JP6905740B2 - 液体調味料 - Google Patents
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液体調味料では、使用した原料・素材によっては、製品内に澱が発生する。澱は固形物の沈澱、沈降、浮遊又は凝集であって、製品の品質劣化を想起させ外観上好ましくないため、澱の防止は重要であるが、原因を調べると、性状の保持などを目的として使用したグリセリン脂肪酸エステルが原因物質であると認められる場合があった。
特許文献1には、蛋白飲料において平均HLBが14を超えるグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤が含まれた場合、沈澱が発生する旨が記載されている。そこで、特許文献1では、HLBが14以下であるグリセリン脂肪酸エステルを使用することで、沈澱の発生を抑制する方法が開示されている。
沈澱の抑制方法として増粘剤や安定剤を添加する方法も提案されている。特許文献2では、ペプチドを含有する酸性飲料における長期保存時の沈殿を抑制する方法として、脂肪酸エステル系乳化剤とペクチンを併用して沈澱を抑制する方法が開示されている。
また特許文献3では、ポリグリセリン脂肪酸エステルと増粘安定剤を混合して沈殿の発生が抑制されたことが示されている。
また、特許文献4では、アルコールとグリセリン脂肪酸エステルと糖類を同時に用いることで、常温保存3日後の沈殿物の発生が認められなかった旨が記載されている。
特許文献1に記載のようなHLBが14以下のグリセリン脂肪酸エステルであっても、澱の原因物質となることがあった。
また、特許文献2に示された方法では、魚節抽出物を含有した液体調味料へペクチンを添加した場合、溶解に伴い泡立ちが発生することがあり、液体調味料の製造において好ましくなかった。
また、特許文献3の方法ではつゆ類などの液体調味料で発生する沈殿を抑制できないという問題点があった。
また、特許文献4に示された方法では、アルコールを含めることができない調味料には適用できないという問題点があった。
さらに、麺類と同時に食されるようなスープやつゆには低粘度のものが多いが、沈殿の分散目的で増粘剤を使用すると粘度が高まり、利便性を著しく低下させるという根本的な課題もあった。
固形分換算量で0.01質量%以上6質量%以下の魚節抽出物及び0.002質量%以上0.008質量%以下のグリセリン脂肪酸エステルを含有する液体調味料であって、澱発生の抑制成分として、前記液体調味料の質量に基づき0.2質量%以上0.35質量%以下のタマリンドシードガムを含有し、前記タマリンドシードガムは、1.0質量%水溶液として波長660nm光での透過率が80%以上であることを特徴とする、液体調味料に関する。
また本発明の好ましい態様は、20℃におけるB型粘度計による粘度が1以上10cps以下であることを特徴とする、液体調味料に関する。
さらに好ましい本発明の態様は、前記液体調味料の質量に基づき、魚節抽出物を固形分換算量で0.01質量%以上10質量%以下の範囲の量で、グルタミン酸ナトリウムを0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲の量で、塩分を0.5質量%以上5.0質量%以下の範囲の量で、及び糖分を0.5質量%以上10質量%以下の範囲の量で含有し、且つ、pHが4.0以上6.0以下の範囲にあることを特徴とする、液体調味料に関する。
特に好ましい本発明の態様は、前記液体調味料は、めんつゆであることを特徴とする、液体調味料に関する。
本発明の別の好ましい態様は、固形分換算量で0.01質量%以上6質量%以下の魚節抽出物及び0.002質量%以上0.008質量%以下のグリセリン脂肪酸エステルを含有する液体調味料に対して、1.0質量%水溶液として波長660nm光での透過率が80%以上であるタマリンドシードガムを前記液体調味料の質量に基づき0.2質量%以上0.35質量%以下の含有量で添加することからなる、前記液体調味料の澱を抑制する方法にも関する。
本発明で用いるタマリンドシードガムは、配合する液体調味料が食品である以上、食品用途のものから好ましく選択される。なお、本発明におけるタマリンドシードガムとタマリンドガムとは、同義である。
タマリンドシードガムの濃度が0.2質量%未満の場合、十分に澱を抑制できない。1質量%より大きい場合、粘度が高まりすぎて液体調味料として、利便性が好ましくならない。
タマリンドシードガム以外の増粘剤(キサンタンガム、カラギナン、ペクチン等)を、澱発生の抑制成分として単独で使用したとしても、その効果が発揮できないだけでなく、粘度が増加して液体調味料の利便性をも損ねてしまうおそれもある。
しかしながら、利便性を損なわない程度において、本発明におけるタマリンドシードガムとの併用は可能である。それによって、より優れた澱発生の抑制効果を発揮する可能性も有る。
脂肪酸としては、例えば、炭素原子数8〜22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸又はこれらの混合物を挙げることができる。特に、ミリスチン酸やパルミチン酸が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルの濃度が0.002質量%未満の場合、そもそも澱が発生する可能性は低い。また、0.008質量%を超えると、当該効果を発揮しにくくなる。
魚節抽出物の原料としては鰹節、鯖節、宗田節、まぐろ節、いわし節、あじ節、アゴ節等用いることができ、これらの粉砕物や切削物を抽出に用いることができる。
魚節抽出物の製造方法としては、例えば、上記魚節粉砕物や切削物を、1〜20質量%程度の濃度で、70〜100℃程度で数分から場合によっては数時間熱水抽出した出汁を用いても良いし、また、たんぱく加水分解酵素等を用いて酵素分解して得られる魚節エキスを用いても良い。また、これらを濃縮したエキスも用いることができる。得られた魚節抽出物は、液体調味料に対して1〜50質量%程度添加することが好ましい。
最終製品である液体調味料において魚節抽出物の含有量が固形分換算量で0.01質量%未満の場合、十分な呈味を持った液体調味料とならない。また、10質量%より大きい場合、希釈することなしに直接的に喫食可能な液体調味料としては呈味が強すぎる。
グルタミン酸ナトリウムは、液体調味料の質量に基づき、0.1質量%以上2.0質量%以下の量で含有されるのが好ましい。この範囲内の含有量に調整されるならば、魚節抽出物由来であっても、他の調味料由来であっても、アミノ酸塩として添加しても良い。
グルタミン酸ナトリウムの含有量が0.1質量%未満の場合、十分な旨味を持った液体調味料とならない。2.0質量%より大きい場合、希釈することなしに直接的に喫食可能な液体調味料としては旨味が強すぎる。
塩分が0.5質量%未満の場合、十分な塩味を持った液体調味料とならない。5.0%より大きい場合、希釈することなしに直接的に喫食可能な液体調味料としては塩味が強すぎる。
ブドウ糖換算での全糖の測定方法としては、試料を塩酸にて加水分解した後にソモギ―変法にて測定し、ブドウ糖換算した値を全糖とする方法(直接還元糖,糖分,全糖、日本食品分析センター、http://www.jfrl.or.jp/bunsekiflow/files/246.pdf)などが知られている。
糖分が0.5質量%未満の場合、十分な甘味を持った液体調味料とならない。10質量%より大きい場合、希釈することなしに直接的に喫食可能な液体調味料としては甘味が強すぎる。
尚、ここでいう利便性とは、液体調味料の麺への付着のあり方や、小袋から器へのつゆの移し替えやすさやなど、粘度特性について、ストレートタイプの液体調味料として適切かどうかを示すものである。
<目的>
澱の発生原因が魚節抽出物及びグリセリン脂肪酸エステルの存在によるものであることを確認するために、および、タマリンドシードガムが澱の発生の抑制に効果を奏することを確認するために、下記実験を行った。
魚節抽出物(魚節出汁)、グルタミン酸ナトリウム、食塩、上白糖、グリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノミリスチン酸エステル)、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カラギーナンを用いて、表1の含有量となるように液体調味料(試験区1−1〜1−9)をモデルとして試作した。タマリンドシードガムについては、複数種のタマリンドシードガムについて、それぞれの1.0質量%水溶液の波長660nm光での透過率を分光光度計U−2800A(日立)を用いて測定し、透過率によってタマリンドシードガム1〜4に分類して配合に使用した。キサンタンガム、カラギーナンについても同様に透過率を測定した。
各試作物は配合後90℃達温にて殺菌し、その後、44℃で40時間保管した。保管後、澱の有無について目視で確認し、また、粘度をB型粘度計により20℃で測定した。ちなみにストレートつゆの場合、経験的に、製造後44℃以上で40時間保管して澱の発生が認められなければ、室温で6か月以上は澱が発生しないことから、本条件で澱の確認試験を行った。
<目的>
本技術が適用できる液体調味料における、魚節抽出物(固形分換算)含有量、グリセリン脂肪酸エステル含有量及びタマリンドシードガム添加量の上限および下限を把握するために、下記実験を行った。
魚節抽出物(魚節出汁)、グルタミン酸ナトリウム、食塩、上白糖、酢酸、グリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノミリスチン酸エステル)、タマリンドシードガムを用いて、表3の含有量となるように液体調味料(試験区2−1〜2−6)をモデルとして試作した。タマリンドシードガムについては、≪実験1≫におけるタマリンドシードガム2(透過率96.38%)を用いた。各試作物は配合後90℃達温にて殺菌し、その後、44℃で40時間保管した。保管後、澱の有無について目視で確認し、また、粘度をB型粘度計により20℃で測定した。
結果を下記表4に示す。
実施例品1および比較例品1として、魚節出汁液、ジグリセリンモノミリスチン酸エステルを含む製剤として理研ビタミン(株)製・ポエムDM−25H、また他に、濃口醤油、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、醸造酢、及び、実施例品1にはタマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)製・グリロイド6C(透過率96.38%))を使用して、下記表5のような含有量組成となるストレートそばつゆ(かけ)を得た。なお、比較例品1にはタマリンドシードガムは含めなかった。実施例品1および比較例品1を配合後90℃達温にて殺菌し、その後、44℃で40時間保管した。保管後、澱の有無について目視で確認し、また、粘度をB型粘度計により20℃で測定した。
実施例品2および比較例品2として、魚節エキス、ジグリセリンモノミリスチン酸エステルを含む製剤として理研ビタミン(株)製・ポエムDM−25H、また他に、淡口醤油、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、醸造酢、及び、実施例品2にはタマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)製・グリロイド6C(透過率96.38%))を使用して、下記表7のような含有量組成となるストレートうどんつゆ(かけ)を得た。なお、比較例品2にはタマリンドシードガムは含めなかった。実施例品2および比較例品2を配合後90℃達温にて殺菌し、その後、44℃で40時間保管した。保管後、澱の有無について目視で確認し、また、粘度をB型粘度計により20℃で測定した。
実施例品3および比較例品3として、魚節出汁液、ジグリセリンモノミリスチン酸エステルを含む製剤として理研ビタミン(株)製・ポエムDM−25H、また他に、濃口醤油、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、醸造酢、及び、実施例品3にはタマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)製・グリロイド6C(透過率96.38%))を使用して、下記表9のような含有量組成となるストレートうどんつゆ(つけ)を得た。なお、比較例品3にはタマリンドシードガムは含めなかった。実施例品3および比較例品3を配合後90℃達温にて殺菌し、その後、44℃で40時間保管した。保管後、澱の有無について目視で確認し、また、粘度をB型粘度計により20℃で測定した。
実施例品4および比較例品4として、魚節出汁液、ジグリセリンモノパルミチン酸エステルを含む製剤として理研ビタミン(株)製・ポエムDP−95RF、また他に、濃口醤油、食塩、上白糖、グルタミン酸ナトリウム、醸造酢、及び、実施例品4にはタマリンドシードガム(DSP五協フード&ケミカル(株)製・グリロイド6C(透過率96.38%))を使用して、下記表11のような含有量組成となるストレートうどんつゆ(つけ)を得た。なお、比較例品4にはタマリンドシードガムは含めなかった。実施例品4および比較例品4を配合後90℃達温にて殺菌し、その後、44℃で40時間保管した。保管後、澱の有無について目視で確認し、また、粘度をB型粘度計により20℃で測定した。
Claims (5)
- 固形分換算量で0.01質量%以上6質量%以下の魚節抽出物及び0.002質量%以上0.008質量%以下のグリセリン脂肪酸エステルを含有する液体調味料であって、澱発生の抑制成分として、前記液体調味料の質量に基づき0.2質量%以上0.35質量%以下のタマリンドシードガムを含有し、前記タマリンドシードガムは、1.0質量%水溶液として波長660nm光での透過率が80%以上であることを特徴とする、液体調味料。
- 20℃におけるB型粘度計による粘度が1以上10cps以下であることを特徴とする、請求項1に記載の液体調味料。
- 前記液体調味料の質量に基づき、魚節抽出物を固形分換算量で0.01質量%以上6質量%以下の範囲の量で、グルタミン酸ナトリウムを0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲の量で、塩分を0.5質量%以上5.0質量%以下の範囲の量で、及び糖分を0.5質量%以上10質量%以下の範囲の量で含有し、且つ、pHが4.0以上6.0以下の範囲にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体調味料。
- 前記液体調味料は、めんつゆであることを特徴とする、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の液体調味料。
- 固形分換算量で0.01質量%以上6質量%以下の魚節抽出物及び0.002質量%以上0.008質量%以下のグリセリン脂肪酸エステルを含有する液体調味料に対して、1.0質量%水溶液として波長660nm光での透過率が80%以上であるタマリンドシードガムを前記液体調味料の質量に基づき0.2質量%以上0.35質量%以下の含有量で添加することからなる、前記液体調味料の澱を抑制する方法。
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