JP2023097825A - Rsウイルス検出用プローブ及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】RSウイルス検出用プローブを提供すること。【解決手段】以下の特徴(A)及び(B)を有する、RSウイルス検出用プローブが開示される:(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;(A-1)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又は(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。【選択図】なし
Description
本発明は、RSウイルス検出用プローブ、該プローブを用いてRSウイルスを検出する方法及び当該方法に用いるための試薬・キット等に関する。
RSウイルス(Human respiratory syncytial virus)による呼吸器感染症は特に初感染の乳児及び高齢者に高率に気管支炎や肺炎を引き起こす。RSウイルスは、11種類のタンパク質をコードするゲノムRNAを有しており、これらのタンパク質のうちG蛋白の性状の差からサブグループとして大きくA型とB型に分類されている。
RSウイルスの検査方法としては、これまでに遺伝子検査、抗原検査、抗体検査が開発されてきている。これらの内、抗原検査は、簡便に検査できるメリットがある一方、感度の点では難があるのが現状である。また抗体検査は、過去に罹患したかの確認ができるものの、現時点で感染しているかの検査には不向きである。これらに対し、遺伝子検査は、RSウイルスを特異的に優れた感度で検出できる特徴がある。
RSウイルスの遺伝子検査法では、まず逆転写酵素(reverse transc
riptase)によりRSウイルスのゲノムRNAをcDNAに逆転写(RT:reverse transcription)した後、PCR法等により核酸増幅して検出を行う方法がとられている。RT-PCR法による検出では現在、ダブル標識核酸プローブ(Taqmanプローブ、加水分解プローブ等とも呼ばれる)を用いたリアルタイムPCRを行うことにより定量検出する方法が主に実施されている(非特許文献1)。本方法では、コントロールRNAを基準にウイルス量を定量することが可能であるが、PCRのサイクル毎に測光する必要があるため、最も短い場合でも検出に約1時間を要する。
riptase)によりRSウイルスのゲノムRNAをcDNAに逆転写(RT:reverse transcription)した後、PCR法等により核酸増幅して検出を行う方法がとられている。RT-PCR法による検出では現在、ダブル標識核酸プローブ(Taqmanプローブ、加水分解プローブ等とも呼ばれる)を用いたリアルタイムPCRを行うことにより定量検出する方法が主に実施されている(非特許文献1)。本方法では、コントロールRNAを基準にウイルス量を定量することが可能であるが、PCRのサイクル毎に測光する必要があるため、最も短い場合でも検出に約1時間を要する。
さらに、核酸増幅産物を検出する方法として、融解曲線解析法が知られている。融解曲線解析法は、核酸増幅と検出を別工程で実施することができ、最短30分間程度で比較的簡便に測定が可能である。さらに蛍光標識核酸プローブを用いた融解曲線解析は、自動分析装置を利用した遺伝子検査にも適合させ易いという利点がある。しかし未だ、融解曲線解析法で高感度にRSウイルスを検出可能な核酸プローブは知られていない。
一般にはA型のRSウイルスの方が重症になり易いことが知られている。サブグループA型とB型は、塩基配列が一部異なることが知られているため、同一の反応系で両型を検出することは通常困難である。さらに、複数のプライマー・プローブセットを同一の反応系に入れることは、オリゴヌクレオチド間でダイマーを形成し易くなる等の相互作用を誘発する可能性が高くなり、最適なプライマー、プローブ配列を見出すためには多くの試行錯誤が必要である。また、RSウイルスはゲノムRNA領域に変異を生じうる。従って、これらを可能な限り網羅的に検出できるプライマー、プローブの設計は容易でない。
国立感染症研究所、ヒトオルソニューモウイルス(RSウイルス)病原体検出マニュアル 2.0版(令和2年6月12日)
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、RSウイルスの検出に有用なプローブ及びそれを用いたRSウイルスの検出方法等を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究した結果、特定の塩基配列を有する標識プローブを用いることで、RSウイルスを簡便、迅速、且つ高感度に検出できることを見出した。本発明者らは、当該知見を基に更に鋭意研究を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の態様を包含する。
[項1] 以下の特徴(A)及び(B)を有する、RSウイルス検出用プローブ:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項2] 前記(A)の塩基配列の長さが14~26塩基である、項1に記載のプローブ。
[項3] 前記(A)の塩基配列が、配列番号3~7のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む、項1又は2に記載のプローブ。
[項4] 前記(B)の標識が蛍光色素標識である、項1~3のいずれかに記載のプローブ。
[項5] 前記(B)の標識が、前記プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素による標識である、項1~4のいずれかに記載のプローブ。
[項6] 前記(B)の標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、項1~5のいずれかに記載のプローブ。
[項7] 前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~6のいずれかに記載のプローブ。
[項8] 前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~7のいずれかに記載のプローブ。
[項9] 前記(B)において、標識されている末端塩基がシトシンである、項1~8のいずれかに記載のプローブ。
[項10] 項1~9のいずれかに記載のプローブを用いて、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを検出する方法。
[項11] 以下の工程(1)、(2)、及び(3):
(1)前記検体試料中のターゲットのRNAをcDNAに逆転写する工程、
(2)工程(1)のcDNAを鋳型として1又は複数の核酸増幅産物を生成する工程、及び
(3)工程(2)の1又は複数の核酸増幅産物を、1又は複数の前記プローブを用いて検出する工程
を含む、項10に記載の方法。
[項12] 工程(2)がPCR反応により実施され、前記PCR反応に用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである、項11に記載の方法。
[項13] ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、項12に記載の方法。
[項14] 工程(3)が融解曲線解析法により実施される、項11~13のいずれかに記載の方法。
[項15] 工程(1)の逆転写反応に用いる逆転写活性を有する酵素が、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus)由来のリバーストランスクリプターゼ又はその変異体である、項11~14のいずれかに記載の方法。
[項16] RSウイルスのサブグループA型及びB型の両方を検出する、項10~15のいずれかに記載の方法。
[項17] RSウイルスをサブグループA型及びサブグループB型のいずれであるかを判別して検出する、請求項10~16のいずれかに記載の方法。
[項18] 項1~9のいずれかに記載のプローブを含む、RSウイルスを検出するための試薬キット。
[項1] 以下の特徴(A)及び(B)を有する、RSウイルス検出用プローブ:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項2] 前記(A)の塩基配列の長さが14~26塩基である、項1に記載のプローブ。
[項3] 前記(A)の塩基配列が、配列番号3~7のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む、項1又は2に記載のプローブ。
[項4] 前記(B)の標識が蛍光色素標識である、項1~3のいずれかに記載のプローブ。
[項5] 前記(B)の標識が、前記プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素による標識である、項1~4のいずれかに記載のプローブ。
[項6] 前記(B)の標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、項1~5のいずれかに記載のプローブ。
[項7] 前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~6のいずれかに記載のプローブ。
[項8] 前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~7のいずれかに記載のプローブ。
[項9] 前記(B)において、標識されている末端塩基がシトシンである、項1~8のいずれかに記載のプローブ。
[項10] 項1~9のいずれかに記載のプローブを用いて、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを検出する方法。
[項11] 以下の工程(1)、(2)、及び(3):
(1)前記検体試料中のターゲットのRNAをcDNAに逆転写する工程、
(2)工程(1)のcDNAを鋳型として1又は複数の核酸増幅産物を生成する工程、及び
(3)工程(2)の1又は複数の核酸増幅産物を、1又は複数の前記プローブを用いて検出する工程
を含む、項10に記載の方法。
[項12] 工程(2)がPCR反応により実施され、前記PCR反応に用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである、項11に記載の方法。
[項13] ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、項12に記載の方法。
[項14] 工程(3)が融解曲線解析法により実施される、項11~13のいずれかに記載の方法。
[項15] 工程(1)の逆転写反応に用いる逆転写活性を有する酵素が、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus)由来のリバーストランスクリプターゼ又はその変異体である、項11~14のいずれかに記載の方法。
[項16] RSウイルスのサブグループA型及びB型の両方を検出する、項10~15のいずれかに記載の方法。
[項17] RSウイルスをサブグループA型及びサブグループB型のいずれであるかを判別して検出する、請求項10~16のいずれかに記載の方法。
[項18] 項1~9のいずれかに記載のプローブを含む、RSウイルスを検出するための試薬キット。
本発明により、RSウイルスを簡便、迅速、且つ高感度に検出することができる。また、本発明では、1種類のプローブを用いることにより、A型及びB型の両方のRSウイルスを検出することも可能である。さらに、本発明では、RSウイルスをA型及びB型のいずれであるかを判別して検出することも可能である。本発明のプローブ、それを用いた検出方法、試薬、又はキット等を使用することで、RSウイルスの簡便、迅速、且つ高感度な検出が可能になり、臨床診断の分野に大きく貢献できる。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書中に記載された非特許文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用され、その全体が明細書に組み込まれる。また、本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。本明細書中の「及び/又は」は、いずれか一方又は両方を意味する。本明細書中の「含む」は、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を包含する。
なお、本明細書中に記載された非特許文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用され、その全体が明細書に組み込まれる。また、本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。本明細書中の「及び/又は」は、いずれか一方又は両方を意味する。本明細書中の「含む」は、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を包含する。
また、本明細書では、核酸プライマーを単にプライマーという場合があり、核酸プローブ及び標識プローブを単にプローブという場合があり、これらを総称してオリゴヌクレオチドともいう。
一つの実施形態において、本発明は、特定の塩基配列から構成される標識プローブを使用することで、RSウイルスを検出する方法を提供する。この方法により、簡便、迅速、且つ高感度にRSウイルスを検出することができる。また、RSウイルスのゲノムRNAにおける特定領域をターゲットとして標識プローブを設計することで、一般に重症化し易いRSウイルスのサブグループA型を融解曲線解析等により確実に検出でき、更には1種類の標識プローブでRSウイルスのサブグループA型及びB型のどちらも検出できる。本明細書において、配列番号1及び配列番号2は、RSウイルスのゲノムRNA配列の一部を逆転写しDNA配列としたものに相当する塩基配列(一本鎖マイナス鎖RNAウイルスであるRSウイルスのゲノム配列の順鎖に相当)である。配列番号1はA型RSウイルスの塩基配列に対応し、配列番号2はB型RSウイルスの塩基配列に対応する。本発明のプローブは、配列番号1又は配列番号2に示される塩基配列の領域をターゲットとし、特定の塩基配列で構成される標識プローブ(本明細書では、これを「核酸プローブ」等ともいう)であることが好ましい。
[RSウイルスを検出する方法]
一つの実施形態において、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを検出する方法は、後述の核酸プローブを用いる方法であることが好ましい。当該方法は、検体試料中にRSウイルスが存在するか又は存在しないかを判定する方法であってもよい。また、当該方法は、検体試料中に含まれるRSウイルスを定量する方法であってもよい。特定の実施形態では、1種類の核酸プローブを用いることで、例えばRT-PCR-融解曲線解析法等において、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを、サブグループA型及びB型のどちらであっても高感度に検出することができる。更に特定の実施形態では、例えば、融解曲線解析法等における検出温度の差に基づいて、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを、サブグループA型及びサブグループB型のいずれであるかを判別して検出することができる。
一つの実施形態において、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを検出する方法は、後述の核酸プローブを用いる方法であることが好ましい。当該方法は、検体試料中にRSウイルスが存在するか又は存在しないかを判定する方法であってもよい。また、当該方法は、検体試料中に含まれるRSウイルスを定量する方法であってもよい。特定の実施形態では、1種類の核酸プローブを用いることで、例えばRT-PCR-融解曲線解析法等において、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを、サブグループA型及びB型のどちらであっても高感度に検出することができる。更に特定の実施形態では、例えば、融解曲線解析法等における検出温度の差に基づいて、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを、サブグループA型及びサブグループB型のいずれであるかを判別して検出することができる。
特定の実施形態では、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを検出する方法は、少なくとも以下の工程(1)、(2)、及び(3):
(1)検体試料中のターゲットのRNAをcDNAに逆転写(RT:reverse transcription)する工程;
(2)工程(1)のcDNAを鋳型として1又は複数の核酸増幅産物を生成する工程;及び
(3)工程(2)の1又は複数の核酸増幅産物を、1又は複数の後述の核酸プローブを用いて検出する工程
を含むことが好ましい。当該方法は、工程(2)をPCR反応により実施し、且つ、工程(3)を融解曲線解析法により実施すること(RT-PCR-融解曲線解析法)が好ましい。工程(1)、(2)、及び(3)は同一の反応液中で行ってもよい。また、工程(1)、(2)、及び(3)のうち2つ以上の工程、例えば、工程(1)と工程(2)を連続して又は同時並行的に行ってもよい。
(1)検体試料中のターゲットのRNAをcDNAに逆転写(RT:reverse transcription)する工程;
(2)工程(1)のcDNAを鋳型として1又は複数の核酸増幅産物を生成する工程;及び
(3)工程(2)の1又は複数の核酸増幅産物を、1又は複数の後述の核酸プローブを用いて検出する工程
を含むことが好ましい。当該方法は、工程(2)をPCR反応により実施し、且つ、工程(3)を融解曲線解析法により実施すること(RT-PCR-融解曲線解析法)が好ましい。工程(1)、(2)、及び(3)は同一の反応液中で行ってもよい。また、工程(1)、(2)、及び(3)のうち2つ以上の工程、例えば、工程(1)と工程(2)を連続して又は同時並行的に行ってもよい。
[工程(1)]
一つの実施形態において、工程(1)は、核酸プライマー及び逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いて逆転写反応を行い、ターゲットのRNAからcDNAを生成させる工程であることが好ましい。逆転写酵素としては、逆転写活性を有する酵素であれば特に限定されず、例えば、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus:モロニーマウス白血病ウイルス)、AMV(トリ骨髄芽球症ウイルス)由来のリバーストランスクリプターゼ(RNA依存性DNAポリメラーゼ)、これらの変異体が挙げられる。当該変異体としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した変異体或いは野生型のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上のアミノ酸配列同一性を示す変異体等が挙げられる。具体的には、cDNAの合成効率を上げるために、RNase H活性を欠失させた変異体等が挙げられる。また、特定の条件下ではTth DNAポリメラーゼとその変異体も逆転写活性があることが知られており、本発明において逆転写酵素として使用することができる。
一つの実施形態において、工程(1)は、核酸プライマー及び逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いて逆転写反応を行い、ターゲットのRNAからcDNAを生成させる工程であることが好ましい。逆転写酵素としては、逆転写活性を有する酵素であれば特に限定されず、例えば、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus:モロニーマウス白血病ウイルス)、AMV(トリ骨髄芽球症ウイルス)由来のリバーストランスクリプターゼ(RNA依存性DNAポリメラーゼ)、これらの変異体が挙げられる。当該変異体としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した変異体或いは野生型のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上のアミノ酸配列同一性を示す変異体等が挙げられる。具体的には、cDNAの合成効率を上げるために、RNase H活性を欠失させた変異体等が挙げられる。また、特定の条件下ではTth DNAポリメラーゼとその変異体も逆転写活性があることが知られており、本発明において逆転写酵素として使用することができる。
逆転写反応で使用される核酸プライマーは、工程(2)の核酸増幅反応で使用されるプライマーの一方を兼ねていてもよい。また、逆転写反応の条件は、反応が進行する限り特に限定されない。逆転写反応の温度及び時間(又は逆転写反応装置における設定温度及び設定時間)は、例えば、37~55℃で0秒~60分が好ましく、40~52℃で1~30分がより好ましく、42~50℃で2~15分が特に好ましい。
[工程(2)]
一つの実施形態において、工程(2)は、核酸増幅法(1又は複数の核酸プライマーセットを用いて核酸増幅反応を行うこと)により、核酸増幅産物を生成させる工程であることが好ましい。核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、臨床診断、食品衛生検査、環境検査等の分野においても広く用いられている。そのような核酸増幅法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて方法を選択することができる。核酸増幅法はPCR法(RT-PCR法を含む)が好ましいが、これに限定されない。
一つの実施形態において、工程(2)は、核酸増幅法(1又は複数の核酸プライマーセットを用いて核酸増幅反応を行うこと)により、核酸増幅産物を生成させる工程であることが好ましい。核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、臨床診断、食品衛生検査、環境検査等の分野においても広く用いられている。そのような核酸増幅法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて方法を選択することができる。核酸増幅法はPCR法(RT-PCR法を含む)が好ましいが、これに限定されない。
(PCR反応)
PCR反応は、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応である。PCR反応は、通常、(i)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(ii)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(iii)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことを含む。DNAポリメラーゼとしては、例えば、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENT、これらの変異体が挙げられる。本発明では、簡便、迅速、高感度、且つ検体による増幅阻害耐性を有するという観点から、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。また、工程(3)を融解曲線解析法により実施する場合には、蛍光消光プローブを用いる観点からも、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
PCR反応は、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応である。PCR反応は、通常、(i)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(ii)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(iii)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことを含む。DNAポリメラーゼとしては、例えば、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENT、これらの変異体が挙げられる。本発明では、簡便、迅速、高感度、且つ検体による増幅阻害耐性を有するという観点から、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。また、工程(3)を融解曲線解析法により実施する場合には、蛍光消光プローブを用いる観点からも、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
PCR反応の条件は、反応が進行する限り特に限定されない。例えば、最初の工程(i)を80~100℃で0秒~300秒程度(例えば0.5~300秒程度)行ってもよく、2回目以降(繰り返し)の工程(i)を80~100℃で0.5~300秒程度行ってもよく、工程(ii)を35~80℃で1~300秒程度行ってもよく、工程(iii)を35~85℃で1~300秒程度行ってもよい。工程(i)から(iii)までのサイクルは30~70回繰り返すことが好ましい。ここで繰り返し行うサイクルの温度及び時間は、1~3サイクル毎に変化させてもよい。
(DNAポリメラーゼ)
工程(2)で使用し得るDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましいが、これに限定されない。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、特に制限されないが、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼであり、より好ましくは、パイロコッカス(Pyrococcus)属及びサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌に由来するDNAポリメラーゼが挙げられる。また、好適なDNAポリメラーゼには、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体も含まれる。変異体としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した変異体或いは野生型のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上のアミノ酸配列同一性を示す変異体等が挙げられる。具体的には、DNAポリメラーゼの変異体には、ポリメラーゼ活性の増強、エキソヌクレアーゼ活性の欠損、基質特異性の調整等を目的とした変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
工程(2)で使用し得るDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましいが、これに限定されない。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、特に制限されないが、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼであり、より好ましくは、パイロコッカス(Pyrococcus)属及びサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌に由来するDNAポリメラーゼが挙げられる。また、好適なDNAポリメラーゼには、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体も含まれる。変異体としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加した変異体或いは野生型のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上のアミノ酸配列同一性を示す変異体等が挙げられる。具体的には、DNAポリメラーゼの変異体には、ポリメラーゼ活性の増強、エキソヌクレアーゼ活性の欠損、基質特異性の調整等を目的とした変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。
サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。好ましくは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)が、伸長性や熱安定性に優れているという観点から、本発明においてとりわけ好適に用いることができる。
これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo社)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs社)、Deep Vent(New England Biolabs社)、Tgo(Roche社)、Pwo(Roche社)等が挙げられ、そのいずれもが本発明に用いられ得る。
(KOD由来のDNAポリメラーゼ)
本明細書において、KOD由来のDNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼともいう)とは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、天然由来のアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸を置換、欠失、挿入及び/又は付加することにより3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)をいう。一つの好ましい実施形態において、工程(2)は、このようなKOD由来のDNAポリメラーゼを使用して核酸増幅反応を行う。KOD DNAポリメラーゼは、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼであるTaq DNAポリメラーゼに比べて、正確性、増幅効率、伸長性、検体由来の阻害物質による増幅阻害耐性に優れている。本発明では、このようなKOD DNAポリメラーゼを使用することが、後述の実施例に示すように、簡便でありながら、迅速、高感度でRSウイルスを検出する点でより好ましい。
本明細書において、KOD由来のDNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼともいう)とは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、天然由来のアミノ酸配列において1~3個のアミノ酸を置換、欠失、挿入及び/又は付加することにより3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)をいう。一つの好ましい実施形態において、工程(2)は、このようなKOD由来のDNAポリメラーゼを使用して核酸増幅反応を行う。KOD DNAポリメラーゼは、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼであるTaq DNAポリメラーゼに比べて、正確性、増幅効率、伸長性、検体由来の阻害物質による増幅阻害耐性に優れている。本発明では、このようなKOD DNAポリメラーゼを使用することが、後述の実施例に示すように、簡便でありながら、迅速、高感度でRSウイルスを検出する点でより好ましい。
(核酸プライマーセット)
工程(2)で使用し得る核酸プライマーセットは、後述のプローブが複合体を形成できるRSウイルス由来の核酸断片を増幅し得るものであれば、特に限定されない。より高感度な判定結果が得られ易いという観点から、核酸プライマーセットは、配列番号1又は2で示されるRSウイルスのゲノムRNAの塩基配列の一部又は全部を含む塩基配列を増幅し得る核酸プライマーセットであることが好ましい。
工程(2)で使用し得る核酸プライマーセットは、後述のプローブが複合体を形成できるRSウイルス由来の核酸断片を増幅し得るものであれば、特に限定されない。より高感度な判定結果が得られ易いという観点から、核酸プライマーセットは、配列番号1又は2で示されるRSウイルスのゲノムRNAの塩基配列の一部又は全部を含む塩基配列を増幅し得る核酸プライマーセットであることが好ましい。
例えば、核酸プライマーセットは、配列番号1又は2で示される塩基配列の1~40番目の領域において連続する20~35塩基の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列を含むプライマーと、配列番号1又は2で示される塩基配列の50~91番目の領域において連続する20~35塩基の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列を含むプライマーとで構成され、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に相補的であるプライマーセットであることが好ましい。
より好ましくは、配列番号1又は2で示される塩基配列の1~31番目の領域において連続する20~30塩基の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列を含むプライマーと、配列番号1又は2で示される塩基配列の60~91番目の領域において連続する20~30塩基の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列を含むプライマーとで構成され、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に相補的であるプライマーセットである。
更に好ましくは、配列番号8で示される塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列からなるプライマーと、配列番号9で示される塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列からなるプライマーとで構成され、一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に相補的であるプライマーセットである。
また、前記プライマーセットは、前記各プライマーの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなるプライマーを含むものであってもよい。
[工程(3)]
工程(3)の実施態様は特に限定されず、当該分野で公知の任意の方法で実施することができる。検出対象のRSウイルスは変異し易く、様々な亜型のゲノム配列が存在する。ここで、プライマー又はプローブの塩基配列とターゲットのRSウイルス変異株の塩基配列とにミスマッチが生じると、ウイルスRNA又はそれに由来する核酸増幅産物(標的核酸)に対するプライマー又はプローブの結合力は低下することになり得る。とりわけ、リアルタイムRT-PCR法において標的核酸とプローブとの間のミスマッチが多い場合は、標的核酸に十分にプローブが結合できなくなるため、見かけ上増幅曲線の立ち上がりが遅れる、或いは全く立ち上がりがなくなる場合があり、このような状況は偽陰性を誘発し得る。融解曲線解析法の場合はRT-PCRを終えてから工程(3)を行うため、仮にプライマー又はプローブにミスマッチがあったとしても、最終的に核酸増幅産物が得られていれば検出は可能であるため、リアルタイムRT-PCR法よりもミスマッチの影響を抑えることできる。従って、工程(3)では、核酸増幅産物を融解曲線解析法で検出することが特に好ましい。また、核酸増幅産物を融解曲線解析法で検出することで、より短時間(例えば、逆転写反応開始から融解曲線解析完了まで45分以下、好ましくは40分以下、より好ましくは35分以下)で検出することも可能となり得る。
工程(3)の実施態様は特に限定されず、当該分野で公知の任意の方法で実施することができる。検出対象のRSウイルスは変異し易く、様々な亜型のゲノム配列が存在する。ここで、プライマー又はプローブの塩基配列とターゲットのRSウイルス変異株の塩基配列とにミスマッチが生じると、ウイルスRNA又はそれに由来する核酸増幅産物(標的核酸)に対するプライマー又はプローブの結合力は低下することになり得る。とりわけ、リアルタイムRT-PCR法において標的核酸とプローブとの間のミスマッチが多い場合は、標的核酸に十分にプローブが結合できなくなるため、見かけ上増幅曲線の立ち上がりが遅れる、或いは全く立ち上がりがなくなる場合があり、このような状況は偽陰性を誘発し得る。融解曲線解析法の場合はRT-PCRを終えてから工程(3)を行うため、仮にプライマー又はプローブにミスマッチがあったとしても、最終的に核酸増幅産物が得られていれば検出は可能であるため、リアルタイムRT-PCR法よりもミスマッチの影響を抑えることできる。従って、工程(3)では、核酸増幅産物を融解曲線解析法で検出することが特に好ましい。また、核酸増幅産物を融解曲線解析法で検出することで、より短時間(例えば、逆転写反応開始から融解曲線解析完了まで45分以下、好ましくは40分以下、より好ましくは35分以下)で検出することも可能となり得る。
一つの実施形態において、工程(3)は、以下の工程(3-1)及び(3-2):
(3-1)工程(2)の核酸増幅産物と核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成する工程;及び
(3-2)工程(3-1)の複合体を検出する工程
を含むことが好ましい。RSウイルスの検出において、高感度な判定結果を得るために、工程(2)のRSウイルス由来の核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる後述の核酸プローブを用いることが好ましい。
工程(3-1)のハイブリダイズは、核酸増幅産物と核酸プローブが十分にハイブリダイズする温度条件下で実施されることが好ましい。このような温度条件としては、例えば、核酸プローブのTm値より少なくとも5℃低い温度、より好ましくは少なくとも10℃低い温度を挙げることができるが、これらに限定はされない。
(3-1)工程(2)の核酸増幅産物と核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成する工程;及び
(3-2)工程(3-1)の複合体を検出する工程
を含むことが好ましい。RSウイルスの検出において、高感度な判定結果を得るために、工程(2)のRSウイルス由来の核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる後述の核酸プローブを用いることが好ましい。
工程(3-1)のハイブリダイズは、核酸増幅産物と核酸プローブが十分にハイブリダイズする温度条件下で実施されることが好ましい。このような温度条件としては、例えば、核酸プローブのTm値より少なくとも5℃低い温度、より好ましくは少なくとも10℃低い温度を挙げることができるが、これらに限定はされない。
(核酸プローブ)
本発明の核酸プローブは、少なくとも以下の(A)及び(B)の特徴を有する、RSウイルス検出用プローブであり得る:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
このような特徴を有する核酸プローブを用いることで、例えば、融解曲線解析においても高感度にRSウイルスを検出することができる。
本発明の核酸プローブは、少なくとも以下の(A)及び(B)の特徴を有する、RSウイルス検出用プローブであり得る:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
このような特徴を有する核酸プローブを用いることで、例えば、融解曲線解析においても高感度にRSウイルスを検出することができる。
本発明の核酸プローブは、(A)の塩基配列を有するものであれば特に限定されないが、後述するグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識した核酸プローブとする場合には、当該色素で標識される少なくとも一つの末端塩基がシトシンであることが好ましい。
一つの実施形態において、本発明の核酸プローブは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列をゲノム中に含むRSウイルス(RSウイルスの変異株を含む)を検出でき、好ましくは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と90%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上の同一性を示す塩基配列をゲノム中に含むRSウイルスを検出できる核酸プローブであり得る。
特定の実施形態では、本発明の核酸プローブは、(A-1)で示される塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列(A-2)を含むプローブであり得る。置換、欠失、挿入若しくは付加し得る塩基の数は、好ましくは1又は2個であり得る。このように塩基の置換、欠失、挿入若しくは付加を有する場合、該プローブはミスマッチ塩基を含むといい、本発明においてはこのようなミスマッチ塩基を含むプローブも好適に使用できる。このようなミスマッチ塩基を含むプローブを用いることにより、RSウイルスのサブグループA型及びB型の両方を検出し易くなるという利点がある。
本明細書において、ミスマッチ塩基(又は単に「ミスマッチ」ともいう)を含むとは、標的核酸の塩基配列(標的核酸が核酸増幅反応後に二本鎖となる場合は、二本鎖が解離したいずれか一本鎖の核酸の塩基配列)と相補的ではない塩基を含むことをいう。例えば、標的核酸の塩基配列にシトシン塩基が存在する場合において、プローブにおける当該シトシン塩基に対応する位置の塩基がグアニン以外の塩基(例えば、アデニン塩基、シトシン塩基、チミン塩基、及びユニバーサル塩基)となっていることをいう。例えば、変異し易い標的核酸の領域を検出する場合には、変異し易い塩基に対応するプローブの位置にミスマッチ塩基(例えば、ユニバーサル塩基)を選択することができる。
本発明の核酸プローブがミスマッチ塩基を含む場合、ミスマッチ塩基の位置は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。より確実に核酸増幅産物を検出し易くなるという観点からは、ミスマッチ塩基は各プローブの末端塩基ではないことが好ましい。例えば、ミスマッチ塩基の位置は、プローブを構成する塩基配列全長nの中央(nが奇数の場合、(n+1)/2、nが偶数の場合、n/2)から前後に8mer以内が好ましく、前後に7mer以内がより好ましく、前後に6mer以内が更に好ましく、前後に5mer以内が更により好ましい。
一つの好ましい実施形態において、本発明の核酸プローブは、配列番号1若しくは配列番号2に示される塩基配列の27番目~61番目に示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又はその塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列を含むプローブである。好ましくは配列番号1若しくは配列番号2に示される塩基配列の40番目~61番目に示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又はその塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列を含むプローブである。これらのプローブにおいて、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列中の置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基の数は、0個、1個、又は2個が好ましく、0個又は1個であることがより好ましい。このようなプローブと核酸増幅産物とを反応させることで、より良好にRSウイルスを検出することができる。
本発明の核酸プローブの長さとしては、特に限定されないが、例えば、10塩基以上、好ましくは14塩基以上であり、通常、26塩基以下、好ましくは20塩基以下である。プローブの長さは、より好ましくは14~26塩基、更に好ましくは14~20塩基であり得る。このような長さのプローブを用いることで、より高感度にRSウイルスを検出することができる。
特定の好ましい実施形態において、本発明の核酸プローブの具体例としては、配列番号3~7のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列を含むプローブを挙げることができる。このような特定の塩基配列を有するプローブを用いることにより、より一層高感度にRSウイルスを検出することができる。
上記のプローブは、5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする。一つの実施形態において、本発明の核酸プローブは、該核酸プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光又は蛍光を生じるように標識されていることが好ましく、消光を生じるように標識されていることがより好ましい。標識物質としては特に制限はないが、蛍光色素であることがより好ましい。
蛍光色素としては特に標的の核酸増幅産物とハイブリダイズして複合体を形成することにより蛍光を生じる蛍光物質又は消光を生じる蛍光物質のいずれであってもよいが、好ましくは標的の核酸増幅産物とハイブリダイズした際に消光を生じる蛍光物質であり、特に好ましくは、標的の核酸増幅産物とハイブリダイズにおいてグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素(例えば、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素)である。具体的には、フルオロセイン及びその誘導体(例えば、フルオロセインイソチオシアネート(FITC))、ローダミン及びその誘導体(例えば、5-カルボキシローダミン6G(GR6G)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシローダミン、x-ローダミン、スルホローダミン101酸クロリド)、並びにBODIPY及びその誘導体(例えば、BODIPY-FL、BODIPY-FL/C3、BODIPY-FL/C6、BODIPY-5-FAM、BODIPY-TMR、BODIPY-TR、BODIPY-R6G、BODIPY-564、BODIPY-581、BODIPY-591、BODIPY-630、BODIPY-650、BODIPY-665)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素として、例えば、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G(CR6G),TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素を挙げることができ、本発明にはこれらの蛍光消光色素が好適に使用され得る。
特定の好ましい実施形態では、蛍光消光色素で標識されている末端塩基がシトシンであるプローブがより好ましい。このようなプローブは、核酸増幅産物にハイブリダイズした際に、核酸増幅産物中のグアニン塩基と塩基対を形成して相互作用することで消光できるため、非常に簡便に反応液の蛍光強度の変化を測定することができる。
なお、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基と核酸増幅産物中のグアニン塩基が塩基対を形成しなくとも、それらの塩基同士の距離が近ければ蛍光は消光できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。即ち、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基に対して、核酸増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(シトシン塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
従って、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基がシトシンでない核酸プローブであっても、反応液の蛍光強度の変化を測定できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。例えば、該プローブがハイブリダイズした際に、蛍光消光色素が標識されている末端塩基に対して、核酸増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(末端塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
特定の好ましい実施形態において、本発明の核酸プローブを工程(3)で用いる。このように本発明の核酸プローブを用いることでRSウイルスのサブグループA型及び/又はB型を検出できる。とりわけ、本発明の方法は、一般に重症化し易いとされているRSウイルスのサブグループA型の検出に優れている。また、本発明の方法は、本発明のプローブを1種類使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。特定の好ましい実施形態では、本発明の方法は、1種類の標識プローブを使用するだけで、RSウイルスのサブグループA型及びB型の両方を検出することができる。
一つの実施形態において、工程(3)は、以下の工程(3-a)、(3-b)、及び(3-c)の少なくとも一つを含む態様であり得る:
(3-a)工程(2)と同時に、反応液中の核酸増幅産物に本発明の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、工程(2)の反応(核酸増幅反応)の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3-b)工程(2)の終了後に、反応液中の核酸増幅産物に本発明の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、工程(2)の反応(核酸増幅反応)の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3-c)工程(2)の終了後に、反応液中の核酸増幅産物に本発明の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定する工程。
工程(3-a)、(3-b)、又は(3-c)により、簡便、迅速、且つ高感度に、核酸増幅産物と核酸プローブとで形成される複合体の生成を検出することができる。工程(3-a)、(3-b)、及び(3-c)は組み合わせて実施してもよく、例えば、工程(3-a)及び(3-b)の両方、又は工程(3-a)及び(3-c)の両方を行うこともできる。一つの実施形態では、より迅速に核酸増幅産物の検出を行う観点から、工程(3-b)又は(3-c)が好ましい。特に工程(3-c)、すなわち融解曲線解析法が好ましい。
(3-a)工程(2)と同時に、反応液中の核酸増幅産物に本発明の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、工程(2)の反応(核酸増幅反応)の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3-b)工程(2)の終了後に、反応液中の核酸増幅産物に本発明の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、工程(2)の反応(核酸増幅反応)の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3-c)工程(2)の終了後に、反応液中の核酸増幅産物に本発明の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定する工程。
工程(3-a)、(3-b)、又は(3-c)により、簡便、迅速、且つ高感度に、核酸増幅産物と核酸プローブとで形成される複合体の生成を検出することができる。工程(3-a)、(3-b)、及び(3-c)は組み合わせて実施してもよく、例えば、工程(3-a)及び(3-b)の両方、又は工程(3-a)及び(3-c)の両方を行うこともできる。一つの実施形態では、より迅速に核酸増幅産物の検出を行う観点から、工程(3-b)又は(3-c)が好ましい。特に工程(3-c)、すなわち融解曲線解析法が好ましい。
(工程(3-a))
工程(3-a)は、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする方法(所謂、リアルタイムPCR法)であり、既知濃度のコントロール物質と比較することにより、定量解析が可能である。
工程(3-a)は、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする方法(所謂、リアルタイムPCR法)であり、既知濃度のコントロール物質と比較することにより、定量解析が可能である。
(工程(3-b))
工程(3-b)は、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターすることで、検体試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、エンドポイントでの蛍光強度等を比較することでおおよその標的核酸量も推定可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識された核酸プローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする。核酸増幅反応終了後に、反応液の蛍光強度を測定し、反応後の反応液の蛍光強度を反応前の反応液の蛍光強度と比較することで、標的核酸の増幅の有無を確認することができる。或いは、反応後の反応液の蛍光強度をコントロール反応液の蛍光強度と比較することでも検体試料中に含まれる標的核酸の有無を確認することができる。コントロール反応液とは、測定したい検体試料の代わりに陰性と判明している試料或いは陽性と判明している試料を加えた反応液である。
核酸増幅反応の進行は、一般的にリアルタイムでモニターする必要があるが、より迅速、簡便に検出する目的では、エンドポイントで測定することが好ましい。
工程(3-b)は、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターすることで、検体試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、エンドポイントでの蛍光強度等を比較することでおおよその標的核酸量も推定可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識された核酸プローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする。核酸増幅反応終了後に、反応液の蛍光強度を測定し、反応後の反応液の蛍光強度を反応前の反応液の蛍光強度と比較することで、標的核酸の増幅の有無を確認することができる。或いは、反応後の反応液の蛍光強度をコントロール反応液の蛍光強度と比較することでも検体試料中に含まれる標的核酸の有無を確認することができる。コントロール反応液とは、測定したい検体試料の代わりに陰性と判明している試料或いは陽性と判明している試料を加えた反応液である。
核酸増幅反応の進行は、一般的にリアルタイムでモニターする必要があるが、より迅速、簡便に検出する目的では、エンドポイントで測定することが好ましい。
(工程(3-c))
工程(3-c)において、蛍光強度の温度依存性を測定するとは、具体的には、反応液の温度を低温から高温に変化させながら、各温度における蛍光強度を測定することであり得る。得られた蛍光強度について温度で一次微分することにより、使用する核酸プローブに固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。また、蛍光強度は目的に合わせて蛍光消光率等に変換してもよい。
Tm値を用いた標的核酸の検出、分析等を融解曲線分析という。一般的に、Tm値は、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖である割合が等しいときの温度をいう。Tm値は、塩基配列に固有の値であるため、融解曲線分析は標的核酸の塩基配列多型を分析する手法として使用できる。ここでいう塩基配列多型とは、一塩基多型、塩基置換、塩基欠損、塩基挿入等を含む。
工程(3-c)において、蛍光強度の温度依存性を測定するとは、具体的には、反応液の温度を低温から高温に変化させながら、各温度における蛍光強度を測定することであり得る。得られた蛍光強度について温度で一次微分することにより、使用する核酸プローブに固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。また、蛍光強度は目的に合わせて蛍光消光率等に変換してもよい。
Tm値を用いた標的核酸の検出、分析等を融解曲線分析という。一般的に、Tm値は、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖である割合が等しいときの温度をいう。Tm値は、塩基配列に固有の値であるため、融解曲線分析は標的核酸の塩基配列多型を分析する手法として使用できる。ここでいう塩基配列多型とは、一塩基多型、塩基置換、塩基欠損、塩基挿入等を含む。
一例として、融解曲線分析はSNP解析等にも応用されている。プローブに対して標的核酸の塩基配列に変異がある場合、プローブがハイブリダイズした際に塩基がミスマッチしているため、一般的にTm値は低くなる。したがって、Tm値の大きさを比較することで一塩基多型の解析(SNP解析)も行うことができる。
[検体試料]
本発明において使用できる検体試料はRSウイルスを含む可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、RSウイルスへの感染が疑われる被験体から採取した、口腔内擦過物、咽頭拭い液、鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、喀痰、気管支洗浄液、肺胞洗浄液、唾液等が挙げられるが、これらに限定されない。生体試料を測定対象の検体試料とする場合、各生体試料に応じて、特に制限はされないが、希釈又は懸濁、遠心、酵素処理等の前処理若しくは核酸抽出を行ってもよい。
本発明において使用できる検体試料はRSウイルスを含む可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、RSウイルスへの感染が疑われる被験体から採取した、口腔内擦過物、咽頭拭い液、鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、喀痰、気管支洗浄液、肺胞洗浄液、唾液等が挙げられるが、これらに限定されない。生体試料を測定対象の検体試料とする場合、各生体試料に応じて、特に制限はされないが、希釈又は懸濁、遠心、酵素処理等の前処理若しくは核酸抽出を行ってもよい。
検体試料の採取方法、調製方法等は、特に制限されず、検体試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。特定の好ましい実施形態では、検体試料は、RNAを単離・精製した試料でなくてもよく、例えば、生体から採取した検体をタンパク質分解酵素(例えば、プロテイナーゼK)処理及び/又は熱処理(例えば、60~100℃で1秒~10分間)によるタンパク分解変性処理をし、検体中に存在しているRNase(リボヌクレアーゼ)及びDNase(DNA分解酵素)を予め分解除去した試料をそのまま用いてもよい。
核酸抽出の方法は、特に制限されないが、検体試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。核酸抽出としては、主にRNAを抽出するものであっても、RNA及びDNAを区別せずに核酸を抽出するものでもよい。核酸抽出には、例えば、各メーカーから販売されているキット等を使用してもよい。例えば、QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN社)が挙げられる。また、自動抽出精製装置を用いてもよい。
特定の好ましい実施形態において、検体試料は、従来の核酸増幅反応において通常は必須と考えられていた核酸精製工程を省略したものであってもよい。核酸精製を行う場合、専用試薬が必要であることに加えて、作業が煩雑で手間と時間がかかるという問題がある。核酸精製工程を省略した検体試料を用いる場合、検体試料の採取から遺伝子検査結果を得るまでの時間を短縮することができ、例えば、検体試料の採取から遺伝子検査結果が得られるまでの時間を1日以内、好ましくは半日以内、より好ましくは6時間以内、更に好ましくは3時間以内、なかでも好ましくは2時間以内(例えば、1時間以内)とすることが可能となる。このように、核酸精製工程を経ていない検体試料を用いて本発明の方法を行う場合、核酸精製の手間を省くことができ、簡便且つ短時間でRSウイルスを検出することができる。
[RSウイルスを検出するための試薬]
別の実施形態として、本発明は、RSウイルスを検出するための試薬を提供する。試薬には、前述で説明した本発明の核酸プローブに加えて、逆転写反応、核酸増幅反応、及び検出に必要な成分を少なくとも含むことが好ましい。当該必要な成分は、それぞれ公知のものを用いることができる。例えば、本発明の試薬は、逆転写用核酸プライマー、PCR用核酸プライマーセット、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、及びマグネシウム塩等の無機塩類を少なくとも含むことが好ましい。逆転写用核酸プライマーを兼ねたPCR用核酸プライマーセット及び検出用核酸プローブは、RSウイルスの複数領域を増幅させるために複数セットを含むことができる。各成分の濃度は適宜調整できるが、例えば、核酸プローブは0.01~1μMが好ましく、0.02~0.5μMがより好ましい。核酸プローブセットとして使用する場合は、該プローブセットに含まれる各核酸プローブがそれぞれ上記濃度の範囲内であることが好ましい。核酸プライマーは0.01~10μMが好ましい。逆転写酵素は0.01~10U/μLが好ましく、0.02~2U/μLがより好ましい。DNAポリメラーゼは0.01~1U/μLが好ましく、0.02~0.5U/μLがより好ましい。デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は0.02~1mMが好ましく、0.1~0.5mMがより好ましい。マグネシウム塩等の無機塩類は0.1~10mMが好ましく、1~5mMがより好ましい。
別の実施形態として、本発明は、RSウイルスを検出するための試薬を提供する。試薬には、前述で説明した本発明の核酸プローブに加えて、逆転写反応、核酸増幅反応、及び検出に必要な成分を少なくとも含むことが好ましい。当該必要な成分は、それぞれ公知のものを用いることができる。例えば、本発明の試薬は、逆転写用核酸プライマー、PCR用核酸プライマーセット、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、及びマグネシウム塩等の無機塩類を少なくとも含むことが好ましい。逆転写用核酸プライマーを兼ねたPCR用核酸プライマーセット及び検出用核酸プローブは、RSウイルスの複数領域を増幅させるために複数セットを含むことができる。各成分の濃度は適宜調整できるが、例えば、核酸プローブは0.01~1μMが好ましく、0.02~0.5μMがより好ましい。核酸プローブセットとして使用する場合は、該プローブセットに含まれる各核酸プローブがそれぞれ上記濃度の範囲内であることが好ましい。核酸プライマーは0.01~10μMが好ましい。逆転写酵素は0.01~10U/μLが好ましく、0.02~2U/μLがより好ましい。DNAポリメラーゼは0.01~1U/μLが好ましく、0.02~0.5U/μLがより好ましい。デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は0.02~1mMが好ましく、0.1~0.5mMがより好ましい。マグネシウム塩等の無機塩類は0.1~10mMが好ましく、1~5mMがより好ましい。
さらに、非特異増幅の抑制や反応促進を目的として、本発明の試薬は、当該技術分野で知られる添加物等を含んでいてもよい。非特異増幅の抑制を目的とする添加物として、公知の抗DNAポリメラーゼ抗体、リン酸等が挙げられる。反応促進を目的とする添加物として、ウシ血清アルブミン(BSA)、プロテアーゼインヒビター、シングルストランド結合タンパク質(SSB)、T4遺伝子32タンパク質、tRNA、硫黄又は酢酸含有化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、ベタイン、エクトイン、トレハロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、酢酸テトラメチルアンモニウム(TMAA)、ポリエチレングリコール、カルニチン、トリトン(Triton)、ツイーン(Tween20)、ノニデットP40等が挙げられる。また、ターゲットであるRSウイルスのゲノムRNAの分解を低減させるため、本発明の試薬は、RNA分解酵素の阻害剤又は抑制剤(例えば、RNaseインヒビター)を含んでいてもよい。また、偽陰性の判定を容易にするために、本発明の試薬は、当該分野で公知のインターナルコントロールを含むことも好ましい。本発明では、これらの添加物を1種類単独で又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。
[RSウイルスを検出するための試薬キット]
別の実施形態として、本発明は、RSウイルスを検出するための試薬キットが提供される。本発明のキットは、前述で説明した本発明の核酸プローブ又は本発明の試薬を含み、RSウイルスを検出(鑑別を含む)できるように構成されていれば特に限定されない。例えば、本発明のキットは、被検出対象の存在を検出又は定量することができる試薬、及び/又は、使用方法等を説明する使用説明書等を任意に含むことができる。例えば、本発明のキットは、前記核酸プローブ、逆転写反応に必要な成分、核酸増幅反応に必要な成分、及び増幅産物の検出に必要な成分を同じ容器に封入したもの又は別々の容器に封入したものを、例えば一つの包装体に梱包し、当該キットの使用方法に関する情報を含む態様で提供することができる。また、本発明のキットは、陽性コントロール液及び/又は陰性コントロール液を含めることもできる。
別の実施形態として、本発明は、RSウイルスを検出するための試薬キットが提供される。本発明のキットは、前述で説明した本発明の核酸プローブ又は本発明の試薬を含み、RSウイルスを検出(鑑別を含む)できるように構成されていれば特に限定されない。例えば、本発明のキットは、被検出対象の存在を検出又は定量することができる試薬、及び/又は、使用方法等を説明する使用説明書等を任意に含むことができる。例えば、本発明のキットは、前記核酸プローブ、逆転写反応に必要な成分、核酸増幅反応に必要な成分、及び増幅産物の検出に必要な成分を同じ容器に封入したもの又は別々の容器に封入したものを、例えば一つの包装体に梱包し、当該キットの使用方法に関する情報を含む態様で提供することができる。また、本発明のキットは、陽性コントロール液及び/又は陰性コントロール液を含めることもできる。
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔試験例1:核酸プローブの評価1〕
(1)試料の調製
RSウイルスのサブグループA型から粗抽出されたRNAを滅菌水で段階希釈し、100コピー/テストとなるように調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりRSウイルスのサブグループA型の検出を行った。逆転写、核酸増幅及び融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。判定は、融解曲線解析にてピークが得られた場合に陽性と判定した。
(1)試料の調製
RSウイルスのサブグループA型から粗抽出されたRNAを滅菌水で段階希釈し、100コピー/テストとなるように調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりRSウイルスのサブグループA型の検出を行った。逆転写、核酸増幅及び融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。判定は、融解曲線解析にてピークが得られた場合に陽性と判定した。
(試薬)
図1に示すように設計した各標識プローブa~jの性能を比較するため、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して以下の溶液を調製した。ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)は、それぞれの取扱説明書に記載の通りに使用量を調整して使用した(ReverTra Ace(登録商標)は0.1U/μLで使用)。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
3.0μM 配列番号8で示されるプライマー
0.5μM 配列番号9で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるプライマー
0.4μM 配列番号3~7、13、14で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列、又は配列番号10~12で示される塩基配列からなる各プローブa~j(すべて3’末端をCR6Gで標識)
図1に示すように設計した各標識プローブa~jの性能を比較するため、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して以下の溶液を調製した。ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)は、それぞれの取扱説明書に記載の通りに使用量を調整して使用した(ReverTra Ace(登録商標)は0.1U/μLで使用)。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
3.0μM 配列番号8で示されるプライマー
0.5μM 配列番号9で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるプライマー
0.4μM 配列番号3~7、13、14で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列、又は配列番号10~12で示される塩基配列からなる各プローブa~j(すべて3’末端をCR6Gで標識)
(逆転写、核酸増幅及び融解曲線解析)
42℃・2分
97℃・15秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上50サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
上記の逆転写反応開始から融解曲線解析終了までに要した時間は、35分間であった。
42℃・2分
97℃・15秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上50サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
上記の逆転写反応開始から融解曲線解析終了までに要した時間は、35分間であった。
(3)結果
図2は、配列番号3に対して相補的な塩基配列からなるプローブaを用い、核酸増幅及び融解曲線解析によってRSウイルスサブグループA型RNAの検出を行った際に得られた検出グラフである。図2に示される通り、該プローブaでは49℃付近で検出ピークが得られている。
図2は、配列番号3に対して相補的な塩基配列からなるプローブaを用い、核酸増幅及び融解曲線解析によってRSウイルスサブグループA型RNAの検出を行った際に得られた検出グラフである。図2に示される通り、該プローブaでは49℃付近で検出ピークが得られている。
試験例1で用いた核酸プローブによる測定結果を表1にまとめた。配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目の8塩基の塩基配列に相補的な塩基配列を含む核酸プローブ(プローブa~e)を選択することによってRSウイルスサブグループA型RNAを検出可能できた。しかし全く予想外のことに、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目の8塩基に対応する領域を含んでいても、配列番号1又は2で示される順鎖の塩基配列において同様の核酸プローブを設計した場合には融解曲線解析で上手く検出できていない(プローブf~h)。また、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列において核酸プローブを設計しても、配列番号1又は2で示される塩基配列の45番目~52番目の8塩基に対応する領域を含まない場合は検出できないことが明らかになった(プローブi~j)。
また、プローブa、c、d、及びeは、図1に示されるように、配列番号1又は2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列と完全に同一ではなくミスマッチ塩基を含むが、十分な感度でRSウイルスのサブグループA型を検出できることが示された。
〔試験例2:核酸プローブの評価2〕
(1)試料の調製
RSウイルスのサブグループB型から粗抽出されたRNAを滅菌水で段階希釈し、100コピー/テストとなるように調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
試験例1と同様にして、RSウイルスサブグループB型の検出を行った。
(1)試料の調製
RSウイルスのサブグループB型から粗抽出されたRNAを滅菌水で段階希釈し、100コピー/テストとなるように調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
試験例1と同様にして、RSウイルスサブグループB型の検出を行った。
(試薬)
試験例1において使用した、プローブa、c、d、f、及びiの各プローブを用いて、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して以下の溶液を調製した。試験例1と同様に、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)は、それぞれの取扱説明書に記載の通りに使用量を調整して使用した(ReverTra Ace(登録商標)は0.1U/μLで使用)。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
3.0μM 配列番号8で示されるプライマー
0.5μM 配列番号9で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるプライマー
0.4μM プローブa、c、d、f、又はiの各プローブ(すべて3’末端をCR6Gで標識)
試験例1において使用した、プローブa、c、d、f、及びiの各プローブを用いて、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して以下の溶液を調製した。試験例1と同様に、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)は、それぞれの取扱説明書に記載の通りに使用量を調整して使用した(ReverTra Ace(登録商標)は0.1U/μLで使用)。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
3.0μM 配列番号8で示されるプライマー
0.5μM 配列番号9で示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるプライマー
0.4μM プローブa、c、d、f、又はiの各プローブ(すべて3’末端をCR6Gで標識)
(逆転写、核酸増幅及び融解曲線解析)
試験例1と同様の条件で実施した。
試験例1と同様の条件で実施した。
(3)結果
図3は、配列番号3に対して相補的な塩基配列からなるプローブaを用い、核酸増幅及び融解曲線解析によってRSウイルスサブグループB型RNAの検出を行った際に得られた検出グラフである。図3に示される通り、該プローブaでは54℃付近で検出ピークが得られている。
図3は、配列番号3に対して相補的な塩基配列からなるプローブaを用い、核酸増幅及び融解曲線解析によってRSウイルスサブグループB型RNAの検出を行った際に得られた検出グラフである。図3に示される通り、該プローブaでは54℃付近で検出ピークが得られている。
試験例2で用いた核酸プローブによる測定結果を表2にまとめた。配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目の8塩基の塩基配列に相補的な塩基配列を含む核酸プローブ(プローブa、c、d)を選択して使用することによってRSウイルスのサブグループB型RNAも検出可能であることが示された。一方、試験例1と同様に、配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目の8塩基に対応する領域を含んでいても、配列番号1若しくは2で示される順鎖の塩基配列において同様の核酸プローブを設計した場合(プローブf)、又は、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列において核酸プローブを設計しても、配列番号1又は2で示される塩基配列の45番目~52番目の8塩基に対応する領域を含まない場合(プローブi)はサブグループB型のRNAも検出できないことが示された。
また、試験例1の結果と比べると、本発明のプローブ(プローブa、c、d)によるRSウイルスのサブグループA型の検出温度とサブグループB型の検出温度は異なっていた。従って、この検出温度の差を利用することで、本発明のプローブは、RSウイルスのサブグループA型とB型を判別することも可能であることが分かった。
本発明の核酸プローブを使用することで、例えば融解曲線解析法において、簡便、迅速、且つ高感度に試料中に含まれ得るRSウイルスを検出できる。本発明により、高い信頼性でRSウイルスを検出することを可能とし、臨床診断等等において大きく貢献することができる。
Claims (18)
- 以下の特徴(A)及び(B)を有する、RSウイルス検出用プローブ:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列であって、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列の45番目~52番目に対して相補的な塩基配列を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。 - 前記(A)の塩基配列の長さが14~26塩基である、請求項1に記載のプローブ。
- 前記(A)の塩基配列が、配列番号3~7のいずれかで示される塩基配列に対して相補的な塩基配列を含む、請求項1又は2に記載のプローブ。
- 前記(B)の標識が蛍光色素標識である、請求項1~3のいずれかに記載のプローブ。
- 前記(B)の標識が、前記プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素による標識である、請求項1~4のいずれかに記載のプローブ。
- 前記(B)の標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、請求項1~5のいずれかに記載のプローブ。
- 前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1~6のいずれかに記載のプローブ。
- 前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1~7のいずれかに記載のプローブ。
- 前記(B)において、標識されている末端塩基がシトシンである、請求項1~8のいずれかに記載のプローブ。
- 請求項1~9のいずれかに記載のプローブを用いて、検体試料中に含まれ得るRSウイルスを検出する方法。
- 以下の工程(1)、(2)、及び(3):
(1)前記検体試料中のターゲットのRNAをcDNAに逆転写する工程、
(2)工程(1)のcDNAを鋳型として1又は複数の核酸増幅産物を生成する工程、及び
(3)工程(2)の1又は複数の核酸増幅産物を、1又は複数の前記プローブを用いて検出する工程
を含む、請求項10に記載の方法。 - 工程(2)がPCR反応により実施され、前記PCR反応に用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである請求項11に記載の方法。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、請求項12に記載の方法。
- 工程(3)が融解曲線解析法により実施される、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
- 工程(1)の逆転写反応に用いる逆転写活性を有する酵素が、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus)由来のリバーストランスクリプターゼ又はその変異体である、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
- RSウイルスのサブグループA型及びB型の両方を検出する、請求項10~15のいずれかに記載の方法。
- RSウイルスをサブグループA型及びサブグループB型のいずれであるかを判別して検出する、請求項10~16のいずれかに記載の方法。
- 請求項1~9のいずれかに記載のプローブを含む、RSウイルスを検出するための試薬キット。
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