JP6924020B2 - 椀型中空ポリマー粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このようなポリマー粒子について、近年、塗料や化粧料分野等において、均一な光拡散性を有するポリマー粒子が求められるようになっている。光が均一に拡散することにより、ポリマー粒子を含有する塗料や化粧料を塗布した際に、よりムラなどがなく、良好な皮膜外観が得られるものである。
本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
本発明の椀型中空ポリマー粒子は、三次元変角光度計を用い、椀型中空ポリマー粒子に入射角60°で光照射したときの反射光強度を測定した際に、測定角度が60°における反射光強度(R2)(%)と0°における反射光強度(R1)(%)の差(R2−R1)が10%以上であることを特徴とするものであり、好ましくは12%以上、特に好ましくは14%以上である。なお、通常上限値は100%、好ましくは99%である。
かかる反射光強度の差(R2−R1)が上記範囲外であると良好な光学特性を発現しなくなり、本発明の目的が達成されない。
まず市販の黒色の厚紙(5cm×5cm)の上に両面テープ(3cm×5cm)を貼付し、厚紙に被着している側と反対側の粘着面上に、ポリメタクリル酸メチル粒子(綜研化学社製「SP−50」、形状:中実平滑粒子)を塗布し、刷毛で均一に広げて、反射光強度の基準測定用サンプルとする。
次に、測定対象となる本発明の椀型中空ポリマー粒子を作製し、上記と同様にして市販の黒色の厚紙の上に両面テープを貼り、その上に本発明の椀型中空ポリマー粒子を塗布し、反射光強度の対象測定用サンプルとする。
三次元変角光度計(株式会社村上色彩技術研究所製「GP−200」、ハロゲンランプ使用)を用いて、入射角を60°に設定し、基準測定用サンプル(平滑中実粒子)の反射光強度を測定した時の最大SENSITIVITYが170になるようにHIGH VOLTを調整し、対象測定用サンプルの反射光強度を測定した際の値を対象測定用サンプル(椀型中空ポリマー粒子)の反射光強度とする。
なかでも、スチレン系モノマーとしてはスチレン、(メタ)アクリレート系モノマーとしてはアルキル基の炭素数が1〜18、特には1〜10、更には1〜6の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、なかでもメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
なかでも、重合安定性の点からジビニルベンゼンを用いることが好ましい。
本発明において、椀型中空ポリマー粒子を製造するに際しては、モノマー成分と非反応性溶媒とを含有するモノマー溶液を、水性媒体中で懸濁重合してなるポリマー粒子懸濁液を用い、該ポリマー粒子懸濁液中に分散してなるポリマー粒子中に内包されている非反応性溶媒を除去する工程を行うことが好ましい。
上記のポリマー粒子懸濁液の製造方法は、モノマー成分と非反応性溶媒を含有するモノマー溶液を、水性媒体中で懸濁重合するものである。
このような溶媒を用いることにより、重合初期の段階でモノマー成分が重合してなるポリマーと溶媒とが相分離し、ポリマー重合中を通して粒子内部に溶媒がまとまって安定的に存在するため、内部に空隙部分を有する椀型中空ポリマー粒子を効率的かつ安定的に製造できるものである。
なかでも、水性媒体との相溶性が低く、かつ、モノマー成分との相溶性および比重のバランスに優れ、椀型中空ポリマー粒子の重合安定性に優れる点から、流動パラフィン類を用いることが好ましく、特には流動イソパラフィンが好ましい。
かかる平均ケン化度が低すぎると安定的に重合が進行しにくく、重合が完結したとしてもポリマー粒子懸濁液の保存安定性が低下してしまう傾向があり、高すぎると懸濁液作製時の安定性が低下する傾向がある。
なお、平均ケン化度は、JIS K 6726に記載のケン化度の算出方法にしたがって求めることができる。
なお、平均重合度は、JIS K 6726に記載の平均重合度の算出方法にしたがって求めることができる。
かかる分散安定剤の使用量が少なすぎると、モノマー溶液の分散安定性が低下し、重合安定性が低下する傾向があり、使用量が多すぎると、重合されたポリマー粒子が凝集し、重合安定性が低下する傾向がある。
また、上記分散安定剤の添加方法としては、(1)分散安定剤をモノマー溶液に全量含有させて一括して添加する方法や、(2)重合の経過に伴って必要に応じて重合途中に分散安定剤をさらに1回以上添加する方法等を用いることができる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。上記水溶性重合禁止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、塩化銅、塩化鉄、塩化チタン、ヒドロキノン等が挙げられる。
[I]モノマー成分と非反応性溶媒、および重合開始剤を混合してモノマー溶液を調製する工程。
[II]上記モノマー溶液が油滴として水性媒体中に分散してなる懸濁液を調製する工程。
[III]上記懸濁液中に分散するモノマー溶液中のモノマー成分を重合させることにより、ポリマー粒子が水性媒体中に分散してなるポリマー粒子懸濁液を製造する工程。
なお、上記油滴の平均粒子径を揃える方法としては、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機を用いる方法等があげられる。
上記の製造方法により得られるポリマー粒子懸濁液を製造後、ポリマー粒子懸濁液から水性媒体およびポリマー粒子に内包されてなる非反応性溶媒を除去することにより、内部に単一の空隙を有する本発明の椀型中空ポリマー粒子が得られる。
上記真空乾燥としては、例えば、真空乾燥機等を用いて、0〜90kPaの減圧条件下で、10〜90℃の温度条件で3〜20時間加熱乾燥させることが好ましい。
〈ポリマー粒子懸濁液(A−1)の製造〉
モノマー成分としてスチレンを95部、ジビニルベンゼン(新日鉄住金化学製:「DVB−570」)を5部、重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:「V−65」)を2部、油溶性溶剤としてイソパラフィン(出光興産社製:「IPソルベント1620MU」(15℃における体積密度0.762g/cm3))を89部それぞれ準備し、これらを混合、撹拌することにより、モノマー溶液を調製した。
上記懸濁液中の油滴の平均粒子径を、HORIBA社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した結果、油滴の平均粒子径は約4μmであった。
上記で得られたポリマー粒子懸濁液(A−1)をろ過し、固形分(ポリマー粒子)と水溶液を分離した。採取した固形分を、25℃のイソプロパノール中で1時間撹拌した後、濾過することにより同様に固形分を採取し、採取した固形分を50℃で約24時間乾燥させることにより、椀型中空ポリマー粒子(P−1)を得た。
得られた椀型中空ポリマー粒子(P−1)の平均粒子径について、HORIBA社製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した結果、平均粒子径は約4μmであった。
〈ポリマー粒子懸濁液(A−2)の製造〉
重合反応を75℃で3時間行った時点で、イオン交換水に分散安定剤としてPVA(日本合成化学工業社製:ゴーセノールEG−40)が5.00%の濃度で溶解している水溶液を13部添加し、さらに75℃で2時間重合反応を継続した以外、実施例1と同様にして、非反応性溶媒が内包されてなるポリマー粒子が水性媒体中に分散してなるポリマー粒子懸濁液(A−2)を得た。
上記で得られたポリマー粒子懸濁液(A−2)を用いて、実施例1と同様にして、椀型中空ポリマー粒子(P−2)を得た。
得られた椀型中空ポリマー粒子(P−2)の平均粒子径は約5μmであった。
比較例1として、ポリメタクリル酸メチル粒子(P’−1)(綜研化学社製、「SP−50」、平均粒子径5μm)を準備した。この粒子の形状をSEM観察した結果、表面が平滑な中実粒子であることが確認できた。
モノマー成分としてエチレングリコールジメタクリレートを63部、重合開始剤として2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:V−65)を1部、油溶性界面活性剤としてポリリシノレイン酸ヘキサグリセリル(日光ケミカルズ社製:ヘキサグリンPR−15(HLB3.2))を0.2部(アクリル系モノマーに対して0.38%)をそれぞれ準備し、これらを混合、撹拌することにより、モノマー溶液を調製した。
上記で得られたポリマー粒子懸濁液(A’−1)をろ過し、固形分(ポリマー粒子)と水溶液を分離した。採取した固形分を、70℃のオーブン中で加熱乾燥させることにより、中空ポリマー粒子(P’−2)を得た。
得られた中空ポリマー粒子(P’−2)の平均粒子径は約14μmであった。
得られた中空ポリマー粒子(P’−2)の形状をSEM観察した結果、表面が平滑な中空粒子であることが確認できた。
上記実施例および比較例で得られた各ポリマー粒子を用いて、下記の方法で光線反射率を測定し、反射光特性を評価した。結果を表1に示す。
まず市販の黒色の厚紙(5cm×5cm)の上に両面テープ(3cm×5cm)を貼付し、厚紙に被着している側と反対側の粘着面上に、比較例1のポリメタクリル酸メチル粒子(綜研化学社製「SP−50」、形状:中実平滑粒子)を塗布し、刷毛で均一に広げて、反射光強度の基準測定用サンプルとした。
測定結果を図4に示す。
(評価基準)
○:測定角度−55°での反射光強度が60%以下
×:測定角度−55°での反射光強度が60%より大きい
その中でも実施例1及び2の椀型中空ポリマー粒子は、入射角60°に対する測定角度−55°での反射光強度(最大反射光強度に相当するものとみなすことができる)が、比較例1のポリマー粒子と比較して低いものであり、光拡散性に優れることがわかる。また、比較例2は中空ポリマー粒子に関するものであり、各測定角度の反射光強度が実施例に比べて高く、これではソフトフォーカス効果が充分に得られないものである。
これらの実施例の椀型中空ポリマー粒子の特性は、例えば、化粧料用途等において優位性のあるものである。
〔測定用サンプルの作製〕
人工皮革サプラーレ(イデアテックスジャパン製、黒色)4cm×4cmの試験片を用意し、基準測定用サンプルとした。
この実施例の椀型中空ポリマー粒子の特性は、例えば、化粧料用途等において優位性のあるものである。
また、少ない使用量で高い効果が得られることから、経済性にも優位性のあるものである。
Claims (4)
- エチレン性不飽和基を1つ有するエチレン性不飽和化合物とエチレン性不飽和基を2つ以上有するエチレン性不飽和化合物を含むモノマー成分と非反応性溶媒とを含有するモノマー溶液を、水性媒体中で懸濁重合してポリマー粒子の懸濁液を得、
該ポリマー粒子の懸濁液をろ過し、
得られた前記ポリマー粒子を下記(1)に示される有機溶剤中で撹拌し、次いでろ過して前記ポリマー粒子を採取し、この採取されたポリマー粒子を乾燥することにより、前記ポリマー粒子中に内包されている非反応性溶媒を除去する、
下記(2)の椀型中空ポリマー粒子を製造する椀型中空ポリマー粒子の製造方法。
(1)メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、アセトン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルから選ばれる有機溶剤。
(2)前記椀型中空ポリマー粒子は、次の(2−1)及び(2−2)の特徴を有する。
(2−1)前記椀型中空ポリマー粒子は、三次元変角光度計を用い、椀型中空ポリマー粒子に入射角60°で光照射したときの反射光強度を測定した際に、測定角度が60°における反射光強度(R2)(%)と0°における反射光強度(R1)(%)の差(R2−R1)が10%以上である。
(2−2)前記椀型中空ポリマー粒子は、三次元変角光度計を用い、椀型中空ポリマー粒子に入射角60°で光照射したときの反射光強度を測定した際に、測定角度が−55°における反射光強度(R3)(%)が60%以下である。 - 前記非反応性溶媒として、15℃における体積密度が1.2g/cm3以下である溶媒を用いることを特徴とする請求項1記載の椀型中空ポリマー粒子の製造方法。
- 前記非反応性溶媒の使用量がモノマー成分100重量部に対して85〜200重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の椀型中空ポリマー粒子の製造方法。
- 前記モノマー成分として、エチレン性不飽和基を2つ以上有するエチレン性不飽和化合物をモノマー成分全体に対して0.1〜50重量%含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の椀型中空ポリマー粒子の製造方法。
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