JP7105086B2 - 全固体電池負極及び全固体型リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
しかし、現在、市販されている電池の負極は、そのほとんどが炭素材料(「グラファイト」とも称する)を負極活物質として使っているが、容量の面ではすでに理論限界に至っており、新たな負極活物質の開発が必要とされている。その有力候補の一つとして挙げられるのが、ケイ素を含有する負極活物質(「ケイ素系負極活物質」とも称する)である。
他方、電解質として固体電解質を用いる場合には、リチウムイオンの挿入脱離によってケイ素系負極活物質の体積が大きく変化すると、固体電解質とケイ素系負極活物質粒子との接点が取れなくなったり、或いは、負極層と固体電解質層との間でも接点が取れなくなったりするため、活物質の利用率が低下して、その結果、充放電効率が低下するという問題が想定される。
さらに、Liイオン伝導性樹脂の種類や量などを調整することで、Liイオンが不可逆的にトラップされることを低減することができ、充放電効率の改善をさらに良くすることができる。
本実施形態の一例に係る全固体電池負極、すなわち全固体電池に用いる負極(以下「本負極」と称する)は、Liイオン伝導性樹脂と、Siを含む負極活物質と、導電材とを備えるものである。
本負極の形態の一例として、例えばLiイオン伝導性樹脂、Si系負極活物質及び導電材、必要に応じてさらに固体電解質が存在するシート状の形態の本負極を挙げることができる。
Liイオン伝導性樹脂とは、電池の充放電に伴い、Liイオンを可逆的に輸送することができる樹脂である。
Liイオン伝導性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのうちの何れか又はこれらのうち2種以上の組み合わせを挙げることができる(以下、これらを総称して「ポリイミド等」とも言う。)。これら以外の伝導性樹脂を併用してもよい。
アルキル基としては、炭素数1~6のものが好ましく、メチル基、エチル基又はプロピル基がより好ましく、特にメチル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~6のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、又はプロポキシ基がより好ましく、特にメトキシ基が好ましい。
アシル基としては、炭素数2~6のものが好ましく、アセチル基、プロピオニル基等を挙げることができる。
このような構造を有するポリイミド等が好ましい理由は、充電を行った際にLiイオンを吸蔵することで、イミド環の開環が抑制され、活物質と強固に結着する作用があるためである。
上記の中でも、Liイオンの伝導パスを確保し、Liイオンの輸送を促進する効果を得る観点から、全芳香族ポリイミドであるのが好ましく、中でもピロメリット酸系であり、且つジフェニルエーテルやアルキルビフェニル、アルキルポリフェニル基を有することが好ましく、さらにその中でも、ジフェニルエーテルを有することが特に好ましい。
Liイオン伝導性樹脂が本負極中に2wt%以上存在すれば、本負極の体積変化を効果的に抑えることができる一方、20wt%以下であれば、充放電効率を改善することができるから、好ましい。
かかる観点から、本負極におけるLiイオン伝導性樹脂は、本負極中に2~20wt%の割合で存在するのが好ましく、中でも4wt%より大きい、或いは20wt%より小さい、その中でも6wt%より大きい、或いは16wt%より小さい、特にその中でも8wt%より大きい、或いは12wt%より小さい割合で存在するのが好ましい。
上述のように、本負極におけるSi系負極活物質(「本Si系負極活物質」と称する)は、Liイオン伝導性樹脂をバインダーとして、導電材と結合された状態で存在するのが好ましい。
この際、「本Si系負極活物質と導電材とが、Liイオン伝導性樹脂をバインダーとして結合された状態」にあることは、本負極の断面を電子顕微鏡で観察することによって確かめることができる。
負極活物質が本負極中に70wt%以上存在すれば、充放電に寄与する活物質が増加するため、容量およびエネルギー密度を高くすることができる。一方、98%以下であれば、イオン伝導性樹脂や導電材を含むことができ、Liイオンの伝導パスが確保できるため、サイクル特性を向上することができる。
かかる観点から、本負極におけるSi系負極活物質は、本負極中に70wt%以上の割合で存在するのが好ましく、中でも98wt%以下の割合で存在するのがより好ましく、その中でも75wt%より大きい、或いは95wt%より小さい、その中でも80wt%より大きい、或いは92wt%より小さい、特にその中でも84wt%より大きい、或いは88wt%より小さい割合で存在するのがさらに好ましい。
本Si系負極活物質は、例えば純ケイ素を主成分とするものほかに、SiOやSiO2等のケイ素酸化物や、Si3N4やSiCなどのケイ素含有物質を主成分とするものを挙げることができる。容量を向上させる観点から、この中でも、純ケイ素を主成分とするものが好ましい。
ここで、「純ケイ素を主成分とする」とは、ケイ素(Si)の45wt%以上、中でも50wt%以上、その中でも55wt%以上を純ケイ素が占めるものをいう。
この際、本Si系負極活物質において、Si以外の元素Aの含有量は、40at%以下であるのが好ましく、中でも0at%より多い或いは25at%未満、その中でも1at%より多い或いは15at%未満、さらにその中でも2at%より多い或いは10at%未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質において、酸素原子(O)の含有量が30wt%未満であれば、充放電に寄与しない酸素原子(O)の比率が低くなり、容量や充放電効率を高めることができて好ましい。但し、酸素原子(O)が全く含まれていないと、大気中の酸素と急激な反応を起こし、発熱・発火の危険があり、好ましくない。
かかる観点から、本Si系負極活物質に含まれる酸素原子(O)の含有量は30wt%未満であるのが好ましく、中でも0wt%より多い或いは20wt%未満、その中でも0.1wt%より多い或いは15wt%未満、その中でも0.2wt%より多い或いは10wt%未満、さらにその中でも0.6wt%より多い或いは5wt%未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質は、ケイ素又は、ケイ素含有物質と、必要に応じて元素A含有物質と、必要に応じてその他の原料物質とを混合して加熱溶融して微粒化し、必要に応じて解砕や分級を行い得ることができる。但し、このような方法に限定されるものではない。
この際、当該物質は、粒子として存在していてもよいし、粒子が凝集してなる凝集粒子として存在してもよいし、層を形成して存在していてもよい。
ここで、「層として存在する」とは、本Si系負極活物質の表面全体、或いは一部の面を被覆している状態を意味するものである。
なお、本Si系負極活物質の表面がカーボンで被覆されている状態は、例えば走査型透過電子顕微鏡(TEM)で確認することができる。
この際、本Si系負極活物質の表面がカーボンで被覆されている割合、すなわち、カーボンの被覆率は1%以上、或いは100%未満であるのが好ましく、その中でも10%より大きい或いは80%未満、さらにその中でも20%より大きい或いは50%未満であるのが好ましい。
このような範囲とすることで、界面抵抗層を形成させることなく、電子伝導性を付与することができる。
この際、本Si系負極活物質において、不回避不純物の含有量は、2wt%未満であるのが好ましく、中でも1wt%未満、その中でも0.5wt%未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質の粒子形状は、特に限定されるものではない。例えば球状、多面体状、紡錘状、板状、鱗片状若しくは不定形又はそれらの組み合わせを用いることができる。中でも、膨張収縮を均一にする観点から、対称性の良い形状、例えば球状であるのが好ましい。
例えばガスアトマイズによれば球状となり、ジェットミルなどにより粉砕すると、粒界に沿って粒子が割れるために不定形状になることが確認されている。
本Si系負極活物質の比表面積(SSA)は2m2/g以上であるのが好ましい。
本Si系負極活物質の比表面積(SSA)が2m2/g以上であれば、Liイオンの挿入脱離できる面積が増えるため、抵抗を低下させることができ、好ましい。
かかる観点から、本Si系負極活物質の比表面積(SSA)は2m2/g以上であるのが好ましく、中でも140m2/g未満であるのがさらに好ましく、その中でも2m2/gより大きい或いは60m2/g未満、その中でも30m2/g未満、さらにその中でも2.5m2/gより大きい或いは20m2/g未満であるのが特に好ましい。
本Si系負極活物質のSSAを上記範囲に調整するには、粉砕条件や改質条件を調整するのが好ましい。但し、これらの調整方法に限定されるものではない。
L/Mを大きくするには、2つの方法を挙げることができる。その1つはLを多くする、もう1つはMを小さくする方法である。前者は、負極活物質に対して、Liイオン伝導性樹脂が多く存在することを意味するので、Liイオンの伝導性パスを確保でき、サイクル特性の改善が期待される。後者は、例えば、粒径が大きくなることで、Mが小さくなる場合は、負極活物質の膨張収縮の程度も大きくなり、サイクル特性の悪化が懸念される。以上のことから、L/Mには適切な範囲が存在すると考えられる。L/Mの値が小さい場合は、上述した内容と逆の作業が生じると考えられる。
かかる観点から、L/Mには適切な範囲が存在し、該L/Mは0.01~10.0であるのが好ましく、中でも0.02以上或いは5.0以下、その中でも0.05以上或いは4.5以下、特にその中でも、4.0以下、さらにその中でも0.1以上或いは3.5以下であるのが好ましい。
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて粒径を算出する測定方法である。その測定方法によるD50とは、50%体積累積粒径、すなわち体積基準粒度分布のチャートにおいて体積換算した粒径測定値の累積百分率表記の細かい方から累積50%の径を意味する。
かかる観点から、本Si系負極活物質のD50は4μm未満であるのが好ましく、中でも0.01μmより大きい或いは3.5μm未満、その中でも0.05μmより大きい或いは3.0μm未満、さらにその中でも0.1μmより大きい或いは2.7μm未満、さらにまたその中でも0.2μmより大きい或いは2.0μm未満であるのが好ましい。
本Si系負極活物質のD50を上記範囲に調整するには、出発原料の調整、溶融温度或いは溶融時間の調整、或いは、溶融後後の解砕・粉砕によるD50の調整をするのが好ましい。但し、これらの調整方法に限定されるものではない。
L/Pを大きくするには、2つの方法を挙げることができる。その1つはLを多くする、もう1つはPを小さくする方法である。
前者は、負極活物質に対して、Liイオン伝導性樹脂が多く存在することを意味するので、Liイオンの伝導性パスを確保でき、サイクル特性の改善が期待される。
一方で、Liイオン伝導性樹脂の含有割合が多すぎると、充放電効率が下がるリスクがある。後者は、粒径が小さくなることを意味し、Pが小さくなる場合は、負極活物質の膨張収縮の程度も小さくなるので、サイクル特性の改善が期待される。以上のことから、L/Pには適切な範囲が存在すると考えられる。L/Pの値が小さい場合は、上述した内容と逆の作業が生じると考えられる。
かかる観点から、L/Pには適切な範囲が存在し、該L/Pは0.5より大きく、100以下であるのが好ましく、中でも0.7より大きく、或いは60未満、その中でも1.0より大きく或いは50未満、特にその中でも、35未満以下、さらにその中でも2.0より大きく或いは20未満であるのが好ましい。
本負極の導電材としては、例えば金属微粉や、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック等の導電性炭素材料の粉末等を用いることができる。ホウ素(B)又はリン(P)又はこれらを含有する化合物も導電材として機能することができる。
金属微粉を用いる場合には、Sn、Zn、Ag及びIn等の導電性を有する金属又はこれらの金属の合金等の微粉を用いることが好ましい。
上述したように、本負極においては、前記Liイオン伝導性樹脂の他にさらに固体電解質が存在するものであってもよい。
Liイオン伝導性樹脂の他にさらに固体電解質が存在することによって、電極のLiイオン伝導性を高めることができる。
中でも、硫化物系固体電解質、その中でも、Argyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物を含むものが好ましく、中でも主相として含むものであるのが好ましい。ここで「主相」とはmol比率で化合物中に最も多く含まれている組成の意味である。
固体電解質の量は、Liイオン伝導性樹脂の量よりも少ないことが好ましい。
本負極は、本Si系負極活物質(粒子状)と、Liイオン伝導性樹脂と、導電材と、溶媒と、必要に応じてグラファイトなどの他の材料とを混合し、混錬機により混錬して負極合剤を調製し、この負極合剤をCu等からなる集電体の表面に塗布して乾燥させることで負極活物質層を形成し、その後、必要に応じて活物質層をプレスして形成することができる。
そして、ポリイミドの前駆体化合物としては、ポリアミック酸(ポリアミド酸)を用いることができる。
前駆体化合物の重合条件として、多段階の加熱を行うことが有利であることが、本発明者らの検討の結果判明した。特に、少なくとも2段階、好適には少なくとも3段階、さらに好ましくは4段階の加熱を行うことが有利である。例えば、2段階の加熱を行う場合には、1段階目の加熱を100~150℃で行うことが好ましく、2段階目の加熱を200~400℃で行うことが好ましい。
3段階の加熱を行う場合、3段階目は1段階目と2段階目の中間の加熱温度を採用することが好ましい。
3段階目の加熱温度は、150~190℃で行うことが好ましい。加熱時間は、1段階目及び2段階目の時間と同じか又は1段階目と2段階目の中間の時間とすることが好ましい。つまり、3段階の加熱を行う場合には、各段階で加熱時間を同じにするか、又は段階が進むにつれて加熱時間を短くすることが好ましい。
さらに4段階の加熱を行う場合には、4段階目は3段階目よりも高い加熱温度を採用することが好ましい。
以上の多段階加熱を行うことで、負極合剤に含まれている有機溶媒を徐々に揮発させることができ、それによってポリイミド等の前駆体化合物を十分に高分子量化させることができ、負極全体の強度を上げることができる。
また、加熱処理のときには、活物質層をガラス板等の押さえ部材で押さえることも好ましい。こうすることで、有機溶媒が潤沢な状態で、つまりポリアミック酸が有機溶媒中にあたかも飽和したような状態で、該ポリアミック酸を重合させることができるので、生成するポリイミドの分子鎖同士が絡まりやすくなるからである。
本実施形態に係る全固体型リチウム二次電池(「本固体電池」と称する)として、上述した本負極と、固体電解質を含む固体電解質層と、正極活物質を含む正極層と、を備えた全固体型リチウム二次電池を挙げることができる。
接触の状態は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認することができる。
前記負極層と固体電解質層とが面で接触することにより、Liイオン伝導パスを良好に確保することができる。
上記負極層は、上述した本負極からなるものであればよい。
正極層は、正極活物質及び導電材を含んでいればよく、その形態は任意である。例えば、その形態として、ペレット状、シート状を呈することができる。中でも、低抵抗化の観点から、シート状を呈するのが好ましい。
上記固体電解質層は、上記固体電解質からなる層であればよい。その形態は、例えば、シート状の形状を挙げることができる。
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
負極活物質として、ロール鋳造によって製造したSi粉(D50:2.7μm、比表面積(SSA):2.6m2/g)と、アセチレンブラックと、Liイオン伝導性樹脂として、ピロメリット酸系であり、且つジフェニルエーテルを含むポリイミドとを、負極活物質:アセチレンブラック:ポリイミド=85:5:10(wt%)の混合比となるようにこれらを混合し、これらにN-メチルピロリドンを入れて、撹拌することによりペーストを調製した。このペーストをCu箔上に塗布し、ホットプレートを用いて80℃に加熱して乾燥させ、ロールプレス機を用いて線圧500kgでプレスし、さらに、減圧Ar雰囲気下において、1.5時間かけて350℃まで昇温した後、350℃を1時間保持して負極(サンプル)を作製した。
負極及び負極活物質の各種粉体物性、元素添加の量を表1、2に示す。
負極活物質の各種粉体物性を変更した以外、実施例1と同様にして負極(サンプル)を作製した。負極活物質の各種粉体物性を表1、2に示す。
負極活物質とアセチレンブラックとポリイミドとを、負極活物質:アセチレンブラック:ポリイミド=77.5:15:7.5に混合比を変更した以外は、実施例3と同様にして負極(サンプル)を作製した。
負極及び負極活物質の各種粉体物性、元素添加の量を表1、2に示す。
負極活物質をカーボンで粒子表面を被覆した以外、実施例1と同様にして負極(サンプル)を作製した。
負極及び負極活物質の各種粉体物性、元素添加の量を表1、2に示す。
実施例6では負極活物質にTiを添加した以外、実施例7ではBとAlを添加してアトマイズ法による微粒化を行った以外、実施例8ではPとNiを添加してアトマイズ法による微粒化を行った以外、実施例1と同様にして負極(サンプル)を作製した。
負極及び負極活物質の各種粉体物性、元素添加の量を表1、2に示す。
負極活物質として、ケイ素(Si)のインゴットにホウ素(B)を添加して、ロール鋳造した後、DCプラズマ通過させて得たSi球状粒子粉(D50:0.7μm、比表面積(SSA):20.0m2/g)を用意した。
この負極活物質と、固体電解質としてArgyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物であるLi5.8PS4.8Cl1.2と、アセチレンブラックとを、負極活物質:固体電解質:アセチレンブラック=45.7:45.7:5(wt%)の混合比となるようにこれらを混合し、乳鉢で乾式混合して混合粉体を得た。この混合粉体と正極混合粉、前記固体電解質粉を密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に全固体リチウム二次電池構成となるように充填し、550MPaで一軸成型することによりペレット状の負極(サンプル)を作製した。
負極及び負極活物質の各種粉体物性、元素添加の量を表1、2に示す。
実施例及び比較例で得られた負極(サンプル)の各種物性値を次のように測定した。
レーザー回折粒子径分布測定装置用自動試料供給機(マイクロトラック・ベル株式会社製、装置名「microtorac SDC」)を用いて、実施例及び比較例で得られた負極活物質を、超音波ホモジナイザーを用いて水中に分散させた分散液の状態とし、当該分散液を水溶性溶媒に投入した。40mL/secの流速中、マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折粒度分布測定器「MT3300II」を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートからD50を求めた。
実施例及び比較例で得られた負極活物質の比表面積(SSA)を次のようにして測定した。まず、1.0gを全自動比表面積測定装置(マウンテック社製、装置名「Macsorb」)用のガラスセル(標準セル)に秤量し、オートサンプラーにセットした。次に、窒素ガスでガラス内を置換した後、前記窒素ガス中で250℃、15分間熱処理した。その後、窒素・ヘリウム混合ガスを流しながら4分間冷却を行った。冷却後、サンプルをBET一点法にて測定した。なお、冷却時及び測定時の吸着ガスは、窒素30体積%:ヘリウム:70体積%の混合ガスを用いた。
元素の添加を行った、実施例及び比較例で得られた負極活物質について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により、添加元素の含有量を測定した。表2に結果(at%)を示す。
カーボン被覆を行った、実施例1~8で得られた負極活物質それぞれについて、TEMにより、被覆状態を観察した結果、位置によるばらつきがあるものの、全て被覆率は40~60%であった。
実施例1~8で得られた負極(サンプル)それぞれの断面を、倍率10000倍で電子顕微鏡で観察した結果、実施例1~8で得られた負極(サンプル)のいずれも、負極活物質と前記導電材とが、Liイオン伝導性樹脂をバインダーとして結合された状態であることを確認できた。
負極活物質として実施例及び比較例で作製したサンプルを用い、正極活物質としてNb被覆したLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O2を用い、固体電解質粉末としてArgyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物であるLi5.8PS4.8Cl1.2で示される粉末を用いた。
正極合材粉末は、Nb被覆したLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O2と固体電解質粉末(組成式:Li5.8PS4.8Cl1.2)及び昭和電工株式会社製の導電材である、VGCF(登録商標)粉末を60:37:3の割合で乳鉢混合することで調製した。
密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に固体電解質50mgを充填して層とし、固体電解質層を挟んだ両側に負極塗膜電極と正極合材粉末を載置して、平行平板を用いて550MPaで一軸成型することで、各層を面で接触させた。その後、加圧ネジで締め込み、全固体型リチウム二次電池を作製した。なお、充填量については、正極活物質の容量に対する負極活物質の容量(N/P比)で、実施例は1.0~1.5となるように、比較例は2.0~2.5となるように正極活物質の量を調整した。
(電池性能評価試験)
上記のようにして準備した全固体リチウム二次電池セルを用いて次に記述する方法で初期活性を行った。作製した全固体リチウム二次電池セルは初回サイクルのみ上限電圧を4.5VとしたCC-CV方式で充電し、放電は下限電圧を2.5VとしたCC方式で行った。充電と放電は0.1Cで行った。1サイクル目の充放電効率(%)を、比較例1を100とした指数として、表3に示した。
2サイクル目は上限電圧を4.3VとしたCC-CV方式で充電し、放電は下限電圧を2.5VとしたCC方式で行った。充電と放電は0.1Cの電流値で行った。
3サイクル目以降は上限電圧を4.3VとしたCC-CV方式で充電し、放電は下限電圧を2.5VとしたCC方式で繰り返し充電と放電を行った。充電と放電は0.2Cの電流値で行った。
サイクル特性(放電容量維持率(%))は51サイクル目の放電容量を3サイクル目の放電容量で除した商で示した。なお、実際に設定した電流値は正極中の正極活物質の含有量から算出した。サイクル特性を比較例1を100とした指数として、表3に示した。
さらに、Liイオン伝導性樹脂の種類や量などを調整することで、Liイオンが不可逆的にトラップされることを低減することができ、充放電効率の改善をさらに良くすることができることも分かった。
Claims (15)
- Liイオン伝導性樹脂と、Siを含む負極活物質と、導電材と、を備え、
前記Liイオン伝導性樹脂が、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドのうちの何れか又はこれらのうち2種以上の組合せであり、
前記負極活物質の比表面積(SSA)が2.0m2/g以上である、全固体電池負極。 - 前記Siを含む負極活物質と前記導電材とが、Liイオン伝導性樹脂をバインダーとして結合された状態にある請求項1に記載の全固体電池負極。
- さらに固体電解質が存在する請求項1又は2に記載の全固体電池負極。
- 前記固体電解質は、硫化物系固体電解質を含むことを特徴とする請求項3に記載の全固体電池負極。
- 前記固体電解質は、Argyrodite型結晶構造からなる硫化物系化合物を含むものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の全固体電池負極。
- 前記全固体電池負極に占める負極活物質の含有割合は70wt%以上であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記全固体電池負極に占めるLiイオン伝導性樹脂の含有割合は2~20wt%であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質の比表面積(SSA):M(m2/g)に対する、前記Liイオン伝導性樹脂の含有割合:L(wt%)の比率:L/M(wt%/(m2/g))が0.01~10.0であることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質のD50が、4.0μm未満であることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質の粒度(D50):P(μm)に対する、前記Liイオン伝導性樹脂の含有割合:L(wt%)の比率:L/P(wt%/μm)が0.5より大きく、100以下であることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質が、Siのほかに元素A(AはLi、Al、P、B、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWからなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素)を含有することを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質が、粒子内部よりも電子伝導性の高い物質で表面被覆されていることを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の全固体電池負極。
- 前記負極活物質が、カーボンで被覆されていることを特徴とする請求項1~12の何れかに記載の全固体電池負極。
- シート状を呈する請求項1~13の何れかに記載の全固体電池負極。
- 請求項1~14の何れかの全固体電池負極と、固体電解質と、正極活物質を備えた全固体型リチウム二次電池であって、前記負極と固体電解質とが面で接触してなる構成を備えた全固体型リチウム二次電池。
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JP2018069847A JP7105086B2 (ja) | 2018-03-30 | 2018-03-30 | 全固体電池負極及び全固体型リチウム二次電池 |
Applications Claiming Priority (1)
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