以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ。)1を示す斜視図である。図2は、フロントカバー20を開けた状態のプリンタ1を示す正面図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ1を正面から見たときに、プリンタ1から遠ざかる方を前方、プリンタ1に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ1を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ1の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向である。主走査方向Yと副走査方向Xとは平面視において直交している。符号Zは、高さ方向、すなわち、上下方向を示している。ただし、主走査方向Y、副走査方向Xおよび高さ方向Zは、特に限定されず、プリンタ1の形態に応じて適宜に設定可能である。
本実施形態では、プリンタ1は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。また、プリンタ1は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。
プリンタ1は、記録媒体5にインクを吐出して、記録媒体5に印刷を行う装置である。記録媒体5の材質は特に限定されず、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などを使用することができる。また、記録媒体5の形状も特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状の記録媒体が使用可能である。
図1に示すように、プリンタ1は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ1は、ケース10と、フロントカバー20と、操作パネル25を備えている。ケース10は、底部11と、前壁部12と、後壁部13と、左壁部14と、右壁部15と、天面部16とを有している。底部11は、板状の部材である。前壁部12は、底部11の前端の右部に接続され、底部11の前端の右部から上方に延びている。図示は省略するが、後壁部13は、底部11の後端に接続され、底部11の後端から上方に延びている。左壁部14は、底部11の左端に接続され、底部11の左端から上方に延びている。左壁部14の後端は、後壁部13の左端に接続されている。右壁部15は、底部11の右端に接続され、底部11の右端から上方に延びている。ここでは、右壁部15の前端は、前壁部12の右端に接続され、右壁部15の後端は、後壁部13の右端に接続されている。天面部16は、前壁部12の上端、後壁部13の上端、左壁部14の上端、および、右壁部15の上端にそれぞれ接続されている。図2に示すように、ケース10の前部には、開口17が形成されている。
フロントカバー20は、ケース10の開口17を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー20は、後端を軸に回転可能なように、ケース10に支持されている。
本実施形態では、底部11、前壁部12、後壁部13、左壁部14、右壁部15、天面部16およびフロントカバー20に囲まれることによって、内部空間18が形成されている。内部空間18は、プリンタ1による印刷が行われる空間である。フロントカバー20の後端を軸にして、フロントカバー20を上方に回転させることによって、内部空間18と外部空間とが連通される。
本実施形態では、図1に示すように、フロントカバー20には、窓部21が設けられている。窓部21は、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。作業者は、窓部21を通じて内部空間18を視認することが可能である。
操作パネル25は、ケース10の右前部に設けられている。ここでは、操作パネル25は、天面部16の右前部に設けられている。操作パネル25は、作業者が印刷に関する操作を行うパネルである。
次に、プリンタ1の内部構成について説明する。図3は、プリンタ1の要部を模式的に示した平面図である。なお、図3では、前壁部12、後壁部13、左壁部14、右壁部15、天面部16およびフロントカバー20が取り外されている。図4は、キャリッジ61、記録ヘッド30、光照射機構40を模式的に示した正面図である。図5は、プリンタ1に係るブロック図である。図2~図5に示すように、プリンタ1は、記録ヘッド30と、インクカートリッジ35と、光照射機構40と、テーブル50と、移動機構60と、制御装置100とを備えている。
記録ヘッド30は、キャリッジ61に設けられている。記録ヘッド30は、プライマを吐出するプライマ吐出ヘッド31と、インクを吐出するインク吐出ヘッド32とを備えている。
プライマは、記録媒体5に対して良好にインクを定着させるために使用される液体であり、記録媒体5とインクとのバインダの役目を果たす。プライマは、記録媒体5とインクとの間に吐出される。本実施形態では、プライマ吐出ヘッド31の数は「1」であるが、プライマ吐出ヘッド31の数は特に限定されない。記録媒体5の材料によって適切なプライマの種類が異なる場合もあり、記録ヘッド30は、複数のプライマ吐出ヘッド31を備えていてもよい。
また、プライマの好適な吐出条件は、記録媒体5の素材によって異なることがあり、ある素材において好適な吐出条件でプライマを吐出しても、別の素材ではプライマが記録媒体5上で十分に拡散しない、あるいは拡散し過ぎるといったことが起こりうる。プライマの吐出条件が好適に調整されないと、インクが記録媒体5にうまく定着せず、剥離しやすくなる等の問題が起こる場合がある。
本実施形態に係るインク吐出ヘッド32は、第1インク吐出ヘッド32C、第2インク吐出ヘッド32M、第3インク吐出ヘッド32Y、第4インク吐出ヘッド32Kを備えている。第1インク吐出ヘッド32Cは、第1のインクとしてシアンインクを吐出する。第2インク吐出ヘッド32Mは、第2のインクとしてマゼンタインクを吐出する。第3インク吐出ヘッド32Yは、第3のインクとしてイエローインクを吐出する。第4インク吐出ヘッド32Kは、第4のインクとしてブラックインクを吐出する。本実施形態では、インク吐出ヘッド32の数は「4」であるが、インク吐出ヘッド32の数は特に限定されない。
プライマ吐出ヘッド31および複数のインク吐出ヘッド32は、主走査方向Yに並んで配置されている。図示は省略するが、プライマ吐出ヘッド31および複数のインク吐出ヘッド32の底面には、それぞれ複数のノズルが形成されている。プライマ吐出ヘッド31および複数のインク吐出ヘッド32は、このノズルから、下方に向かって、それぞれプライマおよびインクを吐出する。
プライマ吐出ヘッド31および複数のインク吐出ヘッド32には、それぞれインクカートリッジ35が接続されている。プライマ吐出ヘッド31および複数のインク吐出ヘッド32は、図示しないインクチューブによってインクカートリッジ35に接続されている。プライマ吐出ヘッド31と接続されたインクカートリッジ35には、プライマが収容されている。第1インク吐出ヘッド32Cと接続されたインクカートリッジ35には、シアンインクが収容されている。第2インク吐出ヘッド32Mと接続されたインクカートリッジ35には、マゼンタインクが収容されている。第3インク吐出ヘッド32Yと接続されたインクカートリッジ35には、イエローインクが収容されている。第4インク吐出ヘッド32Kと接続されたインクカートリッジ35には、ブラックインクが収容されている。本実施形態では、底部11の左後部にインクカートリッジ収容部36が設けられ、インクカートリッジ35は、インクカートリッジ収容部36に収容されている。
本実施形態では、プライマおよびインクは紫外線硬化性のプライマおよびインクである。紫外線硬化プライマおよびインクは、紫外線が照射されることによって硬化するプライマおよびインクである。
図4に示すように、本実施形態では、光照射機構40は、キャリッジ61に設けられている。光照射機構40は、第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42から構成される。第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42は、テーブル50上に向けて、記録ヘッド30から吐出されたプライマおよびインクを硬化させる紫外線を発する。第1紫外線照射ランプ41は、キャリッジ61の左側面、記録ヘッド30よりも左方に配置されている。第2紫外線照射ランプ42は、キャリッジ61の右側面、記録ヘッド30よりも右方に配置されている。
テーブル50は、記録媒体5が載置される部材である。図2に示すように、テーブル50は、ケース10内の内部空間18に配置されている。テーブル50は、記録ヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42よりも下方に配置されている。図3に示すように、テーブル50は、平面視において、底部11における主走査方向Yの中央部分に配置されている。
移動機構60は、記録ヘッド30と記録媒体5とを相対的に移動させる機構である。即ち、記録媒体5が載置されたテーブル50に対して、記録ヘッド30を移動させる機構である。本実施形態では、キャリッジ61には記録ヘッド30とともに光照射機構40が搭載されており、移動機構60は光照射機構40もテーブル50に対して移動させる。本実施形態では、移動機構60は、テーブル50を副走査方向X(前後方向)および高さ方向Z(上下方向)に動かし、記録ヘッド30および光照射機構40を主走査方向Y(左右方向)に動かす。ただし、この移動の仕方は一つの例であって、移動機構60が、テーブル50、記録ヘッド30、および光照射機構40を動かす方向は、上記方向に限定されない。また、移動機構60は、テーブル50だけ、または記録ヘッド30および光照射機構40だけを移動させる構成であってもよい。移動機構60は、ここでは、キャリッジ61と、ガイドレール62と、ヘッド駆動装置63と、第1テーブル移動機構64と、第2テーブル移動機構65とを備えている。
ガイドレール62は、キャリッジ61を主走査方向Yにガイドする部材である。図2に示すように、ガイドレール62は、主走査方向Yに延びている。本実施形態では、ケース10内には、主走査方向Yに延びた内壁19が設けられている。内壁19の左端は、左壁部14に接続され、内壁19の右端は、右壁部15に接続されている。ガイドレール62は、内壁19に固定されている。
キャリッジ61は、ガイドレール62に摺動自在に係合している。キャリッジ61は、ガイドレール62に沿って主走査方向Yへの移動が可能である。図4に示すように、キャリッジ61には、記録ヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42が設けられている。キャリッジ61において、第1紫外線照射ランプ41および第2紫外線照射ランプ42、記録ヘッド30は、主走査方向Yに並ぶように配置されている。
キャリッジ61、記録ヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42は、一体となって、ガイドレール62に沿って主走査方向Yに移動する。本実施形態では、図3に示すように、キャリッジ61には、ヘッド駆動装置63が接続されている。ヘッド駆動装置63は、キャリッジ61をガイドレール62に沿って主走査方向Yに移動させる装置である。ヘッド駆動装置63が駆動することによって、キャリッジ61、記録ヘッド30、第1紫外線照射ランプ41、および第2紫外線照射ランプ42は、主走査方向Yに移動する。ヘッド駆動装置63の種類は特に限定されないが、例えば、ヘッド駆動装置63はモータを備えている。
第1テーブル移動機構64は、テーブル50を副走査方向Xに移動させる。図3に示すように、平面視において、第1テーブル移動機構64は、底部11の主走査方向Yの中央部分に開けられた開口11aの下に設けられている。第1テーブル移動機構64は、第1シャフト64aと、第2シャフト64bと、搬送部材64cと、第1駆動モータ64dとを備えている。第1シャフト64aおよび第2シャフト64bは、副走査方向Xに延びている。第1シャフト64aと第2シャフト64bとは平行に配置されている。第1シャフト64aおよび第2シャフト64bは、底部11に支持されている。搬送部材64cは、第1シャフト64aおよび第2シャフト64bに対して摺動自在に設けられている。本実施形態では、搬送部材64cは、平板64c1と、第1筒状部64c2と、第2筒状部64c3とを有している。平板64c1は、底部11の開口11aの下方に位置している。図2、図3に示すように、第1筒状部64c2および第2筒状部64c3は、中空の筒状の部材であって、例えば、ボールブッシュを備えている。第1筒状部64c2は、平板64c1の左端に設けられ、第2筒状部64c3は、平板64c1の右端に設けられている。第1筒状部64c2には、第1シャフト64aが摺動自在に挿入されている。第2筒状部64c3には、第2シャフト64bが摺動自在に挿入されている。図5に示すように、第1駆動モータ64dは、搬送部材64cを副走査方向Xに移動させる駆動源である。図3に示すように、搬送部材64cは、第1駆動モータ64dの駆動によって、第1シャフト64aおよび第2シャフト64bに沿って、副走査方向Xに移動する。搬送部材64cの上には、高さ調整部材65aを介して、テーブル50が載置されている。そこで、第1テーブル移動機構64は、テーブル50を副走査方向Xに移動することができる。
図2に示すように、第2テーブル移動機構65は、テーブル50を高さ方向Z(上下方向)に移動させる機構である。第2テーブル移動機構65は、底部11に設けられた開口11aの下で第1テーブル移動機構64と接続され、開口11aを通ってテーブル50を支持している。第2テーブル移動機構65は、高さ調整部材65aと、第2駆動モータ65bとを備えている。高さ調整部材65aは、高さが可変な部材である。高さ調整部材65aは、高さを調整する機構として、例えば、ボールねじ機構を備えている。第2駆動モータ65bは、高さ調整部材65aに接続されており、駆動することで、高さ調整部材65aの高さを調整する。高さ調整部材65aの高さが変更されることによって、テーブル50の高さが調整される。
図5に示すように、制御装置100は、操作パネル25、プライマ吐出ヘッド31、第1~第4インク吐出ヘッド32C~32K、第1紫外線照射ランプ41、第2紫外線照射ランプ42、ヘッド駆動装置63、第1駆動モータ64d、第2駆動モータ65bと接続され、それらの動作を制御している。制御装置100は、例えば、プリンタ1に接続されたコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置100の構成は特に限定されない。図5に示すように、制御装置100は、画像印刷部110と、テストパターン印刷部120とを備えている。
画像印刷部110は、画像の印刷動作を制御する部位である。画像印刷部110は、プライマ吐出ヘッド31、第1~第4インク吐出ヘッド32C~32K、第1紫外線照射ランプ41、第2紫外線照射ランプ42、ヘッド駆動装置63、第1駆動モータ64d、第2駆動モータ65bの動作を制御して、記録媒体5に対して画像の印刷を行わせる。画像印刷部110は、印刷条件設定部111と印刷制御部112とを備えている。
印刷条件設定部111は、ユーザーが画像の印刷条件を設定する部位である。印刷条件設定部111は、画像の印刷における各インクの吐出条件を設定可能に構成されるともに、画像の印刷におけるプライマの吐出条件を設定可能に構成されている。印刷条件設定部111は、インク吐出条件入力部111aと、インク吐出条件登録部111bと、プライマ吐出条件入力部111cと、プライマ吐出条件登録部111dとを備えている。インク吐出条件入力部111aは、ユーザーがインクの吐出条件を入力する部位である。インクの吐出条件としては、例えばインクドットの解像度などが入力される。インク吐出条件登録部111bは、インク吐出条件入力部111aに入力されたインクの吐出条件を画像の印刷におけるインクの吐出条件として登録する部位である。即ち、プリンタ1は、画像の印刷においては、インク吐出条件登録部111bに登録された吐出条件でインクを吐出する。プライマ吐出条件入力部111cは、ユーザーが画像印刷時におけるプライマの吐出条件を入力する部位である。プライマの吐出条件およびその入力方法については後述する。プライマ吐出条件登録部111dは、プライマ吐出条件入力部111cに入力されたプライマの吐出条件を、画像の印刷におけるインクの吐出条件として登録する。即ち、プリンタ1は、画像の印刷においては、プライマ吐出条件登録部111dに登録された吐出条件でプライマを吐出する。インク吐出条件入力部111aおよびプライマ吐出条件入力部111cは、例えば操作パネル25や外部の表示装置などに入力画面を表示するように構成されている。
印刷制御部112は、各部を制御して画像を印刷させる部位である。印刷制御部112は、印刷条件設定部111に登録されたプライマおよびインクの吐出条件に基づいて、プライマ吐出ヘッド31、第1~第4インク吐出ヘッド32C~32K、第1紫外線照射ランプ41、第2紫外線照射ランプ42、ヘッド駆動装置63、第1駆動モータ64d、第2駆動モータ65bの動作を制御し、記録媒体5に対して画像の印刷を行わせる。
テストパターン印刷部120は、記録媒体5にテストパターンを印刷させる部位である。本実施形態に係るプリンタ1は、ユーザーがプライマの吐出条件を選定するためのテストパターンを記録媒体5に対して印刷できるように構成されている。テストパターン印刷部120は、プライマ吐出条件記憶部121と、インク吐出条件記憶部122と、符号記憶部123と、プライマ吐出部124と、インク吐出部125と、符号印刷部126とを備えている。
プライマ吐出条件記憶部121は、プライマの吐出条件として複数の吐出条件を記憶している。詳しくは、プライマ吐出条件記憶部121は、面積当たりの吐出量が異なる複数の吐出条件を記憶している。プライマ吐出条件記憶部121におけるプライマの面積当たりの吐出量の定義方法は特に限定されないが、本実施形態に係るプライマ吐出条件記憶部121は、プライマの面積当たりの吐出量を、インク吐出条件記憶部122に記憶された吐出条件(後述)におけるインクの面積当たりの吐出量に対する割合として記憶している。プライマ吐出条件記憶部121が記憶している、テストパターン印刷におけるプライマの吐出条件の詳細については後述する。なお、以下では適宜、プライマまたはインクの面積当たりの吐出量のことを「吐出密度」とも称する。
インク吐出条件記憶部122は、インクの吐出条件として所定の吐出条件を記憶する部位である。インク吐出条件記憶部122は、テストパターン印刷におけるインクの吐出条件として、1つの吐出条件を記憶している。詳しくは、インク吐出条件記憶部122は、テストパターン印刷におけるインクの吐出条件として、インクの所定の吐出密度を記憶している。
符号記憶部123は、プライマ吐出条件記憶部121に記憶された複数の吐出条件のそれぞれに対応する複数の識別符号を記憶する部位である。テストパターン印刷部120においては、プライマ吐出条件記憶部121が記憶するプライマの複数の吐出条件のそれぞれに異なる識別符号が割り当てられており、符号記憶部123はその識別符号を記憶している。本実施形態では、識別符号は、インクの吐出密度に対するプライマの吐出密度の割合として表される。例えばプライマの複数の吐出条件のうちの1つにおいて、その吐出密度がインクの吐出密度の50%であった場合、その識別符号は「50%」である。識別符号の詳細については後述する。
プライマ吐出部124は、プライマ吐出ヘッド31と移動機構60とを制御して、プライマを、プライマ吐出条件記憶部121に記憶された複数の吐出条件で、それぞれ記録媒体5上の異なる領域に対して吐出させる。即ち、プライマ吐出部124は、プライマ吐出条件記憶部121に記憶された全ての吐出条件でプライマを吐出させるとともに、異なる吐出条件でプライマが吐出された領域が互いに重ならないように、吐出場所を異なった場所に配置する。テストパターンにおけるプライマの吐出領域については後述する。
インク吐出部125は、インク吐出ヘッド32と移動機構60とを制御して、プライマ吐出部124が吐出させたプライマ上に、インク吐出条件記憶部122に記憶された吐出条件でインクを吐出させる。即ち、インク吐出部125は、プライマ吐出部124がプライマを吐出させた後に、吐出されたプライマに重ねてインクを吐出する。ここでは、インク吐出部125は、第1インク吐出ヘッド32Cを制御してシアンインクを吐出させ、第2インク吐出ヘッド32Mを制御してマゼンタインクを吐出させ、第3インク吐出ヘッド32Yを制御してイエローインクを吐出させ、第4インク吐出ヘッド32Kを制御してブラックインクを吐出させるように構成されている。インク吐出部125によるインクの吐出の詳細については後述する。
符号印刷部126は、記録ヘッド30と移動機構60とを制御して、複数の識別符号を記録媒体5に印刷させる部位である。この識別符号は、符号記憶部123が記憶している識別符号であり、プライマ吐出条件記憶部121が記憶しているプライマの吐出条件に対応している。符号印刷部126は、プライマ吐出ヘッド31からプライマを吐出させ、第1~第4インク吐出ヘッド32C~32Kからインクを吐出させて、識別符号を印刷する。例えば、識別符号が「50%」である場合には、「50%」という文字を記録媒体5に印刷する。1つの識別符号が印刷される記録媒体5上の位置は、当該識別符号に対応する吐出条件でプライマが吐出される領域の近傍に設定されている。この識別符号の印刷位置については後述する。
図6は、本実施形態に係るプリンタ1が印刷するテストパターンの一例を示す平面図である。また、図7は、テストパターンの縦断面を模式的に示す断面図である。図6に示されるように、プリンタ1が印刷するテストパターンは、左右方向に10個のテストパターンP1~P10が並ぶように構成されている。10個のテストパターンP1~P10は、それぞれプライマの吐出密度を変えて形成されたテストパターンである。10個のテストパターンP1~P10は、それぞれ記録媒体5上の異なる領域に形成され、互いに重ならないように配置されている。テストパターンP1~P10は、左方からP1、P2、・・・P10の順に配置されている。また、1つのテストパターンは、7つの異なる色に着色された7つの領域から構成されている。上記7つの領域は、前後方向に並んで形成されている。本実施形態では、7つの色は、後方から順に、シアンC、マゼンタM、イエローYe、ブラックK、第1の混色Mx1、第2の混色Mx2、第3の混色Mx3である。
図7に示されるように、1つのテストパターンは、プライマPrを下層とし、インクInを上層として2層に形成されている。インクInは、プライマPrが吐出された後に、プライマPrの上に吐出される。
図6に示すように、10個のテストパターンP1~P10の前方には、それぞれ識別符号S1~S10が印刷されている。識別符号S1~S10は、それぞれ、その後方に形成されたテストパターンP1~P10におけるプライマPrの吐出条件に対応している。ここでは、識別符号S1~S10は、識別符号に対応する吐出条件で吐出されたプライマPrと、1色のインクInで形成されている。ただし、識別符号S1~S10はテストパターンP1~P10と対応する位置に印刷されていればよく、印刷条件や印刷位置は特に限定されない。図6に示すように、10個の識別符号S1~S10は、S1から順に、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%と印刷されている。これら識別符号S1~S10の数値(%)は、インクInの吐出密度を100%としたときのプライマPrの吐出密度を表している。例えば、テストパターンP1の印刷においては、プライマPrはインクInの吐出密度の35%の吐出密度で吐出されている。テストパターンP2の印刷においては、プライマPrはインクInの吐出密度の40%の吐出密度で吐出されている。以下同様に、右方のテストパターンに移るごとにプライマPrの吐出密度は5%ずつ上がっていき、テストパターンP10では、吐出密度は80%である。
上記したテストパターンP1~P10は、例えば以下のようなプロセスで印刷される。まず、副走査方向Xの1つの位置において、キャリッジ61が主走査方向Yに走査され、テストパターンP1~P10のそれぞれ一部が形成される。その内部のプロセスにおいては、まずプライマPrが所定の領域に所定の吐出密度で吐出される。次に、プライマPrが硬化される。例えば、キャリッジ61が右方に移動するときにプライマPrの吐出が行われる場合には、記録ヘッド30よりも進行方向後方(左方)に配置された第1紫外線照射ランプ41が点灯され、吐出済みのプライマPrが硬化される。次に、キャリッジ61が左方に戻るときに、硬化済みのプライマPrの上にインクInが吐出され、第2紫外線照射ランプ42によって硬化される。この作業を副走査方向Xの位置を変えて繰り返すことにより、テストパターンP1~P10が印刷される。
ただし、上記プロセスは1つの好適な例であり、テストパターンは、他のプロセスによって形成されてもよい。例えば、プライマPrおよびインクInの硬化は、キャリッジ61がプライマPrおよびインクInの吐出の際に移動する方向とは逆方向に戻るときに実施されてもよい。また、プライマPrの層の形成とインクInの層の形成とは連続的に行われなくともよく、例えば、まずプライマPrの層を全て形成した後に、インクInの層をその上から形成してもよい。
上記のようにしてテストパターンP1~P10が記録媒体5に印刷された後、ユーザーはテストパターンP1~P10を評価し、プライマPrの好適な吐出条件を1つ選択する。この評価は、例えば目視やインクInの剥離試験などを通して行われる。
本実施形態に係るプリンタ1の画像印刷部110は、プライマ吐出条件入力部111cとプライマ吐出条件登録部111dとを備え、テストパターンの評価をもとにユーザーが選択したプライマPrの吐出条件を、画像印刷の際のプライマPrの吐出条件として登録できるように構成されている。ここでは、プライマ吐出条件入力部111cは、複数の識別符号S1~S10のうちの1つを入力可能に構成されている。プライマ吐出条件入力部111cは、表示装置などに入力画面を表示し、ユーザーはその入力画面を通して識別符号S1~S10のいずれかを入力する。プライマ吐出条件登録部111dは、プライマ吐出条件入力部111cに入力された識別符号に対応するプライマPrの吐出条件を画像の印刷におけるプライマPrの吐出条件として登録する。例えば好適なテストパターンとしてテストパターンP5を選択した場合、ユーザーはプライマ吐出条件入力部111cに「55%」と入力する。その場合、プライマ吐出条件登録部111dは、画像印刷におけるプライマPrの吐出条件として、インクの吐出密度に対する吐出密度が55%の吐出条件を登録する。
このように、本実施形態に係るプリンタ1は、記録媒体5にテストパターンを印刷させるテストパターン印刷部120を備え、1回のテストパターン印刷で好適なプライマの吐出条件を決定できるように構成されている。本実施形態では、テストパターン印刷部120は、プライマ吐出条件記憶部121と、インク吐出条件記憶部122と、プライマ吐出部124と、インク吐出部125とを備えている。プライマ吐出条件記憶部121は、プライマの吐出条件として複数の吐出条件を記憶している。インク吐出条件記憶部122は、インクの吐出条件として所定の吐出条件を記憶している。プライマ吐出部124は、プライマ吐出ヘッド31と移動機構60とを制御して、プライマを、プライマ吐出条件記憶部121に記憶された複数の吐出条件で、それぞれ記録媒体5上の異なる領域に対して吐出させる。インク吐出部125は、インク吐出ヘッド32と移動機構60とを制御して、プライマ吐出部124が吐出させたプライマ上に、インク吐出条件記憶部122に記憶された吐出条件でインクを吐出させる。本実施形態に係るプリンタ1によれば、記録媒体5上の異なる領域に、それぞれ異なるプライマの吐出条件に基づいてテストパターンが形成されるため、1回のテストパターン印刷で好適なプライマの吐出条件を決定することができる。
これに対し、プライマを使用する従来のプリンタでは、プライマの好適な吐出条件の調整は、ユーザーがプライマの吐出条件を手動で変えながら、繰り返しテストを行うことで決定されていた。従って、プライマの吐出条件の変更はテストの回数だけ行われていた。また、プライマおよびインクの吐出場所を変更しない限りは、記録媒体もテストのたびに交換しなければならず、記録媒体もテストの回数だけ消費されていた。このようなテストは手間が掛かるとともに、記録媒体が比較的高価な素材である場合には、費用的にも負担となることがあった。本実施形態に係るプリンタ1によれば、上記したような従来の技術の問題を解決することができる。
また、本実施形態では、テストパターンP1~P10はそれぞれ複数の色(ここでは7色)に色分けされた複数の領域(ここでは7つの領域)を備えており、インクの種類、記録媒体の種類、およびプライマの吐出条件の3者の間の相性を確認できるように構成されている。
また、本実施形態では、プライマの吐出条件は、面積当たりの吐出量(吐出密度)として設定される。さらに詳しくは、インクの面積当たりの吐出量に対する割合として設定されている。プライマの面積当たりの吐出量は記録媒体5に対するインクの定着具合に影響すると考えられるため、プライマの吐出条件を面積当たりの吐出量として設定することにより、記録媒体5に対するインクの定着をテストパターンで確認することができる。また、プライマの吐出条件がインクの面積当たりの吐出量に対する割合として設定されることにより、インクの面積当たりの吐出量に連動する形でプライマの吐出条件を決定することができる。
さらに、本実施形態では、複数のプライマの吐出条件に対応する識別符号も記録媒体5に印刷され、ユーザーが識別符号をプライマ吐出条件入力部111cに入力することによって、その識別符号に対応するプライマの吐出条件が画像印刷時におけるプライマの吐出条件として登録される。このような構成によれば、吐出条件の入力間違いが起こりにくく、作業も容易である。
なお、本実施形態では、図6に示したようにテストパターンはP1~P10の10個であったが、テストパターンの数は限定されない。また、テストパターン間における吐出条件の差は、図6の場合は5%刻みであったが、それに限定されるわけではない。また、1つのテストパターンにおいて使用するインクの色も4色でなくともよく(例えば1色でもよい)、混色を配置するかどうか、混色を何種類配置するか等も特に限定されるものではない。さらに、本実施形態では識別符号は吐出密度の数値そのものであったが、それに限られず、例えば、左から1、2・・・等という識別符号であってもよい。その他、テストパターンのレイアウトなども図6のものに限定されない。
(第2実施形態)
第2実施形態は、プライマ吐出条件記憶部にさらに複数の記憶部が設けられ、各記憶部がそれぞれ異なるパラメータに基づいた複数の吐出条件を記憶している実施形態である。第2実施形態に係るテストパターン印刷部は、ユーザーが1つの記憶部を選択できる選択部を備えている。第2実施形態は、上記した差異を除いて第1実施形態と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては第1実施形態と共通の部材には共通の符号を付すものとし、重複する説明は適宜、省略または簡略化する。
図8は、本実施形態に係るプリンタ1のブロック図である。図8に示されるように、本実施形態に係るテストパターン印刷部120Aは、選択部127を備えている。また、本実施形態に係るプライマ吐出条件記憶部121Aは、プライマの吐出条件としてそれぞれ複数の吐出条件を記憶する複数の記憶部を備えている。詳しくは、プライマ吐出条件記憶部121Aは、第1記憶部121A1と、第2記憶部121A2と、第3記憶部121A3とを備えている。
第1記憶部121A1は、面積当たりの吐出量(吐出密度)が異なる複数の吐出条件を記憶している。第1記憶部121A1では、パラメータとしてプライマの吐出密度が設定され、吐出密度が異なる複数の吐出条件が記憶されている。複数の吐出条件の設定の仕方は限定されないが、第1記憶部121A1に記憶されるプライマの吐出条件は、第1実施形態におけるプライマ吐出条件記憶部121によるものと同じであってもよい。
第2記憶部121A2は、吐出パターンが異なる複数の吐出条件を記憶している。第2記憶部121A2では、パラメータとしてプライマの吐出パターンが設定され、吐出パターンが異なる複数の吐出条件が記憶されている。吐出パターンとは、ここでは、プライマによる領域内の埋め方(例えば、ベタ塗り、格子状など)や、表面処理(グロス調、マット調など)などのことである。プライマの吐出パターンを変えることで印刷の意匠的効果が変わることがあり、プライマの吐出パターンというパラメータは、意匠的効果を好適なものにしたい場合に選択される。
第3記憶部121A3は、ドットサイズが異なる複数の吐出条件を記憶している。第3記憶部121A3では、パラメータとしてプライマのドットサイズが設定され、ドットサイズが異なる複数の吐出条件が記憶されている。プライマのドットサイズを変えることで、インクの定着性や印刷の意匠的効果が変わることがあり、ドットサイズというパラメータは、そのような場合に選択される。第3記憶部121A3には、例えば、プライマのドットを最も小さいSサイズのドットだけで構成する吐出条件、Sサイズよりも大きいMサイズのドットだけで構成する吐出条件、Mサイズよりも大きいLサイズのドットだけで構成する吐出条件、S、M、Lドットのうちの2つまたは3つのドットで構成する吐出条件などが記憶される。
選択部127は、複数の記憶部121A1~121A3のうちの1つを選択可能に構成されている。選択部127は、例えば表示装置などに複数の記憶部121A1~121A3のうちの1つの記憶部を選択させる操作画面を表示させる。ユーザーは、その操作画面を操作して複数の記憶部121A1~121A3のうちの1つを選択する。即ち、プライマの吐出密度、吐出パターン、ドットサイズのうちのどのパラメータに基づいて吐出条件を振るかを選択する。
本実施形態に係るプライマ吐出部124Aは、プライマ吐出ヘッド31と移動機構60とを制御して、プライマを、選択部127で選択された記憶部(ここでは、第1記憶部121A1~第3記憶部121A3のうちのいずれか)に記憶された複数の吐出条件で、それぞれ記録媒体5上の異なる領域に対して吐出させるように構成されている。
符号記憶部123Aは、3つの符号記憶部123A1~123A3を備えている。第1符号記憶部123A1は、プライマ吐出条件記憶部121Aの第1記憶部121A1に記憶されたプライマの吐出条件に対応する識別符号を記憶している。第2符号記憶部123A2は、プライマ吐出条件記憶部121Aの第2記憶部121A2に記憶されたプライマの吐出条件に対応する識別符号を記憶している。第3符号記憶部123A3は、プライマ吐出条件記憶部121Aの第3記憶部121A3に記憶されたプライマの吐出条件に対応する識別符号を記憶している。全体として、本実施形態に係る符号記憶部123Aも、第1実施形態における符号記憶部123と同様に、プライマ吐出条件記憶部121Aに記憶された複数の吐出条件のそれぞれに対応する複数の識別符号を記憶している。第1符号記憶部123A1が記憶する識別符号は、第1実施形態における符号記憶部123が記憶する識別符号と同様に、吐出密度の数値であっても、番号であってもよい。第2符号記憶部123A2が記憶する識別符号は、例えば、ベタ、格子、グロス、マット等の吐出パターンの名称であってもよいし、番号であってもよい。また、第3符号記憶部123A3が記憶する識別符号は、例えば、S、M、L、S+M、S+L等のドットサイズの組み合わせの名称であってもよいし、番号であってもよい。
符号印刷部126Aは、記録ヘッド30と移動機構60とを制御して、選択部127で選択された記憶部(ここでは、第1記憶部121A1~第3記憶部121A3のうちのいずれか)に記憶された複数の吐出条件に対応する複数の識別符号を記録媒体5に印刷させる。
印刷条件設定部111Aのプライマ吐出条件入力部111Acは、記録媒体5に印刷された複数の識別符号のうちの1つを入力可能に構成されている。つまり、選択部127で選択された記憶部(ここでは、第1記憶部121A1~第3記憶部121A3のうちのいずれか)が記憶している吐出条件に対応する識別符号の中から1つの識別符号を入力できるように構成されている。言い換えれば、選択部127で選択されなかった記憶部が記憶している吐出条件に対応する識別符号は入力できないように構成されている。
このように、本実施形態に係るプリンタ1においては、プライマの吐出条件に係るパラメータとして複数のパラメータが用意されており、ユーザーは目的に応じたパラメータを選択することができる。具体的には、ユーザーは、インクの定着性の好適化を目的とする場合にはパラメータとしてプライマの吐出密度を選択することができ、印刷の意匠性の向上を目的とする場合にはパラメータとしてプライマの吐出パターンやドットサイズを選択することができる。
以上、いくつかの実施の形態について説明したが、ここに開示するプリンタ1は、上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態ではプライマおよびインクは紫外線硬化性のプライマおよびインクであったが、それには限定されない。プライマおよびインクは、例えば熱硬化性であってもよい。
また、上記した第2実施形態では、プライマの吐出条件のパラメータとして、プライマの吐出密度、吐出パターン、ドットサイズが択一的に選択可能であったが、プライマの吐出条件のパラメータはマトリクスになっていてもよい。例えば、左右方向に吐出密度を振るとともに、前後方向に吐出パターンを振るようなテストパターンを形成してもよい。ユーザーが3つ以上のパラメータの中から2つを選択できるように構成されていてもよい。
上記した実施形態では、プリンタ1はフラットベッドタイプのプリンタであったが、プリンタの構成は特に限定されない。例えば、ここに開示される技術は、記録媒体がロールから供給されるタイプのプリンタに対して適用されてもよい。