JP2022021904A - SARS-CoV-2の検出用オリゴヌクレオチド及びその用途 - Google Patents

SARS-CoV-2の検出用オリゴヌクレオチド及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】融解曲線解析法による検出においても使用することができ、簡便、高感度にSARS-CoV-2を検出することを可能にする新たな手法を提供する。【解決手段】以下の特徴を有する、SARS-CoV-2を検出するための核酸プローブ:(I)特定の配列番号で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;(II)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。【選択図】なし

Description

本発明は、検体試料中に含まれるSARS-CoV-2を確実かつ簡便に検出するためのオリゴヌクレオチドに関する。更に、本発明は、該オリゴヌクレオチドを用いて、検体試料中に含まれるSARS-CoV-2を検出する方法及びその方法に用いるための試薬・キット等に関する。
SARS-CoV-2は、2019年12月に中国湖北省武漢市に初めて確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである。これにて人に対して病原性をもつコロナウイルスは7種類となったが、その内4種(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)は一般の風邪の原因の10~15%を占め、多くは軽症である。他の2種類のウイルス(SARS-CoV(2002)、MERS-CoV(2012))は, SARS及びMERSを引き起こし、MERSは中東地域で散発的に発生が続いている。そして、SARS-CoV-2によって引き起こされるCOVID-19は、2019年12月以降、パンデミック(世界的大流行)をもたらしている。
COVID-19の症状としては、無症状から上気道炎、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等、幅広い病態を呈する。特に高齢者や基礎疾患のある方が感染すると重症化するリスクが高く、これまでに多くの死者が出ている。一方、罹患しても約8割の方は軽症で経過し、治癒する例も多いことが報告されている。但し、このような無症状感染者あるいは軽症感染者は、感染に気付かないこともあり、感染源となるおそれがある。また、インフルエンザに比べて呼吸器検体における病原体の数が少ないこと(1/100~1/1,000)などから検査診断が困難である。このような理由から、SARS-CoV-2を簡便、高感度に検出ができる検査方法が、今日強く求められている。
SARS-CoV-2の検査方法としては、これまでに遺伝子検査、抗原検査、抗体検査が開発されてきている。これらの内、抗原検査は、簡便に検査できるメリットがある一方、感度の点では難があるのが現状である。また抗体検査は、過去に罹患したかの確認ができるものの、現時点で感染しているかの検査には不向きである。これらに対し、遺伝子検査は、SARS-CoV-2を特異的に優れた感度で検出できる特徴があり、現在、SARS-CoV-2の確定診断法となっている。
遺伝子検査法では、まず逆転写酵素(reverse transcriptase)によりSARS-CoV-2のゲノムRNAをcDNAに逆転写(RT:reverse transcription)した後、PCR法やLAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法などにより核酸増幅して検出を行う方法がとられている。これらは、各々RT-PCR法、RT-LAMP法と呼ばれている。RT-PCR法による検出では現在、ダブル標識核酸プロープ(Taqmanプローブ、加水分解プローブなどとも呼ばれる)を用いたリアルタイムPCRを行うことにより定量検出する方法が主に実施されている。本方法では、コントロールRNAを基準にウイルス量を定量することが可能であるが、PCRのサイクル毎に測光する必要があるため、最も短い場合でも検出に約1時間を要する。一方、RT-LAMP法は、等温で比較的短時間にターゲットを増幅することができる優れた方法であるが、増幅産物の確認は反応時に生じるピロリン酸マグネシウムによる白濁の確認等で行うため、増幅反応産物が標的遺伝子由来のものであるかの識別が困難な場合がある。また、RT-LAMP法では、反応系に核酸増幅が正常に行われたかを確認するためのインターナルコントロールを組み込むことができないため、検体による増幅阻害が起きた場合には判定が困難になるといった課題がある(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
さらに、核酸増幅産物を検出する方法として、融解曲線解析法が知られている。融解曲線解析法は、核酸増幅と検出を別工程で実施することができ、最短30分間程度で比較的簡便に測定が可能である。さらに蛍光標識核酸プローブを用いた融解曲線解析は、自動分析装置を利用した遺伝子検査にも適合させ易いという利点がある。しかし未だ、融解曲線解析法で高感度にSARS-CoV-2を検出可能な核酸プローブは知られていない。
病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1(令和2年3月19日)国立感染症研究所 体外診断用医薬品 SARSコロナウイルス核酸キット コバス(登録商標)SARS-CoV-2添付文書(2020年4月作成第1版)、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検出キット SARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kit説明書(2020年5月13日改訂)、タカラバイオ株式会社 体外診断用医薬品 SARSコロナウイルス核酸キット Loopamp(登録商標)新型コロナウイルス2019(SARS-CoV-2)検出試薬キット添付文書(2020年4月作成第1版)、栄研化学株式会社
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、短時間で、簡便、高感度に検体試料中に含まれるSARS-CoV-2を検出する手法、特に、標識核酸プローブによる融解曲線解析でも高感度に検出可能な手法を提供することである。
本発明者は鋭意研究の結果、特定のオリゴヌクレオチドを用いることで、簡便、高感度に検体試料中に含まれるSARS-CoV-2を検出できることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明の概要は以下の通りである。
[項1] 以下の特徴を有する、SARS-CoV-2を検出するための核酸プローブ:
(I)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;
(II)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項2] 前記標識が蛍光色素標識である、項1に記載の核酸プローブ。
[項3] 前記核酸プローブが、該核酸プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素で標識されている、項1又は2に記載の核酸プローブ。
[項4] グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。項1~3のいずれかに記載の核酸プローブ。
[項5] 前記(I)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる、項1~4のいずれかに記載の核酸プローブ。
[項6] 前記(I)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号15~24のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる、項1~5のいずれかに記載の核酸プローブ。
[項7] 前記標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~6のいずれかに記載の核酸プローブ。
[項8] 前記標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~7のいずれかに記載の核酸プローブ。
[項9] 標識されている末端塩基がシトシンである、項1~8のいずれかに記載の核酸プローブ。
[項10] 項1~9のいずれかに記載の核酸プローブを用いて、試料中のSARS-CoV-2を検出する方法。
[項11] 少なくとも以下の(1)~(3)の工程を含むことを特徴とする、項10に記載のSARS-CoV-2の検出方法。
(1)逆転写活性を有する酵素により、試料中のSARS-CoV-2由来のRNAから逆転写によってDNAを合成する工程、
(2)少なくとも1種類の核酸プライマー(A)と、該プライマー(A)の伸長産物の一部と相補的な塩基配列を有する少なくとも1種類の核酸プライマー(B)とから構成される核酸プライマーセットを用いて、配列番号1若しくは2に示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列の一部又は全部を含む核酸断片を増幅する工程、
(3)前記工程(2)で得られうる核酸断片のいずれか一方の鎖と、項1~9のいずれかに記載の核酸プローブとをハイブリダイズさせて複合体を形成せしめ、該複合体を検出する工程。
[項12] 工程(3)が以下の工程(3-a)~(3-c)の少なくともひとつを含む、項11に記載の検出方法。
(3-a)得られるうる増幅産物に項1~9のいずれかに記載の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3-b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に項1~9のいずれかに記載の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3-c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に項1~9のいずれかに記載の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定する工程。
[項13] 前記工程(2)の核酸増幅反応がPCRである、項11又は12に記載の検出方法。
[項14] 前記工程(2)の核酸増幅反応で用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである項11~13のいずれかに記載の検出方法。
[項15] ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、項14に記載の検出方法。
[項16] 前記核酸プライマーセットが、少なくとも以下の核酸プライマー(A)及び核酸プライマー(B)を含む、項11~15のいずれかに記載の検出方法:
(A)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー;
(B)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー。
[項17] 前記核酸プライマーセットが、以下のいずれかの核酸プライマーセットを含む、項11~16のいずれかに記載の検出方法:
(A)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(a);
(A)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(b);
(A)配列番号2における1~30番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における141~170に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(c);又は
(A)配列番号2における141~170番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における1~30に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(d)。
[項18] 前記核酸プライマー(A)が、配列番号3~5、9~11のいずれかで示される塩基配列からなる、項11~17のいずれかに記載の検出方法。
[項19] 前記核酸プライマー(B)が、配列番号6~8、12~14のいずれかで示される塩基配列からなる、項11~18のいずれかに記載の検出方法。
[項20] 以下の核酸プライマー(A)及び核酸プライマー(B)を含む、SARS-CoV-2を検出するための核酸プライマーセット:
(A)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー;
(B)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー。
[項21] 前記核酸プライマーセットが、以下のいずれかの核酸プライマーセットを含む、項20に記載の核酸プライマーセット:
(A)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(a);
(A)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(b);
(A)配列番号2における1~30番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における141~170に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(c);又は
(A)配列番号2における141~170番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における1~30に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(d)。
[項22] 前記核酸プライマー(A)が、配列番号3~5、9~11のいずれかで示される塩基配列からなる、項20又は21に記載の核酸プライマーセット。
[項23] 前記核酸プライマー(B)が、配列番号6~8、12~14のいずれかで示される塩基配列からなる、項20~22のいずれかに記載の核酸プライマーセット。
[項24] 項20~23のいずれかに記載の核酸プライマーセットおよび/または項1~9のいずれかに記載の核酸プローブを含む、SARS-CoV-2を検出するための試薬。
[項25] 項24に記載の試薬を含む、SARS-CoV-2を検出するためのキット。
本発明により、検体試料中から高感度に試料中に含まれるSARS-CoV-2を検出することができる。本発明のオリゴヌクレオチドを用いた検出方法、試薬、及びキットを使用することで、SARS-CoV-2の簡便、高感度な検出が可能になり、臨床診断の分野に大きく貢献できる。
実施例2(組合せ番号1)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号2)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号3)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号4)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号5)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号6)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号7)の結果を示す図である。 実施例2(組合せ番号8)の結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。また本明細書中の「及び/又は」は、いずれか一方または両方を意味する。
また、本明細書では、核酸プライマーをオリゴヌクレオチドプライマー又は単にプライマーといい、核酸プローブをオリゴヌクレオチドプローブ又は単にプローブという場合があり、これらを総称してオリゴヌクレオチドともいう。
[SARS-CoV-2を検出する方法]
本発明の実施態様の一つは、検体試料中に含まれ得るSARS-CoV-2を検出する方法である。本発明は、後述する特定塩基配列を有する核酸プローブを使用することで、例えばRT-PCR-融解曲線解析法などにおいて、検体試料中に含まれ得るSARS-CoV-2を簡便、高感度に検出することができる。
特定の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも以下の(1)~(3)の工程:
(1)逆転写活性を有する酵素により、試料中のSARS-CoV-2由来のRNAから逆転写によってDNAを合成する工程、
(2)少なくとも1種類の核酸プライマー(A)と、該プライマー(A)の伸長産物の一部と相補的な塩基配列を有する少なくとも1種類の核酸プライマー(B)とから構成される核酸プライマーセットを用いて、配列番号1若しくは2に示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列の一部又は全部を含む核酸断片を増幅する工程、
(3)前記工程(2)で得られうる核酸断片のいずれか一方の鎖と、特定塩基配列を有する本発明の核酸プローブとをハイブリダイズさせて複合体を形成せしめ、該複合体を検出する工程、を包含することを特徴とする。一つの好ましい実施形態では、より高感度な判定結果を得るために、核酸増幅反応において特定塩基配列の核酸プライマーを含む核酸プライマーセットを用いるのがよい。
[核酸プライマーセット]
本発明においてSARS-CoV-2を検出するために用いる、前記(1)に記載の核酸プライマーセットは、後述の核酸プローブが複合体を形成できるSARS-CoV-2由来の核酸断片を増幅し得るものであれば、特に限定されない。より高感度な判定結果が得られ易いという観点から、核酸プライマーセットは以下のような核酸プライマー(A)及び核酸プライマー(B)を含むことが好ましい:
(A)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー;
(B)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー。
本明細書において、配列番号1および配列番号2は、SARS-CoV-2のRNA配列の一部を逆転写しDNAとしたものに相当する塩基配列である。本発明は、これらの配列番号1又は2に示される塩基配列が対応するSARS-CoV-2 ゲノムRNA領域を標的配列とすることで、融解曲線解析等においても高感度なSARS-CoV-2の特異的検出が可能になるという新たな知見を見出したことに基づく。従って、本発明に用いる核酸プライマーセットは、配列番号1又は2に示される領域の一部又は全部を増幅できるものであることが好ましい。
なお、SARS-CoV-2の塩基配列は株によって僅かに(例えば、1又は数個の塩基において)塩基配列が異なる場合があることが知られている。本発明は、このように1又は数個の塩基が異なるSARS-CoV-2のゲノム配列に基づいて、上記(A)又は(B)に記載の核酸プライマーを設計することもできる。従って、本発明の上記(A)又は(B)に規定される核酸プライマーは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列からなる核酸プライマーであり得る。より特異性の高い核酸増幅反応が期待できるという観点から、好ましくは、核酸プライマーの塩基配列は、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列と93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、とりわけ好ましくは100%の同一性を示す塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなる核酸プライマーである。
上記(A)及び(B)に記載の核酸プライマーからなる核酸プライマーセットによって増幅される塩基配列は、配列番号1または2に示される塩基配列または該配列に相補的な塩基配列と90%以上同一な塩基配列を含む核酸断片であり得る。より好ましくは93%以上同一な塩基配列を含む核酸断片であり、さらに好ましくは95%以上同一な塩基配列を含む核酸断片である。
特定の実施形態では、上記(A)又は(B)に記載の核酸プライマーは、例えば、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる核酸プライマーであってもよい。ここで、1又は数個とは、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、更に好ましくは1~2個であり得る。このように配列番号1又は2で示される塩基配列と相同性の高い塩基配列を有する核酸プライマーを用いることで、より特異性の高い核酸増幅反応が可能となり得る。
特定の実施形態において、本発明の方法では、上記(A)に該当する核酸プライマーを複数用いてもよく、上記(B)に該当する核酸プライマーを複数用いてもよい。複数の(A)及び(B)に該当するプライマーを使用することで、例えば、配列番号1に相当するSARS-CoV-2のゲノムRNA領域と、配列番号2に相当するSARS-CoV-2のゲノムRNA領域の両方について、マルチプレックス法での核酸増幅反応を行うこともできる。簡便には、上記(A)に該当する核酸プライマーを1種類及び上記(B)に該当する核酸プライマーを1種類含有する核酸プライマーセットで核酸増幅反応を行う方法が好ましい。
一つの好ましい実施形態において、上記(A)で規定した核酸プライマーは、配列番号1に示される塩基配列の3番目~34番目に示される塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなる核酸プライマーである。この場合に組み合わせて用いることが好ましい上記(B)で規定した核酸プライマーは、配列番号1に示される塩基配列の111番目~140番目の塩基配列に相補的な塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなる核酸プライマーである。本発明では、上記(A)及び(B)に規定した塩基配列に対してそれぞれ相補的な塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなるプライマーの組み合わせも好適に使用され得る。このような核酸プライマーの組み合わせで核酸増幅産物を生成することにより、より良好にSARS-CoV-2を検出することが可能となる。
他の好ましい実施形態において、上記(A)で規定した核酸プライマーは、配列番号2に示される塩基配列の1番目~30番目に示される塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなる核酸プライマーである。この場合に組み合わせて用いることが好ましい上記(B)で規定した核酸プライマーは、配列番号2に示される塩基配列の141番目~170番目の塩基配列に相補的な塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなる核酸プライマーである。本発明では、上記(A)及び(B)に規定した塩基配列に対してそれぞれ相補的な塩基配列において連続する15~30塩基の塩基配列からなるプライマーの組み合わせも好適に使用され得る。このような核酸プライマーの組み合わせで核酸増幅産物を生成することによっても、良好にSARS-CoV-2を検出することが可能である。
上記(A)及び(B)で規定した核酸プライマーの長さは、少なくとも15塩基である限り特に限定されないが、例えば、15~30塩基、好ましくは16~28塩基、より好ましくは18~25塩基であり得る。このような長さの核酸プライマーを用いることで十分な核酸増幅反応を可能にしつつ、非特異的な増幅反応を抑えて高感度に特異的な核酸増幅産物を生成させることが可能となる。
特定の好ましい実施形態において、前記(A)に記載の核酸プライマーの具体例としては、配列番号3~5、9~11のいずれかで示される塩基配列からなる核酸プライマーを挙げることができる。更に特定の好ましい実施形態において、前記(B)に記載の核酸プライマーの具体例としては、配列番号6~8、12~14のいずれかで示される塩基配列からなる核酸プライマーを挙げることができる。とりわけ、これらの(A)及び(B)に記載の核酸プライマーの組み合わせを含む核酸プライマーセットを用いることにより、より一層高感度にSARS-CoV-2を検出することが可能である。
[逆転写反応]
一つの実施態様において、本発明の方法は、前記のような核酸プライマーを用いて、RNAからDNAを合成する逆転写反応を行うことを含む。逆転写反応を行うにあたっては、核酸プライマーの他にRNAからDNAを合成するための逆転写活性を有する酵素が用いられる。逆転写活性を有する酵素としては、逆転写酵素、なかでもウイルス性逆転写酵素を用いることが好ましく、その由来としてはMMLV、AMV、HIV、EIAVが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。また、逆転写酵素を用いる代わりに、逆転写活性と核酸増幅活性の双方を有する酵素を用いることも可能である。このような酵素の例としてはTthポリメラーゼが挙げられる。
逆転写反応の条件は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば30~60℃で0秒~20分間加温することが挙げられる。より好ましくは37~50℃で30秒~5分間加温することである。
[核酸増幅反応]
一つの実施態様において、本発明の方法は、前記のような核酸プライマーセットを用いて核酸増幅反応を行い、核酸増幅産物を生成させる。核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、臨床診断、食品衛生検査、環境検査等の分野においても広く用いられている。そのような核酸増幅法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて方法を選択することができる。本発明で行う核酸増幅法はRT-PCR法が好ましいが、これに限定されない。
[PCR反応]
PCR反応は、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応であり、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの乖離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって標的核酸を増幅する。DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENTやその変異体が挙げられる。より簡便、高感度にSARS-CoV-2を検出することを可能にできるという観点から、本発明では、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
PCR反応の条件は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、最初の熱変形工程が80~100℃で0秒~5分、繰り返しの熱変形工程が80~100℃で0.5~300秒、アニーリンクが35~80℃で1~300秒、伸長反応工程が35~85℃で1~300秒程度行い、この繰り返しを30~70回繰り返すことが好ましい。ここで繰り返し行うサイクルの温度及び時間は、1~数サイクル毎に変化させてもよい。
[ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ]
本発明で用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましいが、これに限定されない。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、特に制限されないが、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼであり、より好ましくは、パイロコッカス(Pyrococcus)属およびサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌に由来するDNAポリメラーゼが挙げられる。また、本発明には、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体も含まれる。DNAポリメラーゼの変異体には、ポリメラーゼ活性の増強、エキソヌクレアーゼ活性の欠損、基質特異性の調整等を目的とした変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。
サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。好ましくは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)が、伸長性や熱安定性に優れているという観点から、本発明においてとりわけ好適に用いることができる。
これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo社)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs社)、Deep Vent(New England Biolabs社)、Tgo(Roche社)、Pwo(Roche社)などが挙げられ、そのいずれもが本発明に用いられ得る。
[KOD由来のDNAポリメラーゼ]
本明細書において、KOD由来のDNAポリメラーゼ(KOD DNAポリメラーゼともいう)とは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、天然由来のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸を置換、欠失、及び/又は付加することにより3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD由来DNAポリメラーゼ等)をいう。一つの好ましい実施形態において、本発明は、このようなKOD由来のDNAポリメラーゼを使用して核酸増幅反応を行う。KOD DNAポリメラーゼは、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼであるTaq DNAポリメラーゼに比べて、正確性、増幅効率、伸長性、クルードサンプル耐性に優れている。本発明では、このようなKOD DNAポリメラーゼを使用することで、後述の実施例に示すように、簡便でありながら高感度でSARS-CoV-2を検出することが可能となる。
[増幅産物を検出する工程]
本発明の前記方法では、工程(3)として、前記工程(2)で得られた増幅産物を検出する工程を包含する。この検出する工程の態様は特に限定されず、当該分野で公知の任意の方法で実施することができる。
一つの実施形態において、前記工程(3)は、以下の(3-1)~(3-2)の工程:
(3-1)前記工程(2)によって得られた核酸増幅産物と核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程;及び
(3-2)前記工程(3-1)で得られた複合体を検出する工程。
を包含することを特徴とする。好ましい本実施態様では、本発明はSARS-CoV-2の検出において、高感度な判定結果を得るために、前記(2)工程によって得られた核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる核酸プローブを用いることを一つの特徴とする。
[核酸プローブ]
一つの実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2由来の核酸増幅産物と特異的に反応して複合体を形成しうる特定の核酸プローブを使用する。本発明の核酸プローブは、以下の特徴を有するSARS-CoV-2を検出するための核酸プローブであり得る:
(I)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;及び
(II)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
このような特徴を有する核酸プローブを用いることで、例えば、融解曲線解析においても高感度にSARS-CoV-2を検出することが可能になる。
本発明の核酸プローブの塩基配列は、前記(A)及び(B)の核酸プライマーにより増幅され得る配列番号1及び/又は配列番号2の塩基配列と相同性が比較的高いことが望ましい。例えば、本発明に用いる核酸プローブは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなるものであり得る。好ましくは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列と90%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブであり得る。特に好ましくは、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と100%同一の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブである。
特定の実施形態では、核酸プローブは、例えば、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブであり得る。ここで、1又は数個とは、例えば、1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、更に好ましくは1~2個であり得る。このように配列番号1又は2で示される塩基配列と相同性の高い塩基配列を有する核酸プローブを用いることで、高感度にSARS-CoV-2を検出することが可能となる。
本発明の核酸プローブは、配列番号1若しくは配列番号2の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列に相同性の高い配列を有するものであれば特に限定されないが、後述するグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識した核酸プローブとする場合には、当該色素で標識される少なくとも一つの末端塩基がシトシンであることが好ましい。
一つの好ましい実施形態において、本発明の核酸プローブは、配列番号1に示される塩基配列の20番目~50番目に示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブである。このような核酸プローブと核酸増幅産物とを反応させることで、より良好にSARS-CoV-2を検出することが可能となる。
他の好ましい実施形態において、本発明の核酸プローブは、配列番号2に示される塩基配列の110番目~140番目に示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列からなる核酸プローブである。このような核酸プローブと核酸増幅産物とを反応させることで、より良好にSARS-CoV-2を出することが可能となる。
上記(I)及び(II)で規定した核酸プローブの長さは、10塩基以上である限り特に限定されないが、例えば、15塩基以上、好ましくは15~24塩基、より好ましくは17~19塩基であり得る。このような長さの核酸プローブを用いることで、より高感度にSARS-CoV-2を高感度に検出することが可能である。
特定の好ましい実施形態において、本発明に用いる核酸プローブの具体例としては、配列番号15~24のいずれかで示される塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸プローブを挙げることができる。このような特定の塩基配列を有する核酸プローブを用いることにより、より一層高感度にSARS-CoV-2を検出することが可能になる。
上記の核酸プローブは、5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されていることを特徴とする。一つの実施形態において、本発明の核酸プローブは、該核酸プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光又は蛍光を生じるように標識されていることが好ましく、消光を生じるように標識されていることがより好ましい。標識物質には特に制限はないが、蛍光物質を用いる蛍光色素標識であることがより好ましい。
蛍光標識としては特に標的の核酸増幅産物とハイブリダイズして複合体を形成することにより蛍光を生じる蛍光物質又は消光を生じる蛍光物質のいずれであってもよいが、好ましくは標的の核酸増幅産物とハイブリダイズした際に消光を生じる蛍光物質であり、特に好ましくは、標的の核酸増幅産物とハイブリダイズにおいてグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素(例えば、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素)である。具体的には、フルオロセイン及びその誘導体(例えば、フルオロセインイソチオシアネート(FITC))、ローダミン及びその誘導体(例えば、5-カルボキシローダミン6G(GR6G)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシローダミン、x-ローダミン、スルホローダミン101酸クロリド)、並びにBODIPY及びその誘導体(例えば、BODIPY-FL、BODIPY-FL/C3、BODIPY-FL/C6、BODIPY-5-FAM、BODIPY-TMR、BODIPY-TR、BODIPY-R6G、BODIPY-564、BODIPY-581、BODIPY-591、BODIPY-630、BODIPY-650、BODIPY-665)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素として、例えば、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素を挙げることができ、本発明にはこれらの蛍光消光色素が好適に使用され得る。
特定の好ましい実施形態では、蛍光消光色素で標識されている末端塩基がシトシンである核酸プローブがより好ましい。
このようなオリゴヌクレオチドプローブは、増幅産物にハイブリダイズした際に、増幅産物中のグアニン塩基と塩基対を形成して相互作用することで消光できるため、非常に簡便に反応液の蛍光強度の変化を測定することができる。
なお、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基と増幅産物中のグアニン塩基が塩基対を形成しなくとも、それらの塩基同士の距離が近ければ蛍光は消光できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。即ち、該プローブがハイブリダイズした際に、該プローブのシトシン塩基に対して、増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(シトシン塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
更に特定の実施態様では、蛍光消光色素で標識されている末端塩基がシトシンでない核酸プローブであっても、反応液の蛍光強度の変化を測定できる。例えば、詳細は特許第5354216号公報に記載があり、本発明も該技術を参照できる。例えば、該プローブがハイブリダイズした際に、蛍光消光色素が標識されている末端塩基に対して、増幅産物中のグアニン塩基が例えば1~3塩基の範囲内に存在すれば消光できる(末端塩基と塩基対を形成する塩基を1とする)。
[複合体を検出する工程]
本発明の前記増幅産物を検出する工程において、核酸増幅産物と核酸プローブとをハイブリダイズさせて形成せしめた複合体を検出する(3-2)の工程の態様は特に限定されず、当該分野で公知の任意の方法で実施することができる。
一つの実施形態において、前記工程(3)は、以下の工程(3-a)~(3-c)の少なくともひとつを含む態様であり得る:
(3-a)得られるうる増幅産物に該核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
(3-b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
(3-c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に該核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定する工程。
前記(3-a)~(3-c)のような工程によれば、簡便かつ高感度に、核酸増幅産物と核酸プローブとで形成される複合体の生成を検出することが可能となり得る。本発明の実施形態は、より迅速に核酸増幅産物の検出を行う観点から、(3-b)又は(3-c)による検出工程が好ましく、特に(3-c)の工程、すなわち融解曲線解析法による方法が好ましい。
[(3-a)核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニター]
核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターすることで、試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、増幅率に基づいて試料中に含まれる標的核酸の定量も可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする。核酸増幅反応の任意の時点で、反応液の蛍光強度を測定する。試料中にSARS-CoV-2のRNAが含まれている場合、RNAが逆転写され増幅した核酸量に依存してオリゴヌクレオチドプローブが増幅核酸にハイブリダイズして蛍光強度が増加(あるいは減少)する。取得した蛍光強度を時間(PCR反応ではサイクル数)に対してプロットすることで、核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターできる。
[(3-b)核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニター]
核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターすることで、試料中に含まれる標的核酸を迅速に検出することができる。さらに、エンドポイントでの蛍光強度等を比較することで標的核酸の定量も可能である。
例えば、蛍光消光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液の蛍光強度を測定することで、核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする。核酸増幅反応終了後に、反応液の蛍光強度を測定する。反応後の反応液の蛍光強度を反応前の反応液の蛍光強度と比較することで、標的核酸の増幅の有無を確認できる。あるいは、反応後の反応液の反応強度をコントロール反応液の反応強度と比較することでも試料中に含まれる標的核酸の有無を確認することができる。コントロール反応液とは、測定したい試料の代わりに陰性と判明している試料あるいは陽性と判明している試料を加えた反応液である。
核酸増幅反応の進行は、一般的にリアルタイムでモニターすることが好ましいが、検出工程をより簡便にする等の目的では、エンドポイントでモニターすることが好ましい。
[(3-c)蛍光強度の温度依存性を測定]
蛍光強度の温度依存性を測定するとは、具体的には、反応液の温度を低温から高温に変化させながら、各温度における蛍光強度を測定することである。得られた蛍光強度について温度で一次微分することにより、使用するオリゴヌクレオチドプローブに固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。また、蛍光強度は目的に合わせて蛍光消光率等に変換してもよい。
Tm値を用いた標的核酸の検出、分析等を融解曲線分析という。一般的に、Tm値は、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖である割合が等しいときの温度をいう。Tm値は、塩基配列に固有の値である。
[検体試料]
本発明において使用できる検体試料はSARS-CoV-2を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、SARS-CoV-2への感染が疑われる被験体から採取した、口腔内擦過物、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、喀痰、唾液、気管吸引液、気管支洗浄液、肺胞洗浄液などが挙げられるが、これらに限定されない。生体試料を測定対象の検体試料とする場合、各生体試料に応じて、特に制限はされないが、希釈や懸濁、遠心などの前処理もしくは核酸抽出を行ってもよい。
検体試料の採取方法、調製方法等は、特に制限されず、試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。特定の好ましい実施形態では、本発明に用いる検体試料は、生体から採取した検体から核酸を抽出したものである。
核酸抽出の方法は、特に制限されないが、検体の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。核酸抽出には、例えば、各メーカーから販売されているキット等を使用してもよい。
[SARS-CoV-2]
SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2とも呼ばれる、Betacoronavirus属の一種)は、2019年12月に中国湖北省武漢市に初めて確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである。これにて人に対して病原性をもつコロナウイルスは7種類となり、その内4種(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)は一般の風邪の原因の10~15%を占め、多くは軽症である。他の2種類のウイルス(SARS-CoV(2002)、MERS-CoV(2012))は, SARS及びMERSを引き起こし、MERSは中東地域で散発的に発生が続いている。そして、SARS-CoV-2によって引き起こされるCOVID-19は、2019年12月以降、パンデミック(世界的大流行)をもたらしている。
COVID-19の症状としては、無症状から上気道炎、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等、幅広い病態を呈する。特に高齢者や基礎疾患のある方が感染すると重症化するリスクが高く、これまでに多くの死者が出ている。一方、罹患しても約8割の方は軽症で経過し、治癒する例も多いことが報告されている。但し、このような無症状感染者あるいは軽症感染者は、感染に気付かないこともあり、感染源となるおそれがある。また、インフルエンザに比べて呼吸器検体における病原体の数が少ないこと(1/100~1/1,000)などから検査診断が困難である。このような理由から、SARS-CoV-2を簡便、迅速、高感度に検出ができる検査方法が、今日強く求められている。本発明では、SARS-CoV-2を特異的に検出することが可能である。
[SARS-CoV-2を検出するための試薬]
本発明の別の実施態様として、試料中に含まれ得るSARS-CoV-2を検出するための試薬が挙げられる。試薬には、前述で説明した本発明の核酸プローブに加えて、逆転写反応(RT)、核酸増幅反応、検出に必要な成分が少なくとも含まれる。必要な成分は、それぞれ公知のものを用いることができる。例えば、逆転写用核酸プライマー、PCR用核酸プライマーセット、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、マグネシウム塩等の無機塩類を少なくとも含むことが好ましい。逆転写用核酸プライマーを兼ねたPCR用核酸プライマーセット及び検出用核酸プローブは、SARS-CoV-2の複数領域を増幅させるために複数セットを含むことができる。各成分の濃度は適宜調整できるが、例えば、核酸プローブは0.01~1μMが好ましく、0.02~0.5μMがより好ましい。核酸プライマーは0.01~10μMが好ましい。逆転写酵素は0.01~10U/μLが好ましく、0.02~2U/μLがより好ましい。DNAポリメラーゼは0.01~1U/uLが好ましく、0.02~0.5U/uLがより好ましい。デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は0.02~1mMが好ましく、0.1~0.5mMがより好ましい。マグネシウム塩等の無機塩類は0.1~10mMが好ましく、1~5mMがより好ましい。
さらに、非特異増幅の抑制や反応促進を目的として、当該技術分野で知られる添加物等を加えてもよい。非特異増幅の抑制を目的とする添加物として、公知の抗DNAポリメラーゼ抗体やリン酸等を用いてもよい。反応促進を目的とする添加物として、ウシ血清アルブミン(BSA)、プロテアーゼインヒビター、シングルストランド結合タンパク質(SSB)、T4遺伝子32タンパク質、tRNA、硫黄または酢酸含有化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、ベタイン、エクトイン、トレハロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、酢酸テトラメチルアンモニウム(TMAA)、ポリエチレングリコール、カルニチン、トリトン(Triton)、ツイーン(Tween20)、ノニデットP40などが挙げられる。また、本発明では、ターゲットであるSARS-CoV-2のゲノムRNAの分解を低減させるため、RNA分解酵素の阻害剤または抑制剤を添加してもよい。例えば、RNaseインヒビターが挙げられる。本発明では、これらの添加物を1種類以上組み合わせて使用してもよいが、これらに限定されない。
[SARS-CoV-2を検出するためのキット]
本発明の別の実施態様として、試料中に含まれ得るSARS-CoV-2を検出するためのキットが挙げられる。本発明のキットは、前述で説明した本発明の核酸プローブ、及び/又はこれらを含む試薬を含み、SARS-CoV-2を検出できるように構成されていれば特に限定されない。例えば、本発明のキットは、被検出対象の存在を検出又は定量することができる遺伝子検査試薬及び/又は使用方法等を説明する使用説明書等を任意に含むことができる。例えば、前記核酸プローブを同じ容器に封入したもの又は別々の容器に封入したものを、例えば一つの包装体に梱包し、当該キットの使用方法に関する情報を含む態様で提供することができる。また、陽性コントロール液や陰性コントロール液を含めることもできる。
以下、本発明の実施例に基づき具体的に説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:SARS-CoV-2由来cDNAの生成〕
(1)試料
SARS-CoV-2のRNAの一部塩基配列を有する陽性コントロールRNA(100000コピー/μL)を用いた。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件により逆転写反応を行った。逆転写反応にはGeneAmp PCR System(Applied Biosystems)を使用した。
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。
5XRT Buffer(ReverTra Ace(R)qPCR RT Kit、東洋紡製)4μL
RT Enzyme Mix(ReverTra Ace(R)qPCR RT Kit、東洋紡製)1μL
10μM 配列番号7または配列番号13で示される核酸プライマー 1.0μL
試料2μL
逆転写反応
37℃・15分
98℃・5分
(3)結果
配列番号7または13で示される核酸プライマーを用いて逆転写反応を行うことで、SARS-CoV-2由来cDNAが生成された。
〔実施例2:SARS-CoV-2由来cDNAの検出〕
(1)試料
実施例1で調製したcDNAを試料として用いた。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりSARS-CoV-2を検出した。核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。判定は、融解曲線解析にてピークが得られた場合に陽性と判定した。
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 4μL
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製) 3.8μL
10μM 配列番号3、4、9、10のいずれかで示される核酸プライマー 0.5μL
100μM 配列番号6、7、12、13のいずれかで示される核酸プライマー 0.5μL
10μM 配列番号15または22で示される核酸プローブ(3’末端をBODIPY-FLで標識) 0.3μL
試料 4μL
本実施例における核酸プライマーと核酸プローブの組み合わせは表1に記載した。
Figure 2022021904000001
核酸増幅および融解曲線解析
94℃・30秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
(3)結果
図1~図8はそれぞれ組合せ1~8で示した核酸プライマーと核酸プローブの組み合わせを用いて、上記の条件で核酸増幅検出を行い、その検出結果を表した図である。いずれの組み合わせでもSARS-CoV-2由来のcDNAが検出されており、前記核酸プローブがSARS-CoV-2の検出に有用であり、種々のプライマーの組み合わせで検出できることが示されている。
〔実施例3:SARS-CoV-2RNAの検出〕
(1)試料の調製
実施例1で使用した陽性コントロールRNAを精製水で希釈し、20コピー/μLとなるように調製したものを試料とした。
(2)逆転写、核酸増幅および融解曲線解析
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりSARS-CoV-2を検出した。逆転写、核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。判定は、融解曲線解析にてピークが得られた場合に陽性と判定した。各水準をn=4で測定を行い、陽性数÷4で検出率を算出した。
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)4μL
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)2μL
IC Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)1μL
100μM 配列番号3、4、9のいずれかで示される核酸プライマー 0.05μL
100μM 配列番号6、7、12のいずれかで示される核酸プライマー 0.3μL
100μM 配列番号16、18、19、22、23のいずれかで示される核酸プローブ(配列番号16、22、23で示される核酸プローブは3’末端をBODIPY-FLで標識。配列番号18、19で示される核酸プローブは5’末端をBODIPY-FLで標識) 0.02μL
5U/μL 逆転写酵素(東洋紡製) 0.5μL
試料4μL
本実施例における核酸プライマーと核酸プローブの組み合わせは表2に記載した。
Figure 2022021904000002
逆転写、核酸増幅および融解曲線解析
42℃・2分
97℃・15秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
(3)結果
下記の表3は上記の条件で核酸増幅検出を行い、検出率をまとめた表である。本実施例により、表2に記載の核酸プローブはいずれも、SARS-CoV-2RNAの検出が可能であり、種々のプライマーの組み合わせで検出できることが示された。
Figure 2022021904000003
〔実施例4:SARS-CoV-2RNAの検出〕
(1)試料の調製
前記陽性コントロールRNAを精製水で希釈し、100コピー/μLとなるように調製したものを試料とした。また、陰性対照として精製水を試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
上記試料をそれぞれ下記試薬に添加して、下記条件によりSARS-CoV-2を検出した。逆転写、核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡製GENECUBE(登録商標)を使用した。判定は、融解曲線解析にてピークが得られた場合に陽性と判定した。
試薬
以下の試薬を含む溶液を実施例として調製した。
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)4μL
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)2μL
IC Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)1μL
100μM 配列番号10で示される核酸プライマー 0.05μL
100μM 配列番号12又は13で示される核酸プライマー 0.3μL
100μM 配列番号22で示される核酸プローブ(3’末端をBODIPY-FLで標識) 0.02μL
5U/μL 逆転写酵素(東洋紡製) 0.5μL
試料4μL
逆転写、核酸増幅および融解曲線解析
42℃・2分
97℃・15秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
58℃・3秒
63℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
40℃~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
(3)結果
配列番号10で示される核酸プライマーと配列番号12で示される核酸プライマーと配列番号22で示される核酸プローブの組合せと、配列番号10で示される核酸プライマーと配列番号13で示される核酸プライマーと配列番号22で示される核酸プローブの組合せは、いずれもRNAを検出し、精製水を検出しなかった。従って、本実施例で示した核酸プローブがSARS-CoV-2RNAの検出が可能であり、種々のプライマーの組合せで検出できることが示された。
本発明の核酸プライマーセット及び/又は核酸プローブを使用することで簡便、高感度に試料中に含まれ得るSARS-CoV-2を検出できるようになった。従って、本発明は、COVID-19の臨床診断等などにおいて大きく貢献することができる。

Claims (25)

  1. 以下の特徴を有する、SARS-CoV-2を検出するための核酸プローブ:
    (I)配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列と85%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列を含む;
    (II)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
  2. 前記標識が蛍光色素標識である、請求項1に記載の核酸プローブ。
  3. 前記核酸プローブが、該核酸プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素で標識されている、請求項1又は2に記載の核酸プローブ。
  4. グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。請求項1~3のいずれかに記載の核酸プローブ。
  5. 前記(I)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号1若しくは配列番号2で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも10塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、若しくは付加した塩基配列からなる、請求項1~4のいずれかに記載の核酸プローブ。
  6. 前記(I)に記載の少なくとも10塩基以上の塩基配列が、配列番号15~24のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる、請求項1~5のいずれかに記載の核酸プローブ。
  7. 前記標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1~6のいずれかに記載の核酸プローブ。
  8. 前記標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G,TAMRA,ローダミン6G,テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1~7のいずれかに記載の核酸プローブ。
  9. 標識されている末端塩基がシトシンである、請求項1~8のいずれかに記載の核酸プローブ。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載の核酸プローブを用いて、試料中のSARS-CoV-2を検出する方法。
  11. 少なくとも以下の(1)~(3)の工程を含むことを特徴とする、請求項10に記載のSARS-CoV-2の検出方法。
    (1)逆転写活性を有する酵素により、試料中のSARS-CoV-2由来のRNAから逆転写によってDNAを合成する工程、
    (2)少なくとも1種類の核酸プライマー(A)と、該プライマー(A)の伸長産物の一部と相補的な塩基配列を有する少なくとも1種類の核酸プライマー(B)とから構成される核酸プライマーセットを用いて、配列番号1若しくは2に示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列の一部又は全部を含む核酸断片を増幅する工程、
    (3)前記工程(2)で得られうる核酸断片のいずれか一方の鎖と、請求項1~9のいずれかに記載の核酸プローブとをハイブリダイズさせて複合体を形成せしめ、該複合体を検出する工程。
  12. 工程(3)が以下の工程(3-a)~(3-c)の少なくともひとつを含む、請求項11に記載の検出方法。
    (3-a)得られるうる増幅産物に請求項1~9のいずれかに記載の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をリアルタイムでモニターする工程。
    (3-b)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に請求項1~9のいずれかに記載の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定することで、前記核酸増幅反応の進行をエンドポイントでモニターする工程。
    (3-c)前記工程(2)の終了後に、得られうる増幅産物に請求項1~9のいずれかに記載の核酸プローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度の温度依存性を測定する工程。
  13. 前記工程(2)の核酸増幅反応がPCRである、請求項11又は12に記載の検出方法。
  14. 前記工程(2)の核酸増幅反応で用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである請求項11~13のいずれかに記載の検出方法。
  15. ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、請求項14に記載の検出方法。
  16. 前記核酸プライマーセットが、少なくとも以下の核酸プライマー(A)及び核酸プライマー(B)を含む、請求項11~15のいずれかに記載の検出方法:
    (A)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー;
    (B)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー。
  17. 前記核酸プライマーセットが、以下のいずれかの核酸プライマーセットを含む、請求項11~16のいずれかに記載の検出方法:
    (A)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(a);
    (A)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(b);
    (A)配列番号2における1~30番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における141~170に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(c);又は
    (A)配列番号2における141~170番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における1~30に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(d)。
  18. 前記核酸プライマー(A)が、配列番号3~5、9~11のいずれかで示される塩基配列からなる、請求項11~17のいずれかに記載の検出方法。
  19. 前記核酸プライマー(B)が、配列番号6~8、12~14のいずれかで示される塩基配列からなる、請求項11~18のいずれかに記載の検出方法。
  20. 以下の核酸プライマー(A)及び核酸プライマー(B)を含む、SARS-CoV-2を検出するための核酸プライマーセット:
    (A)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー;
    (B)配列番号1又は配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列よりなる核酸プライマー。
  21. 前記核酸プライマーセットが、以下のいずれかの核酸プライマーセットを含む、請求項20に記載の核酸プライマーセット:
    (A)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(a);
    (A)配列番号1における111~140番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号1における3~34番目に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(b);
    (A)配列番号2における1~30番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における141~170に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(c);又は
    (A)配列番号2における141~170番目に相当する塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマー及び(B)配列番号2における1~30に相当する塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列において連続する少なくとも15塩基よりなる塩基配列からなる核酸プライマーを含む核酸プライマーセット(d)。
  22. 前記核酸プライマー(A)が、配列番号3~5、9~11のいずれかで示される塩基配列からなる、請求項20又は21に記載の核酸プライマーセット。
  23. 前記核酸プライマー(B)が、配列番号6~8、12~14のいずれかで示される塩基配列からなる、請求項20~22のいずれかに記載の核酸プライマーセット。
  24. 請求項20~23のいずれかに記載の核酸プライマーセットおよび/または請求項1~9のいずれかに記載の核酸プローブを含む、SARS-CoV-2を検出するための試薬。
  25. 請求項24に記載の試薬を含む、SARS-CoV-2を検出するためのキット。
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