JP7240932B2 - 全固体電池負極及び全固体リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
現在、市販されているリチウム二次電池の負極は、そのほとんどが炭素材料(「グラファイト」とも称する)を負極活物質として使っている。しかし、容量の面ではすでに理論限界に至っており、新たな負極活物質の開発が必要とされている。その有力候補の一つとして挙げられるのが、Siを含有する負極活物質(「Si系負極活物質」とも称する)である。
他方、電解質として固体電解質を用いる場合、リチウムイオンの挿入脱離によってSi系負極活物質の体積が大きく変化すると、固体電解質とSi系負極活物質との接点が維持できなくなる場合がある。
また、負極全体としても体積変化するため、負極層と固体電解質層との間でも接点が維持できなくなる場合がある。このように固体電解質とSi系負極活物質との間、又は、負極層と固体電解質層との間の接点が維持できなくなると、Liイオンの伝導パスを維持することができなくなり、その結果、サイクル特性が低下するという問題が生じる。
本実施形態の一例に係る全固体電池負極、すなわち全固体電池に用いる負極(以下「本負極」と称する)は、Liイオン伝導性樹脂と、当該Liイオン伝導性樹脂に連続的に覆われている、Si系負極活物質と、導電材とを備えるものである。
なお、本負極中に固体電解質が存在しなくても全固体電池の負極として機能する点は、本発明の特徴の一つでもある。
Liイオン伝導性樹脂とは、電池の充放電に伴い、Liイオンを可逆的に輸送することができる樹脂である。
Liイオン伝導性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのうちの何れか又はこれらのうち2種以上の組み合わせを挙げることができる(以下、これらを総称して「ポリイミド等」とも言う。)。これら以外のLiイオン伝導性樹脂を併用してもよい。
アルキル基としては、炭素数1~6のものが好ましく、メチル基、エチル基又はプロピル基がより好ましく、特にメチル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~6のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、又はプロポキシ基がより好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
アシル基としては、炭素数2~6のものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基等を挙げることができる。
このような構造を有するポリイミド等が好ましい理由は、充電を行った際にLiイオンを吸蔵することで、イミド環やアミド結合の開環や切断が抑制され、活物質と強固に結着する作用があるためである。
Liイオンの伝導パスを確保し、Liイオンの輸送を促進する効果を得る観点からは、全芳香族ポリイミド、すなわち芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドであるのが好ましく、中でもピロメリット酸系であり、且つジフェニルエーテルやアルキルビフェニル、アルキルポリフェニル基を有することが好ましく、さらにその中でも、ジフェニルエーテルを有することが特に好ましい。
Liイオン伝導性樹脂が本負極中に2wt%以上存在すれば、Si系負極活物質及び本負極の体積変化を有効に抑えることができる一方、48wt%以下であれば、容量を向上させることができるから、好ましい。
かかる観点から、本負極におけるLiイオン伝導性樹脂は、本負極中に2~48wt%の割合で存在するのが好ましく、中でも6wt%より大きい、その中でも10wt%より大きい、特にその中でも15wt%より大きい、さらにその中でも20wt%より大きい、さらにまたその中でも25wt%より大きい割合で存在するのが好ましい。
本負極を構成するSi系負極活物質(「本Si系負極活物質」と称する)は、Siを含む負極活物質であればよく、例えば純Siを主成分とするものほかに、SiOやSiO2等のSi酸化物を主成分とするものや、Si3N4やSiCなどのSi含有物質を主成分とするものを挙げることができる。容量を向上させる観点から、この中でも、純Siを主成分とするものが好ましい。
ここで、「純Siを主成分とする」とは、Si系負極活物質の45wt%以上、中でも50wt%以上、その中でも55wt%以上を純Siが占める場合をいう。
「Si酸化物を主成分とする」とは、本Si系負極活物質の45wt%以上、中でも50wt%以上、その中でも55wt%以上をSi酸化物が占める場合をいう。
「Si含有物質を主成分とする」とは、本Si系負極活物質の45wt%以上、中でも50wt%以上、その中でも55wt%以上をSi含有物質が占める場合をいう。
この際、本Si系負極活物質において、Si以外の元素Aの含有量は、40at%以下であるのが好ましく、中でも0at%より多い或いは25at%未満、その中でも1at%より多い或いは15at%未満、さらにその中でも2at%より多い或いは10at%未満であるのが好ましい。
ここで、「本Si系負極活物質がLiイオン伝導性樹脂に連続的に覆われている状態」とは、Liイオン伝導性樹脂によって、各本Si系負極活物質表面の半分以上が囲まれている状態である。
「本Si系負極活物質がLiイオン伝導性樹脂に連続的に覆われている状態」にあることは、本負極の断面を電子顕微鏡で観察することによって確かめることができる。具体的には、まず負極の厚み方向断面における中央近傍において、所定の倍率(例えば10000倍)で電子顕微鏡画像を少なくとも10枚以上撮影する。この際、負極の幅方向の撮影位置は無作為に選択する。次に、それらを画像処理により、活物質の表面がLiイオン伝導性樹脂に覆われている部分と、覆われずに露出する部分と、に分けて二値化し、覆われている部分の比率の平均を求める。当該比率が50%以上であれば、「本Si系負極活物質がLiイオン伝導性樹脂に連続的に覆われている状態」にあることを確認することができる。
また、断面のEDXマッピングを行うことで、Si系負極活物質の周辺に、Liイオン伝導性樹脂由来のC元素が、点状ではなく、連続的に存在するか否かを確認できる。
Liイオン伝導性樹脂の含有量が、本Si系負極活物質100質量部に対して2.2質量部以上であれば、本負極の体積変化を有効に抑えることができる一方、96質量部以下であれば、容量の低下を抑制させることができるから、好ましい。
かかる観点から、本負極におけるLiイオン伝導性樹脂の含有量は、本Si系負極活物質100質量部に対して2.2~96質量部の割合であるのが好ましく、中でも6.0質量部以上、その中でも10質量部以上、特にその中でも18質量部以上、さらにその中でも25質量部以上、さらにまたその中でも35質量部以上であるのが好ましい。一方、本負極におけるLiイオン伝導性樹脂の含有量は、本Si系負極活物質100質量部に対して、80質量部以下であることがより好ましく、さらに70質量部以下であることが好ましく、特に65質量部以下であることが好ましい。
本Si系負極活物質は、例えば、Si又はSi含有物質と、必要に応じて元素A含有物質と、その他の原料物質とを混合して加熱溶融して解砕や分級を行い得ることができる。但し、このような方法に限定されるものではない。
ここで、原料として用いる上記Siとしては、Siのインゴットなどを挙げることができる。また、原料として用いる上記Si含有物質としては、Siを含有する化合物などを挙げることができる。
元素A含有物質としては、前記元素Aを含有する化合物を用いることができる。例えば元素Aの酸化物、硫化物などを挙げることができる。
この際、当該物質は、粒子として存在していてもよいし、粒子が凝集してなる凝集粒子として存在してもよいし、層を形成して存在していてもよい。
ここで、「層を形成して存在する」とは、本Si系負極活物質の表面全体、或いは一部の面を被覆している状態を意味するものである。
なお、本Si系負極活物質の表面がカーボンで被覆されている状態は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)で確認することができる。
カーボンの被覆率は1%以上、或いは100%未満であるのが好ましく、その中でも10%より大きい或いは80%未満、さらにその中でも20%より大きい或いは50%未満であるのが好ましい。
このような範囲とすることで、界面抵抗層を形成させることなく、電子伝導性を高めることができる。
この際、本Si系負極活物質において、不可避不純物の含有量は、2wt%未満であるのが好ましく、中でも1wt%未満、その中でも0.5wt%未満であるのが好ましい。
本負極中の本Si系負極活物質の割合は、例えば、(本負極100wt%に対して)50wt%以上であることが好ましく、中でも55wt%以上であることが好ましく、特に60wt%以上であることが好ましい。一方、上記割合は、例えば、90wt%以下であってもよく、85wt%以下であってもよく、80wt%以下であってもよい。
本Si系負極活物質の粒子形状は、特に限定されるものではない。例えば球状、多面体状、紡錘状、板状、鱗片状若しくは不定形状又はそれらの組み合わせであってもよい。中でも、膨張収縮を均一にする観点から、対称性の良い形状、例えば球状であるのが好ましい。
例えばガスアトマイズによれば球状となり、ジェットミルなどにより粉砕すると、粒界に沿って粒子が割れるために不定形状になることが確認されている。
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて粒径を算出する測定方法である。その測定方法によるD50とは、50%体積累積粒径、すなわち体積基準粒度分布のチャートにおいて体積換算した粒径測定値の累積百分率表記の細かい方から累積50%の径を意味する。
かかる観点から、本Si系負極活物質のD50は4μm未満であるのが好ましく、中でも4.0μm未満、中でも0.01μmより大きい或いは3.5μm未満、その中でも0.05μmより大きい或いは3.0μm未満、さらにその中でも0.1μmより大きい或いは2.5μm未満、さらにまたその中でも0.2μmより大きい或いは2.0μm未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質のD50を上記範囲に調整するには、出発原料の調整、溶融温度或いは溶融時間の調整、或いは、溶融後の解砕・粉砕の方法及び強度の調整などにより、D50の調整をするのが好ましい。但し、これらの調整方法に限定されるものではない。
本Si系負極活物質の比表面積(SSA)は2m2/g以上であるのが好ましい。
本Si系負極活物質の比表面積(SSA)が2m2/g以上であれば、Liイオンの挿入脱離できる面積が増えるため、抵抗を低下させることができ、好ましい。
かかる観点から、本Si系負極活物質の比表面積(SSA)は2m2/g以上であるのが好ましく、中でも140m2/g未満であるのがさらに好ましく、その中でも2m2/gより大きい或いは60m2/g未満、その中でも30m2/g未満、さらにその中でも2.5m2/gより大きい或いは25m2/g未満であるのが特に好ましい。
本Si系負極活物質のSSAを上記範囲に調整するには、粉砕条件や改質条件を調整するのが好ましい。但し、これらの調整方法に限定されるものではない。
L/Mを大きくするには、2つの方法を挙げることができる。その1つはLを多くする方法、もう1つはMを小さくする方法である。前者は、負極活物質に対して、Liイオン伝導性樹脂が多く存在することを意味するので、Liイオンの伝導性パスを確保でき、サイクル特性の改善が期待される。後者は、例えば、粒径が大きくなることで、Mが小さくなる場合は、負極活物質の膨張収縮の程度も大きくなり、サイクル特性の悪化が懸念される。以上のことから、L/Mには適切な範囲が存在すると考えられる。L/Mの値が小さい場合は、上述した内容と逆の作用が生じると考えられる。
かかる観点から、L/Mには適切な範囲が存在し、該L/M(wt%/(m2/g))は0.05~15.0であるのが好ましく、中でも0.06以上或いは12.0以下、その中でも0.07以上或いは10.0以下、特にその中でも、8.0以下、さらにその中でも0.1以上或いは6.0以下であるのがさらに好ましい。
本負極の導電材としては、例えば金属微粉や、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック等の導電性炭素材料の粉末等を用いることができる。ホウ素(B)又はリン(P)又はこれらを含有する化合物も導電材として機能することができる。
金属微粉を用いる場合には、Sn、Zn、Ag及びIn等の導電性を有する金属又はこれらの金属の合金等の微粉を用いることが好ましい。
上述したように、本負極においては、固体電解質が存在するものであってもよい。
本負極において固体電解質が存在することによって、電極のLiイオン伝導性をさらに高めることができる。
中でも、硫化物系固体電解質、その中でも、Argyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物を含むものが好ましく、中でもArgyrodite型結晶相を主相として含むものであるのが好ましい。ここで「主相」とは、mol比率で化合物中に最も多く含まれている組成の意味である。
固体電解質の存在割合が、前記Liイオン伝導性樹脂100質量部に対して2質量部以上であれば、Liイオンの伝導速度を高めることができ、300質量部以下であれば、相対的に活物質の比率が高まるため、容量を向上させることができるから好ましい。
かかる観点から、当該固体電解質は、前記Liイオン伝導性樹脂100質量部に対して2~300質量部の割合で存在するのが好ましく、中でも5質量部以上或いは200質量部以下、その中でも100質量部以下、さらにその中でも80質量部以下、特にその中でも10質量部以上或いは50質量部以下の割合で存在するのが好ましい。
本負極は、本Si系負極活物質(粒子状)と、Liイオン伝導性樹脂と、導電材と、溶媒と、必要に応じて固体電解質と、必要に応じてグラファイトなどの他の材料とを混合し、混錬機により混錬して負極合剤を調製し、この負極合剤をCu等からなる集電体の表面に塗布して乾燥させることで、層状の本負極、すなわち本負極からなる負極層を形成することができる。必要に応じて、その後、前記負極層をプレスするようにしてもよい。
そして、ポリイミドの前駆体化合物としては、ポリアミック酸(ポリアミド酸)を用いることができる。
前駆体化合物の重合条件として、多段階の加熱を行うことが有利であることが、本発明者らの検討の結果判明した。特に、少なくとも2段階、好適には少なくとも3段階、さらに好ましくは4段階の加熱を行うことが有利である。例えば、2段階の加熱を行う場合には、1段階目の加熱を100~150℃で行うことが好ましく、2段階目の加熱を200~400℃で行うことが好ましい。
3段階の加熱を行う場合、3段階目は1段階目と2段階目の中間の加熱温度を採用することが好ましい。
3段階目の加熱温度は、150~190℃で行うことが好ましい。加熱時間は、1段階目及び2段階目の時間と同じか又は1段階目と2段階目の中間の時間とすることが好ましい。つまり、3段階の加熱を行う場合には、各段階で加熱時間を同じにするか、又は段階が進むにつれて加熱時間を短くすることが好ましい。
さらに4段階の加熱を行う場合には、4段階目は3段階目よりも高い加熱温度を採用することが好ましい。
以上の多段階加熱を行うことで、負極合剤に含まれている有機溶媒を徐々に揮発させることができ、それによってポリイミド等の前駆体化合物を十分に高分子量化させることができ、負極全体の強度を上げることができる。
また、加熱処理のときには、活物質をガラス板等の押さえ部材で押さえることも好ましい。こうすることで、有機溶媒が潤沢な状態で、つまりポリアミック酸が有機溶媒中にあたかも飽和したような状態で、該ポリアミック酸を重合させることができるので、生成するポリイミドの分子鎖どうしが絡まりやすくなるからである。
本実施形態に係る全固体リチウム二次電池(「本固体電池」と称する)として、上述した本負極からなる負極層と、固体電解質を含む固体電解質層と、正極活物質を含む正極層と、を備えた全固体リチウム二次電池を挙げることができる。
なお、電池内において、本負極が層状若しくはシート状を呈する場合など、本負極からなる層を形成している場合、当該層を「負極層」と称する。
また、本発明において「全固体電池」とは、電解質として固体電解質を用いた電池を意味する。但し、液状物質又はゲル状物質を電解質として一切含まない固体電池のほか、少量、例えば10wt%以下の液状物質又はゲル状物質を電解質として含む固体電池も包含する。
この際、負極層と固体電解質層とが面で接触するとは、接触部分が面を形成している状態と定義することができ、接触部分が点で散在している状態と対極にある状態である。接触の状態は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた電池の断面観察によって確認することができる。
前記負極層と固体電解質層とが面で接触することにより、Liイオン伝導パスを良好に確保することができる。
上記負極層は、上述した本負極が層を為すように形成されたものであればよい。
正極層は、正極活物質及び導電材を含んでいてもよく、その形態は層状であればよい。例えば、その形態として、ペレット状、シート状、その他の形態を呈することができる。中でも、低抵抗化の観点から、シート状を呈するのが好ましい。
上記固体電解質層は、上記固体電解質からなる層であればよい。その形態は、例えば、シート状の形状を挙げることができる。
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
負極活物質として、Siのインゴットにホウ素(B)を添加して、ロール鋳造を行った後、DCプラズマを通過させて、SiとBからなる球状粒子粉(D50:0.7μm、比表面積(SSA):20.0m2/g)を製造し、さらにカーボンで粒子表面を被覆したものを用意した。
カーボンで粒子表面が被覆された前記負極活物質と、Liイオン伝導性樹脂として、ピロメリット酸系であり、且つジフェニルエーテルを含むポリイミドと、アセチレンブラックとを、負極活物質:ポリイミド:アセチレンブラック=60:38:2(wt%)の混合比となるようにこれらを混合し、これらにN-メチルピロリドンを入れて、撹拌することによりペーストを調製した。このペーストをニッケルめっき鋼板上に塗布し、ホットプレートを用いて80℃に加熱して乾燥させ、ロールプレス機を用いて線圧500kgでプレスし、さらに、減圧Ar雰囲気下において、1.5時間かけて350℃まで昇温した後、350℃を1時間保持して負極(サンプル)を作製した。
負極活物質とポリイミド及びアセチレンブラックの混合比を変更し、ニッケルめっき鋼板の代わりにCu箔を用いた以外、実施例1と同様に負極(サンプル)を作製した。負極活物質の各種粉体物性、元素添加の量、及び、ポリイミドとアセチレンブラックの混合比を表1に示す。
負極活物質として、ケイ素(Si)のインゴットにホウ素(B)を添加してロール鋳造を行った後、DCプラズマ通過させて得たSi球状粒子粉(D50:0.7μm、比表面積(SSA):20.0m2/g)を用意した。
この負極活物質と、固体電解質としてArgyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物であるLi5.8PS4.8Cl1.2と、アセチレンブラックとを、負極活物質:固体電解質:アセチレンブラック=45.7:45.7:5(wt%)の混合比となるようにこれらを混合し、乳鉢で乾式混合して混合粉体を得た。この混合粉体と正極混合粉、前記固体電解質粉を密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に全固体リチウム二次電池構成となるように充填し、550MPaで一軸成型することによりペレット状の負極(サンプル)を作製した。
実施例及び比較例で得られた負極(サンプル)の各種物性値を次のように測定した。
レーザー回折粒子径分布測定装置用自動試料供給機(マイクロトラック・ベル株式会社製、装置名「microtorac SDC」)を用いて、実施例及び比較例で得られた負極活物質を試料として調整した。この際、超音波ホモジナイザーを用いて水中に分散させた分散液の状態とし、当該分散液を水溶性溶媒に投入した。そして、40mL/secの流速中、マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折粒度分布測定器「MT3300II」を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートからD50を求めた。
実施例及び比較例で得られた負極活物質の比表面積(SSA)を次のようにして測定した。まず、1.0gの負極活物質を全自動比表面積測定装置(マウンテック社製、装置名「Macsorb」)用のガラスセル(標準セル)に秤量し、オートサンプラーにセットした。次に、窒素ガスでガラスセル内を置換した後、前記窒素ガス中で250℃、15分間熱処理した。その後、窒素・ヘリウム混合ガスを流しながら4分間冷却を行った。冷却後、サンプルをBET一点法にて測定した。なお、冷却時及び測定時の吸着ガスは、窒素30体積%:ヘリウム70体積%の混合ガスを用いた。
元素の添加を行った、実施例及び比較例で得られた負極活物質について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により、添加元素の含有量を測定した。表1に結果(at%)を示す。
カーボン被覆を行った実施例で得られた負極活物質について、TEMにより、被覆状態を観察した結果、位置によるばらつきがあるものの、被覆率はいずれも40%~60%の範囲内であった。
負極(サンプル)の厚み方向断面を、厚み方向における中央近傍において、倍率10000倍で電子顕微鏡画像を10枚撮影した。この際、負極の幅方向の撮影位置は無作為に選択した。次に、それらを画像処理により、負極活物質の表面がLiイオン伝導性樹脂に覆われている部分と、覆われずに露出する部分と、に分けて二値化し、覆われている部分の比率の平均値を算出し、該値が50%以上であれば、負極活物質は「Liイオン伝導性樹脂に連続的に覆われている」状態であると判定し、結果を表1に示した。
負極活物質として実施例及び比較例で作製したサンプルを用い、正極活物質としてNb被覆したLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O2を用い、固体電解質粉末としてArgyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物であるLi5.8PS4.8Cl1.2で示される粉末を用いた。
正極合剤粉末は、Nb被覆したLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O2と固体電解質粉末(組成式:Li5.8PS4.8Cl1.2)及び昭和電工株式会社製の導電材である、VGCF(登録商標)粉末を60:37:3の割合で乳鉢混合することで調製した。
密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に固体電解質50mgを充填して層とし、固体電解質層を挟んだ両側に負極塗膜電極(負極層)と正極合剤粉末からなる正極層を載置して、平行平板を用いて550MPaで一軸成型することで、各層を面で接触させた。その後、加圧ネジで締め込み、全固体リチウム二次電池を作製した。なお、充填量については、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量(N/P比)で、実施例は1.0~1.5となるように、比較例は2.0~2.5となるように正極活物質の量を調整した。具体的には、実施例1のN/P比は1.2であり、実施例2のN/P比は1.2であり、比較例1のN/P比は2.5であった。
(電池性能評価試験)
上記のようにして準備した全固体リチウム二次電池セルを用いて次に記述する方法で初期活性を行った。
作製した全固体リチウム二次電池セルを用いて、初回サイクルのみ上限電圧を4.5VとしたCC-CV方式で充電し、放電は下限電圧を2.5VとしたCC方式で行った。充電と放電は0.1Cで行った。
2サイクル目は上限電圧を4.3VとしたCC-CV方式で充電し、放電は下限電圧を2.5VとしたCC方式で行った。充電と放電は0.1Cの電流値で行った。
3サイクル目以降は上限電圧を4.3VとしたCC-CV方式で充電し、放電は下限電圧を2.5VとしたCC方式で繰り返し充電と放電を行った。充電と放電は0.2Cの電流値で行った。
サイクル特性(放電容量維持率(%))は51サイクル目の放電容量を3サイクル目の放電容量で除した商で示した。なお、実際に設定した電流値は負極中の負極活物質の含有量から算出した。サイクル特性を表1に示す。
尚、電池性能評価時の温度は恒温槽を用いて25℃とした。
Claims (12)
- Liイオン伝導性樹脂と、当該Liイオン伝導性樹脂に連続的に覆われている、Siを含む負極活物質と、導電材と、を備え、
前記Liイオン伝導性樹脂が、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのうちの何れか又はこれらのうち2種以上の組合せである全固体電池負極。 - さらに固体電解質が存在する請求項1に記載の全固体電池負極。
- 前記固体電解質は、硫化物系固体電解質を含むことを特徴とする請求項2に記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質100質量部に対して2.2~96質量部の割合で前記Liイオン伝導性樹脂を備えていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記Liイオン伝導性樹脂を、前記全固体電池負極中に2~48wt%の割合で備えていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記固体電解質は、Argyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物を含むものであることを特徴とする請求項2に記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質の比表面積(SSA):M(m2/g)に対する、前記Liイオン伝導性樹脂の含有割合:L(wt%)の比率:L/M(wt%/(m2/g))が0.05~15.0であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質のD50が、4.0μm未満であることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質が、Siのほかに元素A(AはLi、Al、P、B、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素)を含有することを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質が、カーボンで被覆されていることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の全固体電池負極。
- シート状を呈する請求項1~10の何れかに記載の全固体電池負極。
- 請求項1~11の何れかの全固体電池負極からなる負極層と、固体電解質層と、正極層とを備えた全固体リチウム二次電池であって、前記負極層と前記固体電解質層とが面で接触してなる構成を備えた全固体リチウム二次電池。
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