JP6933587B2 - ミリ波透過性光沢塗膜及び樹脂製品 - Google Patents
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Description
図1は後述する塗装回数を例えば5回とした塗膜を有する樹脂製品を模式的に示している。
図1(b)に示すように、アルミフレークの平均粒径が10μm以上の場合、各塗装回の未硬化の塗膜内において、アルミフレークどうしは、膜面方向に並ぶ傾向となるため、後述する図3(b)に示すように塗膜をその直交方向から顕微鏡観察面したときに、アルミフレーク間の間隙(黒い部分。膜厚方向にアルミフレークが存在しない部分)の面積が少なくなり、アルミフレーク(白い部分。膜厚方向に少なくとも1枚のアルミフレークが存在する部分)の面積占有率が高くなる傾向となる。
また、アルミフレークの平均粒径が3μm未満のものは、塗膜中のアルミフレークの配向性が低下するため、光沢度が低下する。
塗膜本体の樹脂材料は、特に限定されず、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系等を例示できる。
アルミフレークの平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定されるものである。
アルミフレークの平均粒径は、前記のとおり3μm以上10μm未満とするが、3μm以上8μm以下が好ましく、4μm以上7μm以下がより好ましい。
図6に、単体の厚さが10,20,30,40,50,60nmである各アルミフレークの、波長380〜780nmの光の反射率を示す。厚さ10〜20nmのアルミフレークは、光の多くの部分を透過してしまうため、高光沢を得るには、アルミフレークの多数の重なりが必要となり、その結果、ミリ波透過性が低下しやすい。厚さ30nmのアルミフレークは、例えば波長580nmの光の反射率が30%以上となり、厚さ40nmのアルミフレークは、同反射率が48%以上となるため、アルミフレークの重なりが少なくても、高光沢が得られる。一方、厚さ100nm超のアルミフレークは、塗膜中のアルミフレークの配向性が低下するため、光沢度が低下する。
塗装方法は、特に限定されないが、エアースプレー塗装、エアーレススプレー塗装、浸漬塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装等を例示できる。
塗膜の膜厚は、前記のとおり90nm以上1000nm以下とするが、90nm以上500nm以下が好ましく、90nm以上200nm以下がより好ましい。
塗膜は、塗料を1回で厚塗りしたものであると未硬化の塗膜内でアルミフレークが沈降するため、塗料を複数回に分けて塗り重ねたものが好ましい。
塗膜の往復のミリ波透過減衰量は、前記のとおり2dB以下とするが、1.5dB以下が好ましく、1dB以下がより好ましい。
塗膜の光沢度は、前記のとおり300以上とする。塗膜の光沢度の上限は、特に限定されないが、300以上になると視覚的にあまり変わらないため、500以下でよく、430以下でもよい。
透明樹脂基材に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂等が例示できる。透明樹脂基材は、無色透明が好ましいが、有色透明でもよい。また、透明樹脂基材と光沢塗膜とは直に接していてもよいし、透明樹脂基材と光沢塗膜との間に、透明樹脂基材に対する光沢塗膜の密着性を向上させるためのプライマー等の他の塗膜等が設けられていてもよい。
樹脂製品の用途は、特に限定されず、ミリ波を透過させる必要がある各種製品に具体化でき、背後にミリ波レーダー装置が設置される自動車のラジエータグリル、エンブレム等の樹脂製品を例示できる。
図1(b)に示す比較例の樹脂製品も、透明樹脂基材1と塗膜2と黒おさえ層5とからなるが、アルミフレーク4’の平均粒径が10μmである点において実施例と異なるものである。
これらの樹脂製品は、透明樹脂基材1の上面(製品としては表面)が人による観察面である。
塗膜2は、平均粒径5μm、厚さ40nmのアルミフレークを配合した佑光社製アクリル系塗料「KGミラー」と佑光社製シンナー「KGミラー用シンナー」とを質量比100:150で混合して攪拌した塗料組成物を、スプレー塗装にて透明樹脂基材1に1回塗装ないし10回塗装し、1回塗装する毎に乾燥させて形成した。塗装回数1回当たり、膜厚20.9nmの(乾燥)塗膜が形成された。(乾燥)塗膜における塗膜本体(樹脂成分)とアルミフレークとの質量比は52:48である。
塗装回数1〜6,8,10回とした試料A1〜A8を実施例とする。
黒おさえ層5は、佑光社製アクリルウレタン系塗料「YZバリヤ」と佑光社製硬化剤「YZバリヤ硬化剤」と佑光社製シンナー「YZバリヤ用シンナー」とを質量比4:1:2で混合した塗料組成物を、塗膜2にスプレー塗装し、室温にて乾燥させて形成した。
キーコム社製エンブレム評価システム「EES−12」を用いて、図2に示すように、レンズホーンアンテナと試料との距離を20mm、試料とコーナーリフレクタとの距離を3mとし、波長76.5GHzのミリ波を、レンズホーンアンテナから放射して、試料を入射角0°で透過させ、コーナーリフレクタで反射させ、再び試料を入射角0°で透過させ、レンズホーンアンテナで受信して、透明樹脂基材及び塗膜の往復のミリ波透過減衰量を測定し、それから透明樹脂基材のみの往復のミリ波透過減衰量(2.78dB)を引いて、塗膜のみの往復のミリ波透過減衰量を求めた。
JIS Z8741に準拠して、試料の塗膜に黒色の板を置き、透明樹脂基材の観察面側から、コニカミノルタ社製光沢計「MULTI GLOSS 268Plus」を用いて、入射角60°の光にて光沢度を測定した。
塗膜の顕微鏡写真を撮影した。図3(a)に試料A6の顕微鏡写真を、(b)に試料B6の顕微鏡写真を示す。
顕微鏡写真を、オープンソースの画像解析ソフト「Image J」にかけて、アルミフレーク(白い部分。膜厚方向に少なくとも1枚のアルミフレークが存在する部分)の面積と、アルミフレーク間の間隙(黒い部分。膜厚方向にアルミフレークが存在しない部分)の面積を測定し(両部分の閾値は自動判別)、塗膜の所定面積にアルミフレーク(白い部分)の面積が占める率をアルミフレーク面積占有率(%)として求めた。
塗膜の膜厚が90nmm以上、アルミフレークの平均粒径が10μm未満であり、アルミフレーク面積占有率が60%以上75%以下の範囲にある試料A5〜A8は、ミリ波透過減衰量2dB以下、光沢度300以上であり、高ミリ波透過減衰量と高光沢度とを両立しており、本発明の実施例として位置付けられる。
試料A1〜A4は、アルミフレークの平均粒径が10μm未満であっても、塗膜の膜厚90nmm未満、光沢度300未満なので、参考例として位置付けられる。
アルミフレークの平均粒径が10μmである試料B1〜B8は、試料B1〜B4が塗膜の膜厚90nm未満、試料B5〜B8がミリ波透過減衰量2dB超なので、前記のとおり比較例として位置付けられる。
(1)平均粒径が(5μm以外の)3〜8μmのアルミフレークを用いること。
(2)単体の厚さが(40nm以外の)30nm以上100nm以下のアルミフレークを用いること。
2 塗膜(ミリ波透過性光沢塗膜)
3 塗膜本体
4 アルミフレーク
5 黒おさえ層
Claims (5)
- 透明樹脂基材の表面に形成された複数のアルミフレークを含む塗膜において、塗膜の膜厚が90nm以上1000nm以下であり、アルミフレークの平均粒径が3μm以上10μm未満であり、塗膜に占めるアルミフレークの面積占有率が60%以上75%以下であり、塗膜の往復のミリ波透過減衰量が2dB以下であり、透明樹脂基材側から測定した塗膜の光沢度が300以上であることを特徴とするミリ波透過性光沢塗膜。
- アルミフレークの単体の厚さが30nm以上100nm以下である請求項1記載のミリ波透過性光沢塗膜。
- 塗膜の往復のミリ波透過減衰量が1dB以下である請求項1又は2記載のミリ波透過性光沢塗膜。
- 塗膜の光沢度が430以下である請求項1、2又は3記載のミリ波透過性光沢塗膜。
- 透明樹脂基材と、透明樹脂基材の表面に形成された複数のアルミフレークを含む塗膜とを含み、塗膜の膜厚が90nm以上1000nm以下であり、アルミフレークの平均粒径が3μm以上10μm未満であり、塗膜に占めるアルミフレークの面積占有率が60%以上75%以下であり、塗膜の往復のミリ波透過減衰量が2dB以下であり、透明樹脂基材側から測定した塗膜の光沢度が300以上であることを特徴とする樹脂製品。
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