特定の実施形態が本明細書において示され記載されているが、そのような実施形態はほんの一例として提供されていることが、当業者には明らかであろう。当業者は今や多数の変形形態、変更および置換に想到するであろう。本明細書において記載されている実施形態の種々の代替物が、本明細書において記載されている方法を実践する際に用いられ得ることを理解すべきである。添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がそれによって包括されることが意図されている。
別段の定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書において参照されるすべての特許および刊行物は、参照により組み込まれる。
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数の参照物を含む。
用語「有効量」または「治療有効量」は、以下で定義する通りの疾患処置を含むがこれに限定されない目的とする用途を達成するために十分な、本明細書において記載されている化合物の量を指す。治療有効量は、目的とする用途(in vitroまたはin vivo)、または処置されている対象および疾患状態、例えば、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式等に応じて変動してよく、当業者によって容易に決定され得る。当該用語は、標的細胞における特定の応答、例えば、血小板粘着の低減および/または細胞移動を誘発することになる用量にも当てはまる。具体的な用量は、選択された特定の化合物、それが他の化合物と組み合わせて投与されるか否かにかかわらず準拠すべき投薬レジメン、投与時期、それが投与される組織、およびそれを運搬する物理的送達系に応じて変動することになる。
用語「処置」、「処置すること」、「緩和すること」および「寛解すること」は、本明細書において交換可能に使用される。これらの用語は、治療的利益および/または予防的利益を含むがこれらに限定されない有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益は、処置されている基礎的障害の根絶または寛解を意味している。また、治療的利益は、患者が依然として基礎的障害を患っているかもしれないにもかかわらず、患者において改善が観測されるような基礎的障害に関連する生理的症状のうちの1つまたは複数の根絶または寛解で実現される。予防的利益のために、組成物は、特定の疾患を発病するリスクがある患者に、あるいは疾患の生理的症状のうちの1つまたは複数を報告している患者に、この疾患の診断が為されていないかもしれなくても、投与され得る。
「治療効果」は、本明細書において使用される場合、上述した通りの治療的利益および/または予防的利益を包含する。予防効果は、疾患または状態の出現を遅延させるまたは排除すること、疾患または状態の症状の発症を遅延させるまたは排除すること、疾患または状態の進行を減速させる、停止させるまたは逆転させること、あるいはそれらの任意の組合せを含む。
用語「共投与」、「と組み合わせて投与される」、およびそれらの文法的等価物は、本明細書において使用される場合、両方の作用物質および/またはそれらの代謝物が同時に動物中に存在するような、動物への2つまたはそれよりも多い作用物質の投与を包含する。共投与は、別個の組成物での同時投与、別個の組成物での異なる時間における投与、または両方の作用物質が存在する組成物での投与を含む。
「薬学的に許容される塩」は、概して所望の薬理活性を有するとみなされており、安全、非毒性であるとみなされており、獣医学およびヒトの薬学への応用に許容される、塩組成物を意味する。薬学的に許容される塩は、当該技術分野において周知である多様な有機および無機対イオンから誘導され得、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等;分子が塩基性官能基を含有する場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等の有機酸または無機酸の塩等を含む。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸と形成され得る。塩が誘導され得る無機酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等を含む。塩が誘導され得る有機酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等を含む。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基と形成され得る。塩が誘導され得る無機塩基は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等を含む。塩が誘導され得る有機塩基は、例えば、第1級、第2級および第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等、具体的には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミン等を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩から選択される。
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される添加剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を含む。そのような媒体および作用物質の薬学的活性物質への使用は、当該技術分野において周知である。いずれかの従来の媒体または作用物質が活性原料と不適合である場合を除いて、本明細書において記載されている治療用組成物におけるその使用が企図されている。補助的な活性原料を組成物に組み込むこともできる。
用語「アンタゴニスト」および「阻害剤」は、交換可能に使用され、標的タンパク質の活性または発現いずれを阻害することによるものかにかかわらず、標的タンパク質の生物学的機能を阻害する能力を有する化合物を指す。したがって、用語「アンタゴニスト」および「阻害剤」は、標的タンパク質の生物学的役割の文脈で定義される。本明細書における好ましいアンタゴニストは、標的と特異的に相互作用する(例えば、結合する)が、標的タンパク質がそのメンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーと相互作用することによって標的タンパク質の生物学的活性を阻害する化合物も、この定義内に特に含まれる。アンタゴニストによって阻害される好ましい生物学的活性は、腫瘍の発生、成長もしくは広がり、または自己免疫疾患において現れるような望ましくない免疫応答に関連する。
用語「アゴニスト」は、本明細書において使用される場合、標的タンパク質の活性または発現いずれを阻害することによるものかにかかわらず、標的タンパク質の生物学的機能を開始するまたは強化する能力を有する化合物を指す。したがって、用語「アゴニスト」は、標的ポリペプチドの生物学的役割の文脈で定義される。本明細書における好ましいアゴニストは、標的と特異的に相互作用する(例えば、結合する)が、標的ポリペプチドがそのメンバーであるシグナル伝達経路の他のメンバーと相互作用することによって標的ポリペプチドの生物学的活性を開始するまたは強化する化合物も、この定義内に特に含まれる。
本明細書において使用される場合、「作用物質」または「生物学的活性剤」は、生物学的、薬学的もしくは化学的化合物または他の部分を指す。非限定的な例は、単純もしくは複雑な有機もしくは無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、または化学療法化合物を含む。種々の化合物、例えば、小分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに種々のコア構造に基づく合成有機化合物を合成することができる。加えて、植物または動物抽出物等、種々の天然源は、スクリーニングのための化合物を提供することができる。当業者ならば、本明細書において記載されている作用物質の構造的性質の限界を容易に認識することができる。
「シグナル伝達」は、刺激または阻害シグナルが細胞内におよび細胞内で送信されて、細胞内応答を引き出すプロセスである。シグナル伝達経路のモジュレーターは、同じ特異的なシグナル伝達経路にマッピングされた1つまたは複数の細胞タンパク質の活性を変調する化合物を指す。モジュレーターは、シグナル伝達分子の活性を増強(アゴニスト)または抑制(アンタゴニスト)し得る。
用語「細胞増殖」は、分裂の結果として細胞数が変化した現象を指す。この用語は、増殖シグナルと一致して細胞形態学が変化した(例えば、サイズが増大した)細胞成長も包含する。
用語「選択的阻害」または「選択的に阻害する」は、生物学的活性剤に適用される場合、標的との直接または対話(interact)相互作用を介して、オフターゲットシグナル伝達活性と比較して標的シグナル伝達活性を選択的に低減させる作用物質の能力を指す。
「対象」は、動物、例えばヒト等の哺乳動物を指す。本明細書において記載されている方法は、ヒトの治療学的および獣医学的応用の両方において有用となり得る。一部の実施形態では、患者は哺乳動物であり、一部の実施形態では、患者はヒトである。
「プロドラッグ」は、生理的条件下でまたは加溶媒分解によって、本明細書において記載されている生物学的活性化合物に変換され得る化合物を示すことを意図される。故に、用語「プロドラッグ」は、薬学的に許容される、生物学的活性化合物の前駆体を指す。プロドラッグは、対象に投与されるときは不活性であり得るが、例えば加水分解によって活性化合物にin vivoで変換される。プロドラッグ化合物は、多くの場合、哺乳類の生物において、溶解性、組織適合性または遅延放出という利点を提供する(例えば、Bundgard, H.、Design of Prodrugs(1985年)、7〜9、21〜24頁(Elsevier、Amsterdam)を参照)。プロドラッグの考察は、Higuchi, T.ら、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S. Symposium Series、14巻、およびBioreversible Carriers in Drug Design、編Edward B. Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年において提供されており、これらはいずれも、参照により全体が本明細書に組み込まれる。用語「プロドラッグ」は、そのようなプロドラッグが哺乳類対象に投与されると活性化合物をin vivoで放出する、任意の共有結合した担体も含むことを意図される。活性化合物のプロドラッグは、本明細書において記載されている通り、慣用的操作またはin vivoのいずれかで修飾が開裂されて、親活性化合物となるような手法で、活性化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製され得る。プロドラッグは、活性化合物のプロドラッグが哺乳類対象に投与されると、開裂して、遊離ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基をそれぞれ形成する任意の基と、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が結合する、化合物を含む。プロドラッグの例は、アルコールまたはアセトアミドのアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体、活性化合物中のアミン官能基のホルムアミドおよびベンズアミド誘導体等を含むがこれらに限定されない。
用語「in vitro」は、対象の体外で起こる事象を指す。例えば、in vitroアッセイは、対象アッセイの外で実行する任意のアッセイを包含する。in vitroアッセイは、生存または死滅した細胞が用いられる細胞ベースのアッセイを包含する。in vitroアッセイは、無傷細胞が用いられない無細胞アッセイも包含する。
別段の記載がない限り、本明細書において描写されている構造は、1つまたは複数の同位体富化された原子の存在だけが異なる化合物も含むことを意図される。例えば、1個または複数の水素が、重水素または三重水素によって置き換えられている、本明細書において記載されている通りの化合物、あるいは、13C−または14C−富化炭素同位体による1個または複数の炭素原子の置き換え。さらに、より重い同位体、特に重水素(2HまたはD)による置換は、より大きい代謝安定性、in vivo半減期の増大、必要投薬量の減少または治療指数の改善から生じるある特定の治療上の利点を供与し得る。この文脈における重水素は、式(I)の化合物の置換基とみなされることが理解される。
本明細書において記載されている化合物は、そのような化合物を構成する原子のうちの1つまたは複数において、不自然な割合の原子同位体を含有してもよい。例えば、化合物は、例えば三重水素(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)等の放射性同位体で放射性標識されていてよい。本明細書において記載されている化合物のすべての同位体変化物は、放射性であるか否かにかかわらず、包含される。
「異性体」は、同じ分子式を有する異なる化合物である。「立体異性体」は、空間における原子の配置のされ方のみが異なる異性体である。「エナンチオマー」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対である。エナンチオマーの対の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。用語「(..+−..)」は、適切な場合、ラセミ混合物を指定するために使用される。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2個の不斉原子を有するがそれらは互いに鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、カーン・インゴルド・プレローグのR−Sシステムに従って明示される。化合物が純粋なエナンチオマーである場合、各キラル炭素における立体化学は、RまたはSのいずれかによって明示され得る。分割された化合物は、その絶対配置が未知である場合、それらがナトリウムD線の波長における平面偏光を回転させる方向(右旋性または左旋性)に応じて、(+)または(−)と指定され得る。本明細書において記載されている化合物のうち、ある特定のものは、1つまたは複数の不斉中心を含有し、故に、エナンチオマー、ジアステレオマー、および絶対立体化学の観点から(R)−または(S)−として定義され得る他の立体異性形態を生じさせることができる。本発明の化学実体、医薬組成物および方法は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態および中間混合物を含むそのような可能な異性体をすべて含むことを意図される。光学活性(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製すること、または従来の技術を使用して分割することができる。化合物の光学活性は、キラルクロマトグラフィーおよび偏光分析法を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を介して分析することができ、1つの立体異性体の他の異性体に対する優位性の程度を決定することができる。
本明細書において記載されている化合物が、オレフィン性二重結合または幾何学的不斉の他の中心を含有する場合、別段の明示がない限り、化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことが意図されている。
「置換されている」または「任意選択で置換されている」基は、基(アルキル、アリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル等)が、具体的に別段の注記がない限り、1、2または3個の−H基が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メトキシ、−COOH、−CHO、−NH2、−NO2、−OH、−SH、−SMe、−NHCH3、−N(CH3)2、−CN等から選択される1、2または3個の置換基(substitutents)によって置換され得ることを意味する。
「互変異性体」は、互変異性によって相互変換する構造的に異なった異性体である。「互変異性」は、異性化の形態であり、プロトトロピックまたはプロトンシフト互変異性を含み、これは、酸−塩基化学のサブセットとみなされる。「プロトトロピック互変異性」または「プロトンシフト互変異性」は、結合次数の変更、多くの場合、単結合の隣接する二重結合との交換が付随するプロトン移動を伴う。互変異性が可能である場合(例えば溶液中で)、互変異性体の化学平衡に到達することができる。互変異性の例は、ケト−エノール互変異性である。ケト−エノール互変異性の具体例は、ペンタン−2,4−ジオンと4−ヒドロキシペンタ−3−エン−2−オンとの互変異性体の相互変換である。互変異性の別の例は、フェノール−ケト互変異性である。フェノール−ケト互変異性の具体例は、ピリジン−4−オールとピリジン−4(1H)−オンとの互変異性体の相互変換である。
本明細書において記載されている化合物は、例えば、化合物の多形、擬多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、立体配座多形および非晶質形態を含む、それらの化合物の結晶性および非晶質形態、ならびにそれらの混合物も含む。「結晶性形態」、「多形」および「新規形態」は、本明細書において交換可能に使用されてよく、特定の結晶性または非晶質形態が言及されているのでない限り、上記に挙げた化合物の結晶性および非晶質形態ならびにそれらの混合物をすべて含むことを意図される。
「溶媒」、「有機溶媒」および「不活性溶媒」は、それぞれ、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、N−メチルピロリドン(「NMP」)、ピリジン等を含む、それに関連して記載されている反応の条件下で不活性な溶媒を意味する。それに反する明示がない限り、本明細書において記載されている反応において使用される溶媒は、不活性有機溶媒である。それに反する明示がない限り、制限試薬1グラムにつき1cc(またはmL)の溶媒が体積当量を構成する。
組成物
本明細書において記載されている化学実体および中間体の単離および精製は、所望ならば、例えば、濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーもしくは厚層クロマトグラフィー、またはこれらの手順の組合せ等の任意の好適な分離または精製手順によって達成することができる。好適な分離および単離手順の具体的例証は、本明細書における実施例を参照することにより為され得る。しかしながら、他の同等の分離または単離手順を使用することもできる。
所望される場合、存在するならば、本明細書において記載されている化合物の(R)−および(S)−異性体を、当業者に公知の方法によって、例えば、例えば結晶化によって分離され得るジアステレオマー塩または錯体の形成によって;例えば結晶化、気液または液体クロマトグラフィーによって分離され得るジアステレオマー誘導体の形成を介して;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば酵素的酸化または還元、続いて、修飾エナンチオマーと非修飾エナンチオマーとの分離;あるいは、キラル環境における、例えば、結合キラルリガンドを加えたシリカ等のキラル支持体での、またはキラル溶媒の存在下での気液または液体クロマトグラフィーによって、分割してよい。代替として、特定のエナンチオマーは、光学活性試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成によって、または1つのエナンチオマーを不斉転換により他のものに変換することによって、合成され得る。
本明細書において記載されている化合物を、薬学的に許容される酸と任意選択で接触させて、対応する酸付加塩を形成することができる。本明細書において列挙されている化合物の薬学的に許容される形態は、薬学的に許容される塩、キレート、非共有結合錯体または誘導体、プロドラッグ、およびそれらの混合物を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されている化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。加えて、本明細書において記載されている化合物が酸付加塩として得られるならば、遊離塩基は、酸塩の溶液を塩基性化することによって得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基ならば、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基性化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従い、この遊離塩基を好適な有機溶媒に溶解し、この溶液を酸で処理することによって生成され得る。当業者であれば、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得る種々の合成方法論を認識するであろう。
本明細書において、分子量等の物理的特性または化学式等の化学的特性について範囲が使用される場合、範囲およびその中の具体的な実施形態の組合せおよびサブ組合せがすべて含まれることが意図されている。用語「約」は、数字または数値範囲を参照する場合、参照されている数字または数値範囲が、実験の変動性内(または統計的な実験誤差内)の近似値であり、故に、数字または数値範囲は、例えば、記載されている数字または数値範囲の1%から15%の間で変動し得ることを意味する。用語「を含む(comprising)」(および「を含む(comprise)」または「を含む(comprises)」または「を有する」または「を含む(including)」等の関連用語)は、記載されている特色「からなる」または「から本質的になる」実施形態、例えば、任意の組成物、組成、方法またはプロセス等の実施形態を含む。
本発明の医薬組成物は、典型的には、治療有効量の式Iの化合物を、活性原料、またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、水和物もしくは誘導体として提供するために製剤化される。所望される場合、医薬組成物は、薬学的に許容される塩および/またはその配位錯体、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤、不活性固体賦形剤および充填剤を含む担体、滅菌水溶液および種々の有機溶媒を含む賦形剤、透過促進剤、可溶化剤、およびアジュバントを含有する。
一部の実施形態では、本明細書において記載されている医薬組成物中の式Iの化合物のうちの1つまたは複数の濃度は、w/w、w/vまたはv/vで、100%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.0009%未満、0.0008%未満、0.0007%未満、0.0006%未満、0.0005%未満、0.0004%未満、0.0003%未満、0.0002%未満または0.0001%未満である。
一部の実施形態では、式Iの化合物のうちの1つまたは複数の濃度は、w/w、w/vまたはv/vで、90%よりも大きいか、80%よりも大きいか、70%よりも大きいか、60%よりも大きいか、50%よりも大きいか、40%よりも大きいか、30%よりも大きいか、20%よりも大きいか、19.75%よりも大きいか、19.50%よりも大きいか、19.25%よりも大きいか、19%よりも大きいか、18.75%よりも大きいか、18.50%よりも大きいか、18.25%よりも大きいか、18%よりも大きいか、17.75%よりも大きいか、17.50%よりも大きいか、17.25%よりも大きいか、17%よりも大きいか、16.75%よりも大きいか、16.50%よりも大きいか、16.25%よりも大きいか、16%よりも大きいか、15.75%よりも大きいか、15.50%よりも大きいか、15.25%よりも大きいか、15%よりも大きいか、14.75%よりも大きいか、14.50%よりも大きいか、14.25%よりも大きいか、14%よりも大きいか、13.75%よりも大きいか、13.50%よりも大きいか、13.25%よりも大きいか、13%よりも大きいか、12.75%よりも大きいか、12.50%よりも大きいか、12.25%よりも大きいか、12%よりも大きいか、11.75%よりも大きいか、11.50%よりも大きいか、11.25%よりも大きいか、11%よりも大きいか、10.75%よりも大きいか、10.50%よりも大きいか、10.25%よりも大きいか、10%よりも大きいか、9.75%よりも大きいか、9.50%よりも大きいか、9.25%よりも大きいか、9%よりも大きいか、8.75%よりも大きいか、8.50%よりも大きいか、8.25%よりも大きいか、8%よりも大きいか、7.75%よりも大きいか、7.50%よりも大きいか、7.25%よりも大きいか、7%よりも大きいか、6.75%よりも大きいか、6.50%よりも大きいか、6.25%よりも大きいか、6%よりも大きいか、5.75%よりも大きいか、5.50%よりも大きいか、5.25%よりも大きいか、5%よりも大きいか、4.75%よりも大きいか、4.50%よりも大きいか、4.25%よりも大きいか、4%よりも大きいか、3.75%よりも大きいか、3.50%よりも大きいか、3.25%よりも大きいか、3%よりも大きいか、2.75%よりも大きいか、2.50%よりも大きいか、2.25%よりも大きいか、2%よりも大きいか、1.75%よりも大きいか、1.50%よりも大きいか、125%よりも大きいか、1%よりも大きいか、0.5%よりも大きいか、0.4%よりも大きいか、0.3%よりも大きいか、0.2%よりも大きいか、0.1%よりも大きいか、0.09%よりも大きいか、0.08%よりも大きいか、0.07%よりも大きいか、0.06%よりも大きいか、0.05%よりも大きいか、0.04%よりも大きいか、0.03%よりも大きいか、0.02%よりも大きいか、0.01%よりも大きいか、0.009%よりも大きいか、0.008%よりも大きいか、0.007%よりも大きいか、0.006%よりも大きいか、0.005%よりも大きいか、0.004%よりも大きいか、0.003%よりも大きいか、0.002%よりも大きいか、0.001%よりも大きいか、0.0009%よりも大きいか、0.0008%よりも大きいか、0.0007%よりも大きいか、0.0006%よりも大きいか、0.0005%よりも大きいか、0.0004%よりも大きいか、0.0003%よりも大きいか、0.0002%よりも大きいか、または0.0001%よりも大きい。
一部の実施形態では、式Iの化合物のうちの1つまたは複数の濃度は、w/w、w/vまたはv/vで、およそ0.0001%からおよそ50%まで、およそ0.001%からおよそ40%まで、およそ0.01%からおよそ30%まで、およそ0.02%からおよそ29%まで、およそ0.03%からおよそ28%まで、およそ0.04%からおよそ27%まで、およそ0.05%からおよそ26%まで、およそ0.06%からおよそ25%まで、およそ0.07%からおよそ24%まで、およそ0.08%からおよそ23%まで、およそ0.09%からおよそ22%まで、およそ0.1%からおよそ21%まで、およそ0.2%からおよそ20%まで、およそ0.3%からおよそ19%まで、およそ0.4%からおよそ18%まで、およそ0.5%からおよそ17%まで、およそ0.6%からおよそ16%まで、およそ0.7%からおよそ15%まで、およそ0.8%からおよそ14%まで、およそ0.9%からおよそ12%まで、およそ1%からおよそ10%までの範囲内である。
一部の実施形態では、式Iの化合物のうちの1つまたは複数の濃度は、w/w、w/vまたはv/vで、およそ0.001%からおよそ10%まで、およそ0.01%からおよそ5%まで、およそ0.02%からおよそ4.5%まで、およそ0.03%からおよそ4%まで、およそ0.04%からおよそ3.5%まで、およそ0.05%からおよそ3%まで、およそ0.06%からおよそ2.5%まで、およそ0.07%からおよそ2%まで、およそ0.08%からおよそ1.5%まで、およそ0.09%からおよそ1%まで、およそ0.1%からおよそ0.9%までの範囲内である。
一部の実施形態では、式Iの化合物のうちの1つまたは複数の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002gまたは0.0001gと等しいまたはそれ未満である。
一部の実施形態では、式Iの化合物のうちの1つまたは複数の量は、0.0001gよりも多いか、0.0002gよりも多いか、0.0003gよりも多いか、0.0004gよりも多いか、0.0005gよりも多いか、0.0006gよりも多いか、0.0007gよりも多いか、0.0008gよりも多いか、0.0009gよりも多いか、0.001gよりも多いか、0.0015gよりも多いか、0.002gよりも多いか、0.0025gよりも多いか、0.003gよりも多いか、0.0035gよりも多いか、0.004gよりも多いか、0.0045gよりも多いか、0.005gよりも多いか、0.0055gよりも多いか、0.006gよりも多いか、0.0065gよりも多いか、0.007gよりも多いか、0.0075gよりも多いか、0.008gよりも多いか、0.0085gよりも多いか、0.009gよりも多いか、0.0095gよりも多いか、0.01gよりも多いか、0.015gよりも多いか、0.02gよりも多いか、0.025gよりも多いか、0.03gよりも多いか、0.035gよりも多いか、0.04gよりも多いか、0.045gよりも多いか、0.05gよりも多いか、0.055gよりも多いか、0.06gよりも多いか、0.065gよりも多いか、0.07gよりも多いか、0.075gよりも多いか、0.08gよりも多いか、0.085gよりも多いか、0.09gよりも多いか、0.095gよりも多いか、0.1gよりも多いか、0.15gよりも多いか、0.2gよりも多いか、0.25gよりも多いか、0.3gよりも多いか、0.35gよりも多いか、0.4gよりも多いか、0.45gよりも多いか、0.5gよりも多いか、0.55gよりも多いか、0.6gよりも多いか、0.65gよりも多いか、0.7gよりも多いか、0.75gよりも多いか、0.8gよりも多いか、0.85gよりも多いか、0.9gよりも多いか、0.95gよりも多いか、1gよりも多いか、1.5gよりも多いか、2gよりも多いか、2.5よりも多いか、3gよりも多いか、3.5よりも多いか、4gよりも多いか、4.5gよりも多いか、5gよりも多いか、5.5gよりも多いか、6gよりも多いか、6.5gよりも多いか、7gよりも多いか、7.5gよりも多いか、8gよりも多いか、8.5gよりも多いか、9gよりも多いか、9.5gよりも多いか、または10gよりも多い。
一部の実施形態では、式Iの化合物のうちの1つまたは複数の量は、0.0001〜10g、0.0005〜9g、0.001〜8g、0.005〜7g、0.01〜6g、0.05〜5g、0.1〜4g、0.5〜4gまたは1〜3gの範囲内である。
本明細書において記載されている式Iの化合物は、広い投薬量範囲にわたって有効である。例えば、成人の処置において、1日当たり0.01から1000mgまで、0.5から100mgまで、1から50mgまで、および1日当たり5から40mgまでの投薬量は、使用され得る投薬量の例である。例示的な投薬量は、1日当たり10から30mgである。正確な投薬量は、投与経路、式Iの化合物が投与される形態、処置される対象、処置される対象の体重、ならびに担当医の優先傾向および経験によって決まることになる。
本明細書において記載されている医薬組成物は、典型的には、活性原料(例えば、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩および/もしくは配位錯体)、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤、不活性固体賦形剤および充填剤を含むがこれらに限定されない担体、賦形剤、滅菌水溶液、ならびに種々の有機溶媒、透過促進剤、可溶化剤およびアジュバントを含有する。
(i)有効量の式Iの化合物、任意選択で(ii)有効量の第2の作用物質、および(iii)経口投与に好適な医薬添加剤を含有する、経口投与のための固体医薬組成物も、本明細書において記載されている。一部の実施形態では、組成物は、(iv)有効量の第3の作用物質をさらに含有する。
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口摂取に好適な液体医薬組成物であってよい。経口投与に好適な医薬組成物は、カプセル剤、カシェ剤もしくは錠剤等の不連続な剤形、またはそれぞれが所定量の活性原料を粉末としてもしくは顆粒で含有する液体もしくはエアゾールスプレー、水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤、水中油型乳剤、または油中水型液体乳剤として提供され得る。そのような剤形は、薬学の方法のいずれかによって調製され得るが、すべての方法は、活性原料を、1つまたは複数の必須成分を構成する担体と合わせるステップを含む。概して、組成物は、活性原料を液体担体もしくは微粉化した固体担体または両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要ならば、生成物を所望の提供物に成形することによって調製される。例えば、錠剤は、任意選択で1つまたは複数の副原料とともに、圧縮または成型することによって調製され得る。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性賦形剤、および/または表面活性もしくは分散剤等であるがこれらに限定されない添加剤と任意選択で混合した、粉末または顆粒等の易流動性形態の活性原料を、好適なマシン内で圧縮することによって調製され得る。成型錠剤は、不活性液体賦形剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、好適なマシン内で成型することによって作製され得る。
水は一部の化合物の分解を容易にし得ることから、活性原料を含む無水医薬組成物および剤形も、本明細書において記載されている。例えば、医薬品分野において、貯蔵寿命または経時的な製剤の安定性等の特徴を決定するために長期貯蔵を模倣する手段として、水が添加され得る(例えば、5%)。無水医薬組成物および剤形は、無水または低水分含有原料および低水分または低湿度条件を使用して調製され得る。ラクトースを含有する医薬組成物および剤形は、製造、パッケージおよび/または貯蔵中に水分および/または湿度との実質的な接触が予測されるならば、無水にされ得る。無水医薬組成物は、その無水性質が維持されるように調製され、貯蔵されてよい。したがって、好適な処方キットに含むことができるように、水への曝露を防止することが既知である材料を使用して、無水組成物をパッケージすることができる。好適なパッケージの例は、密封ホイル、プラスチック等、単位用量容器、ブリスターパックおよびストリップパックを含むがこれらに限定されない。
従来の医薬配合技術に従って、活性原料を医薬担体と密接な混合物中で組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物を調製する際、経口液体調製物(懸濁剤、液剤およびエリキシル剤等)またはエアゾール剤の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤等の通常の医薬媒体のいずれかを担体として用いることができ、あるいは、経口固体調製物の場合には、一実施形態ではラクトースの使用を採用することなく、デンプン、糖、微結晶性セルロース、賦形剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤等の担体を使用することができる。例えば、固体経口調製物の場合、好適な担体としては、散剤、カプセル剤および錠剤が挙げられる。所望ならば、錠剤を標準的な水性または非水性技術によってコーティングすることができる。
医薬組成物および剤形において使用するために好適な結合剤は、コーンスターチ、バレイショデンプンまたは他のデンプン、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギネート、トラガント末、グァーガム等の天然および合成ガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、ならびにそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
本明細書で開示される医薬組成物および剤形において使用するために好適な充填剤の例は、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末状セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
水性環境に曝露されると崩壊する錠剤を提供するために、本明細書において記載されている組成物において崩壊剤を使用してよい。多すぎる崩壊剤は、ボトル中で崩壊し得る錠剤を生成し得る。少なすぎると、崩壊が発生するのに不十分なことがあり、故に、剤形からの活性原料の放出の速度および程度を改変し得る。故に、活性原料の放出を有害に改変するほど少なすぎることも多すぎることもない十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書で開示される化合物の剤形を形成してよい。使用される崩壊剤の量は、製剤の種類および投与モードに基づいて変動してよく、当業者には容易に識別可能となり得る。約0.5から約15重量パーセントの崩壊剤、または約1から約5重量パーセントの崩壊剤を、医薬組成物において使用してよい。医薬組成物および剤形を形成するために使用され得る崩壊剤は、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、バレイショもしくはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
医薬組成物および剤形を形成するために使用され得る滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル(ethylaureate)、寒天、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。追加の滑沢剤は、例えば、シロイドシリカゲル、合成シリカの凝固エアゾール、またはそれらの混合物を含む。任意選択で、滑沢剤を医薬組成物の約1重量パーセント未満の量で添加することができる。
水性懸濁剤および/またはエリキシル剤が経口投与のために所望される場合、その中の必須活性原料を、種々の甘味もしくは香味剤、着色物質または染料、ならびに、そうすることが望ましければ、乳化剤および/または懸濁化剤と、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンおよびそれらの種々の組合せ等の賦形剤も一緒に組み合わせてよい。
錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それにより、より長期間にわたって持続作用を提供するための公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を用いることができる。経口使用のための製剤は、活性原料が、不活性固体賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセル剤として、または、活性原料が、水もしくは油状媒体、例えば、落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
医薬組成物および剤形を形成するために使用され得る界面活性剤は、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。すなわち、親水性界面活性剤の混合物を用いてよく、親油性界面活性剤の混合物を用いてよく、または、少なくとも1つの親水性界面活性剤および少なくとも1つの親油性界面活性剤の混合物を用いてよい。
好適な親水性界面活性剤は、概して、少なくとも10のHLB値を有し得、一方、好適な親油性界面活性剤は、概して、約10またはそれ未満のHLB値を有し得る。非イオン性両親媒性化合物の相対的親水性および疎水性を特徴付けるために使用される経験的パラメータが、親水性親油性バランス(「HLB」値)である。より低いHLB値を持つ界面活性剤は、より親油性または疎水性であり、油へのより大きい溶解性を有し、一方、より高いHLB値を持つ界面活性剤は、より親水性であり、水溶液へのより大きい溶解性を有する。親水性界面活性剤は、概して、約10よりも大きいHLB値を有する化合物、および、HLBスケールが概して適用可能ではないアニオン性、カチオン性または両性イオン性化合物であるとみなされる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、約10と等しいまたはそれ未満のHLB値を有する化合物である。しかしながら、界面活性剤のHLB値は、工業、医薬および化粧用乳剤の製剤を可能にするために概して使用されるおおよその目安にすぎない。
親水性界面活性剤は、イオン性または非イオン性のいずれかであってよい。好適なイオン性界面活性剤は、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドの脂肪酸誘導体;アミノ酸、オリゴペプチドおよびポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチンおよび水素化レシチン;リゾレシチンおよび水素化リゾレシチン;リン脂質およびその誘導体;リゾリン脂質およびその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸の塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート(acylactylates);モノ−およびジ−グリセリドのモノ−およびジ−アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ−およびジ−グリセリド;モノ−およびジ−グリセリドのクエン酸エステル;ならびにそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
前述の群の中で、イオン性界面活性剤は、例として、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾリン脂質およびそれらの誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸の塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシルアクチレート;モノ−およびジ−グリセリドのモノ−およびジ−アセチル化酒石酸エステル;スクシニル化モノ−およびジ−グリセリド;モノ−およびジ−グリセリドのクエン酸エステル;ならびにそれらの混合物を含む。
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG−ホスファチジルエタノールアミン、PVP−ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸のラクチルエステル、ステアロイル−2−ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン、カプロン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸塩、テラセシル(teracecyl)硫酸塩、ドキュセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチンならびにそれらの塩および混合物のイオン化形態であってよい。
親水性非イオン性界面活性剤は、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴールグリセリド;ポリエチレングリコールエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノール等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルおよびポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物;ポリオキシエチレンステロール、その誘導体および類似体;ポリオキシエチル化ビタミンおよびその誘導体;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;およびそれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ならびにポリオールと、トリグリセリド、植物油および水素化植物油からなる群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物を含み得るがこれらに限定されない。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトールまたはサッカリドであってよい。
他の親水性非イオン性界面活性剤は、限定されないが、ラウリン酸PEG−10、ラウリン酸PEG−12、ラウリン酸PEG−20、ラウリン酸PEG−32、ジラウリン酸PEG−32、オレイン酸PEG−12、オレイン酸PEG−15、オレイン酸PEG−20、ジオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−32、オレイン酸PEG−200、オレイン酸PEG−400、ステアリン酸PEG−15、ジステアリン酸PEG−32、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−100、ジラウリン酸PEG−20、トリオレイン酸PEG−25グリセリル、ジオレイン酸PEG−32、ラウリン酸PEG−20グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ステアリン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−20グリセリル、オレイン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−30グリセリル、ラウリン酸PEG−40グリセリル、PEG−40パーム核油、PEG−50水素化ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40水素化ヒマシ油、PEG−60水素化ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油、カプリン酸/カプリル酸PEG−6グリセリド、カプリン酸/カプリル酸PEG−8グリセリド、ラウリン酸ポリグリセリル−10、PEG−30コレステロール、PEG−25植物ステロール、PEG−30大豆ステロール、トリオレイン酸PEG−20、オレイン酸PEG−40ソルビタン、ラウリン酸PEG−80ソルビタン、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリールエーテル、コハク酸トコフェリルPEG−100、PEG−24コレステロール、オレイン酸ポリグリセリル−10、Tween 40、Tween 60、モノステアリン酸スクロース、モノラウリン酸スクロース、モノパルミチン酸スクロース、PEG10−100ノニルフェノールシリーズ、PEG15−100オクチルフェノールシリーズおよびポロキサマーを含む。
好適な親油性界面活性剤は、ほんの一例として、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロールおよびステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロールおよびステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノ−およびジ−グリセリドの乳酸誘導体;ポリオールと、グリセリド、植物油、水素化植物油、脂肪酸およびステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;ならびにそれらの混合物を含む。この群の中でも、好ましい親油性界面活性剤は、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそれらの混合物を含むか、または、ポリオールと、植物油、水素化植物油およびトリグリセリドからなる群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物である。
一実施形態では、組成物は、本明細書において記載されている化合物の良好な可溶化および/または溶解を確実にし、本明細書において記載されている化合物の沈殿を最小限に抑えるための可溶化剤を含み得る。これは、とりわけ、非経口使用のための組成物、例えば注射用組成物にとって重要となり得る。可溶化剤はまた、親水性薬物および/または界面活性剤等の他の成分の溶解性を増大させるため、あるいは組成物を安定なまたは均質な溶液または分散液として維持するために添加され得る。
好適な可溶化剤の例は、下記を含むがこれらに限定されない:エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびそれらの異性体等のアルコールおよびポリオール、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体;テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)またはメトキシPEG等の、約200から約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル;アミドならびに2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミドおよびポリビニルピロリドン等の他の窒素含有化合物;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、一酢酸プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、ε−カプロラクトンおよびその異性体、δ−バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトンおよびその異性体等のエステル;ならびに、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N−メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび水等の、当該技術分野において公知である他の可溶化剤。
可溶化剤の混合物を使用してもよい。例は、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200−100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコールおよびジメチルイソソルビドを含むがこれらに限定されない。特に好ましい可溶化剤は、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG−400、グリコフロールおよびプロピレングリコールを含む。
含まれ得る可溶化剤の量は、特に限定されない。所与の可溶化剤の量は、生物学的に許容される量に限定されてよく、これは、当業者によって容易に決定され得る。一部の状況では、例えば薬物の濃度を最大化するために、生物学的に許容される量をはるかに超過する量の可溶化剤を含み、組成物を患者に提供する前に、蒸留または蒸発等の従来の技術を使用して、過剰な可溶化剤を除去することが有利になり得る。故に、存在するならば、可溶化剤は、薬物および他の添加剤の組み合わせた重量に基づき、10重量%、25重量%、50重量%、100重量%または最大約200重量%の重量比であってよい。所望ならば、5%、2%、1%またはそれよりも少ない等、極めて少量の可溶化剤を使用してもよい。典型的には、可溶化剤は、約1重量%から約100重量%、より典型的には約5重量%から約25重量%の量で存在してよい。
組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される添加物および添加剤をさらに含み得る。そのような添加物および添加剤は、限定されないが、粘着防止剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、抗酸化剤、保存剤、キレート剤、粘度調節剤、等張化剤、香味剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、滑沢剤、およびそれらの混合物を含む。
加えて、加工を容易にするため、安定性を強化するため、または他の理由のために、酸または塩基を組成物に組み込んでよい。薬学的に許容される塩基の例は、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロタルサイト(hydrocalcite)、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)等を含む。また、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノンスルホン酸(hydroquinosulfonic acid)、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等、薬学的に許容される酸の塩である塩基も好適である。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム等の多塩基酸の塩を使用することもできる。塩基が塩である場合、カチオンは、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の任意の好都合な薬学的に許容されるカチオンであってよい。例は、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウムを含み得るがこれらに限定されない。
好適な酸は、薬学的に許容される有機または無機酸である。好適な無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等を含む。好適な有機酸の例は、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等を含む。
注射のための医薬組成物
式Iの化合物と、注射に好適な医薬添加剤とを含有する、注射のための医薬組成物が、本明細書において記載されている。組成物中の成分および作用物質の量は、本明細書において記載されている通りである。
本明細書において記載されている新規組成物が組み込まれ得る注射による投与のための形態は、水性または油懸濁剤、あるいはゴマ油、トウモロコシ油、綿実油もしくは落花生油を加えた乳剤、ならびにエリキシル剤、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液および同様の医薬ビヒクルを含む。
生理食塩水中の水溶液も、注射のために慣例的に使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等(およびそれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体および植物油を用いてもよい。適正な流動性は、例えば、分散液の場合には求められる粒径の維持のためにレシチン等のコーティングの使用によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。
滅菌注射溶液は、求められる量の式Iの化合物を、適切な溶媒に、上記で列挙した種々の他の原料とともに組み込み、続いて必要に応じて滅菌濾過することによって調製される。概して、分散液は、種々の滅菌活性原料を、塩基性分散媒および上記で列挙したものから求められる他の原料を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、ある特定の望ましい調製方法が真空乾燥およびフリーズドライ技術であり、これは、活性原料と、予め滅菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の原料との粉末を産出するものである。
局所(例えば経皮)送達のための医薬組成物
本明細書において記載されている組成物は、ゲル剤、水溶性ゼリー剤、クリーム剤、ローション剤、懸濁剤、発泡剤、散剤、スラリー剤、軟膏剤、液剤、油剤、ペースト剤、坐剤、スプレー剤、乳剤、生理食塩水またはジメチルスルホキシド(DMSO)ベースの液剤等の局部または局所投与に好適な固体、半固体または液体形態の調製物に製剤化することができる。概して、より高い密度を持つ担体は、領域に活性原料への長期曝露を提供することができる。対照的に、溶液製剤は、選択領域に対する活性原料のより即時的な曝露を提供し得る。
医薬組成物は、皮膚の角質層透過性障壁を通る治療分子の浸透を増大させる、またはその送達を補助する化合物である、好適な固体またはゲル相の担体または添加剤を含んでもよい。局所製剤分野の当業者に公知である、多くのこれらの浸透強化分子がある。そのような担体および添加剤の例は、湿潤剤(例えば、尿素)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、アルコール(例えば、エタノール)、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、モノラウリン酸グリセロール、スルホキシド、テルペン(例えば、メントール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、水、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコール等のポリマーを含むがこれらに限定されない。
本明細書において記載されている方法において使用するための別の例示的な製剤は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を用いる。そのような経皮パッチを使用して、別の作用物質を加えてまたは加えずに、制御量の式Iの化合物の連続的または非連続的注入を提供することができる。
医薬作用物質の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、同第4,992,445号および同第5,001,139号を参照されたい。そのようなパッチは、医薬作用物質の連続的、拍動性またはオンデマンド送達のために構築され得る。
吸入のための医薬組成物
吸入または吹送のための組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の液剤および懸濁剤、ならびに散剤を含む。液体または固体組成物は、上述した通りの好適な薬学的に許容される添加剤を含有し得る。好ましくは、組成物は、局部または全身性作用のために、経口または鼻呼吸経路によって投与される。好ましくは薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧化され得る。噴霧化液剤を、噴霧デバイスから直接吸入することができるか、あるいは、噴霧デバイスは、フェイスマスクテントまたは間欠的陽圧呼吸機に取り付けられていてよい。液剤、懸濁剤または散剤組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口的にまたは鼻内に投与することができる。
他の医薬組成物
医薬組成物は、本明細書において記載されている組成物および舌下、頬側、経直腸、骨内、眼内、鼻腔内、硬膜外または髄腔内投与に好適な1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤からも調製され得る。そのような医薬組成物の調製は、当該技術分野において周知である。例えば、Anderson, Philip O.;Knoben, James E.;Troutman, William G編、Handbook of Clinical Drug Data、第10版、McGraw-Hill、2002年;PrattおよびTaylor編、Principles of Drug Action、第3版、Churchill Livingston、N.Y.、1990年;Katzung編、Basic and Clinical Pharmacology、第9版、McGraw Hill、2004年;GoodmanおよびGilman編、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版、McGraw Hill、2001年;Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams & Wilkins.、2000年;Martindale、The Extra Pharmacopoeia、第32版(The Pharmaceutical Press、London、1999年)を参照されたく、これらはいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本明細書において記載されている式Iの化合物または医薬組成物の投与は、作用部位への化合物の送達を可能にする任意の方法によって達成することができる。これらの方法は、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、血管内、腹腔内または注入を含む)、局所(例えば経皮適用)、経直腸投与、カテーテルもしくはステントによる局部送達、または吸入を介するものを含む。化合物は、脂肪内にまたはくも膜下腔内に投与することもできる。
投与される式Iの化合物の量は、処置されている哺乳動物、障害または状態の重症度、投与速度、化合物の性質および処方医師の裁量に依存することになる。しかしながら、有効投薬量は、単回または分割用量で、1日につき体重1kg当たり約0.001から約100mg、好ましくは約1から約35mg/kg/日の範囲内である。70kgのヒトについては、これは、約0.05から7g/日、好ましくは約0.05から約2.5g/日の量になるであろう。一部の事例において、前記の範囲の下限未満の投薬量レベルは十分すぎる場合があり、一方、他の場合、例えば、さらに大きい用量を、1日を通して投与するためにいくつかの小さい用量に分割することによって、いかなる有害な副作用も引き起こすことなく、そのような大きい用量を用いることができる。
一部の実施形態では、式Iの化合物は、単回用量で投与される。典型的には、そのような投与は、作用物質を急速に導入するために、注射、例えば、静脈内注射によるものとなる。しかしながら、適宜他の経路を使用してもよい。
一部の実施形態では、式Iの化合物は、複数回用量で投与される。投薬は、1日あたり約1回、2回、3回、4回、5回、6回、または6回を超えてもよい。投薬は、約1か月に1回、隔週に1回、週に1回、または1日おきに1回であってよい。別の実施形態では、化合物および別の作用物質は、1日当たり約1回から1日当たり約6回、一緒に投与される。別の実施形態では、式Iの化合物および作用物質の投与は、約7日未満にわたって継続する。さらに別の実施形態では、投与は、約6、10、14、28日、2か月、6か月、または1年超にわたって継続する。一部の場合、連続的投薬が実現され、必要な限り維持される。
式Iの化合物の投与は、必要な限り継続してよい。一部の実施形態では、式Iの化合物は、1、2、3、4、5、6、7、14または28日超にわたって投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物は、28、14、7、6、5、4、3、2または1日未満にわたって投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物は、例えば慢性作用の処置のために、継続方式で慢性的に、投与される。
有効量の式Iの化合物は、単回または複数回用量のいずれかで、経直腸、頬側、鼻腔内および経皮経路を含む、同様の利用性を有する作用物質の許容される投与モードのいずれかによって、動脈内注射によって、静脈内に、腹腔内に、非経口的に、筋肉内に、皮下に、経口的に、局所的に、または吸入剤として、投与され得る。
本明細書において記載されている組成物は、例えばステント等の含浸またはコーティング済みデバイス、または動脈挿入型円筒ポリマーを介して送達されてもよい。式Iの化合物は、例えば、ステントの支柱から、ステントグラフトから、グラフトから、またはステントのカバーもしくはシースからの局部送達によって、投与され得る。一部の実施形態では、式Iの化合物は、マトリックスと混合される。そのようなマトリックスは、ポリマーマトリックスであってよく、化合物をステントに結合するのに役立ち得る。そのような使用に好適なポリマーマトリックスは、例えば、ポリラクチド、ポリカプロラクトングリコリド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、多糖、ポリホスファゼン、ポリ(エーテル−エステル)コポリマー(例えば、PEO−PLLA)等のラクトンベースのポリエステルまたはコポリエステル;ポリジメチルシロキサン、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、アクリレートベースのポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化ポリマーおよびセルロースエステルを含む。好適なマトリックスは、非分解性であってよく、または経時的に分解して、1つまたは複数の化合物を放出することができる。式Iの化合物は、浸漬/スピンコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティングおよび/または刷毛コーティング等の種々の方法によって、ステントの表面に塗布することができる。化合物を溶媒中で塗布してよく、溶媒を蒸発させ、それにより、化合物の層をステント上に形成することができる。代替として、式Iの化合物を、ステントまたはグラフトの本体内に、例えばマイクロチャネルまたは微細孔内に位置付けてよい。埋め込まれる場合、化合物は、ステントの本体から拡散して、動脈壁に接触する。そのようなステントは、そのような微細孔またはマイクロチャネルを含有するように製造されたステントを、好適な溶媒中の式Iの化合物の溶液に浸漬し、続いて、溶媒を蒸発させることによって調製され得る。ステントの表面上の過剰な薬物は、追加の簡単な溶媒洗浄を介して除去することができる。さらに他の実施形態では、式Iの化合物は、ステントまたはグラフトと共有結合していてよい。in vivoで分解し、式Iの化合物の放出に至る共有結合のリンカーを使用してよい。そのような目的のために、エステル、アミドまたは無水結合等の生体内で不安定な任意の結合を使用してよい。式Iの化合物は、さらに、血管形成術中に使用されるバルーンから血管内に投与され得る。本明細書において記載されている製剤の、心膜(pericard)を介するまたは外膜適用を介する式Iの化合物の血管外投与も、再狭窄を減少させるために実施され得る。
記載されている通りに使用され得る多様なステントデバイスは、例えば、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる下記の参考文献:米国特許第5,451,233号、米国特許第5,040,548号、米国特許第5,061,273号、米国特許第5,496,346号、米国特許第5,292,331号、米国特許第5,674,278号、米国特許第3,657,744号、米国特許第4,739,762号、米国特許第5,195,984号、米国特許第5,292,331号、米国特許第5,674,278号、米国特許第5,879,382号、米国特許第6,344,053号において開示されている。
式Iの化合物は、1回分の投薬量で投与され得る。化合物の薬物動態における対象間のばらつきにより、最適な療法のためには投薬レジメンの個別化が必要であることが、当該技術分野において公知である。式Iの化合物の服用量は、本開示に照らして慣用的な実験によって見出すことができる。
式Iの化合物が、1つまたは複数の作用物質を含む組成物で投与され、作用物質が、式Iの化合物よりも短い半減期を有する場合、作用物質および式Iの化合物の単位剤形は、それに応じて調整され得る。
本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、持続放出製剤、液剤または懸濁剤として経口投与に、滅菌液剤、懸濁剤または乳剤として非経口注射に、軟膏剤またはクリーム剤として局所投与に、あるいは坐剤として経直腸投与に好適な形態であってよい。医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に好適な単位剤形であってよい。医薬組成物は、従来の医薬担体または添加剤および活性原料としての式Iの化合物を含むことになる。加えて、医薬組成物は、他の薬剤または医薬作用物質、担体、アジュバント等を含んでよい。
例示的な非経口投与形態は、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコール水溶液またはデキストロース溶液中の活性化合物の液剤または懸濁剤を含む。そのような剤形は、所望ならば、好適に緩衝され得る。
キットも本明細書において記載されている。キットは、好適なパッケージ内の1つまたは複数の本明細書において記載されている通りの式Iの化合物、および使用説明書、臨床研究の考察、副作用の一覧等を含み得る資料を含む。そのようなキットは、組成物の活性および/または利点を指示し、または確立し、ならびに/あるいは投薬、投与、副作用、薬物相互作用、または医療提供者にとって有用な他の情報を記載した、科学的参考文献、添付文書、臨床試験の結果および/またはこれらの概要等の情報を含んでもよい。そのような情報は、種々の研究、例えば、in vivoモデルを伴う実験動物を使用する研究およびヒト臨床試験に基づく研究の結果に基づくものであってよい。キットは、別の作用物質をさらに含有し得る。一部の実施形態では、式Iの化合物および作用物質は、キット内の別個の容器中の別個の組成物として提供される。一部の実施形態では、本明細書において記載されている化合物および作用物質は、キット内の容器に入れた単一組成物として提供される。好適なパッケージおよび使用のための追加物品(例えば、液体調製物のための測定カップ、空気への曝露を最小限に抑えるためのホイルラッピング等)は、当該技術分野において公知であり、キットに含まれてよい。本明細書において記載されているキットは、医師、看護師、薬剤師、処方職員(formulary officials)等を含む医療専門家に、提供、販売および/または販促することができる。キットは、一部の実施形態では、消費者に直接販売することもできる。
治療方法
本明細書において記載されている化合物および医薬組成物は、治療有効量で、上述した通りに、眼疾患、神経学的疾患およびタンパク質凝集関連疾患を処置するための方法において有用である。
一実施形態では、本明細書において記載されている化合物および医薬組成物は、黄斑変性症、網膜色素変性症、網膜症、緑内障および白内障からなる群から選択される眼疾患を処置するための方法において使用される。
別の実施形態では、本明細書において記載されている化合物および医薬組成物は、神経学的障害もしくは疾患または神経変性疾患を処置するための方法において使用される。
上記の一態様では、神経学的障害または疾患は、神経変性、神経発達または神経精神障害である。上記の方法の別の態様では、神経変性障害または疾患は、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、エイズまたはHIV関連認知症、脳虚血、脳血管疾患、脳出血、ダウン症候群、てんかん、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、外傷性脊髄損傷、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、出血性脳卒中、脳鉄蓄積を伴う神経変性、レビー小体病、虚血性脳卒中、多発性硬化症、ピック病、進行性核上麻痺、老年性認知症、軽度認知機能障害、遺伝性脳出血、外傷性虚血発作、鉛脳症、硬膜下血腫、放射線脳損傷、ニーマン・ピック病および神経セロイドリポフスチン症(NCL;バッテン病)からなる群から選択される。
別の実施形態では、本明細書において記載されている化合物および医薬組成物は、タンパク質凝集関連疾患を持つ患者においてタンパク質凝集を阻害するための方法において使用される。上記の方法の一態様では、疾患は、2型真性糖尿病、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt-Jacob)病およびプリオン病からなる群から選択される。別の態様では、治療有効量は、AAアミロイドーシス、軽鎖アミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー、AA(炎症)アミロイドーシス、アミリン関連アミロイドーシス、家族性内臓アミロイドーシス、原発性皮膚アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、家族性角膜アミロイドーシスおよび甲状腺髄様癌からなる群から選択される疾患を処置するために有効である。
材料
すべての試薬は市販供給元から購入し、特に明記しない限り供給されたまま使用した。反応は特に明記しない限り空気中で行った。400MHzの1H NMRスペクトルはJEOL AS 400分光計で得た。低分解能マススペクトル(LRMS)はJEOL JMS−T100LC DART/AccuTOF質量分析計で得た。タンパク質凝集の逆行の測定は、例えばW.T.Chenら、J.Biol.Chem、2011年、286巻(11号)、9646頁に記載されているビス−ANS蛍光等のアッセイを使用して行うことができる。
(実施例1)
BC−146および−147の合成
2種の化合物BC−146[2−シアノ−3−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)アクリル酸]およびBC−147[2−シアノ−3−(4−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)フェニル)アクリル酸]を、共通の中間体の3−ヒドロキシトリフェニルアミンから合成した。トリフェニルアミン上の3−ヒドロキシ官能基は環化が可能であり、ベンゾフランのベンゾ環として3つのフェニル基のうちの1つを組み込んでいる。
A. 3−ヒドロキシトリフェニルアミンの合成
3−ヒドロキシトリフェニルアミンの合成は、M.-k.Leungら、Organic Letters(2006年)8巻:2623〜2626頁により報告されている手順を適用した。窒素でパージした3−メトキシトリフェニルアミン(2.90g)を含有するフラスコに、無水ジクロロメタン(21mL)を加えた。反応物を−78℃に冷却し、三臭化ホウ素(ジクロロメタン中1.0M、21mL)をシリンジにより10分かけて滴下添加した。反応物を室温に18時間かけてゆっくり温めた。反応を炭酸カリウムの10%水溶液を注意深く加えることによりクエンチした。次いで反応物を室温で20分間撹拌した後、ジクロロメタン(2×50mL)で抽出した。合わせた抽出物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮して、3−ヒドロキシトリフェニルアミン(2.75g)を得、これをさらには精製せずに使用した。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.27 - 7.21 (m, 4H), 7.11 - 7.05 (m, 5H), 7.04 - 6.98 (m, 2H), 6.63 (ddd, 1H), 6.52 (t, 1H), 6.45 (ddd, Hz, 1H), 4.50 (広幅なs, 1H).
B. 4−(ジフェニルアミノ)−2−ヒドロキシベンズアルデヒドの合成
3−ヒドロキシトリフェニルアミン(1.47g)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(28mL)中溶液を、0℃に冷却した。分離フラスコ中、亜リン酸オキシクロリド(1.57mL)を0℃でN,N−ジメチルホルムアミド(28mL)に滴下添加した。10分後、亜リン酸オキシクロリド溶液を、反応物にカヌーレにより20分かけて滴下添加した。反応混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで水(20mL)を加えることによりクエンチし、室温に温めた。水性混合物をジクロロメタン(4×50mL)で抽出し、次いで合わせたジクロロメタン画分を水(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。ジクロロメタン溶液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、4−(ジフェニルアミノ)−2−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.07g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 11.40 (s, 1H), 9.59 (s, 1H), 7.35 (dd, 4H), 7.22 - 7.15 (m, 7H), 6.46 (dd, 1H), 6.34 (d, 1H).
C. 2−(2,2−ジエトキシエトキシ)−4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドの合成
4−(ジフェニルアミノ)−2−ヒドロキシベンズアルデヒド(0.50g)および炭酸カリウム(0.26g)を含有するフラスコを、窒素で20分間フラッシュした。無水N,N−ジメチルホルムアミド(3.5mL)およびブロモジエトキシエタン(0.33mL)を加え、反応物を155℃に2時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水(15mL)を加えた。水層を酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、合わせた有機画分を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮して、2−(2,2−ジエトキシエトキシ)−4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド(0.70g)を得、これをさらには精製せずに使用した。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.26 (d, 1H), 7.65 (d, 1H), 7.38 - 7.27 (m, 4H), 7.21 - 7.10 (m, 6H), 6.53 (ddd, 1H), 6.42 (d, 1H), 4.79 (t, 1H), 3.83 (d, 2H), 3.79 - 3.67 (m, 2H), 3.59 (m, 2H), 1.21 (t, 6H).
D. 6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−カルバルデヒドの合成
2−(2,2−ジエトキシエトキシ)−4−(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド(0.21g)の酢酸(2.5mL)中溶液を加熱還流した。5.5時間後、反応物を室温に冷却し、酢酸エチル(30mL)で希釈した。洗液が塩基性になるまで、有機層を飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した(4×10mL)。合わせた水性洗液を酢酸エチル(2×30mL)で抽出し、次いで合わせた有機画分を飽和重炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中20%酢酸エチルで溶出)により精製して、6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−カルバルデヒド(0.12g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 9.72 (s, 1H), 7.51 (d, 1H), 7.45 (d , 1H), 7.33 - 7.26 (m, 4H), 7.17 - 7.07 (m, 7H), 7.05 (dd, 1H).
E. 2−シアノ−3−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)アクリル酸(BC−146)の合成
6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−カルバルデヒド(0.16g)のアセトニトリル(2.6mL)中溶液に、シアノ酢酸(0.049g)およびピペリジン(0.078mL)を加えた。反応物を2時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)を加え、反応物のpHを1M HClで2〜3に調整した。合わせた水層をジクロロメタン(4×20mL)で抽出し、次いで合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。固体を60℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)アクリル酸(BC−146、0.19g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.78 (s, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.72 (s, 1H), 7.64 (d, 1H), 7.35 (t, 4H), 7.13 (dd, 6H), 6.90 (dd, 1H), 6.84 (s, 1H).質量(m/z):381(M+1)
+。
F. 5−(ジフェニルアミノ)−2−ヨードフェノールの合成
フラスコに3−ヒドロキシトリフェニルアミン(0.87g)およびN−ヨードスクシンイミド(0.75g)を入れ、窒素でパージした。無水アセトニトリル(16.6mL)を窒素でパージすることにより脱気し、次いで反応混合物に加えた。反応物を室温で1時間撹拌した。次いで反応混合物を濃縮し、次いで残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、5−(ジフェニルアミノ)−2−ヨードフェノール(1.13g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.41 (d, 1H), 7.31 - 7.20 (m, 4H), 7.13 - 7.04 (m, 4H), 7.04 (s, 2H), 6.68 (d, 1H), 6.42 (dd, 1H), 5.14 (s, 1H).
G. 4−((4−(ジフェニルアミノ)−2−ヒドロキシフェニル)エチニル)ベンズアルデヒドの合成
フラスコに5−(ジフェニルアミノ)−2−ヨードフェノール(0.14g)、4−エチニルベンズアルデヒド(0.73g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.008g)およびヨウ化銅(I)(0.006g)を入れた。フラスコを窒素で20分間パージした。窒素を10分間吹き込むことによりテトラヒドロフランを脱気し、次いで1.86mLを反応物に加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、トリエチルアミン(0.10mL)を加え、次いで反応物を室温で3時間撹拌した。反応物を50℃に3時間加熱し、室温に冷却し、次いで水(10mL)およびブライン(5mL)を加えた。水性画分を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から25%酢酸エチルで溶出)により精製して、4−((4−(ジフェニルアミノ)−2−ヒドロキシフェニル)エチニル)ベンズアルデヒド(0.094g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.01 (s, 1H), 7.86 (d, 2H), 7.64 (d, 2H), 7.30 (dd, 4H), 7.16 - 7.07 (m, 7H), 6.60 - 6.54 (m, 2H), 5.66 (s, 1H).
H. 4−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)ベンズアルデヒドの合成
窒素でフラッシュした4−((4−(ジフェニルアミノ)−2−ヒドロキシフェニル)エチニル)ベンズアルデヒド(0.094g)を含有するフラスコに、無水トルエン(4.85mL)およびテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.0M、0.48mL)を加えた。反応物を80℃に1.5時間加熱し、次いで室温に冷却した。水(10mL)を加え、水層を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮して、4−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)ベンズアルデヒド(0.11g)を得、これをさらには精製せずに使用した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.98 (s, 1H), 8.03 (d, 2H), 7.96 (d, 2H), 7.62 (d, 1H), 7.58 (dd, 1H), 7.29 (dd, 4H), 7.14 (s, 1H), 7.07 - 7.00 (m, 6H), 6.93 (dd, 1H).
I. 2−シアノ−3−(4−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)フェニル)アクリル酸(BC−147)の合成
4−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)ベンズアルデヒド(0.048g)に、アセトニトリル(0.61mL)、シアノ酢酸(0.012g)およびピペリジン(0.018mL)を加えた。反応物を2.5時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)を加え、水性画分を1M HClでpH=2に酸性化し、次いでジクロロメタン(3×15mL)で抽出した。合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濾液を濃縮した。濃縮した残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から15%メタノールで溶出)により精製して、2−シアノ−3−(4−(6−(ジフェニルアミノ)ベンゾフラン−2−イル)フェニル)アクリル酸(BC−147、0.034g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.96 (s, 1H), 8.22 (s, 1H), 8.07 (d, 2H), 7.99 (d, 2H), 7.57 (d, 2H), 7.29 (t, 4H), 7.12 (s, 1H), 7.04 (t, 6H), 6.93 (dd, 1H).質量(m/z):457(M+1)+。
(実施例2)
BC−149、−152、−153、−154、−155、−160、−161、−163および−170の合成
本実施例の化合物(および本明細書の他の化合物)を合成スキームIに従って合成した:
A. 共通の中間体の2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドの合成
50mLのフラスコに、4−エチニルトリフェニルアミン(1.01g)、3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒド(0.77g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.066g)およびヨウ化銅(I)(0.054g)を加えた。フラスコを窒素で20分間パージした。トリエチルアミン(2.18mL)の無水アセトニトリル(15.6mL)中溶液を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気した。トリエチルアミン溶液を反応物に加え、次いで反応物を50℃に3時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水(25mL)を加えた。水層を酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。有機層を濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から13%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(1.08g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.04 (s, 1H), 8.11 (d, 1H), 7.86 (d, 2H), 7.80 (s, 2H), 7.42-7.34 (m, 5H), 7.17-7.10 (m, 6H), 7.03 (d, 2H).
B. 2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−149)
酢酸(1.70mL)を、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.13g)、シアノ酢酸(0.069g)および酢酸アンモニウム(0.078g)に加え、反応物を2時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−149、0.14g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.88 (広幅なs, 1H), 8.38 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.93 (dd, J = 8.4, 1.4 Hz, 1H), 7.87 - 7.79 (m, 2H), 7.75 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.40 - 7.30 (m, 5H), 7.15 - 7.06 (m, 6H), 7.01 - 6.94 (m, 2H).質量(m/z):457(M+1)
+。
C. 2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリルアミド(BC−152)
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.15g)およびシアノアセトアミド(0.035g)に、アセトニトリル(1.9mL)およびピペリジン(0.019mL)を加えた。反応物を22時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)およびジクロロメタン(15mL)を加え、水層を1M HClで酸性化した。層を分離し、水性画分をジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から75%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリルアミド(BC−152、0.077g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.41 (s, 1H), 8.20 (s, 1H), 7.77 (dd, 1H), 7.75 - 7.69 (d, 2H), 7.60 (d, 1H), 7.35 - 7.26 (m, 4H), 7.18 - 7.06 (m, 8H), 6.93 (d, 1H), 6.29 (広幅なs, 1H), 5.59 (広幅なs, 1H).質量(m/z):446(M+1)
+。
D. (E)−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−153)
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.15g)およびマロン酸(0.043g)に、アセトニトリル(1.9mL)およびピペリジン(0.094mL)を加えた。反応物を22時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)およびジクロロメタン(15mL)を加え、水層を1M HClで酸性化した。層を分離し、水層をジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮して、(E)−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−153、0.166g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.29 (広幅なs, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.78 (d, 2H), 7.66 (d, 1H), 7.62 - 7.52 (m, 2H), 7.37 - 7.29 (m, 4H), 7.26 (d, 1H), 7.12 - 7.04 (m, 6H), 6.99 (d, 2H), 6.54 (d, J = 16.0 Hz, 1H).質量(m/z):432(M+1)
+。
E. 2−((2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)メチレン)マロノニトリル(BC−154)
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.16g)およびマロノニトリル(0.029g)に、アセトニトリル(2.0mL)およびピペリジン(0.020mL)を加えた。反応物を22時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)およびジクロロメタン(15mL)を加え、水層を1M HClで酸性化した。層を分離し、水層をジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から20%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−((2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)メチレン)マロノニトリル(BC−154、0.051g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.53 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.88 - 7.77 (m, 4H), 7.39 (d, 2H), 7.35 - 7.31 (m, 3H), 7.17 - 7.07 (m, 6H), 6.97 (d, 2H).質量(m/z):438(M+1)
+。
F. 2−((2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)メチレン)マロンアミド(BC−155)
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.16g)およびマロンアミド(0.046g)に、アセトニトリル(2.1mL)およびピペリジン(0.020mL)を加えた。反応物を24時間加熱還流し、次いでさらにマロンアミド(0.046g)、ピペリジン(0.02mL)および1,2−ジクロロエタン(1.0mL)を加え、反応物をさらに12時間加熱還流した。3回目のマロンアミド(0.046g)およびピペリジン(0.04mL)を加え、反応物をさらに24時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)および酢酸エチル(15mL)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。沈殿物を60℃で真空乾固して、2−((2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)メチレン)マロンアミド(BC−155、0.64g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.86 (s, 1H), 7.82 - 7.75 (m, 3H), 7.58 (d, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.43 - 7.36 (m, 2H), 7.36 - 7.29 (m, 4H), 7.26 (広幅なs, 1H), 7.25 (d, 1H), 7.13 (広幅なs, 1H), 7.12 - 7.03 (m, 6H), 6.98 (d, 2H).質量(m/z):474(M+1)
+。
G. ジメチル2−((2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)メチレン)マロネート(BC−160)
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.15g)およびジメチルマロネート(0.10g)に、アセトニトリル(1.9mL)およびピペリジン(0.038mL)を加えた。反応物を21時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)およびHCl水溶液(1M、1.0mL)を加え、反応物を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機物質をNaOH水溶液(1M、6×10mL)で洗浄し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮して、ジメチル2−((2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)メチレン)マロネート(BC−160、0.11g)にした。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.86 (s, 1H), 7.70 (d, 2H), 7.58 (s, 1H), 7.52 (d, 1H), 7.34 - 7.26 (m, 5H), 7.18 - 7.03 (m, 8H), 6.88 (s, 1H), 3.90 (s, 3H), 3.86 (s, 3H).質量(m/z):504(M+1)
+。
H. メチル2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリレート(BC−161)
酢酸(1.3mL)を、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.10g)、シアノ酢酸メチル(0.064g)および酢酸アンモニウム(0.062g)に加え、反応物を2時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、メチル2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリレート(BC−161、0.12g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.34 (s, 1H), 8.30 (s, 1H), 7.78 (dd, 1H), 7.72 (d, 2H), 7.60 (d, 1H), 7.30 (dd, 5H), 7.18 - 7.06 (m, 7H), 6.93 (d, 1H), 3.94 (s, 3H).質量(m/z):471(M+1)
+。
I. 2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−N−(ピリジン−2−イルメチル)アクリルアミド(BC−163)
シアノ酢酸(0.51g)および2−ピカロイルアミン(0.62mL)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(15.1mL)中0℃溶液に、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(1.12mL)を加えた。反応物を0℃で10分間撹拌し、次いでこの氷浴を除去し、反応物を室温で65時間撹拌した。沈殿物を濾別し、濾液を濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から6%メタノールで溶出)により精製して、中間体の2−シアノ−N−(ピリジン−2−イルメチル)アセトアミド(0.91g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.56 (d, 1H), 7.69 (td, 2H), 7.51 (広幅なs, 1H), 7.28 - 7.18 (m, 2H), 4.59 (d, 3H), 3.45 (s, 3H).
酢酸(2.0mL)を、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.15g)、2−シアノ−N−(ピリジン−2−イルメチル)アセトアミド(0.10g)および酢酸アンモニウム(0.091g)に加え、反応物を3時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(15mL)を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−N−(ピリジン−2−イルメチル)アクリルアミド(BC−163、0.18g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.97 (t, 1H), 8.50 (ddd, 1H), 8.33 (s, 1H), 8.24 (s, 1H), 7.91 - 7.79 (m, 3H), 7.78 - 7.69 (m, 2H), 7.41 - 7.29 (m, 6H), 7.26 (dd, 1H), 7.16 - 7.05 (m, 6H), 6.99 (d, 2H), 4.51 (d, 2H).質量(m/z):547(M+1)+。
J. メチル(E)−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリレート(BC−170)
酢酸(2.7mL)を、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.21g)、マロン酸メチルカリウム(0.20g)および酢酸アンモニウム(0.12g)に加え、反応物を6時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で12時間撹拌し、水性物質を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機物質をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から5%メタノールで溶出)により精製して、メチル(E)−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリレート(BC−170、0.056g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.79 (d, 1H), 7.70 (d, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.52 (d 1H), 7.40 (dd, 1H), 7.29 (dd, 4H), 7.18 - 7.04 (m, 9H), 6.88 (d, 1H), 6.46 (d, 1H), 3.82 (s, 3H).質量(m/z):446(M+1)+。
(実施例3)
BC−167、−168および−171の合成
BC−167(3−(2−(4−(tert−ブチル)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸)を、合成スキームI(式中、Z=R3)に示した通りに合成した。1−(R3)−4−エチニルベンゼン(式中、R3はtert−ブチルである)を3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒドと縮合し、続いてR2CH2R1を加えて、2−(4−(tert−ブチル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドにした。
中間体の2−(4−(tert−ブチル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに合成した:
25mLのフラスコに、3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒド(0.25g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.021g)およびヨウ化銅(I)(0.017g)を加えた。フラスコを窒素で20分間パージした。トリエチルアミン(0.70mL)の無水アセトニトリル(5.0mL)中溶液を、窒素をこれに20分間吹き込むことにより脱気した。トリエチルアミン溶液および1−(tert−ブチル)−4−エチニルベンゼン(0.22mL)を反応物に加え、これを室温で18時間撹拌した。水(5mL)および酢酸エチル(5mL)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。水(5mL)および1M HCl(1mL)を加え、次いで水性物質を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(tert−ブチル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.24g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.06 (s, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.84 (d, 2H), 7.77 (dd, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.05 (d, 1H), 1.36 (s, 9H).
酢酸(4.31mL)を、2−(4−(tert−ブチル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.24g)、シアノ酢酸(0.18g)および酢酸アンモニウム(0.20g)に加え、反応物を2時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で17時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、3−(2−(4−(tert−ブチル)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−167、0.28g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.88 (広幅なs, 1H), 8.42 (s, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.97 (dd, 1H), 7.90 (d, 2H), 7.80 (d, 1H), 7.57 - 7.48 (m, 3H), 1.29 (s, 9H).質量(m/z):346(M+1)+。
BC−168および−171もまた、合成スキームI(Zが得られた2−(4−(X)フェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒド中間体および最終生成物の4位にて電子供与基のX−である)に従って合成した。
2−シアノ−3−(2−(4−メトキシフェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−168)を、以下の通りに中間体の2−(4−メトキシフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドから製造した:
25mLのフラスコに、3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒド(0.25g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.021g)およびヨウ化銅(I)(0.017g)を加えた。フラスコを窒素で20分間パージした。トリエチルアミン(0.70mL)の無水アセトニトリル(5.0mL)中溶液を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気した。次いでトリエチルアミン溶液および1−エチニル−4−メトキシベンゼン(0.16mL)を反応混合物に加えた。次いで反応混合物を室温で18時間撹拌した。水(5mL)および酢酸エチル(5mL)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。水(5mL)および1M HCl(1mL)を加え、次いで水層を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濾液を濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から15%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−メトキシフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.25g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.05 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.84 (d, 2H), 7.76, (dd, 1H), 7.65 (d, 1H), 7.01 (d, 2H), 6.95 (d, 1H), 3.88 (s, 3H).
最終生成物BC−168を以下の通りに中間体から誘導した:
酢酸(4.87mL)を、2−(4−メトキシフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.25g)、シアノ酢酸(0.20g)および酢酸アンモニウム(0.23g)に加え、反応物を2時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で17時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−メトキシフェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−168、0.27g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.85 (s, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.98 - 7.88 (m, 3H), 7.77 (d, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.07 (d, 2H), 3.81 (s, 3H).質量(m/z):320(M+1)+。
2−シアノ−3−(2−(4−フェノキシフェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−171)を、以下の通りに中間体の2−(4−フェノキシフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドから製造した:
25mLのフラスコに、3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒド(0.25g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.021g)およびヨウ化銅(I)(0.017g)を加えた。フラスコを窒素で20分間パージした。トリエチルアミン(0.70mL)の無水アセトニトリル(5.0mL)中溶液を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気した。トリエチルアミン溶液および1−エチニル−4−フェノキシベンゼン(0.22mL)を反応物に加え、これを40℃に2.5時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水(5mL)および1M HCl(1mL)を加えた。水性物質を酢酸エチル(3×15mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から13%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−フェノキシフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.25g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.06 (s, 1H), 8.00 (s, 1H), 7.86 (d, 2H), 7.78 (dd, 1H), 7.67 (d, 1H), 7.39 (dd, 2H), 7.18 (d, 1H), 7.12 - 7.05 (m, 4H), 7.00 (d, 1H).
最終生成物BC−171を以下の通りに中間体から誘導した:
酢酸(3.98mL)を、2−(4−フェノキシフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.25g)、シアノ酢酸(0.16g)および酢酸アンモニウム(0.18g)に加え、反応物を2時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−フェノキシフェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−171、0.28g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.87 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 8.32 (s, 1H), 8.06 - 7.90 (m, 3H), 7.80 (d), 7.49 (d, 1H), 7.47 - 7.36 (m, 2H), 7.19 (t, 1H), 7.13 - 7.04 (m, 4H).質量(m/z):382(M+1)
+。
(実施例4)
合成スキームII−BC−151の合成
合成スキームII:
2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−5−イル)アクリル酸(BC−151)を、4−(Z)エチニルベンゼン(式中、Z=ジフェニルアミン)を3−ブロモ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドと縮合して2−(4−(Z)フェニル)ベンゾフラン−5−カルバルデヒドを形成することから始め、続いてR2CH2R1を加えてカルバルデヒドにする、合成スキームIIに従って合成した。
BC−151を、以下の通りに中間体の2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−ベンゾフラン−5−カルバルデヒドから製造した:
窒素を充填したフラスコに、4−エチニル−N,N−ジフェニルアニリン(0.49g)、3−ブロモ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(0.30g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.032g)およびヨウ化銅(I)(0.026g)を加え、フラスコを窒素で20分間パージした。脱気した1,4−ジオキサン(7.5mL)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.3mL)を反応物に加え、反応物を80℃に2時間加熱した。反応温度を100℃に22時間上げた。反応混合物を室温に冷却し、水(10mL)およびブライン(10mL)を加えた。水層を酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−5−カルバルデヒド(0.24g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.04 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.78 - 7.71 (m, 3H), 7.64 (d, 2H), 7.33 - 7.27 (m, 4H), 7.18 - 7.06 (m, 7H), 6.94 (d, 1H).
最終生成物BC−151を以下の通りに中間体から誘導した:
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−5−カルバルデヒド(0.24g)に、アセトニトリル(3.0mL)、シアノ酢酸(0.057g)およびピペリジン(0.090mL)を加えた。反応物を3時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(10mL)およびジクロロメタン(20mL)を加え、水性物質を1M HClでpH=2に酸性化した。層を分離し、水性物質をジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物質をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から15%メタノールで溶出)により精製して、2−シアノ−3−(2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−5−イル)アクリル酸(BC−151、0.14g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.96 (広幅なs, 1H), 8.38 (s, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.95 (d, 1H), 7.78 (t, 3H), 7.39 (s, 1H), 7.33 (t, 4H), 7.09 (dd, 6H), 6.99 (d, 2H).質量(m/z):457(M+1)
+。
(実施例5)
合成スキームIII−BC−156、−157、−158、−159および−175の合成
合成スキームIII:
生成物BC−156、−157、−158、−159および−175を、すべて合成スキームIIIに従って合成した。最初に、1−ブロモ−4−エチニルベンゼンを、触媒(アセトニトリル中のビス(トリフェニルホスフィン)−パラジウムジクロリド/ヨウ化銅(I))およびプロトン捕捉剤(トリエチルアミン)の存在下、3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒドと縮合させて、中間体の2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを形成した。次いで中間体をR’(R”)’Nと縮合させて2−(4−(R’(R”)アミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを形成し、これに続いてR
2CH
2R
1を加えてそれぞれのBC生成物を形成した。
A. 中間体の2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドの合成
100mLのフラスコに、1−ブロモ−4−エチニルベンゼン(1.75g)、3−ヒドロキシ−4−ヨードベンズアルデヒド(2.00g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.17g)およびヨウ化銅(I)(0.14g)を加えた。フラスコを窒素で20分間パージした。トリエチルアミン(5.62mL)の無水アセトニトリル(40.3mL)中溶液を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気した。脱気したトリエチルアミン溶液を反応物に加え、反応物を40℃に1.5時間加熱した。反応物を室温に冷却し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から25%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(2.50g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.07 (s, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.86 - 7.74 (m, 3H), 7.70 (d, 1H), 7.66 - 7.56 (m, 2H), 7.10 (d, 1H).
B. 中間体の2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒドの合成
2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.053g)、ビス(4−メトキシフェニル)アミン(0.041g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.0041g)、QPhos(0.0063g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.026g)を含有する10mLのフラスコを、窒素で20分間パージした。無水トルエン(0.89mL)を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気し、次いで反応物に加えた。反応物を室温で2.5時間撹拌し、水(10mL)を加えることによりクエンチした。水性物質を酢酸エチル(3×15mL)で抽出し、合わせた有機物質を硫酸マグネシウムで脱水した。有機層を濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から20%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.046g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.03 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.74 (dd, 1H), 7.66 (d, 2H), 7.61 (d, 1H), 7.10 (dd, 4H), 6.95 (dd, 2H), 6.89 - 6.83 (m, 5H), 3.81 (s, 6H).
C. 3−(2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−156)および3−(2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−イル)アクリロニトリル(BC−157)の合成
2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.20g)およびシアノ酢酸(0.042g)のアセトニトリル(2.27mL)中溶液に、ピペリジン(0.067mL)を加えた。反応物を24時間加熱還流した。さらにシアノ酢酸(0.042g)およびピペリジン(0.067mL)を加え、反応物をさらに4時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)およびジクロロメタン(20mL)を加えた。水層を1M HClでpH=2に酸性化し、層を分離した。水性画分をジクロロメタン(2×15mL)で抽出し、合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から15%メタノール)により精製して、不純物を含むBC−156および不純物を含むBC−157を得た。BC−156をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(第1のカラム:ジクロロメタン中0から10%メタノールで溶出;第2のカラム:ヘキサン中0から100%酢酸エチル、次いでジクロロメタン中0から20%メタノールで溶出)によりさらに精製して、3−(2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−156、0.037g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。不純物を含むBC−157をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0から20%酢酸エチルで溶出)によりさらに精製して、3−(2−(4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリロニトリル(BC−157、0.064g)をE:Zオレフィン異性体のおよそ5:1混合物として得た。
BC−156:
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.11 (s, 1H), 8.01 (広幅なs, 1H), 7.72 (d, 3H), 7.63 (d, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.08 (dd, 4H), 6.92 (dd, 4H), 6.76 (dd, 2H), 3.72 (s, 6H).質量(m/z):517(M+1)
+。BC−157、主要な異性体(E異性体):
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.69 - 7.56 (m, 2H), 7.54 (s, 1H), 7.50 (d, 1H), 7.47 (d, 1H), 7.29 (dd, 1H), 7.14 - 7.05 (m, 4H), 6.94 (dd, 2H), 6.90 - 6.79 (m, 5H), 5.85 (d, J = 16.6 Hz, 1H), 3.81 (s, 6H).質量(m/z):473(M+1)
+。
D. 中間体の2−(4−(ビス(4−(tert−ブチル)フェニル)アミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒドの合成
2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.21g)、ビス(4−(tert−ブチル)フェニル)アミン(0.19g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.016g)、QPhos(0.024g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.099g)を含有する10mLのフラスコを、窒素で20分間パージした。無水トルエン(3.43mL)を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気し、次いで反応物に加えた。反応物を室温で3時間撹拌し、水(15mL)および1M HCl(1.02mL)を加えることによりクエンチした。水性物質を酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、合わせた有機画分を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(ビス(4−(tert−ブチル)フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.20g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.03 (s, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.75 (dd, 1H), 7.70 (d, 2H), 7.62 (d, 1H), 7.30 (d, 4H), 7.07 (dd, Hz, 6H), 6.91 (d, 1H), 1.32 (s, 18H).
E. 3−(2−(4−(ビス(4−(tert−ブチル)フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−158)の合成
酢酸(0.49mL)を、2−(4−(ビス(4−(tert−ブチル)フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.049g)、シアノ酢酸(0.020g)および酢酸アンモニウム(0.023g)に加え、反応物を1.5時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、3−(2−(4−(ビス(4−(tert−ブチル)フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−158、0.049g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.38 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.93 (d, 1H), 7.80 (d, 2H), 7.74 (d, 1H), 7.40 - 7.29 (m, 5H), 7.02 (d, 4H), 6.90 (d, 2H), 1.25 (s, 18H).質量(m/z):569(M+1)+。
F. 2−シアノ−3−(2−(4−(ジ(ピリジン−3−イル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−159)の合成
中間体のジ(ピリジン−3−イル)アミン:
は、WO2007089735A2を適用した手順により合成した。3−アミノピリジン(0.30g)、3−ヨードピリジン(0.99g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.0291g)、Xantphos(0.084g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.37g)を含有する25mLのフラスコを、窒素で20分間パージした。無水トルエン(6.41mL)を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気し、次いで反応物に加えた。反応物を50℃に24時間加熱し、次いで室温に冷却した。反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、次いで水(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から10%メタノールで溶出)により精製して、ジ(ピリジン−3−イル)アミン(0.54g)を得た。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.41 (d, J = 2.8 Hz, 2H), 8.23 (dd, J = 4.7, 1.3 Hz, 2H), 7.41 (ddd, J = 8.2, 2.5, 1.2 Hz, 2H), 7.21 (dd, J = 8.3, 4.8 Hz, 2H), 5.81 (広幅なs, 1H).
次に、中間体の2−(4−(ジ(ピリジン−3−イル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに合成した:
2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.19g)、ジ(ピリジン−3−イル)アミン(0.11g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.014g)、QPhos(0.022g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.089g)を含有する10mLのフラスコを、窒素で30分間パージした。無水トルエン(3.1mL)を、窒素を30分間吹き込むことにより脱気し、次いで反応物に加えた。反応物を室温で3時間撹拌し、水(15mL)を加えることによりクエンチした。水性物質をジクロロメタン(3×15mL)で抽出し、合わせた有機画分を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から5%メタノールで溶出)により精製して、2−(4−(ジ(ピリジン−3−イル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.096g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.05 (s, 1H), 8.45 (d, 2H), 8.36 (dd, 2H), 8.00 (s, 1H), 7.84 - 7.79 (m, 2H), 7.77 (dd, 1H), 7.67 (d, 1H), 7.46 (ddd, 2H), 7.25 (m, 2H), 7.15 (d, 2H), 7.01 (d, 1H).
最終生成物2−シアノ−3−(2−(4−(ジ(ピリジン−3−イル)アミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−159)を合成した:
酢酸(1.04mL)を、2−(4−(ジ(ピリジン−3−イル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.096g)、シアノ酢酸(0.043g)および酢酸アンモニウム(0.048g)に加え、反応物を2.5時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。反応物を室温で0.5時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固した。物質をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から20%メタノールで溶出)により精製して、2−シアノ−3−(2−(4−(ジ(ピリジン−3−イル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−159、0.066g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.35 (d, 2H), 8.33 (dd, 2H), 8.21 (s, 1H), 8.17 (広幅なs, 1H), 7.91 (d, 2H), 7.84 (d, 1H), 7.73 (d, 1H), 7.55 (ddd, 2H), 7.42 (s, 1H), 7.38 (dd, 2H), 7.09 (d, 2H).質量(m/z):459(M+1)+。
G. 2−シアノ−3−(2−(4−(メチル(フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−175)の合成
最初に、中間体の2−(4−(メチル(フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに製造した:
2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.19g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.014g)、QPhos(0.022g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.089g)を含有する10mLのフラスコを、窒素で30分間パージした。窒素を30分間吹き込むことにより無水トルエン(3.1mL)を脱気した。脱気したトルエンおよびN−メチルアニリン(0.07mL)をフラスコに加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、水(10mL)および1M HCl(1mL)を加えることによりクエンチした。水層を酢酸エチル(3×15mL)で抽出し、合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から15%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(メチル(フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.12g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.03 (s, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.77 - 7.71 (m, 3H), 7.62 (d, 1H), 7.38 (dd, 2H), 7.20 (dd, 2H), 7.18 - 7.12 (m, 1H), 6.94 (d, 2H), 6.89 (d, 1H), 3.39 (s, 3H).
最終生成物BC−175を以下の通りに中間体から製造した:
アセトニトリル(1.92mL)およびピペリジン(0.076mL)を、2−(4−(メチル(フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.12g)およびシアノ酢酸(0.049g)に加えた。反応物を2時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)および酢酸(1mL)を加えた。反応物を室温で4時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄し、50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−(メチル(フェニル)アミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−175、0.135g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.9 (広幅なs, 1H), 8.37 (s, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.92 (d, 1H), 7.84 - 7.76 (m, 2H), 7.72 (d, 1H), 7.42 - 7.35 (m, 2H), 7.30 (d, 1H), 7.21 (dd, 2H), 7.15 (t, 1H), 6.96 - 6.88 (d, 2H), 3.32 (s, 3H).質量(m/z):395(M+1)+。
(実施例6)
BC−166、−169、−172および−173の合成
最終生成物BC−166、−169、−172および−173を、2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(上記実施例5Aにて合成)から合成した。これらの分子に関して、環状第二級アミンをアセタールに付加することを(説明の目的で)示している合成スキームIVに示したように、カルバルデヒドをアセタールとして保護した後、第二級アミンと反応させた。アミンと縮合し、続いてカルバルデヒドを脱保護し、これをR
2CH
2R
1と反応させた(合成スキームIにおいてと同様)。
合成スキームIV:
A. 共通の中間体の2−(4−ブロモフェニル)−6−(ジエトキシメチル)−ベンゾフランの合成
窒素でフラッシュした2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(1.0g)を含有するフラスコに、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.063g)、エタノール(200プルーフ、8.3mL)、酢酸エチル(8.3mL)およびオルトギ酸トリエチル(5.5mL)を加えた。反応物を室温で22時間撹拌した。トルエン(15mL)を加え、反応物を濃縮した。トルエン(15mL)を再度加え、反応物を再度濃縮して、2−(4−ブロモフェニル)−6−(ジエトキシメチル)ベンゾフランを得、これをさらには精製せずに使用した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.84 (d, 2H), 7.68 (d, 2H), 7.62 (d, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.48 (d, 1H), 7.29 (dd, 1H), 5.57 (s, 1H), 3.57 - 3.42 (m, 4H), 1.13 (t, 6H).
B. 2−シアノ−3−(2−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−166)の合成
最初に、中間体の2−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに製造した:
2−(4−ブロモフェニル)−6−(ジエトキシメチル)ベンゾフラン(0.075g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.005g)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(0.003g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.029g)を含有する10mLのフラスコを、窒素で20分間パージした。無水トルエン(0.40mL)を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気し、次いで反応物に加えた。ピペリジン(0.024mL)を加え、反応物を80℃に2時間加熱し、次いで室温に冷却した。酢酸エチル(10mL)および1M HCl(10mL)を加え、反応物を室温で1.5時間撹拌した。水層を飽和重炭酸ナトリウムで中和し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濾液を濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.044g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.03 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.81 - 7.71 (m, 3H), 7.61 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 6.88 (s, 1H), 3.36 - 3.24 (m, 4H), 1.68 (d, J = 29.2 Hz, 6H).
次いで最終生成物BC−166を以下の通りに製造した:
酢酸(1.51mL)を、2−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.092g)、シアノ酢酸(0.062g)および酢酸アンモニウム(0.070g)に加え、反応物を2.5時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、水(20mL)を加えた。反応物を室温で1.5時間撹拌し、次いで沈殿物を濾取した。固形物を水(50mL)で次いでヘキサン(50mL)で洗浄し、次いで50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−(ピペリジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−166、0.090g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.35 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.77 (d, 2H), 7.70 (d, 1H), 7.27 (d, 1H), 7.01 (d, 2H), 3.30 (広幅なs, 4H), 1.56 (広幅なs, 6H).質量(m/z):373(M+1)+。
C. 2−シアノ−3−(2−(4−モルホリノフェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−169)の合成
最初に、中間体の2−(4−モルホリノフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに製造した:
2−(4−ブロモフェニル)−6−(ジエトキシメチル)ベンゾフラン(0.309g、0.824mmol)に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(19mg)、トリ(tert−ブチル)ホスフィンテトラフルオロボレート(12mg)およびナトリウムtert−ブトキシド(118mg)を加えた。反応混合物を窒素で20分間パージした。乾燥トルエン(3mL)を窒素で20分間パージすることにより脱気し、次いで反応混合物に加えた。モルホリン(0.086mL)を加え、反応混合物を80℃に加熱した。4時間後、反応物を室温に冷却し、1M HCl(10mL)および酢酸エチル(10mL)を加えた。混合物を室温で1.5時間撹拌した。次いで反応混合物を飽和重炭酸ナトリウムで中和し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。固体をヘキサン:酢酸エチルで溶出するシリカゲルカラム(0〜50%の勾配としての酢酸エチル)により精製して、2−(4−モルホリノフェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(135mg、53%)を得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.03 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.80 (d, 2H), 7.74 (dd, 1H), 7.62 (d, 1H), 6.99 (d, 2H), 6.91 (d, 1H), 3.88 (t, 4H), 3.26 (t, 4H).質量(m/z):308(M+1)+。
次いで酢酸アンモニウムの存在下、酢酸中で2−(4−モルホリノフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドをシアノ酢酸と反応させることにより、最終生成物BC−169を製造した(実施例6Bにてこの対応するアルデヒドからのBC−166の合成にて記載した方法と同様):
収量は143mgであった。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.40 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.95 (dd, 1H), 7.82 (d, 2H), 7.73 (d, 1H), 7.33 (s, 1H), 7.05 (d, 2H), 3.73 (t, 4H), 3.22 (t, 4H).質量(m/z):375(M+1)+。
D. 2−シアノ−3−(2−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−172)の合成
最初に、実施例6Cで2−(4−モルホリノフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドの合成にて記載した方法と同様に、中間体の2−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを製造した。
収量は153mg(58%)であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.27 (s, 1H), 8.23 (s, 1H), 7.88 (dd, 1H), 7.83 (d, 2H), 7.71 (d, 1H), 7.32 (s, 1H), 7.09 (d, 2H), 3.42 (br s, 4H), 2.88 (br s, 4H), 2.49 (s, 3H).質量(m/z):388(M+1)
+。
実施例6BでBC−166の合成にて記載した方法と同様に、最終生成物BC−172を製造し、64mg、70%で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.02 (s, 1H), 7.95 (s, 1H), 7.78 (d, 2H), 7.73 (dd, 1H), 7.61 (d, 1H), 6.98 (d, 2H), 6.89 (d, 1H), 3.35 (t, 4H), 2.64 (t, 4H), 2.40 (s, 3H).質量(m/z):321(M+1)
+。
E. 2−シアノ−3−(2−(4−(ジエチルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−173)の合成
最初に、中間体の2−(4−(ジエチルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに製造した:
2−(4−ブロモフェニル)−6−(ジエトキシメチル)ベンゾフラン(0.22g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.013g)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(0.008g)およびナトリウムtert−ブトキシド(0.083g)を含有する10mLのフラスコを、窒素で20分間パージした。無水トルエン(1.2mL)を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気し、次いで反応物に加えた。ジエチルアミン(0.12mL)を加え、反応物を80℃に2時間加熱し、次いで室温に冷却した。酢酸エチル(5mL)および1M HCl(5mL)を加え、反応物を室温で1時間撹拌した。水層を飽和重炭酸ナトリウムで中和し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機画分をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から10%酢酸エチルで溶出)により精製して、2−(4−(ジエチルアミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.097g)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.98 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 7.78 - 7.70 (m, 3H), 7.68 (d, 1H), 7.19 (d, 1H), 6.75 (d, 2H), 3.39 (q , 4H), 1.10 (t, 6H).
次いで最終生成物BC−173を以下の通りに製造した:
2−(4−(ジエチルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(0.097g)およびシアノ酢酸(0.031g)に、アセトニトリル(1.6mL)およびピペリジン(0.049mL)を加えた。反応物を2時間加熱還流し、次いでさらにシアノ酢酸(0.006g)を加えた。さらに2時間後、さらにシアノ酢酸(0.006mg)およびピペリジン(0.024mL)を加え、反応物を20時間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、次いで水(10mL)および酢酸(1.0mL)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。沈殿物を濾取し、水(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗浄した。固体を50℃で真空乾固して、2−シアノ−3−(2−(4−(ジエチルアミノ)フェニル)−ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−173、0.098g)を単一の同定されていないオレフィン異性体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.76 (s, 1H), 8.38 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 (d, 2H), 7.68 (d, 1H), 7.19 (d, 1H), 6.75 (d, 2H), 3.39 (q, 4H), 1.10 (t, 6H).質量(m/z):361(M+1)+。
(実施例7)
BC−162およびBC−165の合成
BC−162およびBC−165もまた、2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(上記実施例5Aにて合成)から合成した。
A. 3−(2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−162)の合成
2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを、実施例6BにおけるBC−166の合成にて使用した方法と同様にシアノ酢酸および酢酸アンモニウムと反応させることにより、232mg、98%の収量で3−(2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−イル)−2−シアノアクリル酸(BC−162)に変換した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.27 (s, 1H), 8.26 (s, 1H), 7.94 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 8.32 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.62 (s, 1H), 7.22 (br s, 1H).質量(m/z):367(M−1)−。
B. 2−シアノ−3−(2−(3’,4’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−165)の合成
最初に、中間体の2−(3’,4’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒドを以下の通りに製造した:
丸底フラスコ(10mL)に2−(4−ブロモフェニル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(155mg、0.5mmol)、3,4−ジメトキシフェニルボロン酸(100mg、0.5mmol)およびPdCl2(PPh3)2(17mg)を入れ、次いで窒素で20分間パージした。1,2−ジメトキシエタンを、窒素を20分間吹き込むことにより脱気した。1,2−ジメトキシエタン(3.5mL)を反応物に加え、続いてトリエチルアミン(101mg)を加え、窒素下90℃で終夜撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を真空下で除去した。固体をシリカゲルカラム(ヘキサンおよび酢酸エチル0から30%)により精製して、2−(3’,4’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(88mg、49%)を薄黄色固体として得た。1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.06 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 7.94 (d, 2H), 7.78 (dd, 1H), 7.68 (m, 3H), 7.20 (m, 1H), 7.94 (d, 1H), 7.10 (s, 1H), 6.96 (d, 1H), 3.96 (s, 3H), 3.93 (s, 3H).質量(m/z):359(M+1)+。
次いで最終生成物BC−165を以下の通りに製造した:
2−(3’,4’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゾフラン−6−カルバルデヒド(210.9mg、0.59mmol)に、シアノ酢酸(120mg)および酢酸アンモニウム(135mg)を加えた。酢酸(5mL)を加え、反応混合物を3時間加熱還流し、室温に冷却し、水(10mL)を加え、室温で5時間撹拌した。固体を濾取し、次いで固体を水(40mL)で、次いでヘキサン(40mL)で洗浄した。次いで固体を高真空下60℃で終夜乾燥して、2−シアノ−3−(2−(3’,4’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゾフラン−6−イル)アクリル酸(BC−165、0.165g、66%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.44 (s, 1H), 8.36 (s, 1H), 8.04 (d, 2H), 8.00 (d, 1H), 7.84 (d, 3H), 7.63 (s, 1H), 7.39 (d, 2H), 7.06 (d, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.80 (s, 3H).質量(m/z):424(M−−1)。
(実施例8)
BC−176の合成
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルボン酸(BC−176)を合成スキームVに従って合成した。
合成スキームV:
最初に、中間体のメチル2−ヒドロキシ−3−ヨードベンゾエートを製造した:
フラスコに還流冷却器を装着し、窒素でフラッシュし、無水メタノール(7.9mL)および塩化アセチル(0.03mL)を入れた。10分後、2−ヒドロキシ−3−ヨード安息香酸(1.05g)を加えた。反応物を5.5時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。メタノールを真空下で除去し、次いで残留物を酢酸エチル(50mL)に再度溶解した。酢酸エチル溶液を飽和重炭酸ナトリウム(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮して、メチル2−ヒドロキシ−3−ヨードベンゾエート(1.1g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.74 (d, 1H), 7.61 (d, 1H), 7.33 (dd, 1H), 5.45 (s, 1H), 3.90 (s, 3H).
次の中間体のメチル2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルボキシレートを以下の通りに製造した:
100mLのフラスコに、メチル2−ヒドロキシ−3−ヨードベンゾエート(1.1g)、4−エチニルトリフェニルアミン(1.28g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.083g)およびヨウ化銅(I)(0.068g)を加えた。フラスコを窒素で20分間パージした。トリエチルアミン(2.76mL)の無水アセトニトリル(19.8mL)中溶液を、窒素を20分間吹き込むことにより脱気した。トリエチルアミン溶液を反応フラスコに加え、反応物を40℃に2.5時間加熱した。混合物を室温に冷却し、水(15mL)およびブライン(15mL)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。次いで層を分離し、水層を酢酸エチル(3×25mL)で抽出した。合わせた有機画分を1M HClおよびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン中0から8%酢酸エチルで溶出)により精製して、メチル2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルボキシレート(1.5g)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.17 (s, 1H), 7.93 (dd, 1H), 7.72 (d, 2H), 7.56 (d, 1H), 7.29 (dd, 5H), 7.19 - 7.05 (m, 7H), 6.91 (d, 1H), 3.94 (s, 3H).
次いで最終生成物BC−176を以下の通りに製造した:
メチル2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルボキシレート(0.51g)のTHF(6.0mL)中溶液に、1M LiOH溶液(1.2mL)を加えた。反応物を室温で40分間撹拌し、次いで40℃に2.5時間加熱した。反応物を19時間加熱還流し、次いで1M LiOH(4.8mL)を加えた。さらに4.5時間後、反応物を室温に冷却し、水(10mL)を加えた。水性物質を酢酸でpH=4に酸性化し、次いで酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。合わせた有機画分を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮して、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルボン酸(BC−176、0.49g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.88, (広幅なs, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.85 - 7.77 (m, 3H), 7.66 (d, 1H), 7.39 - 7.29 (m, 5H), 7.15 - 7.04 (m, 6H), 7.04 - 6.96 (m, 2H).質量(m/z):406(M+1)
+。
(実施例9)
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−N−ヒドロキシベンゾフラン−6−カルボキサミド(BC−177)の合成
2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾフラン−6−カルボン酸(BC−176、0.13g)の無水ジクロロメタン(3.1mL)中懸濁液を0℃に冷却し、塩化オキサリル(0.053mL)を加えた。N,N−ジメチルホルムアミド(0.001mL)を加え、反応物を0℃で10分間撹拌した。氷浴を除去し、反応物を室温で3時間撹拌した。反応物を濃縮し、無水トルエン(3mL)を加え、次いで真空で除去した。トルエン(3mL)を再度加え、真空で除去した。残留物を無水ジクロロメタン(3.1mL)に溶解し、0℃に冷却した。トリエチルアミン(0.22mL)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(0.044g)を加え、反応物を室温に終夜ゆっくり温めた。水(10mL)および飽和重炭酸ナトリウム(5mL)を加え、水性物質をジクロロメタン(3×15mL)で抽出した。合わせた有機物質を1M HCl(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0から5%メタノールで溶出)により精製して、2−(4−(ジフェニルアミノ)フェニル)−N−ヒドロキシベンゾフラン−6−カルボキサミド(BC−177、0.11g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.20 (広幅なs, 1H), 9.05 (広幅なs, 1H), 7.94 (d, 1H), 7.82 (d, 2H), 7.70 - 7.64 (m, 2H), 7.40 - 7.30 (m, 5H), 7.14 - 7.07 (m, 6H), 7.03(d, 2H).質量(m/z):421(M+H)。
(実施例10)
タンパク質凝集および脱凝集の検討。
A.材料
6.61gのTrizma HCl(Sigma T5941)および0.97gのTrizma塩基(Sigma T1503)ならびに8.77gのNaClを脱イオン水900mLに加えることにより、TrisHCl−NaCl緩衝液を調製し、必要な場合pHを7.4に調整し、最終容量を1.000Lにした。得られたTrisHCl−NaCl緩衝液は、pH7.4で50mMのTrisHClおよび150mMのNaClを含有する。
無極性蛍光プローブの4,4’−ジアニリノ−1,1’−ビナフチル−5,5’−ジスルホン酸二カリウム塩(ビス−ANS)をSigma−Aldrichから入手した。脱イオン水中15mMのビス−ANSからなるストック溶液を、20μLのアリコートにて−80℃で貯蔵した。使用する直前、pH7.4のTrisHCl−NaCl緩衝液180μLを15mMのアリコート20μLに加えることにより、1.5mMのビス−ANSを調製し、得られた溶液を遮光下で貯蔵した。
アミロイドベータペプチド1−42(Aβ42、分子量4.51kD)をChina Peptidesから入手した。Aβ42を1〜2mgのアリコートにて−80℃で貯蔵した。使用する直前、Aβ42アリコートをDMSO中で1.5mMに希釈し、緩やかにボルテックス撹拌し、室温で5分間静置し、次いで溶液をおよそ3秒間200rpmで遠心分離した。
亜鉛、亜鉛(II)およびZn2+は、水性の2価の亜鉛イオンとして同義的に使用する。硫酸亜鉛を脱イオン水中500mMのストック溶液中で調製した。使用する直前、ストック20μLを脱イオン水10mLに加えることにより、ストックを1mMのZn(II)に希釈した。
EDTAは、Aβ42脱凝集のビス−ANS蛍光アッセイ用の陽性対照として使用される亜鉛キレート剤である。脱イオン水中10mMのEDTAでのストック溶液を、EDTA二水和物二ナトリウム塩、分子量372.24g/molから調製した。使用する直前、ストックをTrisHCl−NaCl緩衝液中で2mMに希釈した。
アミリン(分子量3.18kD)をChina Peptidesから入手し、1〜2mgのアリコートにて−80℃で貯蔵した。使用する直前、アミリンアリコートをDMSO中で1.5mMに希釈し、緩やかにボルテックス撹拌し、室温で5分間静置し、次いで溶液をおよそ3秒間200rpmで遠心分離した。
没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を、アミリン脱凝集のビス−ANS蛍光アッセイ用の陽性対照として使用する。EGCGのストック溶液をDMSO中10mMのストックで調製した。
化合物を、10mMのストック溶液DMSOとして試験用に調製した。使用する直前、10mMのストック320μLを480uLのDMSOに加えることにより、ストックをDMSO中で4mMに希釈した。次いで一組の4倍連続希釈を、溶液200μLを600μLのDMSO中に連続的に加えることにより行って、これにより5種の濃度、4mM、1mM、0.25mM、0.0625mMおよび0.0152mMを得た。
B.ビス−ANS蛍光と同様の範囲での試験化合物の蛍光の決定。
試験化合物の蛍光は、いずれの脱凝集データをも混乱させる場合がある。一部の化合物に関して、ビス−ANS蛍光アッセイにて使用したように、475nmのカットオフの390nm励起波長/490nm発光波長を使用して蛍光を決定し、これにより化合物の自然または亜鉛誘発性蛍光がビス−ANSアッセイを干渉するかどうかを決定した。Tris−HCl緩衝液の基底蛍光を5分間確定し、次いで試験化合物(最終濃度100μM)を緩衝液に加え、蛍光強度をさらに5分間記録した。次いで硫酸亜鉛(II)(最終濃度0.10mM)を試料に加え、蛍光をさらに5分間記録した。他の誘導体に関して、例えば、試料中にタンパク質を含まない、60μLの試験化合物を加えた、緩衝液中のビス−ANSからなる対照試料の蛍光を監視することにより、試験化合物の蛍光を、アッセイを用いて同時に決定した。
表1に示したように、蛍光が観察されないもの、わずかな蛍光を有するもの、または強い蛍光を有するものとして、試験化合物を分類した。これらの蛍光が観察されない試験化合物は、ビス−ANSアッセイを干渉しない。いくつかの試験化合物のわずかな蛍光は、ビス−ANSアッセイの強度を補填することとなるが、その結果報告されるEC
50をさらに不確実にする。強い蛍光を有すると分類されるものを試験化合物に使用すると、蛍光が極めて強いため、タンパク質凝集および脱凝集を決定するためにビス−ANSアッセイを使用することが出来なかった。
C.Aβ42凝集/脱凝集の検討
ビス−ANSを、亜鉛(II)の存在下または非存在下で各試験化合物の効果EC50を決定するための、Aβ42凝集用および脱凝集用蛍光マーカーとして使用した。15μMのAβ42を含有するTrisHCl−NaCl緩衝液(TrisHCl−NaCl緩衝液:0.50mMのTrisHCl、1.50mMのNaCl、pH7.4)中で15μMのビス−ANSの蛍光を監視することにより、基底蛍光を確定した。5分後、Zn(II)(硫酸亜鉛(II)として、最終濃度15μM)をAβ42溶液に加え、蛍光強度を24〜40分間監視した。蛍光は、凝集期間中Zn(II)を加えるに従って増加する。凝集期間後、試験化合物の濃度(60、15、3.75、0.938、0.234または0μMの最終濃度)を変化させて加え、蛍光強度が頭打ちになるまで、通常20〜24分再度監視した。この時点で、TrisHCl−NaCl緩衝液中15μMのビス−ANSおよび15μMのAβ42ペプチドからなり、Zn(II)を加えていない試料を29〜45分間凝集させた後、試験化合物またはEDTAを加えた。試験化合物を用いる各組のアッセイを、陽性対照として働かせるために、20μMのEDTAを誘導体の代わりに用いたアッセイと共に行った。60、15、3.75、0.938、0.234または0μMのEDTAを試験化合物として添加する一連のアッセイを、亜鉛(II)の存在下または非存在下でEDTAのEC50を決定するために別途行った。
475nmをカットオフした390nm励起波長/490nm発光波長で蛍光強度を決定した。半数効果濃度EC50は、観察された最大応答の50%を生じる化合物濃度である。応答I0−Ifを、誘導体を加えていない試料にて決定された最終強度I0に対する各濃度でのアッセイの最後の最終蛍光強度If、cの差異として算出した。60μMの試験化合物を含有する試料の最終蛍光強度である最大応答I60に対して応答を正規化した、正規化された応答=(I0−If,)/(I0−I60)。次いで蛍光強度を4パラメータのシグモイドロジスティック関数にフィットさせて、EC50を決定した。
可溶性Aβ42の存在下、亜鉛(II)はミリ秒内で凝集を引き起こす。この凝集は、ビス−ANS蛍光の増加により検出される。亜鉛依存性の凝集の脱凝集は、アッセイにおいてビス−ANSの蛍光の減少により検出できる。図1は、ビス−ANS蛍光アッセイにより測定される、亜鉛(II)誘発性のAβ42凝集および亜鉛誘発性の凝集のBC−147による脱凝集を示す。
試験化合物BC−147による、自発的に形成された亜鉛非依存性のAβ42凝集の脱凝集の代表例を図2に示す。亜鉛(II)の非存在下では、可溶性Aβ42は、亜鉛(II)の存在下での凝集よりもゆっくり亜鉛非依存性の凝集を引き起こす。このAβ42の自発的に形成された亜鉛非依存性の凝集は、ビス−ANS蛍光の増加により検出される。亜鉛非依存性の凝集の脱凝集は、ビス−ANS蛍光の減少により検出できる。図2は、自然発生、亜鉛非依存性のAβ42凝集のBC−147による脱凝集を示す。
BC−147に関して図1および図2に示したこれらのデータと同様に、それぞれの試験化合物に関するデータから、亜鉛誘発性および亜鉛非依存性のAβ42凝集の試験化合物による脱凝集に関してEC50を決定し、これを表2に示す。
過剰のEDTAは、亜鉛(II)と結合し、亜鉛誘発性の凝集の脱凝集を引き起こすことにより、陽性対照として働く。Zn(II)の存在下でのEC50は、亜鉛誘発性のAβ42凝集のEDTAによる脱凝集に関して46.1μM(95%C.I.19.9〜107.1μM)であることが分かった。表2。EC50は、1:1比にて定量的ではないが、EDTA:Zn(II)錯体として期待される1:1化学量論量にて期待される大きさである。
EDTAは亜鉛(II)キレート化に作用すると考えられるので、EDTAキレート剤の存在が亜鉛非依存性の凝集に対して効果を有するとは考えられない。この機構と合致するように、EDTAは亜鉛非依存性のAβ42凝集に対して効果を示さなかった。すなわち、表2に示すように、Zn(II)の非存在下、ビス−ANS蛍光はEDTA添加で変化せず、10
11μMのEC
50で得られるデータと一致した。
D. アミリン凝集の検討
アミリン凝集のマーカーとしてビス−ANS(15μM)の蛍光を監視しながら、TrisHCl−NaCl緩衝液中のアミリン(15μM)を24時間凝集させた。一般的には、蛍光は凝集期間中増加する。凝集期間後、次いで試験化合物の濃度(60、15、3.75、0.938、0.234または0μMの最終濃度)を変化させて試料に加え、蛍光強度が頭打ちになるまで、通常さらに20〜24時間監視した。ビス−ANSを含有するがアミリンは含有しない試料に試験化合物を加えることでコントロールを同時に行い、これによって何ら干渉されない試験化合物自体の本質的な蛍光を決定した(表1参照)。
試験化合物をアッセイするのに使用した方法と同様に、24時間後に60、15、3.75、0.938、0.234または0μMのEGCGを加えることによりEGCGのEC50を決定するための一連のアッセイも行った。
以下の表3に示したように、実施例9Bにおける手順と同様に、蛍光強度は390nm励起波長/490nm発光波長で決定し、蛍光応答は最小蛍光強度で決定し、次いでこの蛍光強度をEC
50値を決定するために使用した。