例証となる非限定的実施形態、及び付属の図への参照を用いて、以降、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施されることがあり、本発明を、下に示す実施形態に限定されるとみなすべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が行き届いたものになるように、また本発明の範囲を当業者に知らせるために提供するものである。
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語を下で定義する。さらなる定義は、発明の詳細な説明の中で見つけることができる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、単数及び複数両方の指示対象を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、2つの種、A及びB、に言及するときの用語「及び/又は」は、A及びBの少なくとも一方を意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、2つより多くの種、例えばA、B及びC、に言及するときの用語「及び/又は」は、A、B若しくはCの少なくとも1つ、又はA、B若しくはCのいずれかの組合せ(この場合は各々の種に単数の可能性又は複数の可能性がある)の少なくとも1つを意味する。
本明細書全体を通して、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの語尾変化形は、述べられている整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)群の包含を暗示するが、他のいかなる整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)群の除外も暗示しないと解されるものとする。
本明細書を通して、用語「含む(including)」は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」を意味するために用いる。「含む(including)」及び「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」は、同義で用いる。
用語「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに組み込まれているアミノ酸への言及を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸又はアミノ酸残基の任意の重合体を含む。用語「ポリペプチド配列」は、物理的にポリペプチドを構成する一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」は、1個又は2個以上のポリペプチド又はポリペプチド「鎖」を含む高分子である。「ペプチド」は、合計15〜20アミノ酸残基より小さいサイズの小さいポリペプチドである。用語「アミノ酸配列」は、その長さに依存してペプチド又はポリペプチドを物理的に含む一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。別段の指示がない限り、本書において開示するポリペプチド及びタンパク質配列は、アミノ末端からカルボキシ末端へのそれらの順序を表すように左から右に記載している。
用語「アミノ酸」、「アミノ酸残基」、「アミノ酸配列」又はポリペプチド配列は、天然に存在するアミノ酸(L及びD立体異性体を含む)を含み、別段の制限がない限り、天然に存在するアミノ酸と同様に機能することができる公知の天然アミノ酸アナログ、例えば、セレノシステイン、ピロールリジン、N−ホルミルメチオニン、ガンマ−カルボキシグルタメート、ヒドロキシプロリン、ハイプシン、ピログルタメート及びセレノメチオニンも含む。本書において言及するアミノ酸は、表A中の以下のような簡略表記名によって記載している:
ポリペプチドに関しての句「保存的置換」は、ポリペプチド全体の機能及び構造を実質的に改変しない、ポリペプチドのアミノ酸組成の変化を指す(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W. H. Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992)を参照されたい)。
本書において用いる場合、用語「発現された」、「発現すること」又は「〜発現する」及びその文法上の異形は、ポリヌクレオチド又は核酸のポリペプチド又はタンパク質への翻訳を指す。発現されたポリペプチド又はタンパク質は、細胞内に残存し、細胞表面膜の成分になることもあり、又は細胞外空間に分泌されることもある。
少なくとも1つの細胞の表面に有意な量の細胞外標的生体分子を発現する細胞は、本明細書で使用される場合、「標的陽性細胞」又は「標的+細胞」であり、特定の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞である。
本書において用いる場合、記号「α」は、記号の後に続く生体分子と結合することができる免疫グロブリン型結合領域の簡略表記である。記号「α」は、記号の後に続く生体分子と結合するその能力に基づく免疫グロブリン型結合領域の機能的特徴を指すために用いている。
記号「::」は、物理的に互いに結合して連続するポリペプチドを形成する前又はした後のポリペプチド領域を意味する。
細胞毒性タンパク質の細胞毒性活性に関して、用語「選択的細胞毒性」は、標的細胞タイプの細胞殺滅の優先性を明らかにするための標的細胞集団と非標的バイスタンダー細胞集団間の相対細胞毒性レベルを指し、この相対細胞毒性レベルを標的細胞タイプの半数細胞毒性濃度(half-maximal cytotoxic concentration;CD50)の非標的細胞タイプのCD50に対する比として表現することができる。
本発明では、用語「エフェクター」は、因子の動員及び/又はアロステリック効果をもたらす、細胞毒性、生体シグナル伝達、酵素的触媒、細胞内経路指定及び/又は分子間結合などの、生物活性を提供することを意味する。
本発明では、句「〜に由来する」は、ポリペプチド領域が、タンパク質中で元来見つけられるアミノ酸配列であって、元の配列と比較して全機能及び構造が実質的に保存されるような付加、欠失、短縮化又は他の改変をすでに含むこともあるアミノ酸配列を含むことを意味する。
本発明の目的に関して、志賀毒素のエフェクター機能は、志賀毒素のAサブユニットに由来するポリペプチド領域によって付与された生物活性である。志賀毒素のエフェクター機能の非限定的な例としては、細胞の内在化、細胞内の経路決定、触媒活性、及び細胞毒性が挙げられる。志賀毒素の触媒活性としては、例えば、リボソーム不活性化、タンパク質合成阻害、N−グリコシダーゼ活性、ポリヌクレオチド:アデノシングリコシダーゼ活性、RNAアーゼ活性、及びDNAアーゼ活性が挙げられる。RIPは、核酸、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、rRNA、ssDNA、dsDNA、mRNA(及びポリA)、及びウイルス核酸を脱プリン化することができる(Barbieri L et al., Biochem J 286: 1-4 (1992)、Barbieri L et al., Nature 372: 624 (1994)、Ling J et al., FEBS Lett 345: 143-6 (1994)、Barbieri L et al., Biochem J 319: 507-13 (1996)、Roncuzzi L, Gasperi-Campani A, FEBS Lett 392: 16-20 (1996)、Stirpe F et al., FEBS Lett 382: 309-12 (1996)、Barbieri L et al., Nucleic Acids Res 25: 518-22 (1997)、Wang P, Tumer N, Nucleic Acids Res 27: 1900-5 (1999)、Barbieri L et al., Biochim Biophys Acta 1480: 258-66 (2000)、Barbieri L et al., J Biochem 128: 883-9 (2000)、Bagga S et al., J Biol Chem 278: 4813-20 (2003)、Picard D et al., J Biol Chem 280: 20069-75 (2005))。いくつかのRIPは、抗ウイルス活性及びスーパーオキシドジスムターゼ活性を示す(Erice A et al., Antimicrob Agents Chemother 37: 835-8 (1993)、Au T et al., FEBS Lett 471: 169-72 (2000)、Parikh B, Tumer N, Mini Rev Med Chem 4: 523-43 (2004)、Sharma N et al., Plant Physiol 134: 171-81 (2004))。志賀毒素の触媒活性は、インビトロとインビボの両方で観察されている。志賀毒素のエフェクター活性に関するアッセイは、例えば、タンパク質合成阻害活性、脱プリン活性、細胞増殖の阻害、細胞毒性、スーパーコイルDNAの弛緩活性、及び/又はヌクレアーゼ活性などの様々な活性を測定することができる。
本書において用いる場合、志賀毒素エフェクター機能の保持は、再現性のある適切な定量的アッセイによって測定して、野生型志賀毒素エフェクター領域対照に匹敵する志賀毒素機能活性レベルを指す。リボソーム阻害の場合、志賀毒素エフェクターの機能は、10,000ピコモル濃度(pM)又はそれ未満のIC50を示す。標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性の場合、志賀毒素エフェクターの機能は、細胞型及びその適切な細胞外標的生体分子の発現に応じて1,000ナノモル濃度(nM)又はそれ未満のCD50を示す。
細胞毒性分子としての免疫毒素及びリガンド-毒素融合体の有効性及び効力は、標的細胞表面上におけるそれらの標的抗原の密度(例えばDecket T et al., Blood 103: 2718-26 (2004)、Du X et al., Blood 111: 338-43 (2008)、Baskar S et al., mAbs 4: 349-61 (2012)を参照)、エピトープの配置(Press O et al., J Immunol 141: 4410-7 (1988)、Godal A et al., In J Cancer 52: 631-5 (1992)、Yazdi P et al., Cancer Res 55: 3763-71 (1995))、表面に結合した細胞毒性分子の内在化速度(例えばDu X et al., Cancer Res 68: 6300-5 (2008)を参照)、及び細胞内の道程(Tortorella L et al., PLoS One 7: e47320 (2012))の影響を受ける。
所与の細胞外標的生体分子の細胞表面での提示及び/又は密度は、本発明の特定のタンパク質が最も好適に使用され得る適用に影響を与える可能性がある。所与の標的生体分子の細胞表面での提示及び/又は密度の細胞間の差は、本発明の所与のタンパク質の内在化及び/又は細胞毒性を定量的及び定性的の両方で変更する可能性がある。所与の標的生体分子の細胞表面での提示及び/又は密度は、標的生体分子陽性細胞のなかでも大幅に異なっている可能性があり、又は同じ細胞上であっても細胞周期又は細胞分化における異なる時期で異なっている可能性もある。特定の細胞又は細胞集団における所与の標的生体分子における全体の細胞表面での提示は、当業者公知の方法、例えば蛍光活性化細胞分類(FACS)フローサイトメトリー方法を使用して決定することが可能である。
導入
本発明は、特定の細胞内区画への、例えば小胞体及び/又はサイトゾルへのタンパク質の移動が望ましい場合、異種ポリペプチド領域、例えば細胞標的化のための結合領域に連結された志賀毒素サブユニットAに由来する領域を含むタンパク質を改変することに関する問題を解決する。本発明は、細胞毒性タンパク質内の志賀毒素サブユニットAに由来する毒素領域のカルボキシル末端にKDELファミリーのシグナルモチーフを付加することにより細胞毒性が増強されたという予想外の発見に基づく。この発見は、科学文献(Jackson M et al., J Cell Sci 112: 467-75 (1999))で公開された以前の調査結果と矛盾していた。実施例でより詳細に説明するように、細胞毒性タンパク質のカルボキシ末端への小胞体保留シグナルモチーフの付加は、より有効な志賀毒素の細胞毒性の細胞型特異的な標的化の加工を可能にする。
これまで、志賀毒素Aサブユニット融合コンストラクトは細胞毒性であり、それら自身の細胞内経路決定を自ら方向付けて、酵素的に活性な毒素フラグメントをサイトゾルに送達することが推定上可能であることが示されていた(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994)、Al-Jaufy, Infect Immun 63: 3073-8 (1995)、Su, Protein Expr Purif 66: 149-57 (2009))。免疫グロブリンに由来する標的化領域に連結された志賀毒素に由来する領域を用いて複数の細胞毒性タンパク質を作製し試験したところ、これらの改変されたタンパク質は、期待されるレベルの細胞毒性を提示しなかった(下記の実施例を参照)。しかしながら、これらの細胞毒性が低下したタンパク質は、細胞結合及び侵入を示し、加えて、異なる配置で連結された同じポリペプチド領域を有するより高い細胞毒性のバリアントと比較して類似するインビトロでの酵素活性及び結合親和性を示した(以下;米国特許出願第61/951,121号明細書の実施例を参照)。この予想外の問題が、後述するように解決された。
実施例でさらに説明されるように、志賀毒素サブユニットAベースの細胞毒性タンパク質の毒性は、それらのカルボキシ末端にKDEL様シグナルモチーフを付加することによって増強された。この改変は、KDEL型のシグナルモチーフ有さない細胞毒性タンパク質のバリアントで観察された結果より有意に有効な細胞殺滅結果をもたらした。しかしながら、シグナルモチーフの付加は、志賀毒素に由来する領域の触媒活性又は結合領域の結合速度論のどちらも変更しなかった。小胞体保留及び回収シグナルモチーフの付加は、これらの細胞毒性タンパク質の細胞毒性を増強したが、これは、サイトゾルに志賀毒素エフェクターを効果的に送達するのに十分な細胞内の経路決定による可能性が最も高い。本発明は、所望の細胞内の経路決定及び/又は増強された細胞毒性をもたらすために、タンパク質の少なくとも1つのポリペプチドにカルボキシ末端のKDELシグナルモチーフを付加することによってこのような志賀毒素に由来するタンパク質を改変する具体的な方法を提供する。
I.本発明のタンパク質の一般的な構造
本発明は、様々なタンパク質を提供し、各タンパク質は、(a)細胞標的化のための結合領域、(b)1又は2以上の志賀毒素エフェクターの機能(例えば細胞の内在化、細胞内経路決定、及び/又は細胞殺滅)を提供するための志賀毒素エフェクター領域、及び(c)細胞内経路決定を方向付けるための小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。細胞標的化結合領域と、志賀毒素サブユニットAに由来する領域との連結は、強い志賀毒素の細胞毒性の細胞型特異的な標的化の加工を可能にする。本発明のタンパク質は、細胞と物理的に会合した少なくとも1つの細胞外標的生体分子、例えば細胞表面上に発現される標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域を含む。この一般的な構造は、モジュール式構造であり、それにおいて、あらゆる数の多様な結合領域が、志賀毒素サブユニットAに由来するエフェクター領域及びKDEL型のシグナルモチーフに連結されて、同じ一般的な構造のバリエーションをもたらすことができる。
A.結合領域
本発明のタンパク質の結合領域は、標的生体分子に特異的に結合することが可能なペプチド又はポリペプチド領域を含む。結合領域は、1又は2以上の様々なペプチド又はポリペプチド部分、例えば、ランダムに生成したペプチド配列、自然に存在するリガンド又はそれらの誘導体、免疫グロブリン由来ドメイン、免疫グロブリンドメインの代替物としての合成により改変された足場などを含んでいてもよい。特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、細胞外標的生体分子に選択的及び特異的に結合することが可能な1又は2以上のポリペプチドを含む結合領域を含む。
リガンド、モノクローナル抗体、改変抗体誘導体、抗体の改変代替物などの、特異的細胞タイプへのタンパク質の、それらの結合特性による標的化に有用である非常に多くの結合領域が、当技術分野において公知である。
1つの特異的な、しかし非限定的な態様によると、本発明のタンパク質の結合領域は、天然に存在するリガンド、又は細胞外標的生体分子、一般に細胞表面受容体、との結合機能性を保持するリガンドの誘導体を含む。例えば、当技術分野において公知の様々なサイトカイン、成長因子(増殖因子)(growth factor)及びホルモンを使用して、コグネートサイトカイン受容体、成長因子受容体又はホルモン受容体を発現する特異的細胞タイプの細胞表面にタンパク質を標的化することができる。リガンドの特定の非限定的な例としては、(別名をカッコ内に示す)アンギオゲニン、B細胞活性化因子(BAFF,B-cell activating factor,APRIL)、コロニー刺激因子(CSF,colony stimulating factor)、上皮成長因子(EGF,epidermal growth factor)、線維芽細胞増殖因子(FGF,fibroblast growth factor)、血管内皮増殖因子(VEGF,vascular endothelial growth factor)、インスリン様成長因子(IGF,insulin-like growth factor)、インターフェロン、インターロイキン(例えばIL−2、IL−6、及びIL−23)、神経成長因子(NGF,nerve growth factor)、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(TGF,transforming growth factor)、及び腫瘍壊死因子(TNF,tumor necrosis factor)が挙げられる。
特定の他の実施形態によれば、結合領域は、細胞外標的生体分子と結合することが可能な合成リガンドを含む(例えばLiang S et al., J Mol Med 84: 764-73 (2006)、Ahmed S et al., Anal Chem 82: 7533-41 (2010)、Kaur K et al., Methods Mol Biol 1248: 239-47 (2015)を参照)。
1つの特異的な、しかし非限定的な態様によると、結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含むことがある。本書において用いる場合の用語「免疫グロブリン型結合領域」は、抗原又はエピトープなどの1つ又は2つ以上の標的生体分子に結合することができるポリペプチド領域を指す。結合領域は、標的と結合するそれらの能力によって定義されることもある。免疫グロブリン型結合領域は、一般に、抗体又は抗体様構造に由来するが、他の源からの代替足場がこの用語の範囲内で考えられる。
免疫グロブリン(Ig)タンパク質は、Igドメインとして公知の構造ドメインを有する。Igドメインは、長さが約70〜110アミノ酸残基の範囲であり、典型的に7〜9本の逆平行ベータ鎖が、サンドイッチ様構造を形成する2つのベータシートになるように並んでいる、特徴的なIgフォールドを有する、Igフォールドは、前記サンドイッチの内面で疎水性アミノ酸相互作用及び前記サンドイッチ内のシステイン残基間の高度に保存されたジスルフィド結合によって安定化される。Igドメインは、可変的なもの(IgV又はIセット)であることもあり、定常的なもの(IgC又はCセット)であることもあり、又は中間のもの(IgI又はIセット)であることもある。いくつかのIgドメインは、それらのエピトープに結合する抗体の特異性に重要な、「相補性決定領域(complementary determining region)」とも呼ばれる相補性決定領域(CDR,complementarity determining region)に会合していてもよい。Ig様ドメインは、非免疫グロブリンタンパク質においても見つけられ、それに基づいてタンパク質のIgスーパーファミリーのメンバーとして分類される。HUGO遺伝子命名法委員会(HGNC,HUGO Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメイン含有ファミリーのメンバーのリストを提供している。
免疫グロブリン型結合領域は、アミノ酸配列が、例えば分子工学によって又はライブラリースクリーニングによる選択によって、ネイティブ抗体のアミノ酸配列又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのアミノ酸配列から変更された、抗体又はその抗原結合断片のポリペプチド配列である。免疫グロブリン型結合領域の産生における組換えDNA技術及びインビトロライブラリースクリーニングの妥当性のため、抗体を再設計して、より小さいサイズ、細胞侵入又は他の治療上の改善などの所望の特性を得ることができる。可能なバリエーションは多く、1つだけのアミノ酸の変化から、例えば可変領域の、完全再設計まで様々でありうる。典型的に、抗原結合特性を向上させるように、可変領域の安定性を向上させるように、又は免疫原性応答の可能性を低下させるように、可変領域に変更を加えることになる。
本発明の成分として企図される非常に多くの免疫グロブリン型結合領域がある。特定の実施形態において、免疫グロブリン型結合領域は、細胞外標的生体分子に結合することができる抗体パラトープなどの、免疫グロブリン結合領域に由来する。特定の他の実施形態において、免疫グロブリン型結合領域は、いずれの免疫グロブリンドメインにも由来しないが、細胞外標的生体分子との高親和性結合をもたらすことによって免疫グロブリン結合領域のように機能する、改変されたポリペプチドを含む。この改変されたポリペプチドは、本書に記載の免疫グロブリンからの相補性決定領域を含む、又はそのような相補鎖決定領域から本質的になる、ポリペプチド足場を含んでいてもよい。
それらの高親和性結合特性により、特異的細胞タイプへの標的指向性のあるポリペプチドに有用な、非常に多くの結合領域が、先行技術にもある。特定の実施形態において、本発明のタンパク質の結合領域は、シングルドメイン抗体ドメイン(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片)、二価ナノボディ、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv)断片、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、二重特異性タンデムscFv断片、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、二価F(ab’)2断片、重鎖及びCH1ドメインからなるFd断片、一本鎖Fv−CH3ミニボディ、二重特異性ミニボディ、二量体CH2ドメイン断片(CH2D)、Fc抗原結合ドメイン(Fcab)、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束フレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3−CDR3−FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫医薬(SMIP)ドメイン、scFv−Fc融合、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、二価ナノボディ、二価ミニボディ、二価F(ab’)2断片(Fab二量体)、二重特異性タンデムVHH断片、二重特異性タンデムscFv断片、二重特異性ナノボディ、二重特異性ミニボディ、並びにそのパラトープ及び結合機能を保持する前述のものの任意の遺伝子操作された対応物を包含する群から選択される(Saerens D et al., Curr Opin Pharmacol 8: 600-8 (2008)、Dimitrov D, MAbs 1: 26-8 (2009)、Weiner L, Cell 148: 1081-4 (2012)、Ahmad Z et al., Clin Dev Immunol 2012: 980250 (2012)を参照)。免疫グロブリンの定常領域、例えば、改変された二量体Fcドメイン、単量体Fc(mFc)、scFv−Fc、VHH−Fc、CH2ドメイン、単量体CH3ドメイン(mCH3)、合成により再プログラムした免疫グロブリンドメイン、及び/又は免疫グロブリンドメインとリガンドとのハイブリッド融合体などに由来するポリペプチドを含む様々な結合領域がある(Hofer T et al., Proc Natl Acad Sci U. S. A. 105: 12451-6 (2008)、Xiao J et al., J Am Chem Soc 131: 13616-13618 (2009)、Xiao X et al., Biochem Biophys Res Commun 387: 387-92 (2009)、Wozniak-Knopp G et al., Protein Eng Des Sel 23 289-97 (2010)、Gong R et al., PLoS ONE 7: e42288 (2012)、Wozniak-Knopp G et al., PLoS ONE 7: e30083 (2012)、Ying T et al., J Biol Chem 287: 19399-408 (2012)、Ying T et al., J Biol Chem 288: 25154-64 (2013)、Chiang M et al., J Am Chem Soc 136: 3370-3 (2014)、Rader C, Trends Biotechnol 32: 186-97 (2014)、Ying T et al., Biochimica Biophys Acta 1844: 1977-82 (2014))。
特定の他の実施形態によれば、結合領域は、免疫グロブリンドメインに対する改変された代替足場を含む。標的生体分子の高い親和性及び特異的な結合などの免疫グロブリンに由来する構造に類似した機能的特徴を示す改変された代替足場が当業界において公知であり、例えばより高い安定性又は低下した免疫原性などの改善された特徴を免疫グロブリンドメインにもたらす可能性がある。一般的に、免疫グロブリンに対する代替足場は、20キロダルトン未満であり、単一のポリペプチド鎖からなり、システイン残基を欠失しており、比較的高い熱力学的な安定性を示す。
本発明のタンパク質の特定の実施形態について、結合領域は、改変された、第10フィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメイン(モノボディ、AdNectins(商標)、又はAdNexins(商標))、改変された、テネイシン由来、テネイシンIII型ドメイン(Centryns(商標))、改変された、アンキリン反復モチーフ含有ポリペプチド(DARPins(商標))、改変された、低密度リポタンパク質受容体由来、Aドメイン(LDLR−A)(Avimers(商標))、リポカリン(アンチカリン)、改変された、プロテアーゼ阻害剤由来、Kunitzドメイン、改変された、プロテインA由来、Zドメイン(Affibodies(商標))、改変された、ガンマ−B結晶由来足場又は改変された、ユビキチン由来足場(アフィリン)、Sac7d由来ポリペプチド(Nanoffitins(登録商標)又はアフィチン)、改変された、Fyn由来、SH2ドメイン(Fynomers(登録商標))、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣体、及びその結合機能性を保持する前述のものの任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される代替足場を含む(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305: 989-1010 (2001)、Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002)、Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004)、Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005)、Hey T et al., Trends Biotechnol 23 :514-522 (2005)、Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005)、Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006)、Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007)、Byla P et al., J Biol Chem 285: 12096 (2010)、Zoller F et al., Molecules 16: 2467-85 (2011))。
例えば、細胞外受容体HER2に結合する極めて多くの代替足場が同定されている(例えばWikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004)、Orlova A et al. Cancer Res 66: 4339-8 (2006)、Ahlgren S et al., Bioconjug Chem 19: 235-43 (2008)、Feldwisch J et al., J Mol Biol 398: 232-47 (2010)、米国特許第5,578,482号明細書、第5,856,110号明細書、第5,869,445号明細書、第5,985,553号明細書、第6,333,169号明細書、第6,987,088号明細書、第7,019,017号明細書、第7,282,365号明細書、第7,306,801号明細書、第7,435,797号明細書、第7,446,185号明細書、第7,449,480号明細書、第7,560,111号明細書、第7,674,460号明細書、第7,815,906号明細書、第7,879,325号明細書、第7,884,194号明細書、第7,993,650号明細書、第8,241,630号明細書、第8,349,585号明細書、第8,389,227号明細書、第8,501,909号明細書、第8,512,967号明細書、第8,652,474号明細書、及び米国特許出願第2011/0059090号明細書を参照)。
上記の結合領域のいずれも、結合領域成分が、本明細書で説明されるような細胞外標的生体分子に対して10−5〜10−12モル/リットル、好ましくは200nM未満の解離定数を有する限りは本発明の成分として使用することができる。
細胞外標的生体分子
本発明のタンパク質の結合領域は、細胞外標的生体分子と特異的に結合することができる、好ましくは、がん細胞、腫瘍細胞、形質細胞、感染細胞、又は細胞内病原体を内部に持つ宿主細胞などの、目的の細胞タイプの表面に物理的に結合している、ポリペプチド領域を含む。
用語「標的生体分子」は、結合領域が結合してタンパク質を生物体内の特定の細胞タイプ又は位置に標的化することができる生体分子、一般にはタンパク質、又はグリコシル化などの翻訳後修飾によって修飾されたタンパク質を指す。細胞外標的生体分子は、未修飾ポリペプチド、生化学的官能基の付加によって修飾されたポリペプチド、及び糖脂質を含む、様々なエピトープを含みうる(例えば、米国特許第5,091,178号明細書、欧州特許第2431743号明細書を参照されたい)。細胞外標的生体分子は、本発明のタンパク質に内因的に内在化される、又は本発明のタンパク質との相互作用によって容易に内在化させられることが望ましい。
本発明では、標的生体分子の修飾に関して用語「細胞外」は、その構造の少なくとも一部分が細胞外環境に曝露された生体分子を指す。細胞外標的生体分子は、細胞膜成分、膜貫通タンパク質、細胞膜に係留されている生体分子、細胞表面に結合している生体分子及び分泌された生体分子を含む。
本発明に関して、標的生体分子を記述するために使用するときの句「物理的に結合している」は、標的生体分子又はその一部分を細胞の外部と結合させる、共有結合性及び/又は非共有結合性両方の分子間相互作用、例えば、単一の相互作用各々のエネルギーがおおよそ約1〜5キロカロリーである、標的生体分子と細胞との複数の非共有結合性相互作用(例えば、静電結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水力など)を意味する。全ての不可欠膜タンパク質は、細胞膜と物理的に結合している状態で見出すことができる。例えば、細胞外標的生体分子は、膜貫通領域、脂質アンカー、糖脂質アンカーを含むことがあり、及び/又は前述のもののいずれかを含む因子と(例えば、非特異的疎水性相互作用及び/又は脂質結合相互作用によって)非共有結合的に会合していることもある。
本発明のタンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子は、がん細胞、免疫細胞、及び細胞内病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、プリオン又は原生動物に感染した細胞上にバイオマーカーを不釣り合いなほど多く又は排他的に含みうる。
本発明のタンパク質の結合領域は、例えば、それらの標的生体分子の細胞特異的発現、及び/又は特異的細胞タイプに対するそれらの標的生体分子の物理的局在などの、非常に多くの基準に基づいて設計又は選択されうる。例えば、本発明の特定のタンパク質は、1つの細胞タイプのみによって排他的に発現される細胞方面標的を細胞表面と結合させることができる結合ドメインを含む。
本発明のタンパク質の一般構造は、様々な多様な結合領域を同一の志賀毒素エフェクター領域とともに使用して、様々な細胞外標的生体分子の多様な標的化をもたらし、かくして細胞毒性、細胞分裂停止、診断剤、及び/又は様々な多様な細胞タイプへの内因性物質送達の標的化をもたらす点で、モジュラーである。
B.志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域
本発明では、句「志賀毒素エフェクター領域」は、少なくとも1種の志賀毒素機能を示すことができる、志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域を指す。志賀毒素機能は、例えば、細胞侵入、脂質膜変形、細胞内経路指定の指示、分解の回避、触媒不活性化リボソーム、細胞毒性の遂行、及び細胞分裂停止作用の遂行を含む。
志賀毒素ファミリーのメンバーは、構造的及び機能的に関連する毒素である自然に存在するタンパク質毒素のファミリーのあらゆるメンバーを指し、とりわけ志賀赤痢菌及び大腸菌から単離された毒素を指す(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。例えば、志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)血清型1から単離された真性志賀毒素(Stx,Shiga toxin)、腸管出血性大腸菌(E. coli)の血清型から単離された志賀様毒素1(SLT1,Shiga-like toxin 1、又はStx1、又はSLT−1、又はSlt−I)バリアント、及び腸管出血性大腸菌の血清型から単離された志賀様毒素2(SLT2,Shiga-like toxin 2、又はStx2、又はSLT−2)バリアントを包含する。SLT1は、1残基しかStxと異ならず、両方ともベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT,Verotoxin)と言われている(O'Brien, Curr Top Microbiol Immunol 180: 65-94 (1992))。SLT1及びSLT2バリアントは、アミノ酸配列レベルでは互いに約53〜60%しか類似していないが、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通の酵素活性メカニズム及び細胞毒性メカニズムを共有する(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。39種を超える様々な志賀毒素、例えば、被定義サブタイプStx1a、Stx1c、Stx1d及びStx2a〜gが記載されている(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012))。志賀毒素ファミリーのメンバーは、志賀毒素をコードする遺伝子が遺伝子水平伝播によって細菌種間で伝播しうるので、本来、いずれの細菌種にも限定されない(Strauch E et al., Infect Immun 69: 7588-95 (2001)、Zhaxybayeva O, Doolittle W, Curr Biol 21: R242-6 (2011))。種間伝播の一例として、志賀毒素は、患者から単離されたアシネトバクター・ヘモリティカス(A. haemolyticus)の株において発見された(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41 (2006))。志賀毒素をコードするポリヌクレオチドが新たな亜種又は種に侵入すると、志賀毒素アミノ酸配列は、志賀毒素ファミリーのメンバーに共通の細胞毒性メカニズムをなお維持しながら、遺伝的浮遊及び/又は選択圧に起因してわずかな配列多様性を発生させることが可能であると推測される(例えば、Scheutz, J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照されたい)。
本発明の志賀毒素エフェクター領域は、その天然の志賀毒素Bサブユニットのあらゆる形態から解離した志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。加えて、本発明のタンパク質は、天然の志賀毒素Bサブユニットの機能的な結合ドメインを含むか又はそれから本質的になるいかなるポリペプチドも含まない。より正確に言えば、志賀毒素Aサブユニットに由来する領域は、細胞標的化を引き起こすために異種の結合領域と機能的に会合している。
特定の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域は、全長志賀毒素Aサブユニット(例えばSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、又はSLT−2A(配列番号3))を含んでいてもよいし又はそれから本質的になっていてもよく、ここで、自然に存在する志賀毒素Aサブユニットは、それらのアミノ末端に約22アミノ酸のシグナル配列を含有する前駆体型を含んでいてもよく、このシグナル配列は、成熟志賀毒素Aサブユニット産生のために除去されて、当業者に認識可能になることに留意されたい。他の実施形態において、本発明の志賀毒素エフェクター領域は、全長志賀毒素Aサブユニットより短いトランケートされた志賀毒素Aサブユニットを含むか又はそれから本質的になる。
志賀様毒素1Aサブユニット切断物は、触媒活性であり、インビトロでリボソームを触媒的に不活性化することができ、細胞内で発現されたとき細胞毒性である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。十分な酵素活性を示す最小志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1〜239で構成されているポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告されている志賀毒素Aサブユニットの最小断片はStxAの残基75〜247であった(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994))が、真核生物細胞内で新規に発現されたStxA切断物は、サイトゾルに達するために、及びリボソームの触媒的不活性化を発揮するために、残基240までしか必要としない(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素エフェクター領域は、一般に完全長Aサブユニットより小さい。志賀毒素エフェクター領域は、アミノ酸位置77〜239のポリペプチド領域(SLT−1A(配列番号1)若しくはStxA(配列番号2))、又は志賀毒素ファミリーのメンバーの他のAサブユニット内の同等の領域(例えば(配列番号3)の77〜238)を維持することが好ましい。例えば、本発明の特定の実施形態において、SLT−1Aに由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号1の75〜251、配列番号1の1〜241、配列番号1の1〜251、又は配列番号1のアミノ酸1〜261を含む又はそのようなアミノ酸から本質的になることがある。特定の他の実施形態のなかでも、StxAに由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号2のアミノ酸75〜251、配列番号2の1〜241、配列番号2の1〜251、又は配列番号2のアミノ酸1〜261を含んでいてもよいし又はそれから本質的になっていてもよい。特定の他の実施形態の中でも、SLT−2に由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号3の75〜251、配列番号3の1〜241、配列番号3の1〜251、又は配列番号3のアミノ酸1〜261を含む又はそのようなアミノ酸から本質的になることがある。
本発明は、志賀毒素エフェクター領域が、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットと、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は41以上までのアミノ酸残基が異なる(しかし、少なくとも85%、90%、95%、99%又は99%を超えるアミノ酸配列同一性を保持するだけしか異ならない)、本発明のタンパク質のバリアントをさらに提供する。したがって、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するポリペプチド領域は、元の配列からの付加、欠失、切断又は他の改変を含むことがあるが、ただし、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットとの少なくとも85%、90%、95%、99%又は99%を超えるアミノ酸配列同一性が維持されることを条件とする。
したがって、特定の実施形態において、志賀毒素エフェクター領域は、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット、例えばSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/又はSLT−2A(配列番号3)との少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%又は99.7%の全配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、又はそのようなアミノ酸配列から本質的になる。
志賀毒素Aサブユニットの完全長バージョン又は切断型バージョンは、1つ又は2つ以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入又は反転)を含んでいてもよい。本発明の特定の実施形態において、志賀毒素エフェクター領域は、周知の宿主形質転換、トランスフェクション、感染若しくは導入方法、又は志賀毒素エフェクター領域と連結された細胞標的化結合領域により媒介される内在化、いずれかによって、細胞への侵入後に細胞毒性を保持するのに十分な、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットとの配列同一性を有することが好ましい。志賀毒素Aサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性のために最も肝要な残基は、特に次の残基位置:アスパラギン−75、チロシン−77、グルタメート−167、アルギニン−170及びアルギニン−176にマッピングされている(Di, Toxicon 57: 525-39 (2011))。本発明の実施形態のいずれかにおいて、志賀毒素エフェクター領域は、細胞毒性活性に概して必要とされる1つ又は2つ以上の保存されたアミノ酸位置、例えば、StxA若しくはSLT−1Aにおける位置77、167、170及び176に見られるもの、又は志賀毒素ファミリーの他のメンバーにおける同等の保存された位置を、必然的にではないが好ましくは、維持しうる。細胞死、例えばその細胞毒性、を引き起こす本発明の細胞毒性タンパク質の能力を、当技術分野において周知の多数のアッセイのいずれか又は2つ以上を用いて測定してもよい。
本発明の特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を変異、挿入又は欠失させて、志賀毒素エフェクター領域の酵素活性を増加させることができる。例えば、Stx1Aの残基位置アラニン−231をグルタメートに変異させることによってそのインビトロ酵素活性が増加された(Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。
本発明の特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を変異又は欠失させて、志賀毒素エフェクター領域の触媒活性及び/又は細胞毒性活性を低減させる又は除去することができる。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの触媒及び/又は細胞毒性活性を変異又は切断によって低減させても又は削除してもよい。チロシン−77、グルタメート−167、アルギニン−170、チロシン−114及びトリプトファン−203と標識されている位置は、Stx、Stx1及びStx2の触媒活性にとって重要であることが証明されている((Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988)、Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992)、Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993)、Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993)、Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994)、Suhan, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタメート−167とアルギニン−170の両方を変異させることによって、無細胞リボソーム不活性化アッセイにおいてSlt−I A1の酵素活性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt−I A1の新規発現を用いる別のアプローチでは、グルタメート−167とアルギニン−170の両方を変異させることによって、又はそれを切断して残基1−239にすることによって、発現レベルでSlt−I A1断片細胞毒性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
本書において用いる場合、「有意な」志賀毒素エフェクター機能の保持は、再現性のある適切な定量的アッセイによって測定して、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照に匹敵する志賀毒素エフェクター機能活性レベルを指す。インビトロリボソーム阻害について、有意な志賀毒素エフェクター機能は、リボソーム源(例えば、細菌、古細菌又は真核生物(藻類、真菌、植物若しくは動物))に依存して300pM以下のIC50を示すことになる。これは、触媒不活性SLT−1A 1−251二重変異体(Y77S、E167D)についての100,000pMの近似的IC50と比較して有意に大きい阻害である。実験室細胞培養での標的陽性細胞殺滅アッセイにおける毒性について、有意な志賀毒素エフェクター機能は、適切な細胞外標的生体分子の細胞株及びその発現に依存して、100、50又は30nM以下のCD50を示すことになる。これは、細胞標的化結合領域のないSLT−1A成分(細胞株に依存して100〜10,000nMのCD50を有する)と比較して、適切な標的細胞株に対する有意に高い細胞毒性である。
いくつかの試料については、正確な曲線フィッティングに必要なデータ点を収集することができないため、IC50又はCD50のいずれかについての正確な値を得ることができないこともあるだろう。有意な志賀毒素エフェクター機能活性を判定するとき、不正確なIC50及び/又はCD50を考慮すべきでない。例えば実施例において説明するアッセイなどの例示的志賀毒素エフェクター機能アッセイからのデータの分析に関して説明するような曲線への正確なフィッティングに不十分なデータは、実際の志賀毒素エフェクター機能の代表とみなすべきではない。例えば、理論的には、50%より高いリボソーム阻害又は細胞死が所与の試料の濃度系列でそれぞれ起こらない場合、IC50もCD50も判定できない。
志賀毒素エフェクター機能の活性を検出できないことは、細胞侵入、細胞内経路指定及び/又は酵素活性の欠如ではなく、不適切な発現、ポリペプチドフォールディング及び/又はポリペプチド安定性が原因であることもある。志賀毒素エフェクター機能についてのアッセイは、本発明のポリペプチドをさほど必要とせずに有意な量の志賀毒素エフェクター機能活性を測定することができるだろう。エフェクター機能が低い又はないことの根本原因を経験的に判定してタンパク質発現又は安定性と関係づける程度に、当業者は、当技術分野において公知のタンパク質化学及び分子工学技術を用いてそのような因子を補償することができることがあり、その結果、志賀毒素機能性エフェクター活性が回復され、測定されることもある。例として、不適切な細胞ベースの発現は、様々な発現対照配列を使用することによって補償されることがあり、不適切なポリペプチドフォールディング及び/又は安定性は、末端配列の安定化から恩恵を受けることがあり、又はタンパク質の三次元構造を安定させる非エフェクター領域の補償変異から恩恵を受けることなどがある。個々の志賀毒素機能についての新規アッセイが利用できるようになれば、志賀毒素エフェクター領域又はポリペプチドは、そのような志賀毒素エフェクターの機能がどの程度か、例えば、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性の何倍の範囲内であるかに関して分析される場合もある。意味のある活性の差の例は、例えば、志賀毒素エフェクター領域が、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性の1000倍又は100倍以下の活性を有すること;又は機能的なノックダウン又はノックアウト志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して3倍〜30倍以上の活性を有することである。
特定の志賀毒素エフェクター機能、例えば、細胞内経路指定機能は、容易に測定できない。現在、志賀毒素エフェクターポリペプチドが細胞毒性であることができないことが、不適切な細胞内経路指定に起因するかどうかを識別するための通例の定量的アッセイはないが、試験が利用できれば、志賀毒素エフェクターポリペプチドを、適切な野生型志賀毒素エフェクター領域と比較して任意の有意な細胞内経路指定レベルについて分析することができるだろう。
注目すべきことに、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性が野生型と比較して低減されたとしても、実際には、減弱された志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用した適用は、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用するもの以上に有効である可能性があり、これはなぜなら、最も効力が高いバリアントは、望ましくない作用を示す可能性があるが、このような望ましくない作用は、効力が低いバリアントでは最小化されるためである。野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドは非常に強力であり、たった1分子がサイトゾルに達することで、又はおそらく40分子が内在化されることで殺滅することができる。志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクター機能、例えば細胞内経路指定又は細胞毒性などが野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較してかなり低減されていたとしても、標的化細胞殺滅及び/又は特異的細胞検出を伴う実際の応用に十分な作用強度を依然として有することがある。
C.KDELファミリーのメンバーの小胞体保留/回収シグナルモチーフ
本発明では、句「小胞体保留/回収シグナルモチーフ」、KDEL型シグナルモチーフ、又はシグナルモチーフは、真核生物細胞内でKDEL受容体による小胞体へのタンパク質の細胞内局在を促進するように機能することができるKDELファミリーの任意のメンバーを指す。
カルボキシ末端リジン−アスパラギン−グルタメート−ロイシン(KDEL)配列(配列番号34)は、真核生物細胞内の可溶性タンパク質のカノニカル小胞体保留及び回収シグナルモチーフであり、KDEL受容体によって認識される(Capitani M, Sallese M, FEBS Lett 583: 3863-71 (2009)を参照されたい)。シグナルモチーフのKDELファミリーは、多くのKDEL様モチーフ、例えば、HDEL(配列番号36)、RDEL(配列番号38)、WDEL(配列番号39)、YDEL(配列番号40)、HEEL(配列番号42)、KEEL(配列番号43)、REEL(配列番号44)、KFEL(配列番号47)、KIEL(配列番号59)、DKEL(配列番号60)、KKEL(配列番号63)、HNEL(配列番号67)、HTEL(配列番号68)、KTEL(配列番号69)及びHVEL(配列番号70)を含み、これらの全てが、系統発生学上の複数の界にわたって生物の小胞体の内腔の常在物であることが公知であるタンパク質のカルボキシ末端において見出される(Munro S, Pelham H, Cell 48: 899-907 (1987)、Raykhel I et al., J Cell Biol 179: 1193-204 (2007))。KDELシグナルモチーフファミリーは、合成構築物を使用して証明された少なくとも46のポリペプチドバリアントを含む(Raykhel, J Cell Biol 179: 1193-204 (2007))。さらなるKDELシグナルモチーフは、ALEDEL(配列番号82)、HAEDEL(配列番号83)、HLEDEL(配列番号84)、KLEDEL(配列番号85)、IRSDEL(配列番号86)、ERSTEL(配列番号87)、及びRPSTEL(配列番号88)を含む(Alanen H et al., J Mol Biol 409: 291-7 (2011))。KDELシグナルモチーフを表す一般化コンセンサスモチーフは、[KRHQSA]−[DENQ]−E−Lと記載されている(Hulo N et al., Nucleic Acids Res 34: D227-30 (2006))。
KDELファミリーシグナルモチーフを含有するタンパク質は、ゴルジ複合体全体にわたって分布しているKDEL受容体が結合し、小胞体の内腔への放出のために微小管依存性メカニズムによって小胞体に輸送される(Griffiths G et al., J Cell Biol 127: 1557-74 (1994)、Miesenbock G, Rothman J, J Cell Biol 129: 309-19 (1995))。KDEL受容体は、ゴルジ複合体と小胞体間で動的に循環する(Jackson M et al., EMBO J 9: 3153-62 (1990)、Schutze M et al., EMBO J. 13: 1696-1705 (1994))。
本発明では、KDELファミリーのメンバーは、真核生物細胞内でKDEL受容体による小胞体へのタンパク質の細胞内局在を促進するように機能することができる合成シグナルモチーフを含む。言い換えると、KDELファミリーの一部のメンバーは、自然界に存在しないことがあり、しかし自然界で観察される必要もなく、当技術分野において公知の方法を用いて構築され、実験により検証されており、又は構築され、実験により検証されうる。例えば、Raykhel I et al., J Cell Biol 179: 1193-204(2007)を参照されたい。
本発明のタンパク質の成分として、KDEL型シグナルモチーフは、タンパク質中でポリペプチドのカルボキシ末端上に存在するように物理的に位置し、配向され、又は配置される。
本発明では、志賀毒素エフェクター領域及び結合領域について、互いとの関連でも、タンパク質全体との関連でも、特定の順序も配向も決められていない(例えば図1を参照されたい)。本発明のタンパク質の成分は、結合領域及び志賀毒素エフェクター領域の所望の活性が除去されない限り、どのような順番で配列されてもよい。所望の活性としては、例えば、標的を発現する細胞に結合する、細胞の内在化を誘導する、細胞性塞栓を引き起こす、細胞毒性を引き起こす、及び/又は細胞内部に外因性物質を送達する能力を有するタンパク質を提供することが挙げられる。
本発明のタンパク質の上記の実施形態において、結合領域、志賀毒素エフェクター領域(これは、細胞毒性であってもよいし、及び/又は触媒活性及び/又は細胞毒性を低減又は除去する1又は2以上の変異を内包していてもよい)、及び小胞体保留/回収シグナルモチーフは、互いに直接連結されていてもよいし、及び/又は好適には例えば当業界において周知の及び/又は本明細書で説明される1又は2以上のリンカーを用いて1又は2以上の介在ポリペプチド配列を介して互いに連結されていてもよい。
D.本発明のポリペプチド成分及び/又はそれらの小成分を結合する連結
本発明の個々のポリペプチド及び/又はタンパク質成分、例えば、結合領域及び(細胞毒性であることもあり、並びに/又は触媒活性及び/若しくは細胞毒性を改変、低減若しくは除去する1つ若しくは2つ以上の変異を内部に持つこともある)志賀毒素エフェクター領域を当技術分野において周知の及び/又は本書に記載する1つ又は2つ以上のリンカーによって互いに適切に連結させることができる。結合領域の個々のポリペプチド小成分、例えば、CDR及び/又はABR領域を、当技術分野において周知の及び/又は本書に記載する1つ又は2つ以上のリンカーによって互いに適切に連結させることができる(例えば、Weisser N, Hall J, Biotechnol Adv 27: 502-20 (2009)、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。本発明のポリペプチド成分、例えば、多鎖結合領域は、当技術分野において周知の1つ又は2つ以上のリンカーによって互いに又は本発明の他のポリペプチド成分と安定的に連結させることができる。本発明のペプチド成分、例えば、KDELファミリー小胞体保留/回収シグナルモチーフは、当技術分野において周知の1つ又は2つ以上のリンカー、例えばタンパク質性リンカー、によって本発明の別の成分に安定的に連結させることができる。
好適なリンカーは、一般に、いずれのリンカーも他の成分も用いずに個々に生産されたポリペプチド成分と非常に類似した三次元構造での、本発明の各ポリペプチド成分のフォールディングを可能にするものである。好適なリンカーは、単一のアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及び上述のもののいずれかを欠くリンカー、例えば、分岐状であるか環状であるかにかかわらず様々な非タンパク質性炭素鎖を含む(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013))。
好適なリンカーは、タンパク質性であることがあり、1つ又は2つ以上のアミノ酸、ペプチド及び/又はポリペプチドを含むことがある。タンパク質性リンカーは、組換え融合タンパク質及び化学的に連結されたコンジュゲートの両方に好適である。タンパク質性リンカーは、例えば約5〜約30、又は約6〜約25アミノ酸残基などの、約2〜約50アミノ酸残基を概して有する。選択されるリンカーの長さは、例えば、所望の特性、又はリンカーを選択している特性などの、様々な因子に依存することとなる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。
好適なリンカーは、例えば化学的リンカーなどの、非タンパク質性のものであることもある(例えば、Dosio F et al., Toxins 3: 848-83 (2011)、Feld J et al., Oncotarget 4: 397-412 (2013)を参照されたい)。免疫グロブリン由来ポリペプチドを異種ポリペプチドに結合させるために一般に使用されるリンカーなどの、当技術分野において公知の様々な非タンパク質性リンカーを使用して、結合領域を、志賀毒素エフェクター領域に連結させることができる。例えば、本発明のタンパク質のポリペプチド領域は、それらのアミノ酸残基及び炭水化物部分の官能性側鎖、例えば、カルボキシ、アミノ、アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、カルボニル、ヒドロキシル及び/又は環式環基などを用いて連結させることができる。例えば、ジスルフィド結合及びチオエーテル結合を用いて、2つ又は3つ以上のポリペプチドを連結させてもよい(例えば、Fitzgerald D et al., Bioconjugate Chem 1: 264-8 (1990)、Pasqualucci L et al., Haematologica 80: 546-56 (1995)を参照されたい)。加えて、非天然アミノ酸残基を他の官能性側鎖、例えばケトン基と併用してもよい(例えば、Sun S et al., Chembiochem Jul 18 (2014)、Tian F et al., Proc Natl Acad Sci USA 111: 1766-71 (2014)を参照されたい)。非タンパク質性化学的リンカーの例は、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート、S−(N−スクシンイミジル)チオアセテート(SATA,S-(N-succinimidyl) thioacetate)、N-スクシンイミジル−オキシカルボニル−cu−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT,N-succinimidyl-oxycarbonyl-cu-methyl-a-(2-pyridyldithio) toluene)、N-スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)−ペンタノアート(SPP,N-succinimidyl 4-(2-pyridyldithio)-pentanoate)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC又はMCC,succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl) cyclohexane carboxylate)、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル−6−(α−メチル−α−(ピリジルジチオール)−トルアミド)ヘキサノエート、N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP,N-succinimidyl-3-(-2-pyridyldithio)-proprionate)、スクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド)ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル 6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド)ヘキサノエート、マレイミドカプロイル(MC,maleimidocaproyl)、マレイミドカプロイル−バリン−シトルリン−P−アミノベンジルオキシカルボニル(MC−vc−PAB,maleimidocaproyl-valine-citrulline-p-aminobenzyloxycarbonyl)、3−マレイミド安息香酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS,3-maleimidobenzoic acid N-hydroxysuccinimide ester)、アルファ−アルキル誘導体、スルホNHS−ATMBA(スルホスクシンイミジルN−[3−(アセチルチオ)−3−メチルブチリル−ベータ−アラニン])、スルホジクロロフェノール、2−イミノチオラン、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS−(2−チオピリジル)−L−システインを含むが、これらに限定されない(例えば、Thorpe P et al., Eur J Biochem 147: 197-206 (1985)、Thorpe P et al., Cancer Res 47: 5924-31 (1987)、Thorpe P et al., Cancer Res 48: 6396-403 (1988)、Grossbard M et al., Blood 79: 576-85 (1992)、Lui C et al., Proc Natl Acad Sci USA 93: 8618-23 (1996)、Doronina S et al., Nat Biotechnol 21: 778-84 (2003)、Feld J et al., Oncotarget 4: 397-412 (2013)を参照されたい)。
タンパク質性であるか非タンパク質性であるかにかかわらず、好適なリンカーは、例えば、プロテアーゼ感受性、環境酸化還元電位感受性、pH感受性、酸切断性、光切断性及び/又は熱感受性リンカーを含みうる(例えば、Dosio F et al., Toxins 3: 848-83 (2011)、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)、Feld J et al., Oncotarget 4: 397-412 (2013)を参照されたい)。
タンパク質性リンカーを本発明の組換え融合タンパク質への組み込みに選択してもよい。例えば、本発明のタンパク質の構成要素であるポリペプチド又はそれらの部分構成要素は、1又は2以上のアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含む1又は2以上のリンカーで合体されていてもよい。本発明の組換え融合タンパク質のためのリンカーは、約2〜50アミノ酸残基、好ましくは約5〜30アミノ酸残基を概して含む(Argos P, J Mol Biol 211: 943-58 (1990)、Williamson M, Biochem J 297: 240-60 (1994)、George R, Heringa J, Protein Eng 15: 871-9 (2002)、Kreitman R, AAPS J 8: E532-51 (2006))。一般に、タンパク質性リンカーは、例えばトレオニン、プロリン、グルタミン、グリシン及びアラニンなどの、極性、非荷電及び/又は荷電残基を有するアミノ酸残基の大部分を含む(例えば、Huston J et al.Proc Natl Acad Sci USA 85: 5879-83 (1988)、Pastan I et al., Annu Rev Med 58: 221-37 (2007)、Li J et al., Cell Immunol 118: 85-99 (1989)、Cumber A et al.Bioconj Chem 3: 397-401 (1992)、Friedman P et al., Cancer Res 53: 334-9 (1993)、Whitlow M et al., Protein Engineering 6: 989-95 (1993)、Siegall C et al., J Immunol 152: 2377-84 (1994)、Newton et al.Biochemistry 35: 545-53 (1996)、Ladurner et al.J Mol Biol 273: 330-7 (1997)、Kreitman R et al., Leuk Lymphoma 52: 82-6 (2011)、米国特許第4,894,443号明細書を参照されたい)。タンパク質性リンカーの非限定的な例は、アラニン−セリン−グリシン−グリシン−プロリン−グルタメート(ASGGPE)(配列番号89)、バリン−メチオニン(VM)、アラニン−メチオニン(AM)、AM(G2−4S)xAM(配列番号90)(この場合、Gはグリシンであり、Sはセリンであり、xは1〜10の整数である)を含む。
タンパク質性リンカーを所望の特性に基づいて選択することができる。当業者は、特異的特徴を念頭に置いて、例えば、融合分子のフォールディング、安定性、発現、可溶性、薬物動態特性、薬力学的特性、及び/又は融合構築物に関連して同じドメイン単独での活性と比較した融合ドメインの活性のうちの1つ又は2つ以上を最適化するように、タンパク質性を選択することができる。例えば、タンパク質性リンカーは、可動性、剛性及び/又は切断性に基づいて選択されることもある(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。当業者は、リンカーを選択する際にデータベース及びリンカー設計ソフトウェアツールを利用することができる。特定のリンカーが、発現を最適化するために選択されることもある(例えば、Turner D et al., J Immunl Methods 205: 43-54 (1997)を参照されたい)。ホモ多量体を形成するために同一のポリペプチド若しくはタンパク質間の又はヘテロ多量体を形成するために異なるポリペプチド若しくはタンパク質間の分子間相互負作用を促進するために、特定のリンカーが選択されることもある。例えば、本発明のタンパク質のポリペプチド成分間の所望の非共有結合性相互作用、例えば、二量体及び他のより高次の多量体の形成に関連した相互作用などを可能にする、タンパク質性リンカーを選択されることもある(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)。
可動性タンパク質性リンカーは、多くの場合、12アミノ酸残基長より長く、小さい非極性アミノ酸残基、極性アミノ酸残基及び/又は親水性アミノ酸残基、例えばグリシン、セリン及びトレオニンなどに富んでいる(例えば、Bird R et al., Science 242: 423-6 (1988)、Friedman P et al., Cancer Res 53: 334-9 (1993)、Siegall C et al., J Immunol 152: 2377-84 (1994)を参照されたい)。可動性タンパク質性リンカーは、成分間の空間的離隔を増すように選択されることもあり、及び/又は成分間の分子間相互作用を可能にするように選択されることもある。例えば、様々な「GS」リンカーが当業者に公知であり、複数のグリシン及び/又は1つ若しくは2つ以上のセリンで構成され、例えば(GxS)n (配列番号91)、(SxG)n (配列番号92)、(GGGGS)n (配列番号93)及び(G)n (配列番号94)(この場合、xは1〜6であり、nは1〜30である)などの反復単位で構成されることもある(例えば、国際公開第96/06641号パンフレットを参照されたい)。可動性タンパク質性リンカーの非限定的な例は、GKSSGSGSESKS(配列番号95)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号96)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号97)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号99)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号100)、SRSSG(配列番号101)、及びSGSSC(配列番号102)を含む。
剛性タンパク質性リンカーは、多くの場合、堅いアルファヘリックス構造であり、プロリン残基及び/又は1つ若しくは2つ以上の戦略的に配置されたプロリンに富んでいる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。剛性リンカーは、成分間の分子間相互作用を防止するために選択されることがある。
好適なリンカーは、成分のインビボ分離、例えば、切断及び/又は環境特異的不安定性に起因する成分のインビボ分離などを可能にするように、選択されうる(例えば、Dosio F et al., Toxins 3: 848-83 (2011)、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。インビボ切断性タンパク質性リンカーは、タンパク質プロセッシングによって結合解除することができる、及び/又は環境を、多くの場合、生物体内の若しくは特定の細胞タイプの内部の特異的部位の環境を、削減することができる(例えば、Doronina S et al., Bioconjug Chem 17: 144-24 (2006)、Erickson H et al., Cancer Res 66: 4426-33 (2006)を参照されたい)。インビボ切断性タンパク質性リンカーは、1つ又は2つ以上のシステイン対によって形成されるプロテアーゼ感受性モチーフ及び/又はジスルフィド結合を含むことが多い(例えば、Pietersz G et al., Cancer Res 48: 4469-76 (1998)、The J et al., J Immunol Methods 110: 101-9 (1998)を参照されたい;Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。インビボ切断性タンパク質性リンカーは、生物体内の特定の位置、細胞内の区画、のみに存在する及び/又は特定の生理若しくは病的条件下でのみ活性になるプロテアーゼ(例えば、異常に高レベルのプロテアーゼ、特定の疾患部位で過剰発現されるプロテアーゼ、及び病原性微生物によって特異的に発現されるプロテアーゼなど)に対して感受性であるように設計することができる。例えば、細胞内のみに存在するプロテアーゼ、特異的細胞タイプ内にのみ存在するプロテアーゼ、及びがん若しくは炎症のような病的条件下でのみ存在するプロテアーゼ、例えば、R−x−x−Rモチーフ及びAMGRSGGGCAGNRVGSSLSCGGLNLQAM(配列番号103)などによって切断されるタンパク質性リンカーは、当技術分野において公知である。
本発明のタンパク質の特定の実施形態では、標的細胞内に存在するプロテアーゼによる切断をもたらすために1つ又は2つ以上のプロテアーゼ感受性部位を含むリンカーを使用することがある。本発明のタンパク質の特定の実施形態では、脊椎動物生物への投与後の望ましくない毒性を低減させるために切断性でないリンカーを使用することもある(例えば、Polson A et al., Cancer Res 69: 2358-64 (2009)を参照されたい)。
好適なリンカーは、タンパク質性であるか非タンパク質性であるかにかかわらず、例えば、プロテアーゼ感受性、環境酸化還元電位感受性、pH感受性、酸切断性、光切断性及び/又は熱感受性リンカーを含みうる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。
好適な切断性リンカーは、例えば、Zarling D et al., J Immunol 124: 913-20 (1980)、Jung S, Moroi M, Biochem Biophys Acta 761: 152-62 (1983)、Bouizar Z et al., Eur J Biochem 155: 141-7 (1986)、Park L et al., J Biol Chem 261: 205-10 (1986)、Browning J, Ribolini A, J Immunol 143: 1859-67 (1989)、Joshi S, Burrows R, J Biol Chem 265: 14518-25 (1990)により注目されるリンカーなどの、当技術分野において公知である切断性基を含むリンカーを含みうる。
好適なリンカーは、pH感受性リンカーを含みうる。例えば、特定の好適なリンカーは、標的細胞の細胞内区画内部での解離をもたらすためにより低いpH環境でのそれらの不安定性について選択されることがある。例えば、1つ又は2つ以上のトリチル基、誘導体化トリチル基、ビスマレイミドエトキシプロパン基、アジピン酸ジヒドラジド基及び/又は酸不安定性基を含むリンカーは、特異的pH範囲を有する環境で本発明の成分、例えばポリペプチド成分、の放出をもたらすことができる(例えば、Welhoner H et al., J Biol Chem 266: 4309-14 (1991)、 Fattom A et al., Infect Immun 60: 584-9 (1992)を参照されたい)。例えば腫瘍組織のpHが健常組織の場合より低いなどの、組織間の生理的pH差に対応するpH範囲で切断する特定のリンカーを選択してもよい(例えば、米国特許第5,612,474号明細書を参照されたい)。
光切断性リンカーは、可視領域の光などの、特定の波長領域の電磁放射線への曝露に基づいて切断されるリンカーである。(例えば、Goldmacher V et al., Bioconj Chem 3: 104-7 (1992)を参照されたい)。光切断性リンカーを使用して、本発明のタンパク質の成分、例えばポリペプチド成分、を特定の波長の光への曝露に基づいて放出させることができる。光切断性リンカーの非限定的な例は、システインの光切断性保護基のようなニトロベンジル基、ニトロベンジルオキシカルボニルクロリド架橋剤、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド共重合体、グリシン共重合体、フルオレセイン共重合体及びメチルローダミン共重合体を含む(Hazum E et al., Pept Proc Eur Pept Symp, 16th, Brunfeldt K, ed., 105-110 (1981)、Senter et al., Photochem Photobiol 42: 231-7 (1985)、Yen et al., Makromol Chem 190: 69-82 (1989)、Goldmacher V et al., Bioconj Chem 3: 104-7 (1992))。光切断性リンカーは、ファイバーオプティクスを使用して光に曝露することができる疾患、障害及び状態を治療するために設計された本発明のタンパク質を形成するための連結成分に、特に使用されうる。本発明のタンパク質の特定の実施形態において、細胞標的化結合領域は、共有結合性連結及び非共有結合性連結の両方を含む当業者に公知の手段を任意の数用いて、志賀毒素エフェクター領域に連結される(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)、Behrens C, Liu B, MAbs 6: 46-53 (2014)を参照されたい)。
本発明のタンパク質の特定の実施形態において、タンパク質は、重鎖可変(VH)ドメインと軽鎖可変(VL)ドメインを接続するリンカーを有するscFvである結合領域を含む。例えば15残基(Gly4Ser)3ペプチド(配列番号104)などの、この目的に好適な非常に多くのリンカーが当技術分野において公知である。非共有結合性多価構造の形成に使用することができる好適なscFvリンカーは、GGS、GGGS(Gly3Ser又はG3S)(配列番号105)、GGGGS(Gly4Ser又はG4S)(配列番号106)、GGGGSGGG(配列番号107)、GGSGGGG(配列番号108)、GSTSGGGSGGGSGGGGSS(配列番号109)及びGSTSGSGKPGSSEGSTKG(配列番号110)を含む(Pluckthun A, Pack P, Immunotechnology 3: 83-105 (1997)、Atwell J et al., Protein Eng 12: 597-604 (1999)、Wu A et al., Protein Eng 14: 1025-33 (2001)、Yazaki P et al., J Immunol Methods 253: 195-208 (2001)、Carmichael J et al., J Mol Biol 326: 341-51 (2003)、Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004)、Bie C et al., World J Hepatol 2: 185-91 (2010))。
本発明のタンパク質の成分の連結に好適な方法は、そのような連結を果たすために当技術分野において現在公知のいずれの方法によるものであってもよいが、ただし、本書に記載するようにアッセイを含む適切なアッセイによって測定して、その結合が、結合領域の結合能力、タンパク質の細胞内在化、及び/又は志賀毒素エフェクター領域の所望の毒素エフェクター機能を妨げないことを条件とする。
II.本発明のタンパク質の特異的構造変化の例
本発明の特定の実施形態の中で、本発明のタンパク質は、抗原の発現ががん細胞に限定される、がん細胞の細胞表面の表面抗原との特異的及び高親和性結合のために選択される免疫グロブリン型ポリペプチドに由来する結合領域を含む(Glokler J et al., Molecules 15: 2478-90 (2010)、Liu Y et al., Lab Chip 9: 1033-6 (2009)を参照されたい)。他の実施形態に従って、結合領域は、抗原が非がん細胞と比較してがん細胞によって過発現される又は優先的に発現されるがん細胞の細胞表面の表面抗原との特異的及び高親和性結合のために選択される。いくつかの代表的標的生体分子は、がん及び/又は特異的免疫細胞タイプと会合する以下の列挙する標的を含むが、これらに限定されない。
がん細胞と会合しているエピトープを認識する多くの免疫グロブリン型結合領域、例えば、(別名をカッコ内に示す)アネキシンAI、B3黒色腫抗原、B4黒色腫抗原、CD2、CD3、CD4、CD20(Bリンパ球抗原タンパク質CD20)、CD22、CD25(インターロイキン−2受容体IL2R)、CD30(TNFRSF8)、CD38(サイクリックADPリボースヒドラーゼ)、CD40、CD44(ヒアルロナン受容体)、ITGAV(CD51)、CD66、CD71(トランスフェリン受容体)、CD73、CD74(HLA−DR抗原関連インバリアント鎖)、CD79、CD98、エンドグリン(END又はCD105)、CD106(VCAM−1)、ケモカイン受容体4型(CDCR−4、フーシン、CD184)、CD200、インスリン様成長因子1受容体(CD221)ムチン1(MUC1、CD227)、基底細胞接着分子(B−CAM,basal cell adhesion molecule、又はCD239)、CD248(エンドシアリン又はTEM1)、腫瘍壊死因子受容体10b(TNFRSF10B、CD262)、腫瘍壊死因子受容体13B(TNFRSF13B、TACI、CD276)、血管内皮増殖因子受容体2(KDR、CD309)、上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2,human epidermal growth factor receptor 2/Neu/ErbB2/CD340)、がん抗原15−3(CA15−3,cancer antigen 15-3)、がん抗原19−9(CA19−9,cancer antigen 19-9)、がん抗原125(CA125,cancer antigen 125、MUC16)、CA242、がん胎児抗原関連細胞接着分子(例えば、CEACAM3(CD66d)及びCEACAM5)、がん胎児抗原(CEA,carcinoembryonic antigen)タンパク質、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSP4,chondroitin sulfate proteoglycan 4、MCSP、NG2)、CTLA4、DLL4、上皮成長因子受容体(EGFR,epidermal growth factor receptor/ErbB1)、葉酸受容体(FOLR,folate receptor)、G−28、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、HLA−Dr10、HLA−DRB、ヒト上皮成長因子受容体1(HER1,human epidermal growth factor receptor 1)、エフリンB型受容体2(EphB2,Ephrin type-B receptor 2)、上皮細胞接着分子(EpCAM,epithelial cell adhesion molecule)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP,fibroblast activation protein/セプラーゼ)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R,insulin-like growth factor 1 receptor)、インターロイキン2受容体(IL−2R,interleukin 2 receptor)、インターロイキン6受容体(IL−6R,interleukin 6 receptor)、インテグリンアルファ−Vベータ−3(αVβ3)、インテグリンアルファ−Vベータ−5(αvβ5)、インテグリンアルファ−5ベータ−1(α5β1)、L6、MPG、黒色腫関連抗原1タンパク質(MAGE−1)、黒色腫関連抗原3(MAGE−3)、メソセリン(MSLN)、MPG、MS4A、p21、p97、ポリオウイルス受容体様4(PVRL4,polio virus receptor-like 4)、プロテアーゼ活性化受容体(例えばPAR1)、前立腺特異的膜抗原タンパク質(PSMA,prostate-specific membrane antigen protein)、栄養膜糖タンパク質(TPGB)、及び腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子(TACSTD,tumor-associated calcium signal transducers)を標的にする結合領域が、先行技術に存在する(例えばLui B et al., Cancer Res 64: 704-10 (2004)、Novellino L et al., Cancer Immunol Immunother 54: 187-207 (2005)、Bagley R et al., Int J Oncol 34: 619-27 (2009)、Gerber H et al., mAbs 1: 247-53 (2009)、Beck A et al., Nat Rev Immunol 10: 345-52 (2010)、Andersen J et al., J Biol Chem 287: 22927-37 (2012)、Nolan-Stevaux O et al., PLoS One 7: e50920 (2012)、Rust S et al., Mol Cancer 12: 11 (2013)を参照されたい)。標的生体分子のこのリストは、非限定的であることを意図したものである。志賀毒素エフェクター領域と結合させて本発明のタンパク質を産生するための結合領域を設計又は選択するために、がん細胞又は他の所望の細胞タイプに関連したいずれの所望の標的生体分子を使用してもよいことは、当業者には理解されるであろう。
がん細胞と強く会合する他の標的生体分子、及びそれらと結合することが公知の免疫グロブリン型結合領域の例としては、BAGEタンパク質(B黒色腫抗原)、基底細胞接着分子(BCAM,basal cell adhesion molecule又はLutheran式血液型糖タンパク質)、膀胱腫瘍抗原(BTA,bladder tumor antigen)、がん精巣抗原NY−ESO−1、がん精巣抗原LAGEタンパク質、CD19(Bリンパ球抗原タンパク質CD19)、CD21(補体受容体−2又は補体3d受容体)、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ−4、DPP4、又はアデノシンデアミナーゼ複合タンパク質2)、CD33(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン−3)、CD52(CAMPATH−1抗原)、CD56(神経細胞接着分子又はNCAM,neural cell adhesion molecule)、CD133(プロミニン−1)、CS1(SLAMファミリー7番又はSLAMF7)、細胞表面A33抗原タンパク質(gpA33)、エプスタイン・バーウイルス抗原タンパク質、GAGE/PAGEタンパク質(黒色腫に関連するがん/精巣抗原)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR,hepatocyte growth factor receptor又はc−Met)、MAGEタンパク質、T細胞1タンパク質によって認識される黒色腫抗原(MART−1/メランA、MARTI)、ムチン、優先的に発現される黒色腫抗原(PRAME)タンパク質、前立腺特異的抗原タンパク質(PSA,prostate specific antigen protein)、前立腺幹細胞抗原タンパク質(PSCA,prostate stem cell antigen protein)、終末糖化産物受容体(RAGE,Receptor for Advanced Glycation Endroduct)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG−72)、チロシン−プロテインキナーゼ膜貫通型受容体(ROR1又はNTRKR1)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR,vascular endothelial growth factor receptor)、及びウィルムス腫瘍抗原が挙げられる。
がん細胞と強く会合する他の標的生体分子の例は、炭酸脱水酵素IX(CA9/CAIX,carbonic anhydrase IX)、クローディンタンパク質(CLDN3、CLDN4)、エフリンA型受容体3(EphA3,ephrin type-A receptor 3)、葉酸結合タンパク質(FBP,folate binding protein)、ガングリオシドGM2,インスリン様成長因子受容体、インテグリン(例えばCD11a〜c)、核因子カッパB活性化受容体(RANK)、受容体型チロシンプロテインキナーゼerB−3、腫瘍壊死因子受容体10A(TRAIL−R1/DR4)、腫瘍壊死因子受容体10B(TRAIL−R2)、テネイシンC、及びCD64(FcγRI)である(Hough C et al., Cancer Res 60: 6281-7 (2000)、Thepen T et al., Nat Biotechnol 18: 48-51 (2000)、Pastan I et al., Nat Rev Cancer 6: 559-65 (2006)、Pastan, Annu Rev Med 58: 221-37 (2007)、Fitzgerald D et al., Cancer Res 71: 6300-9 (2011)、Scott A et al., Cancer Immun 12: 14-22 (2012)を参照されたい)。標的生体分子のこのリストは、非限定的であることを意図したものである。
加えて、ADAMメタロプロテイナーゼ(例えばADAM−9、ADAM−10、ADAM−12、ADAM−15、ADAM−17)、ADP−リボシルトランスフェラーゼ(ART1、ART4)、抗原F4/80、骨髄間質抗原(BST1、BST2)、破断点クラスター領域−c−ablがん遺伝子(BCR−ABL)タンパク質、補体成分3a受容体(C3aR,complement component 3a receptor)、CD7、CD13、CD14、CD15(Lewis X又はステージ特異的胎児抗原1)、CD23(FCイプシロンRII)、CD49d、CD53、CD54(細胞間接着分子1)、CD63(テトラスパニン)、CD69、CD80、CD86、CD88(補体成分5a受容体1)、CD115(コロニー刺激因子1受容体)、CD123(インターロイキン−3受容体)、CD129(インターロイキン9受容体)、CD183(ケモカイン受容体CXCR3)、CD191(CCR1)、CD193(CCR3)、CD195(ケモカイン受容体CCR5)、CD203c、CD225(インターフェロン誘導膜貫通タンパク質1)、CD244(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD282(toll様受容体2)、CD284(Toll様受容体4)、CD294(GPR44)、CD305(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、エフリンA型受容体2(EphA2,ephrin type-A receptor 2)、FceRIa、ガレクチン−9、アルファ−フェトプロテイン抗原17−A1タンパク質、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ−ヒドロキシラーゼ(HAAH)、免疫グロブリン様転写物ILT−3、リゾホスファチジルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ1(LPGAT1,lysophosphatidlglycerol acyltransferase 1/IAA0205)、リソソーム膜タンパク質(LAMP,lysosome-associated membrane protein、例えばCD107)、メラニン細胞タンパク質PMEL(gp100)、骨髄関連タンパク質−14(mrp−14,myeloid-related protein-14)、プログラム死リガンド1(PD−L1)、受容体型チロシンプロテインキナーゼerbB−3、SARTタンパク質、スカベンジャー受容体(例えばCD64及びCD68)、Siglec(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン)、シンデカン(例えばSDC1又はCD138)、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP−1,tyrosinease-related protein 1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP−2,tyrosinease-related protein 2)、チロシナーゼ関連抗原(TAA,tyrosinase associated antigen)、APO−3、BCMA、CD2、CD3、CD4、CD8、CD18、CD27、CD28、CD29、CD41、CD49、CD90、CD95(Fas)、CD103、CD104、CD134(OX40)、CD137(4−1BB)、CD152(CTLA−4)、ケモカイン受容体、補体タンパク質、サイトカイン受容体、組織適合性タンパク質、ICOS、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、c−myc、破骨細胞分化抑制因子、PD−1、RANK、TACI、TNF受容体スーパーファミリーメンバー(TNF−R1、TNFR−2)、Apo2/TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRAIL−R3及びTRAIL−R4などの、考えられる標的生体分子の他の例が非常に多くある(標的生体分子については、Cheever M et al., Clin Cancer Res 15: 5323-37 (2009);Scott A et al., Cancer Immun 12: 14 (2012)を参照されたく、それらに記載されている標的分子が非限定的な例であることに留意されたい)。志賀毒素エフェクター領域と結合させて本発明のタンパク質を産生するための結合領域を設計又は選択するために、いずれの所望の標的生体分子を使用してもよいことは、当業者には理解されるであろう。
特定の実施形態において、結合領域は、免疫系の細胞タイプの細胞表面との特異的及び高親和性結合のために選択される免疫グロブリン型ポリペプチドを含む、又はそのような免疫グロブリン型ポリペプチドから本質的になる。例えば、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11、CD12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD40、CD41、CD56、CD61、CD62、CD66、CD95、CD117、CD123、CD235、CD146、CD326、インターロイキン−2受容体(IL−2R)、核因子カッパBリガンド活性化受容体(RANKL、TNFSF11、TRANCE、OPGL、ODF)、SLAM結合タンパク質(SAP)及びTNFSF18(腫瘍壊死因子リガンド18又はGITRL)と結合する免疫グロブリン型結合ドメインは公知である。
特定の実施形態において、結合領域は、以下のCXCR−1、CXCR−2、CXCR−3A、CXCR3B、CXCR−4、CXCR−5、CCR−I、CCR−2A、CCR−2B、CCR−3、CCR−4、CCR−5、CCR−6、CCR−7、CCR−8、CCR−9、CCR−10、CX3CR−1、XCR1、CXCR−6、CXCR−7、ケモカイン結合タンパク質−2(CCBP2、D6受容体)、及びダッフィ抗原/ケモカイン受容体(DARC、Fy糖タンパク質、FY、CD234)から選択されるケモカイン受容体である標的生体分子と高い親和性で結合する。これ以上の非限定的な標的生体分子については、下記の実施例における表11を参照されたい。
特定の実施形態において、結合領域は、細胞外受容体を標的化するために選択されたリガンドを含むか又はそのようなリガンドから本質的になる。いくつかの代表的なリガンドとしては、これらに限定されないが、以下:骨形成タンパク質及びアクチビン膜結合阻害剤BAMBI(TGFBRとしても公知)、ケモカイン、B細胞誘引ケモカイン1(BCA−I,B cell-attracting chemokine 1)、乳房及び腎臓で発現されるケモカイン(BRAK,breast and kidney-expressed chemokine)、ClO、ケモカインC−Cモチーフリガンド2(CCL2)、CD137L(4−1BBとしても公知)、皮膚T細胞誘引ケモカイン(CTACK,cutaneous T-cell attracting chemokine)、デコイ受容体3DcR3(TR6及びTNFRSF6Bとしても公知)、上皮誘導好中球活性化タンパク質78(ENA−78)、好酸球走化性タンパク質(例えばエオタキシン−1、エオタキシン−2、及びエオタキシン−3)、エクソダス−2(SLC)、フラクタルキン、顆粒球走化性タンパク質2(GCP−2,granulocyte chemotactic protein 2)、成長制御タンパク質α(GRO−α,growth regulated protein α)、血液濾液CCケモカイン1(HCC−1,hemo filtrate CC chemokine 1)、インターロイキン−8(IL−8)、インターフェロン誘導性タンパク質10(IP−10)、インターフェロン誘導性T細胞アルファ化学誘引物質(I−TAC)、肝臓で発現されるケモカイン(LEC,liver-expressed chemokine)、ラングキン、リンフォタクチン、マクロファージ誘導ケモカイン(MDC,macrophage-derived chemokine)、粘膜関連上皮ケモカイン(MEC,mucosae-associated epithelial chemokine)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG,gamma interferon-induced monokine)、マクロファージ阻害タンパク質(例えばMIP−1α、MIP−1β、MlP−1γ、MIP−2、MIP−2α、MIP−2β、MIP−3、MIP−3β、MIP−3α、MIP−4、及びMIP−5)、単球走化性タンパク質(例えばMCP−I又はMCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、及びMCP−5)、血小板塩基性タンパク質(PBP,platelet basic protein)、血小板因子4(PF−4,platelet factor 4)、活性化調節正常T細胞で発現及び分泌される(RANTES,Regulated on Activation, Normal T-cell Expressed and Secreted)タンパク質、間質由来因子(例えばSDF−1及びSDF−2)、単一Cモチーフ1−β(SCM−1β)、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC,thymus and activation-regulated chemokine)、胸腺で発現されるケモカイン(TECK,thymus expressed chemokine)、腫瘍壊死因子TWEAK(TNFSF12及びAPO3Lとしても公知)、並びにそれらの対立遺伝子又は種のバリアントが挙げられる。これ以上の非限定的な例示的なリガンドについては、下記の実施例における表11を参照されたい。
特定の実施形態のなかでも、本発明のタンパク質は、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸75〜251を含むか又はそれらから本質的になる志賀毒素エフェクター領域を含む。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域が、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸1〜241を含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域が、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸1〜251を含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域が、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、及び/又はSLT−2A(配列番号3)のアミノ酸1〜261を含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトHER2に特異的な高親和性結合を示す配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号4〜7に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトCD38に特異的な高親和性結合を示す配列番号8のアミノ酸2〜241を含むか又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号8〜11に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトCD19に特異的な高親和性結合を示す配列番号12のアミノ酸2〜250を含むか又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号12〜15に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトCD74に特異的な高親和性結合を示す配列番号16のアミノ酸2〜251を含むか又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号16〜19に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
本発明の特定の実施形態のなかでも、結合領域は、例えば、米国特許出願公開公報第2011/0059090号明細書で説明されるようなラクダ科動物抗体(VHH)タンパク質5F7のシングルドメインの可変領域に由来するHER2に特異的な高親和性結合を示すシングルドメイン免疫グロブリンに由来する領域VHHである。特定のさらなる実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトHER2に特異的な高親和性結合を示す配列番号20のアミノ酸2〜119を含むか又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号20〜27に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトCD20に特異的な高親和性結合を示す配列番号28のアミノ酸2〜99を含むか又はそれから本質的にからなる結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号28〜29に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ヒトインターロイキン−2受容体(IL−2R)に特異的な高親和性結合を示す配列番号30のアミノ酸2〜134を含むか又はそれから本質的にからなる結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号30〜33に示されるポリペプチドのいずれかを含むか又はそれから本質的になるタンパク質である。
本明細書で使用される場合、用語「重鎖可変(VH)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL)ドメイン」はそれぞれ、あらゆる抗体VH又はVLドメイン(例えばヒトVH又はVLドメイン)、加えて、対応する天然の抗体の少なくとも定性的な抗原結合能力を保持するそれらのあらゆる誘導体(例えば天然のマウスVH又はVLドメインに由来するヒト化VH又はVLドメイン)を指す。VH又はVLドメインは、3つのCDR又はABRが間に存在する「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的な結合に関してCDRを並べるのに役立つ。アミノ末端からカルボキシル末端にかけて、VH及びVLドメインの両方は、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。ラクダ科動物VHH断片、軟骨魚類IgNAR、VNAR断片、及びそれらの誘導体の場合、同じ基本の配列:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む単一の重鎖可変ドメインが存在する。
機能性細胞外標的生体分子結合部位を含有し、さらにより好ましくは標的生体分子と高親和性(例えばKDで示されるような)で結合することも可能な、本発明のタンパク質のポリペプチドのフラグメント、バリアント、及び/又は誘導体を使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本発明は、CD19、CD20、CD38、CD74、及びHER2に特異的に結合することができるポリペプチド配列を提供するが、本発明のタンパク質の製作及び本発明の方法における使用のために、細胞表面上に発現される細胞に物理的に結合している細胞外標的生体分子に、10−5〜10−12モル/リットル、好ましくは200nM未満の解離定数で結合するあらゆる結合領域を代わりに用いることができる。
本発明の特定の実施形態のなかでも、免疫グロブリン型結合領域は、ナノボディ又はシングルドメイン免疫グロブリンに由来する領域VHHに由来する。一般的に、ナノボディは、ラクダ科動物及び軟骨魚類(軟骨魚綱)に見出される種類の自然に存在する単一の単量体可変ドメイン抗体(sdAb)のフラグメントで構成されている。ナノボディは、これらの自然に存在する抗体から、単一の単量体可変ドメインをトランケートして、より小さくより安定な分子、例えばIgNAR、VHH、及びVNARコンストラクトなどを作製することによって改変される。それらの小さいサイズのために、ナノボディは、抗体全体に接近不可能な抗原に結合することができる。本発明の特定の実施形態のなかでも、免疫グロブリン型結合領域は、ヒトHER2タンパク質に特異的な高親和性結合を示す、ナノボディ又はシングルドメイン免疫グロブリンに由来する領域VHHに由来する。
III.本発明のタンパク質の全般的な機能
本発明は、それぞれ1)細胞標的化のための結合領域及び2)細胞毒性の志賀毒素エフェクター領域を含む様々なタンパク質を提供する。細胞標的化結合領域と、志賀毒素サブユニットAに由来する領域との連結は、強い志賀毒素の細胞毒性の細胞型特異的な標的化の操作を可能にする。特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、特定の細胞型の細胞表面に関連する細胞外標的生体分子と結合し、細胞に侵入することが可能である。本発明のタンパク質の特定の実施形態は、標的化された細胞型内に内在化されたら、標的細胞のサイトゾルに細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチドフラグメントの経路を定めることが可能である。標的化された細胞型のサイトゾル中に一度入れば、本発明の細胞毒性タンパク質の特定の実施形態は、リボソームを酵素的に不活性化すること、細胞のホメオスタシスを妨害すること、及び最終的には細胞を殺滅することが可能である。このシステムは、モジュール式構造であり、それにおいて、あらゆる数の多様な結合領域が、この強い細胞毒性又は細胞性塞栓を多種多様の細胞型に標的化するのに使用することができる。その代わりに、本発明のタンパク質の非毒性バリアントは、例えば診断情報の収集機能のために標的細胞内部を標識するための検出促進剤などの追加の外因性物質を標的細胞に送達するのに使用することができる。
A.標的化された志賀毒素細胞毒性を介した細胞殺滅
志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞を殺滅するようになっているため、志賀毒素エフェクター領域を使用して設計されたタンパク質は、有力な細胞殺滅活性を示すことができる。志賀毒素ファミリーメンバーのAサブユニットは、細胞のサイトゾルに入れば真核細胞を殺滅することが可能な酵素ドメインを含む。本発明の細胞毒性タンパク質の特定の実施形態は、この細胞毒性メカニズムを利用するが、志賀毒素エフェクター領域を標的化された細胞型のサイトゾルに入れることが可能でなければならない。KDELタイプのシグナルモチーフの付加は、本発明の細胞毒性タンパク質の細胞毒性を増強するが、これは、サイトゾルへの志賀毒素エフェクターポリペプチドの送達を促進するのに十分な細胞内経路決定を達成することによる可能性が最も高い。
本発明の細胞毒性タンパク質の特定の実施形態において、本発明の細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞を接触させると、細胞毒性タンパク質は、細胞の死を引き起こすことが可能である。細胞殺滅は、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織サンプル中の標的細胞、又はインビボの標的細胞などの標的細胞の様々な条件下で本発明の細胞毒性タンパク質を使用して達成され得る。
標的生体分子の発現は、本発明の細胞毒性タンパク質による標的化された細胞殺滅のために必ずしも自然でなくてもよい。標的生体分子の細胞表面発現は、感染、病原体の存在、及び/又は細胞内細菌性病原体の存在の結果であってもよい。標的生体分子の発現は、例えばウイルス発現ベクターで感染させた後の強制的な又は誘導された発現による人工的なものでもよい。例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びレトロウイルスシステムを参照されたい。標的生体分子の誘導性の発現の例は、オールトランスレチノイン酸及び様々な合成レチノイド、又はあらゆるレチノイン酸受容体(RAR,retinoic acid receptor)アゴニストのようなレチノイドに晒された細胞のCD38発現のアップレギュレーションである(Drach J et al., Cancer Res 54: 1746-52 (1994)、Uruno A et al., J Leukoc Biol 90: 235-47 (2011))。別の実施例において、CD20、HER2、及びEGFR発現は、細胞に電離放射線を照射することにより誘導される場合もある(Wattenberg M et al., Br J Cancer 110: 1472-80 (2014))。
B.細胞型間で選択的な細胞毒性
特異的な細胞型への高親和性結合領域を使用して酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することによって、この有力な細胞殺滅活性を、選択された細胞型を優先的に殺滅することに限定することができる。本発明は、この機能的な能力を有する様々な細胞毒性タンパク質を提供する。
特定の実施形態において、本発明の細胞毒性タンパク質は、細胞型の混合物に投与され、ここで細胞毒性タンパク質は、その細胞毒性タンパク質の結合領域と特異的に結合したいずれの細胞外標的生体分子とも物理的に結合していない細胞型と比較して、特定の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を選択的に殺滅することが可能である。志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞の殺滅に適していることから、志賀毒素エフェクター領域を使用して設計された細胞毒性タンパク質は、有力な細胞毒性の活性を示す可能性がある。高親和性結合領域を使用して特異的な細胞型への酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することによって、この有力な細胞殺滅活性を、標的化が望ましい細胞型と選ばれた結合領域と特異的に結合した標的生体分子との物理的な関連によってそのような細胞型のみを優先的に殺滅することに限定することができる。
特定の実施形態において、本発明の細胞毒性タンパク質は、2又は3以上の異なる細胞型の混合物内で特異的な細胞型の死を選択的又は優先的に引き起こすことが可能である。これは、高い優先性で、例えば標的生体分子を発現しない「バイスタンダー」細胞型に対して3倍の細胞毒性作用で、細胞毒性活性を特異的な細胞型に標的化することを可能にする。その代わりに、標的生体分子が十分低い量で発現されるか及び/又は標的化されるべきではない細胞型と少量で物理的に組み合わされる場合、結合領域の標的生体分子の発現は、1つの細胞型に限られない場合がある。これは、高い優先性で、例えば有意な量の標的生体分子を発現しないか、又は有意な量の標的生体分子と物理的に組み合わされない「バイスタンダー」細胞型に対して3倍の細胞毒性作用で、細胞殺滅を特異的な細胞型に標的化することを可能にする。
細胞表面上での細胞外標的生体分子のレベルは、当業者公知の様々な方法、例えばFACS方法などを使用して決定することができる。細胞表面で発現される細胞外標的生体分子の有意な量は、本明細書で使用される場合、FACS分析によれば、細胞型に応じて、10,000より高い、20,000より高い、30,000より高い、40,000より高い、50,000より高い、60,000より高い、又は70,000より高い平均蛍光強度(MFI,mean fluorescence intensity)である。
特定のさらなる実施形態において、本発明の細胞毒性タンパク質は、細胞外標的生体分子の存在及び/又はポリペプチド配列に関して異なる細胞型の2つの集団に投与され、ここで細胞毒性タンパク質は、メンバーが細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子を発現する標的細胞の集団に対する半数細胞毒性濃度(CD50、half-maximal cytotoxic concentration)が、例えば、メンバーが細胞毒性タンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子を発現しない細胞の集団に対する同じ細胞毒性タンパク質のCD50用量の少なくとも3分の1の用量であることによって定義されるような細胞死を引き起こすことが可能である。
特定の実施形態において、細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型の集団に対する本発明のタンパク質の細胞毒性活性は、その本発明のタンパク質と特異的に結合したいずれの細胞外標的生体分子とも物理的に結合していない細胞型の集団に対する細胞毒性活性より少なくとも3倍高い。本発明によれば、選択的な細胞毒性は、(a)結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされた特異的な細胞型の細胞集団に対する細胞毒性の、(b)結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされていない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性に対する比率(a/b)に関して定量化されてもよい。特定の実施形態において、細胞毒性の比率は、結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞集団又は細胞型について、結合領域の標的生体分子と物理的に組み合わされていない細胞集団又は細胞型と比較して、少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、1000倍又はそれ以上高い選択的な細胞毒性であることを示す。
この優先的な細胞殺滅機能は、様々な条件下で、非標的化バイスタンダー細胞の存在下で、例えばエクスビボで操作された細胞型の混合物、インビトロで細胞型の混合物と共に培養された組織、又はインビボの複数の細胞型の存在下で(例えばインサイチュで、又は多細胞生物内におけるその天然位置で)本発明の特定の細胞毒性タンパク質によって、標的化された細胞を殺滅することを可能にする。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、2種又は3種以上の異なる細胞型の混合物中で特異的な細胞型の死を選択的又は優先的に引き起こすことが可能である。これは、高い優先性で、例えばその本発明の細胞毒性タンパク質の結合領域と特異的に結合する細胞外標的を発現しない「バイスタンダー」細胞型に対して3倍の細胞障害作用で、特異的な細胞型に標的化された細胞毒性活性を可能にする。その代わりに、細胞外標的生体分子の発現は、細胞外標的生体分子が、標的化されないほど低い量で細胞型により発現される場合、1種の細胞型に限定されない可能性がある。これは、例えばその細胞毒性タンパク質に特異的に結合する有意な量の標的生体分子を発現しない、及び/又はその細胞毒性タンパク質と特異的に結合する細胞外に露出した有意な量の標的生体分子に物理的に結合していない「バイスタンダー」細胞型に対して3倍の細胞障害作用で、最も多い量の細胞外標的生体分子を発現する細胞型のみの優先的な細胞殺滅を可能にする。
本発明の細胞毒性タンパク質は、特異的な細胞型の集団の除去に有用である。例えば、本発明の細胞毒性タンパク質は、1又は2以上の細胞表面で高レベルの標的生体分子を発現する「標的生体分子+」細胞を除去することによる、特定の腫瘍、がん、及び/又は他の増殖異常の治療に有用である。
特定の実施形態において、特定の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型の集団に対する本発明のタンパク質の細胞毒性活性は、その特定の本発明のタンパク質の結合領域と特異的に結合する有意な量の細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型の集団に対する細胞毒性活性より少なくとも3倍高い。本発明によれば、選択的な細胞毒性は、(a)本発明の細胞毒性タンパク質の結合領域と結合する有意な量の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞の集団に対する細胞毒性と、(b)その本発明の特定の細胞毒性タンパク質の結合領域と特異的に結合する有意な量のあらゆる細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型の細胞の集団に対する細胞毒性との比率(a/b)に関して定量化されてもよい。特定の実施形態において、細胞毒性の比率は、細胞外標的生体分子を発現するか又は本発明の細胞毒性タンパク質の結合領域と結合する細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞集団又は細胞型について、細胞外標的生体分子を発現しないか又はその本発明の特定の細胞毒性タンパク質の結合領域と特異的に結合する有意な量の細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞集団又は細胞型と比較して、少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、1000倍又はそれより高い選択的な細胞毒性であることを示す。例えば、本発明の特定の細胞毒性タンパク質が、細胞外標的生体分子の存在及び/又はポリペプチド配列に関して異なる2種の異なる細胞集団に投与されると、例えば、細胞毒性タンパク質の結合領域と結合する細胞外標的生体分子と物理的に結合していない細胞型か、又はその細胞毒性タンパク質の結合領域による結合特異性を崩壊させる配列バリエーション又は変異を含むその細胞外標的生体分子の形態とだけ物理的に結合している細胞型で観察されるCD50 の少なくとも3分の1のCD50で、本発明の細胞毒性タンパク質は、細胞毒性タンパク質の結合領域と結合する細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞型の細胞死を引き起こすことが可能である。
本発明の細胞毒性タンパク質の特定の実施形態において、細胞毒性タンパク質が2種の異なる細胞型集団に投与されると、細胞毒性タンパク質は、メンバーが細胞表面で特定の標的生体分子を発現する第1の細胞集団に対する半数細胞毒性濃度(CD50)が、メンバーがその標的生体分子を発現しないか、有意な量のその標的生体分子を発現しないか、又は細胞毒性タンパク質の結合領域と結合する有意な量のその標的生体分子に晒されない第2の細胞集団に対する同じ細胞毒性タンパク質のCD50用量の少なくとも3分の1の用量であることによって定義されるような細胞死を引き起こすことが可能である。
C.標的細胞内部への追加の外因性物質の送達
直接の細胞殺滅に加えて、本発明のタンパク質は、標的細胞内部への追加の外因性物質の送達に使用することができる。追加の外因性物質の送達は、例えば細胞毒性、細胞増殖抑制、情報収集、及び/又は診断機能のために使用することができる。本発明の細胞毒性タンパク質の非毒性バリアント、又は毒性バリアントは、細胞毒性タンパク質の細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞に追加の外因性物質を送達すること、及び/又はそのような細胞の内部を標識することに使用されてもよい。少なくとも1つの細胞表面に標的生体分子を発現する様々な種類の細胞及び/又は細胞集団は、外因性物質を受け取るために本発明のタンパク質によって標的化されてもよい。本発明の機能的な成分は、モジュール式構造であり、それにおいて、様々な志賀毒素エフェクター領域及び追加の外因性物質が、腫瘍細胞の非侵襲的なインビボでのイメージングなどの多様な適用を提供するために様々な結合領域に連結されていてもよい。
本発明のタンパク質は、毒性又は非毒性か、さらにはそれらの触媒的に不活性な型かどうかにかかわらずその結合領域によって認識される細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞に侵入することが可能であるため、本発明のタンパク質の特定の実施形態は、標的化された細胞型の内部に追加の外因性物質を送達するのに使用することができる。ある意味では、タンパク質全体が細胞に侵入する外因性物質であり、したがって「追加の」外因性物質は、コアのタンパク質そのもの以外に連結される異種材料である。
「追加の外因性物質」は、本明細書で使用される場合、一般的にネイティブの標的細胞中に存在しないことが多い1又は2以上の分子を指し、ここで本発明のタンパク質は、このような材料を細胞内部に特異的に輸送するのに使用することができる。追加の外因性物質の非限定的な例は、細胞毒性物質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、検出促進剤、及び小分子の化学療法剤である。
追加の外因性物質の送達のための本発明のタンパク質の特定の実施形態において、追加の外因性物質は、細胞毒性物質、例えば小分子の化学療法剤、細胞毒性の抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤などである。細胞毒性物質の非限定的な例としては、アジリジン、シスプラチン、テトラジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ビンカアルカロイド、タキサン、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、アクラルビシン、アントラサイクリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ドラスタチン、メイタンシン、ドセタキセル、アドリアマイシン、カリチアマイシン、オーリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン、マイトマイシンC、パクリタキセル、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア(BCNU)、リファンピシン、シスプラチン、メトトレキセート、及びゲムシタビンが挙げられる。
特定の実施形態において、追加の外因性物質は、酵素を含むタンパク質又はポリペプチドを含む。特定の他の実施形態において、追加の外因性物質は、核酸であり、例えば低分子阻害RNA(siRNA,small inhibiting RNA)又はマイクロRNA(miRNA,microRNA)として機能するリボ核酸などである。特定の実施形態において、追加の外因性物質は、抗原であり、例えば、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、がんにおいて変異したタンパク質、がんにおいて異常に発現されたタンパク質、又はT細胞相補性決定領域に由来する抗原などである。例えば、外因性物質としては、抗原、例えば細菌感染した抗原提示細胞に特徴的な抗原、及び外因性抗原として機能することが可能なT細胞相補性決定領域が挙げられる。
D.診断機能のための情報収集
本発明の特定のタンパク質は、インビトロ及び/又はインビボにおける特異的な細胞、細胞型、及び/又は細胞集団の検出において用途を有する。特定の実施形態において、本明細書で説明される細胞毒性タンパク質は、診断と治療の両方、又は診断単独に使用される。診断と治療の両方に同じ細胞毒性タンパク質が使用される場合、診断のための検出促進剤を取り入れている細胞毒性タンパク質バリアントは、本明細書で説明される例示的な置換などの1又は2以上のアミノ酸置換を介した志賀毒素エフェクター領域の触媒による不活性化によって非毒性にされてもよい。検出促進剤にコンジュゲートされる本発明の細胞毒性タンパク質の触媒的に不活性な形態は、診断機能に、例えば同じ又は関連する結合領域を含む治療レジメンと共に使用されるコンパニオン診断に使用されてもよい。
当業界において公知の検出促進剤を様々な本発明のタンパク質にコンジュゲートする能力は、がん、腫瘍、免疫及び感染細胞の検出に有用な組成物を提供する。これらの本発明のタンパク質の診断の実施形態は、当業界において公知の様々なイメージング技術及びアッセイを介した情報収集に使用される可能性がある。例えば、本発明のタンパク質の診断の実施形態は、患者又は生検サンプルにおける個々のがん細胞、免疫細胞、又は感染細胞の細胞内のオルガネラ(例えばエンドサイトーシス、ゴルジ、小胞体、及びサイトゾル区画)のイメージングを介した情報収集に使用される可能性がある。
様々な種類の情報は、診断での使用のためか又は他の使用のためかにかかわらず、本発明のタンパク質の診断の実施形態を使用して収集することができる。この情報は、例えば、新生細胞のタイプを診断すること、患者の疾患の治療感受性を決定すること、経時的に抗新生物療法の進行をアッセイすること、経時的に免疫調節療法の進行をアッセイすること、経時的に抗菌療法の進行をアッセイすること、移植材料中の感染細胞の存在を評価すること、移植材料中の不要な細胞型の存在を評価すること、及び/又は腫瘤の外科的切除後に残留した腫瘍細胞の存在を評価することにおいて有用であり得る。
例えば、本発明のタンパク質の診断用バリアントを使用して収集された情報を使用して患者の部分集団を確認できる可能性があり、そうなれば、個々の患者を、そのような診断の実施形態を使用して解明されたそれらの固有の特徴に基づき部分集団に類別することができる。例えば、具体的な医薬品又は療法の有効性が、患者の部分集団を定義するのに使用される基準の1つのタイプとなる可能性がある。例えば、本発明の特定の細胞毒性タンパク質の非毒性の診断用バリアントは、どの患者が、同じ本発明の細胞毒性タンパク質の細胞毒性バリアントに対して陽性に応答すると予測される患者のクラス又は部分集団に属するのかを識別するのに使用することができる。したがって、本発明の細胞毒性タンパク質及び/又はそれらの非毒性のバリアントを使用した患者の同定、患者の層別化及び診断のための関連方法は、本発明の範囲内であるとみなされる。
IV.全体の構造及び機能を維持する本発明のタンパク質のポリペプチド配列におけるバリエーション
当業者は、例えば本発明のタンパク質の全体の構造及び機能を維持することによって、本発明のタンパク質(及びそれらをコードするポリヌクレオチド)に、それらの生物活性を低減させることなくバリエーションをもたらすことができることを理解していると予想される。例えば、いくつかの改変が、発現、精製、薬物動態学的特性及び/又は免疫原性を容易にする可能性がある。このような改変は熟練した作業者に周知であり、例えば、開始部位を提供するためのアミノ末端に付加されたメチオニン、都合よく配置された制限部位若しくは終止コドンを作製するためのいずれかの末端に配置された追加のアミノ酸、並びに便利な検出及び/若しくは精製のために提供されるいずれかの末端に融合した生化学的な親和性タグが挙げられる。
また、エピトープタグ又は他の部分に関する配列などの、アミノ及び/又はカルボキシ末端における追加のアミノ酸残基の包含も本明細書において検討される。追加のアミノ酸残基は、例えば、クローニング、発現、翻訳後修飾、合成、精製、検出、及び/又は投与を容易にすることなどの様々な目的に使用することができる。エピトープタグ及び部分の非限定的な例は、キチン結合タンパク質ドメイン、エンテロペプチダーゼ切断部位、Xa因子切断部位、FIAsHタグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP,green fluorescent protein)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ部分、HAタグ、マルトース結合タンパク質ドメイン、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、ReAsHタグ、strep−タグ、strep−タグII、TEVプロテアーゼ部位、チオレドキシンドメイン、トロンビン切断部位、及びV5エピトープタグである。
上記の実施形態のうち特定のものにおいて、本発明のタンパク質は、1又は2以上の保存的アミノ酸置換がポリペプチド領域に導入されているバリアントである。用語「保存的置換」は、本明細書で使用される場合、1又は2以上のアミノ酸が別の生物学的に類似するアミノ酸残基で置き換えられることを示す。その例としては、類似の特徴を有するアミノ酸残基、例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸の置換が挙げられる(例えば、下記の表Bを参照)。内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質に通常存在しない残基での保存的置換の例は、アルギニン又はリシン残基の、例えばオルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸での保存的置換である。ペプチド及びタンパク質において表現型ではサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。
下記の表Bにおける保存的置換のスキームでは、例示的なアミノ酸の保存的置換は、物理化学的な特性によって、I:中性、親水性;II:酸及びアミド;III:塩基性;IV:疎水性;V:芳香族、嵩高なアミノ酸、VI:親水性で非荷電性、VII:脂肪族で非荷電性、VIII:非極性で非荷電性、IX:シクロアルケニル結合、X:疎水性、XI:極性、XII:小さい、XIII:ターン許容性、及びXIV:フレキシブルにグループ分けされる。例えば、保存的アミノ酸置換としては、以下:1)Sは、Cで置換されていてもよい;2)M又はLは、Fで置換されていてもよい;3)Yは、Mで置換されていてもよい;4)Q又はEは、Kで置換されていてもよい;5)N又はQは、Hで置換されていてもよい;及び6)Hは、Nで置換されていてもよいことが挙げられる。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、置換されたポリペプチド領域が単独で又は本発明のタンパク質の成分として測定可能な生物活性を保持する限り、本明細書で列挙されたポリペプチド配列と比較して、最大で、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つのアミノ酸置換を有する本発明のポリペプチド領域の機能的なフラグメント又はバリアントを含んでいてもよい。本発明のタンパク質のバリアントは、変化した細胞毒性、変化した細胞増殖抑制作用、変化した免疫原性、及び/又は変化した血清中半減期などの所望の特性を達成するために、例えば結合領域又は志賀毒素エフェクター領域内で、1又は2以上のアミノ酸を変更すること又は1又は2以上のアミノ酸を欠失させるか若しくは挿入することによって、本発明のタンパク質のポリペプチドを変化させる結果として本発明の範囲内である。本発明のタンパク質のポリペプチドはさらに、シグナル配列を含んでいてもよいし、又は含んでいなくてもよい。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、それが測定可能な生物活性、例えば細胞毒性、細胞外標的生体分子の結合、酵素による触媒作用、又は細胞レベル下の経路決定を保持する限り、本明細書で列挙されたタンパク質のアミノ酸配列のいずれかに対して、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれより高いアミノ酸配列同一性を共有する。免疫グロブリン型結合領域は、それがその細胞外標的生体分子に対する結合機能性を保持する限りは、本明細書で列挙されたタンパク質のアミノ酸配列と異なっていてもよい。CDR又はABRのアミノ酸配列が同一の場合、結合機能性は、保持される可能性が最も高いと予想される。例えば、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のためCDR又はABRを形成するアミノ酸残基を無視して、本明細書で列挙されたタンパク質に85%のアミノ酸同一性を含むか又はそれから本質的になるタンパク質は、特許請求の範囲内である。結合機能性は、当業者により標準的な技術を使用して決定することができる。
特定の実施形態において、志賀毒素エフェクター領域が1又は2以上の他の志賀毒素エフェクターの機能を保持する限りは、志賀毒素エフェクター領域を変更して、その酵素活性及び/又は細胞毒性を変化させてもよい。この変化は、変更された志賀毒素エフェクター領域がその成分であるタンパク質の細胞毒性において変化をもたらす場合もあるし、もたらさない場合もある。可能性のある変更としては、トランケーション、欠失、転位、挿入、再配列、及び置換からなる群から選択される志賀毒素エフェクター領域への変異が挙げられる。
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性は、変異又はトランケーションによって、変更、低減、又は除去され得る。チロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、チロシン−114、及びトリプトファン−203と名付けられた位置は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988)、Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992)、Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993)、Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993)、Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994)、Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。無細胞リボソーム不活性化アッセイにおいて、グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、Slt−I A1の酵素活性が消去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体でSlt−I A1のデノボ発現を使用する別のアプローチにおいて、グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、Slt−I A1フラグメントの細胞毒性がその発現レベルで消去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。トランケーション分析から、残基75から268までのStxAのフラグメントが、インビトロで有意な酵素活性をなお保持していることが実証された(Haddad, J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1〜239を含有するSlt−I A1のトランケートされたフラグメントは、インビトロにおいて有意な酵素活性及びサイトゾルにおいてデノボ発現による細胞毒性を示した(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体中の残基1〜239にトランケートされたSlt−I A1フラグメントの発現は、サイトゾルに逆輸送(retrotranslocate)されることができないことから、細胞毒性ではなかった(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素のAサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、なかでも以下の残基位置:アスパラギン−75、チロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、及びアルギニン−176にマッピングされた(Di, Toxicon 57: 525-39 (2011))。特定には、グルタミン酸−E167からリシン、及びアルギニン−176からリシンの変異を含有するStx2Aの二重ミュータントコンストラクトは完全に不活性化され、それに対して、Stx1及びStx2における多くの単一の変異は細胞毒性の10分の1の低下を示した。さらに、Stx1Aの1〜239又は1〜240へのトランケーションは、その細胞毒性を低下させ、同様に、Stx2Aの保存された疎水性残基へのトランケーションは、その細胞毒性を低下させた。
志賀毒素のAサブユニットにおける真核性リボソーム及び/又は真核性リボソーム阻害の結合にとって最も重要な残基は、なかでも以下の残基位置、アルギニン−172、アルギニン−176、アルギニン−179、アルギニン−188、チロシン−189、バリン−191、及びロイシン−233にマッピングされている(McCluskey A et al., PLoS One 7: e31191 (2012))。
志賀様毒素1のAサブユニットのトランケーションは、インビトロでリボソームを酵素的に不活性化することが可能な場合、触媒活性を示し、細胞内で発現される場合、細胞毒性である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。完全な酵素活性を示す最小の志賀毒素のAサブユニットフラグメントは、Slt1Aの残基1〜239で構成されるポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告された志賀毒素のAサブユニットの最小のフラグメントは、StxAの75〜247残基であるにもかかわらず(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994))、真核細胞内でデノボ発現されたStxAのトランケーションは、サイトゾルに到達してリボソームを触媒的に不活性化させるのに、わずか240残基しか必要としない(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
SLT−1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)に由来する特定の実施形態において、これらの変化は、75位におけるアスパラギン、77位におけるチロシン、114位におけるチロシン、167位におけるグルタミン酸、170位におけるアルギニン、176位におけるアルギニンの置換、及び/又は203位におけるトリプトファンの置換を包含する。このような置換の例は、従来技術に基づき熟練した作業者に公知であると予想され、例えば、75位におけるアスパラギンからアラニンへの置換、77位におけるチロシンからセリンへの置換、114位におけるチロシンからセリンへの置換、167位におけるグルタミン酸からアスパルテートへの置換、170位におけるアルギニンからアラニンへの置換、176位におけるアルギニンからリシンへの置換、及び/又は203位におけるトリプトファンからアラニンへの置換である。
本発明のタンパク質は、本明細書で説明されるような薬剤を含む当業界において公知の治療剤及び/又は診断剤などの1又は2以上の追加の薬剤にコンジュゲートされていてもよい。
V.本発明のタンパク質の産生、製造、及び精製
本発明のタンパク質は、当業者に周知の生化学工学の技術を使用して産生され得る。例えば、本発明のタンパク質は、標準的な合成方法、組換え発現系の使用、又は他のあらゆる好適な方法によって製造され得る。本発明のタンパク質は、融合タンパク質、化学的に組み合わされたコンジュゲート、及び/又はそれらの組合せ、例えば1又は2以上の成分に共有結合で組み合わされた融合タンパク質成分などとして産生されてもよい。したがって、本発明のタンパク質は、多数の方法で合成することが可能であり、このような方法としては、例えば、(1)標準的な固相又は液相の手法を使用して、段階的に又はフラグメントのアセンブリのいずれかによって本発明のタンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分を合成するステップと、最終的なペプチド化合物生成物を単離し精製するステップとを含む方法;(2)宿主細胞中の本発明のタンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを発現させるステップと、宿主細胞又は宿主細胞培養から発現生成物を回収するステップとを含む方法;又は(3)インビトロで本発明のタンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを無細胞発現させるステップと、発現生成物を回収するステップとを含む方法;又は(1)、(2)又は(3)の方法のあらゆる組合せによって、ペプチド成分のフラグメントを得て、その後フラグメントを合体させ(例えばライゲートして)ペプチド成分を得て、ペプチド成分を回収する方法が挙げられる。
本発明のタンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分を、固相又は液相ペプチド合成の手段によって合成することが好ましい場合がある。本発明のタンパク質は、好適には、標準的な合成方法によって製造されてもよい。したがって、ペプチドは、例えば、標準的な固相又は液相手法で、段階的に又はフラグメントのアセンブリのいずれかによってペプチドを合成するステップと、最終的なペプチド生成物を単離し精製するステップとを含む方法によって合成されてもよい。これに関して、国際公開第1998/11125号パンフレット、又はとりわけFields G et al., Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis (Synthetic Peptides, Grant G, ed., Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002)及びそこに記載された合成の実施例を参照してもよい。
本発明のタンパク質は、当業界において周知の組換え技術を使用して調製(産生及び精製)されてもよい。一般的に、コード化ポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養すること、及び細胞培養からポリペプチドを回収することによってポリペプチドを調製するための方法は、例えばSambrook J et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989)、Dieffenbach C et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)で説明されている。本発明のタンパク質を産生するために、あらゆる好適な宿主細胞を使用することができる。宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を駆動させる1又は2以上の発現ベクターで安定して若しくは一時的にトランスフェクションされた、形質転換された、形質導入された、又は感染した細胞であり得る。加えて、本発明のタンパク質は、変化した細胞毒性、変化した細胞増殖抑制作用、変化した免疫原性、及び/又は変化した血清中半減期などの所望の特性を達成するために、1又は2以上のアミノ酸の変更又は1又は2以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入をもたらす本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの改変によって産生されてもよい。
本発明のタンパク質を産生するために選ばれる可能性がある多種多様の発現系がある。例えば、本発明のタンパク質の発現のための宿主生物としては、原核生物、例えば大腸菌(E. coli)及び枯草菌(B. subtilis)、真核細胞、例えば酵母及び糸状菌(S.セレビジエ(S. cerevisiae)、P.パストリス(P. pastoris)、黒麹菌(A. awamori)、及びK.ラクティス(K. lactis)など)、藻類(コナミドリムシ(C. reinhardtii)など)、昆虫細胞株、哺乳動物細胞(CHO細胞など)、植物細胞株、並びに真核生物、例えばトランスジェニック植物(シロイスナズナ(A. thaliana)及びベンサミアナタバコ(N. benthamiana)など)が挙げられる。
したがって、本発明はまた、上記で列挙された方法に従って、(i)本発明のタンパク質又はそれらのポリペプチド成分の一部又は全部をコードするポリヌクレオチド、(ii)好適な宿主細胞又は無細胞発現系に導入される場合、本発明のタンパク質又はそれらのポリペプチド成分の一部又は全部をコードすることが可能な本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は(iii)本発明のポリヌクレオチド又は発現ベクターを含む宿主細胞を使用して、本発明のタンパク質を産生するための方法も提供する。
組換え技術を使用して宿主細胞又は無細胞系中でポリペプチド又はタンパク質が発現される場合、高純度を有するか又は実質的に均一な調製物を得るために、宿主細胞の要素などの他の成分から所望のポリペプチド又はタンパク質を分離(又は精製)することが有利である。精製は、当業界において周知の方法、例えば遠心分離技術、抽出技術、クロマトグラフ及び画分化技術(例えばゲルろ過によるサイズ分離、イオン交換カラム、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、シリカでのクロマトグラフィー又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEなどによる電荷分離、クロマトフォーカシング、及び汚染物質を除去するためのプロテインAセファロースクロマトグラフィー)、並びに沈殿技術(例えばエタノール沈殿又は硫酸アンモニウム沈殿)によって達成することができる。本発明のタンパク質の純度を増加させるために、相当数の生化学精製技術を使用することができる。特定の実施形態において、本発明のタンパク質は、ホモ多量体の形態(すなわち2又は3以上の同一なタンパク質のタンパク質複合体)又はヘテロ多量体の形態(すなわち2又は3以上の同一ではないタンパク質のタンパク質複合体)で精製されてもよい。
以下の実施例は、本発明のタンパク質を産生するための方法の非限定的な例、加えて開示された例示的な細胞毒性タンパク質に関するタンパク質産生の具体的な、ただし非限定的な態様の説明である。
VI.本発明のタンパク質を含む医薬及び診断用組成物
本発明は、以下のさらなる詳細で説明される状態、疾患、障害、又は症状(例えばがん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染)の治療又は防止のための医薬組成物において、単独で、又は1又は2以上の追加の治療剤と組み合わせて使用するためのタンパク質を提供する。本発明はさらに、本発明に従って、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体と共に、本発明のタンパク質、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明のタンパク質のホモ多量体及び/又はヘテロ多量体の形態を含んでいてもよい。医薬組成物は、以下のさらなる詳細で説明される疾患、状態、障害、又は症状を治療、緩和又は予防する方法において有用であると予想される。このような疾患、状態、障害、又は症状はそれぞれ、本発明に係る医薬組成物の使用に対して別の実施形態であると想定される。本発明は、さらに、以下でより詳細に説明されるように、少なくとも1つの本発明に係る治療方法で使用するための医薬組成物を提供する。
用語「患者」及び「対象」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され、あらゆる生物、一般的に脊椎動物、例えば少なくとも1つの疾患、障害、又は状態の症状、症候、及び/又は徴候を示すヒト及び動物を指す。これらの用語は、哺乳動物、例えば霊長類の非限定的な例、家畜動物(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、コンパニオンアニマル(例えばネコ、イヌなど)及び実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラットなど)を包含する。
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」及びそれらの文法上の変化形は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチを指す。この用語は、状態、障害若しくは疾患の発病又は進行速度を遅延させること、それに関連する症状を低減又は軽減すること、状態の完全又は部分退縮をもたらすこと、又は上記いずれかのいくつかの組合せを指す場合もある。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、症状の低減又は軽減、疾患の程度の減少、疾患の状況の安定化(例えば悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は減速、病状の緩和又は一時的緩和、及び寛解(部分又は完全にかかわらず)が挙げられる。「治療する」、「治療すること」、又は「治療」はまた、治療を受けない場合に予測される生存時間と比べて生存を長くすることを意味する場合もある。したがって治療が必要な対象(例えばヒト)は、すでに問題の疾患又は障害に罹っている対象であり得る。用語「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、治療しない場合と比較して病理学的状況又は症状の重症度の増加を阻害又は低減することを包含し、関連する疾患、障害、又は状態の完全な停止を暗に示すことを必ずしも意味するわけではない。腫瘍及び/又はがんに関して、治療は、全体的な腫瘍負荷量及び/又は個々の腫瘍サイズの低減を包含する。
本明細書で使用される場合、用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びそれらの文法上の変化形は、状態、疾患、若しくは障害の発症を予防する、又はその病状を変更するためのアプローチを指す。したがって、「予防」は、防止的又は予防的措置を指す場合もある。本発明の目的に関して、有益な又は所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、疾患の症状、進行又は発症の予防又は減速が挙げられる。したがって予防が必要な対象(例えばヒト)は、まだ問題の疾患又は障害に罹っていない対象であり得る。用語「予防」は、治療しない場合と比較して疾患の発病を減速させることを包含し、関連する疾患、障害又は状態の永続的な予防を暗に示すことを必ずしも意味するわけではない。したがって状態を「予防すること」又は状態の「予防」は、特定の状況において、状態を発症する危険を低下させること、又は状態に関連する症状の発症を予防若しくは遅延することを指す場合がある。
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、標的の状態を予防若しくは治療すること、又は状態に関連する症状を有利に軽減することなどの対象における少なくとも1つの望ましい治療効果を生じる組成物(例えば治療用組成物又は薬剤)の量又は用量である。最も望ましい治療有効量は、それを必要とする所与の対象について当業者によって選択された特定の治療の望ましい効能を生じると予想される量である。この量は、これらに限定されないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態学、薬力学、及び生物学的利用率など)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患のタイプ、疾患の段階、全般的な身体状態、所与の投薬量に対する反応性、及び薬物療法のタイプなど)、製剤中の薬学的に許容される1種又は複数の担体の性質、及び投与経路などの熟練した作業者によって理解されている様々な要因に応じて異なると予想される。臨床及び薬理学分野における熟練者は、慣例的な実験を介して、すなわち化合物の投与に対する対象の応答をモニターし、それに応じて投薬量を調整することによって治療有効量を決定することが可能であると予想される(例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro A, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照)。
本発明の診断用組成物は、本発明のタンパク質及び1又は2以上の検出促進剤を含む。同位体、色素、比色法用の薬剤、コントラスト増強剤、蛍光剤、生物発光剤、及び磁気性の薬剤などの様々な検出促進剤が当業界において公知である。これらの薬剤は、本発明のタンパク質にあらゆる位置で取り込まれていてもよい。薬剤の取り込みは、本発明のタンパク質のアミノ酸残基を介して、又はリンカー及び/又はキレート化剤を介した連結などの当業界において公知のいくつかのタイプの連結を介していてもよい。薬剤の取り込みは、スクリーニング、アッセイ、診断手順、及び/又はイメージング技術において診断用組成物の存在の検出が可能になるような方法でなされる。
本発明の診断用組成物を生産又は製造する場合、本発明のタンパク質は、1又は2以上の検出促進剤に直接的又は間接的に連結されてもよい。情報収集方法のために、例えば生物の疾患、障害、又は状態に対する診断及び/又は予後の適用のために、本発明のタンパク質に機能するように連結できる、熟練した作業者に公知の極めて多くの検出促進剤がある(例えばCai W et al., J Nucl Med 48: 304-10 (2007)、Nayak T, Brechbiel M, Bioconjug Chem 20: 825-41 (2009)、Paudyal P et al., Oncol Rep 22: 115-9 (2009)、Qiao J et al., PLoS ONE 6: e18103 (2011)、Sano K et al., Breast Cancer Res 14: R61 (2012)を参照)。例えば、検出促進剤としては、画像を強調する造影剤、例えば蛍光色素(例えばAlexa680、インドシアニングリーン、及びCy5.5)、同位体及び放射性核種、例えば11C、13N、15O、18F、32P、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu,67Cu、67Ga、68Ga、72As、73Se、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、110In、111In、120I、123I、124I、125I、131I、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、177Lu、186Re、188Re、及び223R;常磁性イオン、例えばクロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)又はエルビウム(III);金属、例えばランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III);超音波コントラスト増強剤、例えばリポソーム;放射線不透物質、例えばバリウム、ガリウム、及びタリウム化合物が挙げられる。検出促進剤は、中間官能基、例えば2−ベンジルDTPA、PAMAM、NOTA、DOTA、TETA、それらの類似体、及び前述のもののいずれかの機能的な均等物のようなキレート化剤を使用することによって直接的又は間接的に取り込まれていてもよい(Leyton J et al., Clin Cancer Res 14: 7488-96 (2008)を参照)。タンパク質に、特に免疫グロブリン及び免疫グロブリンに由来するドメインに様々な検出促進剤を取り込む、取り付ける、及び/又はコンジュゲートするための、熟練した作業者に公知の極めて多くの標準的な技術がある(Wu A, Methods 65: 139-47 (2014))。同様に、医療分野で一般的に使用される非侵襲的なインビボでのイメージング技術などの熟練した作業者に公知の極めて多くのイメージングアプローチがあり、例えば、コンピューター断層撮影イメージング(CTスキャニング)、光学的イメージング(直接の、蛍光による、及び生物発光によるイメージングなど)、磁気共鳴映像法(MRI,magnetic resonance imaging)、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET,positron emission tomography)、単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT,single-photon emission computed tomography)超音波、及びX線コンピューター断層撮影イメージングである(総論については、Kaur S et al., Cancer Lett 315: 97-111 (2012)を参照)。
本発明のタンパク質を含む医薬及び/又は診断用組成物の生産又は製造
本発明のタンパク質のいずれかの薬学的に許容される塩又は溶媒和物も、同様に本発明の範囲内である。
本発明の内容における用語「溶媒和物」は、溶質(この場合、本発明に係るポリペプチド化合物又はそれらの薬学的に許容される塩)と溶媒との間で形成された規定の化学量論の複合体を指す。それに関して、溶媒は、例えば、水、エタノール、又は別の薬学的に許容される、典型的には小分子の有機種、例えば、これらに限定されないが、酢酸又は乳酸などであり得る。問題の溶媒が水である場合、このような溶媒和物は通常、水和物と称される。
本発明のタンパク質又はそれらの塩は、典型的には薬学的に許容される担体中に治療有効量の本発明の化合物又はそれらの塩を含む、貯蔵又は投与のために調製された医薬組成物として製剤化されてもよい。用語「薬学的に許容される担体」は、あらゆる標準的な医薬用担体を包含する。治療用途のための薬学的に許容される担体は薬学分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985)で説明される。「薬学的に許容される担体」としては、本明細書で使用される場合、ありとあらゆる生理学的に許容できる、すなわち適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容される担体又は希釈剤としては、経口、直腸、経鼻又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮など)投与に好適な製剤で使用されるものが挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。本発明の医薬組成物で採用される可能性がある好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えばエチルオレエートが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液のケースで求められる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。特定の実施形態において、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注射又は点滴による)に好適である。選択された投与経路に応じて、本発明のタンパク質又は他の医薬成分は、特定の投与経路によって患者に投与されたときに本発明の活性タンパク質が遭遇する可能性がある低いpH及び他の天然の不活性化条件の作用から化合物を保護することを意図した材料でコーティングされていてもよい。
本発明の医薬組成物の製剤は、単位剤形で便利なように提供されてもよいし、薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。このような形態において、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージ化された調製物、別々の量の調製物を含有するパッケージ、例えば、バイアル又はアンプル中にパケット化された錠剤、カプセル、及び粉末であってもよい。また単位剤形は、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤そのものであってもよいし、又は適切な数のこれらのパッケージ化された形態のいずれかであってもよい。単位剤形は、単回用量の注射可能な形態で、例えばペンの形態で提供されてもよい。組成物は、あらゆる好適な経路及び投与手段に合わせて製剤化されてもよい。皮下又は経皮の投与様式は、本明細書で説明される治療用タンパク質に特に好適であり得る。
本発明の医薬組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有していてもよい。微生物の存在の防止は、滅菌手順と、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含との両方によって確実にすることができる。組成物への等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなども望ましい場合がある。加えて、注射可能な医薬の形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる物質の包含によって達成することができる。
また本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤を包含していてもよい。例示的な薬学的に許容される抗酸化剤は、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA,butylated hydroxyanisole)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT,butylated hydroxytoluene)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなど;及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA,ethylenediamine tetraacetic acid)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などである。
別の態様において、本発明は、本発明の異なるタンパク質、又は前述のもののいずれかのエステル、塩若しくはアミドの1つ又は組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
治療用組成物は、典型的には滅菌されており、製造及び貯蔵条件下で安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序ある構造として製剤化されてもよい。担体は、例えば、水、アルコール、例えばエタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又はあらゆる好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、当業界において周知の調合の化学に従って、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液のケースで求められる粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。特定の実施形態において、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムが組成物において望ましい可能性がある。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンなどの吸収を遅延させる物質を包含させることによって達成することができる。
皮内又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、典型的には、滅菌希釈剤、例えば注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩;及び張度調節剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースなどの1又は2以上を包含する。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸若しくは水酸化ナトリウム、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩を含む緩衝剤などで調整することができる。このような調製物は、ガラス又はプラスチックで製作された、アンプル、使い捨てのシリンジ又は複数回用量用のバイアル中に封入されていてもよい。
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上述した成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に本発明のタンパク質を必要な量で取り込み、続いて滅菌精密ろ過することによって調製されてもよい。分散液は、分散媒及び上述したものなどの他の成分を含有する滅菌媒体に活性化合物を取り込むことによって調製されてもよい。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末のケースにおいて、調製方法は、それらの滅菌ろ過溶液から任意の追加の望ましい成分に加えて活性成分の粉末を生じる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
本発明のタンパク質の治療有効量が、例えば静脈内、皮膚又は皮下注射によって投与するために設計される場合、結合剤は、パイロジェンフリーの非経口的に許容できる水溶液の形態であると予想される。適切なpH、等張性、安定性などを検討して非経口的に許容できるタンパク質溶液を調製するための方法は、当業界における能力の範囲内である。静脈内、皮膚、又は皮下注射にとって好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、等張の媒体、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射液、又は当業界で公知の他の媒体を含有すると予想される。また本発明の医薬組成物は、安定剤、保存剤、緩衝液、抗酸化剤、又は当業者に周知の他の添加剤を含有していてもよい。
本明細書の他所で説明されるように、本発明のタンパク質又はそれらの組成物(例えば医薬又は診断用組成物)は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化された送達系を含む放出制御製剤などの、急速な放出から組成物を保護すると予想される担体を用いて調製されてもよい。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を調製するための多くの方法は特許化されているか、又は一般的に当業者に公知である(例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (Robinson J, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978)を参照)。
特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば医薬又は診断用組成物)は、インビボにおいて望ましい分布を確実にするように製剤化されてもよい。例えば、血液脳関門は、多くの大きい及び/又は親水性の化合物を排除する。特定のインビボにおける配置に本発明の治療タンパク質又は組成物を標的化するために、それを例えばリポソーム中に製剤化してもよく、ここでリポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送されることにより標的化された薬物送達を強化する1又は2以上の部分を含んでいてもよい。例示的な標的化部分は、葉酸塩又はビオチン;マンノシド;抗体;界面活性プロテインA受容体;p120カテニンなどを包含する。
医薬組成物は、インプラント又は微粒子系として使用するように設計された非経口製剤を包含する。インプラントの例は、エマルジョン、イオン交換樹脂、及び可溶性塩溶液などの高分子又は疎水性成分で構成されるデポ製剤である。微粒子系の例は、デンドリマー、リポソーム、マイクロスフェア、微粒子、ナノカプセル、ナノ粒子、ナノロッド、ナノスフェア、高分子ミセル、及びナノチューブである(例えばHonda M et al., Int J Nanomedicine 8: 495-503 (2013)、Sharma A et al., Biomed Res Int 2013: 960821 (2013)、Ramishetti S, Huang L, Ther Deliv 3: 1429-45 (2012)を参照)。放出制御製剤は、イオンに対する感受性を有するポリマー、例えばリポソーム、ポロキサマー407、及びヒドロキシアパタイトなどを使用して調製されてもよい。微粒子及びポリマー製剤は、細胞質膜透過性を変更する物質、例えば、細胞溶解素、毒素に由来する物質、ウイルスに由来する物質、合成の生体模倣ペプチド、及び化学物質のような様々なペプチド及びタンパク質を含んでいてもよい(例えばVarkouhi et al., J Control Release 151: 220-8 (2011)、J Pirie C et al., Mol Cancer Ther 12: 1774-82 (2013)を参照)。
VII.ポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明のタンパク質のほかにも、このようなタンパク質、又はそれらの機能的な部分をコードするポリヌクレオチドも、本発明の範囲内にある。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と同等であり、その両方が、デオキシリボ核酸(DNA,deoxyribonucleic acid)のポリマー、リボ核酸(RNA,ribonucleic acid)のポリマー、ヌクレオチド類似体を使用して生成されたこれらのDNA又はRNAの類似体、並びにそれらの誘導体、フラグメント及びホモログを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖であり得る。開示されるポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの第三の位置で許容されるが異なるRNAコドンとして同じアミノ酸をコードすることが公知のゆらぎを考慮に入れて、本発明の例示的なタンパク質をコードすることが可能な全てのポリヌクレオチドを包含するように具体的に開示されている(Stothard P, Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参照)。
一態様において、本発明は、本発明のタンパク質、又はそれらのフラグメント若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の1つを含むポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又はそれよりより高い同一性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を包含し得る。また本発明は、本発明のタンパク質、又はそれらのフラグメント若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、又はあらゆるこのような配列のアンチセンス若しくは相補物を含むポリヌクレオチドも包含する。
本発明のポリヌクレオチド(又はタンパク質)の誘導体又は類似体は、とりわけ、例えば、同じサイズのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に対して、又は当業界において公知のコンピューター相同性プログラムによってアライメントが行われる並べられた配列と比較した場合に、少なくとも約45%、50%、70%、80%、95%、98%、又は99%もの同一性で(好ましい同一性は80〜99%である)、本発明のポリヌクレオチド又はタンパク質に実質的に相同な領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を包含する。例示的なプログラムは、Smith T, Waterman M, Adv Appl Math 2: 482-9 (1981)のアルゴリズムを使用するデフォルト設定を使用した、GAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、UNIX用バージョン8、Genetics Computer Group、University Research Park、Madison、WI、U.S.)である。また、ストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードする配列の相補物にハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドも包含される(例えばAusubel F et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY, U.S., 1993)、及び以下を参照)。ストリンジェントな条件は当業者公知であり、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY, U.S., Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989))で見出すことができる。
本発明はさらに、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。本発明のタンパク質をコードすることが可能なポリヌクレオチドは、発現ベクターを生産するための当業界において周知の材料及び方法を使用して、細菌プラスミド、ウイルスベクター及びファージベクターなどの公知のベクターに挿入されてもよい。このような発現ベクターは、いずれかの選択された宿主細胞又は無細胞発現系(例えば以下の実施例で説明されるpTxb1及びpIVEX2.3)内での検討される本発明のタンパク質の産生を維持するのに必要なポリヌクレオチドを包含すると予想される。特定のタイプの宿主細胞又は無細胞発現系と共に使用するための発現ベクターを含む具体的なポリヌクレオチドは当業者周知であり、それらを慣例的な実験を使用して決定してもよいし、又は購入してもよい。
用語「発現ベクター」は、本明細書で使用される場合、1又は2以上の発現単位を含む直鎖状又は環状のポリヌクレオチドを指す。用語「発現単位」は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞中で核酸セグメントの発現をもたらすことが可能なポリヌクレオチドセグメントを示す。発現単位は、典型的には、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを含み、全て機能できるように配置される。発現ベクターは、1又は2以上の発現単位を含有する。したがって、本発明の内容において、単一のポリペプチド鎖を含む本発明のタンパク質(例えば、志賀毒素エフェクター領域が遺伝子組換えされたscFv)をコードする発現ベクターは、少なくとも単一のポリペプチド鎖のための発現単位を包含し、それに対して例えば2又は3以上のポリペプチド鎖(例えばVLドメインを含む1つの鎖及び毒素エフェクター領域に連結されたVHドメインを含む第二の鎖)を含む本発明のタンパク質は、そのタンパク質の2つのポリペプチド鎖それぞれにつき1つずつの少なくとも2つの発現単位を包含する。本発明の多重鎖のタンパク質を発現させるために、各ポリペプチド鎖のための発現単位が、異なる発現ベクターに別々に含有されていてもよい(例えば発現は、各ポリペプチド鎖のための発現ベクターが導入された単一の宿主細胞で達成され得る)。
ポリペプチド及びタンパク質の一過性の又は安定な発現を指示することが可能な発現ベクターは当業界において周知である。発現ベクターは、一般的に、これらに限定されないが、以下:それぞれ当業界において周知の、異種シグナル配列又はペプチド、複製起点、1又は2以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列の1又は2以上を包含する。任意の調節制御配列、統合配列、及び採用される可能性がある有用なマーカーは、当業界において公知である。
用語「宿主細胞」は、発現ベクターの複製又は発現を維持することができる細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌又は真核細胞(例えば酵母、昆虫、両生類、鳥類、又は哺乳動物細胞)であり得る。本発明のポリヌクレオチドを含むか又は本発明のタンパク質を産生することが可能な宿主細胞株の作出及び単離は、当業界において公知の標準的な技術を使用して達成することができる。
本発明の範囲のタンパク質は、宿主細胞でのより最適な発現などの所望の特性を達成するのにより好適にすることができる、1又は2以上のアミノ酸の変更又は1又は2以上のアミノ酸の欠失若しくは挿入によって本発明の開示されたタンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変することによって生産される、本明細書で説明されるタンパク質のバリアント又は誘導体であってもよい。
VIII.送達デバイス及びキット
特定の実施形態において、本発明は、1又は2以上の本発明の物質の組成物、例えば対象に送達するための医薬組成物を含むデバイスに関する。したがって、1又は2以上の本発明の化合物を含む送達デバイスを使用して、静脈内、皮下、筋肉内又は腹膜内注射;経口投与;経皮投与;肺内又は経粘膜投与;インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ又はマイクロポンプによる投与;又は当業者によって認識される他の手段による投与などの様々な送達方法によって本発明の物質の組成物を患者に投与することができる。
また、少なくとも1つの本発明の物質の組成物を含み、包装及び使用説明書を含んでいてもよいキットも本発明の範囲内である。キットは、薬物の投与及び/又は診断の情報収集に有用であり得る。本発明のキットは、少なくとも1つの追加の試薬(例えば、標準、マーカーなど)を含んでいてもよい。キットは、典型的には、キット内容物の意図した使用を表示するラベルを包含する。キットは、サンプル又は対象中で細胞型(例えば腫瘍細胞)を検出するための、又は患者が、本明細書で説明されるような本発明の化合物、組成物又は関連する方法を利用する治療方策に応答するグループに属するかどうかを診断するための試薬及び他のツールをさらに含んでいてもよい。
IX.本発明のタンパク質又はそれらの組成物を使用するための方法
一般的に、本発明の目的は、特定のがん、腫瘍、免疫障害、微生物感染、又は本明細書で述べられるさらなる病的状態などの疾患、障害、及び状態の予防及び/又は治療において使用することができる薬理活性薬剤、加えてそれを含む組成物を提供することである。したがって、本発明は、標的細胞の殺滅のために、標的化された細胞に追加の外因性物質を送達するために、標的細胞の内部を標識するために、診断の情報を収集するために、及び本明細書で説明されるような疾患、障害、及び状態を治療するために、本発明のタンパク質及び医薬組成物を使用する方法を提供する。
特定には、本発明の目的は、現在のところ当業界において公知の薬剤、組成物、及び/又は方法と比較して一定の利点を有するこのような薬理活性薬剤、組成物、及び/又は方法を提供することである。したがって、本発明は、特定のポリペプチド配列を特徴とする本発明のタンパク質並びにそれらの医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、配列番号1〜34のポリペプチド配列のいずれかが、以下の方法で使用されるタンパク質の成分として具体的に利用される可能性がある。
本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで本発明のタンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。本発明のタンパク質及び医薬組成物を使用して、1つ又は複数の細胞を特許請求された物質の組成物の1つと接触させたときに特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物を使用して、がん細胞、感染細胞、及び/又は血液学的な細胞を含む混合物などの異なる細胞型の混合物中の特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物を使用して、異なる細胞型の混合物中のがん細胞を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物を使用して、移植前の組織などの異なる細胞型の混合物中の特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物を使用して、治療目的の投与前の組織材料などの細胞型の混合物中の特異的な細胞型を殺滅することができる。特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物を使用して、ウイルス又は微生物に感染した細胞を選択的に殺滅するか、又はそれとは別に細胞表面生体分子などの特定の細胞外標的生体分子を発現する細胞を選択的に殺滅することができる。本発明のタンパク質及び医薬組成物は、例えば、インビトロ又はインビボのいずれかで組織から不要な細胞型を除去することにおける使用、移植片対宿主病を治療するために免疫応答をモジュレートすることにおける使用、抗ウイルス剤としての使用、抗寄生虫剤としての使用、及び移植組織から不要な細胞型を取り除くことにおける使用などの様々な適用を有する。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物は、単独で、又は他の化合物又は医薬組成物と組み合わせて、インビトロで、又は対象において、例えば治療が必要な患者においてインビボで細胞集団に投与されると、有力な細胞殺滅活性を示すことができる。がん細胞型に対して高親和性の結合領域を使用して酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することによって、生物内の、例えば特定のがん細胞、新生細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞、又は感染細胞内の特定の細胞型を特異的且つ選択的に殺滅することに、この有力な細胞殺滅活性を限定することができる。
本発明は、それを必要とする患者において細胞を殺滅する方法であって、患者に、少なくとも1つの本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、がん及び/又は腫瘍細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者におけるがん及び/又は腫瘍細胞を殺滅することができる。用語「がん細胞」又は「癌細胞」は、異常に速い速度の様式で増殖し分裂する様々な新生細胞を指し、当業者には明らかであると予想される。用語「腫瘍細胞」は、悪性及び非悪性細胞の両方を包含する(例えば非がん性の良性腫瘍細胞、非がん性の「がん」幹細胞、腫瘍幹細胞、前がん状態の発がん性細胞、腫瘍始原細胞、又は腫瘍形成性細胞であり、これらは全て、悪性腫瘍及び/又はがん細胞になるがそれら自身転移不可能な娘細胞を発生させることができる(例えばMartinez-Climent J et al., Haematologica 95: 293-302 (2010)を参照))。一般的に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防を受けることが可能な疾患、障害、又は状態と定義することができる。本発明の方法及び組成物によって利益を得る可能性があるがん細胞及び/又は腫瘍細胞で構成されるがん及び腫瘍(悪性又は良性のどちらも)は、当業者にとって明らかであると予想される。新生細胞は、以下:制御不能な増殖、分化の欠如、局所的な組織浸潤、血管新生、及び転移の1又は2以上を伴うことが多い。
本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、免疫細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者における免疫細胞(健康か又は悪性かどうかにかかわらず)を殺滅することができる。
本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、感染細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者における感染細胞を殺滅することができる。
感染した、悪性の、腫瘍性の患者の細胞集団(例えば骨髄)、又はそれとは別の意味で不要なB細胞及び/又はT細胞を除去し、次いでB細胞及び/又はT細胞を除去した材料を患者に再注入する目的のために、本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である(例えばvan Heeckeren W et al., Br J Haematol 132: 42-55 (2006);例えばAlpdogan O, van den Brink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照)。
患者から取り出された単離された細胞集団からB細胞及び/又はT細胞をエクスビボで除去する目的で、本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である。1つの非限定的な例において、本発明のタンパク質は、臓器及び/又は組織の移植による拒絶反応を防止するための方法で使用することができ、ここでドナーの臓器又は組織は、臓器からドナーの不要なB細胞及び/又はT細胞を取り除くために、移植前に、本発明の細胞毒性タンパク質又はそれらの医薬組成物で潅流される(例えばAlpdogan O, van den Brink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照)。
また、骨髄及び又は幹細胞移植を受けようとする患者における移植片対宿主病及び耐性の誘発に対する防止策として、ドナー細胞集団からB細胞及び/又はT細胞を除去する目的で本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を利用することも本発明の範囲内である。
本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物の特定の実施形態を使用して、感染細胞と物理的に組み合わされていることが見出された細胞外生体分子を標的化することによって、患者における感染細胞を殺滅することができる。
本発明のタンパク質の特定の実施形態又はそれらの医薬組成物は、多細胞性の寄生体の細胞を殺滅するのに使用することができる。特定のさらなる実施形態において、多細胞性の寄生体が宿主生物又は対象中に存在する間に、細胞殺滅が起こる。特定のさらなる実施形態において、本発明のタンパク質は、蠕虫、例えば扁形動物、線形動物、条虫、単生類、線虫、及び/又は吸虫などを殺滅するのに使用される可能性がある。
加えて、本発明は、患者において疾患、障害又は状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物の少なくとも1つの治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。本方法を使用して治療が可能な検討される疾患、障害、及び状態としては、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染が挙げられる。本発明の化合物の「治療上有効な投薬量」の投与は、疾患の症状の重症度の減少、疾患の症状がない期間の頻度及び持続時間の増加、又は疾患の苦しみによる損傷若しくは能力障害の予防をもたらすことができる。
本発明の化合物の治療有効量は、投与経路、治療される哺乳動物のタイプ、及び検討される具体的な患者の身体的特性によって決まると予想される。この量を決定するためのこれらの要因及びそれらの関係は、医療分野における熟練した技術者に周知である。この量及び投与方法は、最適な効能を達成するように調整されてもよく、体重、食事、並行して行われる薬物療法のような要因、及び医療分野における当業者に周知の他の要因によって決めてもよい。ヒトでの使用にとって最も適切な投薬量及び用量レジメンは、本発明により得られた結果から導くことができ、適切に設計された臨床試験で確認してもよい。有効な投薬量及び治療プロトコールは、実験動物において低用量で開始して、次いで作用をモニターしながら投薬量を増加させ、同様に投薬レジメンを系統的に変更するという従来の手段によって決定してもよい。所与の対象ごとの最適な投薬量を決定する際に、臨床医により極めて多くの要因を検討に入れることができる。このような検討は当業者公知である。
許容できる投与経路は、これらに限定されないが、エアロゾル、経腸、経鼻、眼、経口、非経口、直腸、経膣、又は経皮(例えばクリーム、ゲル又は軟膏の局所投与、又は経皮パッチ手段による)などの当業界において公知のあらゆる投与経路を指す場合がある。「非経口投与」は、典型的には、作用が意図される部位での注射又はそのような部位と連通する注射に関連し、眼窩下、点滴、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹膜内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、クモ膜下、被膜下、皮下、経粘膜、又は経気管投与などが挙げられる。
本発明の医薬組成物の投与のために、投薬量範囲は、一般的には、宿主の体重に対して、約0.0001〜100ミリグラム/キログラム(mg/kg)、より通常は0.01〜5mg/kgであると予想される。例示的な投薬量は、体重1kg当たり0.25mg、体重1kg当たり1mg、体重1kg当たり3mg、体重1kg当たり5mg若しくは体重1kg当たり10mg、又は1〜10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療計画は、1日1回若しくは2回の投与、又は週1回若しくは2回の投与、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、月1回、2若しくは3ヶ月毎に1回、又は3〜6ヶ月毎に1回である。投薬量は、特定の患者ごとに治療的有用性を最大化するために必要に応じて、熟練した健康管理の専門家によって選択及び再調整が可能である。
本発明の医薬組成物は、典型的には、同じ患者に複数の機会で投与されると予想される。1回の投薬間の間隔は、例えば2〜5日、1週間、1ヶ月、2若しくは3ヶ月、6ヶ月、又は1年であり得る。また投与間の間隔は、対象又は患者における血中濃度又は他のマーカーの調節に基づいて不規則であってもよい。本発明の化合物のための投薬レジメンは、体重1kg当たり1mg又は体重1kg当たり3mgの静脈内投与を包含し、ここで本化合物は、2〜4週間毎に6回の投薬、次いで3ヶ月毎に体重1kg当たり3mg又は体重1kg当たり1mgで投与される。
本発明の医薬組成物は、当業界において公知の様々な方法の1又は2以上を使用する1又は2以上の投与経路を介して投与してもよい。熟練した作業者は認識しているものと予想されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて様々であると予想される。本発明のタンパク質又はそれらの組成物のための投与経路としては、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、腹膜内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路、例えば注射又は点滴による投与経路が挙げられる。他の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物は、非経口経路、例えば、局所、表皮又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、口腔、経膣、直腸、舌下、若しくは局所での投与経路などによって投与され得る。
本発明のタンパク質又は医薬組成物は、当業界において公知の様々な医療用デバイスの1又は2以上を用いて投与されてもよい。例えば、一実施形態において、本発明の医薬組成物は、無針皮下注射デバイスを用いて投与されてもよい。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は、当業界において、例えば、制御された速度で送達するための埋め込み型マイクロ点滴ポンプ;経皮投与するためのデバイス;正確な点滴速度で送達するための点滴ポンプ;連続的に薬物送達するための流量可変の埋め込み型点滴デバイス;及び浸透性薬物の送達系などが挙げられる。これらの及び他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールは、当業者公知である。
本発明のタンパク質又は医薬組成物は、単独で、又は1又は2以上の他の治療剤又は診断剤と組み合わせて投与されてもよい。組合せ療法は、治療しようとする特定の患者、疾患又は状態に基づき選択された少なくとも1つの他の治療剤と組み合わされた、本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物を包含していてもよい。他のこのような薬剤の例としては、とりわけ、細胞毒性の抗がん剤若しくは化学療法剤、抗炎症剤若しくは増殖抑制剤、抗微生物剤若しくは抗ウイルス剤、成長因子、サイトカイン、鎮痛薬、治療活性を有する小分子若しくはポリペプチド、単鎖抗体、古典的な抗体若しくはそれらのフラグメント、又は1又は2以上のシグナル伝達経路をモジュレートする核酸分子、及び治療的又は予防的処置レジメンを補足するか又は別の方法でそのようなレジメンにおいて有益な可能性がある類似のモジュレートする治療剤が挙げられる。
本発明のタンパク質又は医薬組成物を用いた患者の治療は、好ましくは、標的化された細胞の細胞死及び/又は標的化された細胞の増殖の阻害をもたらす。そのようなものとして、本発明のタンパク質、及びそれらを含む医薬組成物は、標的細胞の殺滅又は除去が有益であり得る様々な病理学的障害、例えば、とりわけ、がん、腫瘍、他の増殖異常、免疫障害、及び感染細胞を治療するための方法において有用であると予想される。本発明は、細胞増殖を抑制し、新形成、過剰に活性なB細胞、及び過剰に活性なT細胞などの細胞の障害を治療するための方法を提供する。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質及び医薬組成物は、がん、腫瘍(悪性及び良性)、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染を治療又は予防するのに使用することができる。さらなる態様において、上記のエクスビボの方法を上記のインビボの方法と組み合わせて、骨髄移植のレシピエントにおける拒絶を治療又は予防する方法、及び免疫寛容を達成するための方法を提供することができる。
特定の実施形態において、本発明は、ヒトなどの哺乳動物の対象において悪性腫瘍又は新生物及び他の血液細胞に関連するがんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に本発明のタンパク質又は医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
本発明のタンパク質及び医薬組成物は、例えば、不要なB細胞及び/又はT細胞を除去することにおける使用、免疫応答をモジュレートして移植片対宿主病を治療することにおける使用、抗ウイルス剤としての使用、抗菌剤としての使用、及び移植組織から不要な細胞型を取り除くことにおける使用などの様々な適用を有する。本発明のタンパク質及び医薬組成物は、一般的に抗新生物剤であり、すなわちそれらは、がん又は腫瘍細胞の増殖を阻害すること及び/又はそれらの死を引き起こすことによって、新生物又は悪性細胞の発生、成熟、又は蔓延の治療及び/又は予防が可能であることを意味する。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質又は医薬組成物は、B細胞、形質細胞、T細胞、又は抗体が媒介する疾患又は障害、例えば白血病、リンパ腫、骨髄腫、ヒト免疫不全ウイルス関連の疾患、アミロイド症、溶血尿毒症症候群、結節性多発性動脈炎、多発性関節炎、敗血症性ショック、クローン病、リウマチ様関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、喘息、シェーグレン症候群、移植片対宿主病、移植片拒絶反応、糖尿病、血管炎、強皮症、及び全身性エリテマトーデスなどを治療するのに使用される。
別の態様において、本発明のタンパク質及び医薬組成物の特定の実施形態は、抗菌剤であり、すなわちそれらは、例えばウイルス、細菌、菌類、プリオン、又は原生動物によって引き起こされる微生物学的な病原性感染の獲得、発達、又は結果の治療及び/又は予防が可能であることを意味する。
B細胞及び/又はT細胞が媒介する疾患又は状態の予防又は治療、患者におけるB細胞及び/又はT細胞を殺滅することを目的として本発明のタンパク質又はそれらの医薬組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む予防又は治療を提供することは、本発明の範囲内である。この使用法は、移植される材料の源、例えばヒト又はヒト以外の源であるかどうかに関係なく、骨髄移植、幹細胞移植、組織移植、又は臓器移植のために患者を準備又は調整することに適合する。
本発明のタンパク質又は医薬組成物を使用して宿主B細胞、NK細胞、及び/又はT細胞の標的化された細胞を殺滅することによって宿主対移植片病の予防又は治療のために骨髄のレシピエントを提供することは、本発明の範囲内である(例えばSarantopoulos S et al., Biol Blood Marrow Transplant 21: 16-23 (2015)を参照)。
本発明のタンパク質及び医薬組成物は、本発明のタンパク質又は医薬組成物の治療有効量をそれを必要とする患者に投与することを含むがんの治療方法に利用することができる。本発明の方法の特定の実施形態において、治療されるがんは、骨がん(例えば多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系のがん(例えば脳がん、神経線維腫症、又は膠芽腫)、消化器がん(例えば胃がん又は結腸直腸がん)、生殖細胞がん(例えば卵巣がん及び睾丸がん)、腺がん(例えば膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば鼻咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓から尿道のがん(例えば腎臓がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌、又は黒色腫)、及び子宮がんからなる群より選択される。
本発明のタンパク質及び医薬組成物は、本発明のタンパク質又は医薬組成物の治療有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む免疫障害の治療方法に利用することができる。本発明の方法の特定の実施形態において、免疫障害は、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、結節性多発性動脈炎、多発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群より選択される疾患に関連する炎症に関する。
本発明の特定の実施形態は、がん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染を治療又は予防するための医薬組成物又は医薬品の成分として、本発明のタンパク質を使用することである。例えば、患者の皮膚上に現れる免疫障害は、炎症を低下させようとする努力において、このような医薬品で治療され得る。別の例において、皮膚の腫瘍は、腫瘍サイズを低下させるか又は腫瘍を完全になくそうとする努力において、このような医薬品で治療され得る。
本発明の特定のタンパク質は、免疫破壊(immunolesioning)及びニューロンのトレースなどの分子神経外科適用で使用することができる(総論については、Wiley R, Lappi D, Adv Drug Deliv Rev 55: 1043-54 (2003)を参照)。例えば、標的化ドメインは、様々なリガンド、例えば神経回路に特異的なGタンパク質共役受容体などのニューロン表面の受容体と結合することによって特異的な神経細胞型を標的化する神経伝達物質及び神経ペプチドから選択又は誘導されてもよい。同様に、標的化ドメインは、ニューロン表面の受容体と結合する抗体から選択又は誘導されてもよい。志賀毒素がそれら自身の逆行性軸索輸送をロバストに指示することから、本発明の特定の細胞毒性タンパク質を使用して、細胞体から遠位の細胞毒性タンパク質注射部位で細胞外標的を発現するニューロンを殺滅することができる(Llewellyn-Smith I et al., J Neurosci Methods 103: 83-90 (2000)を参照)。これらの神経細胞型特異的な標的化細胞毒性タンパク質は、例えば感覚のメカニズムを解明するための神経科学の調査(例えばMishra S, Hoon M, Science 340: 968-71 (2013)を参照)、及びパーキンソン及びアルツハイマーなどの神経変性疾患のモデル系を作製すること(例えばHamlin A et al., PLoS One e53472 (2013)を参照)において用途を有する。
本発明の特定の実施形態は、疾患、状態及び/又は障害に関する情報収集の目的で細胞型の存在を検出するために、本発明のタンパク質、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法である。本方法は、細胞を診断に十分な量の本発明のタンパク質と接触させて、アッセイ又は診断技術によってタンパク質を検出するステップを含む。用語「診断に十分な量」は、利用される特定のアッセイ又は診断技術によって情報収集目的で十分な検出及び正確な測定がもたらされる量を指す。一般的に、インビボでの診断での使用における生物全体にとって診断に十分な量は、対象1kg当たり0.1mg〜100mgの非累積用量の、検出促進剤が連結されたタンパク質と予想される。典型的には、これらの情報収集方法で使用される本発明のタンパク質の量は、なお診断に十分な量であるという条件で、可能な限り低いと予想される。例えば、生物におけるインビボでの検出の場合、対象に投与される本発明のタンパク質の量は、実行可能なレベルで可能な限り低いと予想される。
検出促進剤と組み合わされた本発明のタンパク質の細胞型特異的な標的化は、本発明のタンパク質の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に組み合わされた細胞を検出及びイメージングする方法を提供する。本発明のタンパク質を使用する細胞のイメージングは、当業界において公知のあらゆる好適な技術によってインビトロ又はインビボで行ってもよい。例えば、情報を収集する目的で細胞型の存在を検出するために本発明のタンパク質、医薬組成物、又は診断用組成物を使用する方法は、インサイチュにおける細胞を含むインビボにおける患者中の細胞で、例えば疾患の遺伝子座で、インビトロにおける細胞で、並びに/又は生体から取り出された細胞及び組織、例えば生検材料におけるエクスビボの状態で行ってもよい。診断の情報は、生物の全身イメージングなどの当業界において公知の様々な方法を使用して、又は生物から採取したエクスビボのサンプルを使用して収集してもよい。
本明細書において使用される用語「サンプル」は、これらに限定されないが、流体、例えば血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門の分泌物、膣の分泌物、及び精液、並びに生検手順により得られた組織などのあらゆるものを指す。例えば、様々な検出促進剤は、磁気共鳴映像法(MRI)、光学的方法(例えば直接の、蛍光による、及び生物発光によるイメージング)、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)、単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、超音波、X線コンピューター断層撮影、及び上述のものの組合せなどの技術による、非侵襲的なインビボでの腫瘍イメージングために利用することができる(総論については、Kaur S et al., Cancer Lett 315: 97-111 (2012)を参照)。
情報を収集する目的で標的生体分子陽性細胞型の存在を検出するために本発明のタンパク質、医薬組成物、又は診断用組成物を使用する方法は、インサイチュにおける細胞を含むインビボにおける患者中の細胞で、例えば疾患の遺伝子座で、インビトロにおける細胞で、並びに/又は生体から取り出された細胞及び組織、例えば生検材料におけるエクスビボの状態で行ってもよい。本発明の組成物を使用した特異的な細胞、細胞型、及び細胞集団の検出は、細胞、例えば腫瘍、がん、免疫及び感染細胞などの診断及びイメージングに使用することができる。例えば、本発明のタンパク質及び診断用組成物は、生体中の標的生体分子を発現する細胞が蓄積されている可能性のある部位をイメージング又は可視化するために採用することができる。これらの方法は、腫瘍発生部位又は治療的介入後に残留した腫瘍細胞を同定するのに使用することができる。
細胞型の存在を検出するのに使用される方法の特定の実施形態は、例えば骨がん(例えば多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系のがん(例えば脳がん、神経線維腫症、又は膠芽腫)、消化器がん(例えば胃がん又は結腸直腸がん)、生殖細胞がん(例えば卵巣がん及び睾丸がん)、腺がん(例えば膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば鼻咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓から尿道のがん(例えば腎臓がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば基底細胞癌、扁平上皮癌、又は黒色腫)、子宮がん、AIDS、アミロイド症、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血尿毒症症候群、HIV関連の疾患、紅斑性狼瘡、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、結節性多発性動脈炎、多発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、リウマチ様関節炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、血管炎、細胞増殖、炎症、白血球活性化、白血球接着、白血球走化性、白血球成熟、白血球遊走、ニューロンの分化、急性リンパ芽球性白血病(ALL,acute lymphoblastic leukemia)、T急性リンパ性白血病/リンパ腫(ALL)、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML,acute myeloid leukemia)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL,B-cell chronic lymphocytic leukemia)、B細胞前リンパ球性リンパ腫、バーキットリンパ腫(BL,Burkitt's lymphoma)、慢性リンパ球性白血病(CLL,chronic lymphocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML−BP,chronic myelogenous leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML,chronic myeloid leukemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病(HCL,hairy cell leukemia)、ホジキンリンパ腫(HL,Hodgkin's Lymphoma)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM,multiple myeloma)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL,Non-Hodgkin's lymphoma)、プラズマ細胞性白血病、形質細胞腫、原発性滲出液リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL,T-cell lymphoma)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈着症、骨髄異形成症候群(MDS,myelodusplastic syndrome)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症などの疾患、障害、及び状態に関する情報を収集するのに使用することができる。
特定の本発明の実施形態のなかでも、新生細胞及び/又は免疫細胞型の内部を標識又は検出するためのタンパク質、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法が挙げられる(例えば、Koyama Y et al., Clin Cancer Res 13: 2936-45 (2007)、Ogawa M et al., Cancer Res 69: 1268-72 (2009)、Yang L et al., Small 5: 235-43 (2009)を参照)。本発明のタンパク質及び医薬組成物の、逆行性細胞内輸送を介して細胞内の特異的な細胞型及び経路に侵入する能力に基づいて、特異的な細胞型の内部区画が、検出のために標識される。これは、患者内のインサイチュの細胞に、又は生物から取り出された細胞及び組織、例えば生検材料に行うことができる。
本発明の診断用組成物は、疾患、障害、又は状態を本発明の関連医薬組成物によって潜在的に治療可能であると特徴付けるのに使用することができる。本発明の特定の物質の組成物は、患者が、本明細書で説明されるような本発明の化合物、組成物又は関連方法を利用する治療方策に応答するグループに属するのかどうか、又は本発明の送達デバイスの使用に十分な適正があるのかどうかを決定するのに使用することができる。
本発明の診断用組成物は、疾患、例えばがんが検出された後、その疾患をより十分に特徴付けるために、例えば遠隔転移、不均質性、及びがん進行のステージをモニターするために使用することができる。疾患、障害又は感染の表現型の評価は、治療の決定をする間の予想及び予測を助けることができる。疾患の再発において、本発明の特定の方法は、局所的な問題か又は全身性の問題かを識別するのに使用することができる。
本発明の診断用組成物は、治療剤のタイプ、例えば小分子薬物、生物学的薬物、又は細胞ベースの療法に関係なく、治療剤に対する応答を評価するのに使用することができる。例えば、本発明の診断の特定の実施形態は、腫瘍サイズの変化、数及び分布などの抗原陽性細胞集団の変化を測定すること、並びに/又はすでに患者に施された療法によって標的化された抗原とは異なるマーカーをモニターすることに使用することができる(例えば、Smith-Jones P et al., Nat Biotechnol 22: 701-6 (2004)、Evans M et al., Proc Natl Acad Sci USA 108: 9578-82 (2011)を参照)。
特定の実施形態において、本発明のタンパク質又はそれらの医薬及び/又は診断用組成物は、診断と治療の両方、又は診断単独に使用される。
志賀毒素ファミリーメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域と、特異的な細胞型と物理的に組み合わされた細胞外標的生体分子と結合することが可能な結合領域とを含む、選択的に細胞毒性のタンパク質の以下の非限定的な例によって、本発明をさらに例示する。
[実施例]
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を証明する。しかしながら、これらの実施例は例示目的のためのものに過ぎず、本発明の条件及び範囲に関して全体的に明確であると意図されるものではなく、解釈されるべきでもないと理解される。実施例は、そうでなければ詳細に説明される場合を除いて、当業者には周知であり、日常的である標準的な技術を用いて実行された。
以下の細胞毒性タンパク質の実施例は、免疫グロブリン型結合領域の細胞外標的生体分子と物理的に結合している細胞を選択的に殺滅する例示的な細胞毒性タンパク質は、シグナルモチーフを欠失したそれらの原型のバリアントと比較して能力が増強されていることを実証する。例示的な細胞毒性タンパク質は、標的化された細胞型によって発現された標的生体分子に結合し、標的化された細胞に侵入した。内在化した細胞毒性タンパク質は、それらの志賀毒素エフェクター領域をサイトゾルに効果的に経路決定してリボソームを不活性化し、その後、標的化された細胞のアポトーシスによる死をもたらした。
第1に、複数の志賀毒素ベースの融合タンパク質へのKDELファミリーのシグナルモチーフの付加は、それらの細胞毒性を低下させることを観察した。これは、KDELファミリーのシグナルモチーフの存在から利益を得る志賀毒素コンストラクトのいかなる例も記載していない科学文献と一致する。次いで、意外なことに、KDELファミリーのシグナルモチーフの付加は、特定のコンストラクトの志賀毒素ベースの細胞毒性を増強することができることが発見された。驚くべきことに、KDEL含有及びKDEL非含有バリアントはどちらも、類似したインビトロにおける酵素活性、類似した細胞結合の特徴、及び類似した細胞内在化を示したが、本発明の細胞毒性タンパク質のKDEL含有バリアントは、増強された細胞毒性を示した。これらの結果は、以前の発見とは矛盾していた(例えばJackson M et al., J Cell Sci 112: 467-75 (1999)を参照)。
本発明の1つの例示的な細胞毒性タンパク質は、HER2と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。この例示的な細胞毒性タンパク質は、表面上にHER2を発現する細胞を選択的に殺滅することが可能である。本発明の第2の例示的な細胞毒性タンパク質は、CD38と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。この第2の例示的な細胞毒性タンパク質は、表面上にCD38を発現する細胞を選択的に殺滅することが可能である。本発明の第3の例示的な細胞毒性タンパク質は、CD19と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。この第3の例示的な細胞毒性タンパク質は、表面上にCD19を発現する細胞を選択的に殺滅することが可能である。本発明の第4の例示的な細胞毒性タンパク質は、CD74と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。この第4の例示的な細胞毒性タンパク質は、表面上にCD74を発現する細胞を選択的に殺滅することが可能である。他の例示的な細胞毒性タンパク質としては、エプスタイン・バーウイルス抗原、リーシュマニア抗原、ニューロテンシン受容体、上皮成長因子受容体、免疫細胞受容体CCR5、並びにウイルスタンパク質標的のEnv及びUL18を標的化する結合領域を有するものが挙げられる。
小胞体シグナルモチーフを有する志賀毒素様毒素1のAサブユニットに由来するHER2標的化細胞毒性タンパク質(αHER2scFv::SLT−1A::KDEL)
この実施例の細胞毒性タンパク質であるαHER2scFv::SLT−1A::KDELは、HER2と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。
細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
第1に、志賀毒素エフェクター領域及び結合領域を設計又は選択した。この実施例において、志賀毒素エフェクター領域を、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来した。SLT−1Aのアミノ酸1〜251をコードしたポリヌクレオチドを得た(Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010))。一本鎖可変断片(scFv)が当業界において公知のリンカーによって分離された2つの免疫グロブリン可変領域(VL及びVH)を用いて作製されるように、免疫グロブリン型結合領域αHER2scFvを、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)として販売、Genentech, Inc.社、South San Francisco、CA、U.S.)及び4D5モノクローナル抗体(Zhao et al., J Immunol 183: 5563-74 (2009))に由来した。
第2に、結合領域及び志賀毒素エフェクター領域を一緒に連結して、融合タンパク質を形成した。この実施例において、配列番号4のアミノ酸1〜245を含む結合領域αHER2scFvをコードするポリヌクレオチドを、マウスIgG3分子に由来する「マウスヒンジ」(又は当業者公知の他のリンカー)をコードするポリヌクレオチドと共にフレーム内に、さらに配列番号1のアミノ酸1〜251を含む志賀毒素エフェクター領域SLT−1Aをコードするポリヌクレオチドと共にフレーム内にクローニングした。特定の実験において、この実施例の細胞毒性タンパク質の全長コード配列をStrep-tag(登録商標)をコードするポリヌクレオチドから開始させて、検出及び精製を容易にした。DNA 2.0, Inc.社(Menlo Park、CA、U.S.)によるサービスを使用して、この実施例の細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列のコドンを大腸菌での効率的な発現のために最適化した。
第3に、細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1A::KDEL(配列番号4)をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって融合タンパク質を産生した。細菌による及び無細胞のタンパク質翻訳系の両方を使用して、αHER2scFv::SLT−1A::KDEL細胞毒性タンパク質の発現を達成した。
この大腸菌発現系によるαHER2scFv::SLT−1A::KDEL産生の実施例において、αHER2scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド「挿入」配列を、標準的手順を使用してpTxb1ベクター(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)にクローニングし、フレーム内でベクターのアミノ末端インテインをコードするポリヌクレオチド配列にライゲートされた細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列を産生した。プラスミド挿入ポリヌクレオチド配列をサンガーシーケンシング(Functional Biosciences社、Madison、WI、U.S.)によって検証し、T7 Shuffle(登録商標)細胞(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に形質転換した。αHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を、IMPACT(商標)(Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag)のシステムマニュアル(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に従って産生し、精製した。当業界において公知の標準的な技術を使用して、例えばStrep-tag(登録商標)の固定した標的又は結合領域を使用して精製を達成した。
この無細胞のタンパク質翻訳系によるαHER2scFv::SLT−1A::KDEL産生の実施例において、αHER2scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド「挿入」配列を、In-Fusion(登録商標)HDクローニングキット(Clonetech社、Mountain View、CA、U.S.)を製造元の説明書に従って使用してコード領域の直後に終止コドンを有するpIVEX2.3ベクターにクローニングした。プラスミド挿入ポリヌクレオチド配列をサンガーシーケンシング(Functional Biosciences社、Madison、WI、U.S.)によって検証した。迅速翻訳システムの5 Prime(商標)RTS100大腸菌ジスルフィドキット(5 Prime社、Gaithersburg、MD、U.S.)を製造元の説明書に従って使用して、αHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を産生した。当業界において公知の標準的な技術を使用して、例えばStrep-tag(登録商標)の固定した標的又は結合領域を使用して精製を達成した。
αHER2scFv::SLT−1A::KDEL結合標的細胞型の最大特異的結合(Bmax)及び平衡結合定数(KD)の決定
上述したようにして産生されたαHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質の結合の特徴を、蛍光ベースのフローサイトメトリーアッセイによって決定した。HER2陽性(+)細胞及びHER2陰性(−)細胞を含有する試料を、以降「1×PBS+1%BSA」と称される1パーセントのウシ血清アルブミン(BSA)(Calbiochem社、San Diego、CA、U.S.)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)(Hyclone Brand社、Fisher Scientific、Waltham、MA、U.S.)に懸濁し、アッセイされるαHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質の100μLの様々な希釈液と共に4セルシウス度(℃)で1時間インキュベートした。結合反応の飽和を引き起こすために最も高い濃度のαHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を選択した。1時間インキュベートした後、細胞試料を1×PBS+1%BSAで2回洗浄した。細胞試料を、0.3μgのanti-Strep-tag(登録商標)mAb−FITC(番号A01736−100、Genscript社、Piscataway、NJ、U.S.)を含有する100μLの1×PBS+1%BSAと共に4℃で1時間インキュベートした。
次に細胞試料を1×PBS+1%BSAで2回洗浄し、200μLの1×PBSに再懸濁し、蛍光ベースのフローサイトメトリーに供した。全ての試料に関する平均蛍光強度(MFI)データを、陰性対照としてFITCのみの試料を使用してデータをゲーティングすることによって得た。Prismソフトウェア(GraphPad Software社、San Diego、CA、U.S.)を使用してMFI対「細胞濃度」のグラフをプロットした。Prismソフトウェアの1部位結合の関数[Y=Bmax×X/(KD+X)]を結合−飽和という項目で使用して、Bmax及びKDをベースラインで補正したデータを使用して計算した。Ab値をPBSのみを含有するウェルで測定されたAb値を引くことによってバックグラウンドで補正した。Bmaxは、MFIで報告される最大特異的結合である。KDは、ナノモル(nM)で報告される平衡結合定数である。
HER2+細胞に結合するαHER2scFv::SLT−1A::KDELに関するBmaxを測定したところ、約110,000MFIであり、KDは約160nMであった(表1)。この結果は、約140,000MFIと測定されKDが約180nMのHER2+細胞に結合するKDELシグナルモチーフを有さないαHER2scFv::SLT−1Aタンパク質に関するBmaxに比較的類似していた(表1)。このアッセイにおいて、HER2陰性細胞に結合する測定可能なタンパク質は観察されなかった。これは、KDELバリアントの増強された細胞毒性は、免疫グロブリンに由来するドメインの標的細胞の結合特性における変化に関連しない可能性があることを示す。
インビトロにおける真核性リボソームに対するαHER2scFv::SLT−1A::KDELの半数阻害濃度(IC50)の決定
αHER2scFv::SLT−1A::KDELのリボソームの不活性化能力は、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translationキット(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いた無細胞の、インビトロでのタンパク質翻訳アッセイで決定した。このキットには、Luciferase T7 Control DNA及びTNT(登録商標)Quick Master Mixが含まれる。製造元の説明書に従ってリボソーム活性反応の準備をして、「TNT」反応混合物を作製した。
試験されるαHER2scFv::SLT−1A::KDELの一連の10倍希釈液を適切な緩衝液で調製し、一連の同一なTNT反応混合物の成分を、αHER2scFv::SLT−1A::KDELの各希釈液で作製した。αHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を連続希釈した各試料を、ルシフェラーゼT7対照DNAと共にTNT反応混合物のそれぞれと組み合わせた。被験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、Luciferase Assay試薬(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての被験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質翻訳量を製造業者の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、相対発光単位に対する総タンパク質の対数変換された濃度の非線形回帰分析により決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を用いて、最大半量阻害濃度(IC50)値を各試料について計算した。次いで、対数(阻害剤)対応答(3つのパラメーター)のPrismソフトウェアの関数[Y=下限+((上限−下限)/(1+10∧(X−LogIC50)))]を用量応答−阻害という項目で使用して「SLT−1Aのみの対照タンパク質のパーセント」を計算することによってデータを正規化した。実験タンパク質及びSLT−1Aのみの対照タンパク質に関するIC50を計算した。SLT−1Aのみの対照タンパク質のパーセントを、[(SLT−1A対照タンパク質のIC50/実験タンパク質のIC50)×100]によって計算した。
αHER2scFv::SLT−1A::KDELの無細胞タンパク質合成に対する阻害作用は強かった。用量依存性実験から、この細胞非含有アッセイにおけるαHER2scFv::SLT−1A::KDELのタンパク質合成に対するIC50は、約70ピコモル濃度(pM)又はSLT−1Aのみの陽性対照の6%以内であった(表2)ことが決定された。この結果は、SLT−1Aのみの陽性対照の8%以内と測定されたKDELシグナルモチーフを有さないαHER2scFv::SLT−1Aタンパク質に関するIC50と実質的に異なっていなかった(表2)。これは、KDELバリアントの増強された細胞毒性は、志賀毒素Aサブユニットの酵素活性における変化に関連しない可能性があることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用したαHER2scFv::SLT−1A::KDELの選択的な細胞毒性及び半数細胞毒性濃度(CD50)の決定
αHER2scFv::SLT−1A::KDELの細胞毒性の特徴を、以下の細胞殺滅アッセイによって決定した。このアッセイは、標的生体分子を発現しない細胞と比較した、細胞毒性タンパク質の結合領域の標的生体分子を発現する細胞を殺滅する細胞毒性タンパク質の能力を決定する。384−ウェルプレート中の20μLの細胞培養培地で細胞を平板培養した(細胞2×103個/ウェル)。αHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を1×PBSで5倍又は10倍のいずれかに希釈し、5μLの希釈液を細胞に添加した。細胞培養培地のみを含有する対照ウェルをベースラインの補正のために使用した。細胞試料をαHER2scFv::SLT−1A::KDEL又は緩衝液のみと共に37℃で3日間、5%二酸化炭素(CO2)の雰囲気中でインキュベートした。総細胞生存又は生存率を、製造業者の説明書に従って、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いる発光読み出しを用いて決定した。実験ウェルの生存率を、以下の式:(試験RLU−平均培地RLU)/(平均細胞RLU−平均培地RLU)*100を用いて計算した。対数のポリペプチド濃度対生存率パーセントを、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)でプロットし、対数(阻害剤)対正規化した応答(変数の傾き)分析を使用して、αHER2scFv::SLT−1A::KDELに関する半数細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。
用量依存性実験から、αHER2scFv::SLT−1A::KDELタンパク質のCD50を測定したところ、HER2+細胞の場合、約0.001〜0.13nMであり、それと比較して、HER2−細胞の場合、細胞株に応じて14〜37nMであったことが決定された(表3;図2)。αHER2scFv::SLT−1A::KDELのCD50は、細胞外標的生体分子HER2と物理的に結合している細胞、例えばそれらの細胞表面上で発現されたHER2と比較して、細胞外標的生体分子HER2と物理的に結合していない細胞の場合の100倍超高かった(表3;図2)。
カルボキシ末端KDELシグナルモチーフを有さないαHER2scFv::SLT−1AバリアントのCD50を測定したところ、HER2+細胞の場合、約1.3〜2.1nMであった(表3;図2)。したがって、KDELシグナルモチーフの付加は、HER2+細胞に対するCD50を10〜20分の1に低下させた。加えて、αHER2scFv::SLT−1A::KDELは、最も高い試験濃度で細胞生存率が減少したことからわかるように、αHER2scFv::SLT−1Aより多くの総数の細胞を殺滅した(図2)。これらの結果は、細胞毒性及び選択的な細胞毒性の両方に対するKDELシグナルモチーフ付加の作用を例示する。これらの細胞毒性タンパク質の細胞殺滅における差は、タンパク質合成阻害又は標的細胞結合の特徴のどちらに関しても、インビトロでの結果に基づき予測できなかった。
免疫蛍光法を使用したKDELシグナルモチーフ含有及び非含有αHER2scFv::SLT−1Aの細胞内在化の決定
細胞毒性タンパク質の標的細胞に侵入する能力を当業界において公知の標準的な免疫細胞化学法を使用して調査した。簡単に言えば、各細胞型(SKBR3(HER2+)及びMDA−MB−231(HER2−))の0.8×106個の細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤のカクテル(例えばP1860 Sigma-Aldrich Co.社、St. Louis、MO、U.S.)及び非特異的な免疫蛍光染色を低下させるためにヒトFc受容体タンパク質を含有する50μLの細胞培養培地に懸濁した。次に、100nMの分析される細胞毒性タンパク質を細胞に添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートし、毒素侵入化を進行させた。次いで、Cytofix/Cytoperm(商標)キット(BD Biosciences社、San Diego、CA、U.S.)を製造元の説明書に従って使用して細胞を「固定」及び「膜透過化」した。マウスモノクローナル抗体(マウスIgG抗志賀毒素1サブユニットA、BEI NR-867 BEI Resources社、Manassas、VA、U.S.)を使用して志賀毒素エフェクター領域を「染色」した。次いでマウスモノクローナル抗体の局在化を、Alexa Fluor(登録商標)555モノクローナル抗体標識キット(Life Technologies社、Carlsbad、CA、U.S.)で製造元の説明書に従って検出した。
このアッセイにおいて、HER2+細胞でαHER2scFv::SLT−1A::KDEL及びKDELシグナルモチーフを有さないバリアントαHER2scFv::SLT−1Aの両方の細胞内在化が観察された(図3)。どちらのタンパク質でもHER2−細胞への細胞内在化は観察されなかった。これは、KDELバリアントと原型のバリアントとの細胞毒性における差を示しており(表3;図2)、これら2つのバリアントは、標的細胞の結合及び/又は細胞の侵入におけるいかなる有意な変化にも関連しない可能性がある。
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1Aのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、HER2+新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1Aのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にHER2を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
カルボキシ末端小胞体シグナルモチーフを有する志賀毒素様毒素1のAサブユニットに由来するCD38標的化細胞毒性タンパク質(αCD38scFv::SLT−1A::KDEL)
この実施例の細胞毒性タンパク質であるαCD38scFv::SLT−1A::KDELは、CD38と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。
細胞毒性タンパク質αCD38scFv::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域を、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来した。SLT−1Aのアミノ酸1〜251をコードしたポリヌクレオチドを得た(Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010))。一本鎖可変断片(scFv)が当業界において公知のリンカーによって分離された2つの免疫グロブリン可変領域(VL及びVH)を用いて作製されるように、免疫グロブリン型結合領域αCD38scFvを、モノクローナル抗体の抗CD38HB7に由来した(Peng et al., Blood 101: 2557-62 (2003)、GenBank Accession BD376144、National Center for Biotechnology Information、U.S.も参照)
この実施例において、結合領域及び志賀毒素エフェクター領域を一緒に連結して、融合タンパク質を形成した。この実施例において、配列番号8のアミノ酸1〜241を含む結合領域αCD38scFvをコードするポリヌクレオチドを、マウスIgG3分子に由来する「マウスヒンジ」(又は当業者公知の他のリンカー)をコードするポリヌクレオチドと共にフレーム内に、さらに配列番号1のアミノ酸1〜251を含む志賀毒素エフェクター領域SLT−1Aをコードするポリヌクレオチドと共にフレーム内にクローニングした。特定の実験において、この実施例の細胞毒性タンパク質の全長コード配列をStrep-tag(登録商標)をコードするポリヌクレオチドから開始させて、検出及び精製を容易にした。DNA 2.0, Inc.社(Menlo Park、CA、U.S.)によるサービスを使用して、この実施例の細胞毒性タンパク質αCD38scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列のコドンを大腸菌での効率的な発現のために最適化した。
細胞毒性タンパク質αCD38scFv::SLT−1A::KDEL(配列番号8)をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって融合タンパク質を産生した。細菌による及び無細胞のタンパク質翻訳系の両方を使用して、αCD38scFv::SLT−1A::KDEL細胞毒性タンパク質の発現を達成した。
この大腸菌発現系によるαCD38scFv::SLT−1A::KDEL産生の実施例において、αCD38scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド「挿入」配列を、標準的手順を使用してpTxb1ベクター(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)にクローニングし、フレーム内でベクターのアミノ末端インテインをコードするポリヌクレオチド配列にライゲートされた細胞毒性タンパク質αCD38scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列を産生した。プラスミド挿入ポリヌクレオチド配列をサンガーシーケンシング(Functional Biosciences社、Madison、WI、U.S.)によって検証し、T7 Shuffle(登録商標)細胞(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に形質転換した。αCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を、IMPACT(商標)(Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag)のシステムマニュアル(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に従って産生し、精製した。当業界において公知の標準的な技術を使用して、例えばStrep-tag(登録商標)の固定した標的又は結合領域を使用して精製を達成した。
この無細胞のタンパク質翻訳系によるαCD38scFv::SLT−1A::KDEL産生の実施例において、αCD38scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド「挿入」配列を、In-Fusion(登録商標)HDクローニングキット(Clonetech社、Mountain View、CA、U.S.)を製造元の説明書に従って使用してコード領域の直後に終止コドンを有するpIVEX2.3ベクターにクローニングした。プラスミド挿入ポリヌクレオチド配列をサンガーシーケンシング(Functional Biosciences社、Madison、WI、U.S.)によって検証した。迅速翻訳システムの5 Prime(商標)RTS100大腸菌ジスルフィドキット(5 Prime社、Gaithersburg、MD、U.S.)を製造元の説明書に従って使用して、αCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を産生した。当業界において公知の標準的な技術を使用して、例えばStrep-tag(登録商標)の固定した標的又は結合領域を使用して精製を達成した。
αCD38scFv::SLT−1A::KDEL結合標的細胞型の最大特異的結合(Bmax)及び平衡結合定数(KD)の決定
上述したようにして産生されたαCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質の結合の特徴を、蛍光ベースのフローサイトメトリーアッセイによって決定した。CD38陽性(+)細胞及びCD38陰性(−)細胞を含有する試料を、1×PBS+1%BSAに懸濁し、アッセイされるαCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質の100μLの様々な希釈液と共に4℃で1時間インキュベートした。結合反応の飽和を引き起こすために最も高い濃度のαCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を選択した。1時間インキュベートした後、細胞試料を1×PBS+1%BSAで2回洗浄した。細胞試料を、0.3μgのanti-Strep-tag(登録商標)mAb−FITC(番号A01736−100、Genscript社、Piscataway、NJ、U.S.)を含有する100μLの1×PBS+1%BSAと共に4℃で1時間インキュベートした。
次に細胞試料を1×PBS+1%BSAで2回洗浄し、200μLの1×PBSに再懸濁し、蛍光ベースのフローサイトメトリーに供した。全ての試料に関する平均蛍光強度(MFI)データを、陰性対照としてFITCのみの試料を使用してデータをゲーティングすることによって得た。Prismソフトウェア(GraphPad Software社、San Diego、CA、U.S.)を使用してMFI対「細胞濃度」のグラフをプロットした。Prismソフトウェアの1部位結合の関数[Y=Bmax×X/(KD+X)]を結合−飽和という項目で使用して、Bmax及びKDをベースラインで補正したデータを使用して計算した。Ab値をPBSのみを含有するウェルで測定されたAb値を引くことによってバックグラウンドで補正した。Bmaxは、MFIで報告される最大特異的結合である。KDは、nMで報告される平衡結合定数である。
CD38+細胞に結合するαCD38scFv::SLT−1A::KDELに関するBmaxを測定したところ、約100,000MFIであり、KDは約13nMであった(表4)。この結果は、約110,000MFIと測定されKDが約17nMのCD38+細胞に結合するKDELシグナルモチーフを有さないαCD38scFv::SLT−1Aタンパク質に関するBmaxに類似していた(表4)。いずれのタンパク質もCD38−細胞に結合しなかった。これは、KDELバリアントの増強された細胞毒性は、免疫グロブリンに由来するドメインの標的細胞の結合特性における変化に関連しない可能性があることを示す。
インビトロにおける真核性リボソームに対するαCD38scFv::SLT−1A::KDELの半数阻害濃度(IC50)の決定
αCD38scFv::SLT−1A::KDELのリボソーム不活性化性能を、TNT(登録商標)クイックカップル転写/翻訳キット(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用して、インビトロにおける無細胞のタンパク質翻訳アッセイで決定した。このキットは、ルシフェラーゼT7対照DNA及びTNT(登録商標)クイックマスターミックスを包含する。製造元の説明書に従ってリボソーム活性反応の準備をして、「TNT」反応混合物を作製した。
試験されるαCD38scFv::SLT−1A::KDELの一連の10倍希釈液を適切な緩衝液で調製し、一連の同一なTNT反応混合物の成分を、αCD38scFv::SLT−1A::KDELの各希釈液で作製した。αCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を連続希釈した各試料を、ルシフェラーゼT7対照DNAと共にTNT反応混合物のそれぞれと組み合わせた。試験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベートした後、ルシフェラーゼアッセイ試薬(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての試験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質の翻訳量を、製造元の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、総タンパク質の対数変換濃度対相対的な発光単位の非線形回帰分析によって決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を使用して、各試料で半数阻害濃度(IC50)値を計算した。次いで、対数(阻害剤)対応答(3つのパラメーター)のPrismソフトウェアの関数[Y=下限+((上限−下限)/(1+10∧(X−LogIC50)))]を用量応答−阻害という項目で使用して「SLT−1Aのみの対照タンパク質のパーセント」を計算することによってデータを正規化した。実験タンパク質及びSLT−1Aのみの対照タンパク質に関するIC50を計算した。SLT−1Aのみの対照タンパク質のパーセントを、[(SLT−1A対照タンパク質のIC50/実験タンパク質のIC50)×100]によって計算した。
αCD38scFv::SLT−1A::KDELの無細胞タンパク質合成に対する阻害作用は強かった。用量依存性実験から、この細胞非含有アッセイにおけるαCD38scFv::SLT−1A::KDELのタンパク質合成に対するIC50は、約15pM又はSLT−1Aのみの陽性対照の99%であったことが決定された(表5)。この結果は、約15pMと測定されたか又はSLT−1Aのみの陽性対照の101%であるKDELシグナルモチーフを有さないαCD38scFv::SLT−1Aタンパク質に関するIC50に類似していた(表5)。これは、KDELを含むバリアントの増強された細胞毒性は、志賀毒素Aサブユニットの酵素活性における有意な変化に関連しない可能性を示した。
細胞殺滅アッセイを使用したαCD38scFv::SLT−1A::KDELの選択的な細胞毒性及び半数細胞毒性濃度(CD50)の決定
αCD38scFv::SLT−1A::KDELの細胞毒性の特徴を、以下の細胞殺滅アッセイによって決定した。このアッセイは、標的生体分子を発現しない細胞と比較した、細胞毒性タンパク質の結合領域の標的生体分子を発現する細胞を殺滅する細胞毒性タンパク質の能力を決定する。384−ウェルプレート中の20μLの細胞培養培地で細胞を平板培養した(細胞2×103個/ウェル)。αCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を1×PBSで5倍又は10倍のいずれかに希釈し、5μLの希釈液を細胞に添加した。細胞培養培地のみを含有する対照ウェルをベースラインの補正のために使用した。細胞試料をαCD38scFv::SLT−1A::KDEL又は緩衝液のみと共に37℃で3日間、5%CO2の雰囲気中でインキュベートした。総細胞生存又は生存率パーセントを、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造元の説明書に従って使用した発光の読み取りを使用して決定した。以下の方程式:(試験RLU−平均媒体RLU)/(平均細胞RLU−平均媒体RLU)×100を使用して生存率のパーセントの実験ウェルを計算した。対数のポリペプチド濃度対生存率パーセントを、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)でプロットし、対数(阻害剤)対正規化した応答(変数の傾き)分析を使用して、αCD38scFv::SLT−1A::KDELに関する半数細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。
αCD38scFv::SLT−1A::KDELタンパク質のCD50を測定したところ、CD38+細胞の場合、細胞株に応じて約0.2〜1nMであり、それと比較して、CD38−細胞株の場合、300nMであり、これはSLT−1Aのみの陰性対照の場合のCD50に比較的類似していた(表6;図4)。αCD38scFv::SLT−1A::KDELのCD50は、細胞外標的生体分子CD38と物理的に結合している細胞、例えばそれらの細胞表面上で発現されたCD38と比較して、細胞外標的生体分子CD38と物理的に結合していない細胞の場合の約300〜2000倍高かった。
用量依存性実験から、KDELシグナルモチーフを有さないαCD38scFv::SLT−1Aに関するCD50は約0.8〜3.2nMであり(表6;図4)、これは、カルボキシ末端KDELシグナルモチーフを有する同じタンパク質より2〜4倍高かった(より低い細胞毒性であった)ことが決定された。これは、細胞毒性と選択的な細胞毒性の両方に対するKDELシグナルモチーフの付加の作用を例示する。これらの細胞毒性タンパク質の細胞殺滅における差は、リボソーム不活性化又は標的細胞結合の特徴のどちらに関しても、インビトロでの結果に基づき予測できなかった。
免疫蛍光法を使用したSLT−1A::αCD38scFvの細胞内在化の決定
αCD38scFv::SLT−1::KDELの原型である、KDELシグナルモチーフを有さないαCD38scFv::SLT−1の標的細胞に侵入する能力を当業界において公知の標準的な免疫細胞化学法を使用して調査した。簡単に言えば、各細胞型(Raji(CD38+)、Daudi(CD38+)、及びU266(CD38−))の0.8×106個の細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤のカクテル(例えばP1860 Sigma-Aldrich Co.社、St. Louis、MO、U.S.)及び非特異的な免疫蛍光染色を低下させるためにヒトFc受容体タンパク質を含有する50μLの細胞培養培地に懸濁した。次に、100nMの分析される細胞毒性タンパク質を細胞に添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートし、毒素侵入化を進行させた。次いで、Cytofix/Cytoperm(商標)キット(BD Biosciences社、San Diego、CA、U.S.)を製造元の説明書に従って使用して細胞を「固定」及び「膜透過化」した。マウスモノクローナル抗体(マウスIgG抗志賀毒素1サブユニットA、BEI NR-867 BEI Resources社、Manassas、VA、U.S.)を使用して志賀毒素エフェクター領域を「染色」した。次いでマウスモノクローナル抗体の局在化を、Alexa Fluor(登録商標)555モノクローナル抗体標識キット(Life Technologies社、Carlsbad、CA、U.S.)で製造元の説明書に従って検出した。
このアッセイにおいて、CD38+細胞でαCD38scFv::SLT−1の細胞表面結合及び細胞内在化が観察された。どちらのタンパク質でもCD38−細胞への細胞内在化は観察されなかった。これは、細胞毒性タンパク質KDELバリアントとその原型との細胞毒性における差(表6;図4)は、標的細胞に結合して内在化した状態になるαCD38scFv::SLT−1の能力に有意な変化を与えない可能性があることを示した。
動物モデルを使用したインビボでの細胞毒性タンパク質αCD38scFv::SLT−1::KDELの作用の決定
動物モデルを使用して、インビボでのCD38+新生細胞及び/又は免疫細胞に対する細胞毒性タンパク質αCD38scFv::SLT−1::KDELの作用を決定する。様々なマウス株を使用して、細胞表面上にCD38を発現するヒト新生物及び/又はヒト免疫細胞をそれらのマウスに注射したことにより得られたマウスにおける静脈内投与後の異種移植片腫瘍に対する細胞毒性タンパク質の作用を試験する。
志賀毒素様毒素−1のAサブユニットに由来するCD19標的化細胞毒性タンパク質(αCD19scFv::SLT−1A::KDEL)
この実施例の細胞毒性タンパク質であるαCD19scFv::SLT−1A::KDELは、CD19と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域を、志賀毒素Aサブユニット断片及びカルボキシ末端KDELモチーフと組み合わせて含む。
細胞毒性タンパク質αCD19scFv::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
第1に、志賀毒素エフェクター領域及び免疫グロブリン型結合領域を設計又は選択した。この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来した。SLT−1Aのアミノ酸1〜251をコードしたポリヌクレオチドを得た(Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)。一本鎖可変断片(scFv)が当業界において公知のリンカーによって分離された2つの免疫グロブリン可変領域(VL及びVH)を用いて作製されるように、免疫グロブリン型結合領域αCD19scFvは、ヒト化モノクローナル抗体の抗CD19 4G7に由来した(Peipp M et al., J Immunol Methods 285: 265-80 (2004)及びそこに記載の参考文献)。
第2に、結合領域及び志賀毒素エフェクター領域を一緒に連結して、融合タンパク質を形成した。この実施例において、配列番号12のアミノ酸1〜250を含む免疫グロブリン型結合領域αCD19scFvをコードするポリヌクレオチドを、リンカー、例えばマウスIgG3分子に由来する「マウスヒンジ」をコードするポリヌクレオチド(又は当業者公知の他のリンカー)と共にフレーム内に、さらにカルボキシ末端KDELモチーフに融合したSLT−1A(配列番号1のアミノ酸1〜251)からの志賀毒素エフェクター領域をコードするポリヌクレオチドと共にフレーム内にクローニングした。DNA 2.0, Inc.社(Menlo Park、CA、U.S.)によるサービスを使用して、この実施例の細胞毒性タンパク質αCD19scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列のコドンを大腸菌での効率的な発現のために最適化した。
細胞毒性タンパク質αCD19scFv::SLT−1A::KDEL(配列番号12)をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって融合タンパク質を産生した。当業界において公知の細菌系を使用してαCD19scFv::SLT−1A::KDEL細胞毒性タンパク質の発現を達成した。
この大腸菌発現系によるαCD19scFv::SLT−1A::KDEL産生の実施例において、αCD19scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド「挿入」配列を、標準的手順を使用してpTxb1ベクター(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)にクローニングし、フレーム内でベクターのアミノ末端インテインをコードするポリヌクレオチド配列にライゲートされた細胞毒性タンパク質αCD19scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列を産生した。プラスミド挿入ポリヌクレオチド配列をサンガーシーケンシング(Functional Biosciences社、Madison、WI、U.S.)によって検証し、T7 Shuffle(登録商標)細胞(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に形質転換した。αCD19scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を、IMPACT(商標)(Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag)のシステムマニュアル(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に従って産生し、精製した。当業界において公知の標準的な技術、例えばアフィニティークロマトグラフィーを使用して、精製を達成した。
インビトロにおける真核性リボソームに対するαCD19scFv::SLT−1A::KDELの半数阻害濃度(IC50)の決定
αCD19scFv::SLT−1A::KDELのリボソーム不活性化性能を、TNT(登録商標)クイックカップル転写/翻訳キット(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用して、インビトロにおける無細胞のタンパク質翻訳アッセイで決定した。このキットは、ルシフェラーゼT7対照DNA及びTNT(登録商標)クイックマスターミックスを包含する。製造元の説明書に従ってリボソーム活性反応の準備をして、「TNT」反応混合物を作製した。
試験されるαCD19scFv::SLT−1A::KDELの一連の10倍希釈液を適切な緩衝液で調製し、一連の同一なTNT反応混合物の成分を、αCD19scFv::SLT−1A::KDELの各希釈液で作製した。αCD19scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を連続希釈した各試料を、ルシフェラーゼT7対照DNAと共にTNT反応混合物のそれぞれと組み合わせた。試験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベートした後、ルシフェラーゼアッセイ試薬(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての試験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質の翻訳量を、製造元の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、総タンパク質の対数変換濃度対相対的な発光単位の非線形回帰分析によって決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を使用して、各試料で半数阻害濃度(IC50)値を計算した。
αCD19scFv::SLT−1A::KDELの無細胞タンパク質合成に対する阻害作用は強かった。用量依存性実験から、この細胞非含有アッセイにおけるαCD19scFv::SLT−1A::KDELのタンパク質合成に対するIC50は、約2.7pMであったことが決定された(表7)。この結果は、約3.2pMであるか又はSLT−1Aのみの陽性対照に等しいと測定されたKDELシグナルモチーフを有さないタンパク質αCD19scFv::SLT−1Aに関するIC50と実質的に異なっていなかった(表7)。これは、KDELバリアントの増強された細胞毒性は、志賀毒素Aサブユニットの酵素活性のいかなる有意な変動にも関連しない可能性があることを示す。
細胞殺滅アッセイを使用したαCD19scFv::SLT−1A::KDELの選択的な細胞毒性及び半数細胞毒性濃度(CD50)の決定
αCD19scFv::SLT−1A::KDELの細胞毒性の特徴を、以下の細胞殺滅アッセイによって決定した。このアッセイは、結合領域を有さないSLT−1Aタンパク質と比較した、その免疫グロブリン型結合領域の標的生体分子を発現する細胞を殺滅する細胞毒性タンパク質の能力を決定する。384−ウェルプレート中の20μLの細胞培養培地で細胞を平板培養した(細胞2×103個/ウェル)。αCD19scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を緩衝液で10倍希釈し、5μLの希釈液を細胞に添加した。細胞培養培地のみを含有する対照ウェルをベースラインの補正のために使用した。細胞試料をαCD19scFv::SLT−1A::KDEL又は緩衝液のみと共に37℃で3日間、5%CO2の雰囲気中でインキュベートした。総細胞生存又は生存率パーセントを、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造元の説明書に従って使用した発光の読み取りを使用して決定した。以下の方程式:(試験RLU−平均媒体RLU)/(平均細胞RLU−平均媒体RLU)×100を使用して生存率のパーセントの実験ウェルを計算した。対数のポリペプチド濃度対生存率パーセントを、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)でプロットし、対数(阻害剤)対正規化した応答(変数の傾き)分析を使用して、ΑCD19scFv::SLT−1A::KDELに関する半数細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。
用量依存性実験から、αCD19scFv::SLT−1A::KDELタンパク質のCD50は、CD19+Daudi細胞の場合、約0.15nMであったことが決定された(表8、図5)。SLT−1Aのみの陰性対照及びKDELモチーフを有さない同じタンパク質、αCD19scFv::SLT−1Aに関するCD50は、曲線の形状に基づいて正確に測定することができなかった。これらの結果は、細胞毒性及び選択的な細胞毒性の両方に対するKDELシグナルモチーフ付加の作用を例示する(表8、図5)。これらの細胞毒性タンパク質の細胞殺滅における差は、タンパク質合成阻害に関してインビトロでの結果に基づき予測できなかったことから、標的細胞結合の特徴に基づき予測することは期待できない。
動物モデルを使用したインビボでの細胞毒性タンパク質αCD19scFv::SLT−1A::KDELの作用の決定
動物モデルを使用して、インビボでの新生物及び/又は免疫細胞に対する細胞毒性タンパク質αCD19scFv::SLT−1A::KDELの作用を決定する。様々なマウス株を使用して、細胞表面上にCD19を発現するヒト新生物及び/又はヒト免疫細胞をそれらのマウスに注射したことにより得られたマウスにおける静脈内投与後の異種移植片腫瘍に対する細胞毒性タンパク質の作用を試験する。
志賀毒素様毒素−1のAサブユニットに由来するCD74標的化細胞毒性タンパク質(αCD74scFv::SLT−1A::KDEL)
第4の例示的な細胞毒性タンパク質は、CD74と高親和性で結合することが可能な一本鎖可変断片の結合領域と組換えされた志賀毒素Aサブユニット断片を含む。この第4の例示的な細胞毒性タンパク質は、表面上にCD74を発現する細胞を選択的に殺滅することが可能である。
細胞毒性タンパク質αCD74scFv::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
第1に、志賀毒素エフェクター領域及び免疫グロブリン型結合領域を設計又は選択した。この実施例において、志賀毒素エフェクター領域を、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来した。SLT−1Aのアミノ酸1〜251をコードしたポリヌクレオチドを得た(Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)。一本鎖可変断片(scFv)が当業界において公知のリンカーによって分離された2つの免疫グロブリン可変領域(VL及びVH)を用いて作製されるように、免疫グロブリン型結合領域αCD74scFvを、ヒト化モノクローナル抗体の抗CD74、ミラツズマブに由来した(Sapra P et al., Clin Cancer Res 11: 5257-64 (2005)及びそこに記載の参考文献)。
第2に、結合領域及び志賀毒素エフェクター領域を一緒に連結して、融合タンパク質を形成した。この実施例において、配列番号16のアミノ酸1〜251を含む免疫グロブリン型結合領域αCD74scFvをコードするポリヌクレオチドを、リンカー、例えばマウスIgG3分子に由来する「マウスヒンジ」をコードするポリヌクレオチド(又は当業者公知の他のリンカー)と共にフレーム内に、さらにカルボキシ末端KDELモチーフに融合したSLT−1A(配列番号1のアミノ酸1〜251)からの志賀毒素エフェクター領域をコードするポリヌクレオチドと共にフレーム内にクローニングした。DNA 2.0, Inc.社(Menlo Park、CA、U.S.)によるサービスを使用して、この実施例の細胞毒性タンパク質αCD74scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列のコドンを大腸菌での効率的な発現のために最適化した。
細胞毒性タンパク質αCD74scFv::SLT−1A::KDEL(配列番号16)をコードするポリヌクレオチドを発現させることによって融合タンパク質を産生した。当業界において公知の細菌系を使用してαCD74scFv::SLT−1A::KDEL細胞毒性タンパク質の発現を達成した。
この大腸菌発現系によるαCD74scFv::SLT−1A::KDEL産生の実施例において、αCD74scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド「挿入」配列を、標準的手順を使用してpTxb1ベクター(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)にクローニングし、フレーム内でベクターのアミノ末端インテインをコードするポリヌクレオチド配列にライゲートされた細胞毒性タンパク質αCD74scFv::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチド配列を産生した。プラスミド挿入ポリヌクレオチド配列をサンガーシーケンシング(Functional Biosciences社、Madison、WI、U.S.)によって検証し、T7 Shuffle(登録商標)細胞(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に形質転換した。αCD74scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を、IMPACT(商標)(Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag)のシステムマニュアル(New England Biolabs社、Ipswich、MA、U.S.)に従って産生し、精製した。当業界において公知の標準的な技術、例えばアフィニティークロマトグラフィーを使用して、精製を達成した。
インビトロにおける真核性リボソームに対するαCD74scFv::SLT−1A::KDELの半数阻害濃度(IC50)の決定
αCD74scFv::SLT−1A::KDELのリボソーム不活性化性能を、TNT(登録商標)クイックカップル転写/翻訳キット(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を使用して、インビトロにおける無細胞のタンパク質翻訳アッセイで決定した。このキットは、ルシフェラーゼT7対照DNA及びTNT(登録商標)クイックマスターミックスを包含する。製造元の説明書に従ってリボソーム活性反応の準備をして、「TNT」反応混合物を作製した。
試験されるαCD74scFv::SLT−1A::KDELの一連の10倍希釈液を適切な緩衝液で調製し、一連の同一なTNT反応混合物の成分を、αCD74scFv::SLT−1A::KDELの各希釈液で作製した。αCD74scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を連続希釈した各試料を、ルシフェラーゼT7対照DNAと共にTNT反応混合物のそれぞれと組み合わせた。試験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベートした後、ルシフェラーゼアッセイ試薬(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての試験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質の翻訳量を、製造元の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、総タンパク質の対数変換濃度対相対的な発光単位の非線形回帰分析によって決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を使用して、各試料で半数阻害濃度(IC50)値を計算した。
αCD74scFv::SLT−1A::KDELの無細胞タンパク質合成に対する阻害作用は強かった。用量依存性実験から、この細胞非含有アッセイにおけるαCD74scFv::SLT−1A::KDELのタンパク質合成に対するIC50は、約3.1pMであったことが決定された(表9)。この結果は、KDELモチーフを欠失しているタンパク質αCD74scFv::SLT−1Aに関するIC50と実質的に異なっておらず、約3.6pMであるか又はSLT−1Aのみの陽性対照に等しいと測定された(表9)。
細胞殺滅アッセイを使用したαCD74scFv::SLT−1A::KDELの選択的な細胞毒性及び半数細胞毒性濃度(CD50)の決定
αCD74scFv::SLT−1A::KDELの細胞毒性の特徴を、以下の細胞殺滅アッセイによって決定した。このアッセイは、結合領域を有さないSLT−1Aタンパク質と比較して、その免疫グロブリン型結合領域の標的生体分子を発現する細胞を殺滅する細胞毒性タンパク質の能力を決定する。384−ウェルプレート中の20μLの細胞培養培地で細胞を平板培養した(細胞2×103個/ウェル)。αCD74scFv::SLT−1A::KDELタンパク質を緩衝液で10倍に希釈し、5μLの希釈液を細胞に添加した。細胞培養培地のみを含有する対照ウェルをベースラインの補正のために使用した。細胞試料をαCD74scFv::SLT−1A::KDEL又は緩衝液のみと共に37℃で3日間、5%CO2の雰囲気中でインキュベートした。総細胞生存又は生存率パーセントを、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造元の説明書に従って使用した発光の読み取りを使用して決定した。以下の方程式:(試験RLU−平均媒体RLU)/(平均細胞RLU−平均媒体RLU)×100を使用して生存率のパーセントの実験ウェルを計算した。対数のポリペプチド濃度対生存率パーセントを、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)でプロットし、対数(阻害剤)対応答(3つのパラメーター)分析を使用して、ΑCD74scFv::SLT−1A::KDELに関する半数細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。
用量依存性実験から、αCD74scFv::SLT−1A::KDELタンパク質のCD50は、CD74+Daudi細胞の場合、約29.9nMであったことが決定された(表10、図6)。SLT−1Aのみの陰性対照に関するCD50は2026nMであり、KDELモチーフを有さない同じタンパク質、αCD74scFv::SLT−1Aでは95.3nMであった(表10、図6)。これらの結果は、細胞毒性及び選択的な細胞毒性の両方に対するKDELシグナルモチーフ付加の作用を例示する。これらの細胞毒性タンパク質の細胞殺滅における差は、タンパク質合成阻害に関してインビトロでの結果に基づき予測できなかったことから、標的細胞結合の特徴に基づき予測することは期待できない。
動物モデルを使用したインビボでの細胞毒性タンパク質αCD74scFv::SLT−1A::KDELの作用の決定
動物モデルを使用して、インビボでの新生物及び/又は免疫細胞に対する細胞毒性タンパク質αCD74scFv::SLT−1A::KDELの作用を決定する。様々なマウス株を使用して、細胞表面上にCD74を発現するヒト新生物及び/又は免疫細胞をそれらのマウスに注射したことにより得られたマウスにおける静脈内投与後の異種移植片腫瘍に対する細胞毒性タンパク質の作用を試験する。
志賀毒素様毒素1のAサブユニットに由来するHER2標的化細胞毒性タンパク質(αHER2scFv::SLT−1A::RDEL)
この実施例において、αHER2scFv::SLT−1A::RDELを作製し、KDELの代わりにペプチド配列RDELでカルボキシ末端を終わらせたことを除いて、実施例1と全く同じようにして試験した。細胞毒性タンパク質αHER2scFv::SLT−1A::RDELの細胞結合特徴を、実施例1で説明したような蛍光ベースのフローサイトメトリーアッセイによって決定した。αHER2scFv::SLT−1A::RDEL細胞毒性タンパク質に関するBmaxを測定したところ、約130,000MFIであり、KDは約167nMであったが、このアッセイにおいて観察された重要な意味を持つHER2−細胞への結合はなかった。αHER2scFv::SLT−1A::RDELの無細胞タンパク質合成に対する阻害作用は、タンパク質合成におけるαHER2scFv::SLT−1A::RDELに関するIC50の測定が約36pMであることにより示された通り、強かった。
αHER2scFv::SLT−1A::RDELの細胞毒性特性を、HER2+細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、αHER2scFv::SLT−1A::RDELの選択的細胞毒性特性を、HER2+細胞と比較してHER2−細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、HER2+細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にHER2を発現する細胞と比較して細胞表面上にHER2を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
志賀毒素様毒素−1のAサブユニット及び抗体αエプスタイン・バー−抗原に由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αエプスタイン・バー抗原は、エプスタイン・バー抗原に対するモノクローナル抗体(Fang C et al., J Immunol Methods 287: 21-30 (2004))に由来し、エプスタイン・バーウイルスに感染したヒト細胞又はエプスタイン・バー抗原を発現する形質転換細胞に結合することができる免疫グロブリン型結合領域を含む。エプスタイン・バー抗原は、エプスタイン・バーウイルスに感染した細胞やがん細胞(例えば、リンパ腫及び上咽頭がん細胞)などの複数の細胞型で発現する。さらに、エプスタイン・バー感染は、他の疾患、例えば、多発性硬化症を伴う。
細胞毒性タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αエプスタイン・バー抗原及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDELを付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αエプスタイン・バー抗原結合タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
細胞毒性タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELのインビトロでの特性の決定
エプスタイン・バー抗原陽性細胞及びエプスタイン・バー抗原陰性細胞の場合におけるこの実施例の細胞毒性タンパク質の結合特徴は、前記の実施例において上記のように、蛍光ベースのフローサイトメトリーアッセイによって決定される。エプスタイン・バー抗原陽性細胞へのαエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはエプスタイン・バー抗原陰性細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するαエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αエプスタイン・バー::KDELの細胞毒性の決定
αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELの細胞毒性特性を、エプスタイン・バー抗原陽性細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELの選択的細胞毒性特性を、エプスタイン・バー抗原陽性細胞と比較してエプスタイン・バー抗原陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、エプスタイン・バー抗原陽性細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にエプスタイン・バー抗原を発現する細胞と比較して細胞表面上にエプスタイン・バー抗原を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質αエプスタイン・バー::SLT−1A::KDELのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にエプスタイン・バー抗原を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
志賀毒素様毒素−1のAサブユニット及び抗体αリーシュマニア抗原に由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αリーシュマニア抗原は、当技術分野で既知の技術を用いて生成された、細胞内トリパノソーマ原虫を保有するヒト細胞に存在する細胞表面のリーシュマニア抗原への抗体に由来する(Berman J and Dwyer, Clin Exp Immunol 44: 342-348 (1981)、Kenner J et al., J Cutan Pathol 26: 130-6 (1999)、Silveira T et al., Int J Parasitol 31: 1451-8 (2001)を参照されたい)。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αリーシュマニア::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αリーシュマニア抗原及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDELを付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、リーシュマニア抗原結合タンパク質SLT−1A::αリーシュマニア::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT−1A::αリーシュマニア::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αリーシュマニア::KDELのインビトロでの特性の決定
リーシュマニア抗原陽性細胞及びリーシュマニア抗原陰性細胞の場合におけるこの実施例の細胞毒性タンパク質の結合特徴は、前記の実施例において上記のように、蛍光ベースのフローサイトメトリーアッセイによって決定される。リーシュマニア抗原陽性細胞へのSLT−1A::αリーシュマニア::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはリーシュマニア抗原陰性細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αリーシュマニア::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT−1A::αリーシュマニア::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αリーシュマニア::KDELの細胞毒性の決定
SLT−1A::αリーシュマニア::KDELの細胞毒性特性を、リーシュマニア抗原陽性細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αリーシュマニア::KDELの選択的細胞毒性特性を、リーシュマニア抗原陽性細胞と比較してリーシュマニア抗原陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、リーシュマニア抗原陽性細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にリーシュマニア抗原を発現する細胞と比較して細胞表面上にリーシュマニア抗原を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
志賀毒素様毒素−1のAサブユニット及び免疫グロブリン型結合領域αニューロテンシン受容体に由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αニューロテンシン受容体は、DARPin(商標)(GenBank受託番号:2P2C_R)又はヒトニューロテンシン受容体と結合するモノクローナル抗体(Ovigne J et al., Neuropeptides 32: 247-56 (1998))に由来する。ニューロテンシン受容体は、乳がん、結腸がん、肺がん、メラノーマ、及び膵臓がん細胞など様々ながん細胞で発現する。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αニューロテンシンR及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結した、カルボキシ末端にKDELを付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、ニューロテンシン受容体結合タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成した。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELのインビトロでの特性の決定
ニューロテンシン受容体陽性細胞及びニューロテンシン受容体陰性細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、前記の実施例において上記のように、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。ニューロテンシン受容体陽性細胞へのSLT−1A::αニューロテンシンR::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはニューロテンシン受容体陰性細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT−1A::αニューロテンシンR::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELの細胞毒性の決定
SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELの細胞毒性特性を、ニューロテンシン受容体陽性細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELの選択的細胞毒性特性を、ニューロテンシン受容体陽性細胞と比較してニューロテンシン受容体陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、ニューロテンシン受容体陽性細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にニューロテンシン受容体を発現する細胞と比較して細胞表面上にニューロテンシン受容体を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT−1A::αニューロテンシンR::KDELのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にニューロテンシン受容体を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
志賀様毒素−1のAサブユニット及び免疫グロブリン型結合領域αEGFRに由来する細胞毒性タンパク質
本実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。結合領域αEGFRは、AdNectin(商標)(GenBank受託番号:3QWQ_B)、Affibody(商標)(GenBank受託番号:2KZI_A;米国特許第8,598,113号明細書)、又は、その全てが1又は2以上のヒト上皮成長因子受容体に結合する抗体に由来する。上皮成長因子受容体の発現は、例えば、肺がん細胞、乳がん細胞、及び結腸がん細胞などのヒトがん細胞と関連がある。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αEGFR及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDELを付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、EGFR結合タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELのインビトロでの特性の決定
EGFR+細胞及びEGFR−細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、前記の実施例において上記のように、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。EGFR+細胞へのSLT−1A::αEGFR::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはEGFR−細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT−1A::αEGFR::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELの細胞毒性の決定
SLT−1A::αEGFR::KDELの細胞毒性特性を、EGFR+細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αEGFR::KDELの選択的細胞毒性特性を、リーシュマニア抗原陽性細胞と比較してEGFR−細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、EGFR+細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にEGFRを発現する細胞と比較して細胞表面上にEGFRを発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対する細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEGFR::KDELのインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にEGFRを発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後の細胞毒性タンパク質の効果を試験する。
志賀様毒素−1のAサブユニット及び抗体αCCR5に由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αCCR5は、ヒトCCR5(CD195)に対するモノクローナル抗体(Bernstone L et al., Hybridoma 31: 7-19 (2012))に由来する。CCR5は主に、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、及びミクログリアで発現する。さらに、CCR5はヒト免疫不全ウイルス(HIV、human immunodeficiency virus)の発症及び蔓延に影響を与える。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αCCR5及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDELを付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αCCR5結合タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5のインビトロでの特性の決定
CCR5+細胞及びCCR5−細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、前記の実施例において上記のように、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。CCR5+陽性細胞へのSLT−1A::αCCR5::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはCCR5−細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT−1A::αCCR5::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELの細胞毒性の決定
SLT−1A::αCCR5::KDELの細胞毒性特性を、CCR5+細胞を用いて前記の実施例において上記ように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αCCR5::KDELの選択的細胞毒性特性を、CCR5+細胞と比較してCCR5−細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、CCR5+細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にCCR5を発現する細胞と比較して細胞表面上にCCR5を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELのインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、ドナー材料のT細胞の除去における(Tsirigotis P et al., Immunotherapy 4: 407-24 (2012)を参照されたい)、細胞毒性タンパク質SLT−1A::αCCR5::KDELのインビボでの効果を決定する。非ヒト霊長類を用いて、SLT−1A::αCCR5のインビボでの効果を決定する。ドナー臓器をSLT−1A::αCCR5::KDELで前処理したとき(Weaver T et al., Nat Med 15: 746-9 (2009)を参照されたい)、腎臓移植後のアカゲザルの移植片対宿主病について分析する。異なる用量のSLT−1A::αCCR5::KDELの非経口投与後、霊長類カニクイザルの末梢血Tリンパ球のインビボでの除去を観察する。SLT−1A::αCCR5::KDELを使用したHIV感染の阻害は、サル免疫不全ウイルス(SIV、simian immunodeficiency virus)にさらされた循環するT細胞を大幅に除去するために、非ヒト霊長類に急性用量のSLT−1A::αCCR5::KDELを与えることによって試験する(Sellier P et al., PLoS One 5: e10570 (2010)を参照されたい)。
志賀毒素のAサブユニット及び抗Env免疫グロブリンドメインに由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素のAサブユニット(StxA)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αEnvは、GP41、GP120、GP140、又はGP160(例えば、Chen W et al., J Mol Bio 382: 779-89 (2008)、Chen W et al., Expert Opin Biol Ther 13: 657-71 (2013)、van den Kerkhof T et al., Retrovirology 10: 102 (2013)を参照されたい)などのHIVエンベロープ糖タンパク質(Env)に結合する既存の抗体、又は標準的な技術を用いて生成された抗体(Prabakaran et al., Front Microbiol 3: 277 (2012)を参照されたい)に由来する。EnvはHIV複製中のHIV感染細胞の細胞表面に提示される、HIV表面タンパク質である。Envは、主に感染細胞のエンドソーム区画に発現するが、本発明の強力な細胞毒性タンパク質によって、十分な量のEnvが標的とされる細胞表面に存在させることができる。さらに、Env標的細胞毒性タンパク質は、HIVビリオンと結合でき、ビリオンと宿主細胞が融合する間に、感染細胞に新たに進入することができる。
HIVが高割合の変異を提示するので、複数株のHIVのEnvに結合する広域中和抗体(van den Kerkhof T et al., Retrovirology 10: 102 (2013))などの、Envの機能的束縛部分に結合する免疫グロブリンドメインを使用することが好ましい。感染細胞の表面に存在するEnvは立体的に制限されたエピトープを提示するとされているので(Chen W et al., J Virol 88: 1125-39 (2014))、VHHドメインのようなsdAbの断片などの100kDより小さい、理想的には25kDより小さい結合領域を使用することが好ましい。
細胞毒性タンパク質αEnv::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αEnv及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDELを付加し、細胞毒性タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αEnv結合タンパク質SLT−1A::αEnv::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEnv::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEnv::KDELのインビトロでの特性の決定
Env+細胞及びEnv−細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、前記の実施例において上記のように、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。Env+陽性細胞へのSLT−1A::αEnv::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはEnv−細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEnv::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT−1A::αEnv::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEnv::KDELの細胞毒性の決定
SLT−1A::αEnv::KDELの細胞毒性特性を、Env+細胞を用いて前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αEnv::KDELの選択的細胞毒性特性を、Env+細胞と比較してEnv−細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株及び/又は細胞に感染して、細胞をEnv+にするのに使用されるHIV株に応じて、Env+細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にEnvを発現する細胞と比較して細胞表面上にEnvを発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを使用した細胞毒性タンパク質SLT−1A::αEnv::KDELのインビボでの効果の決定
SLT−1A::αEnv::KDELを使用したHIV感染の阻害は、サル免疫不全ウイルス(SIV)に感染した非ヒト霊長類(Sellier P et al., PLoS One 5: e10570 (2010)を参照されたい)に、SLT−1A::αEnv::KDELを投与することによって試験する。
志賀様毒素−1のAサブユニット及び抗体αUL18に由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αUL18は、当技術分野で既知の技術を用いて、細胞表面サイトメガロウイルスタンパク質UL18に生成され、サイトメガロウイルスに感染したヒト細胞に存在する(Yang Z, Bjorkman P, Proc Natl Acad Sci USA 105: 10095-100 (2008))。ヒトサイトメガロウイルス感染は、様々ながん及び炎症性障害を伴う。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αUL18::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αUL18及び志賀毒素エフェクター領域を共に連結し、カルボキシ末端にKDELを付加し、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、αUL18結合タンパク質SLT−1A::αUL18::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現させることによって産生される。細胞毒性タンパク質SLT−1A::αUL18::KDELの発現を、前記の実施例において記載したように、細菌及び/又は無細胞のいずれかのタンパク質翻訳系を用いて達成する。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αUL18::KDELのインビトロでの特性の決定
サイトメガロウイルスUL18陽性細胞及びサイトメガロウイルスUL18陰性細胞に対する、本実施例の細胞毒性タンパク質の結合特性は、前記の実施例において上記のように、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定する。サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞へのSLT−1A::αUL18::KDELのBmaxは約50,000〜200,000MFI、KDは0.01〜100nMである一方、このアッセイにおいてはサイトメガロウイルスタンパク質UL18陰性細胞への有意な結合はない。
細胞毒性タンパク質SLT−1A::αUL18::KDELのリボソーム不活性化能力を、前記の実施例において上記のように、無細胞のインビトロでのタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例の細胞毒性タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に対するSLT−1A::αUL18::KDELのIC50は約0.1〜100pMである。
細胞殺滅アッセイを用いた細胞毒性タンパク質SLT−1A::αUL18::KDELの細胞毒性の決定
SLT−1A::αUL18::KDELの細胞毒性特性を、サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞を用いて、前記の実施例において上記のように、一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αUL18::KDELの選択的細胞毒性特性を、サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞と比較してサイトメガロウイルスタンパク質UL18陰性細胞を用いる同じ一般的な細胞殺滅アッセイにより決定する。本実施例の細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞株に応じて、サイトメガロウイルスタンパク質UL18陽性細胞について約0.01〜100nMである。細胞毒性タンパク質のCD50は、細胞表面上にサイトメガロウイルスタンパク質UL18を発現する細胞と比較して細胞表面上にサイトメガロウイルスタンパク質UL18を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
志賀毒素様毒素−1のAサブユニット及び抗体α蠕虫腸抗原に由来する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域α蠕虫腸抗原は、当業界において公知の技術を使用して生成した、ヒトトランスフェリン受容体の蠕虫オーソログに対する抗体に由来する(例えば線虫遺伝子gcp−2.1 UniProt G8JYE4_CAEEL;Rosa B et al., Mol Cell Proteomics M114.046227 (2015)を参照)。
細胞毒性タンパク質α蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELの構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域α蠕虫腸抗原及び志賀毒素エフェクター領域を連結し、カルボキシ末端KDELを付加して、タンパク質を形成する。例えば、融合タンパク質は、α蠕虫腸抗原結合タンパク質α蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELをコードするポリヌクレオチドを発現することによって産生される。α蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDEL細胞毒性タンパク質の発現は、前の実施例で説明したように細菌による及び/又は無細胞のタンパク質翻訳系のいずれかを使用して達成される。
インビトロでの細胞毒性タンパク質α蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELの特徴決定
この実施例の細胞毒性タンパク質の結合特徴は、精製した組換え標的タンパク質を使用する当業界において公知の分子結合アッセイによって決定される。このアッセイにおいて、標的タンパク質に対するα蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELのKDはおよそ100nMと測定されたが、陰性対照タンパク質(例えば精製された組換えヒトトランスフェリン受容体)への有意な結合はない。
α蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDEL細胞毒性タンパク質のリボソーム不活性化能力は、前記の実施例において上記のように、インビトロにおける無細胞タンパク質翻訳で決定される。この実施例の細胞毒性タンパク質の無細胞タンパク質合成に対する阻害作用は、有意である。この細胞非含有アッセイにおけるα蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELのタンパク質合成に対するIC50は、およそ0.1〜100pMである。
蠕虫を使用した細胞毒性タンパク質α蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELの毒性の決定
蠕虫に対するα蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELの毒性は、モデルの蠕虫を使用して決定される(例えばIatsenko I et al., Toxins 2050-63 (2014)を参照)。蠕虫への精製されたα蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELの投与は、SLT−1A::α蠕虫腸抗原融合タンパク質を発現する細菌に蠕虫を浸すか、又はその代わりにそれを蠕虫に供給することによって行うことができる。
加えて、蠕虫を内包する及び/又は蠕虫関連疾患を示す実験動物にα蠕虫腸抗原::SLT−1A::KDELを投与し、蠕虫の低減若しくは除去及び/又は寄生性蠕虫の関連症状に関してモニターする。
様々な細胞型を標的化する細胞毒性タンパク質
この実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀毒素様毒素1(SLT−1A)、志賀毒素(StxA)、及び/又は志賀毒素様毒素2(SLT−2A)のAサブユニットに由来する。結合領域は、表11の列1から選択され、表11の列2に示された細胞外標的生体分子と結合する分子から誘導される。この実施例の例示的なタンパク質は、当業界において公知の技術を使用してカルボキシ末端KDEL型のシグナルモチーフを用いて作製され、検出促進剤に連結されてもよい。この実施例の例示的なタンパク質は、前の実施例で説明したように、適切な細胞外標的生体分子を発現する細胞を使用して試験される。この実施例の例示的なタンパク質は例えば、標的細胞の細胞内区画の標識付け、並びに表11の列3に示された疾患、状態、及び/又は障害の診断及び治療に使用することができる。
本発明のいくつかの実施形態を例示によって説明してきたが、本発明を多くの改変、変更及び適合化と共に実行することができ、本発明の精神から逸脱するか、又は特許請求の範囲を超えることなく、いくつかの等価物又は代替的な解決法の使用が当業者の範囲内にあることが明らかである。
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願の全体が参照により組み込まれると具体的かつ個別的に示されたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。国際特許出願公開第2014164680号A1パンフレット及び2014164693号A2パンフレットはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。米国仮特許出願第61/951,110号明細書、第61/951,121号明細書、及び第62/010,918号明細書の開示はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、及び国際公開第2015/120058号パンフレットの開示はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で引用されるアミノ酸及び核酸配列に関するGenBank(National Center for Biotechnology Information、U.S.)からの全ての電子的に利用可能な生物学的配列情報の完全な開示は、その全体が参照により組み込まれる。