JP7176266B2 - トキシンB遺伝子(tcdB)を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ - Google Patents

トキシンB遺伝子(tcdB)を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ Download PDF

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Description

本発明は、試料中に含まれるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のトキシンB遺伝子(tcdB)を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブに関する。更に、本発明は、該オリゴヌクレオチドプローブを用いて、試料中に含まれるtcdBを検出する方法及びその方法に用いるための試薬・キット等に関する。
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile、別名:Clostridioides difficile)(以下、C.difficileとも称する)は、院内感染の原因微生物のひとつであり、簡便、迅速、高感度に検出することが臨床診断上重要である。
具体的には、C.difficileは抗菌薬の投与に関連した下痢症・腸炎の主要な原因菌であることが知られている。例えば、抗菌薬治療により正常な腸内細菌叢が乱れると、C.difficileのうち有毒株である毒素産生菌が、トキシンA、トキシンB、バイナリートキシン等の毒素を産生し、その毒素によって下痢・腸炎等を引き起こす。したがって、本菌が産生する毒素の検出を行うことがC.difficile感染症の検査、診断に重要である。従来、毒素検出はイムノクロマト法を用いて行われていたが、該方法は感度が低いという問題があった。そこで、高感度な核酸増幅法を用いることで、これらの毒素産生に関与する遺伝子を検出する方法が開発されてきた(特許文献1)。
しかしながら、C.difficileの毒素産生に関与する遺伝子、特にトキシンAよりも一般に強い毒性を示すとされているトキシンB遺伝子(tcdB)を、さらに簡便、高感度に検出する方法の開発が望まれている。
特表2015-529090号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、より簡便、高感度に試料中に含まれるC.difficileのtcdBを検出することである。
本発明者は鋭意研究の結果、特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いることで、より簡便、高感度に試料中に含まれるtcdBを検出できることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の概要は以下の通りである。
[項1] 試料中に含まれるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のトキシンB遺伝子(tcdB)を検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有するオリゴヌクレオチドプローブ。
(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、若しくは配列番号19のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列を含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
[項2]
前記(A)において、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、若しくは配列番号11のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列を含む、項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項3] 前記(B)の蛍光消光色素が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、BODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である項1または2に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項4] 前記(B)の蛍光消光色素が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である項1~3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項5] 前記(B)において、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基がシトシンである項1~4のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項6] 試料中に含まれるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のトキシンB遺伝子(tcdB)を検出する方法であって、項1~5のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブを少なくとも含む反応液を用いて、以下の工程(1)~(3)を行うことを特徴とする、tcdB検出方法。
(1)tcdBを含みうる試料を提供する工程。
(2)前記反応液を用いて核酸増幅反応を行う工程。
(3)工程(2)で得られうる増幅産物に、該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定する工程。
[項7] 前記工程(3)が以下の工程(3a)~(3c)の少なくともひとつを含む項6に記載の方法。
(3a)得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定することで、tcdBを検出する工程。
[項8] 前記工程(2)の核酸増幅反応が、PCRである項6または7に記載の方法。
[項9] 前記工程(2)の核酸増幅反応で用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである項8に記載の方法。
[項10] ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌由来のDNAポリメラーゼあるいはその変異体である、項9に記載の方法。
[項11] 古細菌由来のDNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼあるいはその変異体である、項10に記載の方法。
[項12] 項6~11のいずれかに記載の検出方法を実施するための試薬。
[項13] 項6~11のいずれかに記載の検出方法を実施するための試薬を含むキット。
本発明により、簡便、高感度に試料中に含まれるtcdBを検出できるようになった。本発明のオリゴヌクレオチドプローブ、並びに該プローブを用いた検出方法、試薬、及びキットを使用することで、tcdBの簡便、高感度な検出が可能になり、臨床診断の分野に大きく貢献できる。
実施例2の結果を示す図である。実線、点線、破線は、それぞれ異なるオリゴヌクレオチドプローブの蛍光変化を示す。 実施例3の結果を示す図である。 実施例4の結果を示す図である。実線、点線、破線は、それぞれ異なるテンプレート濃度のコロニー懸濁液を測定したときの融解曲線分析結果を示す。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。
[Clostridium difficileトキシンB遺伝子(tcdB)を検出するためのオリゴヌクレオチド]
本発明の実施態様の一つは、試料中に含まれるC.difficileのtcdBを検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有するオリゴヌクレオチドプローブである。
(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、若しくは配列番号19のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列を含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
[Clostridium difficileトキシンB遺伝子(tcdB)]
Clostridium difficile(別名Clostiridioides difficile)は、院内感染の原因微生物のひとつであり、毒素産生菌はその毒素によって抗菌薬に関連した下痢症・腸炎を引き起こす。主要な毒素は、トキシンAおよびトキシンBであるが、ほかにもバイナリートキシン等を毒素として産生することもある。
従来、これらの毒素検出法として、イムノクロマト法等が用いられてきたが、感度が低いという問題があった。そこで、高感度な核酸増幅法を用いることで、これら毒素産生に関与する遺伝子を検出するための方法が開発されてきた(特許文献1)。
C.difficileの毒素産生に関与する遺伝子は、tcdA、tcdB、tcdC変異、cdtA、cdtB等があるが、特にトキシンBをコードする遺伝子であるtcdBの検出が重要である。
本発明者は、従来技術よりも簡便にtcdBを検出するため、鋭意研究の結果、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを開発した。
[オリゴヌクレオチドプローブ]
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、以下の特徴(A)及び(B)を有する。
(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、若しくは配列番号19のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列を含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
上記の特徴(A)を有するものとしては、(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、若しくは配列番号19のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列からなるものが好ましく、前記塩基配列において連続する少なくとも17塩基以上の塩基配列からなるものがより好ましく、前記塩基配列において連続する少なくとも18塩基以上の塩基配列からなるものが更に好ましく、前記塩基配列において連続する少なくとも19塩基以上の塩基配列からなるものが更に好ましく、前記塩基配列の全長配列からなるものが更により好ましい。
オリゴヌクレオチドプローブを使用した核酸検査法は、従来から周知であり、既に当該技術分野において確立されている(例えば、特表2015-529090号公報、特許第5354216号公報)。このような核酸検査法に用いるオリゴヌクレオチドプローブとしては、TaqMan加水分解プローブ、モレキュラービーコン、FRETハイブリダイゼーションプローブ、QProbeなどが知られている。本発明では、(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているという特徴を備えている限り、当該分野で公知の任意の標識プローブを使用することができるが、より確実に良好な結果が得られ易いという観点から、QProbeを使用することが好ましい。
QProbeは、KURATAらにより開発された蛍光プローブ(蛍光消光プローブ)である(特許第5354216号公報)。このプローブは、少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているハイブリダイゼーションプローブである。
例えば、Qprobeで用いられる蛍光消光色素としては特に限定されないが、フルオレセインまたはその誘導体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)、ローダミンまたはその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、カルボキシローダミン、x-ローダミン、スルホローダミン101酸クロリド)、BODIPYまたはその誘導体(例えば、BODIPY-FL、BODIPY-FL/C3、BODIPY-FL/C6、BODIPY-5-FAM、BODIPY-TMR、BODIPY-TR、BODIPY-R6G、BODIPY-564、BODIPY-581、BODIPY-591、BODIPY-630、BODIPY-650、BODIPY-665)等が挙げられる。蛍光消光色素の詳細は、特許第5813263号公報等に記載があり、本発明も該技術を参照できる。
なかでも、本発明では蛍光消光色素として、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
さらに、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基(即ち、両端が標識されている場合は、少なくとも一方の末端塩基)がシトシンであるオリゴヌクレオチドプローブがより好ましい。
このようなオリゴヌクレオチドプローブは、増幅産物にハイブリダイズした際に、増幅産物中のグアニン塩基と塩基対を形成して相互作用することで消光できるため、非常に簡便に反応液の蛍光強度の変化を測定することができる。
なお、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基と増幅産物中のグアニン塩基が塩基対を形成しなくとも、それらの塩基同士の距離が近ければ蛍光は消光できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。即ち、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基に対して、増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(シトシン塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
更に特定の実施態様では、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基(即ち、両端が標識されている場合は、少なくとも一方の末端塩基)がシトシンでないオリゴヌクレオチドプローブであっても、反応液の蛍光強度の変化を測定できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。例えば、該プローブがハイブリダイズした際に、蛍光消光色素が標識されている少なくとも一つの末端塩基に対して、増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(末端塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
オリゴヌクレオチドプローブは、その目的に応じて、上記特徴(B)で規定したグアニンで消光する蛍光消光色素に加えて、更に一つ以上の標識物質を付加することができる。このような更なる標識物質には、蛍光物質、化学発光物質、放射性物質、ビオチン、アルカリホスファターゼ、ジゴキシゲニン、ペルオキシダーゼなどがあり、本発明では上記特徴(B)で規定したグアニンで消光する蛍光消光色素以外の標識物質をさらに付加してもよい。標識物質は、上記特徴(B)で規定したグアニンで消光する蛍光消光色素を備える以外は特に限定されず、検査法に応じて公知の標識物質が標識されたオリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。また、オリゴヌクレオチドプローブの標識化のためにリンカーやスペーサーなどを付加してもよい。
更に特定の実施態様では、オリゴヌクレオチドプローブを構成する塩基には、イノシン、ペプチド核酸(PNA)、LNAといったヌクレオチドアナログを含めてもよい。ヌクレオチドアナログを使用することで、特異性の向上などが期待できる。
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、若しくは配列番号19のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列を含むことを特徴とする。このような塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって、従来技術よりも簡便、高感度にtcdBを検出できることが、本発明から明らかとなっている。
なかでも、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、若しくは配列番号11のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブが好ましく、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、若しくは配列番号11のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも17塩基以上の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブがより好ましく、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、若しくは配列番号11のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも19塩基以上の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブがさらに好ましく、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、若しくは配列番号11のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブがさらにより好ましく、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、若しくは配列番号11のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプローブが特に好ましい。
[tcdB検出方法]
本発明の実施態様の一つは、試料中に含まれるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のトキシンB遺伝子(tcdB)を検出する方法であって、前記のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブを少なくとも含む反応液を用いて、以下の工程(1)~(3)を行うことを特徴とする、tcdB検出方法である。
(1)tcdBを含みうる試料を提供する工程。
(2)前記反応液を用いて核酸増幅反応を行う工程。
(3)工程(2)で得られうる増幅産物に、該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定する工程。
[試料]
本発明において使用できる試料はtcdBを含む可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、生体試料や食品、環境試料だけでなく、精製核酸等が挙げられる。また、試料は核酸抽出やいくつかの前処理を行ってもよい。試料の核酸抽出や前処理は、当該技術分野で一般的に行われている。前処理としては、ろ過、遠心分離、希釈処理、加熱処理、酸処理、アルカリ処理、有機溶媒処理、懸濁処理、破砕処理、磨砕処理等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。
生体試料の例として、特に制限されないが、動植物組織、体液、排泄物、細胞、細菌、ウイルス等が挙げられる。さらに挙げると、血液、血液培養液、尿、膿、髄液、胸水、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、喀痰、組織切片、皮膚、吐瀉物、糞便、分離培養コロニー、カテーテル洗浄液等が挙げられる。
食品の例として、水、アルコール飲料、清涼飲料水、加工食品、野菜、畜産物、海産物、卵、乳製品、生肉、生魚、惣菜等が挙げられる。また、食品を測定試料とする場合、その食品の一部あるいは全部を使用できるだけでなく、食品表面を拭き取ったものも使用できる。さらに、調理器具やドアノブを拭き取った材料あるいはそれらを洗浄した洗浄液も試料として用いることができる。
環境試料の例として、水、氷、土壌、空気やエアゾール等が挙げられる。ここでいう水とは、例として、水道水、海水あるいは川や滝、湖、池等から採取した水等が挙げられる。また、施設の壁面、床面、設備や備品、便器等を拭き取ったものあるいはそれらを洗浄した洗浄液も試料として用いることができる。
本発明には上記のようないずれの試料も用いることができるが、C.difficileが下痢症・腸炎の主要な原因菌という観点から、生体試料(例えば、動植物組織、体液、排泄物、組織切片、皮膚、吐瀉物、糞便、分離培養コロニー)を用いるのが好ましく、排泄物、吐瀉物、糞便、分理培養コロニーを用いるのがより好ましく、糞便、分離培養コロニーを用いるのが更に好ましい。本発明によれば、このような試料を用いる場合であっても高感度にtcdBを検出することが可能である。
試料の採取方法、調製方法等は、特に制限されず、試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。
[核酸増幅反応]
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、臨床診断、食品衛生検査、環境検査等の分野においても広く用いられている。そのような核酸増幅法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて方法を選択することができる。本発明のtcdB検出方法に用いる核酸増幅法はPCR法が好ましいが、これに限定されない。
[PCR]
PCR反応は、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応であり、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって標的核酸を増幅する。DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENTやその変異体が挙げられる。より簡便、高感度なtcdB検出を可能にできるという観点から、本発明では、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
[ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ]
本発明で用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましいが、これに限定されない。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、特に制限されないが、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである。
[古細菌由来のDNAポリメラーゼ]
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとしては、パイロコッカス(Pyrococcus)属およびサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されるDNAポリメラーゼが挙げられる。また、本発明には、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体も含まれる。DNAポリメラーゼの変異体には、ポリメラーゼ活性の増強、エキソヌクレアーゼ活性の欠損、基質特異性の調整等を目的とした変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。
サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。
これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo社)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs社)、Deep Vent(New England Biolabs社)、Tgo(Roche社)、Pwo(Roche社)などが挙げられ、そのいずれもが本発明に用いられ得る。
なかでも、伸長性や熱安定性の優れたKOD DNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD DNAポリメラーゼ等)が好ましい。
KOD DNAポリメラーゼは、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼであるTaq DNAポリメラーゼに比べて、正確性、増幅効率、伸長性、クルードサンプル耐性に優れている。本発明では、このようなKOD DNAポリメラーゼを使用することで、後述の実施例に示すように、簡便でありながら高感度でtcdBを検出することが可能となる。
本発明のtcdB検出方法においては、前記のいずれかの方法で得られる増幅産物に、前記のいずれかのオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定し、tcdBを検出する。
ハイブリダイズの条件は、温度、pH、陽イオン濃度、溶液中の有機溶媒の存在等によって影響を受けるため、実施する核酸増幅反応等に合わせて至適化すればよい。
前記のtcdB検出方法における工程(3)の核酸検出の態様としては、特に限定されないが、例えば、以下の工程(3a)~(3c)の少なくともひとつを包含する方法を用いることが好ましい。
(3a)得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定することで、ノロウイルスG1型核酸を検出あるいは該核酸の塩基配列多型を分析する工程。
[(3a)核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニター]
核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターすることで、試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、増幅率に基づいて試料中に含まれる標的核酸の定量も可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする。核酸増幅反応の任意の時点で、反応液の蛍光強度を測定する。試料中にtcdBのDNAが含まれている場合、増幅した核酸量に依存してオリゴヌクレオチドプローブが増幅核酸にハイブリダイズして蛍光強度が増加(あるいは減少)する。取得した蛍光強度を時間(PCR反応ではサイクル数)に対してプロットすることで、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターできる(例えば、実施例2)。
[(3b)核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニター]
核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターすることで、試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、エンドポイントでの蛍光強度等を比較することで標的核酸の定量も可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする(例えば、実施例3)。核酸増幅反応終了後に、反応液の蛍光強度を測定する。反応後の反応液の蛍光強度を反応前の反応液の蛍光強度と比較することで、標的核酸の増幅の有無を確認できる。あるいは、反応後の反応液の反応強度をコントロール反応液の反応強度と比較することでも試料中に含まれる標的核酸の有無を確認することができる。コントロール反応液とは、測定したい試料の代わりに陰性と判明している試料あるいは陽性と判明している試料を加えた反応液である。
核酸増幅反応の進行は、一般的にリアルタイムでモニターすることが好ましいが、検出工程をより簡便にする等の目的では、エンドポイントでモニターすることが好ましい。
[(3c)蛍光強度の温度依存性を測定]
蛍光強度の温度依存性を測定するとは、具体的には、反応液の温度を低温から高温に変化させながら、各温度における蛍光強度を測定することである(例えば、実施例4)。得られた蛍光強度について温度で一次微分することにより、使用するオリゴヌクレオチドプローブに固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。また、蛍光強度は目的に合わせて蛍光消光率等に変換してもよい。
Tm値を用いた標的核酸の検出、分析等を融解曲線分析という。一般的に、Tm値は、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖である割合が等しいときの温度をいう。Tm値は、塩基配列に固有の値であるため、融解曲線分析は標的核酸の塩基配列多型を分析する手法として使用できる。ここでいう塩基配列多型とは、一塩基多型、塩基置換、塩基欠損、塩基挿入等を含む。
一例として、融解曲線分析はSNP解析などにも応用されている。
オリゴヌクレオチドプローブに対して標的核酸の塩基配列に変異がある場合、プローブがハイブリダイズした際に塩基がミスマッチしているため、一般的にTm値は低くなる。したがって、Tm値の大きさを比較することで一塩基多型の解析(SNP解析)を行うことができる。
[tcdBを検出するための試薬]
本発明の別の実施態様として、試料中に含まれるtcdBを検出するための試薬が挙げられる。試薬には、前述の特徴(A)及び(B)を備えたオリゴヌクレオチドプローブに加えて、核酸増幅に必要な成分が少なくとも含まれる。必要な成分は、実施する核酸増幅反応によって異なっており、それぞれ公知の方法を用いることができる。例えば、PCR反応を用いて試料中に含まれるtcdBを検出する場合、オリゴヌクレオチドプローブ、DNAポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドプライマー、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、マグネシウム塩を少なくとも含むことが好ましい。目的の実験に応じて各成分の濃度は適宜調整できるが、例えば、オリゴヌクレオチドプローブは0.1~1μMが好ましく、0.2~0.5μMがより好ましい。DNAポリメラーゼは0.01~1U/uLが好ましく、0.1~0.5U/uLがより好ましい。オリゴヌクレオチドプライマーはそれぞれ異なるが、0.1~10μMが好ましい。デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は0.02~1mMが好ましく、0.1~0.5mMがより好ましい。マグネシウム塩は0.1~6mMが好ましく、1~5mMがより好ましい。
さらに、非特異増幅の抑制や反応促進を目的として、当該技術分野で知られる添加物等を加えてもよい。非特異増幅の抑制を目的とする添加物として、抗DNAポリメラーゼ抗体やリン酸等が挙げられる(特許文献4)。反応促進を目的とする添加物として、ウシ血清アルブミン(BSA)、プロテアーゼインヒビター、シングルストランド結合タンパク質(SSB)、T4遺伝子32タンパク質、tRNA、硫黄または酢酸含有化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、ベタイン、エクトイン、トレハロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、酢酸テトラメチルアンモニウム(TMAA)、ポリエチレングリコール、トリトン(Triton)、ツイーン(Tween20)、ノニデットP40などが挙げられる。本発明では、これらの添加物を1種類以上組み合わせて使用してもよいが、これらに限定されない。
オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸増幅反応において核酸増幅の起点として使用されるオリゴヌクレオチドであり、当該技術分野において一般的に使用されている(例えば、特許文献1)。また、実施する核酸増幅反応によって複数種類のオリゴヌクレオチドプライマーが使用されてもよい。実験の目的によって異なるが、好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする標的配列を含む50~500bp程度、好ましくは50~200bp程度を増幅できるようなフォワードプライマーとリバースプライマーとをセットで用いるのがよい。特異性の高いオリゴヌクレオチドプライマーは、3’末端がターゲット配列に対して相補的であることが重要であり、言い換えれば、3’末端が相補的であれば5’末端が相補的でなくとも有効なプライマーとなり得る。このことから、本発明で使用するオリゴヌクレオチドプライマーも3’末端がゲノム配列に対して相補的な配列を有するように設計することが好ましい。さらに、標的核酸が菌株によって塩基配列多型である場合、縮重プライマーを使用してもよい。
[tcdBを検出するためのキット]
さらに、本発明の別の実施態様として、試料中に含まれるtcdBを検出するための試薬を含むキットが挙げられる。キットの構成は、前記オリゴヌクレオチドプローブを含む前記tcdB検出試薬を含み、tcdBを検出できるよう構成されていれば特に限定されない。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1:tcdBのアライメントとオリゴヌクレオチドプローブの設計
(1-1)方法
従来技術よりも簡便、高感度にtcdBを検出できるオリゴヌクレオチドプローブを設計するために、tcdBのアライメントを行った。tcdBの塩基配列をNCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベースから取得し、それらのアライメントを行った(全40配列)。
(1-2)結果
アライメントの結果から、以下の特徴(a)~(b)を満たすと考えられる塩基配列を選択した。
(a)株間差なくハイブリダイズできる
(b)ダイマー等の非特異産物を形成しない
(c)Tm値が40℃以上である
その結果、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19のいずれかで示される塩基配列またはそれらに相補的な塩基配列で示される塩基配列の一部のうち、連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列を選択できた。
実施例2:リアルタイムでモニターできるtcdBの検出
(2-1)方法
配列番号9、配列番号10、配列番号11に相補的な塩基配列で、3’末端をBODIPY-FLで標識したオリゴヌクレオチドプローブのいずれかを用いて、C.difficile(tcdB陽性)コロニー懸濁液を試料としてPCR反応を行った。なお、オリゴヌクレオチドプライマーは配列番号20、配列番号21に記載の塩基配列を使用した。
(2-2)反応液
KOD FX Neo(東洋紡社)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。反応液の調製等はKOD FX Neo(東洋紡社)の取扱説明書に従った。
1.5μM 配列番号20で示されるプライマー
0.5μM 配列番号21で示されるプライマー
0.3μM オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号9~11のいずれかに相補的な塩基配列)
(2-3)反応
Rotor-Gene(TM) Qを用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
94℃ 30秒、
98℃ 1秒-52℃ 10秒-63℃ 10秒(サイクル数60回)
(2-4)結果
図1は、測定で得られた蛍光強度(消光率に変換)をサイクル数にプロットした図である。実線、点線、破線がそれぞれ配列番号9、配列番号10、配列番号11に相補的な塩基配列で示されるオリゴヌクレオチドプローブを使用したときの蛍光強度のプロット図である。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを使用して、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターできることが示された。
実施例3:エンドポイントでモニターできるtcdBの検出
(3-1)方法
配列番号11に相補的な塩基配列で、3’末端をBODIPY-FLで標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、C.difficile(tcdB陽性)コロニー懸濁液を試料としてPCR反応を行った。なお、オリゴヌクレオチドプライマーは配列番号20、配列番号21に記載の塩基配列を使用した。テンプレートの濃度は、0、100、1000CFU/testのコロニー懸濁液をそれぞれ使用した。
(3-2)反応液
ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。反応液の調製等はジーンキューブ(登録商標)テストベーシックの取扱説明書に従った。
1.5μM 配列番号20で示されるプライマー
0.5μM 配列番号21で示されるプライマー
0.3μM オリゴヌクレオチドプローブ
(3-3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、各サイクルにおける蛍光強度を測定した。
94℃ 30秒、
98℃ 1秒-52℃ 10秒-63℃ 10秒(サイクル数60回)
(3-4)結果
図2に、蛍光強度及び蛍光変化率を示す。蛍光変化率(本実施例では消光率を表す)は、(増幅前蛍光強度-増幅後蛍光強度)/(増幅前蛍光強度)の式より求めた。図2より、テンプレート量にしたがって、蛍光強度が変化することが明らかになり、C.difficile(tcdB陽性)の半定量も可能であった。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを使用して、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターできることが示された。オリゴヌクレオチドプローブとして配列番号9、配列番号10に相補的な塩基配列で示される配列を有するものを用いた場合においても、それぞれ同様の結果が得られた。
実施例4:融解曲線分析によるtcdBの検出
(4-1)方法
実施例3と同様の反応液(配列番号11に相補的な塩基配列のオリゴヌクレオチドプローブを含む)、反応条件を用いて、C.difficile(tcdB陽性)コロニー懸濁液を試料としてPCR反応を行った。核酸増幅反応後に以下の条件による融解曲線分析を行った。テンプレートの濃度は、0、100、1000CFU/testのコロニー懸濁液をそれぞれ使用した。
94℃ 30秒、
39℃ 30秒、
40-75℃ 0.09℃/秒
(4-2)結果
図3に、融解曲線分析の結果を示す。実線、点線、破線がそれぞれ1000、100、0CFU/testのコロニー懸濁液を測定したときの融解曲線分析結果である。図3より、融解曲線分析によって試料中に含まれるtcdBを検出できることが示された。オリゴヌクレオチドプローブとして配列番号9、配列番号10に相補的な塩基配列で示される配列を有するものを用いた場合においても、それぞれ同様の結果が得られた。
本発明に記載のオリゴヌクレオチドプローブ及び該プローブを使用した方法、試薬またはキットを使用することで、簡便、高感度に試料中に含まれるtcdBを検出できるようになった。したがって、本発明は研究用途のみならず、院内感染等のおそれがある場合に、その原因菌の毒素遺伝子であるtcdBを迅速、簡便、高感度に検出することを可能とし、臨床診断や環境検査等にも大きく貢献することができる。

Claims (11)

  1. 試料中に含まれるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のトキシンB遺伝子(tcdB)を検出する方法であって、(A)配列番号9~11のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなり、且つ(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているオリゴヌクレオチドプローブと、配列番号20に示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号21に示される塩基配列からなるプライマーとで構成されるプライマー対とを少なくとも含む反応液を用いて、以下の工程(1)~(3)を行うことを特徴とする、tcdB検出方法。
    (1)tcdBを含みうる試料を提供する工程。
    (2)前記反応液を用いて核酸増幅反応を行う工程。
    (3)工程(2)で得られうる増幅産物に、該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定する工程。
  2. 前記工程(3)が以下の工程(3a)~(3c)の少なくともひとつを含む請求項に記載の方法。
    (3a)得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
    (3b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
    (3c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該オリゴヌクレオチドプロ
    ーブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定することで、tcdBを検出する工程。
  3. 前記工程(2)の核酸増幅反応が、PCRである請求項またはに記載の方法。
  4. 前記工程(2)の核酸増幅反応で用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌由来のDNAポリメラーゼあるいはその変異体である、請求項に記載の方法。
  6. 古細菌由来のDNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼあるいはその変異体である、請求項に記載の方法。
  7. 前記(B)の蛍光消光色素が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、BODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である請求項1~6のいずれかに記載の方法
  8. 前記(B)の蛍光消光色素が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である請求項1~7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記(B)において、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基がシトシンである請求項1~8のいずれかに記載の方法。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載の検出方法を実施するための試薬であって、
    (A)配列番号9~11のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなり、且つ(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているオリゴヌクレオチドプローブと、
    配列番号20に示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号21に示される塩基配列からなるプライマーとで構成されるプライマー対とを含む、試薬
  11. 請求項1~9のいずれかに記載の検出方法を実施するための試薬を含む、試料中に含まれるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のトキシンB遺伝子(tcdB)を検出するためのキットであって、
    (A)配列番号9~11のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなり、且つ(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているオリゴヌクレオチドプローブと、
    配列番号20に示される塩基配列からなるプライマー及び配列番号21に示される塩基配列からなるプライマーとで構成されるプライマー対とを含む、キット
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