JP6926704B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
そこで、従来、結晶性ポリエステル樹脂等の結晶性樹脂を可塑剤(定着助剤)として添加することで、低温定着性を向上させたトナーが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
前記静電潜像現像用トナーの示差走査熱量測定による昇温時の吸熱ピークトップ温度が70℃以上であり、
前記示差走査熱量測定による降温時の発熱ピーク全体の発熱量ΔHcに対して、(発熱ピークトップ温度rc−7℃)以下の発熱量ΔHc(L)が、15%以下であり、
前記離型剤が、少なくとも炭化水素ワックス及び炭素数が40〜77の範囲内の脂肪酸エステルワックスを含有し、かつ、
前記炭化水素ワックス及び前記脂肪酸エステルワックスの質量比の値(炭化水素ワックスの質量/脂肪酸エステルワックスの質量)が、5/95〜15/85の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
一般に、離型剤と結晶性樹脂は、結晶性樹脂以外の結着樹脂成分などのトナー構成成分と併用されてトナー粒子となる。このようなトナー粒子を形成する際、離型剤と結晶性樹脂とは、結晶性樹脂以外の結着樹脂成分などのトナー構成成分と、加熱により混ざり合った後に冷却される。この冷却の際に、離型剤と結晶性樹脂とを含む上記トナー構成成分が、相互に結晶化に影響を与え、結晶化ピークの形状が変化する場合がある。
具体的には、トナーのDSCによる降温時の発熱ピーク全体の発熱量ΔHcに対して、発熱ピークトップ温度rc−7℃以下の発熱量ΔHc(L)を15%以下とすることで、不安定な結晶成分が少なくなり、この結果、離型剤のブリードアウトを抑制することができることを見いだし本発明に至った。
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と、離型剤とを含有する静電潜像現像用トナーにおいて、前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記静電潜像現像用トナーの示差走査熱量測定による昇温時の吸熱ピークトップ温度が70℃以上であり、前記示差走査熱量測定による降温時の発熱ピーク全体の発熱量ΔHcに対して、(発熱ピークトップ温度rc−7℃)以下の発熱量ΔHc(L)が、15%以下であることを特徴とする。
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー母体粒子又はトナー粒子の集合体であることが好ましい。
ここで、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものであることが好ましいが、トナー母体粒子をそのままトナー粒子として用いることもできる。
また、本発明においては、トナー母体粒子が、少なくとも結着樹脂と、離型剤とを含有することで、少なくとも結着樹脂と、離型剤とを含有する静電潜像現像用トナーとすることが好ましい。なお、本発明において、トナー母体粒子、トナー粒子及びトナーを特に区別する必要がない場合、単に「トナー」ともいう。
上記手段によれば、離型剤と結晶性樹脂とが相互の結晶化を阻害せず、それぞれ個別に結晶化する、又は結晶化しやすくすることができるため、この結果、発熱ピーク全体の発熱量ΔHcと、(発熱ピークトップ温度rc−7℃)以下の発熱量ΔHc(L)と、の関係を達成することができると考えられる。
試料5mgをアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置
Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目と2回目の加熱時には、10℃/minの昇温速度で0℃から100℃まで昇温して100℃を1分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で100℃から0℃まで降温して0℃の温度を1分間保持する。昇温(加熱)時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークトップの温度を吸熱ピークトップ温度、冷却時に得られる吸熱曲線における発熱ピークの全体の発熱量をΔHc、発熱ピークトップの温度を発熱ピークトップ温度rc、(発熱ピークトップ温度rc−7℃)の温度から発熱ピーク終点までの発熱量をΔHc(L)として測定する。
発熱ピークトップ温度rcの定義について、図1〜3を用いて説明する。
図1は、曲線1がDSCによる降温時の発熱曲線であり、曲線2が上記曲線1の微分曲線である(以下、曲線2のことを「微分曲線2」ともいう。)。
本発明においては、曲線1において発熱ピークの始点及び終点を、微分曲線2の傾きの変化の始点/終点で定義する。
図2は、曲線2を拡大したものである。微分曲線2の傾きの変化の始点(図1及び2の例においては、51℃近傍)、終点(図1及び2の例においては、73℃近傍)が曲線1における発熱ピークの始点PS、終点PEとする。発熱ピークトップ温度rcは、上記で定義したピークの始点PSから終点PEの範囲内の極小点MVの温度とするが、図3に示す例のように極小点が複数ある場合は、最も強度の高い極小点に対して1/3以上の強度を持つ極小点のうち、最も低い温度のピークを発熱ピークトップとし、このときの温度を発熱ピークトップ温度rcと定義する。具体的には、図3の例においては、最も強度の高い極小点MV1は68℃近辺に存在するが、本発明に係る発熱ピークトップ温度rcは低い温度(64℃近辺)の極小点であるMV2の温度となる。
静電潜像現像用トナーのDSCによる降温時の発熱ピークトップ温度rcが、50〜80℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60〜75℃の範囲内である。発熱ピークトップ温度rcが50℃以上であるほうがトナー製造時に結晶化する成分が多くなりやすいため、この結果、ΔHc(L)が小さくなりやすく、また、80℃以下であれば、低温定着性により効果がある。
昇温時の吸熱ピークトップ温度については、DSCによる1回目の昇温時の吸熱曲線と当該吸熱曲線の微分曲線とを用い、降温時の発熱ピークトップ温度rcの定義と同様のアプローチで定義できる。
すなわち、吸熱ピークトップ温度は、降温時の発熱ピークトップ温度rcと同様に定義できるピークの始点から終点の範囲内の極大点の温度とし、極大点が複数ある場合は、最も強度の高い極大点に対して1/3以上の強度を持つ極大点のうち、最も強度の大きいピークを吸熱ピークトップとし、このときの温度を吸熱ピークトップ温度と定義する。
本発明に係るトナーは、結着樹脂として、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有する。結着樹脂としては、非晶性樹脂を含有していてもよく、また、本発明の効果を阻害しない範囲内で、その他、公知の樹脂を含有していてもよい。
非晶性樹脂は、1種でもそれ以上でもよい。非晶性樹脂の例には、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂及びスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂などの非晶性ポリエステル樹脂が含まれる。中でも、熱可塑性を制御しやすい観点から、ビニル樹脂であることが好ましい。
上記ビニル樹脂は、例えばビニル化合物の重合体であり、その例には、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂及びエチレン−酢酸ビニル樹脂が含まれる。中でも、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン−アクリル酸エステル樹脂(スチレン−アクリル樹脂)が好ましい。
スチレン−アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。スチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有するスチレン誘導体を含む。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH(Ra)=CHCOORb(Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは炭素数1〜24のアルキル基を表す)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有するアクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体を含む。
スチレン単量体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン及びp−n−ドデシルスチレンが含まれる。
上記スチレン−アクリル樹脂の可塑性を制御する観点から、スチレン−アクリル樹脂におけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40〜90質量%の範囲内であることが好ましい。また、上記スチレン−アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、10〜60質量%の範囲内であると好ましい。
スチレン−アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を更に含有していてもよい。他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基(−OH)又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基(−COOH)とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、スチレン−アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物(両性化合物)が更に重合してなる重合体であることが好ましい。
両性化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等などのカルボキシ基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する化合物;が含まれる。
上記スチレン−アクリル樹脂における上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
上記スチレン−アクリル樹脂は、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成することができる。油溶性の重合開始剤の例には、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤及び過酸化物系重合開始剤、が含まれる。
上記アゾ系又はジアゾ系重合開始剤の例には、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル及びアゾビスイソブチロニトリルが含まれる。
過酸化物系重合開始剤の例には、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン及びトリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジンが含まれる。
また、乳化重合法でスチレン−アクリル樹脂の樹脂粒子を合成する場合には、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤の例には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸とその塩及び過酸化水素、が含まれる。
非晶性樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、その重量平均分子量(Mw)が、5000〜150000であると好ましく、10000〜70000であるとより好ましい。
本発明に係る結晶性樹脂とは、結晶性樹脂又はトナー粒子のDSCにおいて、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、DSCにおいて、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂とは、このような結晶性樹脂のうち、ポリエステル樹脂であるものをいう。
なお、本発明において、結着樹脂は少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有するが、本発明の効果発現を阻害しない範囲内で、結晶性ポリエステル樹脂以外の結晶性樹脂も使用できる。なお、そのような結晶性樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用でき、1種類であってもよく、複数の種類であってもよい。
上記結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、十分な低温定着性と高温保存性とを得る観点から、50〜90℃の範囲内にあることが好ましく、60〜80℃の範囲内にあることがより好ましい。
結着樹脂の融点は、DSCにより測定することができる。具体的には、試料(例えば、結晶性ポリエステル樹脂)0.5mgをアルミニウム製パン「KITNO.B0143013」に封入し、熱分析装置「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目と2回目の加熱時には、10℃/分の昇温速度で室温(25℃)から150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点(Tm)として測定する。
また、上記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が5000〜50000の範囲内にあり、数平均分子量(Mn)が2000〜10000の範囲内にあることは、低温定着性及び最終画像における安定した光沢の発現の観点から好ましい。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
トナー母体粒子における結晶性樹脂の含有量は、5〜20質量%であることが、良好な低温定着性と高温高湿環境下での転写性とを両立する観点から好ましい。上記含有量が5質量%以上であれば、形成されるトナー画像の低温定着性が十分となる。また、上記含有量が20質量%以下であれば、転写性が十分となる。
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。
多価カルボン酸の例には、ジカルボン酸が含まれる。このジカルボン酸は、1種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を更に含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖型であることが、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル及びこれらの酸無水物、が含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両立との効果が得られやすい観点から、炭素数6〜16の範囲内の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、更に炭素数10〜14の範囲内の脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4′−ビフェニルジカルボン酸が含まれる。中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸又はt−ブチルイソフタル酸が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂における上記ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を十分に確保する観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
上記多価アルコール成分の例には、ジオールが含まれる。ジオールは、1種でもそれ以上でもよく、脂肪族ジオールであることが好ましく、それ以外のジオールを更に含んでいてもよい。脂肪族ジオールは、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、直鎖型であることが好ましい。
上記脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオールが含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両立との効果が得られやすい観点から、炭素数2〜12の範囲内の脂肪族ジオールが好ましく、更に炭素数4〜6の範囲内の脂肪族ジオールがより好ましい。
その他のジオールの例には、二重結合を有するジオール及びスルホン酸基を有するジオール、が含まれる。具体的には、二重結合を有するジオールの例には、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオールが含まれる。
結晶性ポリエステル樹脂におけるジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、トナーの低温定着性及び最終的に形成される画像の光沢性を高める観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂のモノマーにおける上記ジオールと上記ジカルボン酸との割合は、ジオールのヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2.0/1.0〜1.0/2.0の範囲内であることが好ましく、1.5/1.0〜1.0/1.5の範囲内であることがより好ましく、1.3/1.0〜1.0/1.3の範囲内であることが特に好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の合成に使用可能な触媒は、1種でもそれ以上でもよく、その例には、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物;が含まれる。
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150〜250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、0.5〜10時間の範囲内であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(以下、単に「ハイブリッド樹脂」ともいう。)を含有していてもよい。ハイブリッド結晶性樹脂を含有させることにより、併用する非晶性樹脂との親和性が向上するため、トナーの低温定着性が向上する。また、結晶性樹脂のトナー中での分散性が向上するため、ブリードアウトを抑制することができる。
ハイブリッド樹脂は、1種でもそれ以上でもよい。また、ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂の全量と置き換えられていてもよいし、一部と置き換えられていても(併用されていても)よい。
ハイブリッド樹脂の好ましい重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期保管安定性を確実に両立し得るという観点から、5000〜100000の範囲内であると好ましく、7000〜50000の範囲内であるとより好ましく、8000〜20000の範囲内であると特に好ましい。ハイブリッド樹脂のMwを100000以下とすることにより、十分な低温定着性を得ることができる。一方、ハイブリッド樹脂のMwを5000以上とすることにより、トナー保管時において当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を効果的に抑制することができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、例えば、結晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂であってもよいし、結晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂であってもよい。当該結晶性ポリエステル重合セグメントは、前述した多価カルボン酸及び多価アルコールから、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同様に合成され得る。
ハイブリッド樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、80〜98質量%の範囲内であることが好ましく、90〜95質量%の範囲内であるとより好ましく、91〜93質量%の範囲内であることが更に好ましい。なお、ハイブリッド樹脂中(又はトナー中)の各重合セグメントの構成成分及びその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)やメチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py−GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
結晶性ポリエステル重合セグメントは、モノマーに不飽和結合を有するモノマーを更に含むことが、非晶性重合セグメントとの化学的な結合部位を当該セグメント中に導入する観点から好ましい。不飽和結合を有するモノマーは、例えば二重結合を有する多価アルコールであり、その例には、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸などの二重結合を有する多価カルボン酸;2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール及び4−オクテン−1,8−ジオールが含まれる。上記結晶性ポリエステル重合セグメントにおける上記不飽和結合を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
なお、ハイブリッド樹脂には、更にスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの官能基が導入されていてもよい。上記官能基の導入は、上記結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、上記非晶性重合セグメント中であってもよい。
非晶性重合セグメントは、結着樹脂を構成する非晶性樹脂とハイブリッド樹脂との親和性を高める。それにより、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、トナーの帯電均一性がより一層向上する。ハイブリッド樹脂中(又はトナー中)の非晶性重合セグメントの構成成分及びその含有量は、例えばNMRやメチル化反応Py−GC/MSなどの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
非晶性重合セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂と同種の樹脂で構成されることが、結着樹脂との親和性を高め、トナーの帯電均一性を高める観点から好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合を有する樹脂同士のことを意味する。
非晶性重合セグメントにおけるスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、40〜90質量%の範囲内であることが、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる観点から好ましい。また、同様の観点から、非晶性重合セグメントにおける(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、10〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
さらに、非晶性重合セグメントは、前述した両性化合物をモノマーに更に含有することが、上記結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位を上記非晶性重合セグメントに導入する観点から好ましい。非晶性重合セグメントにおける上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
上記ハイブリッド樹脂における上記非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、3〜15質量%の範囲内であることが好ましく、5〜10質量%の範囲内であることがより好ましく、7質量〜9質量%の範囲内であることが更に好ましい。
ハイブリッド樹脂は、例えば、以下に示す第1から第3の製造方法によって製造することができる。
第1の製造方法は、あらかじめ合成された非晶性重合セグメントの存在下で結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。
第2の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法である。
第3の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを合成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法である。
離型剤としては、特に限定されるものではなく公知の種々のワックスを用いることができる。
エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステルのいずれをも用いることができ、例えば、下記一般式(1)〜(3)で表される構造を有する高級脂肪酸及び高級アルコールのエステル類、下記一般式(4)で表される構造を有するトリメチロールプロパントリエステル類、下記一般式(5)で表される構造を有するグリセリントリエステル類、下記一般式(6)で表される構造を有するペンタエリスリトールテトラエステル類などを挙げることができる。
一般式(2) R1−COO−(CH2)n−OCO−R2
一般式(3) R1−OCO−(CH2)n−COO−R2
式(1−2) CH3−(CH2)14−COO−(CH2)15−CH3
式(1−3) CH3−(CH2)16−COO−(CH2)17−CH3
式(1−4) CH3−(CH2)16−COO−(CH2)21−CH3
式(1−5) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)17−CH3
式(1−6) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)21−CH3
式(1−7) CH3−(CH2)25−COO−(CH2)25−CH3
式(1−8) CH3−(CH2)28−COO−(CH2)29−CH3
式(2−2) CH3−(CH2)18−COO−(CH2)4−OCO−(CH2)18−CH3
式(2−3) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)2−OCO−(CH2)20−CH3
式(2−4) CH3−(CH2)22−COO−(CH2)2−OCO−(CH2)22−CH3
式(2−5) CH3−(CH2)16−COO−(CH2)4−OCO−(CH2)16−CH3
式(2−6) CH3−(CH2)26−COO−(CH2)2−OCO−(CH2)26−CH3
式(2−7) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)6−OCO−(CH2)20−CH3
式(3−2) CH3−(CH2)23−OCO−(CH2)6−COO−(CH2)23−CH3
式(3−3) CH3−(CH2)19−OCO−(CH2)6−COO−(CH2)19−CH3
また、離型剤に採用可能なエステルワックスは、一つの分子内にモノエステル構造、ジエステル構造、トリエステル構造及びテトラエステル構造の複数が保有された構造のものであってもよい。
また、離型剤としては、以上のエステルの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上述のように、本発明に係る離型剤として、マイクロクリスタリンワックスを使用してもよい。
ここで、マイクロクリスタリンワックスとは、石油ワックスの中で、主成分が直鎖状炭化水素(ノルマルパラフィン)であるパラフィンワックスとは異なり、直鎖状炭化水素の他に分岐鎖状炭化水素(イソパラフィン)や環状炭化水素(シクロパラフィン)を多く含むワックスをいい、一般に、マイクロクリスタリンワックスは、低結晶性のイソパラフィンやシクロパラフィンが多く含有されているために、パラフィンワックスに比べて結晶が小さく、分子量が大きいものである。
このようなマイクロクリスタリンワックスは、炭素数が30〜60の範囲内、重量平均分子量が500〜800の範囲内、融点が60〜90℃の範囲内である。マイクロクリスタリンワックスとしては、重量平均分子量が600〜800の範囲内、融点が60〜85℃の範囲内であるものが好ましい。また、低分子量のもので特に数平均分子量が300〜1000の範囲内のものが好ましく、400〜800の範囲内のものがより好ましい。また、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、1.01〜1.20の範囲内であることが好ましい。
(式(i)中、C1は1級炭素原子に係るピーク面積、C2は2級炭素原子に係るピーク面積、C3は3級炭素原子に係るピーク面積、C4は4級炭素原子に係るピーク面積を表す。)
測定装置 :FT NMR装置 Lambda400(日本電子社製)
測定周波数 :100.5MHz
パルス条件 :4.0μs
データポイント:32768
遅延時間 :1.8sec
周波数範囲 :27100Hz
積算回数 :20000回
測定温度 :80℃
溶媒 :ベンゼン−d6/o−ジクロロベンゼン−d4=1/4(v/v)
試料濃度 :3質量%
試料管 :径5mm
測定モード :1H完全デカップリング法
上記例示した離型剤の中でも、本発明においては、少なくとも炭素数が30〜72の範囲内の脂肪酸エステルワックスを含むことが好ましい。これにより、結晶化温度が好ましい範囲(50〜80℃)としやくすくなり、かつ低温定着性を良好にできる。なお、このような脂肪酸エステルワックスの具体的な例としては、例えば、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル、グリセリンベヘン酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
また、離型剤は、炭化水素ワックスを含有することが好ましく、中でも分岐構造を有する炭化水素ワックスであることが好ましい。これは、分岐構造により結晶化が促進されやすくなり、この結果、ΔHc(L)を好適に小さくすることができ、ひいては、本発明の効果を好適に発現できるからである。なお、このような分岐構造を有する炭化水素ワックスの具体例としては、例えば、マイクロクリスタリンHNP0190等が挙られるがこれに限定されない。
さらに、離型剤は、少なくとも炭化水素ワックス及び炭素数が30〜72の範囲内の脂肪酸エステルワックスを含有することがより好ましい。これにより、結晶化温度をより好ましい範囲にでき、かつ低温定着性がより良好にできる。また、離型剤として、少なくとも、炭化水素ワックス及び炭素数が30〜72の脂肪酸エステルワックスを含むことで、結晶化温度の低い脂肪酸エステルに結晶化温度の高い炭化水素ワックスが混合することとなり、脂肪酸エステルの結晶化を促進しΔHc(L)を好適に小さくすることができ、ひいては、本発明の効果を好適に発現できる。
トナー母体粒子中、離型剤の含有率は、3〜15質量%の範囲内であることが好ましく、5〜12質量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明のトナー母体粒子が含有する着色剤としては、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。着色剤としてはカーボンブラック、磁性粉のほか、各種有機、無機の顔料、染料等が使用できる。着色剤の添加量はトナー粒子に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲とされる。
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩等の公知の化合物を用いることができる。荷電制御剤により、帯電性に優れたトナーを得ることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部の範囲内とすることができる。
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するため、流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤で処理されていてもよい。
これら無機粒子は、耐熱保管性及び環境安定性の向上の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理が行われていることが好ましい。
トナー粒子は、そのままトナーとして用いることができるが、当該トナー粒子をコア粒子として当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造のトナー粒子であってもよい。シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)等の公知の観察手段によって、確認することができる。
トナー粒子の粒径としては、体積基準のメジアン径(d50)が3〜10μmの範囲内にあることが好ましく、5〜8μmの範囲内にあることがより好ましい。
上記範囲内にあれば、1200dpiレベルの非常に微小なドット画像であっても高い再現性が得られる。
なお、トナー粒子の粒径は、製造時に使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、結着樹脂の組成等によって制御することができる。
具体的には、測定試料(トナー)を、界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、超音波分散を行い、トナー粒子分散液を調製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmとし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(d50)として得る。
トナー粒子は、帯電性の安定性及び低温定着性を高める観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内にあることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内にあることがより好ましい。
平均円形度が上記範囲内にあれば、個々のトナー粒子が破砕しにくくなる。これにより、摩擦帯電付与部材の汚染を抑制してトナーの帯電性を安定させることができるとともに、形成される画像の画質を高めることができる。
具体的には、測定試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させる。その後、FPIA−2100(Sysmex社製)によって、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行う。HPF検出数が上記の範囲内であれば、再現性のある測定値を得ることができる。撮影した粒子像から、個々のトナー粒子の円形度を下記式(I)に従って算出し、各トナー粒子の円形度を加算して全トナー粒子数で除することにより、平均円形度を得る。
式(I)
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
本発明の静電潜像現像用トナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)としては、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、25〜80μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径(d50)は、例えば湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置ヘロス(HELOS)(SYMPATEC社製)により測定することができる。
本発明に係るトナーの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
本発明のトナーにおいては、どちらの製造方法も適用可能である。
(1)水系媒体中に着色剤の微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)乳化重合により、結着樹脂微粒子の分散液を調製する工程
(4)着色剤の微粒子の分散液と、結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤の微粒子と結着樹脂微粒子とを凝集、会合、融着させてトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程
(1)結着樹脂、着色剤並びに必要に応じて内添剤をヘンシェルミキサーなどにより混合する工程
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、更にターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行う工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー母体粒子を形成する工程
(5)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程
[非晶性樹脂微粒子分散液(非晶性分散液)X1の調製]
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて上記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液x1を調製した。
(単量体混合液1)
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、当該溶液を80℃に加熱後、80質量部の樹脂微粒子の分散液x1(固形分換算)と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液2とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社製、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。下記ベヘン酸ベヘニルは、離型剤であり、その融点は73℃である。
(単量体混合液2)
スチレン 285質量部
n−ブチルアクリレート 95質量部
メタクリル酸 20質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
ベヘン酸ベヘニル 190質量部
さらに、樹脂微粒子の分散液x2にイオン交換水400質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、上記分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン−アクリル樹脂)からなる非晶性樹脂微粒子分散液(以下、「非晶性分散液」ともいう。)X1を調製した。
(単量体混合液3)
スチレン 307質量部
n−ブチルアクリレート 147質量部
メタクリル酸 52質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
第3段重合におけるベヘン酸ベヘニルを表1、2に示す比率の離型剤1〜7に変更した以外は非晶性分散液X1の調製と同様にして、非晶性樹脂微粒子分散液(非晶性分散液)X2〜X8、X10のそれぞれを得た。
非晶性分散液X1の調製において、単量体混合液3を下記単量体混合液4に変更した以外は同様にして、非晶性分散液X9を得た。
(単量体混合液4)
スチレン 323質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
メタクリル酸 52質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 10質量部
非晶性分散液X1の調製において、単量体混合液3を下記単量体混合液5のように変更した以外は同様にして、非晶性分散液X11を得た。
(単量体混合液5)
スチレン 207質量部
メチルメタクリレート 100質量部
n−ブチルアクリレート 147質量部
メタクリル酸 52質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
ドデカン二酸281質量部及び1,6−ヘキサンジオール283質量部を、撹拌器、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れた。反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、Ti(OBu)4を0.1質量部添加し、得られた混合液を窒素ガス気流下、約180℃で8時間撹拌し、反応を行った。さらに、当該混合液にTi(OBu)4を0.2質量部添加し、当該混合液の温度を約220℃に上げ6時間、当該混合液を撹拌し、反応を行った。その後、反応容器内の圧力を1333.2Paまで減圧し、減圧下で反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。結晶性ポリエステル樹脂1の数平均分子量(Mn)は5500であり、重量平均分子量(Mw)は18000であり、融点(Tm)は67℃であった。
ドデカン二酸をデカン二酸に、1,6−ヘキサンジオールを1,9−ノナンジオールに変更する以外は結晶性ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。結晶性ポリエステル樹脂2のMnは(4300)であり、Mwは(19200)であり、Tmは66℃であった。
ドデカン二酸をデカン二酸に変更する以外は結晶性ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂3を得た。結晶性ポリエステル樹脂3のMnは5600であり、Mwは19000であり、Tmは78℃であった。
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系セグメント(スチレン・アクリルセグメント:St−Ac)の原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
1,6−ヘキサンジオール 128質量部
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
得られた結晶性ポリエステル樹脂4は、重量平均分子量(Mw)が18000、融点(Tm)が67℃であった。
結晶性ポリエステル樹脂1を30質量部溶融させた状態で、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)へ毎分100質量部の移送速度で移送した。同時に、濃度0.37質量%の希アンモニア水を熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で上記乳化分散機へ移送した。上記希アンモニア水は、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈して調製した。
そして、上記乳化分散機を、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm2(490kPa)の条件で運転することにより、固形分量が30質量部である結晶性ポリエステル樹脂1の結晶性樹脂微粒子分散液(結晶性分散液)C1を調製した。結晶性分散液C1におけるに含まれる結晶性ポリエステル樹脂1の粒子の体積基準のメジアン径(d50)は200nmであった。
結晶性ポリエステル樹脂1に代えて結晶性ポリエステル樹脂2を用いる以外は結晶性分散液C1の調製と同様にして、結晶性樹脂微粒子分散液(結晶性分散液)C2を調製した。結晶性分散液C2における結晶性ポリエステル樹脂2の粒子のd50は230nmであった。
結晶性ポリエステル樹脂1に代えて結晶性ポリエステル樹脂3を用いる以外は結晶性分散液C1の調製と同様にして、結晶性樹脂微粒子分散液(結晶性分散液)C3を調製した。結晶性分散液C3における結晶性ポリエステル樹脂3の粒子のd50は185nmであった。
結晶性ポリエステル樹脂1に代えて結晶性ポリエステル樹脂4を用いる以外は結晶性分散液C1の調製と同様にして、結晶性樹脂微粒子分散液(結晶性分散液)C4を調製した。結晶性分散液C4における結晶性ポリエステル樹脂4の粒子のd50は185nmであった。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、得られた分散液を、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子が分散されてなる着色剤微粒子分散液(着色剤分散液)Bkを調製した。着色剤分散液Bkにおける体積基準のメジアン径d50を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、120nmであった。
両性化合物(アクリル酸)を含む下記組成からなる、単量体混合液6を滴下ロートに入れた。なお、ジ−t−ブチルパーオキサイドは、重合開始剤である。
(単量体混合液6)
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
ジ−t−ブチルパーオキサイド 16質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物
285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
100質量部のシェル用非晶性樹脂s1を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、得られた混合液を、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(株式会社日本精機製作所製)によって、V−LEVELが300μAの条件で30分間超音波分散後した。その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を用いて上記混合液を減圧下で3時間撹拌して酢酸エチルを完全に除去した。こうして、固形分量が13.5質量%のシェル用非晶性樹脂微粒子分散液(シェル用分散液)S1を調製した。シェル用分散液S1におけるシェル用樹脂粒子の体積基準のメジアン径(d50)は160nmであった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、288質量部の非晶性分散液X1(固形分換算)及び2000質量部のイオン交換水を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を更に添加して当該反応容器中の分散液のpHを10(測定温度25℃)に調整した。
非晶性分散液X1及び結晶性分散液C1を、表3に示す非晶性分散液及び結晶性分散液に変更すること以外はトナー1の製造と同様にして、トナー2〜14のそれぞれを製造し、更には、現像剤2〜14を製造した。
以下、トナー1〜14について下記のようにして評価した。結果は表4に示す。
(1)吸熱ピークトップ温度、発熱ピーク温度等の測定
トナー1〜14を、熱分析装置「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)を用いて前述の条件で測定することにより、各トナーの昇温時の吸熱ピークトップ温度(mp)並びに降温時の発熱ピーク全体の発熱量ΔHc及び発熱ピークトップ温度rcを測定した。
トナー1〜14の低温定着性について、それぞれ、現像剤1〜14を用いて評価した。具体的には下記のとおりである。
複写機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)の改造機に試料となる現像剤1〜14を装填した。当該改造機は、定着用ヒートローラの表面温度を85〜210℃の範囲で変更することができるように、上記複写機の定着装置を改造した装置である。そして、A4サイズの普通紙(坪量80g/m2)上に試料となるトナーの付着量11mg/10cm2のベタ画像を定着させる定着実験を所定の定着温度で繰り返し行った。当該定着温度は、85℃から130℃までの5℃刻みの温度に設定した。
ランク5:全く剥離なし
ランク4:一部折れ目に従った剥離あり
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:大きな剥離あり
そして、下限定着温度に基づいて、下記の基準2により各トナーセットにおける低温定着性を評価した。下限定着温度は、低ければ低い程、低温定着性に優れることを意味しており、下限定着温度が120℃以下(「◎」、「○」、「△」)であれば実用上問題ないため、合格と判定する。
(基準2)
◎:下限定着温度が105℃以下
○:下限定着温度が105℃より大きく118℃以下
△:下限定着温度が118℃より大きく120℃以下
×:下限定着温度が120℃より大きい
高温保管後のトナー1〜14の画像ノイズについて、それぞれ、トナー1〜14を50℃40%RHの環境下で24時間保管し、それらを用いて上記現像剤1〜14と同様に作製した現像剤1′〜14′を用いて評価した。具体的には下記のとおりである。
評価装置として、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)を用いた。現像剤1′〜14′を装填し、高温高湿(30℃・80%RH)環境で、A4版の上質紙(65g/m2)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を10万枚形成する印刷を行った。
2 微分曲線
PS ピークの始点
PE ピークの終点
MV1 極小点
MV2 極小点
Claims (5)
- 少なくとも結着樹脂と、離型剤とを含有する静電潜像現像用トナーにおいて、
前記結着樹脂が、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
前記静電潜像現像用トナーの示差走査熱量測定による昇温時の吸熱ピークトップ温度が70℃以上であり、
前記示差走査熱量測定による降温時の発熱ピーク全体の発熱量ΔHcに対して、(発熱ピークトップ温度rc−7℃)以下の発熱量ΔHc(L)が、15%以下であり、
前記離型剤が、少なくとも炭化水素ワックス及び炭素数が40〜77の範囲内の脂肪酸エステルワックスを含有し、かつ、
前記炭化水素ワックス及び前記脂肪酸エステルワックスの質量比の値(炭化水素ワックスの質量/脂肪酸エステルワックスの質量)が、5/95〜15/85の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。 - 前記炭化水素ワックスとして、分岐構造を有する炭化水素ワックスを含有することを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記示差走査熱量測定による降温時の発熱ピークトップ温度rcが、50〜80℃の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記示差走査熱量測定による降温時の発熱ピークトップ温度rcが、60〜75℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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