JP6945382B2 - 硫化物固体電解質 - Google Patents
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Description
アルジロダイト型結晶構造は、安定性が高い結晶であり、また、リチウムイオン伝導度の高いものも存在する。
本発明の目的の1つは、製造時の塊状化を抑制できる、アルジロダイト型結晶構造を含む硫化物固体電解質を提供することである。
5.0≦a<7.3 (1)
0.70≦a−b<1.0 (2)
7.0<a+c≦7.3 (3)
(式中、b>0且つc>0を満たす。)
また、本発明の一実施形態によれば、製造時の塊状化を抑制できる、アルジロダイト型結晶構造を含む硫化物固体電解質を提供することができる。
5.0≦a<7.3 (1)
0.70≦a−b<1.0 (2)
7.0<a+c≦7.3 (3)
(式中、b>0且つc>0を満たす。)
式(2)の0.70≦a−b<1.0は、0.70≦1−α<1.0となり、さらに式を変形すると0<α≦0.30となる。即ち、本実施形態の硫化物固体電解質は、一般的なアルジロダイト結晶を含む硫化物固体電解質よりも、S(硫黄)を過剰に含む硫化物固体電解質である。
また、式(3)の7.0<a+c≦7.3は、7.0<7+β≦7.3となり、さらに式を変形すると0<β≦0.3となる。即ち、本実施形態の硫化物固体電解質は、一般的なアルジロダイト結晶を含む硫化物固体電解質よりも、X(ハロゲン)を過剰に含む硫化物固体電解質である。
上記式(2)は、0.85≦a−b<1.0であることが好ましく、0.9≦a−b<1.0であることがより好ましい。
上記式(3)は、7.0<a+c≦7.15であることが好ましく、7.0<a+c≦7.1であることがより好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質では、上記式(1)、上記式(2)が0.70≦a−b<1.0及び上記式(3)が7.0<a+c≦7.3の場合には、イオン伝導度が5.0mS/cm以上である。上記式(1)、上記式(2)が0.85≦a−b<1.0及び上記式(3)が7.0<a+c≦7.15の場合には、イオン伝導度が5.5mS/cm以上と、より高くすることができる。さらに、上記式(1)、上記式(2)が0.9≦a−b<1.0及び上記式(3)が7.0<a+c≦7.1の場合には、イオン伝導度が6.5mS/cm以上と、さらに高くすることができる。
各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調製することにより制御できる。
元素X全体において、元素X1の占めるモル比が最も大きい場合、上記式(1)は、5.1≦a≦6.6であることが好ましく、5.2≦a≦6.4であることがより好ましい。また、元素X2の占めるモル比が最も大きい場合、上記式(1)は、5.2≦a≦6.8であることが好ましく、5.3≦a≦6.6であることがより好ましい。また、元素X3の占めるモル比が最も大きい場合、上記式(1)は、5.3≦a≦7.0であることが好ましく、5.4≦a≦6.8であることがより好ましい。
2θ=25.2±0.5deg及び29.7±0.5degの回折ピークは、アルジロダイト型結晶構造に由来するピークである。アルジロダイト型結晶構造は、PS4 3−を主たる骨格の単位構造とし、その周辺にリチウム元素(Li)で囲まれた硫黄元素(S)やハロゲン元素(X)が配置されている構造である。
アルジロダイト型結晶構造の回折ピークは、例えば、2θ=15.3±0.5deg、17.7±0.5deg、31.1.±0.5deg、44.9±0.5deg、47.7±0.5degにも現れることがある。本実施形態の硫化物固体電解質は、これらのピークを有していてもよい。
Lia(P1−zMz)SbXc (4)
(式中、Mは、Si、Ge、Sn、Pb、B、Al、Ga、As、Sb及びBiからなる群より選択される1以上の元素であり、Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される1以上の元素である。a〜cは上記式(1)〜(3)を満たす。zは0≦z≦0.3である。)
zは0がより好ましい。
0<IA/IB<0.05 (5)
(式中、IAは2θ=17.6±0.4deg及び2θ=18.1±0.4degのうちアルジロダイト型結晶構造の回折ピークではないものの回折ピークの強度を表し、IBは2θ=29.7±0.5degの回折ピークの強度を表す。)
なお、2θ=17.6±0.4deg及び2θ=18.1±0.4degのいずれかは、通常、比較的ピーク強度の強いアルジロダイト型結晶構造の回折ピークと重なるため測定できない場合がある。従って、2θ=17.6±0.4deg及び2θ=18.1±0.4degのうちアルジロダイト型結晶構造の回折ピークではないものとは、通常、観測されるこれら2つのピークのうち強度の弱い方を意味する。なお、ノイズがピークのように観察されるケースもある。かかる場合にこのノイズをIBと仮定しても式(5)を満たすことはいうまでもない。
上記硫化リチウムは、制限なく使用できるが、高純度のものが好ましい。硫化リチウムは、例えば、特開平7−330312号公報、特開平9−283156号公報、特開2010−163356号公報、特開2011−84438号公報に記載の方法により製造することができる。
具体的には、炭化水素系有機溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを70℃〜300℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成できる(特開2010−163356号公報)。
また、水溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを10℃〜100℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成できる(特開2011−84438号公報)。
Ml−Xm (6)
Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)から選択されるハロゲン元素である。
また、lは1又は2の整数であり、mは1〜10の整数である。mが2〜10の整数の場合、すなわち、Xが複数存在する場合は、Xは同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、後述するSiBrCl3は、mが4であって、XはBrとClという異なる元素からなるものである。
ハロゲン化合物は、上記の化合物の中から一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわち上記の化合物の少なくとも1つを用いることができる。また、この場合において、ハロゲン元素は、上記のハロゲン元素の中から一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫化物固体電解質の元素組成を調整するためには、例えば、原料として、硫化リチウム、硫化リン及びハロゲン化リチウム(LiX)を使用する場合、さらに、単体硫黄や、有機多硫化物、無機多硫化物、窒化硫黄等の硫黄化合物を原料として用い、硫黄元素の元素比を高くすることが挙げられる。これらを使用して、Li2S、P2S5、LiXの3つの原料から計算される量論比から、相対的に硫黄を多くすることが好ましい。なかでも、単体硫黄を原料として用いることが好ましい。
従来技術(例えば、特許文献2等)では、原料粉末の結晶性を維持できる程度に粉砕混合している。一方、本実施形態では原料に機械的応力を加えて反応させ、ガラス成分を含む中間体とすることが好ましい。すなわち、従来技術よりも強い機械的応力により、原料粉末の少なくとも一部が結晶性を維持できない状態まで粉砕混合する。これにより、中間体の段階でアルジロダイト型結晶構造の基本骨格であるPS4構造を生じさせ、かつ、ハロゲンを高分散させることができる。その結果、次工程の熱処理時に、安定相であるアルジロダイト型結晶構造となる際に、ハロゲンがアルジロダイト型結晶構造に取り込まれやすくなる。また、領域毎に異なる相を経ないため、Li3PS4結晶構造等の低イオン伝導相が生じにくいと推定している。これにより、本実施形態の硫化物固体電解質は高いイオン伝導度を発現すると推定している。
尚、中間体がガラス(非晶質)成分を含むことは、XRD測定において非晶質成分に起因するブロードなピーク(ハローパターン)の存在により確認できる。
また、本実施形態の硫化物固体電解質は、特許文献1のように原料を550℃で6日間も加熱する必要はないため、量産性が高い。
ガラス成分を含む中間体を製造し、原子レベルで材料成分を混ぜ合わせることで、ガラス成分を含む中間体の熱処理中に、ハロゲンがスムーズにアルジロダイト結晶構造のサイトに入ることがきる。
粉砕メディアであるボールは、例えば、ジルコニア製ボールを使用した場合、その直径は0.2〜20mmが好ましい。
本実施形態では、硫化水素気流下で原料混合物を熱処理してもよい。これにより、熱処理時における硫黄の蒸発が抑制されるため、硫黄の含有量を高く維持できる。なお、本実施形態では硫化水素不存在下で熱処理してもよい。
例えば、本実施形態の硫化物固体電解質に活物質(正極活物質又は負極活物質)を加えて電極合材として、正極層、負極層の材料とできる。また、本実施形態の硫化物固体電解質は、電解質層の材料とできる。これら正極層、負極層及び電解質層は、リチウムイオン電池の各部材とすることができる。
本発明の一実施形態に係る電極合材は、上述した本発明の硫化物固体電解質と、活物質を含む。又は、本発明の硫化物固体電解質により製造される。活物質として負極活物質を使用すると負極合材となる。一方、正極活物質を使用すると正極合材となる。
本発明の硫化物固体電解質に負極活物質を配合することにより負極合材が得られる。
負極活物質としては、例えば、炭素材料、金属材料等を使用することができる。これらのうち2種以上からなる複合体も使用できる。また、今後開発される負極活物質も使用することができる。
また、負極活物質は電子伝導性を有していることが好ましい。
炭素材料としては、グラファイト(例えば、人造黒鉛)、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。
金属材料としては、金属単体、合金、金属化合物が挙げられる。当該金属単体としては、金属ケイ素、金属スズ、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミニウムが挙げられる。当該合金としては、ケイ素、スズ、リチウム、インジウム及びアルミニウムのうち少なくとも1つを含む合金が挙げられる。当該金属化合物としては、金属酸化物が挙げられる。金属酸化物は、例えば酸化ケイ素、酸化スズ、酸化アルミニウムである。
負極合材における負極活物質の含有量が少なすぎると電気容量が小さくなる。また、負極活物質が電子伝導性を有し、導電助剤を含まないか、又は少量の導電助剤しか含まない場合には、負極内の電子伝導性(電子伝導パス)が低下し、レート特性が低くなるおそれや、負極活物質の利用率が下がり、電気容量が低下するおそれがあると考える。一方、負極合材における負極活物質の含有量が多すぎると、負極内のイオン伝導性(イオン伝導パス)が低下し、レート特性が低くなるおそれや、負極活物質の利用率が下がり、電気容量が低下するおそれがあると考える。
負極活物質の電子伝導性が低い場合には、導電助剤を添加することが好ましい。導電助剤は、導電性を有していればよく、その電子伝導度は、好ましくは1×103S/cm以上であり、より好ましくは1×105S/cm以上である。
導電助剤の具体例としては、好ましくは炭素材料、ニッケル、銅、アルミニウム、インジウム、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、クロム、金、ルテニウム、白金、ベリリウム、イリジウム、モリブデン、ニオブ、オスニウム、ロジウム、タングステン及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む物質であり、より好ましくは導電性が高い炭素単体、炭素単体以外の炭素材料;ニッケル、銅、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、ルテニウム、金、白金、ニオブ、オスニウム又はロジウムを含む金属単体、混合物又は化合物である。
なお、炭素材料の具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;黒鉛、炭素繊維、活性炭等が挙げられ、これらは単独でも2種以上でも併用可能である。なかでも、電子伝導性が高いアセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックが好適である。
結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
混合方法は特に限定されないが、例えば、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、カッターミルを用いて混合する乾式混合;及び有機溶媒中に原料を分散させた後に、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、フィルミックスを用いて混合し、その後溶媒を除去する湿式混合を適用することができる。これらのうち、負極活物質粒子を破壊しないために湿式混合が好ましい。
本発明の固体電解質に正極活物質を配合することにより正極合材が得られる。
正極活物質は、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質であり、電池分野において正極活物質として公知のものが使用できる。また、今後開発される正極活物質も使用することができる。
金属酸化物は、例えば遷移金属酸化物である。具体的には、V2O5、V6O13、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCoYO2、LiCo1−YMnYO2、LiNi1−YMnYO2(ここで、0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNiZO4、LiMn2−ZCoZO4(ここで、0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4、CuO、Li(NiaCobAlc)O2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)等が挙げられる。
金属硫化物としては、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)等が挙げられる。
その他、金属酸化物としては、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)等が挙げられる。
非金属硫化物としては、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物等が挙げられる。
上記の他、セレン化ニオブ(NbSe3)、金属インジウム、硫黄も正極活物質として使用できる。
導電助剤は、負極合材と同様である。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン電池は、上述した本発明の硫化物固体電解質及び電極合材のうち少なくとも1つを含む。又は、本発明の硫化物固体電解質及び電極合材のうち少なくとも1つにより製造される。
リチウムイオン電池の構成は特に限定されないが、一般に、負極層、電解質層及び正極層をこの順に積層した構造を有する。以下、リチウムイオン電池の各層について説明する。
負極層は、好ましくは本発明の負極合材から製造される層である。
又は、負極層は、好ましくは本発明の負極合材を含む層である。
負極層の厚さは、100nm以上5mm以下が好ましく、1μm以上3mm以下がより好ましく、5μm以上1mm以下がさらに好ましい。
負極層は公知の方法により製造することができ、例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
電解質層は、固体電解質を含む層又は固体電解質から製造された層である。当該固体電解質は特に限定されないが、好ましくは本発明の硫化物固体電解質である。
電解質層は、固体電解質のみからなってもよく、さらにバインダーを含んでもよい。当該バインダーとしては、本発明の負極合材の結着剤と同じものが使用できる。
電解質層の固体電解質は、融着していてもよい。融着とは、固体電解質粒子の一部が溶解し、溶解した部分が他の固体電解質粒子と一体化することを意味する。また、電解質層は、固体電解質の板状体であってもよく、当該板状体は、固体電解質粒子の一部又は全部が溶解し、板状体になっている場合も含む。
電解質層は、公知の方法により製造することができ、例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
正極層は、正極活物質を含む層であり、好ましくは本発明の正極合材を含む層又は本発明の正極合材から製造された層である。
正極層の厚さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
正極層は、公知の方法により製造することができ、例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池は、好ましくは集電体をさらに備える。例えば負極集電体は負極層の電解質層側とは反対側に、正極集電体は正極層の電解質層側とは反対側に設ける。
集電体として、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又はこれらの合金等からなる板状体や箔状体等が使用できる。
また、接合面にイオン伝導性を有する活物質や、イオン伝導性を阻害しない接着物質を介して接合してもよい。
接合においては、固体電解質の結晶構造が変化しない範囲で加熱融着してもよい。
また、本実施形態のリチウムイオン電池は、上述した各部材を順次形成することでも製造できる。公知の方法により製造することができ、例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
なお、評価方法は以下のとおりである。
(1)イオン伝導度測定と電子伝導性測定
各例で製造した硫化物固体電解質を、錠剤成形機に充填し、ミニプレス機を用いて407MPa(プレス表示値22MPa)の圧力を加え成形体とした。電極としてカーボンを成形体の両面に乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、測定用の成形体(直径約10mm、厚み0.1〜0.2cm)を作製した。この成形体について交流インピーダンス測定によりイオン伝導度を測定した。伝導度の値は25℃における数値を採用した。
なお、本実施例で用いたイオン伝導度の測定方法では、イオン伝導度が1.0×10−6S/cm未満の場合には、イオン伝導度を正確に測ることができないため、測定不能とした。
また、この成形体について直流電気測定により電子伝導度を測定した。電子伝導度の値は25℃における数値を採用した。なお、5Vの電圧を印加したときの電子伝導度が1.0×10−6S/cm未満の場合、電子伝導性は測定不能とした。
各例で製造した硫化物固体電解質の粉末から、直径10mm、高さ0.1〜0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。この試料を、XRD用気密ホルダーを用いて空気に触れさせずに測定した。回折ピークの2θ位置は、XRD解析プログラムJADEを用いて重心法にて決定した。
株式会社リガクの粉末X線回折測定装置SmartLabを用いて以下の条件にて実施した。
管電圧:45kV
管電流:200mA
X線波長:Cu−Kα線(1.5418Å)
光学系:平行ビーム法
スリット構成:ソーラースリット5°、入射スリット1mm、受光スリット1mm
検出器:シンチレーションカウンター
測定範囲:2θ=10−60deg
ステップ幅、スキャンスピード:0.02deg、1deg/分
ピーク強度においては、2θ=29.7deg±0.5degに存在するアルジロダイト型結晶構造の1本のピーク強度、2θ=17.6±0.4degかつ18.1±0.4degに存在するLi3PS4結晶構造の2本のピーク強度を次の手順で解析し、強度比を計算した。
各例で製造した硫化物固体電解質の粉末を秤量し、アルゴン雰囲気中で、バイアル瓶に採取した。バイアル瓶にKOHアルカリ水溶液を入れ、硫黄分の捕集に注意しながらサンプルを溶解し、適宜希釈、測定溶液とした。これを、パッシェンルンゲ型ICP−OES装置(SPECTRO社製SPECTRO ARCOS)にて測定し、組成を決定した。
検量線溶液は、Li、P、SはICP測定用1000mg/L標準溶液を、Cl、Brはイオンクロマトグラフ用1000mg/L標準溶液を、Iはよう化カリウム(試薬特級)を用いて調製した。
各試料で2つの測定溶液を調整し、各測定溶液で5回の測定を行い、平均値を算出した。その2つの測定溶液の測定値の平均で組成を決定した。
(硫化リチウム(Li2S)の製造)
撹拌機付きの500mLセパラブルフラスコに、不活性ガス下で乾燥したLiOH無水物(本荘ケミカル社製)を200g仕込んだ。窒素気流下にて昇温し、内部温度を200℃に保持した。窒素ガスを硫化水素ガス(住友精化)に切り替え、500mL/minの流量にし、LiOH無水物と硫化水素を反応させた。
反応により発生する水分はコンデンサーにより凝縮して回収した。反応を6時間行った時点で水が144mL回収された。さらに3時間反応を継続したが、水の発生は見られなかった。
生成物粉末を回収して、純度及びXRDを測定した。その結果、純度は98.5%であり、XRDではLi2Sのピークパターンが確認できた。
製造例1で製造した硫化リチウム(純度98.5%)、五硫化二リン(サーモフォス社製、純度99.9%以上)、塩化リチウム(シグマアルドリッチ社製、純度99%)及び単体硫黄(シグマアルドリッチ社製、純度99.9%)を出発原料に用いた(以下、全ての実施例において、各出発原料の純度は同様である)。硫化リチウム(Li2S)、五硫化二リン(P2S5)、塩化リチウム(LiCl)、及び単体硫黄(S)のmol比(Li2S:P2S5:LiCl:S)が42.2:11.1:35.6:11.1となるように、各原料を混合した。具体的には、硫化リチウム0.464g、五硫化二リン0.591g、塩化リチウム0.360g、単体硫黄0.085gを混合し、原料混合物とした。
上記中間体の粉末約1.5gをAr雰囲気下のグローブボックス内で、タンマン管(PT2,東京硝子機器株式会社製)内に詰め、石英ウールでタンマン管の口を塞ぎ、さらにSUS製の密閉容器で大気が入らないよう封をした。その後、密閉容器を電気炉(FUW243PA、アドバンテック社製)内に入れ熱処理した。具体的には、室温から520℃まで2.5℃/minで昇温し(3時間で520℃に昇温)、520℃で8時間保持した。その後、徐冷し、硫化物固体電解質を得た。
回収直後の硫化物固体電解質の外観写真を図2に示す。硫化物固体電解質の大部分が粉状であることが確認できる。なお、一部の塊状体も、乳鉢による粉砕により容易に解砕できた。
硫化物固体電解質のXRDパターンを図3に示す。2θ=15.6、18.0、25.6、30.1、31.5、45.2、48.1degにアルジロダイト型結晶構造に由来するピークが観測された。一方、17.6±0.4degのLi3PS4結晶構造に由来するピークは観測されなかった。
硫化物固体電解質をICP分析し、各元素のモル比を測定した。また、イオン伝導度及び残量率を測定した。結果を表1に示す。
原料組成、メカニカリミングの条件、及び中間体の熱処理条件を表2に示すように変更した他は、実施例1と同様にして硫化物固体電解質を作製し、評価した。結果を表1に示す。
なお、いずれの硫化物固体電解質も電子伝導性は10−6S/cm未満であった。
例えば実施例2では、Ar雰囲気下のグローブボックス内で、中間体の粉末約1.5gをシール機能付きのガラス管内に詰め、大気が入らないように、ガラス管の先端を専用治具で封をした。その後、ガラス管を電気炉内にセットした。専用治具を電気炉内にある継手に差し入れて、ガス流通管に繋ぎ、硫化水素を20mL/minで流通しながら熱処理した。具体的には室温から500℃まで2.5℃/minで昇温し(3時間で500℃に昇温)、500℃で4時間保持した。その後、徐冷し、硫化物固体電解質を得た。
実施例3−7及び9−11についても、表2の条件で実施例2と同様に硫化水素を導入しながら熱処理した。
比較例1及び2について、回収直後の硫化物固体電解質の外観写真を図2に示す。硫化物固体電解質が大きな塊状体となっていることが確認できる。なお、乳鉢による粉砕では粗粒子が残り、十分に解砕することはできなかった。
実施例1で用いた硫化リチウム(Li2S)、五硫化二リン(P2S5)及び塩化リチウム(LiCl)のmol比(Li2S:P2S5:LiCl)が1.9:0.5:1.6となるように、各原料を混合した。
原料混合物と、直径10mmのジルコニア製ボール30gとを遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)ジルコニア製ポット(45mL)に入れ、完全密閉した。ポット内はアルゴン雰囲気とした。遊星型ボールミルで原料粉末の結晶性を維持できる程度に混合し、混合粉末を得た。
得られた混合粉末のXRDパターンを図4に示す。得られたXRDパターンでは、原料であるLi2S、P2S5、LiClのピークが確認でき、原料粉末の結晶性が維持されていた。
実施例1で用いた原料である硫化リチウム(Li2S)、五硫化二リン(P2S5)、塩化リチウム(LiCl)及び単体硫黄に、さらにヨウ化リチウム(LiI:シグマアルドリッチ社製、純度99%)を原料に用いた。これら原料のmol比(Li2S:P2S5:LiCl:LiI:S)が42.2:11.1:33.3:2.2:11.1となるように、各原料を混合した。具体的には、硫化リチウム0.449g、五硫化二リン0.572g、塩化リチウム0.327g、ヨウ化リチウム0.069g、硫黄0.083gを混合し、原料混合物とした。
得られた原料混合物を用いて、実施例2と同じメカニカルミリング条件及び熱処理条件で硫化物固体電解質を作製した。得られた硫化物固体電解質のイオン伝導度(σ)は、5.3mS/cmであった。なお、電子伝導性は10−6S/cm未満であった。
得られた硫化物固体電解質について、XRD測定した結果、アルジロダイト型結晶構造に由来するピークが観測された。
ICP分析の結果、モル比a(Li/P)は5.47、モル比b(S/P)は4.59、モル比c((Cl+I)/P)は1.67であった。
Claims (8)
- リチウムと、リンと、硫黄と、
ハロゲン元素から選択される1種以上の元素Xと、を含み、
アルジロダイト型結晶構造を含み、
前記リチウムのリンに対するモル比a(Li/P)、前記硫黄のリンに対するモル比b(S/P)及び前記元素Xのリンに対するモル比c(X/P)が、下記式(1)〜(3)を満たす、硫化物固体電解質。
5.0≦a<7.3 (1)
0.70≦a−b<1.0 (2)
7.0<a+c≦7.3 (3)
(式中、b>0且つc>0を満たす。) - CuKα線を使用した粉末X線回折において、2θ=25.2±0.5deg及び29.7±0.5degに回折ピークを有する、請求項1に記載の硫化物固体電解質。
- さらに、CuKα線を使用した粉末X線回折において、2θ=15.3±0.5deg、17.7±0.5deg、31.1±0.5deg、44.9±0.5deg及び47.7±0.5degの回折ピークのうち少なくとも1つを有する、請求項2に記載の硫化物固体電解質。
- 前記回折ピークの範囲が中央値の±0.3degである、請求項2又は3に記載の硫化物固体電解質。
- イオン伝導度が5.0mS/cm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の硫化物固体電解質。
- CuKα線を使用した粉末X線回折において、2θ=17.6±0.4deg及び2θ=18.1±0.4degに回折ピーク(アルジロダイト型結晶構造に起因する回折ピークではない)を有しないか、有する場合には下記式(5)を満たす、請求項1〜5のいずれかに記載の硫化物固体電解質。
0<IA/IB<0.05 (5)
(式中、IAは2θ=17.6±0.4deg及び2θ=18.1±0.4degのうちアルジロダイト型結晶構造の回折ピークではないものの回折ピークの強度を表し、IBは2θ=29.7±0.5degの回折ピークの強度を表す。) - 請求項1〜6のいずれかに記載の硫化物固体電解質と、活物質を含む電極合材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の硫化物固体電解質及び請求項7に記載の電極合材のうち少なくとも1つを含むリチウムイオン電池。
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