<実施の形態1>
以下、図面を用いて実施の形態1にかかるレーザ照射装置について説明する。図1は、実施の形態1にかかるレーザ照射装置を説明するための平面図である。図2は、図1に示すレーザ照射装置の切断線A−Aにおける断面図である。
(レーザ照射装置の全体構成)
図1、図2に示すように、レーザ照射装置1は、浮上ユニット10を備える。浮上ユニット10は、被処理体16を浮上させながら搬送する。具体的には、レーザ照射装置1は、浮上ユニット10を用いて被処理体16を浮上させながら、把持部18(図1参照)を用いて被処理体16を把持して搬送方向(x軸方向)に被処理体16を搬送する。被処理体16が搬送される際、浮上ユニット10は被処理体16の上側に配置されている他の機構(不図示)に被処理体16が接触しないように浮上量を調整している。
把持部18には、例えば吸盤型の真空吸着機構や多孔質体を備える真空吸着機構を用いることができる。把持部18は、排気ポート(不図示)と接続されており、排気ポートはエジェクタや真空ポンプなどと接続されている。よって、吸気ポートには、ガスを吸引するための負圧が作用する。これにより把持部18の真空吸着機構が被処理体16に吸着する。把持部18は、被処理体16を把持しながら、把持部18の駆動機構によって搬送される。これにより、被処理体16が搬送される。なお、被処理体16の搬送速度は、把持部18の駆動機構の搬送速度を調整することで制御することができる。例えば、被処理体16は、浮上ユニット10の上を浮上した状態で等速に搬送される。よって、被処理体16はレーザ光の照射位置を一定の速度で通過する。
被処理体16にはレーザ光15(以下、レーザ光の照射位置も符号15で示す)が照射される。例えば、レーザ照射装置はレーザアニール装置であり、この場合はレーザ発生装置14(図2参照)にエキシマレーザ等を用いることができる。レーザ発生装置14から供給されたレーザ光は、光学系(不図示)においてライン状となり、被処理体16にはライン状、具体的には焦点がy軸方向に伸びるレーザ光15(ラインビーム)が照射される(図1参照)。また、被処理体は、例えば基板上に形成された非晶質膜であり、この非晶質膜にレーザ光15を照射してアニール処理することで、非晶質膜を結晶化させることができる。
図1、図2に示すように、浮上ユニット10は、精密浮上ユニット11a、11b、及びラフ浮上ユニット13a〜13jを用いて構成されている。なお、以下では、精密浮上ユニット11a、11bを用いて構成されている領域を精密浮上領域11a、11bと、また、ラフ浮上ユニット13a〜13jを用いて構成されている領域をラフ浮上領域13a〜13jとも記載する。
精密浮上ユニット11a、11bは、レーザ光の照射位置15を含む領域(精密浮上領域)に配置されている。また、ラフ浮上ユニット13a〜13eは、精密浮上ユニット11a、11bに対して、被処理体16の搬送方向上流側(x軸方向マイナス側)に配置されている。また、ラフ浮上ユニット13f〜13jは、精密浮上ユニット11a、11bに対して、被処理体16の搬送方向下流側(x軸方向プラス側)に配置されている。
換言すると、精密浮上ユニット11a、11bは、平面視した際にレーザ光15の焦点(レーザ光の照射位置15に対応。以下、同様。)と精密浮上領域11a、11bとが重畳するように配置されている。また、ラフ浮上ユニット13a〜13jは、レーザ光15の焦点とラフ浮上領域13a〜13jとが重畳しないように配置されている。ここで、平面視した場合とは、図1に示すように、浮上ユニット10をz軸方向側からみた場合を意味する。
図2に示すように、精密浮上ユニット11a、11bは、ガスの噴出および吸引を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。また、ラフ浮上ユニット13a〜13jは、ガスの噴出を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。各々のラフ浮上ユニット13a〜13jの被処理体16と対向する側の面(つまり、各々のラフ浮上ユニット13a〜13jの上面)には、被処理体16とラフ浮上ユニット13a〜13jとの間に存在するガスをラフ浮上ユニット13a〜13jの外部に排出するための溝17が形成されている。
図1、図2に示すように、精密浮上ユニット11a、11b、及びラフ浮上ユニット13a〜13jの各々は、例えばy軸方向に伸びる矩形状のユニットであり、これらの浮上ユニットが搬送方向(x軸方向)に並ぶように配置されている。被処理体16は、ラフ浮上ユニット13a〜13e、精密浮上ユニット11a、11b、ラフ浮上ユニット13f〜13jの順に通過して搬送される。なお、各々の浮上ユニットの形状は矩形状に限定されることはない。例えば、各々の浮上ユニットの形状は正方形であってもよい。
(精密浮上ユニットの構成例)
精密浮上ユニット11a、11bは、被処理体16を精密に浮上させて搬送するユニットであり、搬送時の被処理体16のたわみ量を小さくしながら搬送することができるように構成されている。精密浮上ユニット11a、111bは、被処理体16を浮上させるためのガスの噴出量を精密に制御している。精密浮上領域(精密浮上ユニット)11a、11bは、ガスの噴出および吸引を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。
図3、図4はそれぞれ、精密浮上ユニット11の構成例を説明するための断面図、及び平面図である。なお、以下では精密浮上ユニット11a、11bを総称して精密浮上ユニット11とも記載する。図3に示すように、精密浮上ユニット11は、台座21および多孔質体22を備える。多孔質体22は台座21の上側に設けられており、ガス噴出部として機能する。図4の平面図に示すように、多孔質体22は給気ポート24_1、24_2に接続されており、圧縮されたガスが給気ポート24_1、24_2を介して多孔質体22に供給される。例えば、給気ポート24_1、24_2は精密浮上ユニット11の下部に設けられている。なお、図3に示す断面図では、給気ポート24_1、24_2の配置と排気ポート25_1、25_2の配置とが重なるため、給気ポート24_1、24_2の図示を省略している。多孔質体22に供給された圧縮ガスは、多孔質体22の内部を通過した後、多孔質体22の上面から上方に噴出する。これにより、被処理体16が浮上する。
また、多孔質体22には複数の吸気孔27が形成されている。吸気孔27は、多孔質体22に貫通穴を空けることで形成することができる。図4に示すように、吸気孔27は、多孔質体22の上面(つまり、被処理体16と対向する面)において均一に配置されている。吸気孔27は、被処理体16と精密浮上ユニット11との間に存在するガス(ガス溜まり(図9の符号35参照))を吸引する。図3に示すように、吸気孔27は流路26を介して排気ポート25_1、25_2に接続されている。例えば、排気ポート25_1、25_2は精密浮上ユニット11の下部に設けられている。排気ポート25_1、25_2にはエジェクタや真空ポンプなどが接続されており、エジェクタや真空ポンプなどを用いて排気ポート25_1、25_2を吸引する(つまり負圧にする)ことで、精密浮上ユニット11の上面に存在するガスを吸気孔27から吸引することができる。
図5は、精密浮上ユニット11を用いて被処理体16を搬送している状態を説明するための断面図である。図5に示すように、精密浮上ユニット11では、多孔質体22から上方にガスが噴出しているので、精密浮上ユニット11の上に被処理体16が搬送されてくると、このガスが被処理体16の下面に衝突して被処理体16が浮上する。よって、精密浮上ユニット11と被処理体16とが非接触の状態となる。このとき、被処理体16と精密浮上ユニット11との隙間、つまり被処理体16の浮上量は、給気ポート24_1、24_2に供給されるガスの量、換言すると、多孔質体22から噴出するガスの量を調整することで制御することができる。
また、被処理体16と精密浮上ユニット11との間に存在するガス(ガス溜まり(図9の符号35参照))を吸気孔27から吸引することで、被処理体16のたわみを低減することができる。換言すると、被処理体16を平坦にすることができる。被処理体16のたわみ量は、給気ポート24_1、24_2に供給されるガスの量と排気ポート25_1、25_2から排気するガスの量とのバランスを調整することで制御することができる。
(ラフ浮上ユニットの構成例)
次に、ラフ浮上ユニット13a〜13fの構成例について説明する。図1、図2に示すラフ浮上ユニット13a〜13jは、被処理体16を浮上させて搬送するユニットであり、搬送時に被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13jに接触しなければよいため、被処理体16を浮上させるためのガスの噴出量は、精密浮上ユニット11a、11bほど精密に制御していない。このため、ラフ浮上ユニット13a〜13jを通過する際の被処理体16のたわみ量は、精密浮上ユニット11a、11bを通過する際の被処理体16のたわみ量よりも大きい。ラフ浮上領域(ラフ浮上ユニット)13a〜13jは、ガスの吸引を用いず、ガスの噴出を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。
図6、図7はそれぞれ、ラフ浮上ユニット13の構成例を説明するための断面図、及び平面図である。図6に示すように、ラフ浮上ユニット13は、台座31および多孔質体32を備える。多孔質体32は台座31の上側に設けられており、ガス噴出部として機能する。多孔質体32は給気ポート34_1、34_2(図7参照)に接続されており、圧縮されたガスが給気ポート34_1、34_2を介して多孔質体32に供給される。例えば、給気ポート34_1、34_2はラフ浮上ユニット13の下部に設けられている。多孔質体32に供給された圧縮ガスは、多孔質体32の内部を通過した後、多孔質体32の上面から上方に噴出する。これにより、被処理体16が浮上する。
また、図6、図7に示すように、ラフ浮上ユニット13の上面には、溝17が形成されている。図1、図7に示す例では、ラフ浮上ユニット13を平面視した際に、被処理体16の搬送方向(x軸方向)に対して斜めになるように溝17が形成されている。また、各々の溝17は互いに平行に並ぶように形成されている。図8に示すように、溝17は、被処理体16とラフ浮上ユニット13の上面との間に存在するガスを排出する。
つまり、図9の比較例に示すように、ラフ浮上ユニット13の上面に溝を形成しない場合は、ラフ浮上ユニット13の多孔質体32から噴出したガスが被処理体16の下面に衝突して被処理体16が浮上した際に、被処理体16とラフ浮上ユニット13との間にガス溜まり35が形成される。このガス溜まり35は被処理体16がたわむ原因となる。
これに対して、図8に示すようにラフ浮上ユニット13の上面に溝17を形成した場合は、溝17を通して被処理体16とラフ浮上ユニット13との間に存在するガス(ガス溜まり)を排出することができる。よって、ラフ浮上ユニット13の上を被処理体16が通過する際に被処理体16がたわむことを抑制することができる。
図6に示す例では、多孔質体32の表面の一部を削ることで溝17を形成している。溝17を形成することによるガスの排出効果は、溝17の深さが深いほどその効果が向上する。しかし、多孔質体32に形成する溝17の深さが深くなるほど、多孔質体32の強度が弱くなる。よって、多孔質体32の強度を維持しつつ、溝17の深さが深くなるように溝17を形成することが好ましい。
なお、本実施の形態では、図10に示すように、台座31の上に複数の多孔質体32_1、32_2を設け、複数の多孔質体32_1、32_2を配置した際に多孔質体間にできる隙間を用いて溝17を形成してもよい。この場合は、多孔質体32_1、32_2の厚さが溝17の深さとなる。
ここで、溝17を通るガスの量は、溝17同士の間隔が狭く、溝17の幅が広く、溝17の深さが深いほど多くなる。しかし、溝17同士の間隔が狭くなりすぎると、ラフ浮上ユニット13の上面において溝17が占める割合が多くなり、被処理体16が浮上しにくくなる。よって、溝17のガス排出量に支障がない範囲で、溝17同士の間隔を広くすることが好ましい。また、溝17の幅が広すぎると、被処理体16が溝17を越えられなくなるおそれがある。よって、溝17のガス排出量に支障がない範囲で、溝17の幅を狭くすることが好ましい。被処理体16とラフ浮上ユニット13との間のガス溜まりの量は被処理体16の厚さ、種類、浮上量等によって変化する。よってこの点を考慮して、被処理体のたわみを抑制するために必要な溝17の最適な寸法を決定することが好ましい。
前述したように、精密浮上ユニット11a、11bは、搬送時の被処理体16のたわみ量を小さくしながら搬送することができるように構成されている。具体的には、精密浮上ユニット11a、11bはガスを噴出して被処理体16を浮上させるとともに、被処理体16と精密浮上ユニット11との間に存在するガス溜まりを吸気孔27(図3、図4参照)から吸引しているので、搬送時の被処理体16のたわみ量を低減させることができる。
しかしながら、精密浮上ユニット11a、11bは、ガスの噴出とガスの吸引の両方を行うため内部構造が複雑化する。また、ガスの吸引も行うため、真空ポンプやエジェクタ等の機器が必要となる。したがって、精密浮上ユニット11a、11bは、単にガスを噴出して被処理体16を搬送する構成のラフ浮上ユニット13a〜13jと比べて高価なユニットである。よって、本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、図1に示したように、レーザ光の照射位置15を含む領域にのみ精密浮上ユニット11a、11bを配置し、これ以外の領域には精密浮上ユニットと比べて安価に構成できるラフ浮上ユニット13a〜13jを配置している。
ここで、ラフ浮上ユニット13a〜13jは、精密浮上ユニット11a、11bほど浮上精度が求められないが、ラフ浮上ユニット13a〜13jにおいても被処理体16のたわみを抑制する必要がある。つまり、ラフ浮上ユニット13a〜13jを用いて被処理体16を搬送している際に被処理体16がたわむと、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13jに衝突して被処理体16が破損するおそれがある。
すなわち、ラフ浮上ユニット13a〜13jではガスを被処理体16に吹き付けて被処理体16を浮上させているが、このとき被処理体16とラフ浮上ユニット13a〜13jとの間にガス溜まり35(図9参照)が発生する。このガス溜まり35の影響によって、被処理体16の中央部のみが浮上し被処理体16の端部が浮上しないという現象が起こり、被処理体16の端部がラフ浮上ユニット13a〜13jに衝突する場合がある。このような現象は、被処理体16の面積が大きくなるほど、また被処理体16の厚さが薄くなるほど顕著にあらわれる。
よって、ラフ浮上ユニット13a〜13jにおいてもガス溜まり35(図9参照)の発生を抑制して被処理体16がたわむことを抑制する必要がある。しかしながら、精密浮上ユニット11a、11bのようにガスを吸引するための機構をラフ浮上ユニット13a〜13jに設けた場合は、精密浮上ユニット11a、11bと比べてラフ浮上ユニット13a〜13jの面積が広いため、浮上ユニットを構成する際のコストが増加してしまう。
そこで本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、図1に示すようにラフ浮上ユニット13a〜13jの上面に溝17を形成し、溝17を通して被処理体16とラフ浮上ユニット13a〜13jとの間に存在するガス(ガス溜まり)を排出するように構成している(図8参照)。よって、ラフ浮上ユニット13a〜13jの上を被処理体16が通過する際に被処理体16がたわむことを抑制することができる。また、このように被処理体16がたわむこと抑制するための機構を安価に形成することができる。
なお、ラフ浮上ユニット13a〜13jのように上面に溝17を形成した場合は、精密浮上ユニット11a、11bのようにガスを吸引するための機構を設けた場合よりも、被処理体16のたわみを抑制する効果は低い。しかし、ラフ浮上ユニット13a〜13jを用いて被処理体16を搬送する際は、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13jに接触しないことが求められており、精密浮上ユニット11a、11bほど被処理体16のたわみの抑制が求められていない。よって、ラフ浮上ユニット13a〜13jにおいては、被処理体16のたわみを安価に実現できる溝17を形成する手法が最も適している。
(レーザ照射装置が被処理体を搬送する場合の動作)
図11は、レーザ照射装置1を用いて被処理体16を搬送している状態を説明するための断面図である。図11(a)に示すように、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13eの上を通過している際は、被処理体16がたわんでいる。しかし本実施の形態ではラフ浮上ユニット13a〜13eの上面に溝17を形成しているので、上記で説明した理由から被処理体16のたわみ量は抑えられている。
その後、被処理体16が搬送され、図11(b)に示すように、被処理体16が精密浮上ユニット11a、11bの上を通過している際は、被処理体16のたわみ量は、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13eの上を通過している際のたわみ量よりも小さくなる。つまり、精密浮上ユニット11a、11bはガスを噴出して被処理体16を浮上させるとともに、被処理体16と精密浮上ユニット11a、11bとの間に存在するガス溜まりを吸引しているので、搬送時の被処理体16のたわみ量を低減させることができる。よって、たわみの少ない被処理体16にレーザ光15を照射することができる。
その後、被処理体16が搬送されて、図11(c)に示すように、被処理体16がラフ浮上ユニット13f〜13jの上を通過している際は、被処理体16がたわむ。しかし本実施の形態ではラフ浮上ユニット13f〜13jの上面に溝17を形成しているので、上記で説明した理由から被処理体16のたわみ量は抑えられている。
このように、本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、レーザ光の照射位置15を含む領域に精密浮上ユニット11a、11bを配置し、被処理体16のたわみ量が小さくなるようにしている。よって、被処理体16に照射されるレーザ光の焦点深度(DOF)から外れてしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、ラフ浮上ユニット13a〜13jの上面に溝17を形成しているので、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13jを通過する際のたわみ量を抑えることができる。よって、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13eから精密浮上ユニット11a、11bに搬送されている際に、ラフ浮上ユニット13a〜13e上の被処理体16のたわみが、精密浮上ユニット11a、11b上の被処理体16のたわみに影響を及ぼすことを抑制することができる。同様に、被処理体16が精密浮上ユニット11a、11bからラフ浮上ユニット13f〜13jに搬送されている際に、ラフ浮上ユニット13f〜13j上の被処理体16のたわみが、精密浮上ユニット11a、11b上の被処理体16のたわみに影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、レーザ光の照射位置15を含む領域にのみ精密浮上ユニット11a、11bを配置し、これ以外の領域には精密浮上ユニットと比較して安価に構成できるラフ浮上ユニット13a〜13jを配置している。よって、レーザ照射装置1を構成する際のコストを低減させることができる。また、精密な制御が必要な領域を精密浮上ユニット11a、11bが配置されている領域に限定することができるので、レーザ照射装置1の制御を簡便にすることができる。
更に、本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、ラフ浮上ユニット13a〜13jの上面に溝17を形成することで、ラフ浮上ユニット13a〜13j上を被処理体16が通過する際に被処理体16がたわむことを抑制している。よって、被処理体16がたわむこと抑制するための機構を安価に形成することができる。
(浮上ユニットの平面度の説明)
次に、浮上ユニットの平面度について説明する。本実施の形態では、精密浮上ユニット11a、11bの被処理体16と対向する面の平面度は、ラフ浮上ユニット13a〜13jの被処理体16と対向する面の平面度よりも小さくなるように構成している。一例を挙げると、精密浮上ユニット11a、11bの平面度は20μm以下であり、ラフ浮上ユニット13a〜13jの平面度は75μm以下である。
例えば、精密浮上ユニット11の平面度は、精密浮上ユニット11の上を浮上する被処理体16の浮上量(浮上高さ)と被処理体16のたわみ量とを用いて定めることができる。被処理体16のたわみは、被処理体16の浮上量と浮上ユニットの表面の平面度が影響を与えていると考えられる。ここで、被処理体16の浮上量は、被処理体16と浮上ユニットとの間に存在するガスにより作用する圧力が影響を与えていると考えられる。
図12は、浮上ユニットの平面度と被処理体のたわみとの関係を説明するための断面図である。図12に示すように、浮上ユニットの平面度は、浮上ユニットの最も低い部分である基準点S1と浮上ユニットの最も高い部分であるT1との距離で定義することができる。また、被処理体16のたわみは、被処理体16の最も低い部分である基準点S2と被処理体16の最も高い部分であるT2との距離で定義することができる。
ラフ浮上ユニット13では被処理体16の端部の浮上量が最も低くなるため、ラフ浮上ユニット13との衝突を避けるために、ラフ浮上ユニット13の表面の平面度をある程度小さくする必要がある。図12に示すように、被処理体16は浮上ユニットに衝突しないように浮上するが、被処理体16の浮上量は浮上ユニットの表面をゼロ点とした高さになるため、ラフ浮上ユニット側も表面の平面度を小さくしなければ両者は衝突する恐れがある。つまり、図12に示すように、ラフ浮上ユニットの表面の平面度をある程度小さくして、浮上ユニットの最も高い部分T1が被処理体16の最も低い部分S2と衝突しないようにする必要がある。
精密浮上ユニット11では、ラフ浮上ユニット13と比較すると被処理体16の浮上量を小さくしており、また被処理体16の端部の浮上量が最も低くなるため、浮上ユニットとの衝突を避ける工夫が必要となる。例えば、図11(b)のラフ浮上ユニット13eと精密浮上ユニット11aとの境界付近のように、被処理体16のたわみや浮上量が急激に変化すると、レーザ照射部への影響が大きくなる。よって、精密浮上ユニット11でも平面度が充分に確保できていない場合は被処理体16のたわみの変動によりレーザ照射に悪影響を及ぼす恐れがある。このような理由から、精密浮上ユニット11の平面度を小さくする必要がある。
また、精密浮上ユニット11の平面度は、ラフ浮上ユニット13の平面度よりも小さくする必要があるため、精密浮上ユニット11の平面度を維持するためには、各々の精密浮上ユニットの上面の面積を、ラフ浮上ユニットの上面の面積よりも小さくすることが好ましい。一方、ラフ浮上ユニット13は、被処理体16を浮上ユニットに衝突させることなく浮上・搬送させるため、精密浮上ユニット11と比べて上面の面積を大きくすることができる。
なお、上記で説明したように、本実施の形態ではラフ浮上ユニット13に溝17を設けることで、ラフ浮上ユニット13の上を通過する被処理体16のたわみを抑制している。よって、被処理体16のたわみが抑制された分だけ、ラフ浮上ユニット13の表面の平面度に対する要求が緩和される。
(ラフ浮上ユニットの他の構成例)
図13〜図15は、ラフ浮上ユニットの他の構成例を説明するための平面図である。図1に示したラフ浮上ユニット13a〜13jでは、複数のラフ浮上ユニット13a〜13jを搬送方向(x軸方向)に並ぶように配置し、これらの複数のラフ浮上ユニット13a〜13jの各々に溝17を形成した構成について説明した。しかし、本実施の形態では、図13に示すように、ラフ浮上ユニット13の単位ユニット当たりの面積を大きくし、このラフ浮上ユニット13に溝17を形成してもよい。このように、ラフ浮上ユニット13の単位ユニット当たりの面積を大きくすることで、ラフ浮上領域を形成するためのラフ浮上ユニットの数を少なくすることができる。
なお、本実施の形態では、図1や図13に示すように、溝17の向きは、ラフ浮上ユニット13を平面視した際に、被処理体16の搬送方向(x軸方向)に対して斜めになるように構成している。この理由は、図16に示すように、被処理体16の搬送方向下流側の辺45と平行になるように溝17_4を形成した場合は、被処理体16が溝17_4を通過する際に被処理体16の端部(辺45)の浮上量が一時的に低くなり、被処理体16の端部(辺45)全体が一斉に溝17_4に引っかかる場合があるからである。すなわち本実施の形態では、溝17は、被処理体16の搬送方向下流側の辺45に対して所定の角度をなすように形成する。また、本実施の形態では、溝17の向きを斜めにすることで、ラフ浮上ユニット13における被処理体16の搬送方向を複数(図13に示す場合は、x軸方向と、y軸方向)とすることができる。
また、本実施の形態では、図14に示すように、ラフ浮上ユニット13に2つの方向に伸びる溝17_1、17_2をそれぞれ形成し、各々の溝17_1、17_2が交差するようにしてもよい。図14に示す場合は、x軸に対して±45度の角度を有する溝17_1、17_2をそれぞれ形成し、各々の溝17_1、17_2が直交するように構成している。このような構成とすることで、溝17_1、17_2を通過するガスの量を増加させることができ、ラフ浮上ユニット13と被処理体16との間に存在するガスの排出を促進させることができる。
また、本実施の形態では、図15に示すように、被処理体16の搬送方向と平行に伸びる溝17_3をラフ浮上ユニット13に形成してもよい。この場合は、ラフ浮上ユニット13の多孔質体を削って溝17_3を形成してもよく、また、矩形上のラフ浮上ユニットをそれぞれ並べて、各々のラフ浮上ユニット間に隙間を形成し、この隙間を溝17_3としてもよい。また、図10に示したように、台座31の上に複数の多孔質体32_1、32_2を設け、複数の多孔質体32_1、32_2を配置した際に多孔質体間にできる隙間を用いて溝17_3を構成してもよい。この場合は、1つの台座31に複数の多孔質体が配置される。
このように、本実施の形態では、ラフ浮上ユニットに溝17を形成する際、被処理体16の搬送方向と直交しない1つまたは複数の角度を有するように溝を形成する。
以上で説明した本実施の形態により、搬送時に被処理体のたわみを低減させることが可能なレーザ照射装置およびレーザ照射方法を提供することができる。
<実施の形態2>
次に、実施の形態2にかかるレーザ照射装置について説明する。図17は、実施の形態2にかかるレーザ照射装置2を説明するための平面図である。図18は、図17に示すレーザ照射装置2の切断線B−Bにおける断面図である。図17、図18に示すレーザ照射装置2は、被処理体16を浮上ユニット10を用いて浮上させて搬送しながら被処理体16にレーザ光15を照射する装置である。
(レーザ照射装置の構成)
図17、図18に示すように、レーザ照射装置2は、浮上ユニット10を備える。浮上ユニット10は、被処理体16を浮上させながら搬送する。具体的には、レーザ照射装置2は、浮上ユニット10を用いて被処理体16を浮上させながら、把持部18(図17参照)を用いて被処理体16を把持して搬送方向(x軸方向)に被処理体16を搬送する。被処理体16が搬送される際、浮上ユニット10は被処理体16の上側に配置されている他の機構(不図示)に被処理体16が接触しないように浮上量を調整している。
把持部18には、例えば吸盤型の真空吸着機構や多孔質体を備える真空吸着機構を用いることができる。把持部18は、排気ポート(不図示)と接続されており、排気ポートはエジェクタや真空ポンプなどと接続されている。よって、吸気ポートには、ガスを吸引するための負圧が作用する。これにより把持部18の真空吸着機構が被処理体16に吸着する。把持部18は、被処理体16を把持しながら、把持部18の駆動機構によって搬送される。これにより、被処理体16が搬送される。なお、被処理体16の搬送速度は、把持部18の駆動機構の搬送速度を調整することで制御することができる。例えば、被処理体16は、浮上ユニット10の上を浮上した状態で等速に搬送される。よって、被処理体16はレーザ光の照射位置を一定の速度で通過する。
被処理体16にはレーザ光15(以下、レーザ光の照射位置も符号15で示す)が照射される。例えば、レーザ照射装置はレーザアニール装置であり、この場合はレーザ発生装置14(図18参照)にエキシマレーザ等を用いることができる。レーザ発生装置14から供給されたレーザ光は、光学系(不図示)においてライン状となり、被処理体16にはライン状、具体的には焦点がy軸方向に伸びるレーザ光15(ラインビーム)が照射される(図17参照)。また、被処理体は、例えば基板上に形成された非晶質膜であり、この非晶質膜にレーザ光15を照射してアニール処理することで、非晶質膜を結晶化させることができる。
図17、図18に示すように、浮上ユニット10は、精密浮上ユニット11a、11b、準精密浮上ユニット12a〜12d、及びラフ浮上ユニット13a〜13fを用いて構成されている。なお、以下では、精密浮上ユニット11a、11bを用いて構成されている領域を精密浮上領域11a、11bと、準精密浮上ユニット12a〜12dを用いて構成されている領域を準精密浮上領域12a〜12dと、また、ラフ浮上ユニット13a〜13fを用いて構成されている領域をラフ浮上領域13a〜13fとも記載する。
精密浮上ユニット11a、11bは、レーザ光の照射位置15を含む領域(精密浮上領域)に配置されている。準精密浮上ユニット12a、12bは、精密浮上ユニット11a、11bと隣接するように配置されており、精密浮上ユニット11a、11bに対して、被処理体16の搬送方向上流側(x軸方向マイナス側)に配置されている。ラフ浮上ユニット13a〜13cは、準精密浮上ユニット12a、12bと隣接するように配置されており、準精密浮上ユニット12a、12bに対して、被処理体16の搬送方向上流側(x軸方向マイナス側)に配置されている。
また、準精密浮上ユニット12c、12dは、精密浮上ユニット11a、11bと隣接するように配置されており、精密浮上ユニット11a、11bに対して、被処理体16の搬送方向下流側(x軸方向プラス側)に配置されている。ラフ浮上ユニット13d〜13fは、準精密浮上ユニット12c、12dと隣接するように配置されており、準精密浮上ユニット12c、12dに対して、被処理体16の搬送方向下流側(x軸方向プラス側)に配置されている。
換言すると、精密浮上ユニット11a、11bは、平面視した際にレーザ光15の焦点と精密浮上領域11a、11bとが重畳するように配置されている。また、ラフ浮上ユニット13a〜13fは、レーザ光15の焦点とラフ浮上領域13a〜13fとが重畳しないように配置されている。ここで、平面視した場合とは、図17に示すように、浮上ユニット10をz軸方向側からみた場合を意味する。準精密浮上ユニット12a、12bは、精密浮上領域11a、11bとラフ浮上領域13a〜13cとの間に配置されている。また、準精密浮上ユニット12c、12dは、精密浮上領域11a、11bとラフ浮上領域13d〜13fとの間に配置されている。
図18に示すように、精密浮上ユニット11a、11bおよび準精密浮上ユニット12a〜12dは、ガスの噴出および吸引を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。また、ラフ浮上ユニット13a〜13fは、ガスの噴出を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。各々のラフ浮上ユニット13a〜13fの被処理体16と対向する側の面(つまり、各々のラフ浮上ユニット13a〜13fの上面)には、被処理体16とラフ浮上ユニット13a〜13fとの間に存在するガスを排出するための溝17が形成されている。
図17、図18に示すように、精密浮上ユニット11a、11b、準精密浮上ユニット12a〜12d、及びラフ浮上ユニット13a〜13fの各々は、例えばy軸方向に伸びる矩形状のユニットであり、これらの浮上ユニットが搬送方向(x軸方向)に沿って並ぶように配置されている。被処理体16は、ラフ浮上ユニット13a〜13c、準精密浮上ユニット12a、12b、精密浮上ユニット11a、11b、準精密浮上ユニット12c、12d、ラフ浮上ユニット13d〜13fの順に通過して搬送される。なお、各々の浮上ユニットの形状は矩形状に限定されることはない。例えば、各々の浮上ユニットの形状は正方形であってもよい。
精密浮上ユニット11a、11bは、被処理体16を精密に浮上させて搬送するユニットであり、搬送時の被処理体16のたわみ量を小さくしながら搬送することができるように構成されている。精密浮上ユニット11a、11bは、被処理体16を浮上させるためのガスの噴出量を精密に制御している。精密浮上領域(精密浮上ユニット)11a、11bは、ガスの噴出および吸引を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。なお、精密浮上ユニット11a、11bの詳細な構成については、実施の形態1で説明した場合(図3〜図5参照)と同様であるので、重複した説明は省略する。
ラフ浮上ユニット13a〜13fは、被処理体16を浮上させて搬送するユニットであり、搬送時に被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13fに接触しなければよいため、被処理体16を浮上させるためのガスの噴出量は、精密浮上ユニット11a、11bほど精密に制御していない。このため、ラフ浮上ユニット13a〜13fを通過する際の被処理体16のたわみ量は、精密浮上ユニット11a、11bを通過する際の被処理体16のたわみ量よりも大きい。ラフ浮上領域(ラフ浮上ユニット)13a〜13fは、ガスの吸引を用いず、ガスの噴出を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。
本実施の形態においても、図17、図18に示すようにラフ浮上ユニット13a〜13fの上面に溝17を形成し、溝17を通して被処理体16とラフ浮上ユニット13a〜13fとの間に存在するガス(ガス溜まり)を排出するように構成している(図8参照)。よって、ラフ浮上ユニット13a〜13fの上を被処理体16が通過する際に被処理体16がたわむことを抑制することができる。また、このように被処理体16がたわむこと抑制するための機構を安価に形成することができる。なお、ラフ浮上ユニット13a〜13fの詳細な構成については、実施の形態1で説明した場合(図6〜図8参照)と同様であるので、重複した説明は省略する。
準精密浮上ユニット12a、12bは、ラフ浮上ユニット13a〜13cから精密浮上ユニット11a、11bに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するように被処理体16を搬送可能に構成されている。また、準精密浮上ユニット12c、12dは、精密浮上ユニット11a、11bからラフ浮上ユニット13d〜13fに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するように被処理体16を搬送可能に構成されている。例えば、準精密浮上ユニット12a〜12dは、精密浮上ユニット11a、11bが被処理体16を浮上させる際の精度とラフ浮上ユニット13a〜13fが被処理体16を浮上させる際の精度との間の精度で被処理体16を浮上させるように構成されている。準精密浮上領域(精密浮上ユニット)12a〜12dは、ガスの噴出および吸引を用いて被処理体16を浮上させるように構成されている。なお、準精密浮上ユニット12a〜12dの詳細な構成については、実施の形態1で説明した精密浮上ユニット11a、11bの構成(図3〜図5参照)と基本的に同様であるので、重複した説明は省略する。
例えば、精密浮上ユニット11a、11bの上を被処理体16が通過する際の被処理体16のたわみ量は、ラフ浮上ユニット13a〜13cの上を被処理体16が通過する際の被処理体16のたわみ量の1/10〜1/20である。準精密浮上ユニット12a、12bは、ラフ浮上ユニット13a〜13cから精密浮上ユニット11a、11bに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するように、換言すると、ラフ浮上ユニット13a〜13cにおける被処理体16のたわみ量と精密浮上ユニット11a、11bにおける被処理体16のたわみ量との差分を吸収するように、被処理体16を搬送する。
同様に、例えば、精密浮上ユニット11a、11bの上を被処理体16が通過する際の被処理体16のたわみ量は、ラフ浮上ユニット13d〜13fの上を被処理体16が通過する際の被処理体16のたわみ量の1/10〜1/20である。準精密浮上ユニット12c、12dは、精密浮上ユニット11a、11bからラフ浮上ユニット13d〜13fに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するように、換言すると、精密浮上ユニット11a、11bにおける被処理体16のたわみ量とラフ浮上ユニット13d〜13fにおける被処理体16のたわみ量との差分を吸収するように、被処理体16を搬送する。
本実施の形態にかかるレーザ照射装置では、精密浮上ユニット11a、11bに供給されるガス供給量と準精密浮上ユニット12a〜12dに供給されるガス供給量とを独立に制御可能に構成されている。つまり、精密浮上ユニット11a、11bから噴出されるガスの量と準精密浮上ユニット12a〜12dから噴出されるガスの量とを独立に制御可能に構成されている。また、精密浮上ユニット11a、11bの吸気孔のガス吸引量(排気ポートにおける排気量)と準精密浮上ユニット12a〜12dの吸気孔のガス吸引量(排気ポートにおける排気量)とを独立に制御可能に構成されている。
(レーザ照射装置が被処理体を搬送する場合の動作)
図19は、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2を用いて被処理体16を搬送している状態を説明するための断面図である。図19(a)に示すように、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13cの上を通過している際は、被処理体16がたわんでいる。しかし本実施の形態ではラフ浮上ユニット13a〜13cの上面に溝17を形成しているので、上記で説明した理由から被処理体16のたわみ量は抑えられている。
その後、被処理体16が搬送され、図19(b)に示すように、被処理体16が準精密浮上ユニット12a、12bの上を通過する際は、被処理体16のたわみ量は、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13cの上を通過している際のたわみ量よりも小さくなる。つまり、準精密浮上ユニット12a、12bはガスを噴出して被処理体16を浮上させるとともに、被処理体16と準精密浮上ユニット12a、12bとの間に存在するガス溜まりを吸引しているので、搬送時の被処理体16のたわみ量を低減させることができる。
その後、被処理体16が更に搬送され、図19(c)に示すように、被処理体16が精密浮上ユニット11a、11bの上を通過する際は、被処理体16のたわみ量は、被処理体16が準精密浮上ユニット12a、12bの上を通過している際のたわみ量よりも小さくなる。つまり、精密浮上ユニット11a、11bはガスを噴出して被処理体16を浮上させるとともに、被処理体16と精密浮上ユニット11a、11bとの間に存在するガス溜まりを吸引しているので、搬送時の被処理体16のたわみ量を低減させることができる。また、準精密浮上ユニット12a、12bを設けることで、ラフ浮上ユニット13a〜13cから精密浮上ユニット11a、11bに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するようにすることができる。精密浮上ユニット11a、11bの上を通過する際、被処理体16にレーザ光15が照射される。
その後、被処理体16が更に搬送され、図19(d)に示すように、被処理体16が準精密浮上ユニット12c、12d、及びラフ浮上ユニット13d〜13fの上を通過している際は、被処理体16のたわみ量は次のようになる。すなわち、被処理体16がラフ浮上ユニット13d〜13fの上を通過している際は、被処理体16がたわんでいるが、本実施の形態ではラフ浮上ユニット13d〜13fの上面に溝17を形成しているので、上記で説明した理由から被処理体16のたわみ量は抑えられている。
また、被処理体16が準精密浮上ユニット12c、12dの上を通過している際は、被処理体16のたわみ量は、被処理体16がラフ浮上ユニット13d〜13fの上を通過している際のたわみ量よりも小さくなる。つまり、準精密浮上ユニット12c、12dはガスを噴出して被処理体16を浮上させるとともに、被処理体16と準精密浮上ユニット12c、12dとの間に存在するガス溜まりを吸引しているので、搬送時の被処理体16のたわみ量を低減させることができる。そして、この場合も、準精密浮上ユニット12c、12dを設けることで、精密浮上ユニット11a、11bからラフ浮上ユニット13d〜13fに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するようにすることができる。
このように、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、ラフ浮上ユニット13a〜13cと精密浮上ユニット11a、11bとの間に準精密浮上ユニット12a、12bを設けている。よって、ラフ浮上ユニット13a〜13cから精密浮上ユニット11a、11bに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するようにすることができる。
すなわち、図19(c)に示すように、被処理体16がラフ浮上ユニット13cから準精密浮上ユニット12aに搬送される際、位置19aにおいて被処理体16のたわみ量が急激に変化する。しかし、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、準精密浮上ユニット12a、12bを用いて被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するように被処理体16を搬送している。よって、位置19aにおける被処理体16のたわみが、レーザ照射位置15を通過している被処理体16に影響することを抑制することができる。換言すると、準精密浮上ユニット12a、12bを設けることで、被処理体16のたわみが大きい位置19aとレーザ照射位置15との距離d1を離すことができるので、実施の形態1にかかるレーザ照射装置(図11参照)と比べて、レーザ照射位置15における被処理体16のたわみを低減させることができる。
また、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、精密浮上ユニット11a、11bとラフ浮上ユニット13d〜13fとの間に準精密浮上ユニット12c、12dを設けている。よって、精密浮上ユニット11a、11bからラフ浮上ユニット13d〜13fに被処理体16が搬送される際に、被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するようにすることができる。
すなわち、図19(d)に示すように、被処理体16が準精密浮上ユニット12dからラフ浮上ユニット13dに搬送される際、位置19bにおいて被処理体16のたわみ量が急激に変化する。しかし、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、準精密浮上ユニット12c、12dを用いて被処理体16のたわみ量が滑らかに変化するように被処理体16を搬送している。よって、位置19bにおける被処理体16のたわみが、レーザ照射位置15を通過している被処理体16に影響することを抑制することができる。換言すると、準精密浮上ユニット12c、12dを設けることで、被処理体16のたわみが大きい位置19bとレーザ照射位置15との距離d2を離すことができるので、実施の形態1にかかるレーザ照射装置(図11参照)と比べて、レーザ照射位置15における被処理体16のたわみを低減させることができる。
このように、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、レーザ照射位置15における被処理体16のたわみを低減させることができるので、レーザ照射位置15においてレーザ光の焦点深度(DOF)から外れてしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、ラフ浮上ユニット13a〜13fの上面に溝17を形成しているので、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13fを通過する際のたわみ量を抑えることができる。よって、被処理体16がラフ浮上ユニット13a〜13cから準精密浮上ユニット12a、12bに搬送される際に、ラフ浮上ユニット13a〜13c上の被処理体16のたわみが、準精密浮上ユニット12a、12b上の被処理体16のたわみに影響を及ぼすことを抑制することができる。同様に、被処理体16が準精密浮上ユニット12c、12dからラフ浮上ユニット13d〜13fに搬送される際に、ラフ浮上ユニット13d〜13f上の被処理体16のたわみが、準精密浮上ユニット12c、12d上の被処理体16のたわみに影響を及ぼすことを抑制することができる。よって、結果的に、ラフ浮上ユニット13a〜13f上の被処理体16のたわみが、精密浮上ユニット11a、11b上の被処理体16のたわみに影響を及ぼすことを抑制することができる。
なお、図17、図18では、2個の精密浮上ユニット11a、11bを用いて精密浮上領域を形成し、4個の準精密浮上ユニット12a〜12dを用いて準精密浮上領域を形成し、6個のラフ浮上ユニット13a〜13fを用いてラフ浮上領域を形成している場合を示した。しかし、本実施の形態にかかるレーザ照射装置2では、精密浮上領域を構成する精密浮上ユニット11の数、準精密浮上領域を構成する準精密浮上ユニット12の数、及びラフ浮上領域を構成するラフ浮上ユニット13の数は、任意に決定することができる。また、上記で説明した精密浮上ユニット11、準精密浮上ユニット12、及びラフ浮上ユニット13の構成は一例であり、本実施の形態では各浮上ユニットが上記で説明した以外の構成を備えていてもよい。例えば、ラフ浮上ユニット13は、精密浮上ユニット11ほど浮上精度が求められないので、ラフ浮上ユニットの1ユニット当たりの面積が精密浮上ユニットの1ユニット当たりの面積よりも大きくなるように構成してもよい。
また、上記で説明した構成では、精密浮上ユニット11a、11bの両側に準精密浮上ユニット12a、12b及び準精密浮上ユニット12c、12dをそれぞれ設けた構成を示した。しかし本実施の形態にかかるレーザ照射装置1では、精密浮上ユニット11a、11bに対して被処理体16の搬送方向上流側および下流側の少なくとも一方に準精密浮上ユニット12を設けてもよい。
(各々の浮上ユニットの配置例)
図20〜図22は、精密浮上ユニット(精密浮上領域)11、準精密浮上ユニット(準精密浮上領域)12、及びラフ浮上ユニット(ラフ浮上領域)13の配置例を説明するための平面図である。図20〜図22に示すレーザ照射装置2_1〜2_3のステージ上には、精密浮上ユニット11、準精密浮上ユニット12、及びラフ浮上ユニット13がそれぞれ配置されている。そして、ステージ上において被処理体16を浮上させ、把持部(不図示)を用いて被処理体16をステージ上の矢印の方向に搬送して被処理体16を処理する。
図20に示すレーザ照射装置2_1では、レーザ照射位置15がステージの中央部からステージのy軸方向の端部に渡って配置されている。換言すると、レーザ照射位置15は、被処理体16のy軸方向における長さと同程度であり、被処理体16を搬送した際に、被処理体16のy軸方向の全面にレーザ光が照射される。精密浮上ユニット11は、レーザ照射位置15を含むように配置されている。精密浮上ユニット11のy軸方向における長さは、レーザ照射位置15のy軸方向における長さと同程度である。準精密浮上ユニット12は、精密浮上ユニット11のx軸方向の両側に配置されている。ラフ浮上ユニット13は、精密浮上ユニット11と準精密浮上ユニット12とが配置されている箇所以外の箇所に配置されている。
図20に示すように、ラフ浮上ユニット13の上面には溝17が形成されている。このように、ラフ浮上ユニット13の上面に溝17を設けることで、溝17を通して被処理体16とラフ浮上ユニット13との間に存在するガス(ガス溜まり)を排出することができる。よって、ラフ浮上ユニット13の上を被処理体16が通過する際に被処理体16がたわむことを抑制することができる。
図20に示す例では、ラフ浮上ユニット13を平面視した際に、被処理体16の搬送方向(x軸方向およびy軸方向)に対して斜めになるように溝17が形成されている。このように、溝17の向きを斜めにすることで、被処理体16の2つの搬送方向(x軸、y軸)に対して溝17の向きを斜めにすることができ、被処理体16を2つの搬送方向に沿って搬送することができる。
また、図20に示すように、ラフ浮上領域13は精密浮上領域11および準精密浮上領域12と比べて面積が大きい。このため、精密浮上ユニット11や準精密浮上ユニット12のように、ガスを吸引する機構(複雑な機構)をラフ浮上ユニット13に設けた場合は、浮上ユニットを構成する際のコストが増加してしまう。
そこで本実施の形態にかかるレーザ照射装置2_1では、図20に示すように、ラフ浮上ユニット13の上面に溝17を形成し、溝17を通して被処理体16とラフ浮上ユニット13との間に存在するガス(ガス溜まり)を排出するように構成している(図8参照)。このように、ラフ浮上ユニット13に溝17を形成した場合は、ラフ浮上ユニット13にガスを吸引する機構を設ける場合よりも、被処理体16のたわみを抑制するための機構を安価に形成することができる。よって、レーザ照射装置を安価に作製することができる。特にこの効果は、ラフ浮上ユニット13の面積が大きくなるほど顕著にあらわれる。
また、本実施の形態では、図21に示すように、ラフ浮上ユニット13に2つの方向に伸びる溝17_1、17_2をそれぞれ形成し、各々の溝17_1、17_2が交差するようにしてもよい。図21に示す場合は、x軸に対して±45度の角度を有する溝17_1、17_2をそれぞれ形成し、各々の溝17_1、17_2が直交するように構成している。このような構成とすることで、溝17_1、17_2を通過するガスの量を増加させることができ、ラフ浮上ユニット13と被処理体16との間に存在するガスの排出を促進させることができる。
また、本実施の形態では、図22に示すように、複数のラフ浮上ユニット13_1〜13_n(nはラフ浮上ユニットの個数であり、図22に示す場合はn=18)を用いてラフ浮上領域を構成してもよい。各々のラフ浮上ユニット13_1〜13_nの上面には溝17が形成されており、これらの溝17は、各々のラフ浮上ユニット13_1〜13_nを並べた際に互いに繋がるように形成されている。図22に示すように、ラフ浮上領域13_1〜13_nは精密浮上領域11および準精密浮上領域12と比べて面積が大きい。よって、このようにラフ浮上ユニットを分割し、複数のラフ浮上ユニット13_1〜13_nを用いてラフ浮上領域を構成することで、ラフ浮上ユニットの単位ユニット当たりの面積を小さくすることができる。したがって、各々のラフ浮上ユニットを製造する際の製造設備を小型化することができる。
なお、図20〜図22に示したレーザ照射装置2_1〜2_3において、被処理体16は、レーザ照射位置15を複数回通過するように、つまり被処理体16の同一箇所に複数回レーザ光が照射されるようにステージ上を搬送されてもよい。
また、図20〜図22に示したレーザ照射装置2_1〜2_3では、被処理体16を搬送した際に被処理体16のy軸方向の全面にレーザ光が照射される構成について説明した。しかし本実施の形態では、レーザ照射位置15のy軸方向における長さは、図20〜図22に示した場合よりも短くてもよく、例えば、被処理体16のy軸方向における長さの半分程度の長さとしてもよい。この場合は、被処理体16をステージ上の矢印の方向に搬送し、複数回に分けて被処理体16にレーザ光を照射することで、被処理体16の全面を処理することができる。
(準精密浮上ユニットの他の構成例)
次に、準精密浮上ユニットの他の構成例について説明する。図23は、準精密浮上ユニットの他の構成例を説明するための平面図である。図23に示す構成例では、ラフ浮上ユニット13、準精密浮上ユニット12、及び精密浮上ユニット11が搬送方向に並ぶように配置されている。ラフ浮上ユニット13、準精密浮上ユニット12、及び精密浮上ユニット11の上面、つまり被処理体16と対向する面側には多孔質体が設けられている。図23に示すラフ浮上ユニット13、準精密浮上ユニット12、及び精密浮上ユニット11においても、多孔質体の上面から上方に圧縮ガスが噴出する。これにより、被処理体16が浮上する。
また、準精密ユニット12および精密浮上ユニット11は、被処理体16との間に存在するガスを吸引する複数の吸気孔41、42を備える。図23に示す準精密ユニット12では、複数の吸気孔42は、ラフ浮上ユニット13側よりも精密浮上ユニット11側において密になるように配置されている。また、精密浮上ユニット11では、準精密浮上ユニット12の精密浮上ユニット11側における吸気孔42と同様に、吸気孔41が密に配置されている。
よって、図23に示すように、準精密浮上ユニット12の吸気孔42の配置を、ラフ浮上ユニット13側から精密浮上ユニット11側に行くにしたがって吸気孔42の密度が次第に密になるように配置することで、ラフ浮上ユニット13側から精密浮上ユニット11側に被処理体16を搬送する際に、被処理体16のたわみ量がより滑らかに変化するようにすることができる。
以上で説明したように、本実施の形態においても、搬送時に被処理体のたわみを低減させることが可能なレーザ照射装置、及びレーザ照射方法を提供することができる。
(ラフ浮上ユニットのその他の構成)
以下、ラフ浮上ユニットのその他の構成について説明する。本実施の形態では、ラフ浮上ユニット13に形成する溝17の形状は上記で示した形状に限定されることはない。例えば、図24に示すように、ラフ浮上ユニット13に形成する溝の形状を、第1の方向に伸びる溝17_5、第2の方向に伸びる溝17_6、及び第3の方向に伸びる溝17_7が互いに交わるような形状としてもよい。図24に示す場合は、各々の溝17_5〜17_7が三角形の各々の辺に対応している。
また、図25に示すように、ラフ浮上ユニット13に六角形の溝17_8を形成してもよい。この場合は、溝の形状が連続的な直線形状とはならいが、溝17_8を通じて被処理体16とラフ浮上ユニット13との間に存在するガス(ガス溜まり)を排出することができる。すなわち、本実施の形態では、平面視した際に、ラフ浮上ユニット13の中央部と外側とを繋ぐ溝が形成されていればよく、溝を通じて被処理体16とラフ浮上ユニット13との間に存在するガスを排出することができるのであれば、溝の形状はどのような形状であってもよい。
また、本実施の形態では、ラフ浮上ユニットを下記のように構成してもよい。図26〜図31は、ラフ浮上ユニットの他の構成例を説明するための平面図である。図26に示すように、複数のラフ浮上ユニット13_1〜13_3を用いてラフ浮上領域13を構成した場合は、各々のラフ浮上ユニット13_1〜13_3が隣り合う箇所において段差が生じる場合がある。具体的には、ラフ浮上ユニット13_1とラフ浮上ユニット13_2とが隣り合う境界51において段差が生じ、ラフ浮上ユニット13_2とラフ浮上ユニット13_3とが隣り合う境界52において段差が生じる場合がある。このような段差は、ラフ浮上ユニットの加工精度のばらつきに起因して生じるものである。
ここで、図26に示すように、各々のラフ浮上ユニット13_1〜13_3に2つの方向に伸びる溝17_1、17_2を形成した場合は、溝17_1、17_2が形成されている領域において被処理体16の浮上量が低下する。つまり、溝17_1、17_2が形成されている箇所では、被処理体16の下面にガスが吹き付けられないため、被処理体16の浮上量が低下する。特に、図26に示すように、被処理体16の角部53が溝55の上を通過する際は、被処理体16の角部53の浮上量が一時的に低下する。そして、ラフ浮上ユニット13_2とラフ浮上ユニット13_3との境界52付近において被処理体16の角部53の浮上量が低下すると、被処理体16の角部53が境界52付近の段差を越えることができず、被処理体16の角部53が境界52付近の段差に衝突する場合がある。
このような現象は、図26に示すように、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52の搬送方向上流側に溝55(この場合は、溝17_1の一部)があり、且つこの溝55が被処理体16の角部53の搬送経路にある場合に生じる可能性が高くなる。
本実施の形態では、このような現象が生じることを抑制するために、図27に示すように、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52の搬送方向上流側に位置し、且つ被処理体16の角部53の搬送経路に位置する部分(図26の溝55が形成されている位置に対応)において、溝を取り除いている(つまり、溝を形成しないようにしている)。このような箇所に溝を形成しないことで、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52付近において被処理体16の角部53の浮上量が低下することを抑制することができ、被処理体16の角部53が境界52付近の段差に衝突することを抑制することができる。
図28に示す場合も同様に、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52の搬送方向上流側に溝56(この場合は、溝17_2の一部)があり、且つこの溝56が被処理体16の角部53の搬送経路にある場合に、被処理体16の角部53が境界52付近の段差に衝突する場合がある。
この場合も同様に、図29に示すように、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52の搬送方向上流側に位置し、且つ被処理体16の角部53の搬送経路に位置する部分(図28の溝56が形成されている位置に対応)に溝を形成しないようにする。このような箇所に溝を形成しないことで、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52付近において被処理体16の角部53の浮上量が低下することを抑制することができ、被処理体16の角部53が境界52付近の段差に衝突することを抑制することができる。
一方、図30に示すように、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52の搬送方向上流側に溝がある場合であっても、この溝が被処理体16の角部53の搬送経路にない場合は、被処理体16の角部53の境界52付近において被処理体16の角部53の浮上量は低下しない。よって、このような場合は、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52付近に溝を形成しても問題ない。
また、図31に示すように、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52の搬送方向下流側に溝17_1、17_2があり、この溝が被処理体16の角部53の搬送経路にある場合は、境界52の搬送方向下流側において、被処理体16の角部53の浮上量が一時的に低下する。しかしこの場合は、被処理体16の角部53の浮上量が低下するのは境界52の搬送方向下流側であるので、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52における段差に被処理体16の角部53が衝突することはない。よってこの場合も、ラフ浮上ユニット13_2、13_3の境界52付近に溝を形成しても問題ない。
なお、本実施の形態では、ラフ浮上ユニット13_1〜13_3に溝17_1、17_2を形成し、この溝17_1、17_2を通して被処理体16とラフ浮上ユニット13_1〜13_3との間に存在するガス(ガス溜まり)を排出することで被処理体16がたわむことを抑制することを目的としている。よって、上記のように溝を形成しない部分を設ける箇所は、最低限にとどめることが好ましい。
また、上記では、各々のラフ浮上ユニット13_1〜13_3に、2つの方向に伸びる溝17_1、17_2が形成されている場合について説明したが、本実施の形態ではラフ浮上ユニットに1つの方向に伸びる溝が形成されている場合(例えば、図1の溝17を参照)についても同様に適用することができる。なお、ラフ浮上ユニットに1つの方向に伸びる溝が形成されている場合は、溝が伸びる方向の両側を塞がないようにする必要がある。すなわち、1つの方向に伸びる溝の場合は、溝が伸びる方向の両側の溝を取り除くと、ラフ浮上ユニットの内側から外部にガスが排出されなくなるため、この場合は、1つの方向に伸びる溝の片側の溝のみを取り除くようにする。
<その他の実施の形態>
次に、その他の実施の形態として、実施の形態1、2で説明したレーザ照射装置を用いた半導体装置の製造方法、及び半導体装置について説明する。
(半導体装置の製造方法)
まず、上記で説明したレーザ照射装置を用いた半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態では、レーザ照射装置としてレーザアニール装置を用いることで、基板上に形成した非晶質膜にレーザ光を照射して非晶質膜を結晶化させることができる。例えば、半導体装置はTFT(Thin Film transistor)を備える半導体装置であり、この場合はアモルファスシリコン膜にレーザ光を照射して結晶化させてポリシリコン膜を形成することができる。
図32は、半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。上記で説明した本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、TFTアレイ基板の製造に好適である。以下、TFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
まず、図32(a)に示すように、ガラス基板201上に、ゲート電極202を形成する。ゲート電極202は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。次に、図32(b)に示すように、ゲート電極202の上に、ゲート絶縁膜203を形成する。ゲート絶縁膜203は、ゲート電極202を覆うように形成される。その後、図32(b)に示すように、ゲート絶縁膜203の上に、アモルファスシリコン膜204を形成する。アモルファスシリコン膜204は、ゲート絶縁膜203を介して、ゲート電極202と重複するように配置されている。
ゲート絶縁膜203は、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiO2膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜203とアモルファスシリコン膜204とを連続成膜する。
そして、図32(d)に示すように、上記で説明したレーザ照射装置を用いてアモルファスシリコン膜204にレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜204を結晶化させて、ポリシリコン膜205を形成する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜205がゲート絶縁膜203上に形成される。
このとき、上記で説明した本実施の形態にかかるレーザ照射装置を用いることで、基板201(被処理体)の搬送時に基板201のたわみを低減させることができ、アモルファスシリコン膜204に照射されるレーザ光の焦点深度(DOF)から外れてしまうことを抑制することができる。よって、均一に結晶化されたポリシリコン膜205を形成することができる。
その後、図32(e)に示すように、ポリシリコン膜205の上に層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bを形成する。層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bは、一般的なフォトリソグラフィー法や成膜法を用いて形成することができる。
上記で説明した半導体装置の製造方法を用いることで、TFTを備える半導体装置を製造することができる。なお、これ以降の製造工程については、最終的に製造するデバイスによって異なるので説明を省略する。
(有機ELディスプレイ)
次に、TFTを備える半導体装置を用いたデバイスの一例として、有機ELディスプレイについて説明する。図33は、有機ELディスプレイの概要を説明するための断面図であり、有機ELディスプレイの画素回路を簡略化して示している。図33に示す有機ELディスプレイ300は、各画素PXにTFTが配置されたアクティブマトリクス型の表示装置である。
有機ELディスプレイ300は、基板310、TFT層311、有機層312、カラーフィルタ層313、及び封止基板314を備えている。図33では、封止基板314側が視認側となるトップエミッション方式の有機ELディスプレイを示している。なお、以下の説明は、有機ELディスプレイの一構成例を示すものであり、本実施の形態は、以下に説明される構成に限られるものではない。例えば、本実施の形態にかかる半導体装置は、ボトムエミッション方式の有機ELディスプレイに用いられていてもよい。
基板310は、ガラス基板又は金属基板である。基板310の上には、TFT層311が設けられている。TFT層311は、各画素PXに配置されたTFT311aを有している。さらに、TFT層311は、TFT311aに接続される配線等を有している。TFT311a、及び配線等が画素回路を構成する。なお、TFT層311は、図32で説明したTFTに対応しており、ゲート電極202、ゲート絶縁膜203、ポリシリコン膜205、層間絶縁膜206、ソース電極207a、及びドレイン電極207bを有する。
TFT層311の上には、有機層312が設けられている。有機層312は、画素PXごとに配置された有機EL発光素子312aを有している。有機EL発光素子312aは、例えば、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極が積層された積層構造を有している。トップエミッション方式の場合、陽極は金属電極であり、陰極はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜である。さらに、有機層312には、画素PX間において、有機EL発光素子312aを分離するための隔壁312bが設けられている。
有機層312の上には、カラーフィルタ層313が設けられている。カラーフィルタ層313は、カラー表示を行うためのカラーフィルタ313aが設けられている。すなわち、各画素PXには、R(赤色)、G(緑色)、又はB(青色)に着色された樹脂層がカラーフィルタ313aとして設けられている。有機層312から放出された白色光は、カラーフィルタ313aを通過すると、RGBの色の光に変換される。なお、有機層312に、RGBの各色を発光する有機EL発光素子が設けられている3色方式の場合、カラーフィルタ層313を省略してもよい。
カラーフィルタ層313の上には、封止基板314が設けられている。封止基板314は、ガラス基板などの透明基板であり、有機層312の有機EL発光素子の劣化を防ぐために設けられている。
有機層312の有機EL発光素子312aに流れる電流は、画素回路に供給される表示信号によって変化する。よって、表示画像に応じた表示信号を各画素PXに供給することで、各画素PXでの発光量を制御することができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
なお、上記では、TFTを備える半導体装置を用いたデバイスの一例として、有機ELディスプレイについて説明したが、TFTを備える半導体装置は、例えば液晶ディスプレイであってもよい。また、上記では、本実施の形態にかかるレーザ照射装置をレーザアニール装置に適用した場合について説明した。しかし、本実施の形態にかかるレーザ照射装置は、レーザアニール装置以外の装置にも適用することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。