JP6303852B2 - ゲル状栄養組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、栄養補給を目的として主として医療現場で使用される、ゲル状栄養組成物に関する。
医療栄養食のうち、ゲル状栄養組成物の重要性が高まっている。拒食、嚥下困難、誤嚥、食道通過不良等の様々な要因により摂食・嚥下が障害される場合に、栄養補給を行うと同時に、本来人間の持つ食べる喜びを維持・向上するための手段として、嚥下食のうちで、通常食に向かう導入部分に位置するゲル状栄養組成物の価値が見直されているのである。美味しく食べたいという摂食者の欲求に応えるためは、対象物の見た目も重要である。ゲル状栄組成物は見た目が濁ってしまう場合が往々にしてあるが、濁りは濃厚感となり、摂食者の食欲の低下を招く。このゲルの濁りは、ゲル状栄養組成物の本来的な目的である「食べる喜び」の世界から、摂食者を逆に遠ざけてしまうことになりかねない。
しかしながら、ゲル状栄養組成物は、水に対して乳化分散しにくい油脂を含有し、更には、蛋白質の凝集・乳化系の破壊に作用するミネラルを含有することがあるため、嗜好品としてのゲル状食品に用いられる技術を直ちに応用することはできない。また、主として医療現場で使用されるゲル状栄養組成物は、無菌状態で製品供給されるよう、加熱殺菌工程を経るため、耐熱乳化保持性が求められている。
ゲル状栄養組成物の開発においては、これらの要求を満たすために、様々な方法が試みられてきた。例えば、特許文献1には、高蛋白質で易嚥下性を有するゲル状栄養組成物が開示されている。この技術では調合時の乳化性が非常に良好なゲル状栄養組成物が得られているが、蛋白質の凝集によるゲル化を利用するゲル化方法であることから、蛋白質の凝集により強く乳濁した性状であり、見た目に爽やかなゼリーの性状とはならない。
特許文献2では、酸性安定性を有する乳清蛋白質を用いて、蛋白質とカルシウムを高含有し、爽やかな酸味を有するゲル状組成物を得る方法を開示している。この方法でゲルを調整すると、酸性条件下で透明に溶解するホエイ(乳清)蛋白質分離物を用いても、記載条件のカルシウム含量を添加して加熱殺菌を行うと、蛋白質の部分的な凝集を生じてしまい、白濁を生じることから、見た目の爽やかな透明感は得ることができない。
特許文献3においては、透明感を有する液状栄養組成物が開示されている。この技術は特定のペプチド、糖質、ポリグリセリン脂肪酸エステルの組合せにより、透明感を有する液状栄養組成物が得られている。しかし、この技術では乳化安定化を目的とした均質化処理のために、高圧ホモジナイザーを用いての高圧力条件での均質化処理によってようやく乳化安定化が得られる。このような高い高せん断条件は、ゲル状栄養組成物に対しては、粘度が高すぎるために装置能力的に適用することがほとんど不可能であるし、適用できたとしても、高分子化合物であるゲル化剤が強いせん断力により高分子鎖の減成を招き、目的とする物性が得られない問題が生じる恐れがある。液状栄養組成物における解決手段は、ゲル状栄養組成物に対して、直ちに応用することは難しいのである。
特開2005−13134号公報 WO2004/028279号公報 特開2012−136471号公報
上述の通り、ゲル状栄養組成物に対しては、栄養組成のバランスの良さだけでなく、美味しく食べたいという摂食者の要求に応え、QOL(Quality of Life)を維持向上することまでが必要とされるようになってきた。
本発明の課題は、蛋白質、糖質、油脂をバランスよく含みながら、調合時の乳化性と、耐熱乳化保持性が高く、さらに、加熱後も見た目に爽やかな透明感を有するゲル状栄養組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、乳化剤として、特定の加工澱粉と特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとを、油脂に対して特定の比率で使用することによって、前記の課題を解決できることの知見を見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の(1)〜(7)の発明からなる。
(1)蛋白質、糖質、油脂、乳化剤、ゲル化剤、及び水を含有するゲル状栄養組成物であって、
ゲル状栄養組成物の固形分がゲル状栄養組成物全体に対して30〜65質量%であり、
前記蛋白質は、分解度21〜40の乳ペプチドを含み、かつ、実質的にペプチドのみ又はペプチドとアミノ酸とからなり、
前記乳化剤は、(A)オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、及び(B)HLBが6.0〜9.5で、(ポリ)グリセリル残基の分子量が150〜400である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを含み、油脂100質量部に対して前記(A)を6〜300質量部、及び前記(B)を5〜190質量部含有する、
ゲル状栄養組成物。
(2)前記蛋白質として、更にコラーゲンペプチドを含有する、(1)に記載のゲル状栄養組成物。
(3)ゲル状栄養組成物全体に対して、前記蛋白質が2〜10質量%、前記糖質が17〜63質量%、前記油脂が0.1〜3質量%含まれる、(1)又は(2)に記載のゲル状栄養組成物。
(4)更にミネラルを含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
(5)加熱殺菌処理されたものである、(1)〜(4)のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
(6)前記加熱殺菌処理後の乳化粒子径が4〜14μmである(1)〜(5)のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
(7)pHが3.0〜5.0である、(1)〜(6)のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
本発明によれば、栄養素をバランスよく含みながら、調合時の乳化性、耐熱乳化保持性、及び透明感を有するゲル状栄養組成物を提供できる。本発明のゲル状栄養組成物は、調合時の乳化性及び耐熱乳化保持性を有するため、製造時に高度な設備が不要である。
以下に、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明は、栄養補給を目的として使用される、ゲル状の栄養組成物に関する。
(ゲル状栄養組成物)
本発明のゲル状栄養組成物とは、主として経口用途で使用されるゲル状の栄養組成物をいう。ゲル状栄養組成物は、一例として、固形状流動食、半固形状流動食、及び総合栄養食等に適用できる。また、適度なゲル強度を付与して、カップゼリー、テトラパックゼリー、及びゼリー飲料等の洋菓子等にも適用できる。
ゲル状栄養組成物の基本組成としては、蛋白質、糖質、及び油脂から構成され、更に、食物繊維、ビタミン、及びミネラル等を含んでも良い。栄養バランスは、厚生労働省において策定された「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」等を参考にして、それぞれの目的に則して設定することができる。ただし、「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」は健常人を対象に設定されているため、1日あたりのエネルギー必要量は1350kcal〜2750kcalであるが、流動食やReady to Use(常時使用可能)の総合栄養食品を使用する人は、寝たきりであり基礎代謝量が低下している場合が多く、1日の必要熱量は800kcal〜1500kcalで設定されることが多い。具体的な栄養バランスは、特開2012−136471号公報に記載の方法で設定することもできる。
(固形分)
ゲル状栄養組成物における固形分とは、ゲル状栄養組成物中に溶存している固形分濃度を意味し、質量%で示される。ここでの固形分とは、蛋白質や糖質など各種水溶性物質の濃度を示す指標であり、20℃における屈折率を測定し、ショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算(ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表を使用)した値を用いる。固形分の測定は、一般に市販されている屈折計を用いればよく、例えば、デジタル屈折計(アタゴ手持屈折計、(株)アタゴ製)で測定することができる。一般に、O/Wエマルションでは、水相部と油相部の屈折率が異なる為に、光が油滴界面で反射され、白濁が生じる。水相部の固形分濃度が高くなると、水相部の屈折率が油相部の屈折率と近似するようになるため、光が透過しやすくなり、溶液の透明性が向上する傾向にある。
本発明のゲル状栄養組成物は、固形分が30〜65質量%であり、好ましくは35〜60質量%である。固形分が30質量%よりも低い場合、十分な透明性を得ることができず、65質量%よりも高い場合、ゲル状栄養組成物中の自由水が糖質に奪われ、その他の成分の不溶化による沈澱物が発生したり、ゲル化剤の水和が十分に行われず、所望の物性を得られなくなる恐れがある。
ゲル状栄養組成物における固形分の調整方法は、当業者に公知の方法で行うことができる。例えば、ゲル状栄養組成物中の水分含量を少なくすれば、固形分濃度が高くなるので、ゲル状栄養組成物における固形分が高くなる。ゲル状栄養組成物中の糖質の含有量を多くすれば、固形分は高くなる。
(pH)
本発明のゲル状栄養組成物は、嗜好に合わせて自由にpHを設定することができるが、好ましくはpHが3.0〜5.0であり、より好ましくはpHが3.0〜4.6、さらに好ましくはpHが3.5〜4.0である。pHを該範囲にすることによって、果汁ジュースやヨーグルト等に代表される爽やかな飲み口とすることができる。また、pHが酸性であると、殺菌条件を緩和することが可能であり経済上のメリットが得られる傾向にある。ゲル状栄養組成物が酸性の場合、ゲル状栄養組成物中に含まれる蛋白質の凝集等が生じ白濁が生じやすくなるほか、凝集により蛋白質が有する強固な乳化安定性が失われ、耐熱乳化保持性が得られなくなるが、本発明によれば、pHが3.0〜5.0の場合であっても、調合時の乳化性と耐熱乳化保持性が高く、透明感を有するゲル状栄養組成物を提供できる。
ゲル状栄養組成物におけるpHの調整方法は、当業者に公知の方法で行うことができる。例えば、pHを低くするために酸味料等を用いることができる。酸味料としては、特に限定されず一般に用いられるものを使用できるが、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、フィチン酸、リン酸等が挙げられる。酸味の味質の点から、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸が好ましく用いられる。
(調合時の乳化性)
調合時の乳化性とは、ゲル状栄養組成物を調合する際の乳化性に関する性能であり、調合後の均一分散性と乳化粒径によって評価することができる。ゲル状栄養組成物は調合時の流動性が低いため、用いる装置能力の限界、或いはゲル化剤高分子鎖の切断の回避から、高くとも25MPa以下の均質化圧力で処理されるのが好ましい。
(耐熱乳化保持性)
耐熱乳化保持性とは、加熱殺菌後の乳化安定性を意味する。ゲル状栄養組成物は、無菌状態で製品供給されるよう、乳化分散操作後、容器充填の前後で高温に曝される加熱殺菌の工程を経ても良い。高温下では分子運動の増大によって乳化粒子の合一や成分の凝集が起こりやすくなり、これに抗する性能が必要である。前記の調合時の乳化性が乳化安定性のうちでも「乳化のしやすさ」に近い性能であるのに対し、これとは異なり、耐熱乳化保持性は「乳化の保ちやすさ」に近い性能であるといえる。
(透明性)
透明性とは、ゲル状栄養組成物が透明であって見た目にも爽やかな状態であることを意味する。無色透明、有色透明の両方の場合が含まれる。ゲル状栄養組成物中に濁りが少ない状態と言い換えることもできる。
次に、ゲル状栄養組成物に含有される各成分等について順に説明する。
(蛋白質)
本明細書において、蛋白質という用語は、高分子の蛋白質だけでなく、低分子のペプチド及びそれらの構成要素であるアミノ酸をも含むものとして使用する。本発明のゲル状栄養組成物において、蛋白質は、実質的にペプチドのみ又はペプチドとアミノ酸とからなる。ペプチドとしては、例えば、ゼラチン、乳、大豆、鶏卵、鶏肉、魚肉、豚肉、牛肉、小麦、とうもろこし等を、アルカリ若しくは酸又は酵素等を用いて分解した物が挙げられる。アミノ酸としては、例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−システイン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−ヒスチジン等が挙げられる。実質的にペプチドのみ又はペプチドとアミノ酸とからなるとは、本発明の効果を失わせない範囲で、ペプチド及びアミノ酸以外の蛋白質、すなわち高分子の蛋白質を含むことを許容することを意味する。ペプチド及びアミノ酸以外の蛋白質は、ゲル状栄養組成物全体に対して、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。ペプチド及びアミノ酸以外の蛋白質がこの程度の量であることを、蛋白質は実質的にペプチドのみ又はペプチドとアミノ酸とからなるという。
本発明のゲル状栄養組成物は、蛋白質として、分解度が21〜40である乳ペプチドを少なくとも含有する。好ましくは、分解度が23〜35の乳ペプチドである。分解度が大きすぎると、臭味又は苦味が強くなる。分解度が小さすぎると、ペプチド自身が不溶化し白濁沈澱を生じる。また、高分子体がゲル状栄養組成物中に分散していることで、ゲル化剤の機能が阻害され、求める物性が得られなくなる恐れがある。乳ペプチドの種類としては、総合乳蛋白質ペプチド、カゼインペプチド、及びホエイ(乳清)ペプチド等が挙げられる。
本発明のゲル状栄養組成物には、蛋白質として、更にコラーゲンペプチドを用いることができる。コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酸若しくはアルカリ又は酵素により分解した物であり、その重量平均分子量は、通常2000〜50000、好ましくは4000〜20000である。分子量が小さすぎると遊離アミノ酸や低分子のペプチドによる苦味やえぐ味が強くなり、分子量が大きすぎるとゲル化性が充分に失われず、20〜28℃を境に、温度が低くなるとゲルが固くなり、温度が高くなるとゲルが柔らかくなってしまう傾向にある。コラーゲンペプチドは、容易に溶解し、酸性領域で熱殺菌を経る場合においても透明に溶解する利点を持つため、その使用の有無によって本発明の効果が失われず好適に用いられる。本発明のゲル状栄養組成物は、コラーゲンペプチドを配合せず乳ペプチドのみで構成しても本発明の目的を達成でき、栄養学的な観点からアミノ酸組成に優れ好ましい。しかし、乳ペプチドのみで構成すると乳ペプチド特有の苦味を感じやすいため、コラーゲンペプチドと併用することが好ましく、栄養学的なアミノ酸組成を優れたのものとするため適宜遊離アミノ酸を併用することが更に好ましい。コラーゲンペプチドの由来としては、牛や豚や魚や鳥などの骨や皮や鱗や鶏冠などが挙げられる。
ゲル状栄養組成物中の蛋白質の含有量としては、ゲル状栄養組成物全体に対して、好ましくは2〜10質量%であり、より好ましくは4〜8質量%である。蛋白質の含有量が少なすぎると栄養学的な価値が低くなり、含有量が多すぎると蛋白質特有の味が強くなりすぎる。
(糖質)
糖質は、本発明の効果に影響を与えない限り特に限定されず、一般に食用として利用されている糖類を使用できる。例えば、単糖類、二糖類、水あめ、糖アルコール、オリゴ糖、デキストリン等が挙げられる。単糖類としては、例えば、グルコース、果糖、異性化液糖、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、ラムノース、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。二糖類としては、例えば、シュークロース、マルトース、ラクトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、パラチノース、トレハロース等が挙げられる。水飴としては、例えば、酸糖化水飴、還元水飴等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元水飴、還元デキストリン等が挙げられる。デキストリンとしては、例えば、マルトデキストリン等が挙げられる。本発明では、実施例で示されているように糖質の種類に限定されず本発明の効果が期待できる。
ゲル状栄養組成物中の糖質の含有量としては、ゲル状栄養組成物全体に対して、好ましくは17〜63質量%であり、より好ましくは18〜62質量%であり、更に好ましくは19〜61質量%である。糖質の含有量が少なすぎると、ゲル状栄養組成物の固形分が低くなる可能性がある。糖質の含有量が多すぎると、ゲル状栄養組成物中に含まれる他の成分の不溶化やゲル化阻害を引き起こす可能性がある。
(油脂)
油脂は、本発明の効果に影響を与えない限り特に限定されず、一般に食用として利用されている植物性油脂又は動物性油脂等を用いることができる。植物性油脂としては、例えば、MCT、ナタネ油、大豆油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、オリーブ油、米油、シソ油等が挙げられる。動物性油脂としては、牛脂、豚脂、乳脂、魚油等が挙げられる。これら油脂の中では、栄養学的価値の点に加え、透明性が高いO/W乳化液を調製し易いことから、MCTが好ましく用いられる。本発明は、特定の乳化剤を油脂に対して特定の比率で用いることを特徴とするため、油脂の種類に限定されず本発明の効果が期待できる。
ゲル状栄養組成物中の油脂の含有量は、ゲル状栄養組成物全体に対して、好ましくは0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。油脂の含有量が少なすぎても多すぎても、ゲル状栄養組成物に求められる栄養学的な価値が失われる。
(乳化剤)
本発明のゲル状栄養組成物は、乳化剤として、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム及びHLBが6.0〜9.5で(ポリ)グリセリル残基の分子量が150〜400である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを組合せて用いられる。
<オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム>
本明細書においては、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを(A)、成分(A)、又は乳化剤(A)と記載することがある。オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムとは、澱粉を無水オクテニルコハク酸でエステル化して得られる加工澱粉のナトリウム塩をいう。原料澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーン澱粉(コーンスターチ)、ワキシーコーンスターチ、及びそれらの加水分解物等が挙げられる。通常、澱粉の懸濁液をアルカリ性下、無水オクテニルコハク酸物で処理して得ることができる。無水物の開環反応で生成する2−(4−オクテニル)コハク酸の片端のカルボキシル基が澱粉のグルコース残基の水酸基(2、3、6位)とエステル結合し、もう片端のカルボキシル基がナトリウム塩である構造を有している。本発明に用いるオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの純度は、オクテニルコハク酸基が乾燥物換算で3質量%以下、残存オクテニルコハク酸が0.8質量%以下であることが好ましい。
オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムは市販品として得ることもできる。例えば、日本NSC(株)製の「PURITYGUM BE」、「PURITY GUM2000」、及び「Nクリーマー46」、松谷化学工業(株)製「エマルスター500」及びTATE&LYLE社製「MIRA−MIST SE」等が挙げられる。
本発明のゲル状栄養組成物は、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを油脂100質量部に対し、6〜300質量部、好ましくは7〜250質量部、更に好ましくは8〜200質量部含有する。オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの油脂に対する含有量が、少なすぎると十分な耐熱乳化保持性が得られ難い傾向にあり、多すぎると調合液の増粘による著しい作業性の低下や、高分子体であるためにゲル化剤の機能阻害が起こり、求める物性が得られ難い傾向にある。
オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムはその構造上、疎水基と比べ親水基の分子量が非常に大きく、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを用いて調合したO/Wエマルションは物理的反発力が付与され、耐熱乳化保持性を付与することができる。しかしながら、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムは界面張力低下能が非常に弱いので、単独で乳化しようとするためには、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの添加量を著しく高くして油脂との接触量を多くするか、強いせん断力を与えて油脂との接触効率を高める必要がある。しかしながら、本発明のようなゲル状栄養組成物では、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの添加量を増量することは、澱粉分子自体がゲル化剤の高分子ネットワークの形成を立体的に阻害してしまうことや、ホモミキサーなどによる強いせん断力を与えた場合、大量の気泡がゾル中に混入して均一な充填作業ができなくなることから、このような方法はとることができない。また、本発明のゲル状栄養組成物は、調合時におけるゾルの粘度は5〜50mPa・s程度が適切であり、これらの粘度以上とすると気泡が内容液中から抜けず、均一な充填作業ができなくなる。そのため、本発明では、後述の特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとの併用が必須である。
<特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル>
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリン脂肪酸エステルと、ジグリセリン以上のポリグリセリンの脂肪酸エステルとを合わせたものを意味する。本発明に用いる特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、HLBが6.0〜9.5で(ポリ)グリセリル残基の分子量が150〜400である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルである。本明細書においては、当該特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを、特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、(B)、成分(B)、又は乳化剤(B)と記載することがある。
特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、前述のようにHLBが6.0〜9.5であり、好ましくは6.2〜8.7である。HLBが低すぎると目的となるO/W乳化物を形成できなくなり、高すぎると界面張力低下能が弱くなり、乳化物の調合に高いせん断力が必要となり、プロペラ攪拌だけでは十分に乳化ができない傾向にある。
また、特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、(ポリ)グリセリル残基の分子量が150〜400であり、好ましくは165〜265である。分子量が低すぎると十分な乳化能が失われ乳化を不安定化し、高すぎると耐熱乳化保持性が得られ難くなる傾向にある。
そのような特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ジグリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ペンタグリセリン、トリオレイン酸ペンタグリセリン、トリミリスチン酸ペンタグリセリン、トリパルミチン酸ペンタグリセリン、クエン酸モノステアリン酸ジグリセリン、クエン酸モノオレイン酸ジグリセリン、コハク酸モノステアリン酸モノグリセリン、モノミリスチン酸ジグリセリン、モノパルミチン酸ジグリセリン、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグリセリン等が挙げられる。
本発明のゲル状栄養組成物は、特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを油脂100質量部に対し、5〜190質量部、好ましくは6〜170質量部、更に好ましくは7〜155質量部含有する。特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの含有量が少なすぎると調合時の乳化性が得られ難く、多すぎると透明性が得られ難くなる傾向にある。
本発明に用いる特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、前述のように、HLBの範囲と、(ポリ)グリセリル残基の分子量の範囲とによって規定される。HLBとは界面活性剤の親水疎水性を表す一般的な特性値である。従来の乳化技術であれば、2種類以上のHLBの高低異なる範囲の乳化剤を組み合わせて高い圧力条件下で均質化処理を行うことによって、乳化粒子を0.1μm以下まで微細化して、乳化安定性(調合時の乳化性、耐熱乳化保持性)及び透明性を付与する。しかしながら、ゲル状栄養組成物に対しては、先述した理由により高い圧力条件下で均質化処理ができないことから、透明性が得られる0.1μm以下の乳化粒子径まで微細化することが難しく、逆に光の乱反射が生じやすい0.2〜1μmの乳化粒子径となり、強い白濁を生じてしまうことで透明性が得られない。また、乳化粒子をこれ以上に粗大な状態として維持することは、耐熱乳化保持性が失われやすくなることから、従来技術では用いられていなかった。
本発明者らは、従来技術とは全く逆の発想で、乳化粒子を微細化せず、粗大な状態で耐熱乳化保持性を得ることで、透明性があるゲル状栄養組成物が得られることを見出した。
本発明で使用する特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルにおいて、(ポリ)グリセリル残基の分子量は、HLBとは異なる親水性の指標であると考えられる。当該特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル分子の片端にある疎水性の脂肪酸残基が油滴界面に吸着して乳化分散させるが、もう一端にあるポリグリセリル残基が、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムと良好に相互作用することによって、油滴界面に吸着した(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの界面にさらにオクテニルコハク酸澱粉ナトリウムが付着するものと考えられる。オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムは嵩高い高分子鎖ドメインを形成するため、油滴に物理的反発力を付与する。その為、分子運動の激しくなる加熱殺菌工程においても、1μm以上の粗大な乳化粒子径を維持しながら、油滴の分散安定化を可能にすると推測される。尚、(ポリ)グリセリル残基の分子量が高過ぎる場合は、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムの油滴への吸着が嵩高い(ポリ)グリセリル残基による反発によって阻害されると推測される。
オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムと同様に、油滴に対して高分子鎖ドメインの形成による物理的反発力の付与を及ぼす保護コロイド剤として、カゼインナトリウムやホエイ(乳清)などの蛋白質の他に、アラビアガムなどが存在するが、高ミネラル環境下での透明性の保持や、pHの汎用性に劣ることから、本発明において、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを用いることが必須である。
以上のような推定されるメカニズムにより、乳化剤として、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムと特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとを上記の特定量含有した本発明のゲル状栄養組成物は、調合時の乳化性、耐熱乳化保持性、透明性という優れた特性を有する。
(ゲル化剤)
ゲル化剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、栄養組成物で一般に使用されているものを用いることができる。例えば、寒天やカラギーナン等の海藻類由来の多糖類、ジェランガム、キサンタンガム、カードラン等の微生物由来の多糖類、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ペクチン、グルコマンナン等の植物由来の多糖類等が挙げられる。中でも、ゲル化の点から、寒天、カラギーナンが好ましく用いられ、食感改質の点からキサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、ペクチンが好ましく用いられる。本発明では、実施例で示されているようにゲル化剤の種類に限定されず本発明の効果が期待できる。
ゲル状栄養組成物全体に対するゲル化剤の含有量としては、好ましくは0.1〜2質量%であり、より好ましくは、0.1〜1質量%である。ゲル化剤の含有量は、0.1質量%より少なくなると、ゼリーとして喫食に適した十分な食感を形成しにくくなり、2質量%より多くなると、調合時の粘度が高くなり、気泡が抜けにくくなるため、品質の安定性が得られ難い。
(その他)
ゲル状栄養組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、栄養成分を充足させるため、物性補助のため、風味向上のために、更に他の成分を加えても良い。例えば、ミネラル類、ビタミン類、食物繊維、甘味料、果汁、香料、色素、酸味料等が挙げられる。
ミネラル類としては、特に限定されず一般に用いられるものを使用できるが、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、セレン、クロム、マンガン、モリブデンなどが挙げられる。
ビタミン類としては、特に限定されず一般に用いられるものを使用できるが、例えば、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸、葉酸、ナイアシン、ビオチンなどが挙げられる。これらのミネラル類、ビタミン類は、あらかじめ必要な割合で配合してあるミネラルミックス、ビタミンミックスとして販売しているものを用いても良い。また、ミネラル含有酵母を使用しても良い。本発明においては、特定の乳化剤を油脂に対して特定の比率で用いることを特徴とするため、乳化系を破壊する方向に作用するミネラルを高濃度で含有しても、乳化安定性及び透明性を有するゲル状組成物を提供できる。
食物繊維としては、特に限定されず一般に用いられるものを使用できるが、例えば、難消化性デキストリン、サイクロデキストリンなどの水溶性食物繊維や、微結晶セルロースなどの不溶性食物繊維等が挙げられる。食物繊維は、ゲル状栄養組成物の透明感や乳化系にほとんど影響を及ぼさない。
(ゲル状栄養組成物の製造方法)
本発明のゲル状栄養組成物は、一例として、調合工程、均質化工程、充填工程、殺菌工程の4工程により製造することができる。調合工程では、例えば、ゲル化剤と水を混合し、混合液をゲル化剤の溶解温度以上まで加熱し、粘調なゾル状となるまで攪拌した後に、ゲル化温度以上を保持しながら前記の各種原料を投入し、十分に溶解させることができる。この際、特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは加熱した油脂に完全に溶解させた後に混合することが好ましい。ゲル状栄養組成物の製造において、調合時の乳化性はその後の工程で均一に油脂を分散させ、均一な状態で次の均質化工程に送り込む為に重要である。さらに、均質化工程としては、ホモジナイザーなどの均質化装置を用いることが好ましい。この際、ホモジナイザーの均質化圧力は、通常25MPa以下、好ましくは15MPa以下とすることができる。充填工程では、例えば、プレートヒーター又はチューブラーヒーターなどによる熱交換器により90℃以上に加熱されたゾル状の栄養組成物を、スパウト付パウチなどに必要量充填し、密栓することができる。殺菌工程では、例えば、パウチに充填されたゲル状栄養組成物を90℃以上の温水、又は蒸気中に静置し、殺菌処理を行うことができる。静置時間としては、商業上の無菌性が確保できる時間とすることが望ましく、10分間以上が好ましく、20分間以上がより好ましい。この際、加熱による分子運動の増大によって乳化粒子の合一や凝集が起こりやすくなるため、これに抗する高い耐熱乳化保持性が求められる。その後、溶液が凍結しない程度の温度で冷却を行い、ゲル化させることができる。
上記の方法によって調合・殺菌された本発明のゲル状栄養組成物は、好ましくは、4〜14μmの乳化粒子径を有する。乳化粒子径の測定は、ゲル状栄養組成物を加熱溶解によりゾル状に変化させた後に適量の純水で希釈したサンプルを(株)堀場製作所製レーザー回折式粒度分布計LA−950に供した。乳化粒子はその粒径が小さいほど乳化安定性に優れ、大きいほど不安定であることは、ストークスの法則によって一般的に知られているが(食品コロイド入門(西成勝好監訳)幸書房p93)、本発明によれば、乳化粒子径が比較的大きくても、安定な乳化系を形成しながら光学的に透明な性状を有し、見た目にも爽やかなゲル状栄養組成物となすことができる。
以下、本発明のゲル状栄養組成物について、実施例、比較例を示して具体的に説明する。
<pHの測定方法>
ゲル状栄養組成物のpHは、通常のガラス電極を25℃におけるゲル状栄養組成物にさしこんで測定した。
<透明感の評価方法>
5名の評価パネラーの官能評価平均値によって、ゲル状栄養組成物の透明感を目視で評価した。評価の基準は次の通りである。
○: 良好な透明感がある
△: 透明感はあるがやや白濁している
×: 白濁して透明感はない
<乳化粒子径の測定方法>
ゲル状栄養組成物を加熱溶解によりゾル状に変化させた後に、適量の純水で希釈したサンプルを(株)堀場製作所製レーザー回折式粒度分布計LA−950に供して測定した。
<固形分の測定方法>
ゲル状栄養組成物をヘラ等を用いて均質に破砕し、20℃に調温後に(株)アタゴ製デジタル屈折計DBX−55に供して測定した。
<調合時の乳化性、及び耐熱乳化保持性の評価方法>
調合時の乳化性の評価としては、ゲル状栄養組成物の製造過程において、調合工程を終えた調合液を65℃にて静置後、乳化状態を目視にて判定した。
耐熱乳化保持性の評価としては、ゲル状栄養組成物の製造過程における殺菌工程として90℃で静置後、乳化状態を目視にて判定を行った。
評価の基準は調合時の乳化性、及び耐熱乳化保持性とも、次の通りである。
◎:30分経過後、油脂が均一に分散している
○:30分未満20分以上油脂が均一に分散している
△:20分未満10分以上油脂が均一に分散している
×:10分未満で油脂の分散が均一でなくなる
(実施例1)
<栄養成分の配合>
表1に示す原材料の配合で、本発明のゲル状栄養組成物の調合を行った。調合条件は、表2に示す。具体的な調合の操作としては、ゲル状栄養組成物全体に対する配合量として、重量平均分子量5200のコラーゲンペプチド2.4質量%、分解度27のカゼインペプチド2.5質量%、L−トリプトファン0.1質量%、L−ロイシン0.2質量%、L−メチオニン0.1質量%、L−ヒスチジン0.1質量%、L−バリン0.1質量%、L−フェニルアラニン0.3質量%、澱粉分解物(デキストリン)28.6質量%、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム0.3質量%、モノステアリン酸ジグリセリン0.15質量%、MCT1.9質量%、精製イワシ油0.1質量%、難消化性デキストリン1.1質量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1質量%、クエン酸3カリウム0.1質量%、塩化カルシウム0.2質量%、硫酸マグネシウム0.3質量%、クエン酸(結晶)1.1質量%、リンゴ5倍濃縮透明果汁0.6質量%、微量ミネラルミックス0.07質量%、ビタミンミックス0.2質量%、アップル香料0.1質量%、ベニバナ色素0.02質量%、スクラロース0.06質量%を水も含めて総質量1600gとなるように65℃の温水に溶解させ、やはり、ゲル状栄養組成物全体に対する配合量として、κ−カラギーナン0.3質量%、ローカストビーンガム0.2質量%を水も含めて総質量400gとなるよう混合し、85℃10分間加熱して溶解させたものと混ぜ合わせ、総質量2000gとなるよう調合した。次いで、これを65℃で維持したまま均質化圧15MPaで1回処理した。65℃で維持したまま100gずつアルミパウチに密封充填し、90℃15分間でボイル殺菌した。
Figure 0006303852
Figure 0006303852
上記の通り調合・殺菌を行った本発明のゲル状栄養組成物について、前記の性能評価を行った。結果を栄養評価の算出値とともに表3に示す。栄養成分は1.6kcal/g、蛋白質12エネルギー%、糖質75エネルギー%、油脂12エネルギー%、食物繊維1エネルギー%、殺菌後でpH3.83、透明感良好、調合時の乳化性・耐熱乳化保持性ともに良好であった。
Figure 0006303852
(実施例2〜6)
本発明のゲル状栄養組成物として、実施例1における乳化剤の種類を変更した以外は実施例1と同じにして行った。結果を乳化剤の配合とともに表4に示す。
(実施例7〜11)
上記実施例5における乳化剤の配合量を変更した以外は実施例5と同じにして行った。結果を乳化剤の配合とともに表4に示す。
(実施例12〜15)
上記実施例1における乳化剤の配合量を変更した以外は実施例1と同じにして行った。結果を乳化剤の配合とともに表4に示す。
Figure 0006303852
(比較例1〜6)
本発明でないゲル状栄養組成物として、実施例1における乳化剤の種類及び配合量を変更した以外は実施例1と同じにして行った。結果を乳化剤の配合とともに表5に示す。
(比較例7〜10)
前記実施例5における乳化剤の配合量を変更した以外は実施例5と同じにして行った。結果を乳化剤の配合とともに表5に示す。
Figure 0006303852
(実施例16〜19、比較例11〜13)
表6及び7に示すように、実施例5における糖質の配合を変更した以外は、実施例5と同じにしてゲル状栄養組成物を調合した。すなわち、原材料の種類及び配合量は、糖質以外は実施例16〜19及び比較例11〜12を通して共通であり、糖質については、固形分の実測値及び評価結果とともに表7に示す。調合されたゲル状栄養組成物について、pH、透明感、乳化粒子径、調合時の乳化性、耐熱乳化保持性の評価結果を表7に示す。
Figure 0006303852
Figure 0006303852
(比較例20〜21、比較例14〜18)
表8及び9に示すように、上記実施例5における蛋白質中の乳ペプチドの種類を変更した以外は、実施例5と同じにしてゲル状栄養組成物を調合した。原材料の種類及び配合量は、乳ペプチド以外は実施例20〜21、比較例14〜18を通して共通であり、乳ペプチドの種類については表9に示す。調合されたゲル状栄養組成物について、pH、透明感、乳化粒子径、調合時の乳化性、耐熱乳化保持性の評価結果を表9に示す。
Figure 0006303852
Figure 0006303852
(実施例22〜24)
表10及び11に示すように、上記実施例5におけるゲル化剤の配合量を変更した以外は実施例5と同じにしてゲル状栄養組成物を調合した。原材料の種類及び配合量は、ゲル化剤以外は実施例22〜24を通して共通であり、ゲル化剤の配合については表11に示す。調合されたゲル状栄養組成物について、pH、透明感、乳化粒子径、調合時の乳化性、耐熱乳化保持性の評価結果を表11に示す。
Figure 0006303852
Figure 0006303852
(実施例25〜30)
表12及び13に示すように、上記実施例5における糖質、及び油脂の種類を変更した以外は実施例5と同じにしてゲル状栄養組成物を調合した。原材料の種類及び配合量は、糖質、及び油脂以外は実施例25〜30を通して共通であり、糖質の種類については表13に示す。調合されたゲル状栄養組成物について、pH、透明感、乳化粒子径、調合時の乳化性、耐熱乳化保持性の評価結果を表13に示す。
Figure 0006303852
Figure 0006303852
(考察)
表4に示すように、実施例1〜15では調合時の乳化性及び耐熱乳化保持性はともに良好であり、殺菌後のゲル状栄養組成物の透明感も良好であり、見た目に優れたゼリーが得られた。尚、乳化系を破壊する方向に作用するミネラルを含有する実施例1〜15でも良好な効果を奏したことから、実施例1〜15からミネラルを除いた場合は、更に良好な効果を奏すると期待できる。食物繊維は、乳化性や透明感に影響を与え難いので、実施例1〜15から食物繊維を除いた場合は実施例1〜15と同等の効果を奏すると考えられる。
一方、表5の比較例1〜4で明らかな通り、本発明に用いる特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに代えて、HLBや(ポリ)グリセリル残基の分子量が本発明に規定される範囲外である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを使用した場合には、ことごとく耐熱乳化保持性が得られなかった。すなわち、HLBが低すぎる比較例1、グリセリル残基が低すぎる比較例2では、耐熱乳化保持性が得られなかった。比較例3におけるHLBが高過ぎる場合では、調合時の乳化性が得られなかった。グリセリル残基の分子量が高過ぎる比較例4の場合においては、耐熱乳化保持性が得られなかった。このような結果となったのは、油滴表面に結合した(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルのグリセリル残基が立体障害となり、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムが油滴に界面吸着できないためと考えられる。
一般に、HLBの異なる乳化剤の併用による最適化等によって油脂の分散安定化を増強できることが知られている。しかしながら、このような従来技術では、比較例5において明らかな通り、乳化粒子経が小さくなることによって、調合時の乳化性及び耐熱乳化保持性は得られるが、粒子経ゆえの散乱から透明感に劣ることとなってしまう。
もちろんのこと、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムを用いず、特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルのみを用いた場合には、比較例6の結果から明らかな通り、調合時の乳化性は得られるものの、耐熱乳化保持性が得られない。
特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルが少ない比較例7の場合、安定なO/Wエマルションが形成できず、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムが効率的に油滴界面へ付着できないため、耐熱乳化保持性が得られなかったと考えられる。また、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムが少ない比較例8の場合、乳化粒子に十分な反発力が付与できず、耐熱乳化保持性が低下した。特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルが多い比較例9の場合、調合時の乳化性は良好であり、耐熱乳化保持性においても可であったが、特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルによるミセルが増加したことで内容液が強く白濁してしまい透明感が得られなかった。オクテニルコハク酸澱粉ナトリウムが多い比較例10の場合、溶液が著しく増粘して気泡が大量に混入してしまい、透明感が得られず、また作業性においても不可であった。
次に、表7に示すように、ゲル状栄養組成物の固形分が30〜65質量%である実施例16〜19では良好な透明性を有していた。ゲル状栄養組成物の固形分が30質量%未満である比較例11及び12では、調合時の乳化性と耐熱乳化保持性は良好であったにも関わらず、透明性が得られなくなった。比較例13では、ゲル状栄養組成物の固形分が65質量%を上回るよう、澱粉分解物を70質量部/油脂100質量部配合したところ、上下濃淡差のある不均一溶液となり固形分の実測も難しく、溶液の粘度が著しく増粘してしまい、調合を完了することすら困難となった。このことから、本発明のゲル状栄養組成物は、固形分30〜65質量%が好ましいことが判明した。
また、表9に示すように、蛋白質がペプチド及びアミノ酸のみから構成される実施例5、20、及び21では、調合時の乳化性、耐熱保持性、及び加熱後の透明感が全て良好であった。一方、蛋白質として、全く分解処理をしていない、WPI(Whey Protein Isolate:乳清蛋白質分離物)又はWPC(Whey Protein Concentrate:乳清蛋白質濃縮物)を、ゲル状組成物全体の2.5質量%使用した比較例17〜18では、蛋白質自体が酸及びミネラルの共存により凝集し強く白濁を生じ、均一な性状を得られなかった。このことから、本発明の効果を奏するためには、蛋白質は、実質的にペプチド又はペプチドとアミノ酸とからなるように構成されるべきであることが明らかとなった。
乳ペプチドの分解度については、20より大きい実施例5、20、及び21では、前述のように、調合時の乳化性、耐熱保持性、及び加熱後の透明感が全て良好であった。一方、乳ペプチドの分解度が20以下となる比較例14〜16では、分解度が小さくなるにつれて、透明性、調合時の乳化性、及び耐熱乳化保持性が失われることがわかった。このことより、蛋白質として、分解度が20より大きい乳ペプチドを用いることが好ましいことが判明した。
ゲル化剤については、表11に示すように、非荷電性である寒天を用いた実施例22、荷電性であるジェランガムを用いた実施例23やキサンタンガムとローカストビーンガムを用いた実施例24のいずれについても、本発明の効果を呈することがわかった。このことから、本発明のゲル状栄養組成物は、ゲル化剤の種類に影響されず本発明の効果を奏することが示唆された。
更に、糖質については、表13に示すように、種類を変更したいずれの実施例も本発明の効果が損なわれないことがわかった。また、MCT、植物性油脂、及び/又は動物性油脂を用いたいずれの実施例も良好な透明性及び耐熱乳化安定性を示した。このことから、本発明のゲル状栄養組成物は、糖質、油脂の種類に影響されず本発明の効果を奏することが示唆された。

Claims (7)

  1. 蛋白質、糖質、油脂、乳化剤、ゲル化剤、及び水を含有するゲル状栄養組成物であって、
    ゲル状栄養組成物の固形分がゲル状栄養組成物全体に対して30〜65質量%であり、
    前記蛋白質は、分解度21〜40の乳ペプチドを含み、かつ、実質的にペプチドのみ又はペプチドとアミノ酸とからなり、
    前記乳化剤は、(A)オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、及び(B)HLBが6.0〜9.5で(ポリ)グリセリル残基の分子量が150〜400である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを含み、油脂100質量部に対して前記(A)を6〜300質量部及び前記(B)を5〜190質量部含有する、
    ゲル状栄養組成物。
  2. 前記蛋白質として、更にコラーゲンペプチドを含有する、請求項1に記載のゲル状栄養組成物。
  3. ゲル状栄養組成物全体に対して、前記蛋白質が2〜10質量%、前記糖質が17〜63質量%、前記油脂が0.1〜3質量%含まれる、請求項1又は2に記載のゲル状栄養組成物。
  4. 更にミネラルを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
  5. 加熱殺菌処理されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
  6. 前記加熱殺菌処理後の乳化粒子径が4〜14μmである、請求項5に記載のゲル状栄養組成物。
  7. pHが3.0〜5.0である、請求項1〜6のいずれかに記載のゲル状栄養組成物。
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