JP6916007B2 - 吸音材及びその製造方法並びに吸音性の向上方法 - Google Patents

吸音材及びその製造方法並びに吸音性の向上方法 Download PDF

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Description

本発明は、ビヒクル(自動車、電車などの車輌、航空機、船舶など)、建造物(家屋、集合住宅、ビルなどの高層建築物など)などで使用するのに有用な吸音材及びその製造方法並びに吸音性の向上方法に関する。
ビヒクル、建造物などに使用する吸音材などとして、発泡シート、例えば、ポリウレタンや、軟質塩化ビニル樹脂フォームなどが使用されており、これらの発泡シートは比較的周波数の高い音もよく吸収することが知られている。
特開2015−199830号公報(特許文献1)には、連続気泡率が50%以上の連続性気泡を有し、見かけ密度が600kg/m以下であり、少なくとも一方の表面が、連続性気泡の開口部を有する凸部を含む凹凸構造を有するポリオレフィン樹脂発泡シートが記載されている。この文献には、ポリオレフィン樹脂発泡シートの吸音率が、5〜7kHzの高周波数域で約80%であることが記載されている。しかし、吸音率がまだ低く高い吸音性を得ることができない。しかも、吸音率は、1kHzから4kHzに至るにつれて約0.5まで増加した後、さらに4.5kHzから7kHzに至るにつれて約0.8となる吸音特性を示している。そのため、広い周波数域で吸音性を向上できない。また、連続性気泡を有するとともに、ポリオレフィン樹脂発泡シートのスキン層を貫通する針孔を有しているため、発泡シートの強度及び断熱性が低下する。
なお、特開2012−25916号公報(特許文献2)には、低密度ポリエチレンを含む発泡体の厚み方向に、発泡体の厚みよりも短い針孔を空けることにより、ソフト感に優れ、しかもクッション性及び緩衝性の大きなシート状発泡体が記載され、このシート状発泡体を吸音材に使用できることも記載されている。この文献には、平板状のシート状発泡体が記載され、吸音材として使用できることも記載されている。しかし、吸音性について具体的な記載はない。
特開2015−199830号公報(特許請求の範囲、発明の効果、図2) 特開2012−25916号公報(特許請求の範囲、産業上の利用可能性、発明の効果)
従って、本発明の目的は、広い周波数域で吸音性を向上できる吸音材及びその製造方法並びに吸音性の向上方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、断熱性及び機械的強度を保持しつつ、吸音材の吸音性を向上することができる吸音材及びその製造方法並びに吸音性の向上方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、凹凸面を有する独立気泡構造の板状樹脂発泡体に、スキン層と共に独立気泡を貫通する針孔を形成すると、広い周波数域で吸音性を大きく向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の吸音材は、気泡構造を有する板状樹脂発泡体で形成され、少なくとも一方の表面が凹凸面として形成されている。このような吸音材において、前記板状樹脂発泡体は、独立気泡を有しており、前記板状樹脂発泡体の表面から厚み方向の途中まで侵入し、かつ少なくとも一部の前記独立気泡を貫通する針孔を有している。
針孔の深さは、例えば、板状樹脂発泡体の厚みに対して、10〜90%程度であってもよい。板状樹脂発泡体は、エチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種のベース成分を含んでいてもよく、前記板状樹脂発泡体の発泡倍率は10〜100倍程度であってもよい。
吸音材の凹凸面において、頂部と谷部との平均高低差は、1〜50mm程度であってもよい。また、凹凸面における頂部の平均間隔は、1〜60mm程度であってもよく、凹凸面は、突条と、この突条に隣接する溝とで形成された波型面であってもよい。
吸音材は、下記(1)及び(2)から選択される少なくとも1つの条件を満たしてもよい。
(1)音波が入射する側に凹凸面を有する
(2)少なくとも凹凸面に針孔を有する。
吸音材は、板状樹脂発泡体を貫通する打抜き孔を有していてもよく、打抜き孔の平均径は、針孔の平均径よりも大きく、例えば、1〜20mm程度であってもよい。
本発明は、吸音材に音波を入射して、吸音性を向上する方法も含む。この方法において、凹凸面から音波を入射して、吸音性を向上してもよい。
本発明の吸音材は、独立気泡を有し、少なくとも一方の表面に凹凸面を有する板状樹脂発泡体の表面から、厚み方向の途中まで針を侵入させ、かつ少なくとも一部の前記独立気泡を貫通する針孔を形成する方法により製造できる。この方法において、少なくとも凹凸面から針を侵入させて針孔を形成してもよい。
本発明では、独立気泡を有し、凹凸面が形成された板状樹脂発泡体に所定の針孔を形成するため、広い周波数域での音波を効率よく吸収でき、吸音性を向上できる。しかも、独立気泡を有するため、断熱性及び機械的強度を保持することができる。
図1は、本発明の吸音材の概略図である。 図2は、本発明の吸音材の製造工程を説明するための概略図である。 図3は、実施例1〜3、並びに比較例1及び2の吸音材の吸音特性を示すチャートである。
<板状樹脂発泡体>
本発明の吸音材(防音材又は消音材)は、板状樹脂発泡体で形成されており、この板状樹脂発泡体は、軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性熱可塑性樹脂組成物で形成できる。
板状樹脂発泡体は、全体として軟質であればよく、板状樹脂発泡体に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
板状樹脂発泡体は、通常、オレフィン系樹脂(特に、エチレン系樹脂)及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種を含んでいる。
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン共重合体など)、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのプロピレン共重合体など)、ポリブテン系樹脂などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂(又は軟質熱可塑性樹脂)のうち、少なくともエチレン系樹脂を含むのが好ましい。
エチレン系樹脂のうちポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。なお、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレンは、エチレンと、少量(例えば、0.01〜5モル%、特に0.1〜3モル%程度)の共重合性α−オレフィンとの共重合体も包含する。また、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンと、少量(例えば、0.01〜10モル%、好ましくは1〜8モル%、特に、2〜7モル%程度)の共重合性α−オレフィン(エチレンを除くα−オレフィン)との共重合体も包含する。共重合性α−オレフィン(エチレン以外のα−オレフィン)としては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1などのα−C3−10オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、LLDPEは、メタロセン触媒を用いて調製できる。これらのポリエチレンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
エチレン系樹脂のうち、エチレン共重合体(エチレン含有共重合体)は、エチレンとエチレン以外の共重合性単量体(非エチレン系共重合性単量体又は極性共重合性単量体)との共重合体であってもよい。エチレン以外の共重合性単量体(又は極性共重合性単量体)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニルなどの有機酸ビニルエステル;プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などのα−C3−10オレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸などの酸性基含有共重合性単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸C1−12アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有共重合性単量体;環状オレフィンなどが例示できる。これらのエチレン以外の共重合性単量体(又は極性共重合性単量体)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
環状オレフィンとしては、例えば、単環式オレフィン[例えば、シクロペンテン、シクロヘプテンなどのシクロC3−10アルケン、シクロペンタジエンなどのシクロC3−10アルカジエンなど];二環式オレフィン[例えば、ノルボルネン類(例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネン、7−オキソ−2−ノルボルネンなどのC4−20ビシクロアルケンなど)、ノルボルナジエン類(例えば、上記例示のノルボルネン類に対応する2,5−ノルボルナジエン類)など]、三環式オレフィン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC6−25トリシクロアルカジエンなど]、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8−30テトラシクロアルケンなど]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10−35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12−40ヘキサシクロアルケン)など]などの多環式オレフィンなどが挙げられる。
これらの環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、多環式オレフィン(特に、ノルボルネン類などの二環式オレフィン)が好ましい。
前記エチレン共重合体のエチレン単位の割合(エチレン含量)は、共重合体全体に対して、50モル%以上(例えば、60〜99モル%程度)、好ましくは65モル%以上(例えば、65〜98モル%程度)、さらに好ましくは70〜97モル%(例えば、80〜95モル%程度)であってもよく、60〜99モル%(例えば、75〜98モル%)程度であってもよい。なお、エチレン共重合体がエチレンとα−オレフィンとの共重合体であるとき、エチレン含量は、前記ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPEなど)のエチレン含量と異なる範囲、例えば、50〜90モル%(例えば、55〜87モル%)、好ましくは60〜85モル%(例えば、65〜80モル%)程度の範囲から選択できる。
エチレン以外の共重合性単量体は、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−2アルキルエステル(アクリル酸エチルなど)、二又は三環式オレフィン(ノルボルネン類など)であってもよい。また、エチレン共重合体(エチレン含有共重合体)は、ランダム共重合体又は交互共重合体であってもよい。
エチレン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−有機酸ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体などのエチレン−環状オレフィン共重合体などから選択された少なくとも一種が例示でき、好ましくは有機酸ビニルエステル共重合体、さらに好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。
オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂)の数平均分子量は、例えば、8,000〜500,000程度の範囲から選択でき、例えば、10,000〜300,000、好ましくは15,000〜200,000、さらに好ましくは20,000〜150,000(例えば、25,000〜100,000)程度であってもよい。前記オレフィン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを用いて標準ポリスチレン換算で測定できる。
オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂)の融点は、例えば、65〜170℃、好ましくは70〜160℃、さらに好ましくは80〜150℃(例えば、90〜120℃)程度であってもよい。また、ポリエチレンの融点は、例えば、90〜135℃、好ましくは95〜132℃、さらに好ましくは100〜130℃(例えば、105〜125℃)程度であってもよい。また、エチレン共重合体の融点は、α−オレフィンの種類と含有量などに応じて、例えば、65〜150℃、好ましくは70〜140℃、さらに好ましくは80〜130℃程度であってもよい。なお、融点に代えてガラス転移温度を用いることもでき、融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定できる。
温度190℃、荷重21.2Nの条件下、オレフィン系樹脂のメルトフローレートは、例えば、0.05〜100g/10分、好ましくは0.08〜70g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分程度であってもよい。ポリエチレンのメルトフローレートは、温度190℃、荷重21.2Nにおいて、例えば、0.05〜20g/10分(例えば、0.08〜15g/10分)、好ましくは0.1〜12.5g/10分(例えば、0.15〜12g/10分)、さらに好ましくは0.2〜10g/10分(例えば、0.25〜9g/10分)程度であってもよい。
これらのオレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂のうち、ポリエチレン[低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)など]が好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー(ポリプロピレン、ポリエチレンなどをハードセグメントとし、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどをソフトセグメントとしたブロック共重合体など)、スチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEPSブロック共重合体)など)、ポリエステル系エラストマー(ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステル(ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコールなど)又は脂肪族ポリエーテル(ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)をソフトセグメントとするブロック共重合体など)、ポリアミド系エラストマー(ナイロン6,ナイロン12などのポリアミドをハードセグメントとし、前記脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体など)、ポリウレタン系エラストマーなどが例示できる。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン(一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS))、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩化ポリスチレン−スチレン樹脂(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン樹脂(AES樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などから選択された少なくとも一種が挙げられ、これらのスチレン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましくはポリスチレン(一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS))、さらに好ましくは一般用ポリスチレン(GPPS)が挙げられる。
好ましい発泡性熱可塑性樹脂組成物は、例えば、エチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種のベース成分を含んでいる。特に、ベース成分と、エチレン共重合体と、スチレン系樹脂とを含むのが好ましい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物において、ベース成分(例えば、前記低密度ポリエチレン)と、エチレン共重合体及び/又はスチレン系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=40/60〜100/0(例えば、50/50〜100/0)程度の範囲から選択でき、例えば、55/45〜98/2、好ましくは60/40〜95/5(例えば、65/35〜95/5)、さらに好ましくは70/30〜95/5(例えば、75/25〜90/10)程度であってもよく、例えば、50/50〜80/20、好ましくは55/45〜75/25、さらに好ましくは60/40〜70/30程度であってもよい。
また、エチレン共重合体と、スチレン系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=0/100〜100/0(例えば、10/90〜90/10)程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20、好ましくは25/75〜75/25(例えば、28/72〜72/28)、さらに好ましくは30/70〜70/30(例えば、32/68〜68/32)程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、発泡剤(又は発泡助剤)及び/又は発泡核剤を含んでいてもよい。前記発泡剤としては、物理発泡に用いられる揮発性発泡剤や、化学発泡に用いられる分解性発泡剤などが挙げられる。揮発性発泡剤としては、例えば、不活性又は不燃性ガス(窒素、炭酸ガス、フロン、代替フロンなど)、水、有機系物理発泡剤[例えば、脂肪族炭化水素(プロパン、ブタン(n−ブタン、イソブタン)、ペンタン(n−ペンタン、イソペンタンなど)、ヘキサン(n−ヘキサンなど)など)、芳香族炭化水素(トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(トリクロロメタンなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、石油エーテルなど)、ケトン類(アセトンなど)など]が挙げられる。また、分解性発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩;クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど);2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミドなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物;N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)などのニトロソ化合物;テレフタルアジドなどのアジド化合物などが挙げられる。これらの発泡剤のうち、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素、クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)などを用いる場合が多い。これらの発泡剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
発泡剤の割合は、軟質熱可塑性樹脂(又は熱可塑性樹脂)の合計量100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜35重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよい。
発泡核剤としては、前記発泡剤の項で例示の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩;クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)などの他、ケイ酸化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。発泡核剤のうち、特に、タルクなどのケイ酸化合物などを使用すると、気泡構造を均一化できる。
発泡核剤の割合は、軟質熱可塑性樹脂(又は熱可塑性樹脂)の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、収縮防止剤、例えば、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸アミドなどを含んでいてもよい。より具体的に、脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など)と多価アルコール(例えば、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど)とのエステルとしては、例えば、パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが挙げられる。これらの収縮防止剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。収縮防止剤の割合は、例えば、軟質熱可塑性樹脂全体(樹脂成分全体)100重量部に対して0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部、特に0.5〜10重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。また、収縮防止剤の割合は、前記発泡剤100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.05〜2重量部(例えば、0.1〜1重量部)程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、添加剤、例えば、相溶化剤、気泡調整剤、安定剤[酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など]、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、有機又は無機充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、表面平滑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。各添加剤の割合は、それぞれ、軟質熱可塑性樹脂(又は熱可塑性樹脂)の合計量100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.15〜20重量部(例えば、0.2〜15重量部)、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、各成分を、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて予備混合してもよい。また、発泡剤、発泡核剤、収縮防止剤、添加剤成分は、それぞれ、前記発泡性熱可塑性樹脂組成物(樹脂ペレットなどを含む)に予め含有させてもよく、発泡成形過程で発泡性熱可塑性樹脂組成物に添加又は圧入してもよい。
板状樹脂発泡体の発泡倍率は、例えば、3〜120倍(例えば、5〜110倍)であってもよく、例えば、10〜100倍(例えば、15〜95倍)、好ましくは20〜90倍(例えば、25〜85倍)、さらに好ましくは30〜80倍(例えば、35〜70倍)程度であってもよい。発泡倍率が高すぎると、吸音性が低下するとともに、板状樹脂発泡体の強度が低下する。発泡倍率が低すぎると、吸音性が低下するとともに、断熱性が低下する虞がある。発泡倍率は、板状樹脂発泡体の見掛け密度ρf(g/cm)を測定することにより算出できる。
板状樹脂発泡体の見掛け密度は、発泡倍率に応じて選択でき、例えば、0.005〜0.05g/cm、好ましくは0.007〜0.03g/cm(0.008〜0.02g/cm)、さらに好ましくは0.01〜0.02g/cm(例えば、0.012〜0.016g/cm)程度であってもよく、例えば、0.005〜0.04g/cm、好ましくは0.01〜0.03g/cm、さらに好ましくは0.015〜0.025g/cm程度であってもよい。見掛け密度は水中置換法により測定できる。
板状樹脂発泡体の平均気泡径は、例えば、0.01〜3mm、好ましくは0.05〜2mm、さらに好ましくは0.1〜1mmであってもよい。板状樹脂発泡体の気泡の平均径が大きすぎると、吸音性が低下するとともに、板状樹脂発泡体の強度が低下する虞がある。板状樹脂発泡体の気泡の平均径が小さすぎると、吸音性が低下するとともに、断熱性が低下する虞がある。なお、板状樹脂発泡体の気泡の平均径は、n個の気泡について、短径と長径とを測定して、短径と長径との加算平均[(短径+長径)/2]を算出し、平均値を求めることができる。
本発明の吸音材に係る板状樹脂発泡体は、少なくとも独立気泡構造を有していれば、特に制限がなく、気泡構造は、連続気泡及び/又は独立気泡で形成してもよく、例えば、独立気泡に針を侵入して連続気泡としてもよい。板状樹脂発泡体の表面には、スキン層が形成されてもよい。スキン層の厚みは、凹凸面の頂部と谷部との厚み方向の高さの差(平均高低差)よりも小さい値であれば特に制限されず、通常、1〜50μm(例えば、5〜30μm)程度であってもよい。板状樹脂発泡体は、独立気泡を有するので断熱性も有する。そのため、板状樹脂発泡体は、吸音材としてだけでなく、例えば、室内などにおいて防音断熱材などとして利用することもできる。
板状樹脂発泡体は、1つの発泡層で構成された単層構造を有し、全体に亘り気泡構造を有していてもよく、複数の発泡層が積層された積層構造でよい。
板状樹脂発泡体の形態に関し、板状とは、二次元的形状をいい、厚みは特に制限なく、例えば、フィルム状又はシート状などの厚みの小さい形状であってもよく、例えば、ブロック状などの厚みの大きい形状であってもよい。板状樹脂発泡体の形態は、例えば、平板状であってもよく、湾曲していてもよい。また、樹脂発泡体の厚みは、均一であってもよく、所定の方向又は部位(例えば、中央部又は中間部)にいくにつれて漸増/漸減していてもよく、少なくとも一方の面を傾斜面又は湾曲面として形成してもよい。
板状樹脂発泡体の平均厚みは、吸音性、断熱性の観点から、1〜100mm(例えば、2〜50mm)、好ましくは3〜30mm(例えば、4〜20mm)、さらに好ましくは5〜10mm(例えば、6〜9mm)程度であってもよい。吸音材の厚みが小さすぎると又は大きすぎると、吸音効果、断熱効果が十分に発揮できない虞がある。
板状樹脂発泡体は、少なくとも一方の表面が凹凸面(凹凸部)として形成されていればよく、他方の面は、平坦面(例えば、平滑な平坦面)、もしくは凹凸面であってもよい。
板状樹脂発泡体の少なくとも一方の表面には、凹凸面(凹凸部)が形成されている。凹部及び凸部の断面形状は、特に制限されず、例えば、多角形状(三角形状;コ字状又は矩形状、台形状などの四角形状など)、半円形状(半楕円形状も含む)などが挙げられる。好ましい凹部及び凸部の断面形状は、半円形状が挙げられる。
凹凸面の凹凸パターンは、特に限定されず、凹凸パターンにおける凸部及び凹部は、ランダム又は規則的に点在していてもよく、互いに隣接していてもよい。吸音性の観点から、板状樹脂発泡体の凹凸面(凹凸部)では、凸部と凹部とが交互に繰り返し配置されているのが好ましく、例えば、直線状に延びる突条と、突条に隣接し、直線状に延びる溝とで形成される筋状構造、直線状に延びる複数の突条が交差して形成される格子型構造などが挙げられる。好ましい板状樹脂発泡体の構造としては、筋状構造が挙げられ、さらに好ましくは凸部及び凹部が湾曲した形状の筋状構造(波型面)が挙げられる。
凹凸部の形状は、微小又は微細な凹凸であってもよく、大きな凹凸(例えば、山/谷状又はうね状など)であってもよい。頂部と谷部との厚み方向の高さの差(平均高低差)は、例えば、0.01〜60mm(例えば、1〜55mm)であってもよく、例えば、3〜50mm(例えば、4〜45mm)、好ましくは5〜40mm(例えば、8〜35mm)、さらに好ましくは10〜30mm(例えば、12〜25mm)程度であってもよく、例えば、1〜50mm、好ましくは1.5〜40mm、さらに好ましくは2〜35mm(例えば、2.5〜25mm)程度であってもよい。谷部と頂部との厚み方向の高さの差(平均高低差)が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。なお、凹凸部における谷部と頂部との厚み方向の高さの差(平均高低差)は、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて、測定することにより算出できる。
凹凸面において、凸部(又は頂部)の平均間隔(平均ピッチ)は、例えば、0.1〜70mm(例えば、1〜65mm)であってもよく、例えば、2〜60mm(例えば、5〜55mm)、好ましくは10〜50mm(例えば、12〜45mm)、さらに好ましくは15〜40mm(例えば、20〜35mm)程度であってもよく、例えば、3〜45mm、好ましくは6〜40mm、さらに好ましくは8〜35mm程度であってもよい。頂部の間隔が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。
なお、板状樹脂発泡体において、凹凸面及び/又は平坦面を音波の入射面としてもよいが、凹凸面を音波の入射面とするのが好ましい。表面積の大きい凹凸面を入射面とすることで、特に高周波数域(例えば、5000〜7000Hz)の吸音性が向上する。
板状樹脂発泡体には、厚み方向に侵入する針孔が形成されており、針孔は板状樹脂発泡体を貫通していてもよいが、厚み方向において途中まで侵入し、板状樹脂発泡体の厚みよりも小さいのが好ましい。針孔を形成することで、板状樹脂発泡体の表面積が大きくなり、入射する音波が分散、吸収されやすくなり、広い周波数域(例えば、3000〜7000Hz)での吸音性が向上する。
針孔の深さは、板状樹脂発泡体がスキン層を有する場合、スキン層を貫通し、さらに少なくとも一部の独立気泡を貫通していれば特に制限されず、用途に応じて、板状樹脂発泡体の厚み全体に対し、10〜90%(例えば、20〜80%)、好ましくは30〜70%(例えば、35〜65%)、さらに好ましくは40〜60%(例えば、45〜55%)であってもよい。針孔の深さが小さすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞があり、針孔の深さが大きすぎると、独立気泡が少なくなり断熱性及び機械的強度が低下する虞がある。なお、板状樹脂発泡体の凹凸面に針孔を有する場合、針孔の深さについては、その凹凸面の頂部と谷部との厚み方向の平均の位置を基準として算出できる。
また、針孔は樹脂発泡体の表面から侵入しており、必ずしも凹凸面の凸部に針孔を侵入させる必要はなく、規則的に又はランダムに、凹部、凸部及び平坦部のいずれの部位から侵入させてもよい。
なお、針孔は、凹凸面及び平坦面のいずれの面から侵入してもよいが、少なくとも凹凸面から侵入しているのが好ましい。例えば、少なくとも板状樹脂発泡体の片面(例えば、凹凸面)から侵入しているのが好ましく、板状樹脂発泡体の両面(例えば、一方の凹凸面と、他方の平坦面(及び/)又は凹凸面との双方の面)から侵入しているのがさらに好ましい。
針孔の平均径は、例えば、0.1〜5mm、好ましくは0.2〜3mm、さらに好ましくは0.25〜1.5mm(例えば、0.3〜1.2mm)程度であってもよい。
針孔の平均密度(個/cm)は、独立気泡の密度に応じて選択でき、例えば、1〜200個/cm(例えば、3〜150個/cm)、好ましくは5〜100個/cm(例えば、7〜90個/cm)、さらに好ましくは8〜50個/cm(例えば、10〜40個/cm)程度であってもよく、例えば、10〜90個/cm(例えば、15〜45個/cm)、好ましくは20〜40個/cm(例えば、25〜35個/cm)程度であってもよく、例えば、50〜500個/cm(例えば、60〜250個/cm)、好ましくは70〜150個/cm(例えば、80〜120個/cm)程度であってもよい。針孔の密度が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。
吸音材は、板状樹脂発泡体本体の少なくとも一方の面側には連続気泡構造を有する連続気泡層(連続気泡域)が形成され、他方の面側には独立気泡構造を有する独立気泡層(独立気泡域)が形成されていてもよい。また、連続気泡層と独立気泡層とは板状樹脂発泡体の厚み方向に隣接して形成されていてもよい。なお、連続気泡層は、例えば、独立気泡層に針を侵入させ独立気泡の独立気泡壁を穿設して壊し(又は貫通して)針孔を形成することができる。
連続気泡層と独立気泡層との厚み割合は、針孔の深さに対応させることができ、前者/後者=10/90〜90/10(例えば、20/80〜80/20)程度の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=25/75〜75/25、好ましくは30/70〜70/30(例えば、35/65〜65/35)、さらに好ましくは40/60〜60/40(例えば、45/55〜55/45)程度であってもよい。なお、連続気泡層と独立気泡層との境界は、独立気泡と連続気泡とが混在し、明瞭でない場合があるが、断面の観察によりおおよその平均的な厚み割合として算出でき、針の侵入度に基づいて、厚み割合を算出してもよい。連続気泡層と独立気泡層との厚み割合については、凹凸面の頂部と谷部との厚み方向の平均の位置を基準として算出できる。また、連続気泡層には、独立気泡が混在していてもよい。
吸音材には、板状樹脂発泡体を厚み方向に貫通する打抜き孔を形成してもよい。打抜き孔を形成することにより、入射した音波が分散されやすくなり、広い周波数域(例えば、3000〜7000Hz)の吸音性が向上する。
打抜き孔の平均径は、前記針孔の平均径よりも大きく、例えば、1〜30mm(例えば、1.5〜25mm)、好ましくは2〜20mm(例えば、2.5〜15mm)程度であってもよく、例えば、1〜20mm(例えば、3〜12mm)、好ましくは3〜10mm(例えば、3.5〜8mm)、さらに好ましくは4〜8mm(例えば、4.5〜7.5mm)程度であってもよい。打抜き孔の平均径が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。なお、打抜き孔の平均径は、n個の打抜き孔について、短径と長径とを測定して、短径と長径との加算平均[(短径+長径)/2]を算出し、平均値を求めることができる。また、打抜き孔の平均径は、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて、測定することができる。
打抜き孔の平均密度は、例えば、0.1〜50個/10cm(例えば、0.3〜30個/10cm)、好ましくは0.5〜20個/10cm(例えば、0.7〜10個/10cm)、さらに好ましくは0.8〜5個/10cm(例えば、1〜3個/10cm)程度であってもよく、例えば、1〜4個/10cm、好ましくは2〜3.5個/10cm程度であってもよい。打抜き孔の個数が少なすぎる又は多すぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。
図1は本発明の吸音材の一例を示す概略図である。吸音材1には、一方の表面が頂部3と谷部4とが交互に繰り返す波型構造を形成したリブ2が配置されている。また、吸音材1の一方の表面(リブ面)のみに、吸音材1の厚み方向の半分まで侵入する多数の針孔5が形成されている。すなわち、吸音材1のうち、針孔5が形成された一方の表面(リブ面)側に主に連続気泡構造を有する連続気泡層6を形成し、他方の表面(平坦面)側に主に独立気泡を有する独立気泡層7を形成している。さらに、吸音材1は、厚み方向を貫通する複数の打抜き孔8が形成されている。
<吸音特性>
吸音特性とは、JIS A 1405に基づいて測定される垂直入射吸音率をいう。垂直入射吸音率は、数値が高い方が吸音性に優れている。
本発明において、音波は、吸音材のいずれの面(例えば、凹凸面に対して反対面)から入射させてもよく、3000〜6000Hzの周波数域で測定したとき、凹凸面に針孔を形成すると、吸音材は、音波を効率よく吸収し、広い周波数域において高い吸音性を示す。
音波を凹凸面から入射させると、音波を平坦面から入射させるのと比べて、4000Hz以上(例えば、5000Hz以上)における吸音率を向上できる。例えば、音波を平坦面から入射させると、吸音率は、周波数0Hzから4000〜5000Hz近辺まで急激又は徐々に上昇し、吸音率は、例えば、0.85〜0.95程度となり、5000Hz以降は、徐々に低下し、6000Hz付近で、例えば、0.3〜0.6(例えば、0.4〜0.5)程度に低下する場合がある。これに対して、音波を凹凸面から入射すると、吸音率は、音波を平坦面から入射するのと比べ高い周波数で上昇し、中周波数域(例えば、5000〜7000Hz)で、例えば、0.9〜1(例えば、0.905〜0.998)、好ましくは0.91〜0.995(例えば、0.915〜0.993)、さらに好ましくは0.92〜0.99(例えば、0.925〜0.988)程度になるまで向上する場合がある。
針孔を有する吸音材は、針孔のない吸音材に比べて、中〜高周波数(例えば、3000〜7000Hz)における吸音率を向上できる。また、両面に針孔を有する吸音材は、さらに4000〜5000Hz近辺の吸音効果が優れる。すなわち、針孔を有する吸音材では、針孔のない吸音材に比べて、3500〜7000Hzにおける吸音率を向上できる。例えば、針孔のない吸音材では、吸音率が、周波数0Hzから急激又は徐々に上昇し、3500Hz付近で、吸音率が、例えば、0.8〜1(例えば、0.82〜0.998)、好ましくは0.85〜0.995(例えば、0.87〜0.993)、さらに好ましくは0.9〜0.992(例えば、0.92〜0.99)程度になるまで向上し、4000Hz付近を超えると吸音率が、徐々に低下し、6000Hz付近では、例えば、0.5〜0.8程度となる場合がある。これに対して、片面に針孔を有する吸音材は、吸音率が針孔のない場合と同様の挙動を示すが、4000Hz付近を越えても、吸音率は高いレベルであり、例えば、0.7〜1(例えば、0.72〜0.995)、好ましくは0.75〜0.99(例えば、0.77〜0.985)、さらに好ましくは0.8〜0.98(例えば、0.82〜0.97)程度で維持する場合がある。
さらに、両面に針孔を有すると、4000Hz近辺を超えても、吸音率は、例えば、0.82〜1(例えば、0.85〜0.998)、好ましくは0.86〜0.995(例えば、0.87〜0.993)、さらに好ましくは0.87〜0.99(例えば、0.875〜0.988)と片面に針孔を形成する場合よりも高い値で維持する場合がある。
打抜き孔を有する吸音材は、打抜き孔のない吸音材に比べて、例えば、中〜高周波数(例えば、4500〜7000Hz)において、吸音率を向上できる。例えば、打抜き孔のない吸音材では、吸音率は、周波数0Hzから4500Hz付近まで急激又は徐々に上昇し、高周波数域(例えば、4000〜5000Hz)近辺で、吸音率が、例えば、0.8〜1(例えば、0.82〜0.998)、好ましくは0.85〜0.995(例えば、0.87〜0.993)、さらに好ましくは0.9〜0.99(例えば、0.92〜0.988)まで向上するものの、6000Hz付近で、例えば、0.6〜0.8(例えば、0.65〜0.75)程度まで低下する場合がある。これに対して、打抜き孔を有する吸音材では、吸音率は、打抜き孔のない場合と同様の挙動を示して上昇するが、4500Hz以降は、吸音率は低下せず、例えば、0.85〜1(例えば、0.9〜0.95)程度を維持する場合がある。
これらのことから、吸音材は、音波が凹凸面から入射するのが好ましく、少なくとも凹凸面に針孔を形成し、この針孔が形成された凹凸面(特に両面に針孔を形成する場合)から音波が入射するのがさらに好ましい。さらには、吸音材には打抜き孔を形成するのが好ましい。
なお、本発明において、板状樹脂発泡体に隣接させて、不織布及び/又は織布(例えば、有機繊維、ガラスなどの無機繊維などの繊維の不織布及び/又は織布など)、多孔体(例えば、ウレタン製スポンジなどの軟質樹脂の発泡体、又は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)ゴム系発泡体;前記板状樹脂発泡体以外の樹脂発泡体など)、シート及び/又は薄膜(例えば、アルミニウムなどの金属、プラスチックなど)、ネット又はメッシュ(例えば、前記繊維や発泡体などのネット)などを積層してもよい。
<吸音材の製造方法>
本発明の吸音材は、軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡させて独立気泡構造の発泡体を形成する発泡工程と、独立気泡を連続気泡化させる穿設工程とを経ることにより製造できる。
[発泡工程]
前記樹脂組成物を、各成分の混合物の形態又はペレット状などの形態で、溶融混練機に供給し、発泡成形することにより、板状樹脂発泡体を得ることができる。溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸又はベント式二軸押出機などを利用できる。発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。少なくとも一方の面に凹凸形状を有する発泡体は、凹凸形状に応じてエンボス加工してもよいが、通常、対向する内壁のうち少なくとも一方の内壁が凹凸状に形成された口金から、発泡性樹脂組成物を押出して発泡させる押出発泡法により作製する場合が多い。なお、発泡成形温度は、例えば、70〜300℃、好ましくは80〜280℃、さらに好ましくは85〜260℃程度であってもよい。
なお、主に独立気泡が形成された独立気泡構造の発泡体は、樹脂組成物中の含有量が50%を超える樹脂成分の融点又はガラス転移温度Tを基準として、樹脂の溶融押出温度を(T−20)〜(T−5)℃程度の範囲内に調整することにより調製できる。
[穿設工程]
穿設工程では、発泡工程で生成した独立気泡構造の発泡体の厚みよりも短い多数の針を発泡体の厚み方向に侵入させて(又は突き刺して)独立気泡を連続気泡化させる。この穿設工程は、発泡成形された発泡体を冷却した後で行ってもよいが、発泡成形し(又は発泡体を押し出し)、発泡体が熱い過程(流動性又は溶融状態、気泡形成過程、気泡成長過程)で発泡体に針を侵入させる(又は突き刺す)場合が多い。特に、発泡の直後又は発泡に後続して(例えば、口金から吐出後、1分以内の時間に)、すなわち、発泡成形しつつ(又は発泡体を押し出しつつ)、発泡体に針を侵入させる(又は突き刺す)場合が多い。その際、針は加熱してもよいが、効率よく連続気泡を形成するためには、針を加熱することなく発泡工程(発泡工程の後段)で発泡体に侵入させる(又は突き刺す)のが有利である。好ましい方法は、表面に多数の針(又はピン)を備えたロール(針ロール又はピンロール)を回転させながら、発泡体の厚み方向に針を侵入させる(又は刺す)方法である。
針(又はピン)の長さは、連続気泡層(第1の気泡層)の厚み割合に応じて選択でき、通常、針の侵入時の発泡体の前記独立気泡層と連続気泡層との厚み割合に対応した長さである。なお、発泡体は圧縮して針を侵入させてもよい。また、発泡体には複数回に亘り針を侵入させてもよい。例えば、発泡体の進行方向に間隔をおいて回転可能に配設された複数の針ロール又はピンロールで順次発泡体を穿設加工してもよい。針(又はピン)の太さは、例えば、平均径0.1〜5mm(例えば、0.2〜3mm、好ましくは0.25〜1.5mm)程度であってもよい。また、針(又はピン)の密度(本/cm)は、独立気泡の密度に応じて選択でき、通常、1〜60本/cm(例えば、2〜55本/cm)、好ましくは3〜50本/cm(例えば、4〜45本/cm)、さらに好ましくは5〜40本/cm(例えば、6〜35本/cm)程度であってもよく、1〜250本/cm(例えば、2〜200本/cm)、好ましくは70〜150本/cm(例えば、80〜120本/cm)、程度であってもよい。なお、針の密度(本/cm)は、1つの独立気泡(平均気泡径の独立気泡)当たり、平均0.1〜1本/cm(例えば、0.2〜0.8本/cm、好ましくは0.25〜0.6本/cm、さらに好ましくは0.3〜0.5本/cm)程度であってもよい。
なお、針ロール(又はピンロール)のロール径は、例えば、50〜250mmφ(例えば、70〜200mmφ、好ましくは80〜170mmφ)程度、針(又はピン)のピッチは、0.5〜20mm(例えば、0.8〜15mm、好ましくは1〜12mm、さらに好ましくは1.5〜10mm)程度、ロールの回転数は、10〜170rpm(例えば、25〜150rpm、好ましくは50〜130rpm、さらに好ましくは75〜125rpm)程度であってもよい。
図2は本発明の板状樹脂発泡体の製造工程を説明するための概略図である。押出機の口金から押し出された板状樹脂発泡体(独立気泡構造の発泡体)9は、気泡が成長しつつ支持ガイドロール10に案内されながら、表面に回転可能なロール(針ロール)11の表面に形成された所定長さの多数の針12で突き刺され、一方の面側(表層部)の独立気泡を連続気泡化している。すなわち、板状樹脂発泡体9のうち、針12が侵入した一方の面側に主に連続気泡構造を有する連続気泡層6を形成し、他方の面側に主に独立気泡構造を有する独立気泡層7を形成している。
上記の方法で、連続気泡層を有する針孔が形成された板状樹脂発泡体を連続的に製造できる。このような波型構造の板状樹脂発泡体は、簡易に作製することができ大量生産が可能であり、製造コストを削減することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[見掛け密度]
水中置換法により、実施例及び比較例で得られた板状樹脂発泡体の見掛け密度を測定した。すなわち、板状樹脂発泡体の空気中の重さ(g)と水中での重さ(g)とに基づいて、以下の式により算出した。
見掛け密度ρf(g/cm)=A/(A−B)×(ρw−d)+d
(式中、Aは試料の空気中の重さ(g)、Bは試料の水中の重さ(g)、ρwは水の密度(g/cm)、dは空気の密度(g/cm)を示す)。
[発泡倍率]
発泡倍率は、板状樹脂発泡体の前記見掛け密度ρf(g/cm)を測定して、以下の式により算出した。
発泡倍率(倍)=ρ/ρf(式中、ρは発泡前の樹脂密度(g/cm)を示す)。
<試験片の作製手順>
(実施例1)
(1)発泡工程
以下に記載の樹脂成分100重量部(PE65重量部、EVA15重量部、PS20重量部)、タルク2重量部及び発泡剤12重量部を、押出機に供給し、温度105℃で、一方の内壁が凹凸状の波型を有する口金から押し出すことにより、一方の面に、突条と溝との平均高低差3mm、突条のピッチ10mmを形成するリブ面(凹凸面)を有し、他方の面が平坦な板状樹脂発泡体を成形した。板状樹脂発泡体の発泡倍率は、57倍であった。
[樹脂成分]
PE:低密度ポリエチレン(LDPE):住友化学工業(株)製、「F101−1」
PS:ポリスチレン:東洋スチレン(株)、「HRM13N」
EVA:エチレン酢酸ビニル樹脂、日本ユニカー(株)製、「DQDJ1868(酢酸ビニル含有量18%)」
タルク:平均粒子径15μm
[発泡剤]
n−ブタン/n−ペンタン(重量比)=50/50の混合発泡剤。
(2)針孔穿設工程
図2に示す3つのピンロール(ロール径150mmφ、針の太さ1.0mmφ、針の長さ5.0mm、周方向の針の間隔5mm、幅方向の針の間隔5mmで周方向の直線上に互い違いに合計8460本の針を配置、回転数60rpm)を板状樹脂発泡体の進行方向に沿って250mmの間隔で配設し、板状樹脂発泡体のリブ面に板状樹脂発泡体の厚みの1/2に針を侵入させた。
(3)打抜き孔穿設工程
得られた板状樹脂発泡体を長さ30mmに切断したのち、5.0mmφのパンチで板状樹脂発泡体を貫通する打抜き孔を1.5個/10cmの平均密度となるように穿設し、試験片を作製した。
(実施例2)
実施例1の針孔工程に加え、得られた板状樹脂発泡体の平坦面についても、リブ面と同様に針孔を侵入させることにより、リブ面のみならず、平坦面にも針孔を穿設する以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
(実施例3)
実施例1の針孔工程において、針孔をリブ面に穿設せず、平坦面に穿設する以外は、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
(比較例1及び比較例2)
実施例1の針孔工程を経ることなく、実施例1と同様の方法で試験片を作製した。
<吸音材の対比試験>
下記に記載のtは得られた吸音材の厚みを示し、下記に記載の入射面から音波を入射して、吸音材の対比試験を行った。
実施例1(t=8.4mm、入射面:リブ面)
実施例2(t=8.6mm、入射面:リブ面)
実施例3(t=7.5mm、入射面:平坦面)
比較例1(t=9.5mm、入射面:平坦面)
比較例2(t=9.5mm、入射面:リブ面)
上記5点の試験片について、JIS A 1405に基づいた垂直入射吸音率を測定した。なお、吸音率は、垂直入射透過損失計測ユニット(透過損失管キット、Type4206−T(ブリュエル・ケアー社製))で、細管を使用して、周波数0Hzから6500Hzまでの周波数域で測定した。測定結果を図3に示す。
図3から明らかなように、比較例1〜2に比べ、実施例1〜3では、吸音率は高い値を示しており、特に実施例1及び2は、4500〜6000Hzにおいて、0.85を超える高い値を示した。
以上の結果から、リブ面に針孔を有し、打抜き孔を有する吸音材(試験片)は、吸音性は向上し、特にリブ面から音波を入射すると、中〜高周波数(4500〜6000Hz)の吸音性が顕著に向上した。
本発明の吸音材は、一定の強度を保ちつつ断熱効果を保持したまま、針孔に入射した音波が、吸音材に効率よく吸収されるためか、吸音性が向上する。そのため、本発明は、ビヒクル(自動車、電車などの車輌、航空機、船舶など)、建造物(家屋、集合住宅、コンドミニアム、工場、図書館、病院、校舎、体育館、講堂、映画館、コンサート会場、駐車場、ビルなどの高層建築物など)、電化製品(玩具、家電製品など)、産業機械(建設機械、農業機械など)、配管(排気管、給気管、排水管、吸水管など)などに使用する吸音材、吸音断熱材などとして有用である。特に吸音性が要求される自動車、電車などの車体、建造物の壁、床、天井などに利用できる。
1…吸音材
2…リブ
3…頂部(凸部)
4…谷部(凹部)
5…針孔
6…連続気泡層
7…独立気泡層
8…打抜き孔
9…板状樹脂発泡体
10…支持ガイドロール
11…ロール
12…針

Claims (11)

  1. 気泡構造を有する板状樹脂発泡体で形成され、少なくとも一方の表面が凹凸面として形成された吸音材であって、
    前記板状樹脂発泡体が独立気泡を有し、
    前記凹凸面が、突条と、この突条に隣接する溝とで形成された波型面であり、
    前記板状樹脂発泡体の表面から厚み方向の途中まで、前記凹凸面の全体に亘って侵入し、かつ少なくとも一部の前記独立気泡を貫通する針孔と;前記板状樹脂発泡体を貫通する打抜き孔とが形成され
    前記凹凸面の頂部と谷部の平均高低差が2.5〜60mm、
    前記凹凸面の頂部の平均間隔が5〜70mmであり、
    前記打抜き孔の平均径が、針孔の平均径よりも大きく、3.5〜30mmである、吸音材。
  2. 針孔の深さが、板状樹脂発泡体の厚み全体に対して、10〜90%である請求項1記載の吸音材。
  3. 板状樹脂発泡体が、エチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種のベース成分を含み、前記板状樹脂発泡体の発泡倍率が10〜100倍である請求項1又は2記載の吸音材。
  4. 凹凸面における頂部と谷部との平均高低差が、2.5〜25mmである請求項1〜3のいずれかに記載の吸音材。
  5. 凹凸面における頂部の平均間隔が5〜50mmである請求項1〜4のいずれかに記載の吸音材。
  6. 下記(1)の条件を満たす請求項1〜5のいずれかに記載の吸音材。
    (1)音波が入射する側に凹凸面を有す
  7. 打抜き孔の平均径が、針孔の平均径よりも大きく、3.5〜10mmである請求項1〜6のいずれかに記載の吸音材。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の吸音材の吸音性を向上する方法であって、前記吸音材に音波を入射して、吸音性を向上する方法。
  9. 凹凸面から音波を入射させて、請求項8記載の吸音性を向上する方法。
  10. 独立気泡を有し、少なくとも一方の表面に凹凸面を有する板状樹脂発泡体の表面から、厚み方向の途中まで針を侵入させ、かつ少なくとも一部の前記独立気泡を貫通する針孔を形成し、吸音材を製造する方法であって、前記凹凸面を、突条と、この突条に隣接する溝とで形成された波型面として形成し、前記凹凸面の全体に亘って前記針を侵入させて前記針孔を形成する工程と、前記板状樹脂発泡体を貫通する打抜き孔を形成する工程とを有する、請求項1〜7のいずれかに記載の吸音材を製造する方法。
  11. 少なくとも凹凸面から針を侵入させて針孔を形成する請求項10記載の吸音材を製造する方法。
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