JP2022073185A - インフルエンザウイルス検出用オリゴヌクレオチド及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】インフルエンザウイルスを検出するための標識プローブ、検出方法及び試薬キットを提供する。【解決手段】検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる標識プローブとして、以下の特徴(A)及び(B)を有する標識プローブを用いる:(A)特定の配列番号で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。好ましい実施形態では、2つ以上の上記標識プローブを反応液中で共存させるようにして用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、検体試料中に含まれるインフルエンザウイルスを迅速、確実かつ簡便に検出するためのオリゴヌクレオチドに関する。更に、本発明は、該オリゴヌクレオチドを用いて、検体試料中に含まれるインフルエンザウイルスを検出する方法及びその方法に用いるための試薬・キット等に関する。
インフルエンザウイルス(Influenza virus)による呼吸器感染症は最も著名な疾患の一つである。インフルエンザウイルスは核タンパク質(NP)およびマトリックスタンパク質(M)の抗原性の違いから複数の型に分類されるが、このうち臨床現場で頻繁に見られるのはA型とB型である。また、各型のインフルエンザウイルスには様々な亜型が存在する。
インフルエンザウイルスの検査方法としては、これまでに遺伝子検査、抗原検査、抗体検査が開発されてきている。これらの内、抗原検査は、簡便に検査できるメリットがある一方、感度の点では難があるのが現状である。また抗体検査は、過去に罹患したかの確認ができるものの、現時点で感染しているかの検査には不向きである。これらに対し、遺伝子検査は、インフルエンザウイルスを特異的に優れた感度で検出できる特徴がある。
インフルエンザの遺伝子検査法では、まず逆転写酵素(reverse transcriptase)によりインフルエンザウイルスのゲノムRNAをcDNAに逆転写(RT:reverse transcription)した後、PCR法やLAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法などにより核酸増幅して検出を行う方法がとられている。これらは、各々RT-PCR法、RT-LAMP法と呼ばれている。このうち最もよく使われるRT-PCR法による検出では現在、ダブル標識核酸プローブ(Taqmanプローブ、加水分解プローブなどとも呼ばれる)を用いたリアルタイムPCRを行うことにより定量検出する方法が主に実施されている(非特許文献1)。本方法では、コントロールRNAを基準にウイルス量を定量することが可能であるが、PCRのサイクル毎に測光する必要があるため、最も短い場合でも検出に約1時間を要する。
さらに、核酸増幅産物を検出する方法として、融解曲線解析法が知られている。融解曲線解析法は、核酸増幅と検出を別工程で実施することができ、最短30分間程度で比較的簡便に測定が可能である。さらに蛍光標識核酸プローブを用いた融解曲線解析は、自動分析装置を利用した遺伝子検査にも適合させ易いという利点がある。しかし未だ、融解曲線解析法で高感度にインフルエンザウイルスを検出可能な核酸プローブは知られていない。
インフルエンザウイルスには主にA型とB型が存在する。さらに2009年に世界的に流行した新型インフルエンザウイルスは、A型でありながら既存の核酸増幅法では検出できない特殊な型であった。このタイプのインフルエンザウイルスは特にH1N1pdm09と呼称された。そのため、各型のインフルエンザウイルスを一度に検出するためには複数のプライマープローブセットを同一の反応系に入れる必要がある。一方で、複数のプライマープローブセットを同一の反応系に入れることは、オリゴヌクレオチド間でダイマーを形成するなどの相互作用する可能性が高くなり、最適なプライマー、プローブ配列を見出すためにはより多くの試行錯誤が必要である。また、インフルエンザウイルスはゲノムRNA領域に変異を生じうる。実際にデータベースには様々な亜型の塩基配列が掲載されている。
プライマー、プローブの塩基配列とターゲットとなったインフルエンザウイルスの塩基配列にミスマッチがある場合、ウイルスRNAまたはその増幅産物に対するプライマーまたはプローブの結合力が低下する。とりわけ、リアルタイムRT-PCR法において標的核酸とプローブとの間のミスマッチが多い場合は、標的核酸に十分にプローブが結合できなくなるため、見かけ上増幅曲線の立ち上がりが遅れる、あるいは全く立ち上がりがなくなることが予想される。このような状況は偽陰性を誘発しうる。融解曲線解析法の場合はRT-PCRを終えてから検出工程を行うため、仮にプライマープローブにミスマッチがあったとしても、最終的に増幅産物が得られていれば検出は可能であるため、リアルタイムRT-PCR法よりはミスマッチの影響は比較的少ない。
加えて、インフルエンザウイルスの検査においては、通常は、鼻咽頭拭い液、喀痰、唾液といった検体からRNA抽出精製キットを用いてRNAを抽出精製し、そのRNA抽出液を次工程のRT-PCR法などに供するのが一般的である。しかしながら、RNA抽出精製には多大な労力とコストがかかるため、簡便な前処理のみで調製した試料を検査に用いることが求められている。すなわち、インフルエンザウイルスを含む検体からインフルエンザウイルスのゲノムRNAを抽出精製するのではなく、簡易的にRNAを抽出した試料(簡易RNA抽出液)を用いても検出が可能な方法が求められている。
以上に記載したように、インフルエンザウイルスの検査においては、(1)測定時間が短いこと、(2)高感度であること、(3)検体試料による増幅阻害に強いこと、(4)インフルエンザウイルスの変異に対応できること、(5)検体による増幅阻害を検知できるインターナルコントロールを反応系に組み込むことができることなどの利点を有し得る測定方法が求められている。
L.J.R.van ELDEN et al.,J.Clin.Microbiol.39(1):196-200,2001
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、より短時間で、高感度に、簡易抽出検体による増幅阻害に強く、インフルエンザウイルスの変異に対応でき、検体による増幅阻害を検知できるインターナルコントロールを組み込むことを可能にするなどの利点を有し得る、検体試料中に含まれるインフルエンザウイルスを検出する手法を提供することである。
本発明者は鋭意研究の結果、特定の配列を有する標識プローブを用いること、なかでも複数の特定標識プローブを反応液中で組み合わせて用いることで、上記要求事項を満たし得るインフルエンザウイルスの検出方法を見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明の概要は以下の通りである。
[項1] 検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有する標識プローブ:
(A)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項2] 前記標識プローブが、(A)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む項1に記載の標識プローブであって、
(A-2)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含み、且つ、(B-2)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている標識プローブと反応液中で共存させて用いられることを特徴とする、項1に記載の標識プローブ。
[項3] 前記標識プローブが、(A)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む項1に記載の標識プローブであって、
(A-1)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含み、且つ、(B-1)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている標識プローブと反応液中で共存させて用いられることを特徴とする、項1に記載の標識プローブ。
[項4] 前記(A)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる、項1~3のいずれかに記載の標識プローブ。
[項5] 前記(A)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号3~32のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる、項1~4のいずれかに記載の標識プローブ。
[項6] 前記標識が蛍光色素標識である、項1~5のいずれかに記載の標識プローブ。
[項7] 前記標識プローブが、該標識プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素で標識されている、項1~6のいずれかに記載の標識プローブ。
[項8] グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている、項1~7のいずれかに記載の標識プローブ。
[項9] 前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~8のいずれかに記載の標識プローブ。
[項10] 前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~9のいずれかに記載の標識プローブ。
[項11] 前記(B)において、標識されている末端塩基がシトシンである項1~10のいずれかに記載の標識プローブ。
[項12] 核酸を精製する工程を経ていない生体由来の検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる、項1~11のいずれかに記載の標識プローブ。
[項13] 少なくとも以下の第一の標識プローブ並びに第二の標識プローブを含む、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる標識プローブセット:
(A-1)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B-1)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする、第一の標識プローブ;並びに
(A-2)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B-2)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする、第二の標識プローブ。
[項14] 項1~12のいずれかに記載の標識プローブ又は項13に記載の標識プローブセットを用いて、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出する方法。
[項15] RT-PCR-融解曲線解析法で検出を行う、項14に記載のインフルエンザウイルスを検出する方法。
[項16] PCR反応に用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである項15に記載の検出方法。
[項17] ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、項16に記載の検出方法。
[項18] RT反応に用いる逆転写活性を有する酵素が、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus)由来のリバーストランスクリプターゼ又はその変異体である、項14~17のいずれかに記載の検出方法。
[項19] 検体試料が、核酸を精製する工程を経ていない生体由来試料である、項14~18のいずれかに記載の検出方法。
[項20] 項1~12のいずれかに記載の標識プローブ又は項13に記載の標識プローブセットを含む、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するための試薬キット。
[項21] A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスとの鑑別が可能である、項14~19のいずれかに記載の検出方法
本発明により、検体試料に含まれるインフルエンザウイルスを、迅速、高感度に検出することができる。本発明の方法によれば、例えば、高度に核酸を単離・精製されていない試料、すなわち、簡易RNA抽出した試料を用いる場合であっても増幅阻害を受けにくく、極めて高い感度でインフルエンザウイルスを検出することが可能である。本発明のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法、試薬あるいはキットを使用することで、インフルエンザウイルスの簡便、迅速、高感度な検出が可能になり、臨床診断の分野に大きく貢献できる。
実施例1の結果の代表例を示す図である(配列番号7で示される核酸プローブを用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果を示すグラフ)。 実施例2の結果の代表例を示す図である(配列番号27で示される核酸プローブを用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果を示すグラフ)。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。また本明細書中の「及び/又は」は、いずれか一方または両方を意味する。
また、本明細書では、核酸プライマーをオリゴヌクレオチドプライマー又は単にプライマーといい、核酸プローブをオリゴヌクレオチドプローブ又は単にプローブという場合があり、これらを総称してオリゴヌクレオチドともいう。
[インフルエンザウイルスを検出する方法]
本発明の実施態様の一つは、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを高感度に検出する方法である。本発明は、後述する特定塩基配列を有する標識プローブ(本明細書では、これを「核酸プローブ」ともいう)を使用することを特徴とする。特定の実施形態では、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスのゲノム配列にそれぞれ対応する本発明の標識プローブを2種以上組み合わせて使用することで、例えばRT-PCR-融解曲線解析法などにおいて、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスについて、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスとを鑑別しながら迅速、簡便、高感度に検出することができる。
特定の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも以下の(1)~(3)の工程:
(1)検体試料中において、逆転写活性を有する酵素を用いてターゲットのRNAをcDNAに変換する工程;
(2)特定の塩基配列からなる1または複数の核酸プライマーセットを用いて核酸増幅反応を行い、前記工程(1)で得られたcDNAを鋳型に1または複数の核酸増幅産物を生成する工程;及び
(3)前記工程(2)で得られた1または複数の増幅産物を、特定の塩基配列からなる1または複数の本発明の標識プローブを用いた融解曲線解析法により検出する工程、
を包含することを特徴とする。即ち本発明はインフルエンザウイルスの検出において、高感度な判定結果を得るために、核酸増幅検出反応において1または複数の特定塩基配列の標識プローブを用いることを一つの特徴とする。
[逆転写反応]
一つの実施態様において、本発明の方法は、核酸プライマー及び逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いて逆転写(RT:reverse transcription)反応を行い、標的とするRNAからcDNAを生成させる。逆転写酵素としては、逆転写活性を有する酵素であれば特に限定されず、例えば、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus:モロニーマウス白血病ウイルス)やAMV(トリ骨髄芽球症ウイルス)由来のリバーストランスクリプターゼ(RNA依存性DNAポリメラーゼ)やその変異体が挙げられる。変異体としては、例えば、野生型のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加した変異体等が挙げられ、具体的には、cDNAの合成効率を上げるために、RNase H活性を欠失させた変異体などが挙げられる。また、特定の条件下ではTth DNAポリメラーゼとその変異体も逆転写活性があることが知られており、本発明において逆転写酵素として使用されることがある。
逆転写反応で使用される核酸プライマーは、次の核酸増幅反応で使用されるPCRプライマーの一方を兼ねていてもよい。また、逆転写反応の条件は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、37~55℃で0秒~60分が好ましい。特に42~50℃で2~15分が好ましい。
[核酸増幅反応]
一つの実施態様において、本発明の方法は、核酸プライマーセットを用いて核酸増幅反応を行い、核酸増幅産物を生成させる。核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、臨床診断、食品衛生検査、環境検査等の分野においても広く用いられている。そのような核酸増幅法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて方法を選択することができる。本発明で行う核酸増幅法はPCR法(RT-PCR法を含む)が好ましいが、これに限定されない。
[PCR反応]
PCR反応は、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応であり、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって標的核酸を増幅する。DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENTやその変異体が挙げられる。本発明では、迅速、高感度、かつ検体による増幅阻害耐性を有するという観点から、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。また、融解曲線解析法を行う場合には、蛍光消光プローブを用いる観点からも、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有しないファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
PCR反応の条件は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、最初の熱変形工程が80~100℃で0秒~5分、繰り返しの熱変形工程が80~100℃で0.5~300秒、アニーリンクが35~80℃で1~300秒、伸長反応工程が35~85℃で1~300秒程度行い、この繰り返しを30~70回繰り返すことが好ましい。ここで繰り返し行うサイクルの温度及び時間は、1~数サイクル毎に変化させてもよい。
[ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ]
本発明で用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましいが、これに限定されない。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、特に制限されないが、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼであり、より好ましくは、パイロコッカス(Pyrococcus)属およびサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌に由来するDNAポリメラーゼが挙げられる。また、本発明には、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体も含まれる。DNAポリメラーゼの変異体には、ポリメラーゼ活性の増強、エキソヌクレアーゼ活性の欠損、基質特異性の調整等を目的とした変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。
サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。好ましくは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)が、伸長性や熱安定性に優れているという観点から、本発明においてとりわけ好適に用いることができる。
これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo社)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs社)、Deep Vent(New England Biolabs社)、Tgo(Roche社)、Pwo(Roche社)などが挙げられ、そのいずれもが本発明に用いられ得る。
[KOD由来のDNAポリメラーゼ]
本明細書において、KOD由来のDNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼともいう)とは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、天然由来のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸を置換、欠失、及び/又は付加することにより3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)をいう。一つの好ましい実施形態において、本発明は、このようなKOD由来のDNAポリメラーゼを使用して核酸増幅反応を行う。KOD DNAポリメラーゼは、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼであるTaq DNAポリメラーゼに比べて、正確性、増幅効率、伸長性、検体由来の阻害物質による増幅阻害耐性に優れている。本発明では、このようなKOD DNAポリメラーゼを使用することで、後述の実施例に示すように、簡便でありながら、迅速、高感度でインフルエンザウイルスを検出することが可能となる。
[核酸プライマーセット]
本発明においてインフルエンザウイルスを検出するために用いる、前記(2)に記載の核酸プライマーセットは、後述の標識プローブが複合体を形成できるインフルエンザウイルス由来の核酸断片を増幅し得るものであれば、特に限定されない。より高感度な判定結果が得られ易いという観点から、核酸プライマーセットは、配列番号1又は2で示されるインフルエンザウイルス ゲノムRNAの塩基配列の一部又は全部を含む塩基配列を増幅し得る核酸プライマーセットである。例えば、核酸プライマーセットは、配列番号33又は34で示される塩基配列からなる少なくとも1つの核酸プライマーと配列番号35又は36で示される塩基配列からなる少なくとも1つ核酸プライマーとから構成される核酸プライマーセット;配列番号37又は38で示される塩基配列からなる少なくとも1つの核酸プライマーと配列番号39又は40で示される塩基配列からなる少なくとも1つの核酸プライマーとから構成される核酸プライマーセット;配列番号41又は42で示される塩基配列からなる少なくとも1つの核酸プライマーと配列番号43又は44で示される塩基配列からなる少なくとも1つの核酸プライマーとから構成される核酸プライマーセットであり得るが、これらに限定されない。
本明細書において、配列番号1および配列番号2は、インフルエンザウイルスのRNA配列の一部を逆転写しDNAとしたものに相当する塩基配列である。配列番号1はA型インフルエンザウイルスの塩基配列に対応し、配列番号2はB型インフルエンザウイルスの塩基配列に対応する。本発明は、これらの配列番号1又は2に示される塩基配列が対応するインフルエンザウイルス ゲノムRNA領域を標的配列とすることで融解曲線解析等において高感度にインフルエンザウイルスを検出でき、特に、配列番号1で示されるインフルエンザウイルスのゲノム領域と配列番号2で示されるインフルエンザウイルスのゲノム領域の両方を標的配列として同時検出する場合には、融解曲線解析等においてA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別も可能になるという新たな知見を見出したことに基づく。従って、本発明に用いる核酸プライマーセットは、配列番号1及び2に示される両領域のそれぞれ一部又は全部を含む塩基配列を増幅できるものであることが好ましい。
[増幅産物を検出する工程]
本発明の前記方法では、工程(3)として、前記工程(1)~(2)で得られた増幅産物を検出する工程を包含する。この検出する工程の態様は特に限定されず、当該分野で公知の任意の方法で実施することができるが、本発明では、融解曲線解析法が好ましい。
一つの実施形態において、前記工程(3)は、以下の(3-1)~(3-2)の工程:
(3-1)前記工程(2)によって得られた核酸増幅産物と核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程;及び
(3-2)前記工程(3-1)で得られた複合体を検出する工程。
を包含することを特徴とする。好ましい本実施態様では、本発明はインフルエンザウイルスの検出において、高感度な判定結果を得るために、前記(1)(2)工程によって得られたインフルエンザウイルス由来の核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる標識プローブを用いることを一つの特徴とする。簡易的なRNA抽出しか行われていない場合でも高感度な検出を可能にするという観点から、前記(1)(2)工程によって得られたインフルエンザウイルス由来の1または複数の核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる1または複数の核酸標識プローブを用いることがなかでも好ましい。
[核酸プローブ]
一つの実施形態において、本発明は、前記のような核酸プライマーを含む核酸プライマーセットで増幅したインフルエンザウイルス由来の核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる核酸プローブである。インフルエンザウイルス由来の核酸増幅産物と特異的に反応させる本発明の標識プローブは、以下の特徴を有するインフルエンザウイルスを検出するための核酸プローブであり得る:
(A)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
このような特徴を有する核酸プローブを用いることで、例えば、融解曲線解析においても高感度にインフルエンザウイルスを検出することが可能になる。
本発明の核酸プローブは、配列番号1若しくは配列番号2の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列に相同性の高い配列を有するものであれば特に限定されないが、後述するグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識した核酸プローブとする場合には、当該色素で標識される少なくとも一つの末端塩基がシトシンであることが好ましい。
一つの実施形態において、本発明に用いる標識プローブは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなるものであり得る。好ましくは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列と90%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブであり得る。特に好ましくは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と100%同一の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブである。
特定の実施形態では、本発明の標識プローブは、例えば、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる標識プローブであり得る。ここで、1又は数個とは、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、更に好ましくは1~2個であり得る。このように配列番号1又は2で示される塩基配列と相同性の高い塩基配列を有する標識プローブを用いることで、高感度にインフルエンザウイルスを検出することが可能となる。
前記のように1又は数個の塩基の置換、欠失、もしくは付加を有する場合、該プローブはミスマッチ塩基を含むといい、本発明においてはこのようなミスマッチ塩基を含む標識プローブも好適に使用できる。
本明細書において、ミスマッチ塩基(又は単に「ミスマッチ」ともいう)を含むとは、標的核酸の塩基配列(標的核酸が二本鎖である場合は、二本鎖が解離したいずれか一本鎖の核酸の塩基配列)と相補的ではない塩基を含むことをいう。例えば、標的核酸の塩基配列にシトシン塩基が存在する場合において、標的用プローブにおける当該シトシン塩基に対応する位置の塩基がグアニン以外の塩基(例えば、アデニン塩基、シトシン塩基、グアニン塩基、チミン塩基、及びユニバーサル塩基)となっていることをいう。第一標的用プローブ及び/又は第二標的用プローブにおけるミスマッチ塩基は、アデニン塩基、シトシン塩基、グアニン塩基、チミン塩基、ユニバーサル塩基(例えば、ヒポキサンチン、ネブラリン、5-ニトロインドール等)のいずれであってもよく、当業者は相補的でない塩基を適宜選択してプローブを設計することができる。例えば、変異し易い標的核酸を検出する場合には、変異し易い塩基に対応する標的プローブの位置にユニバーサル塩基を選択することができる。
本発明の標識プローブがミスマッチ塩基を含む場合、ミスマッチを入れる位置は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。より確実に標的核酸を検出し易くなるという観点からは、各プローブの末端塩基ではないことが好ましい。例えば、標的プローブがミスマッチ塩基を含む場合、ミスマッチ塩基の位置は、該標的プローブを構成する塩基配列全長の中央から前後に8mer以内が好ましく、全長の中央から前後に5mer以内がより好ましい。
一つの好ましい実施形態において、本発明の標識プローブは、配列番号1に示される塩基配列の15番目~49番目に示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる標識プローブである。このような標識プローブと核酸増幅産物とを反応させることで、より良好にA型インフルエンザウイルスを検出することが可能となる。
他の好ましい実施形態において、本発明の標識プローブは、配列番号2に示される塩基配列の22番目~40番目に示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる標識プローブである。このような標識プローブと核酸増幅産物とを反応させることで、より良好にB型インフルエンザウイルスを出することが可能となる。
標識プローブの長さとしては、特に限定されないが、例えば、10塩基以上、好ましくは14塩基以上、より好ましくは14~26塩基、さらに好ましくは14~20塩基であり得る。このような長さの標識プローブを用いることで、より高感度にインフルエンザウイルスを高感度に検出することが可能である。
特定の好ましい実施形態において、本発明に用いる標識プローブの具体例としては、配列番号3~32のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる標識プローブを挙げることができる。配列番号3~25に示される塩基配列に対応する標識プローブはA型インフルエンザウイルスの検出に有用であり、配列番号26~32に示される塩基配列に対応する標識プローブはB型インフルエンザウイルスの検出に有用である。このような特定の塩基配列を有する標識プローブを用いることにより、より一層高感度にインフルエンザウイルスを検出することが可能になる。
上記の標識プローブは、5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする。一つの実施形態において、本発明の標識プローブは、該標識プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光又は蛍光を生じるように標識されていることが好ましく、消光を生じるように標識されていることがより好ましい。標識物質には特に制限はないが、蛍光物質を用いる蛍光色素標識であることがより好ましい。
蛍光標識としては特に標的の核酸増幅産物とハイブリダイズして複合体を形成することにより蛍光を生じる蛍光物質又は消光を生じる蛍光物質のいずれであってもよいが、好ましくは標的の核酸増幅産物とハイブリダイズした際に消光を生じる蛍光物質であり、特に好ましくは、標的の核酸増幅産物とハイブリダイズにおいてグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素(例えば、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素)である。具体的には、フルオロセイン及びその誘導体(例えば、フルオロセインイソチオシアネート(FITC))、ローダミン及びその誘導体(例えば、5-カルボキシローダミン6G(GR6G)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシローダミン、x-ローダミン、スルホローダミン101酸クロリド)、並びにBODIPY及びその誘導体(例えば、BODIPY-FL、BODIPY-FL/C3、BODIPY-FL/C6、BODIPY-5-FAM、BODIPY-TMR、BODIPY-TR、BODIPY-R6G、BODIPY-564、BODIPY-581、BODIPY-591、BODIPY-630、BODIPY-650、BODIPY-665)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素として、例えば、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素を挙げることができ、本発明にはこれらの蛍光消光色素が好適に使用され得る。
特定の好ましい実施形態では、蛍光消光色素で標識されている末端塩基がシトシンである標識プローブがより好ましい。
このようなオリゴヌクレオチドプローブは、増幅産物にハイブリダイズした際に、増幅産物中のグアニン塩基と塩基対を形成して相互作用することで消光できるため、非常に簡便に反応液の蛍光強度の変化を測定することができる。
なお、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基と増幅産物中のグアニン塩基が塩基対を形成しなくとも、それらの塩基同士の距離が近ければ蛍光は消光できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。即ち、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基に対して、増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(シトシン塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
更に特定の実施態様では、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基(即ち、両端が標識されている場合は、少なくとも一方の末端塩基)がシトシンでない核酸プローブであっても、反応液の蛍光強度の変化を測定できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。例えば、該プローブがハイブリダイズした際に、蛍光消光色素が標識されている少なくとも一つの末端塩基に対して、増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(末端塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
特定の好ましい実施形態において、本発明のインフルエンザウイルスを検出する方法では、本発明の標識プローブを検出反応液中で2つ以上組み合わせて用いる。このように複数の本発明の標識プローブを反応液中で共存させるように用いても、プローブ間でのダイマー形成などの問題は生じにくく、インフルエンザウイルスを検出できるだけでなく、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別も可能となる。例えば、このように本発明の標識プローブを2つ以上組み合わせて検出反応液中で共存させることにより、事前に核酸を精製する工程を経ていない生体由来試料からでも十分な感度でA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスとを鑑別し検出することが可能になり得る。
一つの好ましい実施形態では、(A)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む標識プローブを、以下の特徴(A-2)及び(B-2)を有する標識プローブと反応液中で共存させるように用いる:
(A-2)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B-2)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
他の好ましい実施形態では、(A)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む標識プローブを、以下の特徴(A-1)及び(B-1)を有する標識プローブと反応液中で共存させるように用いる:
(A-1)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B-1)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
従って本発明はさらに、上記のような標識プローブを少なくとも2つ含む標識プローブセットの態様をも提供する。本発明の標識プローブセットは、例えば、融解曲線解析法を行う反応液中において、当該セットに含まれる複数の標識プローブを共存させるように使用され得る。一つの実施形態において、本発明の標識プローブセットは、少なくとも以下の第一の標識プローブ並びに第二の標識プローブを含む、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる標識プローブセットである:
(A-1)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B-1)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする、第一の標識プローブ;並びに
(A-2)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(B-2)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする、第二の標識プローブ。
上記標識プローブセット(本明細書では、これを「核酸プローブセット」ともいう)における標識プローブの塩基配列、塩基長、蛍光標識などは、上記標識プローブにおいて詳述したものと同様である。本発明の標識プローブセットは、上記の本発明の標識プローブと同様にして使用され得る。
一つの好ましい実施形態において、上記核酸プローブ又は核酸プローブセットにおいて、(A-1)の少なくとも10塩基以上の塩基配列は、配列番号3~25のいずれかに示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列であり得る。他方の好ましい実施形態において、上記核酸プローブ又は核酸プローブセットにおいて、(A-2)の少なくとも10塩基以上の塩基配列は、配列番号26~32のいずれかに示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列であり得る。特に好ましい実施形態では、上記(A-1)及び(A-2)に記載の塩基配列を有する核酸プローブ又は核酸プローブセットを組み合わせて用いる。
[複合体を検出する工程]
本発明の前記増幅産物を検出する工程において、核酸増幅産物と標識プローブとをハイブリダイズさせて形成せしめた複合体を検出する(3-2)の工程の態様は特に限定されず、当該分野で公知の任意の方法で実施することができる。
一つの実施形態において、前記工程(3)は、以下の工程(3-a)~(3-c)の少なくともひとつを含む態様であり得る:
(3-a)得られるうる増幅産物に該核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3-b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3-c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定する工程。
前記(3-a)~(3-c)のような工程によれば、簡便かつ高感度に、核酸増幅産物と核酸プローブとで形成される複合体の生成を検出することが可能となり得る。本発明の実施形態は、より迅速に核酸増幅産物の検出を行う観点から、(3-b)または(3-c)による検出工程が好ましい。特に(3-c)すなわち融解曲線解析法による方法が好ましい。
[(3-a)核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニター]
核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする方法である。所謂、リアルタイムPCR法は、既知濃度のコントロール物質と比較することにより、定量解析が可能である。一方で、PCRのサイクル毎に測光する必要があるため、核酸増幅反応に掛かる時間が長くなる傾向がある。
[(3-b)核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニター]
核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする方法もあるが、本発明においては、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターすることで、試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、エンドポイントでの蛍光強度等を比較することで標的核酸量もおおおその推定も可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする。核酸増幅反応終了後に、反応液の蛍光強度を測定する。反応後の反応液の蛍光強度を反応前の反応液の蛍光強度と比較することで、標的核酸の増幅の有無を確認できる。あるいは、反応後の反応液の蛍光強度をコントロール反応液の蛍光強度と比較することでも試料中に含まれる標的核酸の有無を確認することができる。コントロール反応液とは、測定したい試料の代わりに陰性と判明している試料あるいは陽性と判明している試料を加えた反応液である。
核酸増幅反応の進行は、一般的にリアルタイムでモニターする必要があるが、増幅検出工程をより迅速、簡便にする目的では、エンドポイントで測定することが好ましい。
[(3-c)蛍光強度の温度依存性を測定]
蛍光強度の温度依存性を測定するとは、具体的には、反応液の温度を低温から高温に変化させながら、各温度における蛍光強度を測定することである。得られた蛍光強度について温度で一次微分することにより、使用するオリゴヌクレオチドプローブに固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。また、蛍光強度は目的に合わせて蛍光消光率等に変換してもよい。
Tm値を用いた標的核酸の検出、分析等を融解曲線分析という。一般的に、Tm値は、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖である割合が等しいときの温度をいう。Tm値は、塩基配列に固有の値であるため、融解曲線分析は標的核酸の塩基配列多型を分析する手法として使用できる。ここでいう塩基配列多型とは、一塩基多型、塩基置換、塩基欠損、塩基挿入等を含む。
一例として、融解曲線分析はSNP解析などにも応用されている。オリゴヌクレオチドプローブに対して標的核酸の塩基配列に変異がある場合、プローブがハイブリダイズした際に塩基がミスマッチしているため、一般的にTm値は低くなる。したがって、Tm値の大きさを比較することで一塩基多型の解析(SNP解析)も行うことができる。
[検体試料]
本発明において使用できる検体試料はインフルエンザウイルスを含む可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、インフルエンザウイルスへの感染が疑われる被験体から採取した、口腔内擦過物、咽頭拭い液、鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、喀痰、気管支洗浄液、肺胞洗浄液、唾液などが挙げられるが、これらに限定されない。生体試料を測定対象の検体試料とする場合、各生体試料に応じて、特に制限はされないが、希釈や懸濁、遠心、酵素処理などの前処理もしくは核酸抽出を行ってもよい。
検体試料の採取方法、調製方法等は、特に制限されず、試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。特定の好ましい実施形態では、本発明に用いる検体試料は、RNAを単離・精製した試料でなくてもよく、例えば、生体から採取した検体をタンパク質分解酵素(例えば、プロテイナーゼK)処理及び/又は熱処理(例えば、60~100℃で1秒~10分間)によるタンパク分解変性処理をし、検体中に存在しているRNase(リボヌクレアーゼ)やDNase(DNA分解酵素)を予め分解除去した試料をそのまま用いてもよい。
核酸抽出の方法は、特に制限されないが、検体の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。核酸として、主にRNAを抽出精製するものであっても、RNA及びDNAを区別せずに核酸を抽出精製するものでも良い。核酸抽出には、例えば、各メーカーから販売されているキット等を使用してもよい。たとえば、QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN社)が挙げられる。また、用手による方法でも、自動抽出精製装置を用いても良い。
特定の好ましい実施態様において、本発明の方法は、従来の核酸増幅反応において通常は必須と考えられていた核酸精製工程を省略することができる。後述の試験例の結果に示されるように、本発明の方法によれば、標的核酸以外の生体由来成分などの夾雑物(核酸増幅反応の阻害物質となり得る)を含む状態の検体試料においても、高感度にインフルエンザウイルスを検出できる。核酸精製を行う場合、専用試薬が必要であることに加えて、作業が煩雑で手間と時間がかかるという問題がある。しかし、本発明の遺伝子増幅反応によれば、そのような核酸精製を行うための専用機器を準備する必要がなく、煩雑な操作を省くことが可能である。更に、遠心分離法にかかる時間も短縮することができることから、被験体からの生体試料採取から遺伝子検査結果を得るまでの時間を短縮することができ、例えば、検体採取から遺伝子検査結果が得られるまでの時間を1日以内、好ましくは半日以内、より好ましくは6時間以内、更に好ましくは3時間以内、なかでも好ましくは2時間以内(例えば、1時間以内)とすることが可能となり得る。このように、核酸を精製する工程を経ていない生体由来試料を用いて検出できる本発明の標識プローブ及び方法は、核酸精製の手間を省くことができ、簡便且つ短時間でのインフルエンザウイルスの検出を可能にする。
[インフルエンザウイルスを検出するための試薬]
本発明の別の実施態様として、試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するための試薬が挙げられる。試薬には、前述で説明した本発明の核酸プローブ又は核酸プローブセットに加えて、逆転写反応(RT)、核酸増幅反応、検出に必要な成分が少なくとも含まれる。必要な成分は、それぞれ公知のものを用いることができる。例えば、逆転写用核酸プライマー、PCR用核酸プライマーセット、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、マグネシウム塩等の無機塩類を少なくとも含むことが好ましい。逆転写用核酸プライマーを兼ねたPCR用核酸プライマーセット及び検出用核酸プローブは、インフルエンザウイルスの複数領域を増幅させるために複数セットを含むことができる。各成分の濃度は適宜調整できるが、例えば、核酸プローブは0.01~1μMが好ましく、0.02~0.5μMがより好ましい。核酸プローブセットとして使用する場合は、該プローブセットに含まれる各核酸プローブがそれぞれ上記濃度の範囲内であることが好ましい。核酸プライマーは0.01~10μMが好ましい。逆転写酵素は0.01~10U/μLが好ましく、0.02~2U/μLがより好ましい。DNAポリメラーゼは0.01~1U/uLが好ましく、0.02~0.5U/uLがより好ましい。デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は0.02~1mMが好ましく、0.1~0.5mMがより好ましい。マグネシウム塩等の無機塩類は0.1~10mMが好ましく、1~5mMがより好ましい。
さらに、非特異増幅の抑制や反応促進を目的として、当該技術分野で知られる添加物等を加えてもよい。非特異増幅の抑制を目的とする添加物として、公知の抗DNAポリメラーゼ抗体やリン酸等を用いてもよい。反応促進を目的とする添加物として、ウシ血清アルブミン(BSA)、プロテアーゼインヒビター、シングルストランド結合タンパク質(SSB)、T4遺伝子32タンパク質、tRNA、硫黄または酢酸含有化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、ベタイン、エクトイン、トレハロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、酢酸テトラメチルアンモニウム(TMAA)、ポリエチレングリコール、カルニチン、トリトン(Triton)、ツイーン(Tween20)、ノニデットP40などが挙げられる。また、本発明では、ターゲットであるインフルエンザウイルスのゲノムRNAの分解を低減させるため、RNA分解酵素の阻害剤または抑制剤を添加してもよい。例えば、RNaseインヒビターが挙げられる。本発明では、これらの添加物を1種類以上組み合わせて使用してもよいが、これらに限定されない。
[インフルエンザウイルスを検出するためのキット]
本発明の別の実施態様として、試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するためのキットが挙げられる。本発明のキットは、前述で説明した本発明の核酸プローブ又は核酸プローブセット、及び/又はこれらを含む試薬を含み、インフルエンザウイルスを検出及び/又は鑑別できるように構成されていれば特に限定されない。例えば、本発明のキットは、被検出対象の存在を検出又は定量することができる遺伝子検査試薬及び/又は使用方法等を説明する使用説明書等を任意に含むことができる。例えば、前記核酸プローブを同じ容器に封入したもの又は別々の容器に封入したものを、例えば一つの包装体に梱包し、当該キットの使用方法に関する情報を含む態様で提供することができる。また、陽性コントロール液や陰性コントロール液を含めることもできる。
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:核酸プローブの評価1〕
(1)試料の調製
A型 H1インフルエンザウイルスから抽出されたRNAを滅菌水で段階希釈し、100コピー/テストとなるように調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりA型インフルエンザウイルスの検出を行った。逆転写、核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。判定は、融解曲線解析にてピークが得られた場合に陽性と判定した。
試薬
配列番号7~8、11~20、23で示される各プローブの性能を評価するため、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して以下の溶液を調製した。
0.5μM 配列番号33で示されるプライマー
3.0μM 配列番号35で示されるプライマー
0.25μM 配列番号7~8、11~20、23で示される各プローブ(配列番号7~8、16~20は3’末端をBODIPY-FLで標識。配列番号11~15、23は5’末端をBODIPY-FLで標識、3’末端をリン酸化)
逆転写、核酸増幅および融解曲線解析
42℃・2分
97℃・15秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上50サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
(3)結果
図1は配列番号7で示される核酸プローブを用い、核酸増幅及び融解曲線解析によってA型インフルエンザウイルスRNAの検出を行った際に得られた検出グラフである。図1に示される通り該プローブでは58℃で検出ピークが得られている。同様に本実施例で用いた核酸プローブによる測定結果を表1にまとめた。本検討により、上記の各プローブはいずれもA型インフルエンザウイルスRNAを検出可能であることが明らかになった。
Figure 2022073185000001
〔実施例2:核酸プローブの評価2〕
(1)試料の調製
B型インフルエンザウイルスから抽出されたRNAを滅菌水で段階希釈し、100コピー/テストとなるように調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
実施例1と同様にして、B型インフルエンザウイルスの検出を行った。
試薬
配列番号27、29~32で示される各プローブの性能を評価するため、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して以下の溶液を調製した。
0.5μM 配列番号41で示されるプライマー
3.0μM 配列番号44で示されるプライマー
0.25μM 配列番号27、29~32で示される各プローブ(配列番号27、29、31、32は3’末端をBODIPY-FLで標識。配列番号30は5’末端をBODIPY-FLで標識、3’末端をリン酸化)
逆転写、核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同様の条件で実施した。
(3)結果
図2は配列番号27で示される核酸プローブを用い、核酸増幅及び融解曲線解析によってB型インフルエンザウイルスRNAの検出を行った際に得られた検出グラフである。図2に示される通り該プローブでは51.3℃で検出ピークが得られている。同様に本実施例で用いた核酸プローブによる測定結果を表2にまとめた。本検討により、上記配列番号で示されるプローブはいずれもB型インフルエンザウイルスRNAを検出可能であることが示された。
Figure 2022073185000002
〔実施例3:核酸プローブの組合せの検討1〕
(1)試料の調製
A型 H1N1インフルエンザウイルスから抽出されたRNAを50コピー/テスト、B型インフルエンザウイルスから抽出されたRNAを20コピー/テストとなるようにそれぞれ調製し、試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
実施例1及び2と同様にして、A型及びB型インフルエンザウイルスの検出を行った。
試薬
実施例1及び実施例2で評価したプローブの組み合わせによるA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別を検討するため、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して表3に記載したプライマー及びプローブを組み合わせた溶液を調製した。
下記溶液中のプライマー濃度はAFプライマーが0.5μM、ARプライマーが3.0μMとした。ただし、AFプライマー又はARプライマーを2本用いる場合は、各々のプライマーを合計して前記濃度とした。また、BFプライマー濃度が0.5μM、BRプライマー濃度3.0μMとした。プローブ濃度はいずれも0.25μMとした。プローブの標識は実施例1及び実施例2と同じように3’末端又は5’末端のいずれか一方のみを標識したものである。
Figure 2022073185000003
逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
逆転写、核酸増幅、融解曲線解析の各条件は実施例1と同様の条件で実施した。融解曲線解析を行い、各標識プローブの塩基配列から最近接塩基対法で算出したTm値に基づき、58℃以上で検出が認められた場合をA型インフルエンザウイルス陽性、54℃以下で検出が認められた場合をB型インフルエンザウイルス陽性とした。
(3)結果
下記の表4は、本実施例の結果をまとめた表である。いずれの溶液を用いても、A型H1N1インフルエンザウイルスRNA及びB型インフルエンザウイルスRNAの核酸検出が認められ、両者の結果は識別可能であった。本実施例より、本発明のプローブを組み合わせたセットを使用することでA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別が可能であることが示された。
Figure 2022073185000004
〔実施例4:核酸プローブの組合せの検討2〕
(1)試料の調製
鼻咽頭拭い液に対して、A型 H1N1インフルエンザウイルスから抽出されたRNAを50コピー/テスト、B型インフルエンザウイルスから抽出されたRNAを20コピー/テストの濃度となるようにスパイクしたものを試料とする。本試料は、さらなる核酸の単離及び精製処理を行わないため、生体由来の夾雑物質を含む試料に相当する。
(2)逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
実施例3と同様にして、A型及びB型インフルエンザウイルスの検出を行う。
試薬
実施例1及び実施例2で評価したプローブの組み合わせによるA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別を検討するため、ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社製)及びReverTra Ace(登録商標)を使用して表5に記載したプライマー及びプローブを組み合わせた溶液を調製する。
下記溶液中のプライマー濃度はAFプライマーが0.5μM、ARプライマーが3.0μMである。ただし、AFプライマー又はARプライマーを2本用いる場合は、各々のプライマーを合計して前記濃度とする。また、BFプライマー濃度が0.5μM、BRプライマー濃度3.0μMである。プローブ濃度はいずれも0.25μMである。プローブの標識は実施例1及び実施例2と同じである。
Figure 2022073185000005
逆転写、核酸増幅、融解曲線解析、及び判定
逆転写、核酸増幅、融解曲線解析の各条件は実施例1と同様の条件で実施する。各標識プローブの塩基配列から最近接塩基対法で算出したTm値に基づき、58℃以上で検出が認められた場合をA型インフルエンザウイルス陽性、54℃以下で検出が認められた場合をB型インフルエンザウイルス陽性と判定することができる。実施例1、2の結果に示されるように本発明の標識プローブを用いればA型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルスを高感度に検出できている。本実施例により、生体由来成分などの夾雑物を含む検体においてもA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスとを鑑別して検出できることが分かる。
本発明の核酸プローブを使用することで簡便、高感度に試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出できる。従って、例えば、夾雑物を完全には除去できていないような簡易RNA抽出した試料に対しても、迅速かつ確実に検出することを可能とし、臨床診断等などにおいて大きく貢献することが期待できる。また、本発明の核酸プローブを組み合わせることで、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別も可能となる。

Claims (21)

  1. 検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有する標識プローブ:
    (A)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
    (B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
  2. 前記標識プローブが、(A)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む請求項1に記載の標識プローブであって、
    (A-2)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含み、且つ、(B-2)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている標識プローブと反応液中で共存させて用いられることを特徴とする、請求項1に記載の標識プローブ。
  3. 前記標識プローブが、(A)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む請求項1に記載の標識プローブであって、
    (A-1)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含み、且つ、(B-1)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている標識プローブと反応液中で共存させて用いられることを特徴とする、請求項1に記載の標識プローブ。
  4. 前記(A)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる、請求項1~3のいずれかに記載の標識プローブ。
  5. 前記(A)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号3~32のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる、請求項1~4のいずれかに記載の標識プローブ。
  6. 前記標識が蛍光色素標識である、請求項1~5のいずれかに記載の標識プローブ。
  7. 前記標識プローブが、該標識プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素で標識されている、請求項1~6のいずれかに記載の標識プローブ。
  8. グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている、請求項1~7のいずれかに記載の標識プローブ。
  9. 前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1~8のいずれかに記載の標識プローブ。
  10. 前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1~9のいずれかに記載の標識プローブ。
  11. 前記(B)において、標識されている末端塩基がシトシンである請求項1~10のいずれかに記載の標識プローブ。
  12. 核酸を精製する工程を経ていない生体由来の検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる、請求項1~11のいずれかに記載の標識プローブ。
  13. 少なくとも以下の第一の標識プローブ並びに第二の標識プローブを含む、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するために用いられる標識プローブセット:
    (A-1)配列番号1で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
    (B-1)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする、第一の標識プローブ;並びに
    (A-2)配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
    (B-2)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする、第二の標識プローブ。
  14. 請求項1~12のいずれかに記載の標識プローブ又は請求項13に記載の標識プローブセットを用いて、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出する方法。
  15. RT-PCR-融解曲線解析法で検出を行う、請求項14に記載のインフルエンザウイルスを検出する方法。
  16. PCR反応に用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである請求項15に記載の検出方法。
  17. ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、請求項16に記載の検出方法。
  18. RT反応に用いる逆転写活性を有する酵素が、M-MLV(Moloney Murine Leukemia Virus)由来のリバーストランスクリプターゼ又はその変異体である、請求項14~17のいずれかに記載の検出方法。
  19. 検体試料が、核酸を精製する工程を経ていない生体由来試料である、請求項14~18のいずれかに記載の検出方法。
  20. 請求項1~12のいずれかに記載の標識プローブ又は請求項13に記載の標識プローブセットを含む、検体試料中に含まれ得るインフルエンザウイルスを検出するための試薬キット。
  21. A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの鑑別を行うことが可能である、請求項14~19のいずれかに記載の検出方法。
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