以下に、本発明の実施の形態に係る空中線を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は本発明の実施の形態に係るマイクロ波デバイスの断面図である。図2は図1に示すマイクロ波デバイスを備えた空中線の断面図である。図3は図2に示す支持材の全体図である。図4は図1に示すマイクロ波デバイスの機能ブロックを示す図である。
図1に示すようにマイクロ波デバイス100は、デバイス用の多層樹脂基板である多層樹脂基板1と、高発熱性のRF(Radio Frequency)デバイスであるIC(Integrated Circuit)4と、IC4に熱的に接続される導電性のヒートスプレッダ5とを備える。
またマイクロ波デバイス100は、高発熱性のRFデバイスであるIC6と、IC6に熱的に接続される導電性のヒートスプレッダ7と、多層樹脂基板1に表面実装されるチップ部品8とを備える。
IC4及びIC6は回路装置である高周波回路の一例であり、本実施の形態ではIC4は、ドライバ増幅器(Driver Amplifier:DA)である。IC6は、高出力増幅器(High Power Amplifier:HPA)である。チップ部品8は、RF重畳波を抑圧するバイパスキャパシタである。
多層樹脂基板1は、多層樹脂基板1のY軸方向の一端側の端面である第1の板面1aと、多層樹脂基板1のY軸方向の他端側の端面である第2の板面1bとを有する。図1では、右手系のXYZ座標において、IC4及びIC6の配列方向がX軸方向とされ、多層樹脂基板1の第1の板面1a及び第2の板面1bの配列方向がY軸方向とされ、X軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向がZ軸方向とされる。
多層樹脂基板1には、多層樹脂基板1の外周寄りに形成された複数のグランドビアホール11と、信号ビアホール12と、信号ビアホール13とが形成される。多層樹脂基板1の第2の板面1b側には、複数のグランドビアホール11のそれぞれのY軸方向における一端と電気的に接続されるグランドパターン14と、チップ部品8と電気的に接続される信号線路15と、信号ビアホール12のY軸方向の一端と電気的に接続されるパッド16と、信号ビアホール13のY軸方向の一端と電気的に接続されるパッド17と、複数のパッド18とが設けられている。
多層樹脂基板1の第1の板面1a側には、グランドビアホール11のY軸方向の他端と電気的に接続されるグランドパターン19と、信号ビアホール12のY軸方向の他端と電気的に接続される信号入出力端子20と、信号ビアホール13のY軸方向の他端と電気的に接続される信号入出力端子21とが設けられている。
複数のグランドビアホール11は、多層樹脂基板1の外周面寄りに、信号線路15と、パッド16,17,18と、信号入出力端子20,21等の信号パッドと、信号ビアホール12,13とを取り囲むように形成される。
信号線路15の種類としては、入力RF線路、ゲートバイアス供給線路、出力RF線路及びドレインバイアス供給線路である。
IC4のY軸方向の一端面4a側には2つの入出力端子41,42が設けられている。入出力端子41は、微細接合材30を介してパッド16と電気的に接続される。入出力端子42は、微細接合材30を介してパッド18と電気的に接続される。微細接合材30としては、導電性の銅ピラー又はソルダーボールを例示できる。IC4のY軸方向の他端面4b側にはヒートスプレッダ5が設けられている。すなわち、ヒートスプレッダ5は、IC4における多層樹脂基板1側を向く面と反対側の面に設けられている。IC4はヒートスプレッダ5のY軸方向の一端面5aと熱的に接続される。
IC6のY軸方向の一端面6a側には2つの入出力端子61,62が設けられている。入出力端子61は、微細接合材30を介してパッド18と電気的に接続される。入出力端子62は、微細接合材30を介してパッド17と電気的に接続される。IC6のY軸方向の他端面6b側にはヒートスプレッダ7が設けられている。IC6はヒートスプレッダ7のY軸方向の一端面7aと熱的に接続される。
ヒートスプレッダ5,7と接触するように設けられたIC4,6は、多層樹脂基板1に接合され、IC4,6が接合された多層樹脂基板1上にはモールド樹脂50が成形されている。モールド樹脂50は、IC4,6と、ヒートスプレッダ5,7と、チップ部品8と、信号線路15と、パッド16,17,18とを内部に含むように成形されている。
IC4の外周面は、IC4のY軸方向の他端面4bを除き、モールド樹脂50で覆われている。IC6の外周面は、IC6のY軸方向の他端面6bを除き、モールド樹脂50で覆われている。ヒートスプレッダ5の外周面は、ヒートスプレッダ5のY軸方向の一端面5aとヒートスプレッダ5のY軸方向の他端面5bとを除き、モールド樹脂50で覆われている。
ヒートスプレッダ7の外周面は、ヒートスプレッダ7のY軸方向の一端面7aとヒートスプレッダ7のY軸方向の他端面7bとを除き、モールド樹脂50で覆われている。ヒートスプレッダ5のY軸方向の他端面5bは、モールド樹脂50で覆われることなく露出している。ヒートスプレッダ7のY軸方向の他端面7bは、モールド樹脂50で覆われることなく露出している。
モールド樹脂50の成形方法としては、導電膜2のY軸方向の内側面2a側の端面に段差が生じないように、IC4,6及びヒートスプレッダ5,7の周囲に樹脂材をモールド成形する方法でもよい。また、IC4,6及びヒートスプレッダ5,7の周囲に樹脂材をモールド成形した後に内側面2a側のモールド樹脂50の端面とヒートスプレッダ5,7の上端面とが概ね同一平面になるように研磨され、又は内側面2a側のモールド樹脂50の端面とヒートスプレッダ5,7の上端面とが平坦になるように研磨されることで、ヒートスプレッダ5,7の他端面5b,7bを露出させてもよい。
モールド樹脂50及びヒートスプレッダ5,7の表面には、導電膜2が形成されている。導電膜2は、無電解メッキ又は導電性接着剤等の導電性を有する被膜であり、メッキ被膜の材料としては、Ni(ニッケル)又は銀等を例示でき、導電性接着剤としては、銀粒子を含むエポキシ材料等を例示できる。なお、導電膜2として無電解メッキを用いる場合は、モールド樹脂50の内側面2a側の端面とヒートスプレッダ5,7の上端面とが隣接する境界領域の上面に、導電性接着剤又は薄膜導電金属シートを接触させて、モールド樹脂50の内側面2a側の端面とヒートスプレッダ5,7の上端面との境界領域の電気的接続及び電磁遮蔽(シールド)機能を強化しても良い。符号3で示される領域は、多層樹脂基板1と導電膜2との間に形成され、モールド樹脂50が充填された空間である。
多層樹脂基板1に設けられた導電膜2の内側面2aは、ヒートスプレッダ5のY軸方向の他端面5bと熱的に接続され、ヒートスプレッダ7のY軸方向の他端面7bと熱的に接続される。また多層樹脂基板1に設けられた導電膜2のY軸方向の端部は、グランドパターン14と電気的に接続される。
このように構成されたマイクロ波デバイス100では、信号入出力端子20にRF信号が入力される。信号入出力端子20に入力された送信信号であるRF信号は、信号ビアホール12、パッド16、微細接合材30及び入出力端子41を介してIC4に入力される。IC4に入力されたRF信号は、入出力端子42、微細接合材30及びパッド18を介して、IC6側に伝送される。入出力端子61を介してIC6に入力されたRF信号は、入出力端子62、微細接合材30、パッド17及び信号ビアホール13を介して、信号入出力端子21に伝送される。
パッド16、信号ビアホール12及び信号入出力端子20は、同軸構造の信号端子部84を構成する。パッド17、信号ビアホール13及び信号入出力端子21は、同軸構造の信号端子部85を構成する。
図2に示すように空中線500は、マイクロ波モジュール200と、弾性を有する放熱シート150と、放熱板140と、制御基板160とを備える。放熱シート150の弾性率は、マイクロ波デバイス100の導電膜2の弾性率よりも小さい。マイクロ波モジュール200、放熱シート150、放熱板140及び制御基板160は、Y軸方向にマイクロ波モジュール200、放熱シート150、放熱板140、制御基板160の順で配列されている。
マイクロ波モジュール200は、モジュール用の多層樹脂基板である多層樹脂基板110と、複数のマイクロ波デバイス100と、制御用IC120と、チップ部品130と、板ばね190と、複数のアンテナ素子210とを備える。モジュール用の多層樹脂基板110を、第1の多層樹脂基板とすると、上述したデバイス用の多層樹脂基板1は、第2の多層樹脂基板といえる。
複数のマイクロ波デバイス100と制御用IC120とチップ部品130と板ばね190とは、多層樹脂基板110のY軸方向の一端面110aに設けられている。制御用IC120、板ばね190及びチップ部品130は、多層樹脂基板110に表面実装されている。チップ部品130としては、抵抗又はコンデンサを例示できる。複数のアンテナ素子210は、多層樹脂基板110のY軸方向の他端面110bに設けられている。一端面110aは、多層樹脂基板110の第1の面である。他端面110bは、多層樹脂基板110の第2の面であり、多層樹脂基板110における第1の面の反対側の面である。
図2に示すように、制御基板160の多層樹脂基板110側の面上には、平板状を呈する支持材141が配置されている。すなわち、制御基板160は、支持材141のY軸方向の一端面141a側に設けられている。また、多層樹脂基板110は、支持材141のY軸方向の他端面141b側に設けられている。一端面141aは、支持材141の第1の面である。他端面141bは、支持材141における第1の面と反対側の面である支持材141の第2の面である。
支持材141は、例えば導電性の金属により構成される。支持材141は、例えば金属の旋削加工、鋳造で形成した鋳造品に一部切削加工を加える加工、板金加工で形成した板部材を拡散接合技術により接着する拡散接合加工、いわゆる3Dプリンターである付加製造(Additive Manufacturing:AM)を用いた金属積層造形加工、および板金加工に一部切削加工を加える加工などによって加工形成される。
図2および図3に示すように、支持材141には、複数のブスバー142および複数のスリット143が設けられている。それぞれのスリット143は、支持材141を厚さ方向に貫通している。それぞれのスリット143には、それぞれの放熱板140が嵌め込まれている。また、RF/電源/制御コネクタ170は、スリット143を介して多層樹脂基板110に電気的に接続される。RF/電源/制御コネクタ170には、一般的な基板対基板接続コネクタを用いることができる。マイクロ波モジュール200は、支持材141の制御基板160が配置されている側と反対側に敷詰められる。図3においては、支持材141の面内方向におけるマイクロ波モジュール200の配置位置を破線で示している。
支持材141における多層樹脂基板110側の面上には、制御基板160に電気的に接続されるブスバー142が設けられている。支持材141とブスバー142とは、電気的に絶縁されている。例えば、支持材141に外導体をなす貫通孔1191を形成し、円筒形状絶縁体1192を挿入する。円筒形状絶縁体1192の軸中心に内導体119を設ける。これにより、多層樹脂基板110とブスバー142とは、貫通孔1191の内面と内導体119とを介して電気的に接続されている。支持材141の上には絶縁膜1193を形成し、絶縁膜1193の上にブスバー142を載置する。内導体119は制御基板160上のバイアス電源端子に電気的に接続される。
なお、別の態様として、制御基板160の外部に図示しない外部電源基板を設けて、ブスバー142を当該外部電源基板上のバイアス電源端子に電気的に接続しても良い。この場合、外部電源基板のバイアス電源端子とブスバー142とは、制御基板160の外部に設けた耐ノイズ性の電源供給用配線またはコネクタ等を介して接続される。またこのとき、制御基板160に孔を設けて、当該孔に対して絶縁された状態で、耐ノイズ性の電源供給用配線を孔に通して、ブスバー142と外部電源基板との間を電源供給用配線またはコネクタ等により電気的に接続しても良い。このようにすることで、制御基板160とブスバー142とを電気的に絶縁することができる。これにより、ブスバー142に大電力が給電されても、大電力の給電に起因したノイズの影響を制御基板160が受けることを抑制し、制御基板160の耐電力性を緩和することができるので、制御基板160をより安価に製造することができる。この際、耐ノイズ性の電源供給用配線としては、例えばツイストペアケーブルを用いると良い。ツイストペアケーブルは、撚り対線とも呼ばれる。
多層樹脂基板110とブスバー142との間には、多層樹脂基板110とブスバー142とに電気的に接続される導電性の板ばね190が設けられている。ブスバー142は、Y軸方向の一端面が、貫通孔1191の端部、円筒形状絶縁体1192、絶縁膜1193および内導体119に接しており、Y軸方向の他端面が板ばね190の一方端に接している。また、板ばね190の他方端は、多層樹脂基板110上のパッド1901に接続される。すなわち、板ばね190は、断面Z形状を有する。板ばね190は、断面Z形状における一端側に設けられた平坦面がブスバー142の多層樹脂基板110側の面に面接触するとともに、断面Z形状における他端側に設けられた平坦面がパッド1901の支持材141側の面に面接触している。これにより、板ばね190は、多層樹脂基板110とブスバー142とに電気的に接続されている。
また、マイクロ波モジュール200と支持材141とは、マイクロ波モジュール200のマイクロ波デバイス100が表面実装されている側と、支持材141のブスバー142が設けられている側とが向かい合う状態で、ねじ等の締結部1190により固定されている。例えば図2の例において、締結部1190は、ボルトおよびナット、または支持材141に形成された雌ねじおよび多層樹脂基板110に形成された雌ねじ、により構成される。また、多層樹脂基板110と支持材141との間にボルトが貫通するスペーサ1195を挟んで、多層樹脂基板110を支持材141に締結しても良い。
放熱シート150は、Y軸方向の一端面が放熱板140に接しており、Y軸方向の他端面が複数のマイクロ波デバイス100の導電膜2に接している。すなわち、放熱板140は、放熱シート150におけるマイクロ波デバイス100を向く側と反対側に設けられている。放熱シート150は、高い弾力性を有すると共に高い熱伝導性を有するシートである。放熱シート150の材料としては、カーボン、銀等の高熱伝導材が埋め込まれたシリコンゴム等を例示できる。
複数の放熱板140は、支持材141に形成される複数のスリット143にそれぞれ配置されている。各放熱板140は、内部に冷媒1800を流す内部流路1801が形成されて、コールドプレート、すなわち冷却板を構成する。各放熱板140の内部流路1801の入口と出口とは、それぞれ支持材141の内部に設けられた冷媒流路1401に対し、ラバーシール等により水密を有して接続される。冷媒流路1401は、図示しないポンプに接続されて、ポンプから送られる冷媒1800を各放熱板140の内部に循環させる機能を有する。なお、冷媒流路1401の代わりに、冷媒流路1401と同じ機能を実現する配管を支持材141の内部に配置しても良い。
放熱板140および冷媒流路1401は、それぞれ導電性および熱良導性を有する金属により構成される。放熱板140および冷媒流路1401は、例えば金属の旋削加工または鋳造で形成した鋳造品に一部切削加工を加える加工で流路溝を形成した後に、金属板を溶接することにより形成される。また、放熱板140および冷媒流路1401は、板金加工で形成した板部材を拡散接合技術により固着する拡散接合加工によって、内部流路1801を一体化形成しても良い。また、放熱板140および冷媒流路1401は、3Dプリンターを用いた金属積層造形加工により、内部流路1801を一体化形成しても良い。
なお、冷媒流路1401または配管は、3Dプリンターを用いた金属積層造形加工により、放熱板140と一体的に形成されても良い。
勿論、放熱板140に必要な熱伝導性能が得られるのであれば、グラファイト板、アルミ合金板、銅タングステン板等の熱良導体からなる他の放熱板を放熱板140の代わりに用いても良い。この場合は、制御基板160に穴を設け、穴に他の冷却板を挿入して、他の冷却板の、Y軸方向におけるマイクロ波デバイス100側と反対側の裏面を、密着または熱的に接続するようにすると良い。
多層樹脂基板110及び制御基板160は、放熱シート150及び放熱板140を間に挟んだ状態で、RF信号と電源と制御信号とを伝送するコネクタであるRF/電源/制御コネクタ170により相互に接続されている。
多層樹脂基板110は、Y軸方向に圧力が加えられながら放熱板140に対してねじ等の締結部1190による締結力で固定されているため、マイクロ波デバイス100の導電膜2が弾性を有する放熱シート150に押し当てられた状態となる。これにより、マイクロ波デバイス100の導電膜2と放熱シート150と放熱板140とが熱的に接続される。
多層樹脂基板110には、同軸構造の信号端子部115,121と、内層信号線路であるRF伝送線路116と、内層信号線路であるRF伝送線路117とが設けられている。RF/電源/制御コネクタ170とマイクロ波デバイス100とは、RF伝送線路116及び信号端子部115を介して相互に接続される。アンテナ素子210とマイクロ波デバイス100とは、RF伝送線路117及び信号端子部121を介して相互に接続される。
また、多層樹脂基板110には、パッド1901に接続された内層配線118が形成される。内層配線118は、マイクロ波モジュール200のバイアス端子に接続される。
制御基板160では、マイクロ波モジュール200に供給される電源と制御信号とが生成され、電源及び制御信号は、RF/電源/制御コネクタ170を介して多層樹脂基板110上のマイクロ波デバイス100に入力される。すなわち、制御基板160は、電源回路が実装された電源基板としての機能を有する。
一方、制御基板160で生成された電源のうち大電流を要する電源は、後述するブスバー142と板ばね190と多層樹脂基板110に設けられた内層配線118を介して多層樹脂基板110上のマイクロ波デバイス100に入力される。
ブスバー142は、2本のグランド用ブスバーと、2本のグランド用ブスバーの間に設けた直流(Direct Current:DC)信号用ブスバーとが並置されてなる、3本で一組となるブスバーを用いても良い。ブスバー142により、マイクロ波モジュール200内の増幅器のたとえば電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)に、ドレインバイアス電流が供給される。
マイクロ波モジュール200のRF信号である送信入力信号及び受信出力信号は、RF/電源/制御コネクタ170および制御基板160を介して、アンテナ素子210と送受信機600との間で伝送され、又はアンテナ素子210と分配合成回路700との間で伝送される。送受信機600と分配合成回路700の接続順は任意である。なお、ここでは、送受信機600が制御基板160と別個に設けられているが、送受信機600は制御基板160と一体化されて構成されてもよい。
送受信機600から出力されたRF送信信号は、制御基板160と、RF/電源/制御コネクタ170と、RF伝送線路116と、信号端子部115とを介して、図1に示す信号入出力端子20に伝送される。図1に示す信号入出力端子21から出力されたRF送信信号は、RF伝送線路117を介してアンテナ素子210へ伝送され、アンテナ素子210から出力される。
アンテナ素子210で受信されたRF受信信号は、RF伝送線路117を介して、図1に示す信号入出力端子21へ伝送され、さらに図1に示す信号入出力端子20と、信号端子部115と、RF伝送線路116と、RF/電源/制御コネクタ170とを介して、送受信機600に伝送される。
図4に示すようにマイクロ波モジュール200には複数のマイクロ波デバイス100が設けられている。マイクロ波デバイス100は、前述したHPA及びDA以外にも、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier:LNA)、サーキュレータ(CIrculatoR:CIR)及び移相器(Phase Shifter:PS)等を備える。送受信機600から出力されたRF送信信号は、PS、DA、HPA及びCIRを介して、アンテナ素子210に伝送される。アンテナ素子210で受信されたRF受信信号は、CIR、LNA及びPSを介して、送受信機600に伝送される。ここでアンテナ側の送受切替回路にはCIRの代わりにスイッチを用いてもよい。図4ではスイッチを「SW」(Switch)と表記している。また、図2に例示するマイクロ波モジュール200は、CIRの代わりにスイッチを用いることで、より小型化することができる。
図5は図1に示すマイクロ波デバイスの変形例を示す図である。図6は本発明の実施の形態に係るシールド構造を有するサーキュレータを示す図である。図7は図2に示す空中線の変形例を示す図である。
図5に示すマイクロ波デバイス100−1と図1に示すマイクロ波デバイス100との相違点は、マイクロ波デバイス100−1は、IC6及びヒートスプレッダ7の代わりに、ヒートスプレッダ7Aと、トランジスタを含まない第1の半導体基板である低コスト半導体基板310と、トランジスタを含む第2の半導体基板である高コスト半導体基板320とを備えることである。高コスト半導体基板320には、例えば窒化ガリウムを材料とするトランジスタが設けられ、低コスト半導体基板310には、例えばガリウム砒素を材料とする整合回路が設けられる。高コスト半導体基板320に設けられるトランジスタは、高耐電力及び高電圧の電界効果トランジスタ又はバイポーラトランジスタであり、高出力マイクロ波信号を増幅出力するため、発熱量が高い。低コスト半導体基板310には、トランジスタを実装しても良いが、高コスト半導体基板320よりも低電圧のトランジスタが使われるので、高コスト半導体基板320に比べて発熱量が低い。第1の半導体基板である低コスト半導体基板310および第2の半導体基板である高コスト半導体基板320は、回路を有する回路装置である。
低コスト半導体基板310は、多層樹脂基板1に設けられて、多層樹脂基板1と電気的に接続される。高コスト半導体基板320は、低コスト半導体基板310における多層樹脂基板1を向く側とは反対側に設けられ、低コスト半導体基板310と電気的に接続される。
図5に示すように、低コスト半導体基板310の信号パッド310aと、高コスト半導体基板320の信号パッド320aとが互いに対向するように配置され、信号パッド310a及び信号パッド320aは、微細接合材330によりフリップチップ接合される。これにより、低コスト半導体基板310の表面パターン313及び表面パターン314は、信号パッド310a及び微細接合材330を介して、信号パッド320aと電気的に接続される。
高コスト半導体基板320は、ヒートスプレッダ7Aと熱的に接続されている。ヒートスプレッダ7Aは、図1に示すヒートスプレッダ7と同様に、導電膜2と熱的に接続されている。すなわち、ヒートスプレッダ7Aは、高コスト半導体基板320における低コスト半導体基板310を向く側とは反対側に設けられて、高コスト半導体基板320に接している。
低コスト半導体基板310に設けられた入出力端子311は、低コスト半導体基板310に形成されたスルーホール315を介して、表面パターン313と電気的に接続される。また入出力端子311は、微細接合材30を介して、多層樹脂基板1上のパッド18と電気的に接続される。
低コスト半導体基板310に設けられた入出力端子312は、低コスト半導体基板310に形成されたスルーホール316を介して表面パターン314と電気的に接続される。また入出力端子312は、微細接合材30を介して、多層樹脂基板1上のパッド17と電気的に接続される。
図6に示されるサーキュレータ800は、モールドパッケージ860と、モールドパッケージ860上に設けられる永久磁石850と、モールドパッケージ860の下に設けられる樹脂基板880と、を備える。すなわち、永久磁石850は、モールドパッケージ860の一端面側に設けられる。また、樹脂基板880は、モールドパッケージ860の他端面側に設けられる。
モールドパッケージ860は、複数の信号端子811と、複数の信号端子811を取り囲む複数のグランド端子812と、ダイパッド810と、を備える。また、モールドパッケージ860は、信号パターン821を有してダイパッド810上に設けられるフェライト基板820と、信号端子811と信号パターン821とを電気的に接続するワイヤ830と、を備える。また、モールドパッケージ860は、ダイパッド810とフェライト基板820とワイヤ830とを覆うモールド樹脂840と、モールド樹脂840の表面を覆う導体膜861と、を備える。モールド樹脂840は、複数の信号端子811、複数のグランド端子812及びダイパッド810が露出するように設けられる。
樹脂基板880は、グランドビア881と、信号ビア882と、信号パターン883を備える。信号端子811と信号ビア882と信号パターン883とは、電気的に接続される。グランド端子812とグランドビア881とは、電気的に接続される。
図7に示される空中線500−1と図2に示される空中線500との相違点は、空中線500−1は、マイクロ波モジュール200の代わりにマイクロ波モジュール200−1を備えることである。
マイクロ波モジュール200−1は、アンテナ基板450と、多層樹脂基板110とを備える。アンテナ基板450及び多層樹脂基板110は、Y軸方向にアンテナ基板450、多層樹脂基板110の順で配列されている。アンテナ基板450は、多層樹脂基板110のY軸方向の他端面110b側に配置されている。
多層樹脂基板110のY軸方向の一端面110aには、複数のマイクロ波デバイス100−1と制御用IC120とチップ部品130とが設けられている。多層樹脂基板110のY軸方向の他端面110bには、複数のサーキュレータ800と、制御IC410とが表面実装されている。サーキュレータ800のグランドと、多層樹脂基板110の他端面110b上のグランド面とを電気的に接続することによりシールド構造を形成する。
アンテナ基板450における、多層樹脂基板110が配置されている側と反対側の面には、複数のアンテナ素子210が設けられている。アンテナ基板450に設けられた複数のアンテナ素子210はRFコネクタ470と電気的に接続される。多層樹脂基板110と、アンテナ基板450とは、ねじ等により共締め固定されている。
多層樹脂基板110には、内層信号線路であるRF伝送線路122と、内層信号線路であるRF伝送線路123とが設けられている。サーキュレータ800は、RF伝送線路122を介してRFコネクタ470に接続される。またサーキュレータ800は、RF伝送線路123を介してマイクロ波デバイス100−1に接続される。マイクロ波デバイス100−1は、マイクロ波デバイス100と同様に、RF/電源/制御コネクタ170と相互に接続される。そして、多層樹脂基板110と制御基板160とは、RF/電源/制御コネクタ170により相互に接続されているため、アンテナ基板450に設けられた複数のアンテナ素子210は、マイクロ波デバイス100−1を介して、送受信機600と接続される。
以上に説明したように図2及び図7に示される空中線500,500−1では、放熱板140、マイクロ波モジュール200,200−1及びアンテナ素子210が層状に配列されているため、空中線500,500−1のY軸方向の厚みを低減でき、小型かつ軽量な空中線を実現できる。
また実施の形態に係るマイクロ波デバイス100では、IC4,6とヒートスプレッダ5,7と導電膜2と放熱板140とが熱的に接続され、ヒートスプレッダ5のX軸方向の断面積がIC4のX軸方向の断面積以上であり、ヒートスプレッダ7のX軸方向の断面積が、IC6のX軸方向の断面積以上である。特許文献1に開示される半導体パッケージでは、裏面側キャップ部に設けられた裏面側貫通電極の断面積が、半導体チップに設けられた裏面電極の表面積未満であるため、半導体チップで発生した熱を効果的に半導体パッケージの外部へ放射できない。これに対して実施の形態に係るマイクロ波デバイス100では、広い断面積のヒートスプレッダ5,7が用いられているため、IC4,6と放熱板140との間の熱抵抗が低減され、IC4,6で発生した熱を効果的に放熱板140へ伝えることができる。
またマイクロ波デバイス100では、マイクロ波デバイス100の高さばらつき、多層樹脂基板110の反り、マイクロ波デバイス100と多層樹脂基板110との接合層の高さばらつき等により、複数のマイクロ波デバイス100のそれぞれの導電膜2のY軸方向の高さが異なる場合でも、弾性を有する放熱シート150により、導電膜2と放熱シート150との熱的な接続を確保することができる。
またモールド樹脂50の成形方法は従来から採用されている工法であるため、マイクロ波デバイス100は安価に製造できる。また実施の形態では、IC4,6及びヒートスプレッダ5,7の周囲が樹脂材で固められているため、マイクロ波デバイス100が放熱シート150に押し付けられるようにして固定された場合でも、導電膜2を介してIC4,6に加えられる圧力がモールド樹脂50にも分散されるため、IC4,6に設けられた端子に加わる機械的なストレスが軽減される。従って、IC4,6と放熱シート150との間の熱抵抗を低下させるためにマイクロ波デバイス100が放熱シート150に押し付けられるようにして固定された場合でも、多層樹脂基板1とIC4,6との機械的な接続強度の低下が抑制され、マイクロ波デバイス100の寿命の低下が抑制される。
また実施の形態に係るマイクロ波デバイス100では、モールド樹脂50及びヒートスプレッダ5,7の周囲が導電膜2で覆われ、多層樹脂基板1のグランドビアホール11と導電膜2とが電気的に接続され、さらに同軸構造の信号端子部84,85が、多層樹脂基板110に形成された同軸構造の信号端子部115,121とそれぞれ接続されている。そのため、IC4,6から放射された電磁波がマイクロ波デバイス100の内部に閉じ込められる。従って、多層樹脂基板110の全体をシールドで覆う必要がなく、構造を簡素化できる。
また実施の形態のように、複数のIC4,6がマイクロ波デバイス100に格納される場合、マイクロ波デバイス100のサイズは10[mm]角程度になる。ここで、導電性材料で覆われるパッケージ内にヒートスプレッダ5,7が設けられていない場合、共振周波数はX帯(10GHz帯)近くまで低下する。具体例で示すと、モールド寸法を10[mm]×10[mm]×1[mm]とし、モールド樹脂の外周の全体を導体で覆い、モールド材の誘電率が3.5であるとき、最低次の共振周波数は11.33[GHz]である。実施の形態では、グランド電位の導電性のヒートスプレッダ5,7によりパッケージ内が短絡されるため、共振周波数を動作周波数よりも十分に高く設定することが可能となり、マイクロ波デバイス100内部でのRF信号結合による発振を抑制できる。
またマイクロ波デバイス100とアンテナ素子210との間の損失は最小化する必要があるが、マイクロ波デバイス100と送受信機600との間では一定の損失が許容される。このため、空中線500の製造時においては、RF線路を多層樹脂基板110内に引き回して配線し、放熱性能への影響の小さい位置でRF/電源/制御コネクタ170をまとめた後に、放熱板140に貫通させることができる。これによりヒートスプレッダ5,7の放熱性能を重視した放熱板140の設計が可能となる。また空中線500の仕様によっては、多層樹脂基板110内でRF信号の伝送経路を分配及び合成することにより、放熱板140に貫通するRFコネクタ数を低減させることができる。
実施の形態に係るマイクロ波デバイス100では、マイクロ波デバイス100のドレイン電源といった大きな電流容量を要する電源を、板ばね190及びブスバー142を介して制御基板160もしくは外部電源基板から多層樹脂基板110に伝送することができる。一方、一般的な基板対基板接続コネクタの1つの端子の電流容量で対応することができるような電流容量の小さい電源は、RF/電源/制御コネクタ170に備えた1つの端子を用いて制御基板160から多層樹脂基板110に伝送する。このため、RF/電源/制御コネクタ170においては少ない端子で多層樹脂基板110に電源を伝送することが可能である。
例えば、RF/電源/制御コネクタ170に加えて給電用多芯コネクタを使用し、1つの給電用多芯コネクタとRF/電源/制御コネクタ170とを、それぞれ多層樹脂基板110と制御基板160の間に実装し、両基板間を電気的に接続することも可能である。しかしながら、この場合、大電力を流すための複数のピン接続型の給電用多芯コネクタを用いると、複数のピンと絶縁体をケーシングするための収容空間とコネクタケースとが必要となり、多層樹脂基板110と制御基板160とにおける給電用多芯コネクタの実装スペースが大きくなる。
一方、しかしながら、実施の形態に係る空中線500では、大電力を流すための給電用多芯コネクタを、ブスバー142と板ばね190とを用いた表面実装型の端子間接続によって構成することができるので、大電力を流すための構成部の実装スペースをより小さくすることができる。
これにより、RF/電源/制御コネクタ170を小型化することが可能となる。そして、RF/電源/制御コネクタ170を小型化することにより、制御基板160と多層樹脂基板110とにおけるRF/電源/制御コネクタ170の実装自由度の低減の抑制、およびRF/電源/制御コネクタ170の大型化に起因した制御基板160と多層樹脂基板110とにおける部品実装面積の低減の抑制が可能である。これにより、制御基板160と多層樹脂基板110との大型化による空中線500の大型化を抑制して空中線500の小型化が可能となる。なお、RF/電源/制御コネクタ170に備える電源の伝送用の端子が複数となる場合であっても端子数を低減できる効果が得られる。マイクロ波デバイス100−1においても同様の効果が得られる。
また、ブスバー142と板ばね190とは、半田リフロー工程を用いて、表面実装することができるので、給電用多芯コネクタの組立および実装作業が削減できる。
また、ブスバー142と板ばね190とからなるコネクタ部およびRF/電源/制御コネクタ170は、共に多層樹脂基板110と制御基板160との面内に設けられたコネクタ部に接続される必要がある。例えば、RF/電源/制御コネクタ170と給電用多芯コネクタとを多層樹脂基板110と制御基板160の間に実装する場合には、RF/電源/制御コネクタ170と給電用多芯コネクタとのそれぞれを、多層樹脂基板110の面内と制御基板160との面内において設けられたコネクタ部に対して正確に位置合わせしないと接続することができない。
一方、ブスバー142と板ばね190とからなるコネクタ部およびRF/電源/制御コネクタ170を用いる場合には、RF/電源/制御コネクタ170は、多層樹脂基板110と制御基板160との既定の位置に正確に位置合わせしなければならない。しかしながら、ブスバー142と板ばね190とからなるコネクタ部は、多層樹脂基板110の面内および制御基板160との面内に対する位置合わせの精度は、給電用多芯コネクタを多層樹脂基板110の面内と制御基板160との面内において設けられたコネクタ部に対して位置合わせする精度よりも極端に緩くなるため、多層樹脂基板110と制御基板160の電気的接続を容易に行うことができる。
したがって、実施の形態に係る空中線500,500−1では、空中線の低背化及び小型化が実現可能である。
また実施の形態では、アンテナ側の送受切替回路にCIR又はスイッチが用いられるが、これらのCIR又はスイッチが設けられている多層樹脂基板110の裏面にアンテナ素子210が設けられているため、アンテナ一体型のマイクロ波モジュール200を実現でき、部品点数が削減される。
また図5に示されるマイクロ波デバイス100−1では、高コスト半導体基板320にトランジスタのみ実装されているため、チップ面積が最小化される。また低コスト半導体基板310に整合回路が構成されているため、高コスト半導体基板320にトランジスタ整合回路がモノリシックに製造される図1のIC6と比較して、マイクロ波デバイス100−1のコストを低減できる。
また図7に示される空中線500−1では、マイクロ波デバイス100−1の外部にサーキュレータ800が用いられている。サーキュレータ800は、多層樹脂基板110のY軸方向の他端面110b、すなわち多層樹脂基板110のアンテナ素子210側の面に設けられている。これによりアンテナ面での負荷インピーダンスの変動によるIC4の特性変化を低減できる。
また図7に示される空中線500−1において、サーキュレータ800は、多層樹脂基板110に実装されることでシールド構造を有しているため、多層樹脂基板110とアンテナ基板450との間にシールド構造を別に設ける必要が無くなる。またサーキュレータ800と制御IC410とをマイクロ波デバイス100−1と同一面に実装することにより、空中線500のようにアンテナ基板450を省略できる。
また図7に示された空中線500−1では、多層樹脂基板110のアンテナ素子210側とは反対側に放熱板140が配置されるため、多層樹脂基板110とアンテナ基板450との間に放熱板140が配置される場合に比べて、RF配線及びRF/電源/制御コネクタ170を配置する際の制約が軽減され、冷却性能が向上する。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。