JP6736835B2 - ガンマブチロラクトンの製造方法 - Google Patents
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Description
GBLは工業用溶剤や洗浄剤、高分子化学品の反応中間体として有用であり、また電子材料製造時の溶剤や電解液として広く用いられているN−メチルピロリドン(以下「NMP」と記すことがある。)や水溶性高分子として用途の広いポリビニルピロリドンの原料としても用いられている。
近年の石油資源価格の高騰や環境への配慮等の観点から、石油資源に代わる原料としてバイオマスの使用が注目され、これに含まれる糖類の発酵によってジカルボン酸及びその誘導体を製造する方法(以下、このようなバイオマスを原料として発酵法によりコハク酸類を製造する方法を「バイオ法」と略記する)が検討されている(例えば特許文献2)。バイオ法で得られたコハク酸類には、バイオマス中に存在したり、発酵工程で混入したり、又はコハク酸類の精製工程で十分除去できずに残留したりした含窒素化合物が含まれることがある(例えば特許文献3、4)。
即ち、水素化反応における反応混合物中の前記含窒素化合物の濃度を所定の範囲内とすることで、高い収率でGBLを得ることができ、しかも水素化触媒である金属触媒の劣化も防止できることを見出して、本発明を完成した。
[1]コハク酸及び/又はその誘導体(以下両者をまとめて「コハク酸類」と記すことがある)を水素化することによりガンマブチロラクトンを製造する方法において、前記水素化反応時の反応混合物に含まれる含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で1質量ppm以上、5000質量ppm未満であることを特徴とするガンマブチロラクトンの製造方法、
[2]コハク酸及び/又はその誘導体(以下両者をまとめて「コハク酸類」と記すことがある)を水素化することによりガンマブチロラクトンを製造する方法において、前記水素化反応時の反応混合物に含まれる一般式(1)で示される分子量1000以下の含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で1質量ppm以上、5000質量ppm未満であることを特徴とする上記1に記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
[3]前記水素化反応時の反応混合物中の上記含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で5質量ppm以上、3000質量ppm未満であることを特徴とする上記1又は2のいずれかに記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
[4]前記含窒素化合物の分子量が200以下である事を特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
[5]前記水素化反応を周期律表の第8〜11族に属する遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
[7]前記水素化反応をルテニウム又は銅を含む触媒を用いて行うことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
[8]前記水素化反応を第3級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体を触媒として用いて行うことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のガンマブチロラク
トンの製造方法、
[9]前記コハク酸類がバイオマス原料を用いて発酵法により製造されたものであることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
[10]前記コハク酸類がコハク酸であり、前記含窒素化合物がコハク酸ジアミド、コハク酸モノアミド、コハク酸イミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、かつ前記水素化反応に使用する触媒が第3級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のガンマブチロラクトンの製造方法、
に存する。
1−1.コハク酸類
本発明のGBLの製造方法に使用する原料コハク酸類としては、コハク酸類に相当するそれぞれの化合物を単独で用いてもよく、また、その2種以上を任意の量比、組み合わせて用いてもよい。
また、コハク酸類として、コハク酸の塩(酸性エステル塩を含む)も使用することができる。このようなコハク酸の塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等のコハク酸塩や酸性コハク酸エステル塩が例示でき、中でも反応性の点で、コハク酸ジアンモニウム塩や酸性コハク酸エステルアンモニウム塩が好ましい。
本発明で使用するコハク酸類の製造方法としては、石油などの化石燃料を原料とする方法(以下、「石化法」と称することがある)あるいはバイオマス資源から発酵工程を経て製造する方法(以下、「バイオ法」と称することがある)が挙げられ、中でもバイオ法で製造されたコハク酸類が好適に用いられる。バイオ法で製造されたコハク酸類は含窒素化合物を含み、これらの合計濃度を制御することで工業的に有利なGBLの製造方法を提供できるからである。
ば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物由来の資源、水産物残渣、家畜排泄物等の動物由来の資源、下水汚泥、食品廃棄物等の混合資源が挙げられ、中でも植物資源が好ましい。
上記のようなバイオマス資源から誘導される炭素源としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類;酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の脂肪酸;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が挙げられ、これらの中でも、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;マルトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類が好ましく、これらのうちグルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セルロースが好ましい。
発酵法による微生物変換の際の反応温度や圧力その他の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存し、目的に応じて適宜選択すればよい。
2−1.含窒素化合物の種類
本発明で使用する含窒素化合物は少なくとも、下記一般式(1)で示される分子量1000以下のアミド化合物又は2,3,5,6−テトラメチルピラジンのいずれかである。
R 1 −C≡N (3)
(式中、R 1 は式(1)中のR 1 と同義である。)
R 1 −N=C=O (4)
(式中、R 1 は式(1)中のR 1 と同義である。)
状アルキル基の場合は、通常、その炭素原子数は1〜20であり、1〜12であるのが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。また、環状アルキル基の場合の炭素原子数は、通常3〜20であり、好ましくは4〜11である。具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。アルキル基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、リン酸基、ホスホノ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、スルフィド基などが挙げられ、その式量は通常200程度以下のものが用いられる。
。その具体例としては、アミノ基(−NH2)、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基などが挙げられる。アミノ基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基において例示した置換基と同様のものが、本発明の効果を著しく阻害しない限り用いることができる。
なお、アルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基を置換基として有する場合、式(1)の化合物は全体として、アルキルアミド又はアリールアミドになる。以下、アミド化合物として説明を行う。
アミド化合物及びイミド化合物の場合、式(1)の窒素原子に対するアルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基以外の置換基の数は1又は2となるが、残る置換基としては、上記R1〜R3に用いられるものが特に制限なく用いられる。好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基である。
素原子である場合は除かれる。
イミン化合物としては、式(2):
R1R2C=N−R3 (2)
(式中、R1〜R3は式(1)中のR1〜R3と同義である。)
で表されるものである。これらの中でピリジン環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、ピラジン環を有する化合物が好ましい。
R1−C≡N (3)
(式中、R1は式(1)中のR1と同義である。)
で表されるものである。
イソシアネート化合物としては、式(4):
R1−N=C=O (4)
(式中、R1は式(1)中のR1と同義である。)
で表されるものである。
上記式(1)の含窒素化合物は、分子量が1000以下であることが必要である。分子量が1000を超えて大きいものは、一般に立体障害が大きく、水素化触媒との相互作用が極度に弱くなるため、本発明の効果が十分得られない。より好ましい分子量は、500以下、更に好ましくは300以下、特に好ましくは200以下である。
ラジン、3,6−ジメチルピリダジン、テトラメチルピラゾール、3,6−ジメチルピリダジン等が挙げられる。
式(4)の含窒素化合物の具体例としては、例えば、イソシアン酸メチル、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、o−トルイルイソシアネート、p−トルイルイソシアネート、m−トルイルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト−3,3’−
ジメチルビフェニル、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル、1,3−ビス(2−イソシアナト−2−プロピル)ベンゼン、1,5−ジイソシアナトナフタレン、m−キシリレンジイソシアネート、イソシアン酸3,4−ジクロロフェニル等が挙げられる。
本発明において高い収率でGBLを得ることができる理由は明らかではないが、次のように推定される。
一般の窒素化合物は塩基性が強く、コハク酸類よりも強固に水素化触媒に配位して水素化触媒上でのコハク酸類の水素化が阻害するとともに、錯体触媒においては、酸−塩基結合によって酸性の配位子を中和し、やはり水素化触媒の活性を低下させることが多い。
ところが、本発明方法に用いる特定の含窒素化合物は、上記特定の構造を有することで、塩基性が緩和されるため、中性〜弱塩基性となっていて、水素化触媒への配位力も錯体触媒の酸性配位子の中和効果も温和なものとなるので、こうした欠点がカバーされ、むしろ触媒活性の安定化に寄与していると考えられる。
なお、複数の含窒素化合物を使用する場合は、少なくともその1つが上記沸点範囲を満たすものであることが好ましい。
代表的な含窒素化合物の常圧での沸点及び常温での蒸気圧を表1に示す。
本発明の製造方法における反応混合物中の含窒素化合物の窒素原子換算の含有量は1質量ppm以上、5000質量ppm未満である。前記含窒素化合物の窒素原子換算の含有量は好ましくは5質量ppm以上、3000質量ppm未満、より好ましくは10質量ppm以上、1000質量ppm未満である。
一方、含窒素化合物濃度が過度に低いと、触媒金属の配位座の多くが空になり、活性点が露出して触媒が劣化しやすくなり、また、特にバイオ法で得られたコハク酸類を用いる場合は、含窒素化合物の濃度を低くするために、例えば活性炭処理やイオン交換処理等の精製工程を要することとなるので経済的にも有利ではない。
上記の含窒素化合物が所定の範囲内の量存在することで、GBL収率を維持しつつ、水素化触媒である金属触媒の劣化を防止できるので、金属触媒を用いるGBLの製造方法において、高い収率で安定した連続運転が可能となる。
反応混合物中の含窒素化合物の濃度が上記範囲を超える場合は、例えば、後述(4.)の連続プロセスを例にとれば、
i)循環工程で高沸点成分を系外へ多く排出する、
ii)循環液中の含窒素化合物を蒸留や陽イオン交換樹脂により分離する、
iii)より低濃度の含窒素化合物を含むコハク酸類を原料として使用する、
iv)精製済みのラクトン類や溶媒を加えて反応系を希釈する、
等の方法を用いることで、所定の濃度範囲内に復帰させることができる。
i)循環工程における高沸点成分の系外への排出量を少なくする、
ii)反応系に含窒素化合物を添加する、
iii)より高濃度の含窒素化合物を含むコハク酸類を原料として使用する、
iv)溶媒を留去して反応系を濃縮する、
等の方法を用いればよい。
3−1.触媒
コハク酸類の水素化に用いることができる水素化触媒としては、周期律表の第8〜11族に属する遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を含むものが好ましい。第8〜11族遷移金属としては、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金などが挙げられ、触媒活性の面でルテニウム、銅、パラジウムが好ましく、特に触媒活性が高い銅、ルテニウムが好ましい。触媒の形態としては、固体触媒でも錯体触媒でもよいが、より高品質のGBLを得るためには錯体触媒の方が好ましい。
固体触媒としては、上記の金属を含む化合物をそのまま使用してもよく、また金属を担体に担持させて用いてもよい。
担体を使用する場合、担体としては、炭素、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、チタニア、チタニア−アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムが好ましく、これらを組み合わせたものでもよい。担体の形状は、粉末、顆粒、ペレットなど、特に限定されない。担体を使用することで、原料コハク酸類中の臭気成分・着色成分や有機不純物を同時に吸着除去できて効率的であり好ましい。金属の担持量は、通常、担体の0.1〜10重量%である。
好ましい担持触媒としては、例えば、アルミナ担持酸化銅、シリカ担持酸化銅、炭素担持ルテニウム、アルミナ担持ルテニウム、炭素担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、チタニア担持パラジウム、炭素担持プラチナ、アルミナ担持プラチナ、炭素担持ロジウム、及びアルミナ担持ロジウム等が挙げられる。
錯体触媒は、触媒金属とこれに配位する配位子から形成される。
以下、錯体触媒として金属成分としてルテニウムを用いた錯体触媒を例として説明する。
金属成分の原料としては、金属ルテニウム及びルテニウム化合物のいずれもが使用でき
る。
フィン) ジヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n −ブチルホスフィン) トリカルボニ
ルルテニウム、テトラヒドリドドデカカルボニルテトラルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム等のルテニウム錯体、等が挙げられ、中でも純度が高いものを容易に入手できる塩化ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、酢酸ルテニウムが好ましく用いられる。
配位子を形成するホスフィンの例としては、トリデカニルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジメチルヘプチルホスフィン、ジヘプチルメチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、ジメチルペンチルホスフィン、ジペンチルメチルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、トリヘプチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1、1、2、2−ジメチルホスフィノエタン、1、1、2、2−ジメチルホスフィノプロパン、1、1、2、2−ジメチルホスフィノブタン、1、1、2、2−ジオクチルホスフィノエタン、1、1、2、2−ジオクチルホスフィノプロパン、1、1、2、2−ジオクチルホスフィノブタン、1、1、2、2−ジヘキシルホスフィノエタン、1、1、2、2−ジヘキシルホスフィノプロパン、1、1、2、2−ジヘキシルホスフィノブタン、1、1、2、2−ジブチルホスフィノエタン、1、1、2、2−ジブチルホスフィノプロパン、1、1、2、2−ジブチルホスフィノブタン、1、1−ジホスフィナン、1、4−ジメチル−1、4−ジホスファン、1、3−ジメチルホスフォリナン、1、4− ジメチルホスフォリナン、8−メチル−8−ホスフィノビシクロオクタン、
4−メチル−4−ホスファテトラシクロオクタン、1−メチルホスフォラン、1−メチルホスフォナン等のホスフィン類が挙げられ、その形状も、単座配位子、複座配位子、環状配位子のいずれも用いられる。
フィネート、ホスフィンオキシド、アミノホスフィン、ホスフィン酸なども使用できる。
これらリン配位子の使用量は、ルテニウム金属1モルに対して、0. 1〜1000モ
ル、好ましくは1〜100モルの範囲である。
また、上記コハク酸水素化用のルテニウム錯体触媒はpKaが2より小さい酸の共役塩基を用いて、カチオン性錯体の形で反応に用いることが、活性の向上、触媒の安定化など幾つかの点において好ましい。このようなpKaが2よりも小さい酸の共役塩基としては触媒調整時または反応系中においてこのような共役塩基を形成するものであればよく、例えばpKaが2より小さいブレンステッド酸あるいはその各種の塩などが用いられる。
これらの酸あるいはその塩の使用量は、ルテニウム金属に対して1000モル以下、好ましくは100モル以下である。10モル以下が特に好ましい。
本発明方法によるガンマブチロラクトンの製造は、反応原料及び反応生成混合物を溶媒として実施できるが、種々の溶媒を、反応の目的や進行を阻害しない範囲で使用することもできる。
このような溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トルイル酸などのカルボン酸類;酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジルなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホン等のスルホン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;カプロラクトン等のラクトン類;テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等が挙げられ、好ましくはエーテル類、ポリエーテル類、及びラクトン類である。
本発明方法で実施される水素化反応は連続、回分いずれの方式も用いることができる。反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃である。反応系内の水素分圧は特に限られないが、工業的には通常0.01〜10MPa・G(ゲージ圧)であり、好ましくは0.03〜5MPa・Gである。
反応系内の水分含量は0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜 1質量%である。水分が多すぎるとコハク酸とその無水物との平衡がコハク酸側に
移るため、コハク酸無水物濃度が低くなってGBLの生成速度が低下する傾向となる。一
方、水分が少なすぎるとルテニウム触媒の対アニオンとなるコハク酸濃度が低下し、触媒のカチオン性が低下するため、触媒の水素化反応活性が低下する傾向となる。
反応系から水分を除去する方法としては、ガスストリッピング法などを用いることができ、反応プロセスによっては蒸留による水分留去や、脱水剤を添加してもよい。ガスストリッピング用のガスとして水素を用いると、反応液中の水分の除去と同時にコハク酸類のGBL化も行うことができて効率的である。
本発明は、水素化工程、精製工程、循環工程からなる連続反応プロセスに好適に適用しうる。この場合、本発明方法で規定される含窒素化合物の含有量(濃度)の範囲を安定に維持するために、含窒素化合物を含む循環液の一部を系外へ排出し、一部を反応系に循環することにより、反応混合物中の含窒素化合物の濃度を制御することができる。
本発明方法においては、上記の循環工程によって、製品GBLを分離した後の水素化触媒を含む残液(以下「触媒液」と呼ぶことがある。)を反応工程に循環することが好ましい。
例えば、水素化反応工程後に蒸留塔でGBLと分離された、触媒を含む高沸点成分の少なくとも一部を、反応工程へ循環する場合、反応原料中に含まれていた含窒素化合物も高沸点成分として触媒に随伴して循環し、プロセス内に蓄積することとなる。このため、反応混合物中の含窒素化合物の濃度を本発明で規定する濃度範囲内とするためには、通常、前記含窒素化合物を含む高沸点成分の一部を系外へ排出(パージ)することが必要となる。
1.原材料
コハク酸、コハク酸ジアミド、コハク酸モノアミド:試薬特級(和光純薬工業(株)製)
トリグライム:試薬一級(和光純薬工業(株)製、試薬一級)
トリオクチルホスフィン:((株)ワコーケミカル製)
トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム:(エヌイーケムキャット(株))
[ガスクロマトグラフィー分析]
ガスクロマトグラフィー分析装置((株)島津製作所製GC−17A型)にて、Agilent社製DB−1カラム(無極性)を用い、GBLを分析した。
[誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)]
ICP発光分光計(サーモサイエンティフィック社製iCAP6500Duo、ペルチ
ェ冷却有機溶媒導入システム)にて、有機溶媒直接導入法によりRu分析を行った。
[吸光度分析]
試料を10mm石英セルに入れ、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製UV−2000型)にて波長315nmの吸光度を測定した。
<参考例1>
内容量100mlのオートクレーブ(材質:SUS316)中に、コハク酸を5.9g(11.8質量%)、トリオクチルホスフィンを配位子として有するルテニウム錯体をトリグライムに溶解したものを5.0g(Ru:400質量ppm)、及び溶媒としてトリグライムを39.1g仕込んだ。反応混合物中の窒素化合物濃度は1質量ppm未満であった。
反応終了後、得られた反応生成液の一部を採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、ガンマブチロラクトンの収率は29.6%であった。反応結果を表2に示す。
上記参考例1の原料に加えて、オートクレーブ中に、コハク酸ジアミド0.2540g(窒素原子含有量:1223質量ppm)を仕込んだこと以外は実施例1と同様にして水素化反応を実施し、得られた反応生成液の分析を行った。
ガンマブチロラクトン収率は30.0%であった。反応結果を表2に示す。
上記参考例1の原料に加えて、オートクレーブ中に、コハク酸ジアミドを0.2505g(窒素原子含有量:1211質量ppm)を仕込んだこと以外は実施例1と同様にして水素化反応を実施し、得られた反応生成液の分析を行った。反応結果を表2に示す。
<実施例3>
上記参考例1の原料に加えて、オートクレーブ中に、2,3,5,6−テトラメチルピラジンを0.1g(窒素原子含有量:412質量ppm)を仕込んだこと以外は実施例1と同様にして水素化反応を実施し、得られた反応生成液の分析を行った。反応結果を表2に示す。
上記参考例1の原料に加えて、オートクレーブ中に、コハク酸ジアミドを2.5041g(窒素原子含有量:12112質量ppm)を仕込んだこと以外は実施例1と同様にして水素化反応を実施し、得られた反応生成液の分析を行った。反応結果を表2に示す。
<比較例2>
上記参考例1の原料に加えて、オートクレーブ中に、コハク酸モノアミドを2.5015g(窒素原子含有量:5986質量ppm)を仕込んだこと以外は実施例1と同様にして水素化反応を実施し、得られた反応生成液の分析を行った。反応結果を表2に示す。
上記参考例1の原料に加えて、オートクレーブ中に、2,3,5,6−テトラメチルピラジンを1.5g(窒素原子含有量:6176質量ppm)を仕込んだこと以外は実施例1と同様にして水素化反応を実施し、得られた反応生成液の分析を行った。反応結果を表2に示す。
トリオクチルホスフィンを配位子として有するルテニウム錯体をトリグライムに溶解したものを0.25g(Ru2000質量ppm)に、コハク酸ジアミドを0.8mg(窒素原子含有量:19質量ppm)と溶媒トリグライムを9.75g混合した溶液を調製した。これらの溶液を大気中、100mLガラス製バイアルにて開放状態で72時間保管したところ、保管前は淡黄色だった溶液が、淡赤色に変色していた。得られた溶液の315nmでの吸光度の変化量は0.23であった。
コハク酸ジアミドの使用量を3.0mg(窒素原子含有量:72質量ppm)とした以外は、実施例4と同様にして大気中で保管したところ、淡赤色に変色していた。吸光度の測定結果を表3に示す。この変色した触媒45gとコハク酸5gを混合して水素化原料を調製した。上記以外は参考例1と同様にして水素化反応を3時間実施し、反応終了後、得られた反応生成液を参考例1と同様に分析した結果、ガンマブチロラクトンの収率は24.0%であった。反応結果を表3に示す。
コハク酸ジアミドを添加しなかったこと(系内の窒素原子含有量:1質量ppm未満)以外は、実施例4と同様にして大気中で保管したところ、赤色に変色していた。吸光度の測定結果を表3に示す。この変色した触媒45gとコハク酸5gを混合して水素化原料を調製した。上記以外は参考例1と同様にして水素化反応を3時間実施し、反応終了後、得られた反応生成液を参考例1と同様に分析した結果、ガンマブチロラクトンの収率は18.0%であった。反応結果を表3に示す。
(1)表2に示された実施例1、2、3と比較例1、2、3を対比すると、水素化反応時の含窒素化合物濃度を本願所定の範囲内とした実施例においては、GBL収率が参考例(含窒素化合物を含まない原料)と同レベルの収率となっている一方、この濃度が本願範囲を超える比較例1、2、3では収率が著しく低下していることが判る。
(2)表3の実施例5では、含窒素化合物を添加することによって波長315nmでの吸光度の変化の程度が小さくなり、高いGBL収率となっている。一方、比較例4ではこの濃度が本願で規定する範囲未満であるためか、触媒の安定性が低下して、波長315nmでの吸光度が大きく変化しており、低いGBL収率であった。
上記の結果より、本発明の効果は明らかである。
Claims (8)
- コハク酸及び/又はその誘導体(以下両者をまとめて「コハク酸類」と記すことがある)を水素化することによりガンマブチロラクトンを製造する方法において、前記水素化反応時の反応混合物に含まれる含窒素化合物の合計含有量が窒素原子換算で70質量ppm以上、1500質量ppm未満であり、かつ該含窒素化合物が少なくとも、中性〜弱塩基性の下記一般式(1)で示される分子量1000以下のアミド化合物又は2,3,5,6−テトラメチルピラジンのいずれかであることを特徴とするガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記含窒素化合物の分子量が200以下である事を特徴とする請求項1に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記水素化反応を周期律表の第8〜11族に属する遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記含窒素化合物の常温(25℃)での蒸気圧が1×10−10Pa以上、1000Pa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記水素化反応をルテニウム又は銅を含む触媒を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記水素化反応を第3級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体を触媒として用いて行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記コハク酸類がバイオマス原料を用いて発酵法により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
- 前記コハク酸類がコハク酸であり、前記含窒素化合物がコハク酸ジアミド、コハク酸モノアミド、コハク酸イミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、かつ前記水素化反応に使用する触媒が第3級有機リン系化合物を配位子として有するルテニウム錯体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガンマブチロラクトンの製造方法。
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