒体の種類に関する情報を読み取ることにより、記録モードが1plノズルを使用する記録モードであるか否かを判別することができる。
また、記録媒体と画質モードの組み合わせにより定義されるインク滴(ドット)の配置方法(ドット配置)によって使用するノズルの種類が決定される場合がある。図13(B)は記録媒体と画質モードの組み合わせによるドット配置の種類を示す対応表であり、図13(C)はドット配置の種類と使用するノズルの種類を示す対応表である。例えば、図13(B)に示すように記録媒体/画質モードの組み合わせが普通紙/標準モードであった場合、ドット配置にはAが対応付けられ、さらに図13(C)に示すようにドット配置Aには使用時に5plノズルのみを使用するものが対応付けられる。ユーザーが記録媒体と画質モードを選択して記録命令を入力すると、選択された記録媒体と画質モードの組み合わせから決定される使用ノズルに関する情報が記録データのヘッダ等に付加される。そして、その情報を読み取ることによって、受信した記録モードが1plノズルを使用する記録モードであるか否かを判別することができる。
図12(B)は、記録モード判別制御の制御内容を示すフローチャートである。ステップB1201では、記録を行うために選択された記録媒体が普通紙か否かを判断する。記録媒体が普通紙である場合(Yes)、次のステップB1202へ進む。記録媒体が普通紙以外の場合(No)は、記録モード判別制御を終了する。ステップB1202では、選択された画質モードが標準モードまたはきれいモードであるか否かを判断する。画質モードが標準モードまたはきれいモードである場合(Yes)、ステップB1203へ進み、後述する大ドットカウントモードをONにセットする。画質モードが標準モードまたはきれいモードでない場合(No)、記録モード判別制御を終了する。
再び図12(A)のフローチャートの説明に戻る。ステップA1202では、大ドットカウントモードがONにセットされているか否かを判断する。大ドットカウントモードとは、小ノズル(1plノズル)を使用しない記録モードにおいて、大ノズル(5pl)から吐出されたドット数をカウントするモードである。ステップA1202において、大ドットカウントモードがONにセットされている場合(Yes)、ステップA1203へ進み、ぬれ計数算出制御を実行する。大ドットカウントモードがONにセットされていない場合は、ステップA1207へ進む。
ここで、ぬれ計数算出制御について図12(C)を用いて説明する。図12(C)のステップC1101では、吐出口(ノズル)をシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色ごと且つ所定のグループ(ノズルグループ)ごとに分割し、ぞれぞれのノズルグループから吐出されたインク滴の数(ドット数)をカウントする。本実施形態では、ノズルグループとして、図14(A)に示すように5plノズル、1plノズルのそれぞれ全512ノズルのうち、1〜256ノズル目までをGr1、257〜512ノズル目までをGr2として区分する。本実施形態では、記録媒体上で縦横600dpiの画素に対して記録可能領域の横方向(キャリッジ6の移動方向)の画素数と各ノズルグループのノズル数(256個)で構成される領域内のドット数をカウントする。例えば、図14(B)に示すように、A4サイズの普通紙に記録を行う場合、記録領域の横方向の画素数は4800ドットであることから、ノズルグループGr1で記録される第1領域は4800×256ドットである。この第1領域内において実際に吐出されたドット数がカウントされ不揮発性メモリ704に記憶される。
次にステップC1202では、カウントしたドット数を所定領域内の吐出比率(Duty)に換算する。本実施形態では、紙面を縦横600dpiの画素に対して5plノズルから吐出される液滴1ドットを100%Dutyと定義し、ドットカウントの領域の総画素数とドットカウント値の商をDutyとする。例えば、A4サイズの普通紙に記録を行う場合、総画素数は4,800×256=1,228,800ドットとなる。Dutyは各色、各ノズルグループごとに換算する。次にステップC1203では、換算したDutyからぬれ計数を算出する。ここでぬれ計数とは、1plノズルを使用しない記録モードにおいて5plノズルのみを使用して記録動作を行った場合に、5plノズルから吐出されたインクが飛散して1plノズルの周辺にどれだけ付着したか(濡れ状態)を推定する指標値である。ぬれ計数の算出には、図15に示すぬれ計数算出テーブルを用いる。ぬれ計数算出テーブルは、テーブルR・G・Bの3つに分かれている。各テーブルR・G・Bは、マゼンタ(Magenta)とイエロー(Yellow)、シアン(Cyan)とイエロー(Yellow)、シアン(Cyan)とマゼンタ(Magenta)の各2色の対となるDutyを基にテーブルを構成している。そして、それぞれ2対のDutyから、3つのぬれ計数(R_NX,G_NX,B_NX)が算出される。ここで、各テーブルにおいてシアン、マゼンタ、イエローの各2色からなるいわゆる2次色の組み合わせに基づいてぬれ計数を算出している。これは1色のみによる吐出の場合よりも2次色を形成する際に各色ノズルから吐出をした場合の方が1plノズルの周辺へのインク付着が顕著に見られるためである。次にステップC1204では算出した3つのぬれ計数R_NX、G_NX、B_NXのうち最大値をノズルグループ毎にぬれ計数NXとして格納する。そして再び図12(A)のステップA1204へ戻る。
図12(A)のステップA1204では、ぬれ計数算出制御で求めたノズルグループ毎のぬれ計数NXの累積値NX_totalを算出する。次にステップA1205では、算出した各ノズルグループの累積値NX_totalのうち、少なくとも1つが所定の閾値N_thを越えているか否かを判断する。各ノズルグループの累積値NX_totalが1つでもN_thを越えていた場合(Yes)、次のステップA1206でチャージ吸引フラグをONにセットする。すべてのNX_totalがN_th以下の場合(No)、ステップA1206をスキップする。本実施形態ではN_thは50としている。
次にステップA1207へ進み、図14(B)に示した第1領域及び第2領域に対して記録動作を実行する。その後、ステップA1208へ進み、排紙命令があるまで上記のステップA1202〜ステップA1208を繰り返し実行する。そして、ステップA1209で大ドットカウントモードを解除して、本制御を終了する。
次に、以上で示したチャージ吸引フラグをONにセットしてチャージ吸引を実行するまでの流れについて、具体的な事例を用いて説明する。ここでは、縁なし印刷で普通紙/標準モード(1plノズル不使用)を選択して、RGB値(0,255,0)のベタ画像を記録データとして入力した場合の事例を用いて説明する。まず図10の記録前回復制御において、ステップ1001で記録命令を受けた場合、ステップ1002で回復要求フラグはOFFであると判断され、ステップ1006でチャージ吸引フラグはOFFであると判断される。よってステップ1005へ進み、記録動作開始時の制御(図12(A))が実行される。そして、図12(A)の記録動作開始時の制御が実行されると、まずステップA1201で記録モード判別制御(図12(B))が実行される。
図12(B)の記録モード判別制御において、ステップB1201では記録媒体が普通紙であると判断され、ステップB1202へ進む。そしてステップB1202では記録モードが標準モードであると判断され、ステップB1203へ進む。次にステップB1203で大ドットカウントモードがONにセットされる。その後、図12(A)の制御に戻り、ステップA1202で大ドットカウントモードがONであると判断され、ステップA1203へ進み、ぬれ計数算出制御(図12(C))が実行される。
図12(C)のぬれ計数算出制御において、ステップC1201では入力画像データのうち、記録媒体の幅方向に4800ドット、各ノズルグループのノズル数256ドットの領域において吐出されたドット数をカウントする。本事例では、RGB値(0,255,0)からCMY値(255,0,255)へ変換される。5plノズルのドットカウント値は、ノズルグループGr1は、C、M、Yそれぞれ、1,228,800、0、1,228,800となり、ノズルグループGr2は、C、M、Yそれぞれ、1,228,800、0、1,228,800となる。
次にステップC1202では、それぞれのドットカウント値がDUTY換算される。具体的には、Duty1_c=100%、Duty1_m=0%、Duty1_y=100%、Duty2_c=100%、Duty2_m=0%、Duty2_y=100%と換算される。ステップC1203では、図15のテーブルR・G・Bをそれぞれ参照して、ぬれ計数をR_N1=0、G_N1=4、B_N1=0、R_N2=0、G_N2=4、B_N2=0と算出される。次にステップC1204では、ノズルグループGr1とノズルグループGr2のぬれ計数の最大値N1=4、N2=4がそれぞれ算出される。
その後、図12(A)の制御へ戻り、ステップA1204で、累積値N1_total=N1_total+N1=4、N2_total=N2_total+N2=4が算出される。ここで両者ともN_th=50を超えていないため、チャージ吸引フラグをONにセットすることなく、ステップA1207へ進み、ドットカウントを行った第1領域、第2領域(4800×512ドットの領域)に対する記録動作を実行する。その後、512ドット分、記録媒体を搬送し、再びステップA1202へ戻り、次の領域のぬれ計数を算出する。以上の処理を繰り返し行っていくと、処理を13回繰り返したところで、N1_total=52、N2_total=52となってN_th=50を超える。このときステップA1206へ進み、チャージ吸引フラグをONに設定する。ステップA1207の記録動作を実行した後、ステップA1208で記録媒体の排紙命令があると、ステップA1209で大ドットカウントモードを解除して、本制御を終了する。
そして図10の記録前回復制御において、回復要求フラグがONにセットされていない状態で次の記録命令を受けると、ステップ1005で回復要求フラグがOFFであると判断され、ステップ1006でチャージ吸引フラグがONであると判断される。するとステップ1007でチャージ吸引フラグをOFFにセットした後、ステップ1008でチャージ吸引制御(図9)のみを実行する。このチャージ吸引制御においてチャージ吸引を実行することにより、次回の記録動作の前に1plノズルの吐出性能を回復することができる。これにより、前回までの5plノズルを使用した記録動作によって1plノズルの周辺が濡れて、その影響により次回の記録動作の際に1plノズルに不吐が生じるといった事態を防止することができる。
次に、ぬれ計数の累積値NX_totalをリセットする条件について説明する。本実施形態においては、ぬれ計数の累積値NX_totalはワイピング動作が完了した後にリセットする。図16は、ワイピング動作時の処理を示すフローチャートである。ワイピング動作は、例えば上述した通常吸引制御(図8のステップ810)やチャージ吸引制御(図9のステップ911)において実行される他、記録動作終了から所定時間経過後のキャップクローズ動作時やワイピング処理命令が入力された場合等に実行される。まずステップ1601において、不図示のワイパーブレードにより記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングする。その後、ステップ1602において、ぬれ計数の累積値NX_totalを0にリセットする。そしてステップ1603で予備吐出を行う。
次に、本発明の効果について説明する。図17は、本実施形態における本発明の効果を説明するための表である。1plノズルが形成された吐出口形成面を有する構成において、従来技術のようにキャップへインクを吐出してそのインクを保湿液として用いて1plノズルを吐出可能な状態に回復させようとした場合、回復に要する時間は約90秒程度であった。一方、本実施形態に係るチャージ吸引では、1plノズルを約30秒程度で回復することができる。
このように本実施形態によれば、記録動作の開始前のメンテナンスにおいて、ユーザーを待たせる時間を低減することが可能となる。また、ぬれ計数を見ることによって、1plノズルの周辺の濡れ状態を推定することができ、必要な場合に確実に1plノズルを回復することができる。また、1plノズルを回復するために、通常吸引を実行せずにチャージ吸引のみを実行しているため、不要な吸引動作を行うことなく、廃インク量およびメンテナンス時間を低減することができる。
なお、1plノズルを使用する記録モードであるか否かを判別する方法は、上述した判別方法以外にも種々の方法を採用することができる。例えば、記録データ内のインクの種類に関する情報や、記録データ内のノズルの種類に関する情報などを読み取ることによって判別することができる。例えば、記録する画像についての記録データのヘッダ等に、記録する際に使用するインクの種類に関する情報を付加し、その情報を読み取ることで使用するノズルを判断することができる。例えば、インクの種類によっては、記録ヘッド102の吐出口形成面に1plノズルを有しないものもある。読み取った記録データ内の使用するインクが1plノズルを有しないインクのみであった場合、この記録モードは1plノズルを使用しない記録モードであると判別することができる。
また、例えば記録する画像についての記録データのヘッダ等に、記録する際に使用するノズルの種類に関する情報を付加し、その情報を読み取ることで使用するノズルを判断することもできる。これにより、例えば1plノズルの使用・不使用のどちらの可能性もある記録モードにおいても、実際に1plノズルを使用するか否かを判別することができる。
また、本実施形態では、ドット数をカウントするノズルグループを2つのグループに均等に分割したが、これに限定されるものではなく、2以上の任意のグループに分割することができる。また、不均等な比率による分割、例えばノズル中央部ほど細かく分割する等としても良い。
また、本実施形態では、記録媒体上で縦横600dpiの画素に対して記録可能領域の横方向(記録媒体の幅方向)の画素数をドットカウントの領域の条件としたが、本発明はこれに限定されるものではない。記録命令によって入力される画像データが写真データ等である場合、Dutyが局所的に変化するものが多いため、1plノズルの周辺の濡れ状態の予測精度を上げるためにDutyの変化をある程度細かく捉えることも有効である。すなわち、記録可能領域の横方向の画素数において2つ以上の領域に分割することとしても良い。また、ぬれ計数算出テーブルにおいて、各テーブルのDuty条件は4つに分割したが、それ以上の分割数であっても良い。
また、本実施形態では、回復要求フラグがONの場合に通常吸引とチャージ吸引とを1回ずつ実行し、チャージ吸引フラグがONの場合にチャージ吸引を1回のみ実行する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各吸引回復制御において複数回の吸引動作を実行する構成としても良い。
また、本実施形態では、回復要求フラグが1種類であり、その回復要求フラグがONの場合に実行される回復動作も1種類である場合についてのみ説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、2種類以上の回復要求フラグを有し、各回復要求フラグに応じて回復強度の異なる回復動作を実行する構成としても良い。これらの回復要求フラグは、状況に応じてそれぞれに適した回復要求フラグがONにセットされることとしても良い。2つ以上の回復要求フラグがONにセットされている場合、それらの中から最も回復強度の高い回復動作のみを実行することとしても良い。
また、本実施形態では、ノズル径の異なる2種類のノズル(大ノズル、小ノズル)の吐出口列が設けられた構成についてのみ説明したが、3種類以上のノズルの吐出口列が設けられた構成であっても本発明を適用することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
第1実施形態では、記録前の回復制御において回復要求フラグのON/OFF及びチャージ吸引フラグのON/OFFを判断し、その判断結果に応じた各吸引回復制御を実行していた。本実施形態では、それらの判断を行う前に、受信した記録命令に係る記録データが1plノズルを使用する記録モードであるか否かを判別し、1plノズルを使用しない記録モードである場合はチャージ吸引を実行しない構成について説明する。
図18は、本実施形態に係る記録前回復制御を示すフローチャートである。まずステップ1801で記録命令を受信すると、ステップ1802で受信した記録モードが1plノズルを使用する記録モードであるか否かを判別する。この使用するノズルの判別方法は、第1実施形態で述べた方法と同様である。ステップ1802で受信した記録モードが1plノズルを使用する記録モードであると判断された場合、ステップ1803へ進み、回復要求フラグがONにセットされているか否かを判断する。ステップ1803で回復要求フラグがONにセットされていると判断された場合、次のステップ1804で通常吸引制御による通常吸引と、それに続くチャージ吸引制御によるチャージ吸引とを実行する。その後、ステップ1805で回復要求フラグ及びチャージ吸引フラグをOFFにセットする。そしてステップ1806で記録動作を開始する。
ステップ1803で回復要求フラグがONにセットされていないと判断された場合、ステップ1807へ進み、チャージ吸引フラグがONにセットされているか否かを判断する。ステップ1807でチャージ吸引フラグがONにセットされていないと判断された場合は、次のステップ1806で記録動作を開始する。
ステップ1807でチャージ吸引フラグがONにセットされていると判断された場合、次のステップ1808でチャージ吸引制御によるチャージ吸引のみを実行し、ステップ1809でチャージ吸引フラグをOFFにセットする。そしてステップ1806で記録動作を開始する。
またステップ1802において、受信した記録モードが1plノズルを使用しない記録モードであると判断された場合、ステップ1810へ進み、回復要求フラグがONにセットされているか否かを判断する。ステップ1810で回復要求フラグがONにセットされていると判断された場合、次のステップ1811で通常吸引制御による通常吸引のみを実行し、ステップ1812で回復要求フラグをOFFにセットする。そしてステップ1806で記録動作を開始する。ここでステップ1812でチャージ吸引フラグをONにセットしたのは、ステップ1812で通常吸引のみを実行し、チャージ吸引は実行していないためである。チャージ吸引を実行していないことから、ここでは1plノズルの吐出性能が十分に回復していないと考えられるため、次回の記録動作が1plノズルを使用する記録モードである場合に当該記録動作を開始する前にチャージ吸引を実行することとしている。
ステップ1810で回復要求フラグがONにセットされていないと判断された場合、ステップ1813へ進み、チャージ吸引フラグがONにセットされているか否かを判断する。ステップ1813でチャージ吸引フラグがONにセットされていると判断された場合、次のステップ1814でチャージ吸引フラグをONにセットする。ここではチャージ吸引を実行することなく、チャージ吸引フラグをONに残したまま、次のステップ1806へ進み、記録動作を開始する。ここでチャージ吸引を実行しないのは、今回の記録モードが1plノズルを使用しない記録モードであるため、1plノズルの吐出性能を回復する必要がないためである。またチャージ吸引フラグをONに残したままとしたのは、次回の記録動作が1plノズルを使用する記録モードである場合に当該記録動作を開始する前にチャージ吸引制御により1plノズルの吐出性能を回復させるためである。ステップ1814でチャージ吸引フラグがONにセットされていないと判断された場合、次のステップ1806へ進み、記録動作を開始する。
本実施形態では、受信した記録データを記録する際に1plノズルを使用しない記録モードである場合、チャージ吸引フラグがONであっても、チャージ吸引を実行せずに記録動作を開始する。これにより、使用しない1plノズルについて不必要な吸引動作を行うことがなく、ユーザーの待ち時間及び廃インク量を低減することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
上記実施形態では、次回の記録動作に係る記録命令を受けた後に、チャージ吸引フラグのON/OFFを判断し、その判断結果に応じてチャージ吸引を実行していた。本実施形態では、ユーザーの1plノズルの使用頻度(使用率)をこれまでの記録動作から学習(フィードバック制御)する。そして、次回の記録動作において1plノズルが使用される可能性が高い場合には、今回の記録動作の実行後に、チャージ吸引フラグがONであればチャージ吸引を実行する構成について説明する。
図19は、本実施形態に係る小ノズルの使用率を算出するための学習制御を説明するフローチャートである。本実施形態では、印刷ジョブ数をカウントし、印刷ジョブ数に基づいて1plノズルの使用率を算出する。ステップ1901において1ページ分の記録動作が終了した後、ステップ1902において印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していない場合、印刷ジョブが終了するまで、次ページの記録を継続する。印刷ジョブが終了した場合、ステップ1903において累積の印刷ジョブ数(累積ジョブ数)Mに1を加算する。次に、ステップ1904において今回の印刷ジョブで1plノズルを使用したか否かを判断する。ここで1plノズルを使用していた場合は、1plノズル使用ジョブ数Mpに1を加算する。1plノズルを使用したか否かの判別方法は、第1実施形態と同様である。本処理で計算された累積ジョブ数M、及び1plノズル使用ジョブ数Mpは、RAM702に展開され、ソフトOFF時に不揮発性メモリ704に記憶される。そして、次のソフトON時に、累積ジョブ数M、及び1plノズル使用ジョブ数Mpは共に不揮発性メモリ704から呼び出され、RAM702に展開される。
図20は、本実施形態に係る小ノズルの使用率によって記録動作後にチャージ吸引制御を実行するか否かを判断するスタンバイ制御を示すフローチャートである。このスタンバイ制御は記録動作の終了後に実行されるため、この制御が実行されたときにはキャップ26と記録ヘッド102は離間した状態にある。まずステップ2001でタイマーカウントを開始し、ステップ2002で60秒を経過したか否かを判断する。60秒を経過していない場合はタイマーカウントを継続する。60秒を経過した場合は、ステップ2003へ進み、チャージ吸引フラグがONであるか否かを判断する。チャージ吸引フラグがONである場合は、ステップ2004へ進む。ステップ2004では、累積ジョブ数Mが100(閾値)以上であるか否かを判断する。これはユーザーの使用傾向が統計的に判断できるサンプル数以上であるか否かを確認するものである。累積ジョブ数Mが100以上である場合、ステップ2006へ進む。ステップ2006では、1plノズル使用ジョブ数Mpと累積ジョブ数Mとの比率(1plノズル使用率)が40%以上であるか否かを判断する。1plノズル使用率が40%以上である場合、次回の記録動作において1plノズルを使用する可能性が高いと予測されるため、ステップ2007でチャージ吸引制御によるチャージ吸引を実行する。ステップ2004で累積ジョブ数Mが100未満であると判断された場合は、ユーザーの使用傾向を統計的に判断するのにまだ十分なサンプル数ではないため、ここではチャージ吸引は実行しない。また、ステップ2005で1plノズル使用率が40%未満であると判断された場合、次回の記録動作において1plノズルを使用する可能性が低いと予測されるため、ここではチャージ吸引は実行しない。次に、ステップ2007でキャップクローズ動作を実行する。
図21は、本実施形態に係るキャップクローズ動作を示すフローチャートである。まず、ステップ2101で不図示のワイパーブレードにより記録ヘッド102のノズル形成面をワイピングする。次に、ワイピングによって増粘インクがノズル内に押しこまれるおそれがあるため、ステップ2102で予備吐出を行い増粘インクを排出する。さらに、キャップ26から廃インク吸収体に至る経路のインクを排出するために、ステップ2103でポンプ25の回転を開始し、2104ではポンプ25の回転を停止する。最後に、ノズルからのインクの水分蒸発を抑制するために、ステップ2105で記録ヘッド102の吐出口形成面をキャップ26で覆う(キャッピング)。
次に、図22を用いて本実施形態における本発明の効果について説明する。図22(A)に示すように、記録媒体として普通紙のみを使用するユーザーの場合、普通紙に対する記録動作を開始する前に通常吸引のみを実行し、チャージ吸引は実行しない。また図22(D)に示すように、記録媒体としてフォト紙(写真用紙)のみを使用するユーザーの場合、フォト紙に対する記録動作を開始する前に通常吸引とチャージ吸引の双方を実行する。また図22(B)に示すように、普通紙とフォトを共に使用するが、普通紙の使用率が高いユーザーの場合、普通紙に対する記録動作を開始する前に通常吸引を実行し、フォト紙に対する記録動作を開始する前にチャージ吸引を実行する。これに対して、図22(C)に示すように、普通紙とフォトを共に使用するが、フォト紙の使用率が高いユーザーの場合、普通紙に対する記録動作を開始する前に通常吸引を実行し、普通紙に対する記録動作が完了した後にチャージ吸引を実行する。これにより、次回のフォト紙に対する記録動作を開始する前にチャージ吸引を実行する必要がなく、記録動作の開始前のユーザーの待ち時間を低減することができる。
なお、本実施形態では、1plノズルの使用頻度(使用率)に基づいてチャージ吸引を実行する構成とした。しかし、本発明はこれに限定されず、過去の1plノズルを使用した記録動作を行った履歴情報に基づいてチャージ吸引を実行するものであれば、他の構成を採用しても良い。例えば、1plノズルを使用した記録動作を含む印刷ジョブ数や、1plノズルを使用した記録動作を行った印刷ページ数(枚数)に基づいてチャージ吸引を実行する構成としても良い。また、本実施形態では過去のすべての期間についての履歴情報を参照しているが、過去の任意の所定期間内における履歴情報を参照する構成としても良い。