JP6941647B2 - インキ組成物及び印刷物 - Google Patents
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Description
本発明の一実施形態のインキ組成物(以下、単に「インキ組成物」と記載することがある。)は、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びヒドロキシ基を有する単量体のそれぞれに由来する構成単位を含む共重合樹脂と、数平均分子量が1,500〜20,000の範囲内であり、かつ、ガラス転移点が−70〜60℃の範囲内であるポリエステル樹脂と、を含有する。そして、このインキ組成物では、インキ組成物中の上記ポリエステル樹脂に対する上記共重合樹脂の質量比が1.0〜4.0の範囲内である。なお、本明細書において、「〜」の前後に所定の数値を示して記載する範囲内とは、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
インキ組成物は、特定の数平均分子量(以下、「Mn」と記載することがある。)及び特定のガラス転移点(以下、「Tg」と記載することがある。)を有するポリエステル樹脂を含有する。このポリエステル樹脂として、Mnが1,500〜20,000の範囲内であり、かつ、Tgが−70〜60℃の範囲内であるポリエステル樹脂を用いる。
インキ組成物は、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びヒドロキシ基を有する単量体のそれぞれに由来する構成単位を含む共重合樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂)を含有する。本明細書において、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂における「構成単位」とは、当該樹脂を形成するモノマー(塩化ビニル、酢酸ビニル、ヒドロキシ基を有する単量体)の単位を意味する。これらのモノマーに「由来する構成単位」とは、上記モノマーにおける重合性不飽和結合(C=C)が開裂して単結合(−C−C−)となった構造のモノマー単位を意味する。
インキ組成物は、イソシアネート系硬化剤と共にインキとして用いやすい観点から、溶剤を含有することが好ましく、溶液状の形態であることが好ましい。なお、インキ組成物の形態としては、使用時において液状のインキとして用いることが可能であればよいことから、溶液状のほか、ペースト状、及び粉粒体状等であってもよい。
インキ組成物は、顔料等の色材を含有してもよいし、顔料等の色材を含有しなくてもよい。顔料等の色材を含有しないインキ組成物は、クリアインキ(メジウムインキとも称される)として使用することができる。そのようなクリアインキが別の着色インキ層等の下地層上に設けられることで、下地層を溶剤や薬品から保護し得るインキ層(クリアインキ層)を形成することが可能である。
インキ組成物には、必要に応じて、さらにその他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、染料、レベリング剤、可塑剤、艶消し剤、沈降防止剤、消泡剤、及びシランカップリング剤等を挙げることができる。
インキ組成物として必須成分である前述のポリエステル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、さらに必要に応じて、溶剤、顔料、及びその他の添加剤を配合することで、インキ組成物を製造することができる。すなわち、このインキ組成物の製造方法は、前述のポリエステル樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、さらに必要に応じて、溶剤、顔料、及びその他の添加剤を混合する工程(調製工程)を含むことができる。調製工程では、樹脂成分を混練しやすいように、インキ組成物の成分となる溶剤を用いることが好ましい。
インキ組成物は、使用時において、イソシアネート系硬化剤と混合されたインキとして用いられる。そして、このインキが基材に塗布され、乾燥及び硬化することで、インキ層が形成される。
上記基材に、インキ組成物及びイソシアネート系硬化剤を含むインキを設ける際には、印刷方式によって、基材にインキから形成された印刷層を設けることが好ましい。これにより、基材と、基材上に設けられた印刷層とを備えた印刷物を得ることができる。
[1]イソシアネート系硬化剤と共に用いられるインキ組成物であって、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びヒドロキシ基を有する単量体のそれぞれに由来する構成単位を含む共重合樹脂と、数平均分子量が1,500〜20,000の範囲内であり、かつ、ガラス転移点が−70〜60℃の範囲内であるポリエステル樹脂と、を含有し、前記インキ組成物中の前記ポリエステル樹脂に対する前記共重合樹脂の質量比が1.0〜4.0の範囲内であるインキ組成物。
[2]前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が、2,000〜17,000の範囲内である上記[1]に記載のインキ組成物。
[3]前記ポリエステル樹脂はヒドロキシ基を有し、前記ポリエステル樹脂の水酸基価が1〜100mgKOH/gの範囲内である上記[1]又は[2]に記載のインキ組成物。
[4]前記共重合樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のインキ組成物。
[5]前記共重合樹脂の水酸基価が、20〜200mgKOH/gの範囲内である上記[1]〜[4]に記載のインキ組成物。
[6]前記共重合樹脂の数平均分子量が、20,000〜40,000の範囲内である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のインキ組成物。
[7]グラビア印刷用インキに用いられる上記[1]〜[6]のいずれかに記載のインキ組成物。
[8]基材と、前記基材上に設けられた印刷層とを備え、前記印刷層が、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のインキ組成物と、イソシアネート系硬化剤とを含むインキから形成されている、印刷物。
[9]前記イソシアネート系硬化剤は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む上記[8]に記載の印刷物。
(VC−VAc系樹脂溶液1)
Mnが35,000、Tgが76℃、水酸基価が70mgKOH/gである塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂(商品名「ソルバインA」、日信化学工業社製;塩化ビニル(VC)/酢酸ビニル(VAc)/ビニルアルコール(VA)のそれぞれに由来する構成単位の含有割合=92/3/5(%))をメチルエチルケトン(以下、「MEK」と記載する。)に溶かし、不揮発分を20%としたワニスを得た。以下、このワニスを「VC−VAc系樹脂溶液1」と記載する。
Mnが29,000、Tgが78℃、水酸基価が154mgKOH/gである塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂(商品名「ソルバインTA5R」、日信化学工業社製;VC/VAc/VAのそれぞれに由来する構成単位の含有割合=88/1/11(%))をMEKに溶かし、不揮発分を20%としたワニスを得た。以下、このワニスを「VC−VAc系樹脂溶液2」と記載する。
Mnが36,000、Tgが70℃である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(商品名「ソルバインC」、日信化学工業社製;VC/VAcのそれぞれに由来する構成単位の含有割合=87/13(%))をMEKに溶かし、不揮発分を20%としたワニスを得た。以下、このワニスを「VC−VAc系樹脂溶液3」と記載する。
Mnが3,000、Tgが53℃、水酸基価が50mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(商品名「バイロン220」、東洋紡社製)をMEKに溶かし、不揮発分を20%としたワニスを得た。このワニスを「ポリエステル樹脂溶液1」と記載する。
Mnが17,000、Tgが10℃、水酸基価が4mgKOH/g、不揮発分が40%である非晶性ポリエステル樹脂溶液(商品名「ニチゴーポリエスターTP−290」、三菱ケミカル社製)を用意した。この樹脂溶液を「ポリエステル樹脂溶液2」と記載する。
Mnが23,000、Tgが47℃、水酸基価が5mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(商品名「バイロン103」、東洋紡社製)をMEKに溶かし、不揮発分を20%としたワニスを得た。このワニスを「ポリエステル樹脂溶液3」と記載する。
Mnが17,000、Tgが67℃、水酸基価が6mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(商品名「バイロン200」、東洋紡社製)をMEKに溶かし、不揮発分を20%としたワニスを得た。このワニスを「ポリエステル樹脂溶液4」と記載する。
不揮発分が30%である1液型ポリウレタン樹脂溶液(商品名「セイカボンドU−6510」、大日精化工業社製)を用意した。この樹脂溶液を「ポリウレタン樹脂溶液1」と記載する。
表1(表1−1及び表1−2)の上段に示す各成分(樹脂溶液及び顔料)を、各実施例及び比較例欄に示す量(単位:部)にて配合し、ペイントシェーカーで混練して、各インキ組成物を得た。なお、各インキ組成物には、後述する試験による耐溶剤性及び耐薬品性を評価しやすいように、色材(顔料)として、ジスアゾイエロー系顔料(商品名「エローAP77K」、大日精化工業社製;平均粒子径は80〜120nmの範囲内)を含有させたが、顔料等の色材は含有させなくてもよい。
2種以上の樹脂成分を配合したインキ組成物について、インキ組成物中の樹脂成分の混ざり具合(樹脂成分の相溶性)を目視にて確認した。均一に混ざっていたインキ組成物を樹脂成分の混ざり具合が良好であると評価して「〇」と記し、不均一に混ざっていたインキ組成物を樹脂成分の混ざり具合が不良であると評価して「×」と記した。
2種以上の樹脂成分を用いてそれらの混ざり具合が良好であったインキ組成物、及び樹脂成分としては1種のみを用いたインキ組成物について、次のようにして印刷インキを調製した。すなわち、得られたインキ組成物に、イソシアネート系硬化剤を表1に示す量で添加し、かつ、粘度が25℃においてザーンカップNo.3(離合社製)で16秒となるようにMEKを添加して希釈し、印刷インキを得た。ただし、比較例7のインキ組成物については、1液型ポリウレタン樹脂溶液を用いたため、イソシアネート系硬化剤を配合しなかった。硬化剤には、イソシアネート系硬化剤1(TDIのイソシアヌレート体の溶液;商品名「タケネートD−204EA−1」、三井化学社製;NCO=7.5%、不揮発分=50%、含有溶剤=酢酸エチル)、及びイソシアネート系硬化剤2(XDIのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体の溶液;商品名「タケネートD−110N」、三井化学社製;NCO=11.5%、不揮発分=75%、含有溶剤=酢酸エチル)を用いた。イソシアネート系硬化剤の配合量は、硬化剤が有するイソシアネート基と、インキ組成物中の樹脂成分(塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂及びポリエステル樹脂)が有するヒドロキシ基とのモル比であるNCO/OH比が、表1に示す値となる量とした。
グラビア版として、版深30μmの150線レーザー製版を使用して、以下に述べる各評価で用いた基材の片面全体に、印刷インキをグラビア印刷した後、40℃で48時間養生した。このようにして、基材と、基材上に設けられた印刷インキによる印刷層(厚さ1.5μm)とを備えた印刷物を得た。以下に述べる耐溶剤性試験に用いた印刷物には、基材として、印刷する側の面にコロナ放電処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「E5102」、東洋紡社製、厚さ25μm)を用いた。また、以下に述べる耐薬品性試験に用いた印刷物には、評価を行い易いように、基材として不織布(商品名「ベンコットM−3II」、旭化成社製)を用いた。さらに、以下に述べるラミネート強度試験に用いた印刷物には、基材として、上記PETフィルム、ナイロン(Ny)フィルム(商品名「ハーデンN1102」、東洋紡社製、厚さ15μm)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(商品名「FOR」、フタムラ化学社製、厚さ25μm)の3種のプラスチックフィルムを用いた。これら3種のプラスチックフィルムはいずれも、印刷する側の面にコロナ放電処理が施されたものである。
作製した各印刷物を用いて、各実施例及び比較例で調製した印刷インキによる印刷層の耐溶剤性、耐薬品性、及びラミネート強度を確認する試験を行った。各試験では、以下に述べる評価基準における「A」及び「B」を合格レベルとし、「C」及び「D」を不合格レベルとした。
コロナ放電処理が施されたPETフィルムを基材として作製した印刷物に、学振型摩耗試験機を用いて、耐溶剤性試験を行った。具体的には、トルエンとMEKを質量比1:1で混合した混合溶剤を垂らした布を、印刷物における印刷層上に、荷重200gの条件下で20往復させた後の印刷層の状態を目視で確認し、以下の評価基準にしたがって、印刷層の耐溶剤性を評価した。
A:印刷層が取られた部分の面積が印刷層全体に対し5%未満であった。
B:印刷層が取られた部分の面積が印刷層全体に対し5%以上20%未満であった。
C:印刷層が取られた部分の面積が印刷層全体に対し20%以上50%未満であった。
D:印刷層が取られた部分の面積が印刷層全体に対し50%以上であった。
薬品には、一例として、パップ剤等の湿布薬の有効成分として使用されることの多いサリチル酸メチルを用いた。不織布を基材として作製した印刷物を、サリチル酸メチルに5時間浸漬し、サリチル酸メチルへの印刷層の溶出(サリチル酸メチルへの着色)の程度を目視で確認し、以下の評価基準にしたがって、印刷層の耐薬品性を評価した。
A:目視で判断できる程度の溶出はなかった。
B:目視で分かる程度の溶出があった。
C:溶出の程度が大きく、サリチル酸メチルが濃く色付いた。
コロナ放電処理が施された3種のプラスチックフィルム(PET、Ny、OPPフィルム)のそれぞれを基材として作製した印刷物における印刷層上に、樹脂層をドライラミネート法により積層し、ラミネートフィルムを作製した。具体的には、作製した印刷物における印刷層上に、ドライラミネート用接着剤(商品名「セイカボンドA−159/C−89(F)」、大日精化工業社製)を乾燥時の塗布量が3.0g/m2となるように塗工し、乾燥させ、樹脂層として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(商品名「T.U.X FC−D#60」、三井化学東セロ社製)を貼り合わせ、40℃で72時間養生し、ラミネートフィルムを得た。
得られた各ラミネートフィルムから、幅15mm及び長さ100mmの長方形状に切断した試料を採取し、ラミネート強度測定用試料として、基材(PET、Ny、又はOPPフィルム)と樹脂層(LLDPEフィルム)を互いに引っ張るT型剥離試験用試料を作製した。この各T型剥離試験用試料について、引張試験機(商品名「テンシロン RTG−1225」、エー・アンド・デイ社製)を用いて、引張速度300mm/minの条件でT型剥離試験を行い、ラミネート強度(N/15mm)を測定した。その測定値に基づき、以下の評価基準にしたがって、印刷層のラミネート強度を評価した。
A:ラミネート強度が2.0N/15mm以上であった。
B:ラミネート強度が1.0N/15mm以上2.0N/15mm未満であった。
C:ラミネート強度が0.5N/15mm以上1.0N/15mm未満であった。
D:ラミネート強度が0.5N/15mm未満であった。
Claims (8)
- イソシアネート系硬化剤と共に用いられるインキ組成物であって、
塩化ビニル、酢酸ビニル、及びヒドロキシ基を有する単量体のそれぞれに由来する構成単位を含む共重合樹脂と、
数平均分子量が1,500〜20,000の範囲内であり、かつ、ガラス転移点が−70〜60℃の範囲内であるポリエステル樹脂と、を含有し、
前記インキ組成物中の前記ポリエステル樹脂に対する前記共重合樹脂の質量比が1.0〜4.0の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂はヒドロキシ基を有し、前記ポリエステル樹脂の水酸基価が1〜100mgKOH/gの範囲内であるインキ組成物。 - 前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が、2,000〜17,000の範囲内である請求項1に記載のインキ組成物。
- 前記共重合樹脂が、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂である請求項1又は2に記載のインキ組成物。
- 前記共重合樹脂の水酸基価が、20〜200mgKOH/gの範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインキ組成物。
- 前記共重合樹脂の数平均分子量が、20,000〜40,000の範囲内である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインキ組成物。
- グラビア印刷用インキに用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載のインキ組成物。
- 基材と、前記基材上に設けられた印刷層とを備え、
前記印刷層が、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインキ組成物と、イソシアネート系硬化剤とを含むインキから形成されている、印刷物。 - 前記イソシアネート系硬化剤は、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む請求項7に記載の印刷物。
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