JP6911308B2 - CTX−M型基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法 - Google Patents

CTX−M型基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、CTX−M型基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ遺伝子の検出方法に関する。
β−ラクタマーゼはβ−ラクタム系の薬剤を分解する酵素である。ペニシリン等のβ−ラクタム系薬剤は主要な抗菌薬の1カテゴリであるが、β−ラクタマーゼを有する微生物は、β−ラクタム系薬剤に対して耐性を有する。
β−ラクタマーゼの中でも、変異により基質特異性が拡張され、様々なβ−ラクタムを分解する能力を有するようになった変異型β−ラクタマーゼは基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(extended−spectrum β−lactamase:ESBL)(以下、本明細書ではESBLとも表す。)と呼称される。ESBLを有する微生物は広範なβ−ラクタム系抗菌薬に耐性を獲得するため、ESBL産生菌による感染症は通常よりも治療が困難となる。また、ESBL産生菌は院内感染のリスクを増大させる。
ESBLにはTEM型、SHV型、CTX−M型などがある。欧米ではTEM型やSHV型が院内感染原因菌の主流ESBLであるのに対し、日本ではCTX−M型が主流となっている(非特許文献1)。このため、日本においては特にCTX−M型を早期に同定することが医療上重要である。
ある病原菌がESBL産生能を有するかを確認するには薬剤感受性試験を行うことが最も確実である。薬剤感受性試験は検体、あるいは検体を培養した培養液から分離培養された病原菌をβ‐ラクタム系抗菌薬を含む培地で培養し、生育するかどうかによってESBLであるかどうかを判断する。ESBLの型によって耐性となる薬剤の種類に差が見られるため、培地に加える薬剤を選択することで、ESBL型をある程度推測することも可能である。ただし、この方法では、薬剤感受性試験が判明するまでに時間を要するという欠点がある。最初の分離培養に半日以上を要し、さらに分離培養した病原菌の薬剤感受性試験にも半日以上を要する。病原菌に感染した患者の容体によっては、薬剤感受性試験の所要時間は、抗菌薬の投与判断に必要な時間としては長すぎる場合がしばしばある。
他の方法として、検体、検体を培養した培養液、または検体を分離培養し得られたコロニーに対して、ESBLの原因遺伝子を特異的に増幅する核酸増幅法を用いて、ESBL原因遺伝子を検出するという方法がある。核酸増幅法としては通常PCRが用いられ、約数時間で原因遺伝子を増幅し、増幅産物を何らかの方法で検出することが可能である。
核酸増幅法を用いたESBL原因遺伝子を検査する方法の欠点として、ESBL原因遺伝子の配列多様性によって、これまでは単一の検出系での検査が困難であったことが挙げられる。ESBL原因遺伝子はESBLの型ごとに異なっている。さらに、同じ型の中でも様々な亜型がある。現在では、CTX−Mの各亜型は五つのグループ(CTX−M−1、2、8、9、25)に分類される(特許文献1、非特許文献1)。日本国内ではCTX−M−1グループ、2グループ、9グループに属する亜型の検出報告がある。
CTX−Mのグループは病原菌の種によって発生頻度が異なることが明らかになっている。例えば、Proteus mirabilisのCTX−M型ESBLはCTX−M−2グループのみが占めていた一方で、大腸菌のCTX−M型ESBLではその約半数がCTX−M−9グループであったという報告がある(非特許文献2)。そのため、含まれる病原菌の種の特定がされていない試験対象からCTX−M型ESBL遺伝子を検出する場合は、CTX−Mのグループによらず遺伝子の増幅および検出が可能である検出系を用いて試験をすることが望ましい。
従来の遺伝子検査では、亜型の多様性のために、同一のプローブを用いて異なるグループのCTX−Mを検出することは困難であった。例えば特許文献1ではCTX−Mを検出するためのプローブが提示されている。これらのプローブを用いた場合各々のプローブが1ないし2グループの検出に対応しており、亜型を識別することはできない。一方で、特許文献1には、前記プローブに加えてさらに亜型ごとに異なる配列のプライマーを使用する態様が記載されているが、この態様では複数の亜型を同時に検出かつ識別するためには複数のプライマー対を用いる必要がある。また、非特許文献2においても、CTX−Mのグループごとに異なる配列のプライマーを用いて核酸増幅を行っており、複数の亜型を同時に検出かつ識別するためにはプローブのほかに複数のプライマー対を用いる必要がある。
特許第5766618号
金森ら,杏林医会誌,2004,35,p.205−214 N.Shibata et al.,Antimicrobiol Agents and Chemotherapy,2006,50,p.791−795
本発明が解決しようとする課題は、CTX−M型ESBL遺伝子の複数の亜型を同一のプローブを用いて検出することが可能な単一の検出系の提供である。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、複数のCTX−M亜型ESBL遺伝子を検出することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の形態からなる。
[1]
以下の(a)および(b)の特徴を有するCTX−M型ESBL遺伝子検出用プローブ。
(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくは配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列のうち連続する塩基数17〜23の塩基配列で構成されるオリゴヌクレオチド、または前記塩基配列と一または数個の塩基の相違を有する塩基配列で構成されるオリゴヌクレオチドである。
(b)前記(a)のオリゴヌクレオチドの少なくともいずれかの末端が蛍光色素によって標識されている。
[2]
さらに(c)の特徴を有する[1]に記載のプローブ。
(c)蛍光色素で標識された核酸の塩基がシトシンである。
[3]
[1]または[2]に記載のプローブであって、該プローブが、配列番号2〜9のいずれかで示された塩基配列、または、前記塩基配列と一つまたは二つの塩基の相違を有する塩基配列を有するプローブ。
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載のプローブを用いるCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法。
[5]
以下の(p)〜(s)の工程を含む、[4]に記載の検出方法。
(p)[1]〜[3]のいずれかに記載のプローブと、試料中の一本鎖核酸とを接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドと前記一本鎖核酸との複合体をハイブリダイズさせてハイブリッドを形成する工程。
(q)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定する工程。
(r)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程。
(s)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸におけるCTX−M型ESBL遺伝子の存在を検出する工程。
[6]
さらに、以下の(o)の工程を含む、[5]に記載の検出方法。
(o)前記(p)の工程においてハイブリッドを形成する前、または、前記(p)の工程においてハイブリッドを形成すると同時に、核酸を増幅する工程。
[7]
[1]〜[3]のいずれかに記載のプローブを含む、CTX−M型ESBL遺伝子を検出するためのキット。
[8]
以下の(x1)に示す中から選ばれるフォワードプライマーと、以下の(y1)に示す中から選ばれるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットをさらに含む、[7]に記載のキット。
(x1)配列番号10〜18のいずれかで示される塩基配列、または、前記塩基配列中の混合塩基の箇所を、該混合塩基を構成する特定の塩基に変更した塩基配列を有するフォワードプライマー。
(y1)配列番号19〜24のいずれかで示される塩基配列を有するリバースプライマー。
[9]
以下の(x2)に示す中から選ばれるフォワードプライマーと、以下の(y2)に示す中から選ばれるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットをさらに含む、[7]に記載のキット。
(x2)配列番号25〜36で示す塩基配列から選択される2〜4本からなるフォワードプライマー
(y2)配列番号37〜48で示す塩基配列から選択される2〜4本からなるリバースプライマー
本発明によれば、CTX−M型ESBLの複数の亜型の検出を1種類のプローブで行うことができる。
実施例1において、配列番号3のプローブを用いて、人工合成オリゴヌクレオチドを試料とした融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例1において、配列番号5のプローブを用いて、人工合成オリゴヌクレオチドを試料とした融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例2において、微生物を試料として組合せNo.1のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例2において、微生物を試料として組合せNo.2のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例2において、微生物を試料として組合せNo.3のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例2において、微生物を試料として組合せNo.4のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例2において、微生物を試料として組合せNo.5のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例3において、微生物を試料として組合せNo.6のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号8のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例3において、微生物を試料として組合せNo.7のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号8のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例3において、微生物を試料として組合せNo.8のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号8のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例3において、微生物を試料として組合せNo.9のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号8のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例4において、微生物を試料として組合せNo.10のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。 実施例4において、微生物を試料として組合せNo.11のプライマーセットを用いて核酸増幅を行った後、配列番号5のプローブを用いて融解曲線分析を行った結果を示す。
[本発明のプローブ]
本発明のCTX−M型ESBL遺伝子検出用プローブは、以下の(a)および(b)の特徴を有する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくは配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列のうち連続する塩基数17〜23の塩基配列で構成されるオリゴヌクレオチド、または前記塩基配列と一または数個の塩基の相違を有する塩基配列で構成されるオリゴヌクレオチドである。
(b)前記(a)のオリゴヌクレオチドの少なくともいずれかの末端が蛍光色素によって標識されている。
CTX−M型には様々な亜型があることが知られており、亜型は5グループに分類されている。亜型の分類を表1に記載した。
CTX−M型の亜型名は末尾の数字で識別される。本明細書では表1に示すように、CTX−M型の亜型名はハイフンで亜型を識別するための数字をハイフンで繋いで、例えば「CTX−M−1」のように表記する。また、本明細書では、グループ名を表すときは末尾に「グループ」を付け、例えば「CTX−M−1グループ」のように表記する。
Figure 0006911308
本明細書ではCTX−M型基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ遺伝子を「CTX−M遺伝子」と記載する。
本発明で用いられるプローブは、CTX−M遺伝子の一部または全部とハイブリダイズして複合体を形成しうるオリゴヌクレオチドであれば特に制限されない。(本明細書では、遺伝子の一部または全部とハイブリダイズして複合体を形成することを、遺伝子と結合する、とも表す。)より好ましくは、CTX−M遺伝子のみと特異的に結合し、それ以外の塩基配列を有する核酸とは結合しないオリゴヌクレオチドであり、より好ましくはCTX−M遺伝子の一部または全部の塩基配列と同一または相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。
前記プローブが結合する対象は、試料中に存在する微生物由来のCTX−M遺伝子でもよく、当該遺伝子の一部または全部を核酸増幅させて得られた核酸増幅産物でもよい。より好ましくは核酸増幅産物である。
前記プローブは、CTX−M−1グループ、CTX−M−2グループおよびCTX−M−9からなる群のうち2つ以上、好ましくは全てのグループに属する亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物に結合するオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
前記プローブの結合対象がCTX−M−1グループに属する亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物である場合、亜型の種類は特に限定されないが、CTX−M−1が挙げられる。さらに、CTX−M−1グループに属する別の亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物を含んでいても良い。さらに、CTX−M−1グループに属する全ての亜型を含むことが好ましい。
同様に、前記プローブの結合対象がCTX−M−2グループに属する亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物である場合、亜型の種類は特に限定されないが、CTX−M−2が挙げられる。さらに、CTX−M−2グループに属する別の亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物を含んでいても良い。さらに、CTX−M−2グループに属する全ての亜型を含むことが好ましい。
同様に、前記プローブの結合対象がCTX−M−9グループに属する亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物である場合、亜型の種類は特に限定されないが、CTX−M−9が挙げられる。さらに、CTX−M−9グループに属する別の亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物を含んでいても良い。さらに、CTX−M−9グループに属する全ての亜型を含むことが好ましい。
前記プローブは、CTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9からなる群のうち2つ以上の亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物に結合するオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
前記プローブは、前記群のうち全ての亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物に結合するオリゴヌクレオチドであることがさらに好ましい。
この時、前記プローブの塩基配列は、前記群のうち全ての亜型の部分配列と完全に同一または相補的な塩基配列であってもよいし、いずれかの亜型の部分配列と完全に同一または相補的な塩基配列であってもよいし、いずれの亜型の部分配列とも一部が異なる塩基配列であってもよい。
このような本発明のプローブの塩基配列としては、特に限定されないが、例えば配列番号1に記載の塩基配列が挙げられる。
配列番号1は、CTX−M9亜型遺伝子の部分配列である。当該配列はCTX−M1グループに属する亜型の遺伝子塩基配列、CTX−M2グループに属する亜型の遺伝子塩基配列とも塩基配列の差異が少ない領域の塩基配列であり、配列番号1からなる塩基配列の一部または全部の塩基配列を有するプローブは、CTX−M1グループに属する亜型、CTX−M2グループに属する亜型、CTX−M9グループに属する亜型の検出が可能になりうる。
また、本発明のプローブの塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列のうち連続する塩基数17〜23の塩基配列、または前記塩基配列と一または数個の塩基の相違を有する塩基配列であっても良い。
あるいは、本発明のプローブとして、前記の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを使用してもよい。
本発明で用いるプローブの塩基数は特に制限されない。好ましい下限は17塩基であり、さらに好ましくは18塩基である。好ましい上限は23塩基であり、さらに好ましくは22塩基である。
該プローブのさらに具体的な配列として、配列番号2〜9で示される塩基配列が例示される。配列番号2は配列番号1の7−23位、配列番号3は配列番号1の6−23位、配列番号4は配列番号1の5−23位、配列番号5は配列番号1の4−23位、配列番号6は配列番号1の3−23位、配列番号7は配列番号1の2−23位、配列番号8は配列番号1の1−23位の配列である。配列番号9は配列番号1の1−18位の相補配列である。
本発明で用いるプローブは前記塩基配列と一または数個の塩基の相違が含まれてもよい。前記塩基配列は特定の型のCTX−M遺伝子の部分配列と同一の塩基配列で構成されるが、他の型のCTX−M遺伝子のうち前記塩基配列に相当する部分配列は、前記塩基配列とは一または数個の塩基の相違が発生しうる。前記特定の型とは異なる型のCTX−M遺伝子を主な検出対象とする場合に、前記塩基配列から相違が生じうる一または数個の塩基を、新たな検出対象とする型の遺伝子の塩基配列と完全に一致するように変更することは、本発明の範囲内である。
前記プローブの塩基配列に関して、「一または数個の塩基の相違」において「相違」とは、ヌクレオチドの置換・欠失・挿入または付加が挙げられるが特に限定されない。好ましくは置換である。
また、前記「相違」の程度は、CTX−M遺伝子の一部または全部とハイブリダイズして複合体を形成しうるものであれば特に制限されない。
例えば、前記「一または数個の塩基の相違」において「数個」とは、好ましくは10塩基以下であり、より好ましくは5塩基であり、より好ましくは4塩基であり、より好ましくは3塩基であり、より好ましくは2塩基以下(2塩基または1塩基)である。
好ましい置換の例として、例えば、配列番号5は配列番号1の4−23位であり、CTX−M9亜型遺伝子の部分配列であるが、6位のCをGに置換すればCTX−M2亜型遺伝子の部分配列と、12位のGをAに置換すればCTX−M1亜型遺伝子の部分配列と、それぞれ完全一致するので、各亜型への相対的な特異性を上げることができる。
前記プローブは、塩基配列中に数個の混合塩基への置換、あるいは数個のユニバーサル塩基への置換を含んでもよい。
ここでいうユニバーサル塩基とはアデニン、シトシン、グアニン、チミンの4種類の核酸塩基のいずれとも塩基対を形成しうる能力か、あるいは4種類の核酸塩基のいずれとも塩基対を形成しない能力を有する塩基を指す。前記性質を有する塩基であればユニバーサル塩基として使用できるが、好ましくはデオキシイノシン、5−ニトロインドールである。
ここでいう混合塩基とは、オリゴヌクレオチドを構成する特定の部位の塩基が複数であることを示す。混合塩基はIUPACでアルファベット一文字の表記が定められており、AまたはTはW、AまたはGはR、AまたはCはM、TまたはGはK、TまたはCはY、GまたはCはS、AまたはCまたはTはH、GまたはCまたはTはBは、AまたはGまたはCはV、AまたはGまたはTはD、そしてA、T、G、Cのいずれも採りうる場合はNと表記される。本明細書でもこの表記に従って記載する。
本発明のプローブは、また、前記オリゴヌクレオチドの少なくともいずれかの末端が蛍光色素によって標識されていることを特徴とする。
前記プローブの蛍光標識においては、前記オリゴヌクレオチドの少なくとも3´または5´末端のいずれかが標識されていることを除けば、標識される核酸の位置および数に制限はないが、好ましくはいずれか片方の末端が標識されることである。標識される塩基に特に制限はないが、好ましくはシトシンである。
蛍光標識されたプローブの蛍光物質には特に制限は無いが、好ましくは単独では蛍光を示し、標的核酸とハイブリッドを形成した場合には消光する性質を有する蛍光物質である。前記蛍光物質としては、特に制限されないが、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラープローブ社製)、FluorePrime(商標、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商標、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)、カルボキシローダミン6G(CR6G)、ATTO等が例示できる。
前記プローブはCTX−M1、CTX−M2、CTX−M9の各型由来の遺伝子または核酸増幅産物のいずれとも同じ結合力で結合してもよいし、各型由来の遺伝子または核酸増幅産物それぞれと異なる結合力で結合してもよい。
配列番号1は、CTX−M9の部分配列であるから、配列番号1に記載の塩基配列もしくは配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列のうち連続する塩基数17〜23の塩基配列で構成されるオリゴヌクレオチド、または、前記塩基配列と一または数個の塩基の相違を有する塩基配列で構成されるオリゴヌクレオチドの場合は、CTX−M9との結合力が相対的に強く、次いでCTX−M1、最後にCTX−M2の順である。
[プライマーセット]
本発明のCTX−M型ESBL検出において、検出対象は、試料中に含まれるESBLを有する微生物由来のDNA中に存在するCTX−M遺伝子を核酸増幅させて得られた核酸増幅産物であることが好ましい。核酸増幅産物を検出対象とする場合は、本発明に記載のプローブと共に、CTX−M遺伝子の一部を特異的に増幅するためのプライマーセットを使用してもよい。
上記のプライマーセットは、CTX−M遺伝子の一部を核酸増幅するために用いられるものであり、該プライマーセットは1本以上のフォワードプライマーと1本以上のリバースプライマーとから成る。さらにフォワードプライマーとリバースプライマーのいずれもTm値がプローブのTm値と同値以上であることが好ましい。
フォワードプライマーおよびリバースプライマーの本数の上限はそれぞれ7本であることが好ましい。さらに好ましくは6本であり、さらに好ましくは5本であり、さらに好ましくは4本であり、3本であっても良いし、2本であっても良い。また、フォワードプライマーおよびリバースプライマーのどちらかに共通プライマーを用いるなどして、両者の本数が同一でなくても良い。
前記プライマーセットを構成するフォワードプライマーとリバースプライマーの数がそれぞれ1本である場合、フォワードプライマーおよびリバースプライマーは混合塩基を含む塩基配列を有することが好ましい。また、プライマーセットを構成するフォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかが2〜7本である場合、複数本のプライマーで構成される側のプライマーは混合塩基を含まない塩基配列を有することが好ましい。
本発明におけるプライマーまたはプローブのTm値計算には、最近接塩基対法、Wallace法、GC%法などの計算方法が知られている。本明細書では、Tm値は最近接塩基対法で計算された値を採用する。
前記プライマーセットは、CTX−M−1グループ、CTX−M−2グループおよびCTX−M−9からなる群のうち2つ以上、好ましくは全てのグループに属する亜型由来の遺伝子から核酸を増幅することが可能な塩基配列であることが望ましい。前記プライマーセットは、CTX−M−8グループまたはCTX−M−25グループに属する亜型由来の遺伝子からの核酸増幅については可能であっても不可能であってもよい。
前記プライマーセットで得られる増幅産物は、前記プローブで検出できる塩基配列を含むことが望ましい。
前記プライマーセットを構成するプライマーの塩基数は特に制限されない。好ましい下限は15塩基であり、さらに好ましくは16塩基であり、さらに好ましくは18塩基である。好ましい上限は32塩基であり、さらに好ましくは28塩基であり、さらに好ましくは26塩基であり、さらに好ましくは24塩基である。
このようなプライマーセットとして、以下の(x1)に示す中から選ばれるフォワードプライマーと、以下の(y1)に示す中から選ばれるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットが挙げられる。
(x1)配列番号10〜18のいずれかで示される塩基配列を有するフォワードプライマー。
(y1)配列番号19〜24のいずれかで示される塩基配列を有するリバースプライマー。
配列番号10〜18は、CTX−M−1グループ、CTX−M−2グループ、CTX−M−9グループ間で配列相同性が高い領域に結合しうるフォワードプライマーの配列である。
配列番号19〜24は、CTX−M−1グループ、CTX−M−2グループ、CTX−M−9グループ間で配列相同性が高い領域に結合しうるリバースプライマーの配列である。
前記配列番号10〜24で例示される塩基配列には混合塩基が含まれる。特定のCTX−M型遺伝子に対する増幅効率を変更するなどの目的で、該混合塩基を、その混合塩基を構成しうる特定の塩基に変更することは本発明の範囲内である。例えば前記配列番号で示される塩基配列中のRをAまたはGに変更することが、当該変更の例として例示される。従って、前記配列番号10〜24中の混合塩基を、含みうる特定の塩基のみに変更した塩基配列を有するプライマーを本発明のプライマーセットを構成するプライマーに含めてもよい。
前記のプライマーセットは、配列番号10〜18および19〜24において数塩基の置換が含まれていてもよい。ここでいう数塩基とは、10塩基以下、より好ましくは5塩基以下、より好ましくは4塩基以下、より好ましくは3塩基以下、より好ましくは2塩基以下、より好ましくは1塩基以下である。
前記プライマーセットを構成するプライマーは、塩基配列中に数塩基の混合塩基、あるいはユニバーサル塩基を含んでもよい。ここでいう数塩基とは、10塩基以下、より好ましくは5塩基以下、より好ましくは4塩基以下、より好ましくは3塩基以下である。
さらに、前記のプライマーセットは、その少なくとも一つが、前記のいずれかに記載されている塩基配列を含めば、いずれかの末端に数塩基が付加されていてもよい。ここでいう数塩基とは、10塩基以下、より好ましくは5塩基以下、より好ましくは4塩基以下、より好ましくは3塩基以下、より好ましくは2塩基以下、より好ましくは1塩基以下である。付加される数塩基の塩基配列は、CTX−M遺伝子と同一あるいは相補的な塩基配列でもよいし、CTX−M遺伝子の塩基配列とは全く異なる塩基配列であってもよい。
他のプライマーセットの例として、フォワードプライマーが2〜4本の塩基配列のフォワードプライマーと、2〜4本の塩基配列のリバースプライマーとからなり、フォワードプライマーが配列番号25〜36から選択され、リバースプライマーが配列番号37〜48から選択されることを特徴とするプライマーセットが例示できる。
配列番号25、29および33は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号15が取りうる配列の一部である。配列番号26、30および34は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号16が取りうる配列の一部である。配列番号27、31および35は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号17が取りうる配列の一部である。配列番号28、32および36は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号18が取りうる配列の一部である。配列番号37、40および43は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号21が取りうる配列の一部である。配列番号38、41および44は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号22が取りうる配列の一部である。配列番号39、42および45は、それぞれ、混合塩基を有する配列番号23が取りうる配列の一部である。
[CTX−M型ESBL遺伝子の検出方法]
本発明のCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法は、前記のプローブを用いることを特徴とする。
本発明の方法における検出対象としては、CTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9からなる群のうち2つ以上の亜型由来の遺伝子または核酸増幅産物が例示できる。本発明の検出方法では、前記亜型遺伝子の全てを検出対象としてもよいし、一部の亜型遺伝子のみを検出対象としてもよい。また、亜型遺伝子の区別を行ってもよいし、行わなくてもよい。
前記のCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法は、以下の(p)〜(s)の工程を含む方法であっても良い。
(p)前記のいずれかに記載のプローブと、試料中の一本鎖核酸とを接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドと前記一本鎖核酸との複合体をハイブリダイズさせてハイブリッドを形成する工程。
(q)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定する工程。
(r)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程。
(s)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸におけるCTX−M型ESBL遺伝子の存在を検出する工程。
前記のCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法は、さらに、以下の(o)の工程を含む方法であっても良い。
(o)前記(p)の工程においてハイブリッドを形成する前、または、前記(p)の工程においてハイブリッドを形成すると同時に、核酸を増幅する工程。
前記実施様態においては、CTX−M遺伝子の一部を核酸増幅するために、1本以上のフォワードプライマーと1本以上のリバースプライマーとから成るプライマーセットを用いても良い。
前記実施様態において使用されるプローブとして、上記で詳細に説明したプローブを用いることができる。また、前記実施様態において使用されるプライマーセットとして、上記で詳細に説明したプライマーセットを用いることができる。
前記のCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法を実施することにより、試料中にCTX−M遺伝子を有する微生物を検出することも可能となる。すなわち、前記のCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法を実施する工程を含む、試料中のCTX−M遺伝子を有する微生物を検出する方法を供給できる。
本発明の方法は反応系を開放しても開放しなくても実施可能だが、開放することなく工程全てが行われることが好ましい。「開放する」とは反応容器の蓋をあけるなどの方法で核酸増幅産物を暴露させることを言う。「開放しない」とは逆に反応容器を開放せず、核酸増幅産物を外部に暴露させないことを言う。
(o)および(p)〜(s)の工程を含む前記のCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法において、さらに、工程(o)の前に、
(n)CTX−M型ESBLの存在を分析するための試料を採取する工程。
を含んでも良い。
また、工程(s)は、
(s’)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸におけるCTX−M型ESBL遺伝子の存在を検出することで、試料中のCTX−M基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ遺伝子の存在を決定する工程。
であっても良い。
前記(n)(o)(p)(q)(r)および(s’)の工程を全て完了するまでの時間は特に制限されないが、1時間30分間以内に終えることが好ましい。より好ましくは1時間以内であり、55分間以内であり、45分間以内である。また、各工程は逐次的に実施してもよいし、一部の工程を同時に実施してもよい。例えばリアルタイムPCR法を用いれば工程(o)〜(s’)は同時に実施できる。
前記方法で用いられるプライマーセットおよびプローブは、それぞれ前記のものを用いることができる。さらに、例えばCTX−M遺伝子とは異なる核酸を増幅し検出する目的で、前記のプライマーセットおよびプローブとは異なるプライマーセットやプローブを追加することも特に制限されない。
[被検核酸の増幅]
本発明における被検核酸は、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。二本鎖の場合は、例えば、被検核酸とプローブとをハイブリダイズさせてハイブリッド体を形成するために、加熱により前記二本鎖を一本鎖に解離させる工程を含むことが好ましい。
前記被検核酸の種類としては特に制限されないが、好ましくはDNAである。
前記被検核酸は、試料に含まれる核酸があげられる。本発明における試料は、ESBL産生能を有する微生物あるいは該微生物由来の核酸を含みうるものであれば特に制限されない。例えば、生体試料として喀痰、組織片、皮膚、糞便、尿、胃液、胸水、髄液、腹水、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、子宮頸管拭い液、気管支洗浄液、血液、膿が例示される。また、これらの生体試料を培地または培養液に添加して培養された微生物を試料としてもよい。試料としてより好ましくは、生体試料から血液培養ボトル、液体培地、固形寒天培地のいずれかで培養された微生物である。
該試料は直接本発明の方法による検出に用いてもよいし、適当な溶液で希釈してもよい。適当な溶液としては、水、生理食塩水、緩衝液、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、核酸抽出試薬、界面活性剤、有機溶媒などが挙げられる。また、該試料を加熱、遠心分離、酵素処理、界面活性剤処理、濾過、あるいはこれらの処理方法を組み合わせて処理したものを本発明の方法による検出に用いてもよい。あるいは、前記試料から適当な方法でDNAやRNA等の核酸を調製してもよい。核酸調製方法としては特に制限されず、公知の核酸精製キット、自動核酸精製機器、フェノール・クロロホルム法など、従来公知の方法を用いることができる。
続いて、試料中の被検核酸を鋳型として、上述のプライマーセットを用いて、PCR等の核酸増幅法によって、検出目的の塩基部位を含む配列を増幅させる。具体的な核酸増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription−mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)等があげられるが、PCR法を用いることが好ましい。なお、これらの各方法において、増幅反応の条件は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
PCR法では通常、変性反応、アニーリング反応、伸長反応の3段階の反応が繰り返される。ただし、アニーリング反応と伸長反応の反応条件を同一とすることで、2段階の反応を繰り返す場合もある。本発明において、PCR法の反応は2段階でもよく、3段階でもよく、4段階以上でもよいが、好ましくは3段階である。
前記各反応の温度および時間の条件に制限はないが、変性反応の温度は90〜100℃のいずれかが好ましい。変性反応の時間は0〜10秒間のいずれかが好ましい。ここでの0秒とは一瞬だけ既定の温度にし、すぐに次の段階の反応へと進むことを意味しており、変性反応を行わないことを意味しない。また、アニーリング反応の温度は50〜70℃のいずれかが好ましく、アニーリング反応の時間は0〜15秒間のいずれかが好ましい。伸長反応の温度は55〜75℃のいずれかが好ましく、伸長反応の時間は1〜15秒間のいずれかが好ましい。
変性反応、アニーリング反応、伸長反応を各1回行うことをPCRサイクルと言い、PCR法による核酸増幅反応全体でPCRサイクルを行う回数をサイクル数と言う。本発明において実施可能なサイクル数は特に制限されないが、35〜100回の範囲であることが好ましい。サイクル数の下限は好ましくは40回、より好ましくは50回である。サイクル数の上限は好ましくは80回、より好ましくは70回である。
[DNAポリメラーゼ]
核酸増幅にPCR法を用いる場合、使用するDNAポリメラーゼは特に制限されないが、α型DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。その理由を以下に説明する。
本発明プローブが含まれる反応系でCTX−M遺伝子を増幅する場合、核酸増幅工程中に該プローブが試料のCTX−M遺伝子またはそれらの増幅産物と結合しうる。核酸増幅工程中に被検核酸と結合した該プローブは、プライマーとDNAポリメラーゼによる核酸増幅反応を阻害する。
Taq DNA PolymeraseなどPolI型のDNAポリメラーゼは5’− 3’エキソヌクレアーゼ活性を持つことが知られている。この活性のため、核酸増幅反応中に鋳型となるCTX−M遺伝子と結合した核酸がある場合、該結合核酸はエキソヌクレアーゼ活性によって分解されてしまう。このため、反応系中の該プローブが減少し核酸検出工程に問題が生じる可能性がある。従って、PolI型DNAポリメラーゼを用いて本発明を実施することは好ましくない。
他方、KOD DNA Polymerase(超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)などα型のDNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を持たず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。従って、α型DNAポリメラーゼを用いれば上記問題を解決できるのみならず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性により核酸増幅工程において高い正確性が発揮される。
通常、α型DNAポリメラーゼは3’→ 5’エキソヌクレアーゼ活性のため、核酸増幅速度はPolI型酵素と比較して低い傾向がある。しかし、KOD DNA Polymeraseはα型DNAポリメラーゼでありながらDNA合成活性が高く100塩基/秒以上のDNA合成速度を有し伸長効率が優れている。従って、本発明の実施にはα型DNAポリメラーゼの中でも、KOD DNA Polymerase(東洋紡製、商標)を用いることが好ましい。
さらに、α型DNAポリメラーゼを変異させて100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を達成させた変異型、あるいは、野生型および/または変異型の組み合わせにより当該性能を達成させたDNAポリメラーゼ組成物も、本発明の実施に適したDNAポリメラーゼとして用いることができる。
例えば、上記KOD DNA Polymerase以外に100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を有するDNAポリメラーゼとして、「KOD FX(東洋紡製、商標)」、「KOD −Plus−(東洋紡製、商標)」、「KOD Dash(東洋紡製、商標)」、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製、商標)なども利用できる。
なかでも、高い正確性とDNA合成活性とをあわせ持つKOD −Plus−が望ましい。
前記ポリメラーゼを用いることで、従来よりも短時間でPCRを行うことが可能になる。通常のTaqポリメラーゼではデオキシリボ核酸合成速度は60塩基/秒程度であると言われているが、KOD DNA Polymeraseなどは100塩基/秒を越えるデオキシリボ核酸合成速度を持つため、伸長時間を通常の半分に縮めることができる。
また、例えばLightCycler(ロシュダイアグノスティクス社製)やGENECUBE(東洋紡製)など、細いキャピラリー状の反応容器を用いて核酸増幅反応を行わせる核酸増幅装置を併用することで、さらにPCRを高速化することが可能である。これらの技術を利用することで、本発明の実施例が示すように1時間以内のPCRが可能となる。
[核酸増幅産物とプローブとの複合体形成]
本発明のCTX−M遺伝子検出方法においては、工程(o)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計されたプローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
核酸増幅産物を含む試料にプローブを添加するタイミングは、特に制限されず、例えば、前述の核酸増幅反応前、核酸増幅反応途中および核酸増幅反応後のいずれに、増幅反応の反応系に添加してもよい。
中でも、増幅反応と、後述の検出反応とを連続的に行うことができるため、増幅反応前に添加することが好ましい。このように核酸増幅反応の前に前記プローブを添加する場合は、例えば、後述のように、その3’末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることが好ましい。
前記プローブは、核酸増幅産物を含む液体試料に添加してもよいし、溶媒中で核酸増幅産物と混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl、MgSO、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものがあげられる。
[核酸増幅産物とプローブとの複合体の検出]
前記方法の(s’)で示される工程において、得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、前記のように融解曲線分析による方法が挙げられる。
融解曲線分析の場合は、例えば、以下のように行う。
二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は、加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。
本発明において、融解曲線分析を行うための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から、260nmの吸光度測定により行うこともできるが、本発明のプローブに付加した標識のシグナルを測定することが好ましい。このため、本発明のCTX−M型ESBL産生能を有する微生物の検出方法に用いるプローブとしては、標識化プローブを使用することが好ましい。
標識化プローブとしては、例えば、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ、または、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブがあげられる。前者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識によるシグナルをシグナル特有の条件(吸光度等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行を把握することができる。
標識化プローブの具体例として、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。このような現象は、一般に、蛍光消光現象と呼ばれる。この蛍光消光現象を利用したプローブとしては、中でも、一般的にグアニン消光プローブとよばれるものが好ましい。このようなプローブは、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。グアニン消光プローブとは、例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端もしくは5’末端の塩基がシトシンとなるように設計し、その末端の塩基シトシンが相補的な塩基グアニンに近づくと発光が弱くなる蛍光色素で前記末端を標識化したプローブである。本発明のプローブにおいては、例えば、蛍光消光現象を示す蛍光色素を、前記オリゴヌクレオチドの3’末端のシトシンに結合させてもよいし、前記オリゴヌクレオチドの5’末端をシトシンに設計し、これに結合させてもよい。
前記検出系を使用する場合、もしも被検核酸であるCTX−M遺伝子中の蛍光標識された該プローブとの結合領域内に該プローブと結合しない塩基、すなわちミスマッチ塩基が含まれると、該プローブと該核酸増幅産物とは、CTX−M遺伝子と該プローブとが全ての塩基で結合できる場合よりも弱く結合する。その場合、例えば融解曲線解析を実施した場合に、該プローブが比較的低い温度で融解し、無標識プローブから離れて蛍光を発することになる。
この他、蛍光標識された末端がシトシンである通常のグアニン消光プローブであれば、単独でCTX−M遺伝子の検出が可能である。また、例えば融解曲線解析を実施した場合に、該プローブが全ての塩基で結合する塩基配列を有するCTX−M遺伝子亜型を検査するときと比較して低い温度で融解し蛍光を発するため、融解温度によってCTX−M遺伝子のうちプローブが結合する領域内でのミスマッチ塩基の存在を検知することが可能である。
この原理はミスマッチ塩基が複数存在する場合も機能し、ミスマッチ塩基の多寡を推測することが可能である。
[融解曲線解析の方法]
工程(o)によって得られた核酸増幅産物の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記反応液の温度変化によって行うことができる。
前記解離工程における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85〜98℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒〜10分間であり、好ましくは1秒〜5分間である。
また、解離した一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、35〜50℃である。
ハイブリダイズ工程の反応系(反応系)における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応系において、DNAの濃度は、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.1〜10μmol/L、前記標識化プローブの濃度は、例えば、前記DNAに対する添加割合を満たす範囲が好ましく、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.01〜10μmol/Lである。
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識化プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、末端のC塩基が標識化されたプローブ(グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃であり、好ましくは25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.05〜20℃/秒であり、好ましくは0.08〜5℃/秒である。
被検核酸の有無の決定は、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動を測定することによって行いうる。すなわち、前記プローブを含む反応液の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定する。
具体例として、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブを使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
また、本発明においては、目的の塩基部位における遺伝子型の決定のために、前記シグナルの変動を解析してTm(melting temperature)値として決定してもよい。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:本発明によって開示されるプローブを用いたCTX−Mグループの識別〕
CTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9の各亜型遺伝子と同じ配列を有する人工合成オリゴヌクレオチドを作製し試料とした。そして、前記各試料の融解曲線分析を、本発明で例示されるプローブを用いて行った。
[実験組成]
以下の試薬を含む溶液を調製した。
100μM プローブ(配列番号3または5 、3´末端BODIPY−FL標識) 0.03μl
100μM 人工合成オリゴヌクレオチド 0.1μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
精製水 3.87μl
[融解曲線分析]
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃〜75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
[結果]
配列番号3のプローブを用いた試薬で融解曲線分析を行った結果を図1に、配列番号5のプローブを用いた試薬で融解曲線分析を行った結果を図2に示す。図1および2は、融解曲線分析において検出された蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。本実施例のプローブは、末端が蛍光物質で標識されており、相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと結合して複合体を形成すると該蛍光物質が消光し、プローブがオリゴヌクレオチドから遊離してプローブ単独になると発光する、という特徴を有する消光プローブ(Quencing Probe)である。従って、プローブにCTX−M遺伝子を検出する能力があれば、前記融解曲線分析における39℃で30秒間保温するステップにて、前記人工合成オリゴヌクレオチドと複合体を形成し、しかる後、40℃から75℃まで昇温するステップにおいて、特定の温度で該プローブが該オリゴヌクレオチドから遊離し、発光する。そのため、昇温中に蛍光量の変化が検出され、蛍光変化量は前記グラフにピークとして現れる。
図1および図2において、CTX−M−1(図ではM1と表記)、CTX−M−2(図ではM2と表記)およびCTX−M−9(図ではM9と表記)の各亜型遺伝子と同じ配列を有する人工合成オリゴヌクレオチドのそれぞれを試料として融解曲線分析を行うことで、配列番号3および配列番号5のいずれのプローブを用いた場合も、前記各試料の分析においてグラフ上でピークが得られたことが明らかである。以上から、配列番号3および配列番号5のプローブは、それぞれ、CTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9からなる群に属する亜型に由来するCTX−M遺伝子を検出可能であり、かつ一つのプローブでCTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9の3種類の各亜型を検出可能であることが示された。
〔実施例2:本発明の検出方法によるCTX−M型ESBL産生能を有する微生物の検出〕
本発明の検出方法、およびプライマーセット、プローブを用いて、CTX−M型ESBL産生能を有する微生物の検出が可能であることを示した。
(1)試料の調製
CTX−M−1型遺伝子を有することが明らかになっている大腸菌、CTX−M−2型遺伝子を有することが明らかになっているProteus mirabilis、CTX−M−9型遺伝子を有することが明らかになっている大腸菌を固形培地で培養し、培養された菌を掻きとって水に懸濁し試料とした。また、陰性試料として水を用いた。
(2)核酸増幅および増幅産物検出
[核酸増幅用試薬]
以下の試薬を含む溶液を調製した。プライマーの組み合わせは表2に掲載した。
100μM フォワードプライマー 各0.35μl
100μM リバースプライマー 各0.05μl
100μM プローブ(配列番号5、3´末端BODIPY−FL標識) 0.03μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
内部コントロール試薬(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 1μl
精製水 1.57μl
試料 1μl
Figure 0006911308
[核酸増幅および融解曲線分析]
94℃・30秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
50℃・3秒
63℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃〜75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
[結果]
図3〜7は、表2に記載した組み合わせNo.1〜5の各プライマーセットを用いて各試料に対して核酸増幅を行い、核酸増幅後配列番号5のプローブを用いた融解曲線分析において検出された蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。PCRによって増幅された標的核酸のうち、プローブと相補的に結合する核酸は、39℃30秒の工程でプローブと結合する。本実施例で用いているプローブは相補的な核酸と結合している時は標識された蛍光物質が消光するという特徴を有する消光プローブである。その後温度を上昇させる工程において、プローブは標的核酸から遊離し蛍光が発光する。この消光から発光に至る蛍光の変化を示したのが前記図である。
各組み合わせとも水を試料とした場合は蛍光が変化していない。これはプローブが結合すべき標的核酸が反応系中に存在しないことを示している。これに対して、CTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9の各試料を含む反応系では蛍光が変化しており、その変化がピークとして検出されている。以上から組み合わせNo.1〜5の各プライマーセットによる増幅後、配列番号5のプローブを用いた融解曲線分析によりいずれもCTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9のそれぞれを検出可能であることが示された。
〔実施例3:異なるプローブを用いたCTX−M遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例2で用いた試料と同じものを用いた。
以下の試薬を含む溶液を調製した。プライマーの組み合わせは表3に掲載した。
100μM フォワードプライマー 各0.35μl
100μM リバースプライマー 各0.05μl
100μM プローブ(配列番号8、3´末端BODIPY−FL標識) 0.03μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
内部コントロール試薬(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 1μl
精製水 1.57μl
試料 1μl
Figure 0006911308
[核酸増幅および融解曲線分析]
核酸増幅および融解曲線分析の条件は実施例2と同じである。
[結果]
図8〜11は、表3に記載した組み合わせNo.6〜9の各プライマーセットおよび配列番号8で示されるプローブとの組み合わせを用いて各試料に対して核酸増幅を行い、核酸増幅後の融解曲線分析において検出された蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。PCRによって増幅された標的核酸のうち、プローブと相補的に結合する核酸は、39℃30秒の工程でプローブと結合する。本実施例で用いているプローブは相補的な核酸と結合している時は標識された蛍光物質が消光するという特徴を有する消光プローブである。その後温度を上昇させる工程において、プローブは標的核酸から遊離し蛍光が発光する。この消光から発光に至る蛍光の変化を示したのが前記図である。
各組み合わせとも水を試料とした場合は蛍光が変化していない。これはプローブが結合すべき標的核酸が反応系中に存在しないことを示している。これに対して、CTX−M−1、CTX−M−2、およびCTX−M−9の各試料を含む反応系では蛍光が変化しており、その変化がピークとして検出されている。以上からNo.6〜9のプライマーセットによる増幅後、配列番号8のプローブを用いた融解曲線分析によりいずれもCTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9のそれぞれを検出可能であることが示された。
〔実施例4:異なるプライマーを用いたCTX−M遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例2で用いた試料と同じものを用いた。
以下の試薬を含む溶液を調製した。プライマーの組み合わせは表4に掲載した。
100μM フォワードプライマー 各0.125μl
100μM リバースプライマー 各0.02μl
100μM プローブ(配列番号5、3´末端BODIPY−FL標識) 0.03μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3μl
内部コントロール試薬(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 1μl
精製水 1.515μl
試料 1μl
Figure 0006911308
[核酸増幅および融解曲線分析]
核酸増幅および融解曲線分析の条件は実施例2と同じである。
[結果]
図12〜13は、表4に記載した組み合わせNo.10および11の各プライマーセットおよび配列番号5で示されるプローブとの組み合わせを用いて各試料に対して核酸増幅を行い、核酸増幅後の融解曲線分析において検出された蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。本実施例では縮重プライマーを用いず、代わりに所定の塩基配列を有するプライマーを複数本混合した試薬を用いた。実施例2および3と同様に、CTX−M−1、CTX−M−2、およびCTX−M−9を検出可能であった。以上から表4に記載のプライマー組み合わせを用いてもCTX−M−1、CTX−M−2およびCTX−M−9のそれぞれが検出可能であることが示された。
本発明により、CTX−M遺伝子を増幅および検出し、かつCTX−Mグループの識別が可能な単一の検出系の提供が可能である。

Claims (8)

  1. 以下の(a)および(b)の特徴を有するCTX−M型ESBL遺伝子検出用プローブ。
    (a)配列番号2〜9のいずれかで示された塩基配列、または、前記塩基配列と一つまたは二つの塩基の相違を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。
    (b)前記(a)のオリゴヌクレオチドの少なくともいずれかの末端が蛍光色素によって標識されている。
  2. さらに(c)の特徴を有する請求項1に記載のプローブ。
    (c)蛍光色素で標識された核酸の塩基がシトシンである。
  3. 請求項1又は2に記載のプローブを用いるCTX−M型ESBL遺伝子の検出方法。
  4. 以下の(p)〜(s)の工程を含む、請求項に記載の検出方法。
    (p)請求項1又は2に記載のプローブと、試料中の一本鎖核酸とを接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドと前記一本鎖核酸との複合体をハイブリダイズさせてハイブリッドを形成する工程。
    (q)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定する工程。
    (r)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程。
    (s)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸におけるCTX−M型ESBL遺伝子の存在を検出する工程。
  5. さらに、以下の(o)の工程を含む、請求項に記載の検出方法。
    (o)前記(p)の工程においてハイブリッドを形成する前、または、前記(p)の工程においてハイブリッドを形成すると同時に、試料中の一本鎖核酸を増幅する工程。
  6. 請求項1又は2に記載のプローブを含む、CTX−M型ESBL遺伝子を検出するためのキット。
  7. 以下の(x1)に示す中から選ばれるフォワードプライマーと、以下の(y1)に示す中から選ばれるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットをさらに含む、請求項に記載のキット。
    (x1)配列番号10〜18のいずれかで示される塩基配列、または、前記塩基配列中の混合塩基の箇所を、該混合塩基を構成する特定の塩基に変更した塩基配列を有するフォワードプライマー。
    (y1)配列番号19〜24のいずれかで示される塩基配列を有するリバースプライマー。
  8. 以下の(x2)に示す中から選ばれるフォワードプライマーと、以下の(y2)に示す中から選ばれるリバースプライマーとの組合せからなるプライマーセットをさらに含む、請求項に記載のキット。
    (x2)配列番号25〜36で示す塩基配列から選択される2〜4本からなるフォワードプライマー
    (y2)配列番号37〜48で示す塩基配列から選択される2〜4本からなるリバースプライマー
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