JP2016077208A - Kras遺伝子変異の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、Kras遺伝子のコドン12、13における変異の有無を簡便・正確かつ迅速・安価に判別可能なキットおよび方法に関する。
【解決手段】特定のフォワードプライマー、リバースプライマー、および、プローブを用いる、Kras遺伝子のコドン12、13における変異の有無を検出するための方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、がん細胞のKRAS遺伝子の変異の有無を検出するための試薬に関する。
KRAS遺伝子は、シグナル伝達経路で働くGTPaseをコードする遺伝子であり、細胞の増殖に関与する。KRAS遺伝子は、シグナル伝達経路において、上皮成長因子受容体(EGFR)が出す細胞増殖シグナルを受け取り核に伝達する。
KRAS遺伝子の変異は膵膓癌の約90%、大膓癌の約50%、また非小細胞肺癌の約30%で発生しており、その突然変異の85%は、遺伝子上のexon2のコドン12、13で発生している(非特許文献1)。
KRAS遺伝子の突然変異は、抗癌薬、たとえば抗EGFR抗体薬などの分子標的薬に対する薬剤耐性と関連している。KRAS遺伝子に変異があると、EGFRからのシグナルがなくても細胞増殖のシグナルを出し続けるので、前記分子標的薬等がEGFRに結合してその働きを阻害しても、下流にある変異したKRAS遺伝子によって細胞増殖シグナルが出続け、がん細胞の増殖を抑制できない。
したがって、KRAS遺伝子変異の有無を明らかにすることは、がん疾患において、より効果的な治療法の選択などに極めて重用である。
遺伝子変異を検出する方法は、いくつか報告されており、例えばダイレクトシーケンス法、PCR−RFLP法(特許文献1)リアルタイムPCR法、特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法などの解析方法がある。
特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション法では、ハイブリダイゼーション条件の調整が非常に繊細で、反応条件を厳しくコントロールする必要がある。ダイレクトシーケンス法は、PCRで増幅された領域全体の配列を観察できるが、癌組織のような正常細胞由来のDNAが混入する場合には、変異を検出するために最低、15〜20%以上の腫瘍由来のDNAが必要となり、解析に時間を要する。また、PCR−RELP法は、いくつかの処理があり手間がかかり、得られた増幅産物を扱うため、増幅産物のキャリーオーバーによるコンタミネーションが生じる可能性がある。
この問題を解決する方法として、標的核酸と結合すると消光する特徴を有する蛍光色素標識プローブQProbeを用いて簡便で正確性に優れたKRAS遺伝子変異の検出方法が提案されている。この検出方法では核酸増幅と核酸検出を連続して行えるため、核酸増幅後に反応系を開放する必要がなく、キャリーオーバーコンタミネーションを防ぐことができる。
特開2003−135072
SamowitzWS,et al.,Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev.9:1193−7,2000
KRAS遺伝子変異の検出は、抗EGFR抗体薬に対する薬剤耐性を解明する上で非常に重要な意義を持っている。そこで、本発明は、KRAS遺伝子について、コドン12(配列番号1)の83位のGGT塩基がAGT,CGT,TGT,GAT,GCTまたはGTT塩基に変異した状態、コドン13(配列番号1)の86位のGGC塩基がAGC,CGC,TGC,GAC,GCCまたはGTC塩基に変異した状態かの有無を簡便・正確かつ迅速・安価に判別可能なキットおよび方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、KRAS遺伝子の一部領域を特異的に増幅するための核酸プライマーおよび該核酸プライマーを用いた核酸増幅反応によって得られた増幅核酸を検出するための核酸プローブを含んだ冷蔵で保存が可能な試薬組成を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下のような構成からなる。
[項1]
以下の工程(1)〜(3)を含む、KRAS遺伝子の変異を検出する方法。
(1)フォワードプライマーが以下の(A)の特徴を有し、リバースプライマーが以下の(B)の特徴を有する1対の核酸プライマーセットを含む反応液によって試料中の被検核酸を増幅する工程
(A)配列番号1で示される塩基配列の62〜70番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の37〜42番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
(B)配列番号2で示される塩基配列の51〜61番目を3´末端とし、該配列の26〜36番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
(2)工程(1)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部または全部と複合体を形成しうる1種類の核酸プローブであって、以下の(C)に該当する核酸プローブとをハイブリダイズさせ、複合体を形成せしめる工程
(C)配列番号2で示される塩基配列の167番目または170番目を3´末端とし、該配列の149番目または150番目を5´末端とする塩基配列を有する核酸プローブ。
(3)工程(2)で得られた複合体を検出する工程
[項2]
項1に記載の方法において、さらに工程(3)のあとに以下の工程(4)を行う方法。
(4)工程(3)で測定または検出されるデータを解析することでKRAS遺伝子の変異の有無を判別する工程
[項3]
核酸プライマーセットが、フォワードプライマーが配列番号3〜4のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーであり、リバースプライマーが塩基配列5〜7のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーである、項1または2に記載の方法。
[項4]
核酸プローブが、配列番号8、9または10で示される塩基配列を有する、項1から3のいずれかに記載の方法。
[項5]
核酸プライマーセットが項3に記載の核酸プライマーセットであり、核酸プローブが項4に記載の核酸プローブである、項1または2に記載の方法。
[項6]
前記試料が大腸、直腸等の組織、口腔粘膜擦過物、羊水、尿、パラフィン含埋組織、喀痰、組織切片、便、血液(全血)、血液培養液および胃液からなる群、および、前記の群に列挙されるもののうち任意のものを溶液で希釈したものの中から選択されたものである、項1から5のいずれかに記載の方法。
[項7]
前記核酸プローブの少なくとも一方の末端が蛍光標識されており、かつ、前記核酸プローブの蛍光標識されている核酸の塩基はシトシンである、項1から5のいずれかに記載の方法。
[項8]
1対の核酸プライマーからなる核酸プライマーセットであって、フォワードプライマーが以下の(A)の特徴を有し、リバースプライマーが以下の(B)の特徴を有する、核酸プライマーセット。
(A)配列番号1で示される塩基配列の62〜70番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の37〜42番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
(B)配列番号2で示される塩基配列の51〜61番目を3´末端とし、該配列の26〜36番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
[項9]
フォワードプライマーが配列番号3〜4のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーであり、リバースプライマーが塩基配列5〜7のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーである、項8に記載の核酸プライマーセット。
[項10]
Kras遺伝子のコドン12及び13における突然変異を検出するための核酸プローブであって、配列番号2で示される塩基配列の167番目または170番目を3´末端とし、該配列の149番目または150番目を5´末端とする塩基配列を有する核酸プローブ。
[項11]
核酸プローブが、配列番号8、9または10で示される塩基配列を有する、項10に記載の核酸プローブ
[項12]
核酸プライマーセットが項8または項9に記載の核酸プライマーセットであり、前記核酸プローブが項10または項11に記載の核酸プローブである、Kras遺伝子のコドン12及び13における突然変異を検出するためのプライマー・プローブのセット。
[項13]
項1から7のいずれかに記載の方法を実施するための組成物であって、項8または項9に記載の核酸プライマーセットと、項10または項11に記載の核酸プローブとを含む組成物。
[項14]
項1〜6のうちいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、項8または請求項9に記載の核酸プライマーセットと、項10または項11に記載の核酸プローブとを含むキット。
本発明によれば、Kras遺伝子変異の有無を簡便、正確かつ迅速・安価に判別することが可能となる。
実施例1の結果を示す図である。 実施例1の結果を示す図である。 比較例1の結果を示す図である。 比較例1の結果を示す図である。 実施例2の結果を示す図である。 実施例2の結果を示す図である。 実施例2の結果を示す図である。
本発明は、Kras遺伝子の変異の有無を判別するための核酸プライマー(プライマー)、核酸プローブ(プローブ)、ならびにこれらを用いてKras遺伝子変異(コドン12及び13における変異)の有無を検出するための方法、および該方法を実施するためのキット等に関する。
Kras遺伝子の部分配列を示したものが配列番号1であり、塩基番号83〜88がコドン12,13を示す。
また、配列番号2は配列番号1の相補的配列である。
核酸プライマーセット
本発明のKras遺伝子変異の検出方法において、Kras遺伝子の領域を特異的に増幅する核酸プライマーセットは、1対の核酸プライマーからなり、かつ以下の(i)の特徴を有する。
(i)配列番号1と95%以上の同一性を有する塩基配列で示される塩基配列であるオリゴヌクレオチドの一部または全部を核酸増幅することが可能な核酸プライマーセットである。
上記の(i)において、配列番号1との同一性は、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%(すなわち配列番号1そのもの)である。
本明細書における「1対の核酸プライマーセット」は、1種類(1配列)のフォワードプライマーと1種類(1配列)のリバースプライマーとで構成される。
[塩基配列の同一性]
塩基配列の同一性を算出する方法としては、種々の方法が知られている。例えば、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。
本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムAdvanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出する。
上記の核酸プライマーセットは、KRAS遺伝子のコドン12の83位、および、コドン13の86位を含む部分領域を核酸増幅するために用いられるものであれば特に限定されず、上記(i)の特徴を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはフォワードプライマーが以下の(A)からなり、リバースプライマーが以下の(B)からなる。
(A)配列番号1で示される塩基配列の62〜70番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の37〜42番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
(B)配列番号2で示される塩基配列の51〜61番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の26〜36番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
前記(A)の核酸プライマーの塩基配列は、好ましくは配列番号1で示される塩基配列の62番目または70番目を3´末端とする塩基配列の核酸プライマーである。
また、前記(B)の核酸プライマーの塩基配列は、好ましくは配列番号2で示される塩基配列の51番目、53番目または61番目を3´末端とする塩基配列の核酸プライマーである。
前記核酸プライマーセットを構成するそれぞれの核酸プライマーは、少なくとも3´末端から5番目までの核酸が配列番号1および配列番号2の両方と一致するように設計されている。従って、該核酸プライマーセットは配列番号1で示される塩基配列であるオリゴヌクレオチドの一部、および配列番号2で示される塩基配列であるオリゴヌクレオチドの一部の両方を核酸増幅することが可能になっている。
このような核酸プライマーセットとして、特に、フォワードプライマーとして配列番号3〜4のいずれかで示される塩基配列、および、リバースプライマーとして配列番号5〜7のいずれかで示される塩基配列、の組合せが例示できる。
核酸プローブ
本発明で用いられる核酸プローブは、Kras遺伝子のコドン12及び13における変異の有無を検出するためのものであり、上記核酸プライマーセットによって核酸増幅された核酸増幅産物の一部または全部とハイブリダイズして複合体を形成しうるものであれば特に制限されない。より好ましくは、該核酸増幅産物のみと特異的に複合体を形成し、それ以外の塩基配列を有する核酸とは複合体を形成しない核酸プローブであり、より好ましくは該核酸増幅産物の一部または全部の塩基配列と同一または相補的な塩基配列を有する核酸プローブである。
そのような核酸プローブとして好ましくは(ii)の特徴を備えた核酸プローブが挙げられる。
(ii)配列番号2と95%以上の同一性を有する塩基配列であるオリゴヌクレオチドのうち、前記核酸プライマーセットによって増幅された領域と複合体を形成できる核酸プローブ
上記の(ii)において、配列番号2との同一性は、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%である。
前記核酸プローブの塩基配列は、前記(ii)を満たすものであれば特に制限されないが、好ましくは以下の(C)の特徴を備えた核酸プローブである。
(C)配列番号2で示される塩基配列の167番目または170番目を3´末端とし、該配列の149番目または150番目を5´末端とする塩基配列の核酸プローブ
前記塩基配列の核酸プローブは、配列番号2の共通配列の一部と同じ配列を有しており、配列番号1で示される塩基配列を含む核酸増幅産物とも複合体を形成することができる。
前記(C)の核酸プローブは、該核酸増幅産物と複合体を形成するのであれば、該核酸プローブ塩基配列の一部は配列番号1または2で示される塩基配列と異なっていてもよい。ただし、該核酸プローブの塩基配列が配列番号1または2と大きく異なる場合は該核酸プローブの特異性が低下し、該核酸増幅産物以外との複合体を形成しうる可能性が大きくなる。従って、該核酸プローブは配列番号1または配列番号2の一部塩基配列と85%以上の相同性があることが好ましい。より好ましくは86%、より好ましくは87%、より好ましくは88%、より好ましくは89%、より好ましくは90%、より好ましくは91%、より好ましくは92%、より好ましくは93%、より好ましくは94%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、より好ましくは99%、より好ましくは100%である。
このような核酸プローブとして、配列番号8、9、10の塩基配列で示される核酸プローブが例示できる。
上記核酸プローブは核酸が標識されていてもいなくてもよい。標識されている場合は、標識される核酸の位置および数に制限はないが、好ましくは核酸プローブ末端の核酸が標識されることであり、より好ましくはいずれか片方の末端が標識されることである。さらに好ましくは、標識される末端の核酸の塩基がシトシンであることである。
標識物質は特に制限されないが、好ましくは蛍光物質であり、より好ましくは単独では蛍光を示し、標的核酸とハイブリッドを形成した場合には消光する性質を有する蛍光物質である。前記蛍光物質は、制限されないが、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラープローブ社製)、FluorePrime(商標、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商標、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)、カルボキシローダミン6G(CR6G)等が例示できる。
本発明のKras遺伝子変異の検出方法
本発明のKras遺伝子変異の有無を判別する方法は、試料中のKras遺伝子のコドン12,13の変異を検出する方法であって、ある特定の工程により試料中の核酸を検出する方法、を含むことを特徴とする。
該方法の一つの様態として、以下の(1)〜(3)の工程を含むKras遺伝子変異の有無を検出する方法が挙げられる。
(1)1対の核酸プライマーセットを含む反応液によって被検核酸を増幅する工程
(2)(1)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部または全部と複合体を形成しうる核酸プローブとをハイブリダイズさせ、複合体を形成せしめる工程
(3)(2)で得られた複合体を検出する工程
該方法で用いられる核酸プライマーセットおよび核酸プローブとしては前記のものが使用できる。
本発明のKras遺伝子の変異有無を判別する方法は、上記工程が含まれること以外は特に制限されない。変異の有無が判別可能ならば上記工程に新たな工程を追加してもよい。
例えば、上記の方法において、さらに工程(3)のあとに以下の工程(4)を行うことができる。
(4)工程(3)で測定または検出されるデータを解析することでKRAS遺伝子の変異の有無を判別する工程
該方法で用いられるKras遺伝子を増幅し検出するための核酸プライマーセットおよび核酸プローブは、それぞれ前記したものを用いることができる。さらに、例えばKras遺伝子とは異なる遺伝子を増幅し検出する目的で、前記の核酸プライマーセットおよび核酸プローブとは異なる核酸プライマーや核酸プローブを追加することも特に制限されない。
被検核酸の増幅
本発明における被検核酸は、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。二本鎖の場合は、例えば、被検核酸とプローブとをハイブリダイズさせてハイブリッド体を形成するために、加熱により前記二本鎖を一本鎖に解離させる工程を含むことが好ましい。
前記被検核酸の種類としては、特に制限されないが、例えば、DNAや、トータルRNA、mRNA等のRNA等があげられる。また、前記被検核酸は、生体試料等の試料に含まれる核酸があげられる。これらの試料はそのまま用いてもよいし、適当な溶液で希釈したものを用いてもよい。適当な溶液としては、水、生理食塩水、緩衝液、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、核酸抽出試薬、界面活性剤、有機溶媒などが挙げられる
前記生体試料としては、特に制限されないが、例えば、大腸、直腸等の組織、口腔粘膜擦過物、羊水、尿、パラフィン含埋組織、喀痰、組織切片、便、血液(全血)、血液培養液、胃液などが挙げられる。
試料の採取方法、DNAやRNA等の核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。
続いて、単離したゲノムDNAを鋳型として、上述の核酸プライマーセットを用いて、PCR等の核酸増幅法によって、検出目的の塩基部位を含む配列を増幅させる。具体的な核酸増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription−mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)等があげられるが、PCR法を用いることが好ましい。なお、これらの各方法において、増幅反応の条件は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
[DNAポリメラーゼ]
核酸増幅にPCR法を用いる場合、使用するDNAポリメラーゼは特に制限されないが、α型DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。その理由を以下に説明する。
本発明プローブが含まれる反応系でKras遺伝子を増幅する場合、核酸増幅工程中に該核酸プローブが試料のKras遺伝子またはそれらの増幅産物と結合しうる。核酸増幅工程中にKras遺伝子と結合した該核酸プローブは、核酸プライマーとDNAポリメラーゼによる核酸増幅反応を阻害する。
Taq DNA PolymeraseなどPolI型のDNAポリメラーゼは5’− 3’エキソヌクレアーゼ活性を持つことが知られている。この活性のため、核酸増幅反応中に鋳型となるKras遺伝子と結合した核酸がある場合、該結合核酸はエキソヌクレアーゼ活性によって分解されてしまう。このため、反応系中の該核酸プローブが減少し核酸検出工程に問題が生じる可能性がある。従って、PolI型DNAポリメラーゼを用いて本発明を実施することは好ましくない。
他方、KOD DNA Polymerase(超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)などα型のDNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を持たず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。従って、α型DNAポリメラーゼを用いれば上記問題を解決できるのみならず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性により核酸増幅工程において高い正確性が発揮される。
通常、α型DNAポリメラーゼは3’→ 5’エキソヌクレアーゼ活性のため、核酸増幅速度はPolI型酵素と比較して低い傾向がある。しかし、KOD DNA Polymeraseはα型DNAポリメラーゼでありながらDNA合成活性が高く100塩基/秒以上のDNA合成速度を有し伸長効率が優れている。従って、本発明の実施にはα型DNAポリメラーゼの中でも、KOD DNA Polymerase(東洋紡製、商標)を用いることが好ましい。
さらに、α型DNAポリメラーゼを変異させて100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を達成させた変異型、あるいは、野生型および/または変異型の組み合わせにより当該性能を達成させたDNAポリメラーゼ組成物も、本発明の実施に適したDNAポリメラーゼとして用いることができる。
例えば、上記KOD DNA Polymerase以外に100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を有するDNAポリメラーゼとして、「KOD FX(東洋紡製、商標)」、「KOD −Plus−(東洋紡製、商標)」、「KOD Dash(東洋紡製、商標)」、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製、商標)なども利用できる。
なかでも、高い正確性とDNA合成活性とをあわせ持つKOD −Plus−が望ましい。
核酸増幅産物とプローブとの複合体形成
本発明のKras遺伝子変異検出方法においては、工程(1)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
核酸増幅産物を含む試料に核酸プローブを添加するタイミングは、特に制限されず、例えば、前述の核酸増幅反応前、核酸増幅反応途中および核酸増幅反応後のいずれに、増幅反応の反応系に添加してもよい。
中でも、増幅反応と、後述の検出反応とを連続的に行うことができるため、増幅反応前に添加することが好ましい。このように核酸増幅反応の前に前記プローブを添加する場合は、例えば、後述のように、その3’末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることが好ましい。
前記プローブは、核酸増幅産物を含む液体試料に添加してもよいし、溶媒中で核酸増幅産物と混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl、MgSO、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものがあげられる。
核酸増幅産物とプローブとの複合体の検出
前記方法の(3)で示される工程において、得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、融解曲線分析による方法が挙げられる。
融解曲線分析の場合は、例えば、以下のように行う。
二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は、加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。
本発明において、融解曲線分析を行うための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から、260nmの吸光度測定により行うこともできるが、本発明のプローブに付加した標識のシグナルを測定することが好ましい。このため、本発明のKras遺伝子の検出方法に用いるプローブとしては、標識化プローブを使用することが好ましい。
標識化プローブとしては、例えば、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ、または、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブがあげられる。前者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識によるシグナルをシグナル特有の条件(吸光度等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行を把握することができる。
標識化プローブの具体例として、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。このような現象は、一般に、蛍光消光現象と呼ばれる。この蛍光消光現象を利用したプローブとしては、中でも、一般的にグアニン消光プローブとよばれるものが好ましい。このようなプローブは、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。グアニン消光プローブとは、例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端もしくは5’末端の塩基がシトシンとなるように設計し、その末端の塩基シトシンが相補的な塩基グアニンに近づくと発光が弱くなる蛍光色素で前記末端を標識化したプローブである。本発明のプローブにおいては、例えば、蛍光消光現象を示す蛍光色素を、前記オリゴヌクレオチドの3’末端のシトシンに結合させてもよいし、前記オリゴヌクレオチドの5’末端をシトシンに設計し、これに結合させてもよい。
本発明のKras遺伝子変異の検出方法に用いるプローブは、例えば、3’末端にリン酸基が付加されてもよい。後述するように、遺伝子の有無を検出する被検核酸(標的核酸)は、PCR等の核酸増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを核酸増幅反応の反応系に共存させることができる。このような場合、プローブの3’末端にリン酸基を付加させておけば、プローブ自体が核酸増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3’末端に前述のような標識物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
得られたPCR増幅産物の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記反応液の温度変化によって行うことができる。
前記解離工程における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85〜98℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
また、解離した一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、35〜50℃である。
ハイブリダイズ工程の反応系(反応系)における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応系において、DNAの濃度は、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.1〜10μmol/L、前記標識化プローブの濃度は、例えば、前記DNAに対する添加割合を満たす範囲が好ましく、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.01〜10μmol/Lである。
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識化プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、末端のC塩基が標識化されたプローブ(グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃であり、好ましくは25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.05〜20℃/秒であり、好ましくは0.08〜5℃/秒である。
被検核酸の有無の決定は、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動を測定することによって行いうる。すなわち、前記プローブを含む反応液の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定する。
具体例として、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブを使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
また、本発明においては、目的の塩基部位における遺伝子型の決定のために、前記シグナルの変動を解析してTm(melting temperature)値として決定してもよい。
Kras遺伝子変異を検出するための組成物またはキット
本発明のKras遺伝子変異を検出するための組成物またはキットは、前記核酸プライマーセットを含み、前記Kras遺伝子の変異検出方法に用いることが出来る。前記組成物またはキットは、さらに前記核酸プローブを含み、そのほかに、核酸増幅反応および/または核酸増幅産物検出反応に必要な試薬を適宜含むことが好ましい。
本明細書で用いられる酵素の活性測定方法について、以下に記す。
DNA合成活性
本発明において、DNA合成活性とは鋳型DNAにアニールされたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの3’−ヒドロキシル基にデオキシリボヌクレオシド5’−トリホスフェートのα−ホスフェートを共有結合せしめることにより、デオキシリボ核酸にデオキシリボヌクレオシド5’−モノホスフェートを鋳型依存的に導入する反応を触媒する活性をいう。
その活性測定法は、酵素活性が高い場合には、保存緩衝液でサンプルを希釈して測定を行う。本発明では、下記A液25μl、B液およびC液各5μlおよび滅菌水10μlをエッペンドルフチューブに加えて攪拌混合した後、上記酵素液5μlを加えて75℃で10分間反応する。その後、氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後、さらに10分間氷冷する。この液をガラスフィルター(ワットマンGF/Cフィルター)で濾過し、D液及びエタノールで充分洗浄し、フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、鋳型DNAへのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件下で30分あたり10nモルのヌクレオチドを酸不溶性画分に取り込む酵素量とする。
A: 40mM Tris−HCl(pH7.5)
16mM 塩化マグネシウム
15mM ジチオスレイトール
100μg/ml BSA
B: 2μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C: 1.5mM dNTP(250cpm/pmol〔3H〕dTTP)
D: 20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E: 1μg/μl キャリアーDNA
3’−5’エキソヌクレアーゼ活性
本発明において、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性とは、DNAの3’末端領域を切除し、5’−モノヌクレオチドを遊離する活性をいう。
その活性測定法は、50μlの反応液(120mM Tris−HCl(pH8.8 at 25℃), 10mM KCl, 6mM 硫酸アンモニウム,1mM MgCl, 0.1% Triton X−100, 0.001% BSA,5 μg トリチウムラベルされた大腸菌DNA)を1.5mlのエッペンドルフチューブに分注し、DNAポリメラーゼを加える。75℃で10分間反応させた後、氷冷によって反応を停止し、次にキャリアーとして、0.1%のBSAを50μl加え、さらに10%のトリクロロ酢酸、2%ピロリン酸ナトリウム溶液を100μl加え混合する。氷上で15分放置した後、12,000回転で10分間遠心し沈殿を分離する。上清100μlの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、酸可溶性画分に遊離したヌクレオチド量を測定する。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:Kras遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
以下に示す試料1、試料2および陰性コントロール(NC)を調製した。
試料1:コドン13(配列番号1)の86位のGGCがGCCに変異した変異型plasmidと野生型plasmidを3:7の割合で混合し10mMのTris−HCl(pH7.5)で1000(コピー/μL)となるように調製したplasmid希釈液
試料2:野生型plasmidを 10mMのTris−HCl(pH7.5)で1000(コピー/μL)となるように調製したplasmid希釈液
陰性コントロール(NC):精製水
(2)核酸増幅および融解曲線解析
上記試料および陰性コントロール(1μl)にそれぞれ下記試薬(7μl)を添加し、さらに精製水2μlを添加して10μlとした。これに対して下記の条件により核酸増幅および融解曲線解析を行ってKras遺伝子を検出した。核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。
(試薬)
以下の試薬を含む溶液を調製した。
100μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号3〜4のいずれか1本)0.2μL
10μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号5、7のいずれか1本)0.4μL
10μM オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号8、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μL
KOD Mix(ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PPD Mix(ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック、東洋紡製)3μL
(試料)
試料1、試料2、精製水(NC)のいずれか一つ(1μl)
核酸増幅および融解曲線解析
94℃・2分
(以上1サイクル)
97℃・1秒
60℃・3秒
63℃・5秒
(以上50サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
39℃〜75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
(結果)
図1は、フォワードプライマーが配列番号3、リバースプライマーが配列番号7、核酸プローブが配列番号8からなる核酸プライマー・プローブの組合せを用いて、核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図1において、試料1の測定結果は野生型および変異型にそれぞれ由来する2つのシグナルのピークを示している。また、試料2の測定結果は野生型に由来する1つのシグナルのピークを示している。図1より、試料1、試料2のKras遺伝子が検出されており、なおかつ変異の有無が判別できている。
また、図2は、フォワードプライマーとして配列番号4、リバースプライマーとして配列番号5の塩基配列からなる核酸プライマーを用い、核酸プローブは上記と同じものを用いて、同様の実験を行った結果である。図2において、試料1の測定結果は野生型および変異型にそれぞれ由来する2つのシグナルのピークを示している。また、試料2の測定結果は野生型に由来する1つのシグナルのピークを示している。図2より明らかなように、試料1、試料2共にKras遺伝子が検出されている。図2より、試料1、試料2のKras遺伝子が検出されており、なおかつ変異の有無が判別できている。
以上から、いずれの組み合わせでもKras遺伝子変異(コドン12及び13における変異)の有無を検出できており、本発明のKras遺伝子検出用オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブはいずれもKras遺伝子変異の有無の検出に有効であることが示された。
〔比較例1:異なる核酸プライマーおよび核酸プローブを用いたKras遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例1と同じ。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。ただし、用いた試薬、試料は下記のとおり。
(試薬)
以下の試薬を含む溶液を調製した。
100μM 核酸プライマー(配列番号11)0.2μl
10μM 核酸プライマー(配列番号12、13のいずれか1本)0.4μl
10μM 核酸プローブ(配列番号8)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック、東洋紡製)3μl
(試料)
試料1、試料2、精製水(NC)のいずれか一つ(1μl)
(結果)
図3は、フォワードプライマーが配列番号11、リバースプライマーが配列番号12、核酸プローブが配列番号8からなる核酸プライマー・プローブの組合せを用いて、核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図3において、試料1の測定結果は野生型および変異型にそれぞれ由来する2つのシグナルのピークを示している。一方、試料2の測定結果は本来検出されるべき位置にシグナルのピークが得られていない。すなわち、図3の結果からは、試料1からは遺伝子を検出できているが、試料2からは野生型Kras遺伝子が検出できていないことが明らかである。
また、図4は、フォワードプライマーとして配列番号11、リバースプライマーとして配列番号13の塩基配列からなる核酸プライマーを用い、核酸プローブは上記と同じものを用いて、同様の実験を行った結果である。図4において、試料2の測定結果は野生型に由来する1つのシグナルのピークを示している。一方、試料1の測定結果は野生型に由来するシグナルのピークを示しているが、本来検出されるべき位置に変異型に由来するシグナルのピークが得られていない。すなわち、図4の結果からは、試料1と試料2の区別ができず、Kras遺伝子変異の有無の検出できていないことが明らかである。
以上のことから、本発明以外の核酸プライマーおよび核酸プローブを用いると、本発明の検出方法と同様の方法を用いても、Kras遺伝子変異の有無が検出できないことが示された。以上から、本発明で規定した特徴を有する核酸プライマーセットおよび核酸プローブを用いて、本発明の検出方法を実施することが重要であることが示された。
〔実施例2:Kras遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
以下に示す試料3〜14、試料15および陰性コントロール(NC)を調製した。
試料3〜14:コドン12(配列番号1)の83位のGGT塩基がAGT,CGT,TGT,GAT,GCTまたはGTT塩基に変異した状態、コドン13(配列番号1)の86位のGGC塩基がAGC,CGC,TGC,GAC,GCCまたはGTC塩基に変異した状態であるそれぞれの変異型plasmidを10mMのTris−HCl(pH7.5)でそれぞれ200(コピー/μL)となるように調製したplasmid希釈液
試料15:野生型plasmidを 10mMのTris−HCl(pH7.5)で200(コピー/μL)となるように調製したplasmid希釈液
陰性コントロール(NC):精製水
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。ただし、用いた試薬、試料は下記のとおり。
(試薬)
以下の試薬を含む溶液を調製した。
100μMオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号4)0.2μ L
10μMオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号6)0.4μL
10μMオリゴヌクレオチドプローブ(配列番号8、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μL
KOD Mix(ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PPD Mix(ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック、東洋紡製)3μL
(試料) 試料3〜14、試料15、精製水(NC)のいずれか一つ(1μl)
(結果)
図5、図6及び図7は、フォワードプライマーが配列番号4、リバースプライマーが配列番号6、核酸プローブが配列番号8からなる核酸プライマー・プローブの組合せを用いて、核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図5、図6、図7より明らかなように、試料3〜14の変異型Kras遺伝子と試料15の野生型Kras遺伝子の区別が可能であり、Kras遺伝子変異の有無が検出されている。
本発明は、がん細胞のKRAS遺伝子の変異の有無の検出など、診断や医療などの分野に貢献する。

Claims (14)

  1. 以下の工程(1)〜(3)を含む、KRAS遺伝子の変異を検出する方法。
    (1)フォワードプライマーが以下の(A)の特徴を有し、リバースプライマーが以下の(B)の特徴を有する1対の核酸プライマーセットを含む反応液によって試料中の被検核酸を増幅する工程
    (A)配列番号1で示される塩基配列の62〜70番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の37〜42番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
    (B)配列番号2で示される塩基配列の51〜61番目を3´末端とし、該配列の26〜36番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
    (2)工程(1)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部または全部と複合体を形成しうる1種類の核酸プローブであって、以下の(C)に該当する核酸プローブとをハイブリダイズさせ、複合体を形成せしめる工程
    (C)配列番号2で示される塩基配列の167番目または170番目を3´末端とし、該配列の149番目または150番目を5´末端とする塩基配列を有する核酸プローブ。
    (3)工程(2)で得られた複合体を検出する工程
  2. 請求項1に記載の方法において、さらに工程(3)のあとに以下の工程(4)を行う方法。
    (4)工程(3)で測定または検出されるデータを解析することでKRAS遺伝子の変異の有無を判別する工程
  3. 核酸プライマーセットが、フォワードプライマーが配列番号3〜4のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーであり、リバースプライマーが塩基配列5〜7のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 核酸プローブが、配列番号8、9または10で示される塩基配列を有する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 核酸プライマーセットが請求項3に記載の核酸プライマーセットであり、核酸プローブが請求項4に記載の核酸プローブである、請求項1または請求項2に記載の方法。
  6. 前記試料が大腸、直腸等の組織、口腔粘膜擦過物、羊水、尿、パラフィン含埋組織、喀痰、組織切片、便、血液(全血)、血液培養液および胃液からなる群、および、前記の群に列挙されるもののうち任意のものを溶液で希釈したものの中から選択されたものである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記核酸プローブの少なくとも一方の末端が蛍光標識されており、かつ、前記核酸プローブの蛍光標識されている核酸の塩基はシトシンである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  8. 1対の核酸プライマーからなる核酸プライマーセットであって、フォワードプライマーが以下の(A)の特徴を有し、リバースプライマーが以下の(B)の特徴を有する、核酸プライマーセット。
    (A)配列番号1で示される塩基配列の62〜70番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の37〜42番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
    (B)配列番号2で示される塩基配列の51〜61番目を3´末端とし、該配列の26〜36番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列の核酸プライマー
  9. フォワードプライマーが配列番号3〜4のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーであり、リバースプライマーが塩基配列5〜7のいずれかで示される塩基配列の核酸プライマーである、請求項8に記載の核酸プライマーセット。
  10. Kras遺伝子のコドン12及び13における突然変異を検出するための核酸プローブであって、配列番号2で示される塩基配列の167番目または170番目を3´末端とし、該配列の149番目または150番目を5´末端とする塩基配列を有する核酸プローブ。
  11. 核酸プローブが、配列番号8、9または10で示される塩基配列を有する、請求項10に記載の核酸プローブ
  12. 核酸プライマーセットが請求項8または請求項9に記載の核酸プライマーセットであり、前記核酸プローブが請求項10または請求項11に記載の核酸プローブである、Kras遺伝子のコドン12及び13における突然変異を検出するためのプライマー・プローブのセット。
  13. 請求項1から7のいずれかに記載の方法を実施するための組成物であって、請求項8または請求項9に記載の核酸プライマーセットと、請求項10または請求項11に記載の核酸プローブとを含む組成物。
  14. 請求項1〜6のうちいずれかに記載の方法を実施するためのキットであって、請求項8または項9に記載の核酸プライマーセットと、請求項10または請求項11に記載の核酸プローブとを含むキット。
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