[フォトレジスト用樹脂]
本発明のフォトレジスト用樹脂は、メルカプト基含有化合物又はヒドロキシ基含有化合物の水素原子を1つ除いた基を末端に有する。このような構造を有する樹脂は、例えば、本発明のフォトレジスト用樹脂を構成する単量体(例えば後述のモノマー単位a、モノマー単位b、モノマー単位c等)を、連鎖移動剤として上記メルカプト基含有化合物を用いるか、又は重合溶媒として上記ヒドロキシ基含有化合物を用いてラジカル重合させることにより得られる。
上記メルカプト基含有化合物の水素原子を1つ除いた基としては、具体的には、メルカプト基含有化合物におけるメルカプト基の水素原子を除いた基(RS基)が挙げられる。なお、上記RS基におけるRは、上記メルカプト基含有化合物におけるメルカプト基中の硫黄原子に結合している、水素原子以外の基である。
上記メルカプト基含有化合物としては、ラジカル重合において用いられる、メルカプト基を有する公知乃至慣用の連鎖移動剤が挙げられ、例えば、後述するメルカプト基含有連鎖移動剤として例示された化合物等が挙げられる。
上記ヒドロキシ基含有化合物の水素原子を1つ除いた基としては、具体的には、ヒドロキシ基含有化合物におけるヒドロキシ基の水素原子を除いた基(RO基)や、ヒドロキシ基含有化合物からα水素(ヒドロキシ基に隣接する炭素原子上の水素原子)を除いた基が挙げられる。なお、上記RO基におけるRは、上記ヒドロキシ基含有化合物におけるヒドロキシ基中の酸素原子に結合している、水素原子以外の基である。
上記ヒドロキシ基含有化合物としては、ラジカル重合において重合溶媒として用いられる、ヒドロキシ基を有する公知乃至慣用の溶剤が挙げられ、例えば、後述するグリコール系化合物、1価アルコール系化合物等が挙げられる。
本発明のフォトレジスト用樹脂は、酸の作用によりその一部が脱離して極性基を生じる基(「酸分解性基」と称する場合がある)を有する。これにより、本発明のフォトレジスト用樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する。
上記極性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基;アルコール性水酸基等が挙げられる。中でも、カルボキシ基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が好ましい。
上記酸分解性基としては、上記極性基の水素原子を酸で脱離する基に置換した基が好ましい。上記酸分解性基としては、例えば、−C(RI)(RII)(RIII)、−C(RIV)(RV)(ORVI)等が挙げられる。上記式中、RI〜RIII、RVIは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。RIV及びRVは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルケニル基を表す。RI〜RIIIのうちの少なくとも2つの基は、互いに結合して環を形成してもよい。また、RIVとRVとは、互いに結合して環を形成してもよい。
上記酸分解性基の炭素原子数は、特に限定されないが、4以上が好ましく、より好ましくは5以上である。上記炭素原子数の上限は、特に限定されないが、20が好ましい。
上記RI〜RVIのアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、へキシル基、オクチル基等が挙げられる。
上記RI〜RVIのシクロアルキル基は、単環式炭化水素基でも、多環式(橋かけ環式)炭化水素基でもよい。単環式炭化水素基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。多環式炭化水素基としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
上記RI〜RVIのアリール基は、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
上記RI〜RVIのアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記RI〜RVIのアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等が挙げられる。
上記RI〜RIIIのうちの少なくとも2つの基が互いに結合して形成される環、及びRIVとRVとが結合して形成される環としては、シクロアルカン環が好ましい。上記シクロアルカン環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の単環式のシクロアルカン環;ノルボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環等の多環式のシクロアルカン環が好ましい。
なお、RI〜RVIにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、及び上記シクロアルカン環は、それぞれ、置換基を有していてもよい。
上記酸分解性基としては、中でも、t−ブチル基、t−アミル基、及び下記式(I)〜(IV)で表される基が好ましい。
上記式(I)〜(IV)中のR2〜R7、Ra、n、p、及び環Z1は、それぞれ、後述の式(a1)〜(a4)中のR2〜R7、Ra、n、p、及び環Z1と同じものを示す。
上記酸分解性基は、スペーサーを介して設けられていてもよい。上記スペーサーとしては、後述の式(1)中のAとして例示及び説明された連結基と同じものを示す。
本発明のフォトレジスト用樹脂は、酸分解性基を、酸分解性基を有する重合単位として含むことが好ましい。このような酸分解性基を有する重合単位としては、例えば、下記式(1)で表される重合単位が挙げられる。
上記式(1)中、R1は上記酸分解性基を示す。また、上記式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。上記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等が挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の上記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置き換えられた基(ハロ(C1-6)アルキル基)等が挙げられる。
上記式(1)中、Aは単結合又は連結基を示す。上記連結基としては、例えば、カルボニル基(−C(=O)−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)、これらが複数個連結した基、及びアルキレン基とこれらが結合した基等が挙げられる。上記アルキレン基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基や、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基)等が挙げられる。
上記式(1)で表される重合単位としては、中でも、下記式(a1)〜(a4)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。なお、上記「式(a1)〜(a4)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位」を、「モノマー単位a」と称する場合がある。
上記式(a1)〜(a4)で表される重合単位中、Rは、上記式(1)中のRと同様に、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。上記式(a1)〜(a4)中のAとしては、中でも、単結合、アルキレン基とカルボニルオキシ基が結合した基(アルキレン−カルボニルオキシ基)が好ましい。R2〜R4は同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R5、R6は同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。R7は−COORc基を示し、上記Rcは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、又はオキセパニル基を示す。nは1〜3の整数を示す。nが2又は3である場合、2個又は3個のR7は、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。Raは環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、オキソ基、アルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシ基を示す。pは0〜3の整数を示す。環Z1は炭素数3〜20の脂環式炭化水素環を示す。pが2又は3である場合、2個又は3個のRaは、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。
上記Raにおけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基等が挙げられる。
上記Raにおけるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル基等のヒドロキシC1-6アルキル基等が挙げられる。
上記Raにおけるヒドロキシ基、及びヒドロキシアルキル基が有していてもよい保護基としては、例えば、メチル、エチル、t−ブチル基等のC1-4アルキル基;ヒドロキシ基を構成する酸素原子とともにアセタール結合を形成する基(例えば、メトキシメチル基等のC1-4アルキル−O−C1-4アルキル基);ヒドロキシ基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基等)等が挙げられる。
上記Raにおけるカルボキシ基の保護基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等のC1-6アルキル基;2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−オキセパニル基等が挙げられる。
上記R2〜R6における炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、s−アミル、t−アミル、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。本発明においては、中でもC1-4アルキル基が好ましく、より好ましくはC1-3アルキル基、さらに好ましくはC1-2アルキル基である。
上記R2〜R6における炭素数1〜6のアルキル基が有していてもよい置換基としては例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基等)、シアノ基等が挙げられる。置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の上記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がハロゲン原子で置き換えられたハロ(C1-6)アルキル基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、メトキシメチル、2−メトキシエチル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、シアノメチル、2−シアノエチル基等が挙げられる。
上記Rcにおける第3級炭化水素基としては、例えば、t−ブチル基、t−アミル基等が挙げられる。
上記Rcにおける第3級炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換ヒドロキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ基等のC1-4アルコキシ基等)、シアノ基等が挙げられる。
上記環Z1における炭素数3〜20の脂環式炭化水素環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭化水素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭化水素環(例えば、炭素数6〜20程度の橋架け炭化水素環)等の2〜6環程度の橋かけ環式炭化水素環等が挙げられる。
上記モノマー単位aの具体例としては、下記式で表されるモノマー単位等が挙げられる。下記式で表されるモノマー単位中、Rdは、メチル基又は水素原子を示し、Reは、メチル基又は水素原子を示す。また、脂環式炭化水素環へのReの結合位置は特に限定されず、単数又は複数のReが脂環式炭化水素環を構成する炭素原子のうちのいずれの炭素原子に結合していてもよい。下記式で表されるモノマー単位中、Reを2個以上有する場合、2個以上の上記Reは、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。モノマー単位aは、対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことによりフォトレジスト用樹脂内に導入することができる。
上記式(1)で表される重合単位としては、上記モノマー単位aで表される重合単位の他に、エステル結合を構成する酸素原子がラクトン環のβ位に結合し且つラクトン環のα位に少なくとも1つの水素原子を有する、ラクトン環を含む不飽和カルボン酸エステルに相当する重合単位(但し、後述のモノマー単位bに相当する重合単位を除く)等を用いることも可能である。
上記式(1)で表される重合単位は1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。上記式(1)で表される重合単位としては、上記式(a1)〜(a4)で表される重合単位からなる群より選択された少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。また、上記式(1)で表される重合単位は、上記式(a1)〜(a4)で表される重合単位からなる群より選択された少なくとも1種の重合単位と、上記式(a1)〜(a4)で表される重合単位からなる群より選択された少なくとも1種の重合単位以外の上記式(1)で表される重合単位(その他の式(1)で表される重合単位)と組み合わせて用いてもよい。上記その他の式(1)で表される重合単位としては、R1が第3級炭化水素基を有する基(例えば、t−ブチル基、t−アミル基等)である式(1)で表される重合単位が好ましい。
また、本発明のフォトレジスト用樹脂は、[−C(=O)−O−]、[−S(=O)2−O−]、又は[−C(=O)−O−C(=O)−]を少なくとも有する脂環式骨格を含むことが好ましい。上記脂環式骨格を含むと、フォトレジスト用樹脂により高い基板密着性及び耐エッチング性を付与することができる。本発明のフォトレジスト用樹脂は、上記脂環式骨格を、上記脂環式骨格を有する重合単位として含むことが好ましい。なお、上記[−C(=O)−O−]、[−S(=O)2−O−]、又は[−C(=O)−O−C(=O)−]を少なくとも有する脂環式骨格を含む重合単位を、「モノマー単位b」と称する場合がある。
上記モノマー単位bは、中でも、下記式(b1)〜(b5)で表される重合単位からなる群より選択される少なくとも1種の重合単位を含むことが好ましい。下記式(b1)〜(b5)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、Aは単結合又は連結基を示す。Xは非結合、メチレン基、エチレン基、酸素原子、又は硫黄原子を示す。Yはメチレン基、又はカルボニル基を示す。Zは、2価の有機基(例えば、式(a1)〜(a4)で表される重合単位中のAに含まれていてもよいアルキレン基として例示及び説明されたアルキレン基(特に、炭素数1〜3の直鎖状のアルキレン基)等)を示す。V1〜V3は、同一又は異なって、−CH2−、[−C(=O)−]、又は[−C(=O)−O−]を示す。但し、V1〜V3のうち少なくとも1つは[−C(=O)−O−]である。R8〜R14は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、フッ素原子を有していてもよいアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示す。
式(b1)〜(b5)で表される重合単位中のR、Aとしては、式(a1)〜(a4)で表される重合単位中のR、Aと同様の例が挙げられる。また、式(b1)〜(b5)で表される重合単位中のR8〜R14におけるアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、及び保護基で保護されていてもよいカルボキシ基としては、式(a1)〜(a4)で表される重合単位中のRaにおける例と同様の例が挙げられる。
上記R8〜R14におけるフッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル基等の上記アルキル基を構成する水素原子の1個又は2個以上がフッ素原子で置き換えられた基[フルオロ(C1-6)アルキル基]等が挙げられる。
上記式(b1)〜(b4)で表される重合単位中、上記R8〜R11は、それぞれ、1個又は2個以上有していてもよく、1〜3個が好ましい。また、上記式(b1)〜(b4)で表される重合単位中、上記R8〜R11を2個以上有する場合、2個以上の上記R8〜R11は、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。
モノマー単位bの中でも、式(b1)で表され、且つR8がシアノ基、アミド基を有する基、イミド基を有する基、又はフルオロ(C1-6)アルキル基等の電子吸引性基である重合単位;式(b2)で表される重合単位;式(b3)で表され、且つYがカルボニル基である重合単位;式(b4)で表される重合単位;及び式(b5)で表される重合単位は、フォトレジスト用樹脂に優れた基板密着性、及び耐エッチング性を付与することができると共に、アルカリ現像液への溶解性に優れ、微細パターンを高精度に形成することができる点で好ましい。
上記式(b1)において、R8がシアノ基、アミド基を有する基、イミド基を有する基、又はフルオロ(C1-6)アルキル基等の電子吸引性基である場合、上記R8は、式(b1)中の*を付した炭素原子に少なくとも結合していることが特に好ましい。
上記モノマー単位bの具体例としては、下記式で表される重合単位等が挙げられる。下記式で表されるモノマー単位中、Rdは、メチル基又は水素原子を示す。上記モノマー単位bは、対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことによりフォトレジスト用樹脂内に導入することができる。
本発明のフォトレジスト用樹脂は、さらに、モノマー単位cを有していてもよい。上記モノマー単位cは下記式(c1)で表される重合単位である。本発明のフォトレジスト用樹脂は、重合単位としてモノマー単位cを有すると、フォトレジスト用樹脂により高い透明性及び耐エッチング性を付与することができる。式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。Aは単結合又は連結基を示す。Rbは保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基、又はシアノ基を示し、中でも、ヒドロキシ基、シアノ基が好ましい。qは1〜5の整数を示す。環Z2は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示す。qが2〜5の整数である場合、2〜5個のRbは、それぞれ、同一であってもよいし異なっていてもよい。
式(c1)で表される重合単位中のR、Aとしては、式(a1)〜(a4)で表される重合単位中のR、Aと同様の例が挙げられる。また、式(c1)で表される重合単位中のRbにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシアルキル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシ基としては、式(a1)〜(a4)で表される重合単位中のRaにおける例と同様の例が挙げられる。
式(c1)で表される重合単位中の環Z2は炭素数6〜20の脂環式炭化水素環を示し、例えば、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の6〜20員(好ましくは6〜15員、特に好ましくは6〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロヘキセン環等の6〜20員(好ましくは6〜15員、特に好ましくは6〜10員)程度のシクロアルケン環等の単環の脂環式炭化水素環;アダマンタン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等のノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環;パーヒドロインデン環、デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロフルオレン環(トリシクロ[7.4.0.03,8]トリデカン環)、パーヒドロアントラセン環等の多環の芳香族縮合環が水素添加された環(好ましくは完全水素添加された環);トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環等の2環系、3環系、4環系等の橋架け炭化水素環(例えば、炭素数6〜20程度の橋架け炭化水素環)等の2〜6環程度の橋かけ環式炭化水素環等が挙げられる。上記環Z2としては、中でも、ノルボルナン環又はノルボルネン環を含む環、アダマンタン環が好ましい。
上記モノマー単位cの具体例としては、下記式で表される重合単位等が挙げられる。下記式で表される重合単位中、Rdは、メチル基又は水素原子を示す。上記モノマー単位cは、対応する不飽和カルボン酸エステルを重合に付すことによりフォトレジスト用樹脂内に導入することができる。
本発明のフォトレジスト用樹脂は、上記モノマー単位a及び上記モノマー単位bを少なくとも有することが好ましく、上記モノマー単位a、上記モノマー単位b、及び上記モノマー単位cを少なくとも有することがより好ましい。この場合、本発明のフォトレジスト用樹脂において、上記モノマー単位aの含有量は、フォトレジスト用樹脂を構成する全モノマー単位(重合単位)に対して、例えば5〜95モル%程度、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは20〜80モル%、さらに好ましくは30〜70モル%である。また、モノマー単位bの含有量は、フォトレジスト用樹脂を構成する全モノマー単位に対して、例えば5〜95モル%程度、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは20〜80モル%、さらに好ましくは30〜70モル%である。また、本発明のフォトレジスト用樹脂が上記モノマー単位cを有する場合のモノマー単位cの含有量は、フォトレジスト用樹脂を構成する全モノマー単位に対して、例えば0.5〜40モル%程度、好ましくは1〜30モル%、より好ましくは5〜20モル%である。
また、本発明のフォトレジスト用樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜50000程度、好ましくは2000〜20000、特に好ましくは3000〜15000であり、分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比:Mw/Mn)は、例えば1.0〜3.0程度、好ましくは1.0〜2.5である。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、GPCにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができる。
本発明のフォトレジスト用樹脂の酸価は、上述のように0.10mmol/g以下であり、好ましくは0.05mmol/g以下、より好ましくは0.03mmol/g以下である。上記酸価が0.10mmol/g以下であると、フォトレジスト用樹脂中の酸分解性基が脱離せずに保護されているため、優れたレジスト性能を有し、かつ経時安定性が良好となる。なお、上記酸価の下限は、0mmol/gであってもよい。
[本発明のフォトレジスト用樹脂の製造方法]
第一の本発明のフォトレジスト用樹脂の製造方法(以下、単に「第一の本発明の製造方法」と称する場合がある)は、メルカプト基含有連鎖移動剤及びpKbが10以下の塩基性化合物の存在下、単量体及び/又は重合開始剤を滴下する滴下重合法により前記単量体をラジカル重合させる工程を含み、前記連鎖移動剤100モルに対する前記塩基性化合物の使用量が0.05モル以上である製造方法である。また、第二の本発明のフォトレジスト用樹脂の製造方法(以下、単に「第二の本発明の製造方法」と称する場合がある)は、ヒドロキシ基含有化合物及びpKbが10以下の塩基性化合物の存在下、単量体及び/又は重合開始剤を滴下する滴下重合法により前記単量体をラジカル重合させる工程を含み、前記ヒドロキシ基含有化合物100モルに対する前記塩基性化合物の使用量が0.01モル以上である製造方法である。上記の本発明の製造方法により、本発明のフォトレジスト用樹脂を製造することができる。なお、本発明の製造方法において、メルカプト基含有連鎖移動剤及びヒドロキシ基含有化合物のうち、いずれか一方のみを使用してもよいし、両方を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、第一の本発明の製造方法及び第二の本発明の製造方法を総称して「本発明の製造方法」と称する場合がある。
上記メルカプト基含有連鎖移動剤としては、ラジカル重合において用いられる、メルカプト基を有する公知乃至慣用の連鎖移動剤が挙げられる。上記メルカプト基含有連鎖移動剤としては、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、t−ブチルメルカプタン、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、1−テトラデカンチオール、n−ラウリルメルカプタン、シクロヘキサンチオール、1−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコールジメルカプタン、p−メルカプトフェニルメタノール、2−(p−メルカプトフェニル)エタノール、p−(メルカプトメチル)フェニルメタノール、2−(p−(メルカプトメチル)フェニル)エタノール、p−メルカプトフェノール、p−(メルカプトメチル)フェノール、p−(1−メルカプトエチル)フェノール、p−(2−メルカプトエチル)フェノール等のチオール(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基を有するチオール、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂肪族炭化水素基を有するチオール);メルカプトプロピオン酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等のチオール酸;チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸n−ブチル、2−メルカプトプロピオン酸メチル、2−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、p−メルカプト安息香酸メチル、p−メルカプト安息香酸エチル、p−(メルカプトメチル)安息香酸メチル、p−(メルカプトメチル)安息香酸エチル等のチオール酸エステル(好ましくはチオール酸アルキルエステル)等が挙げられる。上記メルカプト基含有連鎖移動剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記メルカプト基含有連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、単量体の総量(100モル)に対して、0.001〜50モルが好ましく、より好ましくは0.01〜10モル、さらに好ましくは0.03〜5モルである。また、単量体の総量(100重量部)に対する上記メルカプト基含有連鎖移動剤の使用量は、特に限定されないが、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜4重量部である。
上記重合工程において、上記メルカプト基含有連鎖移動剤は、滴下してもよいし、予め、単量体や重合開始剤の滴下開始前の重合溶媒中に存在させておいてもよい。
上記ヒドロキシ基含有化合物としては、重合溶媒として用いることが好ましく、ラジカル重合において用いられる、ヒドロキシ基を有する公知乃至慣用の重合溶媒が挙げられる。上記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、グリコール系化合物、1価アルコール系化合物、ヒドロキシ基含有エステル等が挙げられる。グリコール系化合物には、例えば、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール等のプロピレングリコール系化合物;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール系化合物等が挙げられる。1価アルコール系化合物には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、sec−ブチルアルコール、アリルアルコール、ヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール等のアルコール(特に、脂肪族炭化水素モノアルコール)等が挙げられる。ヒドロキシ基含有エステルには、乳酸エチル等が挙げられる。上記ヒドロキシ基含有化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記重合工程において、上記ヒドロキシ基含有化合物は、滴下してもよいし、予め、単量体や重合開始剤の滴下開始前の重合溶媒中に存在させておいてもよい。
上記重合工程は、上記pKbが10以下の塩基性化合物(以下、「塩基性化合物A」と称する場合がある)の存在下で行う。メルカプト基含有連鎖移動剤は酸性度が高いため、メルカプト基含有連鎖移動剤を用いた重合工程において酸分解性基を有するフォトレジスト用樹脂中の酸分解性基が分解され、製造されたフォトレジスト用樹脂は経時安定性に劣ることがあった。また、ヒドロキシ基含有化合物を用いた重合工程においては、ヒドロキシ基含有化合物の酸性度が高い場合やフォトレジスト用樹脂中の酸分解性基の分解性が高い場合等に、酸分解性基を有するフォトレジスト用樹脂中の酸分解性基が分解され、製造されたフォトレジスト用樹脂は経時安定性に劣ることがあった。しかしながら、本発明の製造方法は、メルカプト基含有連鎖移動剤及び/又はヒドロキシ基含有化合物の存在下で行う単量体の重合において上記塩基性化合物Aを用いることにより、重合中に樹脂中の酸分解性基が酸脱離反応により脱離しにくくなり、優れたレジスト性能を有しながら、経時安定性が良好であるフォトレジスト用樹脂を得ることができる。
上記塩基性化合物AのpKbは、溶媒を水としたとき溶液の25℃における塩基解離定数である。上記塩基性化合物AのpKbは、上述のように10以下であり、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。上記pKbの下限は、例えば1である。
上記塩基性化合物Aとしては、例えば、アンモニア、アミン(アリルアミン、ベンジルアミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、エタノールアミン、メトキシアミン、ヒドラジン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、t−ブチルシクロヘキシルアミン、2−メチルピペリジン、アセトアニリド等の第2級アミン;トリエチルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、1−メチルピペリジン等の第3級アミン等)、窒素原子含有複素環化合物(ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(ジアザビシクロウンデセン)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2−フェニルイミダゾール、イミダゾール、イソキノリン等)等が挙げられる。中でも、第3級アミン、窒素原子含有複素環化合物が好ましい。上記塩基性化合物Aは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記メルカプト基含有連鎖移動剤を使用する場合の上記塩基性化合物Aの使用量は、上記メルカプト基含有連鎖移動剤の量(100モル)に対して、0.05モル以上であり、好ましくは0.07モル以上、より好ましくは0.08モル以上である。上記使用量の上限は、例えば10モル、好ましくは5モル、より好ましくは3モルである。
また、上記ヒドロキシ基含有化合物を使用する場合の上記塩基性化合物Aの使用量は、上記ヒドロキシ基含有化合物の量(100モル)に対して、0.01モル以上であり、好ましくは0.03モル以上、より好ましくは0.05モル以上である。上記使用量の上限は、例えば10モル、好ましくは5モル、より好ましくは3モルである。
なお、本発明の製造方法において、上記メルカプト基含有連鎖移動剤と上記ヒドロキシ基含有化合物とを併用してもよい。しかし、メルカプト基含有連鎖移動剤とヒドロキシ基含有化合物とでは、使用する化合物にもよるが、酸性度が異なる。よって、上記塩基性化合物Aの使用量は、基準とする化合物で異なるのが通常である。このため、上記メルカプト基含有連鎖移動剤と上記ヒドロキシ基含有化合物とを併用する場合の上記塩基性化合物Aの使用量は、上記メルカプト基含有連鎖移動剤及び上記ヒドロキシ基含有化合物のそれぞれの使用量に応じて選択することができる。具体的には、上記塩基性化合物Aの使用量は、上記メルカプト基含有連鎖移動剤の量(100モル)に対する上記の好ましい範囲内の使用量と、上記ヒドロキシ基含有化合物の量(100モル)に対する上記の好ましい範囲内の使用量との合計量とすることが好ましい。
上記重合工程において、上記塩基性化合物Aは、滴下してもよいし、予め、単量体や重合開始剤の滴下開始前の重合溶媒中に存在させておいてもよい。
上記滴下重合法により上記単量体をラジカル重合させる工程(重合工程)は、重合開始剤の存在下行うことが好ましい。
上記滴下重合法において、滴下する単量体は、単量体を含有する液体(例えば、単量体溶液)として滴下してもよい。また、滴下する重合開始剤についても同様である。また、単量体と重合開始剤をそれぞれ独立に滴下してもよいし、単量体及び重合開始剤を含有する混合液体を滴下してもよい。また、重合開始剤の存在下重合を行う場合、上記滴下重合法では、滴下する重合開始剤とは別に、予め、単量体や重合開始剤の滴下開始前の重合溶媒中に重合開始剤を存在させておいてもよい。
なお、上記単量体及び/又は重合開始剤の滴下は、連続的滴下(一定時間かけて滴下する態様)であってもよく、断続的滴下(複数回に分けて分割滴下する態様)であってもよい。また、上記滴下の速度等は、滴下途中に1回以上変更してもよい。
上記単量体としては、公知のラジカル重合性を有する単量体を使用することができ、例えば、上述の本発明のフォトレジスト用樹脂の重合単位として例示及び説明された重合単位に相当する単量体が挙げられる。上記重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、特に、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
重合開始剤の使用量は、所望の重量平均分子量を有するポリマーを得るために必要な量であればよく、例えば、単量体の総量(100モル)に対して、0.05〜120モル、好ましくは0.1〜50モル、より好ましくは0.2〜10モル程度である。また、単量体の総量(100重量部)に対する重合開始剤の使用量は、例えば0.01〜30重量部、好ましくは0.2〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。また、上記重合開始剤の量(100モル)に対するメルカプト基含有連鎖移動剤の使用量は、例えば1〜10000モル、好ましくは5〜5000モル、より好ましくは10〜1000モル、さらに好ましくは15〜200モルである。
滴下する単量体及び重合開始剤の全滴下時間(上記滴下開始後から上記滴下終了時までの時間)は、重合温度及び単量体の種類等によって異なるが、一般には1〜10時間、好ましくは2〜9時間、さらに好ましくは3〜8時間程度である。滴下する単量体の温度としては、40℃以下が好ましい。単量体が40℃以下であると、反応初期に分子量が大き過ぎるポリマーがより生成しにくくなる傾向がある。また、単量体を含有する液体は、単量体の種類によっては冷やしすぎると結晶化する場合がある。そのため、滴下する単量体の温度としては−10〜40℃の範囲がより好ましい。
上記重合工程は、無溶剤で行ってもよいし、重合溶媒の存在下行ってもよい。上記重合溶媒としては、例えば、グリコール系溶媒(上記グリコール系化合物)、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、1価アルコール系溶媒(上記1価アルコール系化合物)、炭化水素系溶媒、これらの混合溶媒等が挙げられる。グリコール溶媒としては、上記グリコール系化合物以外に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒には、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒;3−メトキシプロピオン酸メチル等のプロピオン酸エステル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶媒等が挙げられる。ケトン系溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エーテル系溶媒には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等が挙げられる。アミド系溶媒には、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシド系溶媒には、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。炭化水素系溶媒には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
好ましい重合溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒;乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
上記重合工程において、上記メルカプト基含有連鎖移動剤以外の連鎖移動剤(他の連鎖移動剤)を併用してもよい。但し、連鎖移動剤を併用して得られる樹脂のうち、他の連鎖移動剤により重合して得られた樹脂は、末端にRS基を有しないため本発明のフォトレジスト用樹脂には該当しない。上記他の連鎖移動剤としては、公知のラジカル重合に使用される連鎖移動剤を使用することができ、例えば、次亜燐酸塩(次亜燐酸ナトリウム等)、α−メチルスチレンダイマー、タービノーレン、ミルセン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン等を挙げることができる。但し、本発明のフォトレジスト用樹脂を高効率で得る観点から、全連鎖移動剤(100モル%)中の他の連鎖移動剤の含有量は、5モル%以下が好ましく、より好ましくは1モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下、特に好ましくは0.1モル%以下、最も好ましくは0モル%である。
重合温度は、特に限定されないが、例えば30〜150℃程度、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃である。なお、上記重合温度は、重合途中に、上記の重合温度の範囲内において1回以上変更してもよい。
上記重合工程では、上記滴下終了後、熟成する時間を設けてもよい。上記熟成する時間としては、特に限定されないが、例えば0.5〜10時間程度、好ましくは1〜15時間程度である。
上記重合工程において生成した樹脂(ポリマー)は沈殿(再沈殿を含む)により単離できる。例えば、重合溶液(ポリマードープ)を溶媒(沈殿溶媒)中に添加してポリマーを沈殿させるか、又は該ポリマーを再度適当な溶媒に溶解させ、この溶液を溶媒(再沈殿溶媒)中に添加して再沈殿させるか、或いはまた、重合溶液(ポリマードープ)中に溶媒(再沈殿溶媒や重合溶媒)を添加して希釈することにより目的のポリマーを得ることができる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水の何れであってもよく、また混合溶媒であってもよい。
沈殿又は再沈殿溶媒として用いる溶媒としては、周知乃至慣用の溶媒を用いることができる。また、沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒は、重合溶媒と同一の溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、例えば、上記重合溶媒として例示された有機溶媒(グリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、1価アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒);ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等);ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタン等);ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリル等);カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等);カルボン酸(酢酸等);これらの溶媒を含む混合溶媒等が挙げられる。
中でも、上記沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)もしくは、アルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、炭化水素(例えば、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)と他の溶媒(例えば、酢酸エチル等のエステル類等)との比率は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=50/50〜97/3程度である。
また、上記沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒としては、アルコール(特に、メタノール)と水との混合溶媒、グリコール系溶媒(特に、ポリエチレングリコール)と水との混合溶媒も好ましい。この場合の有機溶媒(アルコール又はグリコール系溶媒)と水との比率(体積比;25℃)は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比:25℃)=50/50〜97/3程度である。
沈殿(再沈殿を含む)で得られたポリマーは、必要に応じて、リンス処理や、ポリマーを溶媒でほぐして分散させながら撹拌して洗浄する処理(「リパルプ処理」と称する場合がある)に付される。リパルプ処理後にリンス処理を施してもよい。重合により生成したポリマーを溶媒でリパルプしたり、リンスすることにより、ポリマーに付着している残存モノマーや低分子量オリゴマー等を効率よく除くことができる。
本発明の製造方法においては、中でも、上記リパルプ処理やリンス処理溶媒として用いる有機溶媒として、少なくとも炭化水素(特に、ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素)もしくは、アルコール(特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等)を含む溶媒が好ましい。
上記沈殿(再沈殿を含む)、リパルプ処理、又はリンス処理の後、例えば、必要に応じて溶媒をデカンテーション、濾過等で溶媒を取り除き、乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥温度は、例えば20〜120℃、好ましくは30〜100℃程度である。乾燥は減圧下(例えば200mmHg(26.6kPa)以下、特に100mmHg(13.3kPa)以下)で行うのが好ましい。
[フォトレジスト用樹脂組成物]
本発明のフォトレジスト用樹脂組成物は、本発明のフォトレジスト用樹脂と、感放射線性酸発生剤を少なくとも含有する。
感放射線性酸発生剤としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線による露光により、効率よく酸を発生する慣用乃至公知の化合物を使用することができ、母核と発生する酸とからなる化合物である。上記母核としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物等が挙げられる。また、上記露光により発生する酸としては、例えば、アルキルあるいはフッ化アルキルスルホン酸、アルキルあるいはフッ化アルキルカルボン酸、アルキルあるいはフッ化アルキルスルホニルイミド酸等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
感放射線性酸発生剤の使用量は、放射線の照射により生成する酸の強度やフォトレジスト用樹脂における各繰り返し単位の比率等に応じて適宜選択でき、例えば、本発明のフォトレジスト用樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部程度の範囲から選択できる。
フォトレジスト用樹脂組成物は、例えば、上記フォトレジスト用樹脂と、感放射線性酸発生剤を、レジスト用溶剤中で混合することにより調製することができる。上記レジスト用溶剤としては、上記重合溶媒として例示したグリコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、これらの混合溶媒等を使用することができる。
フォトレジスト用樹脂組成物中の本発明のフォトレジスト用樹脂濃度は、例えば、3〜40重量%程度である。フォトレジスト用樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシ基含有樹脂)等のアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料)等を含んでいてもよい。
こうして得られるフォトレジスト用樹脂組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いでアルカリ溶解することにより、微細なパターンを高い精度で形成することができる。
基材又は基板としては、シリコンウェハ、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等が挙げられる。フォトレジスト用樹脂組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば0.05〜20μm、好ましくは0.1〜2μm程度である。
露光には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線を利用することができる。
露光により感放射線性酸発生剤から酸が生成し、この酸により、フォトレジスト用樹脂組成物の酸の作用によりアルカリ可溶となる重合単位(酸分解性基を有する繰り返し単位)のカルボキシ基等の保護基(酸分解性基)が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシ基等が生成する。そのため、アルカリ現像液による現像により、所定のパターンを精度よく形成できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン溶媒を用いたGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフ)により求めた。標準試料にポリスチレンを使用し、検出器としては屈折率計(Refractive Index Detector;RI検出器)を用いた。また、GPC測定には、昭和電工(株)製カラム(商品名「KF−806L」)を3本直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、RI温度40℃、テトラヒドロフラン流速0.8mL/分の条件で行った。分子量分布(Mw/Mn)は上記測定値より算出した。
樹脂の酸価は、NaOHを用いた中和滴定により測定した。樹脂濃度が15重量%のPGMEA溶液0.5gを秤量し、テトラヒドロフラン(THF)54mL、水6mLを加えた。指示薬としてフェノールフタレイン1体積%を含むエタノール溶液を0.05g加えた。この溶液を撹拌しながら0.1mol/LのNaOH水溶液で滴定し、溶液が無色からピンク色に変色した点を終点とし、下記式により酸価を算出した。
酸価(mmol/g)=[(B×0.1)/(A×C)]×100
(式中、Aは測定試料の重量(g)、Bは終点までに滴下した0.1mol/LのNaOH水溶液量(mL)、Cは測定試料の樹脂濃度(重量%)を示す)
実施例1
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート28.33gを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、メタクリル酸6−シアノ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル22.41g(0.091mol)、メタクリル酸3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル5.35g(0.023mol)、メタクリル酸1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル22.23g(0.113mol)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V−601」]0.90g(0.0039mol)、1−ドデカンチオール0.53g(0.0026mol)、トリエチルアミン2.64mg(0.026mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート255.00gを混合した溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、反応溶液の撹拌をさらに2時間続けた。
重合反応終了後、該反応溶液の10倍量のヘプタンと酢酸エチル8:2(重量比)の混合液(25℃)中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望のポリマー37.9gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が14100、分子量分布(Mw/Mn)が1.80であった。さらに回収したポリマーの酸価測定を行ったところ、0.01mmol/gであった。
実施例2
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート28.33g、メチルエチルケトン28.33gを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、メタクリル酸6−シアノ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル23.55g(0.095mol)、メタクリル酸1−メチルシクロペンタン−1−イル8.90g(0.053mol)、メタクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルプロピル17.55g(0.064mol)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V−601」]1.00g(0.0043mol)、1−ドデカンチオール0.88g(0.0043mol)、ジアザビシクロウンデセン0.66mg(0.0043mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート113.33g、メチルエチルケトン113.33gを混合した溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、反応溶液の撹拌をさらに2時間続けた。
重合反応終了後、該反応溶液の10倍量のヘプタンと酢酸エチル8:2(重量比)の混合液(25℃)中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望のポリマー36.1gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8300、分子量分布(Mw/Mn)が1.66であった。さらに回収したポリマーの酸価測定を行ったところ、0.02mmol/gであった。
実施例3
還流管、撹拌子、3方コックを備えた丸底フラスコに、窒素雰囲気下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45.33g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.33gを入れて温度を80℃に保ち、撹拌しながら、メタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル13.54g(0.061mol)、メタクリル酸3,5−ジヒドロキシアダマンタン−1−イル10.25g(0.041mol)、メタクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチル18.65g(0.071mol)、メタクリル酸2−エチルアダマンタン−2−イル7.56g(0.031mol)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート[和光純薬工業(株)製、商品名「V−601」]4.20g(0.0182mol)、チオグリコール酸メチル0.48g(0.0046mol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン10.61mg(0.0821mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート181.33g、プロピレングリコールモノメチルエーテル45.33gを混合した溶液を6時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、反応溶液の撹拌をさらに2時間続けた。
重合反応終了後、該反応溶液の10倍量のヘプタンと酢酸エチル8:2(重量比)の混合液(25℃)中に撹拌しながら滴下した。生じた沈殿物を濾別、減圧乾燥することにより、所望のポリマー38.6gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が4700、分子量分布(Mw/Mn)が1.58であった。さらに回収したポリマーの酸価測定を行ったところ、0.01mmol/gであった。
比較例1
重合時にトリエチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、ポリマー39.9gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が13900、分子量分布(Mw/Mn)が1.78であった。さらに回収したポリマーの酸価測定を行ったところ、0.21mmol/gであった。
比較例2
重合時にジアザビシクロウンデセンを添加しなかったこと以外は実施例2と同様の操作を行ったところ、ポリマー35.8gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が8100、分子量分布(Mw/Mn)が1.65であった。さらに回収したポリマーの酸価測定を行ったところ、0.15mmol/gであった。
比較例3
重合時にN,N−ジイソプロピルエチルアミンを添加しなかったこと以外は実施例3と同様の操作を行ったところ、ポリマー38.0gを得た。回収したポリマーをGPC分析したところ、Mw(重量平均分子量)が5000、分子量分布(Mw/Mn)が1.60であった。さらに回収したポリマーの酸価測定を行ったところ、0.32mmol/gであった。
上記実施例1及び比較例1で作製した樹脂は、下記式で表される重合単位を有する。
上記実施例2及び比較例2で作製した樹脂は、下記式で表される重合単位を有する。
上記実施例3及び比較例3で作製した樹脂は、下記式で表される重合単位を有する。
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた各ポリマーについて以下の通り評価を行った。
(1)レジスト性能
実施例及び比較例で得られた各ポリマー2.0gに、1−メトキシ−2−プロピルアセテート18.0gをそれぞれ添加し、6時間23℃で攪拌した。攪拌終了後、目視にて溶解有無を確認し、以下の基準で評価した。結果を、表1の「レジスト性能」の欄に示した。
○(良好):溶液が透明で溶け残りが見られない。
×(不良):溶け残りが見られる、または溶液が白濁している。
(2)経時安定性
実施例及び比較例で得られた各ポリマー2.0gを粉体のまま30日間40℃で保存した。所定の日数経過後、ポリマーの酸価測定を行った。結果を以下の基準で評価し、表1の「経時安定性」の欄に示した。
○(良好):ポリマー合成時と比べ、酸価が増加していない。
×(不良):ポリマー合成時と比べ、酸価が増加している。
なお、表1に示す成分について、以下に説明する。また、表1に示す各モノマーの数値は、全モノマーに対する各モノマーの割合(モル%)である。
(モノマー)
A:メタクリル酸6−シアノ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル
B:メタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル
C:メタクリル酸3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル
D:メタクリル酸3,5−ジヒドロキシアダマンタン−1−イル
E:メタクリル酸1−メチルシクロペンタン−1−イル
F:メタクリル酸1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル
G:メタクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチル
H:メタクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルプロピル
I:メタクリル酸2−エチルアダマンタン−2−イル
(連鎖移動剤)
CT−1:1−ドデカンチオール
CT−2:チオグリコール酸メチル
(塩基性化合物A)
B−1:トリエチルアミン
B−2:ジアザビシクロウンデセン
B−3:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
評価結果からわかるとおり、本発明のフォトレジスト用樹脂(実施例1〜3)は、優れたレジスト性能を有し、かつ経時安定性が良好であった。一方、比較例1〜3で得られたフォトレジスト用樹脂は、重合時にpKbが10以下である塩基性化合物を用いなかったため、酸価が比較的高く、経時安定性に劣っていた。