以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る印刷装置1を示す斜視図である。図2は、フロントカバー20を開けた状態の印刷装置1を示す正面図である。以下の説明では、特に断らない限り、印刷装置1を正面から見たときに、印刷装置1から遠ざかる方を前方、印刷装置1に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、印刷装置1を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、印刷装置1の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向である。主走査方向Yと副走査方向Xとは平面視において直交している。符号Zは、高さ方向、すなわち、上下方向を示している。ただし、主走査方向Y、副走査方向Xおよび高さ方向Zは、特に限定されず、印刷装置1の形態に応じて適宜に設定可能である。
本実施形態に係る印刷装置1は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。また、印刷装置1は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。
印刷装置1は、立体物などの被印刷物5(図8参照)にインクを吐出して、被印刷物5に印刷を行う装置である。図1に示すように、印刷装置1は、箱状に形成されている。本実施形態では、印刷装置1は、ケース10と、フロントカバー20と、操作パネル25を備えている。ケース10は、底部11と、前壁部12と、後壁部13と、左壁部14と、右壁部15と、天面部16とを有している。底部11は、板状の部材である。前壁部12は、底部11の前端の右部に接続され、底部11の前端の右部から上方に延びている。図示は省略するが、後壁部13は、底部11の後端に接続され、底部11の後端から上方に延びている。左壁部14は、底部11の左端に接続され、底部11の左端から上方に延びている。左壁部14の後端は、後壁部13の左端に接続されている。右壁部15は、底部11の右端に接続され、底部11の右端から上方に延びている。ここでは、右壁部15の前端は、前壁部12の右端に接続され、右壁部15の後端は、後壁部13の右端に接続されている。天面部16は、前壁部12の上端、後壁部13の上端、左壁部14の上端、および、右壁部15の上端にそれぞれ接続されている。図2に示すように、ケース10の前部には、開口17が形成されている。
フロントカバー20は、ケース10の開口17を開閉自在に設けられている。フロントカバー20は、後端を軸に回転可能なように、ケース10に支持されている。
本実施形態では、底部11、前壁部12、後壁部13、左壁部14、右壁部15、天面部16およびフロントカバー20に囲まれることによって、内部空間18が形成されている。内部空間18は、印刷装置1による印刷が行われる空間である。フロントカバー20の後端を軸にして、フロントカバー20を上方に回転させることによって、内部空間18と外部空間とが連通される。
本実施形態では、図1に示すように、フロントカバー20には、窓部21が設けられている。窓部21は、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。作業者は、窓部21を通じて内部空間18を視認することが可能である。
操作パネル25は、ケース10の右前部に設けられている。操作パネル25は、天面部16の右前部に設けられている。操作パネル25は、作業者が印刷に関する操作を行うパネルである。
次に、印刷装置1の内部構成について説明する。図3は、印刷装置1の要部を模式的に示した平面図である。図3では、前壁部12、後壁部13、左壁部14、右壁部15、天面部16およびフロントカバー20が取り外されている。図4は、キャリッジ61、インクヘッド30、および紫外線照射装置40を模式的に示した正面図である。図5は、印刷装置1に係るブロック図である。図2〜図5に示すように、印刷装置1は、インクヘッド30と、インクカートリッジ35と、紫外線照射装置40と、テーブル50と、移動機構60と、制御装置100と、を備えている。制御装置100は、データ変換部101と、データ保存部102と、データ結合部103と、データ選定部104と、印刷制御部105と、を備えている。移動機構60は、キャリッジ61と、ガイドレール62と、ヘッド駆動装置63と、第1テーブル移動機構64と、第2テーブル移動機構65とを備えている。
インクヘッド30は、キャリッジ61に設けられている。インクヘッド30は、テーブル50上に向けて紫外線硬化インクを吐出する部材である。本実施形態では、インクヘッド30の数は「6」であるが、インクヘッド30の数は特に限定されない。複数のインクヘッド30は、主走査方向Yに並んで配置されている。図示は省略するが、インクヘッド30の底面には、複数のノズルが形成されている。インクヘッド30では、このノズルから下方に向かって紫外線硬化インクが吐出される。
複数のインクヘッド30には、それぞれインクカートリッジ35が接続されている。インクヘッド30と、インクカートリッジ35とは、図示しないインクチューブによって接続されている。インクカートリッジ35には、それぞれ異なる色の紫外線硬化インクが収容されている。紫外線硬化インクは、紫外線によって硬化するインクである。本実施形態では、底部11の左後部にインクカートリッジ収容部36が設けられ、インクカートリッジ35は、インクカートリッジ収容部36に収容されている。
図4に示すように、紫外線照射装置40は、キャリッジ61に設けられている。本実施形態にあっては、紫外線照射装置40は、第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42から構成されている。第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42は、テーブル50上に向けて、インクヘッド30から吐出された紫外線硬化インクを硬化させる紫外線を照射する。第1紫外線照射ランプ41は、キャリッジ61の左側面、インクヘッド30よりも左方に配置されている。第2紫外線照射ランプ42は、キャリッジ61の右側面、インクヘッド30よりも右方に配置されている。紫外線照射ランプが、インクヘッド30の左右にあることで、キャリッジ61が主走査方向Yのどちらに移動されるときでも、紫外線照射装置40は、テーブル50上に吐出された紫外線硬化インクに紫外線を照射することができる。
図2に示すように、テーブル50は、ケース10内の内部空間18に配置されている。テーブル50は、インクヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42よりも下方に配置されている。図3に示すように、テーブル50は、平面視において、底部11における主走査方向Yの中央部分に配置されている。
移動機構60は、テーブル50に対して、インクヘッド30および紫外線照射装置40を動かす機構である。この移動は相対的なものであって、本実施形態では、移動機構60は、テーブル50を副走査方向X(前後方向)および高さ方向Z(上下方向)に動かし、インクヘッド30および紫外線照射装置40を主走査方向Y(左右方向)に動かす。勿論、上述の移動方向は一つの例であって、移動機構60が、テーブル50、インクヘッド30、紫外線照射装置40を動かす方向は、上記方向に限定されない。また、移動機構60は、テーブル50だけ、またはインクヘッド30および紫外線照射装置40だけを移動させる構成であってもよい。
ガイドレール62は、キャリッジ61を主走査方向Yにガイドする部材である。図2に示すように、ガイドレール62は、主走査方向Yに延びている。本実施形態では、ケース10内に、主走査方向Yに延びた内壁19が設けられている。内壁19の左端は、左壁部14に接続され、内壁19の右端は、右壁部15に接続されている。ガイドレール62は、内壁19に固定されている。
キャリッジ61は、ガイドレール62に摺動自在に係合している。キャリッジ61は、ガイドレール62に沿って主走査方向Yへの移動が可能である。図4に示すように、キャリッジ61には、インクヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42が設けられている。キャリッジ61において、第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42、複数のインクヘッド30は、主走査方向Yに並ぶように配置されている。
キャリッジ61、インクヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42は、一体となって、ガイドレール62に沿って主走査方向Yに移動する。本実施形態では、図3に示すように、キャリッジ61には、ヘッド駆動装置63が接続されている。ヘッド駆動装置63は、キャリッジ61をガイドレール62に沿って主走査方向Yに移動させる装置である。ヘッド駆動装置63が駆動することによって、キャリッジ61、インクヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42は、主走査方向Yに移動する。ヘッド駆動装置63の種類は特に限定されないが、例えば、ヘッド駆動装置63は、モータである。
第1テーブル移動機構64は、テーブル50を副走査方向Xに移動させる。図3に示すように、平面視において、第1テーブル移動機構64は、底部11の主走査方向Yの中央部分に開けられた開口11aの下に設けられている。第1テーブル移動機構64は、第1シャフト64aと、第2シャフト64bと、搬送部材64cと、第1駆動モータ64dとを備えている。第1シャフト64aおよび第2シャフト64bは、副走査方向Xに延びている。第1シャフト64aと第2シャフト64bとは平行に配置されている。第1シャフト64aおよび第2シャフト64bは、底部11に支持されている。搬送部材64cは、第1シャフト64aおよび第2シャフト64bに対して摺動自在に設けられている。本実施形態では、搬送部材64cは、平板64c−1と、第1筒状部64c−2と、第2筒状部64c−3とを有している。平板64c−1は、底部11の開口11aの下方に位置している。図2、図3に示すように、第1筒状部64c−2および第2筒状部64c−3は、中空の筒状の部材であって、例えば、ボールブッシュを備えている。第1筒状部64c−2は、平板64c−1の左端に設けられ、第2筒状部64c−3は、平板64c−1の右端に設けられている。第1筒状部64c−2には、第1シャフト64aが摺動自在に挿入されている。第2筒状部64c−3には、第2シャフト64bが摺動自在に挿入されている。図5に示すように、第1駆動モータ64dは、搬送部材64cを副走査方向Xに移動させる駆動源である。図3に示すように、搬送部材64cは、第1駆動モータ64dの駆動によって、第1シャフト64aおよび第2シャフト64bに沿って、副走査方向Xに移動する。搬送部材64cの上には、高さ調整部材65aを介して、テーブル50が載置されている。そこで、第1テーブル移動機構64は、テーブル50を副走査方向Xに移動することができる。
図2に示すように、第2テーブル移動機構65は、テーブル50を高さ方向Z(上下方向)に移動させる機構である。第2テーブル移動機構65は、底部11に設けられた開口11aの下で第1テーブル移動機構64と接続され、開口11aを通ってテーブル50を支持している。第2テーブル移動機構65は、高さ調整部材65aと、第2駆動モータ65bとを備えている。高さ調整部材65aは、高さが可変な部材である。高さ調整部材65aは、高さを調整する機構として、例えば、ラックおよびピニオン機構を備えている。第2駆動モータ65bは、高さ調整部材65aに接続されており、駆動することで、高さ調整部材65aの高さを調整する。高さ調整部材65aの高さが変更されることによって、テーブル50の高さが調整される。
図5に示すように、制御装置100は、データ変換部101、データ保存部102、データ結合部103、データ選定部104、および印刷制御部105を備えている。制御装置100は、例えば、印刷装置1に接続されたコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。データ変換部101、データ保存部102、データ結合部103、データ選定部104、および印刷制御部105の構成は特に限定されない。例えば、制御装置100の印刷制御部105以外の部位は印刷装置1に接続されたコンピュータにインストールされたソフトウェアによって構成され、印刷制御部105は印刷装置1に内蔵されたハードウェアおよびソフトウェアで構成され、コンピュータは印刷装置1内の印刷制御部105に指令を発する機能を備えていてもよい。
データ変換部101は、要素画像を印刷データに変換する部位である。データ変換部101は、さらに第1データ変換部101aと、第2データ変換部101bとを備えている。第1データ変換部101aは、後述するデータ選定部104によって自動選定された要素画像を印刷データに変換する部位である。第2データ変換部101aは、ユーザーが指定した要素画像を印刷データに変換する部位である。
要素画像は、本実施形態に係る印刷装置1における単位画像である。被印刷物に印刷される画像は、上記要素画像の組み合わせによって構成されている。図6は、被印刷物に印刷される印刷画像の一例を示す図である。図6は、複数の被印刷物5a、5b、および5cが載置されたテーブル50上を上方Uから見ている。被印刷物5a、5b、および5cは、いずれも立体物である。被印刷物5a、5b、および5cは、例えば、塩化ビニル、アクリル等で形成されている。被印刷物5a、5b、および5cは、例えば、スマートフォンケースなどである。図6においては、3個の被印刷物5a、5b、および5cは全て同じ種類の被印刷物であるが、異なる種類の被印刷物であってもよい。被印刷物5a、5b、5cに対しては、それぞれ印刷される画像が設定されている。図6の場合、被印刷物5aには、文字「A」を白抜きした背景色が印刷されるように設定されている。図6では、画像の色が付される部分にはハッチングが施されている。上記文字「A」を白抜きした背景色を表す画像は、1つの要素画像である(以下、上記画像を要素画像Aと称する。)。同様に、被印刷物5bには文字「B」を白抜きした背景色(以下、要素画像B)が、被印刷物5cには文字「C」を白抜きした背景色(以下、要素画像C)が印刷されるように設定されている。要素画像A、B、およびCは互いに独立した画像であり、かつ、印刷画像P1の中で互いに離間して配置されている。逆に言えば、図6の画像P1は、要素画像A、要素画像B、および要素画像Cを構成要素として構成されている。
データ変換部101は、上記要素画像を印刷データに変換する。「画像を印刷データに変換する」とは、画像を、画素(インクドット)の集合データに変換することである。インクジェットプリンタにおいては、印刷される画像は、画素の集合である。以下では、上記画像の印刷データへの変換処理を「レンダリング」と称することがある。
データ保存部102は、要素画像がレンダリングされて生成された印刷データを保存する部位である。データ保存部102には、各種要素画像の印刷データがストックデータとして保存されている。上記印刷データの保存形式は限定されないが、本実施形態にあっては、制御装置100の主記憶領域への保存とともに、キャッシュ領域にも保存される。キャッシュ領域では、要素画像の印刷データは、当該印刷データから求められたハッシュ値をファイル名とするファイルとして保存される。ただし、印刷データは必ずしもキャッシュ領域に保存されなくともよく、また、ハッシュ値をファイル名として保存されなくともよい。なお、各要素画像のハッシュ値については後述する。
データ結合部103は、要素画像の印刷データを複数結合させて1つの印刷データを作成する部位である。データ結合部103において結合される複数の印刷データは、1種類の要素画像の印刷データからなっていてもよいし(例えば、要素画像Aの印刷データを3個結合させる場合など)、複数種類の要素画像の印刷データからなっていてもよい(例えば、1個の要素画像Aの印刷データと、1個の要素画像Bの印刷データと、1個の要素画像Cの印刷データとを結合させる場合など)。データ結合部103における印刷データの結合の詳細については後述する。
データ選定部104は、データ保存部102に保存されているストックデータの中から、印刷中の画像に使用可能な印刷データを選定する部位である。データ選定部104で選定された印刷データは、データ結合部103において、データ結合の際に利用される。データ選定部104の詳細については後述する。
印刷制御部105は、データ結合部103において作成された印刷データ、および操作パネル25に入力された印刷に関する情報に基づいて、被印刷物5への画像の印刷を制御する部位である。印刷制御部105は、インクヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、第2紫外線照射ランプ42、ヘッド駆動装置63、第1駆動モータ64d、第2駆動モータ65bを制御して、被印刷物5に対して印刷を行う。
具体的には、印刷制御部105は、ヘッド駆動装置63の駆動を制御することで、キャリッジ61に配置されたインクヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42の主走査方向Yへの移動を制御する。さらに、キャリッジ61の移動と連動させて、インクヘッド30がテーブル50上に紫外線硬化インクを吐出するタイミングを制御する。また、印刷制御部105は、テーブル50上に吐出された紫外線硬化インクに対して、第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42が紫外線を照射するタイミングを制御する。さらに、印刷制御部105は、第1テーブル移動機構64の第1駆動モータ64d、および第2テーブル移動機構65の第2駆動モータ65bを制御することによって、テーブル50の移動を制御する。より詳しくは、印刷制御部105は、第1テーブル移動機構64の第1駆動モータ64dの駆動を制御することによって、テーブル50の副走査方向Xへの移動を制御する。また、印刷制御部105は、第2テーブル移動機構65の第2駆動モータ65bの駆動を制御することによって、テーブル50の高さ方向Zへの移動を制御する。上記のようにして、印刷制御部105は、所定の画像を被印刷物に印刷させる。
さて、ここで、本実施形態に係る印刷装置1において、図6に示された画像を被印刷物5a、5b、および5cに印刷する場合について考える。図7は、印刷データ作成の模式図である。図7に示されるように、図6の画像P1を構成する要素画像A、要素画像B、および要素画像Cの印刷データDa、Db、およびDcは、それぞれ既にデータ保存部102に保存されているものとする。即ち、要素画像A、要素画像B、および要素画像Cは、既にレンダリングが済んでいる。図6の画像P1について印刷の指令を受けたとき、印刷装置1は画像P1の印刷データDp1を作成するが、本実施形態に係る制御装置100は、上記印刷データDp1を要素画像の印刷データDa、Db、Dcの結合によって作成する。画像P1の印刷データDp1を作成するとき、データ結合部103は、図7に示されるように、データ保存部102から要素画像Aの印刷データDa、要素画像Bの印刷データDb、および要素画像Cの印刷データDcを呼び出し、それらを結合させることで、画像P1の印刷データDp1を作成する。データ結合部103におけるデータ結合作業は、ユーザーの操作を介さない自動作業である。データ結合部103は、画像P1において各要素画像A、B、およびCが配置されている位置に各要素画像A、B、Cの印刷データDa、Db、Dcを自動配置する。印刷データDp1は、作成後に次の処理(例えば、印刷作業やプレビュー画面への表示など)に送られてもよいし、作成されながら順次次の処理に送られてもよい。
データ保存部102に印刷データが保存されている要素画像と、印刷される画像中の要素画像とが同一の要素画像かどうかは、データ選定部104によって判定される。データ選定部104による要素画像の同一性の判定方法は限定されないが、本実施形態に係る印刷装置1においては、要素画像のハッシュ値を利用している。ハッシュ値は、元のデータをハッシュ関数に入力することによって得られる固定長のデータである。ハッシュ関数は、要約関数とも呼ばれる。一般に、ハッシュ値の固定長は元データの長さよりも短く、データ量が少なくなっている。しかしながら、ハッシュ値は、元のデータの特徴を反映しており、多くの場合、ハッシュ値が同一ならば元データも同一である。データ選定部104は、印刷画像中の各要素画像のハッシュ値を求めた上で、そのハッシュ値と同一のファイル名を有するファイルがデータ保存部102のキャッシュ領域に保存されているかどうかを確認する。そして、当該ハッシュ値と一致するファイル名のファイルが確認された場合、そのファイルを当該要素画像と同一の要素画像の印刷データファイルであると認定する。
上記を図7において見ると、データ選定部104は、画像P1中の要素画像Aのハッシュ値Haを算出している。同様に、データ選定部104は、要素画像Bのハッシュ値Hbと要素画像Cのハッシュ値Hcとを算出している。また、データ選定部104は、データ保存部102のキャッシュ領域に保存されている各印刷データDa、Db、およびDcのファイル名(即ち、印刷データDa、Db、およびDcのハッシュ値Ha、Hb、およびHc)を読み出している。図7に示されるように、画像P1から求めたハッシュ値Haと印刷データDaのファイル名(ハッシュ値)Haとは同一である。従って、要素画像Aと、印刷データDaの元データである要素画像とは一致していると判定される。要素画像Bおよび要素画像Cの同一性も同様に判定される。上記判定の後、データ結合部103は、データ保存部102のキャッシュ領域に保存されている要素画像Aの印刷データDa、要素画像Bの印刷データDb、および要素画像Cの印刷データDcを呼び出し、それらを結合させることで、画像P1の印刷データDp1を作成する。
上記のように、本実施形態では、要素画像の印刷データから求められたハッシュ値は、当該印刷データのファイル名として利用されている。ハッシュ値をファイル名とすることで、各印刷データとそのハッシュ値との対応関係を規定するテーブル等を用意する必要がなくなり、データ構造がシンプルになる。ただし、ハッシュ値と印刷データとの対応のさせ方はそれに限られず、各要素画像の印刷データとハッシュ値を対応させるテーブルが用意されてもよい。
ところで、画像P1のように複数の被印刷物に対して印刷を施す印刷画像の場合、印刷画像の軽微な変更が行われることがよくある。図6の場合で言うと、例えば、被印刷物5cの位置をわずかに動かしたいといった場合などである。そのような変更が実際に行われたときには、従来の方法では、レンダリングをやり直さなければならなかった。従来の印刷装置によれば、例えば画像P1は1つの画像としてだけ認識され、画像P1の印刷データDp1への変換は、画像P1全体のレンダリングによって行われるものであった。そこで、従来の印刷装置では、画像の変更の多少に関係なく、レンダリングのやり直しが必要であった。そのために、処理の時間を要してしまうということがあった。
それに対し、本実施形態に係る印刷装置1は、画像中の要素画像の中に既にストックデータとして保存された要素画像がある場合、画像の印刷データの作成に上記ストックデータを利用する。そこで、画像の変更に対する印刷データの変更処理が効率よく実施でき、その結果、処理時間が短縮できる。本実施形態では、利用されるストックデータはキャッシュ領域中のストックデータなので、さらに印刷データ読み出しの効率化も図られている。
上記したような要素画像の配置を移動させるだけの画像の変更の他にも画像の変更の類型は存在する。例えば、画像P1において要素画像Cを新規の要素画像Dに変更する場合などである。図8は、図6の要素画像Cを新規の要素画像Dに差し替えた画像P2を示す図である。要素画像Dは、データ保存部102にストックデータがない新規の要素画像である。本実施形態に係る印刷装置1は、画像P2の印刷指示を受けたとき、要素画像Aおよび要素画像Bについてはストックデータを利用しつつ、要素画像Dについてはレンダリングを実施し、さらにレンダリングされた要素画像Dの印刷データをストックデータに追加する。
図9は、画像P2の印刷時における印刷データ作成の模式図である。図9に示される処理においては、第1データ変換部101aが、要素画像Dを印刷データDdに変換する。前述のように、第1データ変換部101aは、データ選定部104によって自動選定された要素画像を印刷データに変換する部位である。この場合の「選定」とは、ストックデータ中のどの要素画像とも一致しない要素画像を自動で選定するという意味である。要素画像Dのように、データ選定部104によって、ストックデータ中のどの要素画像とも一致しないと判定された要素画像は、第1データ変換部101aによって自動的にレンダリングされる。図9においては、要素画像Dは、第1データ変換部101aにおいて印刷データDdに変換されている。第1データ変換部101aが要素画像Dのレンダリングを終え印刷データDdが生成されると、要素画像Dの印刷データDdは、データ結合部103に送られる。データ結合部103は、得られた要素画像Dの印刷データDdを、データ保存部102から取得した要素画像Aの印刷データDa、および要素画像Bの印刷データDbと結合させて画像P2の印刷データDp2を作成する。上記処理においては、レンダリングが実施されるのは要素画像Dに対してだけである。従って、画像P2全体をレンダリングするのと比べて画像処理の量が少なくて済み、処理時間が短縮される。
さらに、第1データ変換部101aで作成された要素画像Dの印刷データDdは、図9のように、新たなストックデータとしてデータ保存部102に保存される。要素画像Dの印刷データDdがストックデータとして追加されることにより、印刷装置1は、画像の変更への対応力が増加する。印刷装置1は今後、例えば、要素画像Dの位置が変更されるような変更にも容易に対応可能であるし、あるいは、要素画像A〜Dの4種類の要素画像が配置されるような変更にも容易に対応可能である。
上記のように、本実施形態に係る印刷装置1はデータ結合部103を備え、複数の要素画像を組み合わせ結合させることによって1つの印刷データを作成する。上記機能により、本実施形態に係る印刷装置1は、複数の要素画像の組み合わせからなる画像の印刷データを効率的に作成することができる。
さらに、本実施形態に係る印刷装置1は、データ保存部102を備え、要素画像の印刷データをストックしている。データ結合部103は、上記ストックされた印刷データが利用可能なときには利用するように構成されている。それにより、本実施形態に係る印刷装置1は、さらに印刷データ作成の効率を向上させている。画像中の要素画像と印刷データとしてストックされた要素画像との同一性は、それぞれの要素画像のハッシュ値を比較することによって判定される。ハッシュ値は元データの特徴を維持したままダウンサイズされたデータである。ハッシュ値の利用によって要素画像の同一性判定処理の効率を向上させることができ、結果として、印刷データ作成の効率をさらに向上させることができる。
本実施形態に係る印刷装置1は、さらに、データ保存部102に印刷データが保存されていない新たな要素画像が印刷されるとき、第1データ変換部101aにおいて上記新たな要素画像の印刷データを作成するとともに、上記印刷データをストックデータに追加するように構成されている。本実施形態に係る印刷装置1は、上記ストックデータの追加によって、特に画像の軽微変更が繰り返されるような場合に、画像の変更に追従してゆくことができる。
さらに本実施形態では、ストックデータは制御装置100の主記憶領域に保存されるとともにキャッシュ領域にも保存され、読み出しの効率化が図られている。
なお、本実施形態においては、要素画像の印刷データは、第2データ変換部101bを介して手動で保存することもできる。図5のように、本実施形態に係るデータ変換部101は、第2データ変換部101bを備えている。第2データ変換部101bは、ユーザーが選択した要素画像をレンダリングするように構成されている。第2データ変換部101bによってレンダリングされた印刷データも、データ保存部102に保存される。第2データ変換部101bによって作成された要素画像の印刷データも、データ結合部103において使用可能である。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る印刷装置は、複数の変換モードに基づいて要素画像を印刷データに変換することができるように構成された印刷装置である。本実施形態に係る印刷装置は、従って、1つの要素画像に対して変換モードの異なる複数の印刷データをストックできる。本実施形態に係る印刷装置は、上記仕様に関わる部材を除いて第1実施形態と共通である。そこで、本実施形態の説明においては、第1実施形態に係る印刷装置と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡潔化する。
図10は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。図10に示されるように、本実施形態に係る制御装置100は、変換モード選定部106を備えている。変換モード選定部106はさらに、画像判定部106aと、第1変換モード選定部106bとを備えている。
変換モード選定部106は、要素画像を印刷データに変換してストックデータとする際の変換モードが1つまたは複数選定される部位である。変換モードは、印刷条件に関連している。印刷条件には、例えば印刷密度や色味などが含まれており、変換モードは印刷条件ごとに存在する。1回の印刷で実行される印刷条件は1種類だけであるが、本実施形態に係る第1データ変換部101aは、新規の要素画像に対して、実行された印刷条件に基づく変換モードの他、変換モード選定部106が自動で選定した変換モードによってもレンダリングを実施する。そして上記レンダリングで作成された印刷データは、ストックデータとしてデータ保存部102に保存される。
画像判定部106aは、変換モード選定部106に備えられた部位であって、新規の要素画像を含む画像の印刷指令を受けたときに、上記新規の要素画像と類似した要素画像(以下、適宜、「類似画像」と呼称する。)を、ストックデータの中から検索する部位である。画像判定部106aの詳細については後述する。
第1変換モード選定部106bは、上記類似画像がストックデータ化された際の変換モードを読み出すように構成されている。上記読み出された変換モードは、変換モード選定部106が選定した変換モード(以下、適宜、「選択変換モード」と呼ぶ。)として扱われ、第1データ変換部101aは、上記選択変換モードによって新規の要素画像をレンダリングする。
以下に、本実施形態に係る印刷装置1による印刷データの作成プロセスについて説明する。図11は、3つの要素画像E、F、およびGを示す図である。ここでは、要素画像EおよびFは、本実施形態に係る印刷装置1によって印刷されたことのある要素画像である。従って、データ保存部102には、要素画像Eおよび要素画像Fの印刷データが保存されている。図11に示すように、データ保存部102の内部には要素画像Eの印刷データが3種類保存されている。上記3種類の印刷データのうち、印刷データDe1は、変換モードM1によって作成された印刷データである。印刷データDe2は、変換モードM2によって作成された印刷データである。印刷データDe3は、変換モードM3によって作成された印刷データである。本実施形態では、印刷モードはその他に、M4およびM5が設定可能であるが、要素画像Eは、変換モードM4およびM5によっては変換されていない。なお、5種類の変換モードは、例えば、画像の鮮明度や印刷密度に従って段階分けされた変換モードなどであるが、特に限定されない。また、変換モードの数は、5種類に限定されない。
要素画像Fの印刷データは、データ保存部102内部に2種類保存されている。詳しくは、要素画像Fの印刷データは、変換モードM4でレンダリングされた印刷データDf4と、変換モードM5でレンダリングされた印刷データDf5とからなっている。データ保存部102内部には要素画像EおよびF以外の要素画像の印刷データが含まれていてもよいが、図11において図示は省略する。
図11にはさらに、要素画像Gが図示されている。要素画像Gは、新規の要素画像である。新規の要素画像Gは、図示しないある画像中に含まれており、当該画像は変換モードM1に係る印刷条件で印刷されるように指令されているとする。
図12は、上記要素画像Gを含む画像の印刷が指令された後の処理を示すフローチャートである。図12のフローチャートでは、要素画像E、F、およびG以外の要素画像に関する部分は省略している。図12のステップS01は、要素画像Gが要素画像Eと一致するかどうかを判定するステップである。第1実施形態の説明において説明されたように、ステップS01は、データ選定部104によって行われる。ステップS01において、要素画像Gと要素画像Eとが一致しないと判定されると(図12においては「NO」)、次はステップS02において、要素画像Gと要素画像Fの一致/不一致が判定される。図示は省略するが、ステップS01において要素画像Gと要素画像Eとが一致すると判定された場合、その先のステップは、要素画像Eのストックデータのいずれかが印刷画像に設定されているのと同じ変換モードによるものであるかどうかを判定するステップである。ステップS02において、要素画像Gと要素画像Fとが一致しないと判定されると、ステップS03に進む。ステップS02において要素画像Gと要素画像Fとが一致すると判定された場合の先のステップは、ステップS01において要素画像Gと要素画像Eとが一致すると判定された場合の先のステップと同様である。
なお、ステップS01、S02の前には、要素画像の一致/不一致の判定が正しく行われているかを確認する工程が実施されてもよい。例えば、要素画像Eと同一の第1の画像が制御装置100内に予め用意され、上記第1の画像についてステップS02と同じ処理を実施したとき、正しく「一致」判定がされるか確認する工程が実施されてもよい。または、要素画像Eと異なる第2の画像が制御装置100内に予め用意され、上記第2の画像についてステップS02と同じ処理を実施したとき、正しく「不一致」判定がされるか確認する工程が実施されてもよい。さらには、変換モードに関して正しく判定されるかを確認する工程が実施されてもよい。例えば、要素画像Eと同一の第1の画像を第1の変換モードに基づいて変換した印刷データと、要素画像Eを第1の変換モードに基づいて変換した印刷データとが「一致」判定されることを確認する工程、または、要素画像Eを第1の変換モードに基づいて変換した印刷データと、要素画像Eを第1の変換モードとは異なる第2の変換モードに基づいて変換した印刷データとが「不一致」判定されることを確認する工程などが実施されてもよい。
ステップS03では、要素画像Gと要素画像Eの類似/非類似が判断される。ステップS03において、要素画像Gと要素画像Eとが類似であると判断された場合(「YES」の場合)、ステップはステップS04Bに進み、さらに要素画像Gと要素画像Fの類似性が判断される。ここで例えばステップS04Bで「NO」と判断された場合、要素画像Gの類似画像は要素画像Eだけであることが確定する。上記確定を受け、ステップS05Cにおいて、要素画像Gのレンダリングが行われる。このときの変換モードは、変換モードM1、M2、およびM3である。上記3種類の変換モードのうち、変換モードM1は、実際に要素画像Gを含む画像が印刷されたときの変換モードであり、かつ、類似画像Eに設定されている変換モードである。変換モードM2およびM3は、類似画像Eに設定されている変換モードである。ステップS05Cでは、要素画像Gが変換モードM1、M2、M3によってレンダリングされた印刷データDg1、Dg2、およびDg3が生成される。続くステップS06Cでは、生成された印刷データDg1、Dg2、およびDg3が、データ保存部102内部に保存される。
一方、ステップS04Bで「YES」と判断された場合、ステップはステップS05Dに進む。ステップS04Bで「YES」と判断されたため、要素画像Gは、要素画像Eに類似しているとともに要素画像Fにも類似している。そこで、ステップS05Dでは、要素画像Gは、変換モードM1、M2、M3、M4、およびM5でレンダリングされる。その結果、ステップS06Dでは、印刷データDg1、Dg2、Dg3、Dg4、およびDg5が保存される。このように、本実施形態では、データ保存部102に印刷データが保存されている全ての要素画像に対して類似性が判断される。
ステップS03およびS04Bは、類似した画像は類似の印刷条件で印刷されることが多いという経験則に基づいている。ある要素画像の類似画像に対してレンダリングが実施された変換モードは、当該画像においても使用される確率が高く、将来、レンダリングを省略できる可能性が高い。ステップS03およびS04Bにおける処理は、将来の印刷データ作成を高速化するための投機的な処理である。
ステップS03で「NO」と判断された場合についても上記と同様である。ステップS03で「NO」と判断された場合、ステップはステップS04Aに進む。ステップS04Aも、ステップS04Bと同様のステップである。ステップS04Aにおいても、要素画像Gと要素画像Fの類似/非類似が判断される。ステップS04Aにおいて、要素画像Gと要素画像Fとが類似であると判断された場合(「YES」の場合)、ステップはステップS05Bに進み、要素画像Gのレンダリングが行われる。このときの変換モードは、変換モードM1、M4、およびM5である。その後のステップS06Bでは、要素画像Gが変換モードM1、M4、M5によってレンダリングされた印刷データDg1、Dg4、およびDg5がデータ保存部102内部に保存される。ステップS04Aにおいて「NO」が選択され、ストックの中に類似画像がないという判定がされたときは、ステップはステップS05Aに進み、印刷が実行される変換モードM1のみによってレンダリングが実行される。その結果、ステップS06Aでは、印刷データDg1だけがデータ保存部102に追加される。
上記類似性の判断は、例えば、画像認識の技術を利用して実施される。類似性の判断技術には、例えば、いわゆる機械学習などが利用できる。機械学習においては、例えば、使用の初期の段階でユーザーが類似/非類似の判断を行い、その判定結果を画像判定部106aにフィードバックする。それにより、画像判定部106aの判断精度を向上させてゆく。その他、類似性の判断には、公知の様々な画像認識技術が利用できる。例えば、上記した実施形態においてユーザーが行っていた初期段階における類似/非類似の判断から機械に行わせることも可能である。
なお、上記した「類似」の評価は、本実施形態のように、ある基準以上の類似度の要素画像をすべて選定する絶対評価であってもよく、類似度の高い1つまたはいくつかの要素画像が選定される相対評価であってもよい。相対評価の場合は、類似した類似画像が所定の数だけ選定される。一方、絶対評価であれば、多数の類似画像が選定される可能性があり、また類似画像が1つも選定されない可能性もある。類似判断の基準の設定方法は限定されない。
新規要素画像の印刷データをストックする手法は上記の通りであるが、ストックされた要素画像の印刷データが使用される際には、変換モードが確認される。本実施形態に係るデータ選定部104は、要素画像の同一性とともに変換モードの同一性を判定する。本実施形態においては、同じ要素画像が同じ変換モードで変換された印刷データだけが同一の印刷データである。例えば、図12のフローチャートにおいて、ステップがステップS06Bに進んだ後に終了した場合、データ保存部102内のストックデータには、印刷データDg1、Dg4、Dg5が追加されている。ここで、例えば1つの画像が要素画像Gを含んでいるとする。また、当該画像に設定された変換モードはM4であるとする。この場合、ストックデータ中の印刷データDg4は、要素画像、変換モードがともに一致するため、画像中の要素画像Gと一致すると判定される。しかし、ストックデータ中の印刷データDg1、Dg5は、変換モードが一致しないため、画像中の要素画像Gと一致しないと判定される。そこで、データ選定部104は、画像中の要素画像Gと同一のストックデータとしてDg4だけを認定する。なお、印刷条件に係る変換モードでレンダリングされた印刷データがデータ保存部102内部に存在しない場合は、当該変換モードに基づく印刷データが新たに作成され、保存される。
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態は、いくつかの変形例によって実施することも可能である。図13は、第2実施形態の1つの変形例に係る制御装置100のブロック図である。図13に示されるように、本変形例に係る変換モード選定部106は、画像判定部106a、第1変換モード選定部106bに加えて、第2変換モード選定部106cおよび変換モード入力部106dを備えている。第2変換モード選定部106cは、第1変換モード選定部106bとは異なる手法で変換モードを選定する部位である。第2変換モード選定部106cによる変換モードの選定も、自動選定である。変換モード入力部106dは、ユーザーが変換モードを手動で選定する部位である。
第2変換モード選定部106cは、ストックデータを作成する際の変換モードとして、印刷装置1において使用頻度の高い変換モードを選定する。これは、使用頻度の高い変換モードは、今後も使用される可能性が高いという経験則に基づいている。選定の基準には、例えば、上位からの順位が用いられる。例えば、上記順位の閾値が「3」であるとすれば、使用頻度の高い上位3つの変換モードが選択される。あるいは例えば、選定基準を使用頻度の上位「20%」とし、変換モードの総数が「10」であるとすれば、使用頻度の高い上位2つの変換モードが選択される。あるいは、選定基準を使用頻度「10%」以上とすれば、全印刷回数に占める割合が10%以上である変換モードがすべて選択される。ただし、上記は例示であって、変換モードの選定基準は、それに限られない。
また、変換モード入力部106dは、ストックデータを作成する際の変換モードをユーザーが設定する部位である。変換モード入力部106dは、コンピュータの表示装置や操作パネル25などに操作画面を表示する。ユーザーは上記操作画面を介して所望の変換モードを入力する。当該入力は、都度入力であってもよく、事前入力であってもよい。また、変換モードは、所定の変換モードの中から選択されるものであってもよいし、あるいは、所望の印刷密度、色味、コントラスト等を組み合わせて得られる変換モードなどであってもよい。
第1変換モード選定部106b、第2変換モード選定部106c、および変換モード入力部106dのいずれの機能を使用するかは、択一的に選択されるようになっていてもよいし、重複選択できてもよい。また、選定される変換モードが増え続けるのを防止するため、削除できるように構成されていてもよい。
(第3実施形態)
第3実施形態は、ストックされた印刷データ同士を結合することができるように構成された実施形態である。第1実施形態および第2実施形態で説明された機能は、予め制作され、印刷指令された画像に対して効率的に印刷データを作成する機能であったが、第3実施形態は上記機能に加え、ストックデータを使用して新規画像の印刷データを作成する機能を有する。
図14は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。図14に示されるように、本実施形態に係る制御装置100は、配置入力部107および警告部108を備えている。また、データ結合部103は、第2データ結合部103bを備えている。第1データ結合部103aは、第1実施形態および第2実施形態において説明されたデータ結合部103と同じ部位であるが、第2データ結合部103bと区別するため、本実施形態ではそう称している。第1データ結合部103aについては説明を省略する。
第2データ結合部103bは、複数のストックデータを結合させて1つの印刷データを作成できるように構成された部位である。上記結合される複数のストックデータは、1種類の要素画像の印刷データから構成されていてもよいし、複数種類の要素画像の印刷データから構成されていてもよい。第2データ結合部103bの詳細については後述する。
配置入力部107は、第2データ結合部103bにおいて結合させる印刷データの、画像上におけるレイアウトを入力する部位である。第2データ結合部103bと配置入力部107とは、例えば1つの操作画面によってユーザーに対するインターフェイスを構成する。
警告部108は、第2データ結合部103bにおいて異なる変換モードで作成された印刷データ同士を結合させようとしたとき、警告を発する部位である。警告部108は、必要に応じて警告画面を操作画面上に表示する。
図15は、第2データ結合部103bおよび配置入力部107が表示する操作画面の一例を示す図である。操作画面は、例えば、コンピュータの表示装置や操作パネル25などに表示される。図15に示されるように、操作画面は、ファイル選択画面DI1と、マージン入力画面DI2と、結合式入力画面DI3と、イメージ表示画面DI4とを備えている。
ファイル選択画面DI1は、新規画像に使用されるストックデータが選択される部位である。各ストックデータは、ファイルとして保存され、ファイル名が付されている。ファイル名は、当該ファイルが保存されるときに自動で付けられてもよいし、ユーザーが設定できてもよい。図15において、ファイル選択画面DI1内のファイルは、要素画像ごとに分類されている。例えば、ファイル選択画面DI1には、要素画像Aに係る印刷データの一覧が表示されている。同様に、ファイル選択画面DI1には、要素画像Bなど他の要素画像に係る印刷データの一覧が表示されている。要素画像Aに係る印刷データとして保存されている各印刷データは、要素画像Aが異なる変換モードでレンダリングされて作成された印刷データである。各ファイルのファイル名は、要素画像の種類および変換モードの種類が識別できるように構成されている。例えば、要素画像Aが変換モードM1でレンダリングされて作成された印刷データには、row(A,M1)というファイル名が付される。ユーザーは、このファイル名を見て、ファイルの中身を認識する。ただし、上記分類やファイル名は、1つの例示であって、何らファイルの保存方法を限定するものではない。
マージン入力画面DI2には、要素画像間の距離(マージン)が入力される。図15の操作画面では、要素画像がマトリクス状に配置されることが前提されている。マージン入力画面DI2においては、画面横方向(印刷装置1の主走査方向Y)に係るマージンMJ1と、画面縦方向(印刷装置1の副走査方向X)に係るマージンMJ2とが入力される。横方向に関して、複数の要素画像は、それぞれの間にマージンMJ1を挟みながら配置される。横方向のマージンMJ1は一定である。縦方向に関しても同様に、複数の要素画像は、それぞれの間にマージンMJ2を挟みながら配置される。本実施形態においては、縦方向のマージンMJ2も一定である。
結合式入力画面DI3には、要素画像のレイアウトを示す結合式が入力される。図15に示された例では、結合式入力画面DI3の1行目には、「row(A,M1)+row(A,M1)+row(A,M1)」と入力されている。結合式は、その後改行され、2行目には、「row(B,M1)」と入力されている。上記結合式は、ファイルrow(A,M1)の中身である要素画像が印刷エリアの1行目に3個並べて配置され、2行目にはファイルrow(B,M1)の中身である要素画像が1個配置されることを示している。結合式の視覚的なイメージは、イメージ表示画面DI4に表示される。
ユーザーは、マージン入力画面DI2で横方向のマージンMJ1および縦方向のマージンMJ2を設定した後に、ファイル選択画面DI1で配置する印刷データを選択しながら、結合式入力画面DI3で結合式を構築する。印刷画像のイメージは、結合式が変更されるたびにイメージ表示画面DI4に改めて表示される。ユーザーは、イメージ表示画面DI4を見ながら、マージンMJ1およびMJ2を変更してレイアウトを修正することもできる。また、選択する要素画像を変更することもできる。
警告部108は、上記したような印刷画像の作成操作において、ユーザーが異なる印刷モードで作成された要素画像同士を結合させようとすると警告を発する。1つの印刷画像内の全ての要素画像は同一の変換モードによるものでなければ問題があるため、警告部108は、ユーザーに注意を促すとともに、変換モードを選択させる。例えば、警告部108は、前に選択されたファイルの変換モードか、後に選択されたファイルの変換モードかをユーザーに選択させるように構成される。
本実施形態に係る印刷装置1は、要素画像の種類がある程度固定されており、それらのレイアウトが主に変更されるような使用方法において有効である。印刷画像を作成する時点において使用されるストックデータが指定されるため、印刷データ作成の効率はさらに向上している。また、警告部108を有することによって、変換モードに係るユーザーの不適切な操作や間違いなどを防止することができる。
なお、図15に示され説明されたような操作画面は1つの例示であって、印刷装置1は、異なる仕様の操作画面を備えていてもよい。例えば、上記実施形態では、要素画像のレイアウトは縦横ともに一定のマージンで要素画像が配置されることが前提されていたが、千鳥配置などいくつかのパターンを選択したり、自由にレイアウトしたりできるように構成されていてもよい。また、画像の周囲の余白などを設定できてもよい。操作画面の仕様は限定されない。また、図15に図示された入力画面DI1、DI2、DI3、およびDI4のような操作画面の一部(特に結合式入力画面DI3など)は必ずしも表示されなくてもよく、処理は表示なしに自動的に進行されてもよい。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、ここに開示する印刷装置1は、上記した実施形態に限られるものではない。例えば、上記した実施形態に係る印刷装置1は、データ保存部102を備えていたが、必ずしも備えなくてもよい。印刷装置1は、要素画像の印刷データを結合させて1つの印刷データを作成できるように構成されていればよく、例えば、要素画像の印刷データ自体は外部から取り込むように構成されていてもよい。
また、上記した実施形態において、印刷装置1は紫外線硬化インクを吐出したが、印刷装置1が吐出するインクは紫外線硬化インクでなくともよい。例えば、印刷装置1は、熱によって硬化する熱硬化性インクを吐出してもよい。そのとき、印刷装置1は、紫外線照射装置ではなく、ヒータ等を備えていてもよい。インクの種類およびインクを硬化させる手段は限定されない。
上記した実施形態では、印刷データを作成するデータ変換部、データ結合部は、印刷装置と一体に構成されていたが、印刷装置の外部に単独に存在していてもよい。データ変換部、データ結合部は、外部のコンピュータなどによって構成され、印刷装置に接続されるとともに印刷装置に指令する装置などであってもよい。