<板状樹脂発泡体>
板状樹脂発泡体は、軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性熱可塑性樹脂組成物で形成できる。
板状樹脂発泡体は、全体として軟質であればよく、板状樹脂発泡体に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。
板状樹脂発泡体は、通常、オレフィン系樹脂(特に、エチレン系樹脂)及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種を含んでいる。
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン共重合体など)、プロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのプロピレン共重合体など)、ブテン系樹脂などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂(又は軟質熱可塑性樹脂)のうち、少なくともエチレン系樹脂を含むのが好ましい。
エチレン系樹脂のうちポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。なお、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレンは、エチレンと、少量(例えば、0.01〜5モル%、特に0.1〜3モル%程度)の共重合性α−オレフィンとの共重合体も包含する。また、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンと、少量(例えば、0.01〜10モル%、好ましくは1〜8モル%、特に、2〜7モル%程度)の共重合性α−オレフィン(エチレンを除くα−オレフィン)との共重合体も包含する。共重合性α−オレフィン(エチレン以外のα−オレフィン)としては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1などのα−C3−10オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、LLDPEは、メタロセン触媒を用いて調製できる。これらのポリエチレンは、単独で又は組み合わせて使用してもよい。
エチレン系樹脂のうち、エチレン共重合体(エチレン含有共重合体)は、エチレンとエチレン以外の共重合性単量体(非エチレン系共重合性単量体又は極性共重合性単量体)との共重合体であってもよい。エチレン以外の共重合性単量体(又は極性共重合性単量体)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニルなどの有機酸ビニルエステル;プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などのα−C3−10オレフィン;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸などの酸性基含有共重合性単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸C1−12アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン含有共重合性単量体;環状オレフィンなどが例示できる。これらのエチレン以外の共重合性単量体(又は極性共重合性単量体)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記エチレン共重合体のエチレン単位の割合(エチレン含量)は、共重合体全体に対して、50モル%以上(例えば、60〜99モル%程度)、好ましくは65モル%以上(例えば、65〜98モル%程度)、さらに好ましくは70〜97モル%(例えば、80〜95モル%程度)であってもよく、60〜99モル%(例えば、75〜98モル%)程度であってもよい。なお、エチレン共重合体がエチレンとα−オレフィンとの共重合体であるとき、エチレン含量は、前記ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPEなど)のエチレン含量と異なる範囲、例えば、50〜90モル%(例えば、55〜87モル%)、好ましくは60〜85モル%(例えば、65〜80モル%)程度の範囲から選択できる。
エチレン以外の共重合性単量体は、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−2アルキルエステル(アクリル酸エチルなど)、二又は三環式オレフィン(ノルボルネン類など)であってもよい。また、エチレン共重合体(エチレン含有共重合体)は、ランダム共重合体又は交互共重合体であってもよい。
エチレン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−有機酸ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体などのエチレン−環状オレフィン共重合体などから選択された少なくとも一種が例示でき、好ましくは有機酸ビニルエステル共重合体、さらに好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。
オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂)の数平均分子量は、例えば、8,000〜500,000程度の範囲から選択でき、例えば、10,000〜300,000、好ましくは15,000〜200,000、さらに好ましくは20,000〜150,000(例えば、25,000〜100,000)程度であってもよい。前記オレフィン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを用いて標準ポリスチレン換算で測定できる。
オレフィン系樹脂(例えば、エチレン系樹脂)の融点は、例えば、65〜170℃、好ましくは70〜160℃、さらに好ましくは80〜150℃(例えば、90〜120℃)程度であってもよい。また、ポリエチレンの融点は、例えば、90〜135℃、好ましくは95〜132℃、さらに好ましくは100〜130℃(例えば、105〜125℃)程度であってもよい。また、エチレン共重合体の融点は、α−オレフィンの種類と含有量などに応じて、例えば、65〜150℃、好ましくは70〜140℃、さらに好ましくは80〜130℃程度であってもよい。なお、融点に代えてガラス転移温度を用いることもでき、融点及びガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定できる。
温度190℃、荷重21.2Nの条件下、オレフィン系樹脂のメルトフローレートは、例えば、0.05〜100g/10分、好ましくは0.08〜70g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分程度であってもよい。ポリエチレンのメルトフローレートは、温度190℃、荷重21.2Nにおいて、例えば、0.05〜20g/10分(例えば、0.08〜15g/10分)、好ましくは0.1〜12.5g/10分(例えば、0.15〜12g/10分)、さらに好ましくは0.2〜10g/10分(例えば、0.25〜9g/10分)程度であってもよい。
これらのオレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂のうち、ポリエチレン[低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)など]が好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー(ポリプロピレン、ポリエチレンなどをハードセグメントとし、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどをソフトセグメントとしたブロック共重合体など)、スチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBSブロック共重合体)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合体)、スチレン−エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEPSブロック共重合体)など)、ポリエステル系エラストマー(ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステル(ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコールなど)又は脂肪族ポリエーテル(ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど)をソフトセグメントとするブロック共重合体など)、ポリアミド系エラストマー(ナイロン6,ナイロン12などのポリアミドをハードセグメントとし、前記脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体など)、ポリウレタン系エラストマーなどが例示できる。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン(一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS))、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩化ポリスチレン−スチレン樹脂(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン樹脂(AES樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などから選択された少なくとも一種が挙げられ、これらのスチレン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましくはポリスチレン(一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS))、さらに好ましくは一般用ポリスチレン(GPPS)が挙げられる。
好ましい発泡性熱可塑性樹脂組成物は、例えば、エチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種のベース成分を含んでいる。特に、ベース成分と、エチレン共重合体と、スチレン系樹脂とを含むのが好ましい。
発泡性熱可塑性熱可塑性樹脂組成物において、ベース成分(例えば、前記低密度ポリエチレン)と、エチレン共重合体及び/又はスチレン系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=40/60〜100/0(例えば、50/50〜100/0)程度の範囲から選択でき、通常、55/45〜98/2、好ましくは60/40〜95/5(例えば、65/35〜95/5)、さらに好ましくは70/30〜95/5(例えば、75/25〜90/10)程度であってもよく、例えば、50/50〜80/20、好ましくは55/45〜75/25、さらに好ましくは60/40〜70/30程度であってもよい。
また、エチレン共重合体と、スチレン系樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=0/100〜100/0(例えば、10/90〜90/10)程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20、好ましくは25/75〜75/25(例えば、28/72〜72/28)、さらに好ましくは30/70〜70/30(例えば、32/68〜68/32)程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、発泡剤(又は発泡助剤)及び/又は発泡核剤を含んでいてもよい。前記発泡剤としては、物理発泡に用いられる揮発性発泡剤や、化学発泡に用いられる分解性発泡剤などが挙げられる。揮発性発泡剤としては、例えば、不活性又は不燃性ガス(窒素、炭酸ガス、フロン、代替フロンなど)、水、有機系物理発泡剤[例えば、脂肪族炭化水素(プロパン、ブタン(n−ブタン、イソブタン)、ペンタン(n−ペンタン、イソペンタンなど)、ヘキサン(n−ヘキサンなど)など)、芳香族炭化水素(トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(トリクロロメタンなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、石油エーテルなど)、ケトン類(アセトンなど)など]が挙げられる。また、分解性発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩;クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど);2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミドなどのアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物;N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)などのニトロソ化合物;テレフタルアジドなどのアジド化合物などが挙げられる。これらの発泡剤のうち、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素、クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)などを用いる場合が多い。これらの発泡剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
発泡剤の割合は、軟質熱可塑性樹脂(又は熱可塑性樹脂)の合計量100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜35重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部程度であってもよい。
発泡核剤としては、前記発泡剤の項で例示の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの無機炭酸塩;クエン酸などの有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウムなど)などの他、ケイ酸化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。発泡核剤のうち、特に、タルクなどのケイ酸化合物などを使用すると、気泡構造を均一化できる。
発泡核剤の割合は、軟質熱可塑性樹脂(又は熱可塑性樹脂)の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、収縮防止剤、例えば、脂肪酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸アミドなどを含んでいてもよい。より具体的に、脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など)と多価アルコール(例えば、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど)とのエステルとしては、例えば、パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが挙げられる。これらの収縮防止剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。収縮防止剤の割合は、例えば、軟質熱可塑性樹脂全体(樹脂成分全体)100重量部に対して0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜15重量部、特に0.5〜10重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。また、収縮防止剤の割合は、例えば、前記発泡剤100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.05〜2重量部(例えば、0.1〜1重量部)程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、添加剤、例えば、相溶化剤、気泡調整剤、安定剤[酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など]、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、有機又は無機充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、表面平滑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。各添加剤の割合は、それぞれ、軟質熱可塑性樹脂(又は熱可塑性樹脂)の合計量100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.15〜20重量部(例えば、0.2〜15重量部)、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
発泡性熱可塑性樹脂組成物は、各成分を、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて予備混合してもよい。また、発泡剤、発泡核剤、収縮防止剤、添加剤成分は、それぞれ、前記発泡性熱可塑性樹脂組成物(樹脂ペレットなどを含む)に予め含有させてもよく、発泡成形過程で発泡性熱可塑性樹脂組成物に添加又は圧入してもよい。
板状樹脂発泡体の発泡倍率は、例えば、3〜120倍(例えば、5〜110倍)であってもよく、例えば、10〜100倍(例えば、15〜95倍)、好ましくは20〜90倍(例えば、25〜85倍)、さらに好ましくは30〜80倍(例えば、40〜75倍)程度であってもよい。発泡倍率が高すぎると、吸音性が低下するとともに、板状樹脂発泡体の強度が低下する。発泡倍率が低すぎると、吸音性が低下するとともに、断熱性が低下する虞がある。発泡倍率は、板状樹脂発泡体の見掛け密度ρf(g/cm3)を測定することにより算出できる。
板状樹脂発泡体の見掛け密度は、発泡倍率に応じて選択でき、例えば、0.005〜0.05g/cm3、好ましくは0.007〜0.03g/cm3(0.008〜0.02g/cm3)、さらに好ましくは0.01〜0.02g/cm3(例えば、0.012〜0.016g/cm3)程度であってもよく、例えば、0.005〜0.04g/cm3、好ましくは0.01〜0.03g/cm3、さらに好ましくは0.015〜0.025g/cm3程度であってもよい。見掛け密度は水中置換法により測定できる。
板状樹脂発泡体の平均気泡径は、例えば、0.01〜3mm、好ましくは0.05〜2mm、さらに好ましくは0.1〜1mmであってもよい。板状樹脂発泡体の気泡の平均径が大きすぎると、吸音性が低下するとともに、板状樹脂発泡体の強度が低下する虞がある。板状樹脂発泡体の気泡の平均径が小さすぎると、吸音性が低下するとともに、断熱性が低下する虞がある。なお、板状樹脂発泡体の気泡の平均径は、n個の気泡について、短径と長径とを測定して、短径と長径との加算平均[(短径+長径)/2]を算出し、平均値を求めることができる。
板状樹脂発泡体は、少なくとも連続気泡構造を有していれば、特に制限がなく、気泡構造は、連続気泡及び/又は独立気泡で形成してもよく、例えば、独立気泡に針を侵入して連続気泡としてもよい。板状樹脂発泡体の表面には、スキン層が形成されてもよい。スキン層の厚みは、凹凸面の頂部と谷部との厚み方向の高さの差(平均高低差)よりも小さい値であれば特に制限されず、通常、1〜50μm(例えば、5〜30μm)程度であってもよい。板状樹脂発泡体は、独立気泡を有するので、断熱性も有する。そのため、板状樹脂発泡体は、吸音材としてだけでなく、例えば、室内などにおいて防音断熱材などとして利用することもできる。
板状樹脂発泡体は、1つの発泡層で構成された単層構造を有し、全体に亘り気泡構造を有していてもよく、複数の発泡層が積層された積層構造でもよい。
板状樹脂発泡体の形態に関し、板状とは、二次元的形状を意味し、厚みは特に制限なく、例えば、フィルム状又はシート状などの厚みの小さい形状であってもよく、例えば、ブロック状などの厚みの大きい形状であってもよい。板状樹脂発泡体の形態は、例えば、平板状であってもよく、湾曲していてもよい。また、樹脂発泡体の厚みは、均一であってもよく、所定の方向又は部位(例えば、中央部又は中間部)にいくにつれて漸増/漸減していてもよく、少なくとも一方の面を傾斜面又は湾曲面として形成してもよい。
板状樹脂発泡体の平均厚みは、吸音性、断熱性の観点から、1〜100mm(例えば、2〜50mm)、好ましくは3〜30mm(例えば、4〜20mm)、さらに好ましくは5〜10mm(例えば、6〜9mm)程度であってもよい。樹脂発泡体の厚みが小さすぎると又は大きすぎると、吸音効果、断熱効果が十分に発揮できない虞がある。
板状樹脂発泡体は、少なくとも一方の表面が凹凸面(凹凸部)として形成されていればよく、他方の面は、平坦面(例えば、平滑な平坦面)、もしくは凹凸面であってもよい。
板状樹脂発泡体の少なくとも一方の表面には、凹凸面(凹凸部)が形成されている。凹部及び凸部の断面形状は、特に制限されず、例えば、多角形状(三角形状;コ字状又は矩形状、台形状などの四角形状など)、半円形状(半楕円形状も含む)などが挙げられ、好ましい凹部及び凸部の断面形状は、半円形状が挙げられる。
凹凸面の凹凸パターンは、特に限定されず、凹凸パターンにおける凸部及び凹部は、ランダム又は規則的に点在していてもよく、互いに隣接していてもよい。吸音性の観点から、板状樹脂発泡体の凹凸面(凹凸部)では、凸部と凹部とが交互に繰り返し配置されているのが好ましく、例えば、直線状に延びる突条と、突条に隣接し、直線状に延びる溝とで形成される筋状構造、直線状に延びる複数の突条が交差して形成される格子型構造などが挙げられる。好ましい板状樹脂発泡体の構造としては、筋状構造が挙げられ、さらに好ましくは凸部及び凹部の形状が湾曲している筋状構造(波形面)が挙げられる。
凹凸部の形状は、微小又は微細な凹凸であってもよく、大きな凹凸(例えば、山/谷状又はうね状など)であってもよい。頂部と谷部との厚み方向の高さの差(平均高低差)は、例えば、0.01〜60mm(例えば、1〜55mm)であってもよく、例えば、3〜50mm(例えば、4〜45mm)、好ましくは5〜40mm(例えば、8〜35mm)、さらに好ましくは10〜30mm(例えば、12〜25mm)程度であってもよく、例えば、1〜50mm、好ましくは1.5〜40mm、さらに好ましくは2〜35mm(例えば、2.5〜25mm)程度であってもよい。谷部と頂部との厚み方向の高さの差(平均高低差)が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。なお、凹凸部における谷部と頂部との厚み方向の高さの差(平均高低差)は、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて、測定することにより算出できる。
凹凸面において、凸部(又は頂部)の平均間隔(平均ピッチ)は、例えば、0.1〜70mm(例えば、1〜65mm)であってもよく、例えば、2〜60mm(例えば、5〜55mm)、好ましくは10〜50mm(例えば、12〜45mm)、さらに好ましくは15〜40mm(例えば、20〜35mm)程度であってもよく、例えば、3〜45mm、好ましくは6〜40mm、さらに好ましくは8〜35mm程度であってもよい。頂部の間隔が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。
なお、板状樹脂発泡体において、凹凸面及び/又は平坦面を音波の入射面としてもよいが、凹凸面を音波の入射面とするのが好ましい。表面積の大きい凹凸面を入射面とすることで、特に高周波数域(例えば、5000〜7000Hz)の吸音性が向上する。
板状樹脂発泡体には、厚み方向に侵入する針孔が形成されており、針孔は板状樹脂発泡体を貫通していてもよいが、厚み方向において途中まで侵入し、板状樹脂発泡体の厚みよりも小さいのが好ましい。針孔を形成することで、板状樹脂発泡体の表面積が大きくなり、入射する音波が分散、吸収されやすくなり、広い周波数域(例えば、3000〜7000Hz)での吸音性が向上する。
針孔の深さは、板状樹脂発泡体がスキン層を有する場合、スキン層を貫通し、さらに少なくとも一部の独立気泡を貫通していれば特に制限されず、用途に応じて、板状樹脂発泡体の厚み全体に対し、10〜90%(例えば、20〜80%)、好ましくは30〜70%(例えば、35〜65%)、さらに好ましくは40〜60%(例えば、45〜55%)であってもよい。針孔の深さが小さすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞があり、針孔の深さが大きすぎると、独立気泡が少なくなり断熱性及び機械的強度が低下する虞がある。なお、板状樹脂発泡体の凹凸面に針孔を有する場合、針孔の深さについては、その凹凸面の頂部と谷部との厚み方向の平均の位置を基準として算出できる。
また、針孔は樹脂発泡体の表面から侵入しており、必ずしも凹凸面の凸部に針孔を侵入させる必要はなく、規則的に又はランダムに、凹部、凸部及び平坦部のいずれの部位から侵入させてもよい。
なお、針孔は、凹凸面及び平坦面のいずれの面から侵入してもよいが、少なくとも凹凸面から侵入しているのが好ましい。例えば、少なくとも板状樹脂発泡体の片面(例えば、凹凸面)から侵入しているのが好ましく、板状樹脂発泡体の両面(例えば、一方の凹凸面と、他方の平坦面(及び/)又は凹凸面との双方の面)から侵入しているのがさらに好ましい。
針孔の平均径は、例えば、0.1〜5mm、好ましくは0.2〜3mm、さらに好ましくは0.25〜1.5mm(例えば、0.3〜1.2mm)程度であってもよい。
針孔の平均密度(個/cm2)は、独立気泡の密度に応じて選択でき、例えば、1〜200個/cm2(例えば、3〜150個/cm2)、好ましくは5〜100個/cm2(例えば、7〜90個/cm2)、さらに好ましくは8〜50個/cm2(例えば、10〜40個/cm2)程度であってもよく、例えば、10〜90個/cm2(例えば、15〜45個/cm2)、好ましくは20〜40個/cm2(例えば、25〜35個/cm2)程度であってもよく、例えば、50〜500個/cm2(例えば、60〜250個/cm2)、好ましくは70〜150個/cm2(例えば、80〜120個/cm2)程度であってもよい。針孔の密度が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。
板状樹脂発泡体は、少なくとも一方の面側には連続気泡構造を有する連続気泡層(連続気泡域)が形成され、他方の面側には独立気泡構造を有する独立気泡層(独立気泡域)が形成されていてもよい。また、連続気泡層と独立気泡層とは板状樹脂発泡体の厚み方向に隣接して形成されていてもよい。なお、連続気泡層は、例えば、独立気泡層に針を侵入させ独立気泡の独立気泡壁を穿設して壊し(又は貫通して)針孔を形成することができる。
連続気泡層と独立気泡層との厚み割合は、針孔の深さに対応させることができ、前者/後者=10/90〜90/10(例えば、20/80〜80/20)程度の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=25/75〜75/25、好ましくは30/70〜70/30(例えば、35/65〜65/35)、さらに好ましくは40/60〜60/40(例えば、45/55〜55/45)程度であってもよい。なお、連続気泡層と独立気泡層との境界は、独立気泡と連続気泡とが混在し、明瞭でない場合があるが、断面の観察によりおおよその平均的な厚み割合として算出でき、針の侵入度に基づいて、厚み割合を算出してもよい。連続気泡層と独立気泡層との厚み割合については、凹凸面の頂部と谷部との厚み方向の平均の位置を基準として算出できる。また、連続気泡層には、独立気泡が混在していてもよい。
板状樹脂発泡体には、板状樹脂発泡体を厚み方向に貫通する打抜き孔を形成してもよい。打抜き孔を形成することにより、入射した音波が分散されやすくなり、広い周波数域の吸音性が向上する。
打抜き孔の平均径は、前記針孔の平均径よりも大きく、例えば、1〜30mm(例えば、1.5〜25mm)、好ましくは2〜20mm(例えば、2.5〜15mm)程度であってもよく、例えば、1〜20mm(例えば、3〜12mm)、好ましくは3〜10mm(例えば、3.5〜8mm)、さらに好ましくは4〜8mm(例えば、4.5〜7.5mm)程度であってもよい。打抜き孔の平均径が小さすぎる又は大きすぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。なお、打抜き孔の平均径は、n個の打抜き孔について、短径と長径とを測定して、短径と長径との加算平均[(短径+長径)/2]を算出し、平均値を求めることができる。また、打抜き孔の平均径は、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて、測定することができる。
打抜き孔の平均密度は、例えば、0.1〜50個/10cm2(例えば、0.3〜30個/10cm2)、好ましくは0.5〜20個/10cm2(例えば、0.7〜10個/10cm2)、さらに好ましくは0.8〜5個/10cm2(例えば、1〜3個/10cm2)程度であってもよく、例えば、1〜4個/10cm2、好ましくは2〜3.5個/10cm2程度であってもよい。打抜き孔の個数が少なすぎる又は多すぎると、吸音効果が十分に発揮できない虞がある。
図1は板状樹脂発泡体の一例を示す概略図である。板状樹脂発泡体1には、一方の表面が頂部3と谷部4とが交互に繰り返す波型構造を形成したリブ2が配置されている。また、板状樹脂発泡体1の一方の表面(リブ面)のみに、板状樹脂発泡体1の厚み方向の半分まで侵入する多数の針孔5が形成されている。すなわち、板状樹脂発泡体1のうち、針孔5が形成された一方の表面(リブ面)側に主に連続気泡構造を有する連続気泡層6を形成し、他方の表面(平坦面)側に主に独立気泡を有する独立気泡層7を形成している。さらに、板状樹脂発泡体1は、厚み方向を貫通する複数の打抜き孔8が形成されている。
<板状樹脂発泡体の製造方法>
板状樹脂発泡体は、軟質熱可塑性樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡させて独立気泡構造の発泡体を形成する発泡工程と、独立気泡を連続気泡化させる穿設工程とを経ることにより製造できる。
[発泡工程]
前記樹脂組成物を、各成分の混合物の形態又はペレット状などの形態で、溶融混練機に供給し、発泡成形することにより、板状樹脂発泡体を得ることができる。溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸又はベント式二軸押出機などを利用できる。発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。少なくとも一方の面に凹凸形状を有する発泡体は、凹凸形状に応じてエンボス加工してもよいが、通常、対向する内壁のうち少なくとも一方の内壁が凹凸状に形成された口金から、発泡性樹脂組成物を押出して発泡させる押出発泡法により作製する場合が多い。なお、発泡成形温度は、例えば、70〜300℃、好ましくは80〜280℃、さらに好ましくは85〜260℃程度であってもよい。
なお、主に独立気泡が形成された独立気泡構造の発泡体は、樹脂組成物中の含有量が50%を超える樹脂成分の融点又はガラス転移温度Tを基準として、樹脂の溶融押出温度を(T−20)〜(T−5)℃程度の範囲内に調整することにより調製できる。
[穿設工程]
穿設工程では、発泡工程で生成した独立気泡構造の発泡体の厚みよりも短い多数の針を発泡体の厚み方向に侵入させて(又は突き刺して)独立気泡を連続気泡化させる。この穿設工程は、発泡成形された発泡体を冷却した後で行ってもよいが、発泡成形し(又は発泡体を押し出し)、発泡体が熱い過程(又は流動性又は溶融状態、気泡形成過程、気泡成長過程)で発泡体に針を侵入させる(又は突き刺す)場合が多い。特に、発泡の直後又は発泡に後続して(例えば、口金から吐出後、1分以内の時間に)、すなわち、発泡成形しつつ(又は発泡体を押し出しつつ)、発泡体に針を侵入させる(又は突き刺す)場合が多い。その際、針は加熱してもよいが、効率よく連続気泡を形成するためには、針を加熱することなく発泡工程(発泡工程の後段)で発泡体に侵入させる(又は突き刺す)のが有利である。好ましい方法は、表面に多数の針(又はピン)を備えたロール(針ロール又はピンロール)を回転させながら、発泡体の厚み方向に針を侵入させる(又は刺す)方法である。
針(又はピン)の長さは、連続気泡層(第1の気泡層)の厚み割合に応じて選択でき、通常、針の侵入時の発泡体の前記独立気泡層と連続気泡層との厚み割合に対応した長さである。なお、発泡体は圧縮して針を侵入させてもよい。また、発泡体には複数回に亘り針を侵入させてもよい。例えば、発泡体の進行方向に間隔をおいて回転可能に配設された複数の針ロール又はピンロールで順次発泡体を穿設加工してもよい。針(又はピン)の太さは、例えば平均径0.1〜5mm(例えば、0.2〜3mm、好ましくは0.25〜1.5mm)程度であってもよい。また、針(又はピン)の密度(本/cm2)は、独立気泡の密度に応じて選択でき、通常、1〜60本/cm2(例えば、2〜55本/cm2)、好ましくは3〜50本/cm2(例えば、4〜45本/cm2)、さらに好ましくは5〜40本/cm2(例えば、6〜35本/cm2)程度であってもよく、1〜250本/cm2(例えば、2〜200本/cm2)、好ましくは70〜150本/cm2(例えば、80〜120本/cm2)、程度であってもよい。なお、針の密度(本/cm2)は、1つの独立気泡(平均気泡径の独立気泡)当たり、平均0.1〜1本/cm2(例えば、0.2〜0.8本/cm2、好ましくは0.25〜0.6本/cm2、さらに好ましくは0.3〜0.5本/cm2)程度であってもよい。
なお、針ロール(又はピンロール)のロール径は、例えば、50〜250mmφ(例えば、70〜200mmφ、好ましくは80〜170mmφ)程度、針(又はピン)のピッチは、0.5〜20mm(例えば、0.8〜15mm、好ましくは1〜12mm、さらに好ましくは1.5〜10mm)程度、ロールの回転数は、10〜170rpm(例えば、25〜150rpm、好ましくは50〜130rpm、さらに好ましくは75〜125rpm)程度であってもよい。
図2は板状樹脂発泡体の製造工程を説明するための概略図である。押出機の口金から押し出された樹脂発泡体(独立気泡構造の発泡体)9は、気泡が成長しつつ支持ガイドロール10に案内されながら、表面に回転可能なロール(針ロール)11の表面に形成された所定長さの多数の針12で突き刺され、一方の面側(表層部)の独立気泡を連続気泡化している。すなわち、樹脂発泡体9のうち、針12が侵入した一方の面側に主に連続気泡構造を有する連続気泡層6を形成し、他方の面側に主に独立気泡を有する独立気泡層7を形成している。
上記の方法で、連続気泡層を有する針孔が形成された板状樹脂発泡体を連続的に製造できる。このような波型構造の板状樹脂発泡体は、簡易に作製することができ大量生産が可能であり、製造コストを削減することができる。
<ゴム系発泡体>
ゴム系発泡体(板状ゴム系発泡体など)は、少なくとも連続気泡構造を有するゴム系ポリマーで形成できる。
ゴム系ポリマーは、例えば、オレフィン系エラストマー(エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)など)、スチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SISブロック共重合ゴム)、スチレン−エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBSブロック共重合ゴム)など)、ブチル系エラストマー(ブチルゴム、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンゴムなど)、塩化ビニル系エラストマー(ポリ塩化ビニル(PVC)など)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリウレタン系ゴム、ポリアミド系ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、天然ゴム(NR)、フッ素ゴムなどが例示される。
これらのゴム系ポリマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましくはオレフィン系エラストマー、さらに好ましくはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)が挙げられる。
ゴム系発泡体は、板状樹脂発泡体と同様に、発泡剤(又は発泡助剤)、発泡核剤、収縮防止剤又は添加剤を含んでいてもよい。ゴム系発泡体に使用される発泡剤(発泡助剤、収縮防止材又は添加剤)は、板状樹脂発泡体に使用するものと同様のものを使用できる。発泡剤、発泡核剤、収縮防止剤又は添加剤の添加量は、気泡の形成等を損なわない範囲で適宜選択でき、通常のゴム系発泡体に用いられる添加量を採用できる。
ゴム系発泡体に気泡構造を形成する方法としては、板状樹脂発泡体の気泡構造を作製する方法と同様の方法で形成できる。ゴム系発泡体はスキン層を有していてもよく、通常、スキン層を有していない場合が多い。
ゴム系発泡体の平均見掛け密度は、例えば、0.01〜0.9g/cm3(例えば、0.03〜0.7g/cm3)、好ましくは0.04〜0.5g/cm3(例えば、0.05〜0.3g/cm3)程度であってもよい。ゴム系発泡体の密度が小さすぎると又は大きすぎると、ゴム系発泡体の吸音性が低下する。
ゴム系発泡体の平均気泡径は、例えば、0.01〜6mm(例えば、0.05〜6mm)、好ましくは0.1〜5mm(例えば、0.2〜4.5mm)、さらに好ましくは0.3〜4mm(例えば、0.5〜3.5mm)程度であってもよい。系発泡体の平均気泡径が小さすぎると、吸音性が低下し、ゴム系発泡体の平均気泡径が大きすぎると、吸音性が低下するとともに、ゴム系発泡体の強度が低下する。
ゴム系発泡体は、少なくとも連続気泡構造を有していれば特に制限されず、ゴム系発泡体全体が連続気泡構造を有していてもよく、独立気泡と連続気泡とが混在していてもよい。
ゴム系発泡体は、1つの発泡層で構成された単層構造を有し、全体に亘り気泡構造を有していてもよく、複数の層が積層された積層構造でもよい。
ゴム系発泡体の形態は、特に制限されず、例えば、二次元的形状であってもよく、厚みは特に制限なく、平板状であってもよい。ゴム系発泡体の平均厚みは、例えば、1〜50mm(例えば、2〜25mm)、好ましくは3〜20mm(例えば、4〜18mm)、さらに好ましくは5〜15mm(例えば、6〜12mm)であってもよい。ゴム系発泡体の厚みが小さすぎると又は、大きすぎると、ゴム系発泡体の吸音性が低下する。
なお、板状樹脂発泡体の平均厚みを1としたとき、ゴム系発泡体の平均厚みは、例えば、0.1〜5(例えば、0.2〜3)、好ましくは0.3〜2(例えば、0.25〜2)、さらに好ましくは0.5〜1.5(例えば、0.8〜1.2)であってもよい。
本発明の複合吸音材(防音材又は消音材)は、板状樹脂発泡体と、ゴム系発泡体とを所定の順序で積層又は層状に重ねることにより形成できる。
板状樹脂発泡体と、ゴム系発泡体とを備えた複合吸音材の平均厚みは、例えば、3〜100mm(例えば、5〜70mm)、好ましくは7〜50mm(例えば、10〜30mm)、さらに好ましくは12〜25mm(例えば、15〜20mm)であってもよい。
<複合吸音材の吸音特性>
JIS A 1405に準じた垂直入射法に基づいて、細管を使用して周波数域0〜6500Hzの範囲で測定したとき、複合吸音材は以下のような吸音特性を示す。
ゴム系発泡体は、周波数域1500〜2500Hzの範囲で吸音率が高いピークを示し、そのため、ゴム系発泡体単体では、周波数域2500Hz以上の吸音率を向上できない。
より具体的には、例えば、ゴム系発泡体の吸音率は、500Hz付近から2000Hz付近まで徐々に立ち上がり、1500〜2500Hzで、0.55〜0.85、好ましくは0.6〜0.8、さらに好ましくは0.65〜0.75程度でピークを示す場合がある。その後、周波数が増大するにつれて、吸音率は0.4〜0.5程度に低下し、3000Hz以上では0.35〜0.65、好ましくは0.4〜0.6、さらに好ましくは0.45〜0.55程度で安定する場合がある。
一方、板状樹脂発泡体は、音波の入射方向に対して上流側の凹凸面に針孔を形成し、打抜き孔を形成しても、周波数域4500〜5500Hzの範囲に高い吸音率のピークを示し、4500Hz以下の周波数域で吸音率を向上できない。
より具体的には、例えば、前記板状樹脂発泡体の吸音率は、500Hz付近から4500Hz付近まで徐々に立ち上がり、4500〜5500Hz付近で、0.85〜1、好ましくは0.9〜1、さらに好ましくは0.95〜1程度でピークを示す場合がある。その後、周波数域が増大するにつれて、吸音率はゆるやかに低下する場合がある。
本発明では、ゴム系発泡体に板状樹脂発泡体を積層することにより、吸音特性を向上できる。例えば、音波の入射方向に対してゴム系発泡体を上流側に配置した態様(態様A)では、ゴム系発泡体の吸音率のピークよりもさらに低周波数域(例えば、800〜1500Hz)にシフトさせることができる。すなわち、ゴム及び板状樹脂発泡体にはない低周波数域で吸音性を向上できる。そのため、態様Aの複合吸音材は、低周波数の音波を吸音する用途に適している。
より具体的には、態様Aにおいて、吸音率は、例えば、500Hz付近から800〜1300Hz付近まで急激に立ち上がり、800〜1500Hz付近で、0.6〜0.9、好ましくは0.65〜0.85、さらに好ましくは0.7〜0.8程度でピークを示す場合がある。
なお、態様Aにおいては、板状樹脂発泡体は凹凸面を外側に向けて配置してもよいが、ゴム系発泡体に向けて配置している場合が多い。
また、本発明において、音波の入射方向に対して板状樹脂発泡体を上流側に配置した態様(態様B)では、ゴム系発泡体、板状樹脂発泡体又は態様Aに比べて、音波を吸収する周波数域を広げることができ、かつ吸音率を向上させることができる。すなわち、態様Bでは、ゴム系発泡体及び板状樹脂発泡体単体において吸音率が低い周波数域(例えば、ゴム系発泡体では、2000Hz以上の周波数域、板状樹脂発泡体では、1500〜4500Hzの周波数域)での吸音率を大きく向上でき、さらに前記態様Aで吸音率が低い周波数域(例えば、1500Hz以上の周波数域)での吸音率も向上できる場合が多い。しかも、広い周波数域で高いレベルで吸音性を向上できる。さらには、ゴム系発泡体及び板状樹脂発泡体にはない周波数域(3000〜4000Hz)でも吸音性を向上できる。そのため、態様Bの複合吸音材は、広い周波数域で音波を吸収する用途に適している。例えば、態様Bにおいて、吸音周波数域を1500Hz以上(例えば、1500〜6500Hz)にまで拡大でき、しかも吸音率を向上できる。なお、複合吸音材の吸音率は、例えば、1500〜2500Hz(例えば、吸音率0.75〜0.98程度)、及び3500〜4500Hz(例えば、吸音率0.8〜1程度)でピークを示し、3000〜4000Hzでの吸音率を向上できる場合がある。
より具体的には、例えば、態様Bの吸音率は、500Hz付近から1500Hz付近まで急激に立ち上がり、1500〜2500Hz付近で、0.75〜0.98、好ましくは0.8〜0.95、さらに好ましくは0.85〜0.9程度でピークを示す場合がある。その後2500Hz付近で吸音率は、0.65〜0.85(例えば、0.7〜0.8)程度まで低下し、2500Hz付近を超えると、徐々に上昇し、3500〜4500Hz付近で、例えば、0.8〜1、好ましくは0.85〜0.99、さらに好ましくは0.9〜0.95程度でピークを示す場合がある。その後、周波数が増大するにつれて、徐々に吸音率は低下し、6500Hz付近で吸音率は0.6〜0.7(例えば、0.55〜0.65)になる場合がある。
なお、態様Bにおいては、板状樹脂発泡体は凹凸面をゴム系発泡体に向けて配置してもよいが、外側に向けて配置している場合が多い。
前記態様A及び前記態様Bにおいて、板状樹脂発泡体はいずれの面(例えば、平坦面又は凹凸面)を音波の入射側に向けて位置してもよい。前記態様(例えば、態様B)において、音波の入射側に対して、板状樹脂発泡体の平坦面を向けて配設するのに比べて、板状樹脂発泡体の凹凸面を向けて配設すると、周波数域3000〜5000Hzで0.7〜0.9程度であった吸音率を、0.8〜1程度にまで向上できる場合がある。
さらに、前記態様A及び前記態様Bにおいて、針孔を形成せずに音波を入射させてもよく、板状樹脂発泡体の片面(例えば、凹凸面)又は両面(例えば、一方の凹凸面と、他方の平坦面又は凹凸面との双方の面)に針孔を形成した面(針孔形成面)から音波を入射してもよい。前記態様(例えば、態様B)において、針孔を形成して針孔形成面から音波を入射すると、1500Hz以上の周波数域での吸音率を向上できる。なお、板状樹脂発泡体の片面(例えば、凹凸面)に針孔を形成して針孔形成面から音波を入射すると、例えば、周波数域3000〜5000Hzで0.7〜0.9程度であった吸音率を0.8〜1程度まで向上できる場合がある。さらに、板状樹脂発泡体の両面(例えば、一方の凹凸面と、他方の平坦面又は凹凸面との双方の面)に針孔を形成すると、例えば、周波数域1500〜2500Hzで0.65〜0.85程度であった吸音率を0.75〜0.98程度にまでさらに向上できる場合がある。
さらに、前記態様A及び前記態様Bにおいて、板状樹脂発泡体に打抜き孔を形成して音波を入射してもよい。前記態様(例えば、態様B)において、打抜き孔を形成して音波を入射すると、例えば、周波数域1500〜2500Hzで、0.65〜0.85程度であった吸音率を0.75〜0.98程度にまで向上できる場合がある。
これらのことから、複合吸音材において、ゴム系発泡体を音波の入射方向に対して下流側に配置すると、広い周波数域(例えば、1500〜6500Hz)において吸音性を向上させることもできる。さらに、音波を板状樹脂発泡体の凹凸面から入射すること、板状樹脂発泡体の少なくとも一方の面(片面又は両面、特に凹凸面)に針孔を形成すること、板状樹脂発泡体に打抜き孔を形成することで、より一層吸音性を向上させることができる。
図3は本発明の複合吸音材の一例を示す概略図である。この例では、複合吸音材13は、板状樹脂発泡体1、ゴム系発泡体14の順に層状に重ねて配置されている。また、板状樹脂発泡体1の少なくとも一方の表面は凹凸面として形成されており、凹凸面を音波の入射面として配置されている。さらに凹凸面には針孔5が形成されており、かつ板状樹脂発泡体1を貫通する打抜き孔8が形成されている。
なお、本発明において、板状樹脂発泡体とゴム系発泡体とを備えていればよく、板状樹脂発泡体及びゴム系発泡体の中間、又は板状樹脂発泡体及びゴム系発泡体の内側/外側に隣接させて、不織布及び/又は織布(例えば、有機繊維、無機繊維などの繊維の不織布及び/又は織布(例えば、ガラスウールなど)など)、多孔体(例えば、ウレタン製スポンジなどの軟質樹脂の発泡体;前記ゴム系発泡体以外の発泡体及び/又は前記板状樹脂発泡体以外の樹脂発泡体など)、シート及び/又は薄膜(例えば、アルミニウムなどの金属、プラスチックなど)、ネット又はメッシュ(例えば、前記繊維や発泡体などのネット)などを積層してもよい。
<複合吸音材の製造方法>
本発明の複合吸音材は、前述のように、ゴム系発泡体と、板状樹脂発泡体とを積層又は層状に重ねることにより製造できる。各部材は、必ずしも、互いに接合する必要はなく、適用箇所とその形状に応じて設置でき、各部材は互いに接合又は結合、例えば、両面テープ、接着剤などで接着してもよく、各部材を縫合、締結してもよい。なお、接着、接合しても、複合吸音材の吸音性に影響を与えないようである。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
吸音率は、JIS A 1405に基づいた垂直入射吸音率を測定した。なお、吸音率は、垂直入射透過損失計測ユニット(透過損失管キット、Type4206−T(ブリュエル・ケアー社製))で、細管を使用して周波数0Hzから6500Hzまでの周波数域で測定した。
以下の板状樹脂発泡体及びゴム系発泡体を使用した。
(A)板状樹脂発泡体
ポリオレフィン発泡体(DMノバフォーム(株)製)を用いた。この発泡体は、平均厚み8cm、発泡倍率40倍、見掛け密度0.021g/cm3。一方の面にリブ面(湾曲した凹凸面;ピッチ10mm、高さ3mm)を有し、リブ面にのみ針孔(針孔密度12個/cm2)が形成され、打抜き孔(平均径:5mmΦ、平均密度:1.5個/10cm2)を有している。
なお、板状樹脂発泡体は、対向する内壁のうち一方の内壁が凹凸状に形成された口金から、発泡性樹脂組成物をシート状に押し出して作製する以外、特許文献2の実施例7に準じて作製した。発泡性樹脂組成物は、ポリエチレン65重量部、ポリスチレン20重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体15重量部、タルク2重量部及び発泡剤(ブタン/ペンタン(重量比)=50/50)12.0重量部を含んでいる。
(B)ゴム系発泡体
EPDMで形成され、見掛け密度0.196g/cm3及び厚み8mmであり、スキン層は形成されていない。
比較例1
(B)ゴム系発泡体について、吸音率を測定した。結果を図6に示す。
図6から明らかなように、比較例1では、2000Hz付近の周波数域でピーク(吸音率0.7程度)を示し、3000Hz以上の周波数域では吸音率が低かった(吸音率0.55以下)。
参考例1
(A)板状樹脂発泡体について、音波をリブ面から入射して吸音率を測定した。結果を図7に示す。
図7から明らかなように、参考例1では、5000Hz付近の周波数域でピーク(吸音率0.95〜1)を示し、3000Hz以下の周波数域では吸音率が低かった(吸音率0.4以下)。
参考例2
板状樹脂発泡体及びゴム系発泡体を、下記の順に重ね、各々を両面テープで接着することにより複合吸音材を得た。
(B)ゴム系発泡体/(A)板状樹脂発泡体
板状樹脂発泡体のリブ面をゴム系発泡体側に向けて配置した。なお、得られた複合吸音材の厚みは16.5mmであった(厚みゲージで測定)。得られた複合吸音材について、音波をゴム系発泡体から入射して吸音率を測定した。結果を図4に示す。
図4から明らかなように、参考例2では、1000Hz付近のピーク(吸音率0.7〜0.8)を低周波数域にシフトさせること、すなわち、参考例2(図4)では、比較例1(図6)及び参考例1(図7)では発現しなかった低周波数側にピーク周波数域をシフトさせることができる。
実施例1
板状樹脂発泡体及びゴム系発泡体を下記の順に重ね、両面テープで接着することにより複合吸音材を得た。
(A)板状樹脂発泡体/(B)ゴム系発泡体
板状樹脂発泡体のリブ面(凹凸面)を外側に向けて配置した。得られた複合吸音材の厚みは16.7mmであった(厚みゲージで測定)。得られた複合吸音材について、音波をリブ面から入射して吸音率を測定した。結果を図5に示す。
図5から明らかなように、実施例1(図5)では、比較例1(図6)及び参考例1(図7)では見られなかった広い周波数域(1500〜6500Hz)に吸音周波数域を拡大できるとともに、吸音率を向上させることができ、さらに、比較例1及び参考例1の測定データを加重平均しても吸音効果が小さかった低周波域(3000〜4000Hz付近)も、吸音率を向上させることができる。