JP6958602B2 - ガンマブチロラクトン組成物及びその製造方法 - Google Patents

ガンマブチロラクトン組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はガンマブチロラクトン(以下「GBL」と記すことがある。)組成物及びその製造方法に関し、詳しくはGBLを溶剤や他の製品の原材料として用いた場合に、溶質と反応したり、変質させたりせず、また副反応等を起こしにくい、安定性に優れたGBL組成物及びその製造方法に関する。
GBLは工業用溶剤や洗浄剤、高分子化学品の反応中間体として有用であり、また電子材料製造時の溶剤や電解液として広く用いられているN−メチルピロリドン(以下「NMP」と記すことがある。)や水溶性高分子として用途の広いポリビニルピロリドンの原料としても用いられている。
GBLは工業的には無水マレイン酸またはこれを部分水素化した無水コハク酸の水素化反応や、1,4−ブタンジオールの脱水素反応等によって製造されている。例えば、ルテニウム系触媒存在下、無水コハク酸等のコハク酸誘導体を水素化してGBLを得る方法や1,4−ブタンジオールの脱水素反応によってGBLを得る方法が知られている(特許文献1及び特許文献4)。
しかしながら、従来のGBLの製造方法ではGBL中のコハク酸、マレイン酸、酪酸、ガンマヒドロキシ酪酸、プロピオン酸等の有機酸類等の酸成分の除去が困難であったため、高純度で溶剤として中性であるGBLが要求されるような用途への適用には限界があった。
このような酸成分を除くため、GBLにアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を添加して熱処理した上で蒸留する方法が提案されている(特許文献2)。また、同じ目的で粗5−アルキル−γ−ブチロラクトンにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩を接触させて、副生する酸成分を除去する方法も開示されている(特許文献3)。
日本国特開昭64−25771号公報 日本国特公平7−42279号公報 日本国特開2006−143675号公報 日本国特開2013−60428号公報
しかしながら上記方法では精製プロセスが煩雑となり、また添加するアルカリ土類金属の酸化物または水酸化物によってGBLの一部が分解してしまう場合などがあった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の課題は、GBLの酸性度が高いことに起因した使用時における目的外の反応の生起を防止できる、高純度のGBLを提供することである。本発明により、酸性度の低い高純度GBL組成物とその工業的に有利な製造方法が提供される。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、高純度のGBL組成物中に一定範囲内の濃度の含窒素化合物を存在させることで、GBLの酸価を低く保持できることを見出し、本発明を完成した。また、GBL組成物を製造する際に、含窒素化合物を含むコハク酸及び/又はその誘導体を水素化し、蒸留及び陽イオン交換樹脂によって精製することにより、上記の所定量の含窒素化合物を含む酸価が低いGBLを製造できることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[9]に存する。
[1]ガンマブチロラクトン及び含窒素化合物を含有するガンマブチロラクトン組成物であって、
前記ガンマブチロラクトンの含有量が99.0質量%以上であり、前記含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で0.1質量ppm〜1000質量ppmであることを特徴とするガンマブチロラクトン組成物。
[2]酸価が10mg−KOH/g以下であることを特徴とする前記[1]に記載のガンマブチロラクトン組成物。
[3]酸価が0.05〜0.9mg−KOH/gであることを特徴とする前記[1]に記載のガンマブチロラクトン組成物。
[4]酸価が0.05〜0.5mg−KOH/gであることを特徴とする前記[1]に記載のガンマブチロラクトン組成物。
[5]前記含窒素化合物の常圧での沸点と前記ガンマブチロラクトンの常圧での沸点の差が50℃以内であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1に記載のガンマブチロラクトン組成物。
[6]前記含窒素化合物の分子量が1000以下であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか1に記載のガンマブチロラクトン組成物。
[7]前記含窒素化合物が一般式(1)で表される化合物である、前記[1]〜[6]のいずれか1に記載のガンマブチロラクトン組成物。
Figure 0006958602
(式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニル基、又はアリールカルボニル基を表し、R〜Rは更に置換基を有していてもよく、前記置換基にはヘテロ原子が含まれていてもよい。また前記R〜Rから選ばれる2つの基が相互に結合して環を形成していてもよい。但し、前記R〜Rの炭素原子数の合計は1以上50以下である。)
[8]前記含窒素化合物が2−ピロリドン及びN−メチルピロリドンの少なくともいずれか一方であることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれか1に記載のガンマブチロラクトン組成物。
[9]ガンマブチロラクトン及び含窒素化合物を含有し、前記ガンマブチロラクトンの含有量が99.0質量%以上であり、前記含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で0.1質量ppm〜1000質量ppmであるガンマブチロラクトン組成物を製造する方法であって、
前記含窒素化合物はコハク酸又はコハク酸誘導体由来の化合物であり、
下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするガンマブチロラクトンを製造する方法。
工程(1):コハク酸又はコハク酸誘導体を水素化反応して粗ガンマブチロラクトンを得る工程、
工程(2):前記粗ガンマブチロラクトンを蒸留して低沸点化合物及び高沸点化合物を留去する工程、
工程(3):前記工程(2)で得られたガンマブチロラクトンを陽イオン交換樹脂に流通して精製する工程。
本発明によれば、酸価が低く、保存安定性に優れた、溶媒として有用なGBL組成物とその工業的に有利な製造方法が提供できる。
図1は、本発明のGBLの製造プロセスの一例を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
ここで“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”とはそれぞれ同義である。
1.γ−ブチロラクトン(GBL)
本発明に係るGBL組成物は主成分であるGBLを99.0質量%以上含む。GBL組成物中のGBL含有量は99.2質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上がさらに好ましい。
GBL組成物は後述する含窒素化合物を含むことから、GBL含有量の上限は100質量%未満であり、好ましくは99.995質量%以下、より好ましくは99.990質量%以下である。
なお、本明細書においてGBL含有量はGBL組成物の純度と同義である。
1−1.GBL原料
本発明のGBL組成物の主成分であるGBLは、マレイン酸及び/又はマレイン酸誘導体の気相または液相接触水素化法、コハク酸及び/又はコハク酸誘導体の気相または液相接触水素化法、1,4−ブタンジオールの環化脱水素法、γ−ヒドロキシブチルアルデヒド、γ−ヒドロキシ酪酸の環化等の種々の方法で製造されるが、好ましい製造方法としては、無水マレイン酸及び/又はマレイン酸誘導体の気相または液相接触水素化法、コハク酸及び/又はコハク酸誘導体の気相または液相接触水素化法が挙げられ、特に後者が好ましい。
なお、「マレイン酸誘導体」は無水マレイン酸及び/又はマレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステルを包括的に意味する。また、「コハク酸誘導体」はコハク酸無水物及び/又はコハク酸エステルを意味し、コハク酸及び/又はコハク酸誘導体をまとめて「コハク酸類」と記載する。これらの原料は単独で又は混合物として用いられる。
コハク酸エステルとしては、炭素数1〜4の直鎖状アルキルエステルが好ましく、特にジカルボン酸ジメチルエステルやジカルボン酸ジエチルエステルが好ましい。また、GBL製造の原料として、コハク酸類の塩も使用することができ、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、中でもアンモニウム塩が好ましい。
1−2.コハク酸原料
本発明で使用するコハク酸類の製造方法としては、石油などの化石燃料を原料とする方法(以下、「石化法」と称することがある。)あるいはバイオマス資源から発酵工程を経て製造する方法(以下、「バイオ法」と称することがある。)が挙げられ、中でもバイオ法で製造されたコハク酸類が好適に用いられる。バイオ法で製造されたコハク酸類は含窒素化合物を含み、GBLの製造及び精製工程において、系内の前記含窒素化合物の濃度を制御することで比較的容易に本発明に規定するGBL組成物を得ることができる。
石化法によるコハク酸の製造方法としては、例えば、石油を蒸留及び/又は抽出によって分留したものや、接触分解(例えば、流動接触分解、熱分解または水素化分解など)により処理された炭化水素分解物を原料とする方法がある。工業的なコハク酸原料としてはC4留分、C5留分、及びC6留分が挙げられ、これらのコハク酸原料から、直接コハク酸類を製造したり、中間体を経由してコハク酸類を製造したりすることができる。具体的には、ベンゼンやブタンを酸化して無水マレイン酸やマレイン酸エステルを製造した上で、これらを水素化してコハク酸類を製造する方法が例示できる。
バイオ法によるコハク酸製造方法において、好適に用いることができるバイオマス資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物由来の資源(植物資源);水産物残渣、家畜排泄物等の動物由来の資源;下水汚泥、食品廃棄物等の混合資源が挙げられ、中でも植物資源が好ましい。また植物資源の中でも、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣が好ましく、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシが特に好ましい。
上記のようなバイオマス資源から誘導される炭素源としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類;酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の脂肪酸;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が挙げられ、これらの中でも、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類が好ましく、これらのうちグルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セルロースがより好ましい。
上記の各種炭素源から、例えばコリネ型細菌、バチルス属細菌、リゾビウム属細菌、マイコバクテリウム属細菌等を用いた微生物変換による発酵法でコハク酸類を得ることができる。このような微生物としては、コリネ型細菌が好ましい。
発酵法による微生物変換の際の反応温度や圧力その他の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存し、目的に応じて適宜選択すればよい。
上記の方法で得られたコハク酸類にはバイオマス中に存在したり、発酵工程で混入したり、又はコハク酸類の精製工程で除去出来ずに残留したりした含窒素化合物が含まれることがあり、これらの含窒素化合物は、そのまま本発明の含窒素化合物として使用できる。また、含窒素化合物の含有量を調節する方法としては、蒸留、ろ過、晶析などの一般的な精製方法が適用できる。
1−3.高純度GBL
上記のような方法で粗GBLが得られる。前記粗GBLにはGBL以外にテトラヒドロフラン、中間生成物である無水コハク酸やコハク酸、あるいは反応副生物のプロパノール、ブタノール等のアルコール類、プロピオン酸、酪酸、エナント酸等の有機酸類およびこれらのエステル類、高沸物、生成水等が含有されている。
本発明にかかるGBL組成物におけるGBLを得るためには、このような粗GBLから、GBLよりも低沸点を有する成分(低沸点成分、低沸点化合物)を予め除去する必要がある。
低沸点成分の除去方法としては、蒸留法が一般的であるが、例えば二塔方式の蒸留塔を用い、第一塔において低沸点成分を留去し、次いで第二塔において製品GBLを留出させて取得する方法、もしくは一塔式の蒸留塔を用い、低沸点成分を留去すると同時に側流から製品GBLを取得しつつ高沸点物(高沸点成分、高沸点化合物)を缶出物として分離する方法等が用いられる。このような一般的な方法で純度99.0%以上の精製GBLを得ることができるが、このような高純度のGBLでも酸価は通常10mg−KOH/g以上である。
1−4.含窒素化合物の種類と濃度
本発明のGBL組成物中には含窒素化合物が、その合計含有量として窒素原子換算で0.1質量ppm〜1000質量ppm含まれる。本発明GBL組成物中には、この含窒素化合物が1種類のみ含まれていても2種類以上の含窒素化合物が混合物として含まれていても構わない。
本発明のGBL組成物中に含まれる含窒素化合物は、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される化合物、イミン化合物又はニトリル化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0006958602
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニル基、又はアリールカルボニル基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよく、該置換基中にはヘテロ原子が含まれていても良い。R〜Rから選ばれる2つの基が相互に結合して環を形成していてもよい。但し、R〜Rの炭素原子数の合計は1以上50以下である。)
イミン化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
C=N−R (2)
(式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立して、前記式(1)中のR〜Rとそれぞれ同義である。)
これらの中でも、一般式(2)で表される化合物は、ピリジン環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、またはピラジン環を有する化合物であることが好ましい。
ニトリル化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
−C≡N (3)
(式(3)中、Rは前記式(1)中のRと同義である。)
1−4−1.一般式(1)〜一般式(3)における置換基(R〜R
置換基(R〜R)におけるアルキル基とは、鎖状(直鎖又は分岐)アルキル基又は環状アルキル基である。
鎖状アルキル基の場合は、通常、その炭素原子数は1〜20であり、1〜12であるのが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。
環状アルキル基の場合の炭素原子数は、通常3〜20であり、好ましくは4〜11である。具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、リン酸基、ホスホノ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、スルフィド基などが挙げられ、その式量は通常200程度以下のものが用いられる。
置換基(R〜R)におけるアルケニル基とは、鎖状(直鎖又は分岐)アルケニル基又は環状アルケニル基である。
鎖状アルケニル基の場合は、通常、その炭素原子数は2〜20であり、好ましくは2〜12である。具体例としては、エテニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等などが挙げられる。
環状アルキル基の場合の炭素原子数は通常3〜20であり、好ましくは4〜11であり、具体例としては、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルケニル基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基において例示した置換基と同様のものが、本発明の効果を著しく阻害しない限り用いることができる。
置換基(R〜R)におけるアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、メシチル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、チオフェニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、ピロリル基、ピラニル基、フリル基、フラザニル基、イミダゾリジニル基、イソキノリル基、イソインドリル基、インドリル基、キノリル基、ピリドチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾフラニル基、イミダゾピリジニル基、トリアゾピリジニル基、プリニル基等が挙げられ、その炭素数は通常5〜20、好ましくは5〜12であり、これら基には酸素原子、窒素原子、イオウ原子等を含有するヘテロアリール基を含む。
アリール基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しない限り特に限定されないが、例えば炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、炭素数7〜12のアルキルアリール基、炭素数7〜12のアルキルアリーロキシ基、炭素数7〜12のアリールアルキル基、炭素数7〜12のアリールアルコキシ基、ヒドロキシ基などが挙げられる。また、この置換基中に酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子などのヘテロ原子が含まれていてもよい。
置換基(R〜R)におけるアルコキシ基のアルキル基部分の炭素原子数は、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基において例示した置換基と同様のものが、本発明の効果を著しく阻害しない限り用いることができる。
置換基(R〜R)におけるアミノ基としては、通常、炭素原子数0〜20であり、好ましくは0〜12である。その具体例としては、アミノ基(−NH)、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基などが挙げられる。アミノ基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基において例示した置換基と同様のものが、本発明の効果を著しく阻害しない限り用いることができる。
置換基(R〜R)におけるアルキルチオ基のアルキル基部分の炭素原子数は、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基などが挙げられる。アルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基において例示した置換基と同様のものが、本発明の効果を著しく阻害しない限り用いることができる。
置換基(R〜R)におけるアリールチオ基のアリール基部分の炭素原子数は、通常6〜20であり、好ましくは6〜12である。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、トリルチオ基などが挙げられる。アリールチオ基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基において例示した置換基と同様のものが、本発明の効果を著しく阻害しない限り用いることができる。
置換基(R〜R)におけるアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基のアルキル基部分又はアリール基部分の炭素原子数は通常、0〜20であり、好ましくは0〜12である。なお、置換基(R〜R)の少なくとも1の置換基がアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基である場合、式(1)で表される化合物は全体として、アルキルアミド又はアリールアミドになる。以下、前記アルキルアミド又はアリールアミドをアミド化合物として説明を行う。
アミド化合物中のアミド基は一般的に共鳴構造を有し、窒素原子上の不対電子は隣接するカルボニル基によって非局在化するので、アミド類は一般的に塩基性が弱く、GBLと共存していても副反応を起こしにくい。
なお、上記窒素原子の置換基(R〜R)として、2個のアルキルカルボニル基及び/又はアリールカルボニル基を有する場合、式(1)で表される化合物はイミド化合物となるが、本明細書におけるアミド化合物にはイミド化合物も含む。
アミド化合物及びイミド化合物の場合、式(1)の窒素原子に結合する置換基のうち、アルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基以外の置換基の数は1又は2となるが、当該1又は2の置換基は、上記R〜Rに用いられるものが特に制限なく用いられる。好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基である。
1−4−2.含窒素化合物
上記含窒素化合物の分子量は、特に限定されないが、1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超えて大きいものは、GBLとの相溶性が低くなる傾向があり、保管中に分離したり、低温になると析出したりする可能性がある。より好ましい分子量は、500以下、更に好ましくは300以下である。
このような分子量範囲とすることで、窒素含有量の調整も容易となり、また保管中の安定性も良好となる。分子量は例えばガスクロマトグラフ分子量計等で測定する事が出来る。
含窒素化合物のうち、上記式(1)で表される含窒素化合物の具体例としては、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、1−アミノデカン、アニリン、フェネチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、N−メチルアニリン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジシクロヘキシルアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N−ブチルピロール、N−ブチル−2,3−ジヒドロピロール、N−ブチルピロリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,3−ジヒドロ−1H−インドール、4−アミノメチルピペリジン、4−アミノ−5,6−ジヒドロ−2−メチルピリミジン、2,3,5,6−テトラメチルピラジン、3,6−ジメチルピリダジン、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、コハク酸モノアミド、コハク酸ジアミド等の鎖状骨格のアミド類;ベンズアミド等の芳香族アミド類;2−ピロリドン(以下、「2P」と記すことがある。)、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、2−ピペリドン、N−メチルピペリドン等の環状アミド類;コハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド等のイミド類が挙げられる。
これらの中でも好ましい化合物は、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、N−ブチル−2,3−ジヒドロピロール等の第2級アミン又は第3級アミン;及びコハク酸ジアミド、コハク酸モノアミド、アセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、コハク酸イミド、N−メチルコハク酸イミド等のアミド類である。これらの中でも2−ピロリドン、N−メチルピロリドンが好ましく、特に好ましくはN−メチルピロリドンである。
含窒素化合物のうち、上記式(2)で表される含窒素化合物の具体例としては、例えば、イミダゾール、オキサゾール、エチルイソシアネート、ピリジン、ピラゾール、ピリミジン、1−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、プロピルイソシアネート、メチルピリジン、メチルピリミジン、メチルピラジン、2,3,5,6−テトラメチルピラジン、3,6−ジメチルピリダジン、テトラメチルピラゾール、3,6−ジメチルピリダジン等が挙げられる。
含窒素化合物のうち、上記式(3)で表される含窒素化合物の具体例としては、例えば、アセトニトリル、アクリロニトリル、プロピオニトリル、グリコロニトリル、ブチロニトリル、シアノブタジエン、スクシノニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
本発明のGBL組成物中に含まれる含窒素化合物の沸点は特に限定されないが、GBL組成物中に含まれる少なくとも1つの含窒素化合物の常圧での沸点とGBLの常圧での沸点との差が好ましくは50℃以内、より好ましくは30℃以内である。
同様にGBL組成物中に含まれる少なくとも1つの含窒素化合物とGBLとの、200℃、常圧下での相対揮発度が10以下であることが好ましく、より好ましくは5以下である。
含窒素化合物とGBLとの沸点差及び/又は相対揮発度を上記範囲内とすることで、GBL組成物を主用途である溶媒や電解液等として用いた際にも、組成物中の含窒素化合物の蒸発ロスを少なくでき、GBL組成物の酸性度が高くなることによる副反応の発生を抑制できるとともに、GBL組成物使用後の留去の際の含窒素化合物の残留も少なくでき、後工程への悪影響も抑えられる。
代表的な含窒素化合物の常圧での沸点を表1に示す。また、代表的な含窒素化合物とガンマブチロラクトンとの200℃、常圧下における相対揮発度を表2に示す。
Figure 0006958602
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1−5.含窒素化合物の効果
本発明における含窒素化合物のGBL組成物に対する合計含有量(濃度)は、窒素原子換算で0.1質量ppm〜1000質量ppmである。このような比率で含窒素化合物をGBL組成物に含有させることで、安定なGBL組成物を得ることができる。その理由は明らかではないが、次のように推定される。
即ち、含窒素化合物はGBL組成物中のコハク酸やガンマヒドロキシ酪酸等の酸性不純物を中和するが、本発明のGBL組成物に用いられる含窒素化合物は本願所定の濃度範囲である0.1質量ppm〜1000質量ppmであれば化学的に安定であり、GBL組成物中の成分と反応しにくい。また、本発明に用いる含窒素化合物は中性〜弱塩基性であり、本願所定の濃度範囲である0.1質量ppm〜1000質量ppmであれば、例えば金属水酸化物などの強塩基と比較してGBLを変質・劣化させることがなく、GBL組成物の安定性に悪影響を及ぼすこともない。
GBL組成物中の含窒素化合物の合計濃度が窒素原子換算で1000質量ppmを超えて高くなると、GBL組成物が塩基性を示すようになりGBLが分解しやすくなり、着色を生じる不純物を生成しやすくなる。なお、着色具合は吸光度により判断できるが、当該吸光度は分光光度計を使用して測定する事ができる。
着色はカルボニル化合物の生成や不飽和結合、GBLや含窒素化合物の重合により起こる。含窒素化合物の濃度が本願所定の濃度より多く含まれると、このようなカルボニルや不飽和結合の形成や重合が顕著に促進される傾向にある。一般的に高純度のGBL組成物は250nmよりも大きい波長領域では吸光はほとんどないが、前述のカルボニル化合物や不飽和結合形成、重合などが起こると250nmより大きい波長領域、特に260nmでの吸光が増加する傾向にある。
また、含窒素化合物の合計濃度が窒素原子換算で0.1質量ppm未満のように低いと、例えばコハク酸、酪酸、プロピオン酸などのGBL組成物中の酸性成分を中和する効果が十分得られないことがある。また、誘電率が高くGBL組成物中で電気キャリアとしての能力を持つ含窒素化合物が極端に少ない事によって電気伝導度が低くなってしまうことがある。GBL組成物中の含窒素化合物の濃度を本発明の範囲とすることで、ほぼ中性で、酸価が低く、かつGBLが分解しにくい、溶媒や化学品の原材料、電解液等として有用なGBL組成物が提供できる。
1−6.GBL組成物中の含窒素化合物の含有量の制御方法
上述の通り、GBL組成物中の含窒素化合物の窒素原子換算の含有量(以下「窒素原子含有量」と略記することがある。)は0.1質量ppm以上、1000質量ppm以下であり、好ましくは0.2質量ppm以上、500質量ppm以下であり、より好ましくは0.5質量ppm以上、100質量ppm以下である。
GBL組成物中の窒素原子含有量はガスクロマトグラフィーや、これと質量分析計と組み合わせたGC−MS分析計、あるいは燃焼・化学減圧発光法を用いた窒素量分析計等を用いて測定することができる。
GBL組成物中の窒素原子含有量を制御する方法は特に限定されないが、原料コハク酸類の精製及び/又は粗GBLを精製する工程で窒素原子含有量を制御することが好ましく、中でも、粗GBLを精製する工程で窒素原子含有量を制御することが好ましい。
GBL組成物中の窒素原子含有量が本発明の範囲を上回る場合は、例えば、窒素原子含有量が低いコハク酸類原料や含窒素化合物を全く含まないコハク酸類原料を混合する方法、蒸留等によって含窒素化合物を分離・除去する方法、陽イオン交換樹脂により吸着・分離する方法、あるいは含窒素化合物の含有量が少ないGBL組成物で希釈する方法等により本発明における濃度に制御することができる。
また、GBL組成物中の窒素原子含有量が本願の範囲を下回る場合は、例えば、窒素原子含有量が高いコハク酸類原料を使用する方法、GBL製造プロセス中に含窒素化合物を添加する方法、蒸留や陽イオン交換樹脂処理による粗GBLの精製工程における含窒素化合物の排出割合を少なくする方法、あるいは精製したGBL組成物中に直接含窒素化合物を添加する方法等を用いればよい。
1−7.酸価
本発明のGBL組成物は酸価が低いことが特徴の1つである。酸価は、JIS K0070−1992にあるような、水酸化カリウム水溶液等を用いた中和滴定法で測定できる。
本発明のGBL組成物中の酸価は、通常10mg−KOH/g以下であり、好ましくは0.05〜0.9mg−KOH/g、より好ましくは0.05〜0.5mg−KOH/gである。酸価が高すぎる場合は、GBL組成物の反応性が増大し、目的外の反応を進行させたり、GBLが分解及び/又は重合する場合があるため着色する等の傾向にある。また、酸価の下限値に特に規定はないが、GBL組成物中の酸価を過度に低くしようとすると、精製工程が煩雑になったり、塩基性成分の添加量が増加してGBLが分解及び/又は重合する傾向にある。
また、GBL組成物の酸価を本発明所定の範囲とする事で良好な電気伝導性が得られるため、電解液など、電気伝導性と電気伝導帯の化学的安定性が求められる用途において、本発明のGBL組成物は特に有用である。
2.GBL製造プロセス
本発明のGBL組成物は、前述の通り、コハク酸類の水素化によって好適に製造できる。すなわち、本発明にかかるガンマブチロラクトン組成物を製造する方法は下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする。また、当該製造方法により得られるガンマブチロラクトン組成物はガンマブチロラクトン及び含窒素化合物を含有し、前記ガンマブチロラクトンの含有量が99.0質量%以上であり、前記含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で0.1質量ppm〜1000質量ppmであり、前記含窒素化合物はコハク酸又はコハク酸誘導体由来の化合物である。
工程(1):コハク酸又はコハク酸誘導体を水素化反応して粗ガンマブチロラクトンを得る工程、
工程(2):前記粗ガンマブチロラクトンを蒸留して低沸点化合物及び高沸点化合物を留去する工程、
工程(3):前記工程(2)で得られたガンマブチロラクトンを陽イオン交換樹脂に流通して精製する工程。
以下、この方法について簡単に説明する。
2−1.コハク酸類の精製
GBL組成物の原料であるGBLの製造に使用するコハク酸類は石化法、バイオ法のいずれの方法で製造されたコハク酸類であってもよく、それぞれを単独で使用しても混合して用いてもよい。
これらの原料コハク酸類の純度は、反応効率の点から高い方が好ましいので、粗生成物からなんらかの精製を行った上で、反応に供するのがよい。
石化法、バイオ法のいずれの方法で得られた粗製コハク酸類も、常法に従って反応液から分離・精製することができる。
但しバイオ法においては通常多種多様の副生成物を伴うことが多いので、培養液を遠心分離、ろ過等することにより菌体等の固形物を除去した後、イオン交換樹脂等で脱塩し、得られた溶液から晶析法またはカラムクロマトグラフィー法により純度を高めたコハク酸類を得ることができる。
2−2.コハク酸類の水素化反応
2−2−1.触媒
コハク酸類の水素化反応に用いることができる水素化触媒としては、周期律表の第8〜11族に属する遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を含むものが好ましい。第8〜11族遷移金属としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金などが挙げられ、触媒活性の面でルテニウム、銅、パラジウムが好ましく、特に触媒活性が高い銅、ルテニウムが好ましい。触媒の形態としては、固体触媒でも錯体触媒でもよいが、より高品質のGBL組成物を得るためには錯体触媒の方が好ましい。
2−2−2.固体触媒
固体触媒としては、上記の金属を含む化合物をそのまま使用してもよく、また金属を担体に担持させて用いてもよい。
担体を使用する場合、担体としては、炭素、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、チタニア、チタニア−アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムが好ましく、これらを組み合わせたものでもよい。担体の形状は、粉末、顆粒、ペレットなど、特に限定されない。担体を使用することで、原料コハク酸類中の臭気成分・着色成分や有機不純物を同時に吸着除去できて効率的であり好ましい。金属の担持量は、通常、担体の0.1〜10重量%である。
このような担持触媒は、金属成分として酸化銅、パラジウム、プラチナ、イリジウム、ロジウム、ニッケル、レニウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用し、担体としてアルミナ、シリカ、炭素、チタニアを、各金属成分と任意に組み合わせたものを、使用条件や強度を考慮して選定すればよい。
好ましい担持触媒としては、例えば、アルミナ担持酸化銅、シリカ担持酸化銅、炭素担持ルテニウム、アルミナ担持ルテニウム、炭素担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、チタニア担持パラジウム、炭素担持プラチナ、アルミナ担持プラチナ、炭素担持ロジウム、及びアルミナ担持ロジウム等が挙げられる。
2−2−3.錯体触媒
錯体触媒は、触媒金属とこれに配位する配位子から形成される。
以下、錯体触媒として金属成分としてルテニウムを用いた錯体触媒を例として説明する。
金属成分の原料としては、金属ルテニウム及びルテニウム化合物のいずれもが使用できる。
ルテニウム化合物としては酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩あるいは錯化合物等を用いることができ、例えば二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、二水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、沃化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム等のルテニウム酸化物、ルテニウム水酸化物やルテニウム塩類;ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム、テトラカルボニルルテニウム酸ジカリウム、オクタデカカルボニルヘキサルテニウム酸ジセシウム、ウンデカカルボニルヒドリドトリルテニウム酸テトラフェニルホスフォニウム等のルテニウム酸の塩類;ペンタカルボニルルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、シクロペンタジエニルジカルボニルルテニウム、ジブロモトリカルボニルルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム、テトラ(トリフェニルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、テトラ(トリメチルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)トリカルボニルルテニウム、テトラヒドリドドデカカルボニルテトラルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム等のルテニウム錯体等が挙げられ、中でも純度が高いものを容易に入手できる塩化ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、酢酸ルテニウムが好ましく用いられる。
コハク酸類の水素化に用いるルテニウム錯体触媒の配位子としては、リン配位子が好ましい。リン配位子としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のアリール基を有するものも使用することができるが、トリアルキルホスフィン、中でもリン原子が1級アルキル基と結合したトリアルキルホスフィン又はその分解物が好ましい。このアルキル基は他の置換基を有していてもよい。
このようなトリアルキルホスフィンのアルキル基の炭素数は、1〜12程度が好ましく、また3つのアルキル基は全て同一である必要はなく、その全てが同じでも異なっていてもよく、またその2つが同じで1つが異なっていても構わない。
配位子を形成するホスフィンの例としては、トリデカニルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、ジメチルペンチルホスフィン、ジペンチルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,1,2,2−ジメチルホスフィノエタン、1,1,2,2−ジメチルホスフィノプロパン、1,1,2,2−ジメチルホスフィノブタン、1,1,2,2−ジオクチルホスフィノエタン、1,1,2,2−ジオクチルホスフィノプロパン、1,1,2,2−ジオクチルホスフィノブタン、1,1,2,2−ジヘキシルホスフィノエタン、1,1,2,2−ジヘキシルホスフィノプロパン、1,1,2,2−ジヘキシルホスフィノブタン、1,1,2,2−ジブチルホスフィノエタン、1,1,2,2−ジブチルホスフィノプロパン、1,1,2,2−ジブチルホスフィノブタン、1,1−ジホスフィナン、1,4−ジメチル−1,4−ジホスファン、1,3−ジメチルホスフォリナン、1,4−ジメチルホスフォリナン、8−メチル−8−ホスフィノビシクロオクタン、4−メチル−4−ホスファテトラシクロオクタン、1−メチルホスフォラン、1−メチルホスフォナン等のホスフィン類が挙げられ、その形状も、単座配位子、複座配位子、環状配位子のいずれも用いられる。
また、リン配位子としては前記のホスフィンのみならず、例えば、ホスファイト、ホスフィネート、ホスフィンオキシド、アミノホスフィン、ホスフィン酸なども使用できる。
これらリン配位子の使用量は、ルテニウム金属1モルに対して、0.1〜1000モル、好ましくは1〜100モルの範囲である。
また、上記コハク酸水素化用のルテニウム錯体触媒はpKaが2より小さい酸の共役塩基を用いて、カチオン性錯体の形で反応に用いることが、活性の向上、触媒の安定化など複数の点において好ましい。
pKaが2よりも小さい酸の共役塩基としては、触媒調整時または反応系中においてこのような共役塩基を形成するものであればよく、例えばpKaが2より小さいブレンステッド酸あるいはその各種の塩などが用いられる。
このような目的で用いることができる酸やその塩としては、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロスルホン酸等の無機酸類;トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ドデシルスルホン酸、オクタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素酸、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機酸等のブレンステッド酸;もしくはこれらの酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、銀塩等の塩が挙げられる。
また、上記の酸の共役塩基が反応系で生成すると考えられる酸誘導体の形で添加しても構わない。例えば酸ハロゲン化物、酸無水物、エステル、酸アミド等の形で反応系に添加しても同様の効果が期待される。
これらの酸あるいはその塩の使用量は、ルテニウム金属に対して1000モル以下、好ましくは100モル以下、より好ましくは10モル以下である。
2−2−4.溶媒
コハク酸類の水素化は、反応原料及び反応生成混合物を溶媒として実施できるが、種々の溶媒を、反応の目的や進行を阻害しない範囲で使用することもできる。
このような溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トルイル酸などのカルボン酸類;酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジルなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のカルボン酸アミド類;ヘキサメチルリン酸トリアミドその他のアミド類;N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホン等のスルホン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;カプロラクトン等のラクトン類;テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等が挙げられ、好ましくはエーテル類、ポリエーテル類、及びラクトン類である。
2−2−5.反応条件
コハク酸類の水素化反応は連続、回分のいずれの方式も用いることができる。反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃である。反応系内の水素分圧は特に限られないが、工業的には通常0.01〜10MPa・G(ゲージ圧)であり、好ましくは0.03〜5MPa・Gである。
反応生成液からは、蒸留、抽出等の通常の分離手段により目的生成物であるGBLが分離できる。
反応系内の水分含量は0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%である。水分が多すぎるとコハク酸類とその無水物との平衡がコハク酸類側に移るため、コハク酸類無水物濃度が低くなってGBLの生成速度が低下する傾向となる。一方、水分が少なすぎるとルテニウム触媒の対アニオンとなるコハク酸類濃度が低下し、触媒のカチオン性が低下するため、触媒の水素化反応活性が低下する傾向となる。
反応系から水分を除去する方法としては、ガスストリッピング法などを用いることができ、反応プロセスによっては蒸留による水分留去や、脱水剤を添加してもよい。ガスストリッピング用のガスとして水素を用いると、反応液中の水分の除去と同時にコハク酸類のGBL化も行うことができて効率的である。
2−3.粗GBLの精製
上記反応によって得られた粗GBLは、抽出、蒸留、晶析などの一般的な精製法を用いて、高純度の精製GBLを得ることができる。
以下、粗GBLの精製方法について概要を記すが、これらの工程の順序、回分式/連続式等の方式、あるいは個別の処理設備の形式等についても、本発明の趣旨を逸脱しない限り、以下の説明の記載によって限定されるものではない。
2−3−1.蒸留工程
反応液又は反応混合物からの目的生成物の分離・精製は、蒸留法を用いて常法により行うことができ、反応に用いた溶媒の種類によっては、減圧蒸留法を採用してもよい。
反応混合物中には、目的生成物であるGBL以外に、未反応のコハク酸類成分、触媒、溶媒等の高沸点成分(高沸点化合物)や、原料中の不純物や反応中に精製した副生成物などの低沸点成分(低沸点化合物)が含まれているので、これらを蒸留により分離する。また、粗GBL中の含窒素化合物も蒸留で分離することができるが、GBLと沸点の近い含窒素化合物の分離は通常困難である。
上記の蒸留は、段数の多い蒸留塔1基を用いて、GBLを蒸留塔の中段から抜き出す方法も可能であるが、通常は運転操作の安定性や蒸留塔の塔高その他の理由から、蒸留操作を複数基、好ましくは2基の蒸留塔で行うことが好ましい。以下、2基の蒸留塔を用いる場合を例として説明する。
(第1蒸留塔)
以下、図1のプロセスを例として精製工程について説明する。
図1において、反応器から取り出された反応混合物は、第1蒸留塔で、GBLよりも沸点が高い成分(高沸点化合物)である、未反応のコハク酸類、触媒、溶媒等が除去される。この高沸点成分に含まれる触媒、未反応のコハク酸類、溶媒等は、そのまま反応工程へ循環させても構わない。
第1蒸留塔の塔頂部から取り出されたGBLを含む成分は第2蒸留塔に供給される。
この第1蒸留塔の理論段数は、3段以上、100段以下であることが好ましく、より好ましくは5段以上、50段以下である。理論段数が少なすぎると目的生成物であるGBLの純度が低下する傾向にあり、理論段数が多すぎると、蒸留に必要な熱量が増大し、蒸留塔の塔高も高くなって経済的でなくなる。
還流比は目的とする精製GBLの純度に応じて調整できるが、通常0.01以上、100以下が好ましく、更に好ましくは0.1以上、50以下である。
塔頂圧は、絶対圧として1kPa以上、200kPa以下が好ましく、より好ましくは2kPa以上、100kPa以下、更に好ましくは5kPa以上、50kPa以下である。
塔底の温度は50℃以上、300℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以上、250℃以下、特に好ましくは120℃以上、230℃以下である。
塔頂圧が高すぎたり、塔底の温度が低すぎたりすると目的生成物であるGBLの留出が不十分となって収率が低下する傾向となり、逆に塔頂圧が低すぎたり、塔底の温度が高すぎたりすると、得られる精製GBLの純度が低下するだけでなく、水素化触媒の変性や未反応原料として含まれる糖類の分解・発熱が起こる可能性があるため、プロセスの安定性が低下することがある。
(第2蒸留塔)
上記の第1蒸留塔で得られた留出液はそのまま精製GBLとして製品化しても差し支えないが、図1に示すようにGBLよりも低沸点の成分(低沸点化合物)を除去する第2蒸留塔にて、更に精製することが好ましい。
第2蒸留塔からGBLを抜き出す部位に特に制限はないが、第2蒸留塔に供給される原料は、第1蒸留塔で高沸点成分を除去した粗GBLであるので、GBLを塔底から回収することが一般的である。
第2蒸留塔の理論段数も、特段の理由がない限り第1蒸留塔と同じ範囲で選定すればよい。また第2蒸留塔における還流比や操作圧力も同様である。
第2蒸留塔の塔底温度としては、20℃以上、250℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上、230℃以下、特に好ましくは80℃以上、200℃以下である。
なお、図1には示していないが、第2蒸留塔から回収したGBLをさらに蒸留しても構わない。
これらの蒸留塔における蒸留操作は回分式、連続式のいずれでもよいが、生産性の観点から連続蒸留が好ましい。蒸留の方式も、単蒸留でも多段蒸留でも構わないが、分離性能の観点から多段蒸留が好ましく、蒸留塔の形式としては、棚段塔あるいは規則及び/又は不規則充填物を充填した充填塔のいずれもが使用可能である。
2−3−2.陽イオン交換処理工程
第2蒸留塔で塔底から回収されたGBLはそのまま製品としても構わないが、得られたGBLを陽イオン交換樹脂を充填したカラムに流通してイオン類や塩基性の不純物を除去・精製することが好ましい。陽イオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂のいずれも用いることができ、またその形状もゲル型、ポーラス型のどちらでも構わない。イオン交換の効率の面からは、酸としての強度が強い強酸性カチオン交換樹脂が好ましい。
陽イオン交換樹脂による処理は反応生成液を対象としてもよいが、通常、蒸留等により触媒や未反応のコハク酸類や溶媒等を分離した後のGBL組成物を対象とすることが効率的であり、特にGBLと水とを分離した後のGBL組成物を処理するのが最も好ましい。
イオン交換樹脂による処理は回分式でも連続流通式でもよく、処理温度としては通常、0℃〜100℃、処理時間は数分〜数十時間行えばよく、処理圧力は絶対圧として10kPa〜1000kPaが一般的であるが、減圧下で行っても構わない。
処理速度は空間速度(SV)として0.1〜10時間−1程度が通常用いられる。空間速度が大きすぎるとカラム前後の圧力損失が大きくなったり、不純物が十分除去できない場合がある。一方、空間速度が小さすぎると、カラムが過度に大きくなったり、処理速度が遅くなる場合がある。
2−3−3.触媒循環工程
図1に示すように、本発明においては、第1蒸留塔から抜き出された触媒や未反応コハク酸類を含む触媒液を反応工程に循環することが好ましい。この循環液には、上記有効成分以外に、反応工程に悪影響を及ぼさない限り、溶媒その他の成分を含んでいてもよく、例えば、図1では第1蒸留塔でGBL及びその他の低沸点成分と分離された、未反応のコハク酸類を含む高沸点成分の少なくとも一部が反応工程へ循環されている。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例における「ppm」は、全て「質量ppm」を意味する。
1.原料
γ−ブチロラクトン(GBL):試薬特級(和光純薬工業(株)製)
2−ピロリドン(2P):試薬特級(和光純薬工業(株)製)
N−メチルピロリドン(NMP):試薬特級(和光純薬工業(株)製)
コハク酸ジアミド:試薬特級(和光純薬工業(株)製)
水酸化カリウム:試薬特級(和光純薬工業(株)製)
フマル酸(FMS):試薬特級(和光純薬工業(株)製)
水酸化ナトリウム(NaOH):試薬特級(和光純薬工業(株)製)
2.分析方法
[酸価]
GBLの酸価は以下の方法で測定した。
100mLビーカーに蒸留水60mLを入れ、スターラーで撹拌しながら窒素配管を液中に挿入して窒素を通気して脱気した。次いで、pH計((株)堀場製作所製F−74BW)を用いてpHを測定しながら、0.001mol/L アンモニア水溶液を滴下してpHを6.8〜7.0に調整した。
pHが安定したら窒素配管を取出し、測定対象のGBLサンプル10mLを加えてスターラーで撹拌しつつ0.02mol/L水酸化カリウム標準液で、pH7.0になるまで滴定した。酸価は以下の式を使用して算出した。f=1.026を使用した。
Figure 0006958602
V: 0.02mol/L水酸化カリウム標準液の滴定量(mL)
f: 0.02mol/L水酸化カリウム標準液のファクター
10: 試料採取量(mL)
1.130: GBLの比重(20/4℃)
1.122: 0.02mol/L水酸化カリウム標準液1mLの酸価相当量(g)
[吸光度分析]
試料を10mm石英セルに入れ、分光光度計(日立社製UV−2000型)にて波長450nmにおける吸光度を測定した。
[ガスクロマトグラフィー分析]
ガスクロマトグラフィー分析装置((株)島津製作所製GC−17A型)にて、Agilent社製DB−1カラム(無極性)を用い、GBLを分析した。
3.参考例
3−1.含窒素化合物の含有の効果
<参考例1>
GBL(純度99.95%以上)にNMPを1ppm添加した。このGBL組成物の酸
価を測定したところ、酸価は0.16mg−KOH/gであった。また、電気伝導度を測
定したところ、電気伝導度は0.36μS/cmであった。分析結果を表3に示した。
<参考例2〜4>
NMPの添加量をそれぞれ10ppm、100ppm、または1000ppmと変更し
たこと以外は、参考例1と同様にして酸価と電気伝導度を測定した。分析結果を表3に示
した。
<参考例5〜12>
NMPの代わりに2−ピロリドン(2P)又はコハク酸ジアミドを異なる濃度で添加し
た以外は参考例1と同様に操作した。分析結果を表3に併せて示した。
<比較例1>
GBL(純度99.95%以上、含窒素化合物0.1ppm−N未満)に何も添加せず
に酸価と電気伝導度を測定した。分析結果を表3に示した。
Figure 0006958602
参考例1〜12と比較例1との比較から、本発明のGBL組成物において、含窒素化合
物を特定量含むことにより、酸価が低く誘導され、電解液等として使用した場合の酸成分
による悪影響を抑制できることが期待できることが判る。また本発明のGBL組成物は電
気伝導度が高く、コンデンサ用電解液など産業上の利用価値が高いことが判る。
<参考例13及び14>
GBL(純度99.95%以上)にNMPを100ppmまたは1000ppm添加し
た溶液を、150℃で2時間撹拌して得られた溶液は僅かに黄色く着色していた。得られ
た溶液の260nmでの吸光度を測定した。分析結果を表4に示した。
<比較例2>
NMPの添加量を8000ppmと変更したこと以外は、参考例13と同様にして吸光
度を測定した。分析結果を表4に示した。
<参考例15及び16>
GBL(純度99.95%以上)にFMSを1000ppm、NMPを1ppmまたは
1000ppm添加した溶液を、150℃で2時間撹拌して得られた溶液は僅かに黄色く
着色していた。得られた溶液の260nmでの吸光度を測定した。分析結果を表4に示し
た。
<比較例3>
NMPの添加量を8000ppmと変更したこと以外は、参考例15と同様にして吸光
度を測定した。分析結果を表4に示した。
<参考例17及び18>
FMSの代わりにNaOHを100ppm添加したこと以外は参考例15及び16とそ
れぞれ同様にして吸光度を測定した。分析結果を表4に示した。
<比較例4>
NMPの添加量を8000ppmと変更したこと以外は、比較例3と同様にして吸光度
を測定した。分析結果を表4に示した。
<参考例19及び20>
GBL(純度99.95%以上)にコハク酸ジアミドを400ppmまたは2000p
pm添加した溶液を、150℃で2時間撹拌して得られた溶液は僅かに黄色く着色してい
た。得られた溶液の260nmでの吸光度を測定した。分析結果を表4に示した。
<比較例5>
コハク酸ジアミドの添加量を5000ppmと変更したこと以外は、参考例19と同様
にして吸光度を測定した。分析結果を表4に示した。
Figure 0006958602
参考例13〜20と比較例2〜5との比較から、本発明で規定する量より過剰の含窒素
化合物が含まれるGBL組成物は加熱によって色相が著しく悪化することが判る。色相が
著しく悪化するのは、含窒素化合物に起因する重合によるものである。
3−2.酸価の効果
<参考例21〜24>
GBL(純度99.95%以上)にNMPを1ppm添加し、さらにNaOHを100
ppm、1000ppm又はFMSを1000ppm、8000ppm添加した溶液を、
150℃で2時間撹拌して得られた溶液をガスクロマトグラフィー分析し、加熱後のGB
L減少量を算出した。分析結果を表5に示した。
<参考例25〜30>
GBL(純度99.95%以上)にNMPを50ppm添加し、さらにNaOHを10
ppm、100ppm、若しくは1000ppm又はFMSを100ppm、1000p
pm、若しくは8000ppm添加した溶液を、150℃で2時間撹拌して得られた溶液
をガスクロマトグラフィー分析し、加熱後のGBL減少量を算出した。分析結果を表5に
示した。
<参考例31〜34>
GBL(純度99.95%以上)にNMPを1000ppm添加し、さらにNaOHを
100ppm、若しくは1000ppm又はFMSを1000ppm、若しくは8000
ppm添加した溶液を、150℃で2時間撹拌して得られた溶液をガスクロマトグラフィ
ー分析し、加熱後のGBL減少量を算出した。分析結果を表5に示した。
Figure 0006958602
本発明において更に酸価を特定の範囲とすることにより更にGBL組成物の熱安定性が向上することが判る。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2014年2月17日出願の日本特許出願(特願2014−027766)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

Claims (5)

  1. ガンマブチロラクトン及び含窒素化合物(ただし、2−ピロリドン、N−メチルピロリ
    ドン及びコハク酸ジアミドを除く)を含有するガンマブチロラクトン組成物であって、
    酸価が0.05〜0.9mg−KOH/gであり、前記ガンマブチロラクトンの含有量
    が99.0質量%以上であり、前記含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で0.1質
    量ppm〜1000質量ppmであり、前記含窒素化合物が弱塩基性であり、かつ一般式
    (1)で表される化合物であることを特徴とするガンマブチロラクトン組成物。
    Figure 0006958602
    (式(1)中、R はアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基を表し、R 及び
    は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコ
    キシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、R 〜R
    は更に置換基を有していてもよく、前記置換基にはヘテロ原子が含まれていてもよい。ま
    た前記R 〜R から選ばれる2つの基が相互に結合して環を形成していてもよい。但し
    、前記R 〜R の炭素原子数の合計は1以上50以下である。)
  2. 酸価が0.05〜0.5mg−KOH/gであることを特徴とする請求項1に記載のガ
    ンマブチロラクトン組成物。
  3. 前記含窒素化合物の常圧での沸点と前記ガンマブチロラクトンの常圧での沸点の差が5
    0℃以内であることを特徴とする請求項1または2に記載のガンマブチロラクトン組成物
  4. 前記含窒素化合物の分子量が1000以下であることを特徴とする請求項1〜3のいず
    れか1項に記載のガンマブチロラクトン組成物。
  5. ガンマブチロラクトン及び含窒素化合物(ただし、2−ピロリドン、N−メチルピロリ
    ドン及びコハク酸ジアミドを除く)を含有し、酸価が0.05〜0.9mg−KOH/g
    であり、前記ガンマブチロラクトンの含有量が99.0質量%以上であり、前記含窒素化
    合物の合計含有量が窒素原子換算で0.1質量ppm〜1000質量ppmであるガンマ
    ブチロラクトン組成物を製造する方法であって、
    前記含窒素化合物はコハク酸又はコハク酸誘導体由来の化合物であり、弱塩基性であり
    かつ一般式(1)で表される化合物であり、
    下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするガンマブチロラクトン組成物を製造す
    る方法。
    工程(1):コハク酸又はコハク酸誘導体を水素化反応して粗ガンマブチロラクトンを得
    る工程、
    工程(2):前記粗ガンマブチロラクトンを蒸留して低沸点化合物及び高沸点化合物を留
    去する工程、
    工程(3):前記工程(2)で得られたガンマブチロラクトンを陽イオン交換樹脂に流通
    して精製する工程。
    Figure 0006958602
    (式(1)中、R はアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基を表し、R 及び
    は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコ
    キシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、R 〜R
    は更に置換基を有していてもよく、前記置換基にはヘテロ原子が含まれていてもよい。ま
    た前記R 〜R から選ばれる2つの基が相互に結合して環を形成していてもよい。但し
    、前記R 〜R の炭素原子数の合計は1以上50以下である。)
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