JP6905649B1 - ココアバターのアルカリ処理方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、および、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法 - Google Patents

ココアバターのアルカリ処理方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、および、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】着色料を添加しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる、ココアバターのアルカリ処理方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、および、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法を提供する。【解決手段】遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる析出工程と、前記ココアバターと前記アルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、前記混合物から前記脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る固体除去工程と、を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、ココアバターのアルカリ処理方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、および、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法に関するものである。
従来、抹茶等の粉砕緑茶は、その風味や色調を活かして、様々な食品原料として用いられている。しかしながら、粉砕緑茶の色調は、光や熱等により退色しやすいことが知られており、粉砕緑茶を食品原料として用いる場合に退色を抑制する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の抹茶ペーストは、液体状油脂に粉末抹茶を混合攪拌した後、加熱殺菌処理をして得られるものである。特許文献1には、この抹茶ペーストについて、油脂により抹茶が外気中の酸素から遮断されることにより、抹茶の退色が抑制されることが開示されている。
特開平7−79702号公報
ここで、粉砕緑茶を用いた食品として、抹茶チョコレート等の粉砕緑茶含有チョコレートが挙げられる。粉砕緑茶含有チョコレートにおいては、従来、色調を保持するために、クチナシ色素等の着色料を添加して粉砕緑茶らしい鮮やかな緑色を得ることが行われている。しかしながら、近年、色調保持を目的とした添加物が敬遠される傾向があり、着色料等の色調保持を目的とした添加剤を添加せずに粉砕緑茶のみを用いて、粉砕緑茶そのものの色合いを得るニーズが高まっている。
着色料を添加しない粉砕緑茶含有チョコレートは、保存中に粉砕緑茶の色味が変色して、鮮やかな緑色が失われたり、黄色がかった色味になったりして、安定した品質が得られず、知覚品質が低下する一因となっていた。この粉砕緑茶の色味の変色は、粉砕緑茶含有チョコレートを冷蔵した状態や冷凍した状態でも進行することから、粉砕緑茶含有チョコレートを流通させるうえでの大きな課題であった。
従って、本発明は、上記のような問題点に着目し、着色料を添加しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができるココアバターのアルカリ処理方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、および、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のココアバターのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる析出工程と、前記ココアバターと前記アルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、前記混合物から前記脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る固体除去工程と、を含む。
本発明のココアバターのアルカリ処理方法は、前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素塩水溶液、または、炭酸塩水溶液であってもよい。
本発明のココアバターのアルカリ処理方法は、前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または、炭酸カリウム水溶液であってもよい。
本発明の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、本発明のココアバターのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ココアバターの液状物と、粉砕緑茶と、を含む原料を混合する原料混合工程を含む。
本発明の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、前記粉砕緑茶含有チョコレートの水分含有量が1.5%以下であってもよい。
本発明のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含み、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を含まないホワイトチョコレートの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、前記遊離脂肪酸を脂肪酸塩にするアルカリ処理工程を含む。
本発明のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法は、前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素塩水溶液、または、炭酸塩水溶液であってもよい。
本発明のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法は、前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または、炭酸カリウム水溶液であってもよい。
本発明の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、本発明のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートの液状物と、粉砕緑茶と、を含む原料を混合する原料混合工程を含む。
本発明の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、前記粉砕緑茶含有チョコレートの水分含有量が1.5%以下であってもよい。
本発明のココアバターのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる析出工程と、前記ココアバターと前記アルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、前記混合物から前記脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る固体除去工程と、を含むことから、粉砕緑茶含有チョコレートの原料としてアルカリ処理ココアバターを用いた場合に、着色料を添加しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる。
本発明の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、本発明のココアバターのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ココアバターを用いることから、着色料を添加しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる。
本発明のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含み、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を含まないホワイトチョコレートの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、前記遊離脂肪酸を脂肪酸塩にするアルカリ処理工程を含むことから、粉砕緑茶含有チョコレートの原料としてアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いた場合に、着色料を添加しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる。
本発明の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、本発明のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いることから、着色料を添加しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる。
実験例3〜実験例7の粉砕緑茶含有チョコレートの換算AVと退色率を示すグラフである。 実施例1、実施例2、比較例1の粉砕緑茶含有チョコレートを各温度帯で保存したときの、−a*/b*の経時的な変化を示すグラフである。 実施例3〜実施例6、比較例2の粉砕緑茶含有チョコレートを各温度帯で保存したときの、−a*/b*の経時的な変化を示すグラフである。 実施例7〜実施例9、比較例3の粉砕緑茶含有チョコレートを各温度帯で保存したときの、−a*/b*の経時的な変化を示すグラフである。
[粉砕緑茶含有チョコレート]
はじめに、従来の粉砕緑茶含有チョコレートについて説明する。粉砕緑茶含有チョコレートとは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品だけに限らず、少なくとも粉砕緑茶とココアバターを含み、必要に応じて乳製品、植物油脂、糖類等の甘味料、香料等を含む食品を指すものである。また、油脂結晶の安定化促進のための油脂加工食品を添加することも可能である。
粉砕緑茶含有チョコレートは、緑色の色調をいかして商品に特性をもたせるため、チョコレート様の色調を呈するカカオマスやココアパウダーは含まないか、または、含んでいてもわずかである。よって、粉砕緑茶含有チョコレートとしては、ホワイトチョコレートに抹茶を練りこんだ抹茶チョコレートが代表的な例である。なお、ホワイトチョコレートに替えて、ホワイトチョコレートの原料を用いてもよく、すなわち、ココアバター、乳製品、甘味料等を原料として用いてもよい。
(粉砕緑茶)
粉砕緑茶とは、緑茶の葉を石臼、ボールミル、ビーズミル、ハンマーミル、または、ジェットミル等で粉砕したもので、レーザー回折式粒度分布計(乾式)を用いて測定した場合のメジアン径がおおむね5μm〜20μm程度になるものである。一般的には抹茶、粉砕茶等の名称で流通しているが、これに限定するものではない。
(ホワイトチョコレート)
ホワイトチョコレートは、カカオ豆の主成分であるココアバターを主成分に、全脂粉乳や脱脂粉乳、糖類等の甘味料を加えて作るチョコレートである。ホワイトチョコレートは、チョコレート様の色調を呈さないため、粉砕緑茶を混ぜ込むことで粉砕緑茶の鮮やかな緑色をいかした製品に仕上げることができる。
(ココアバター)
ココアバターは、カカオ豆に含まれる脂肪分を抽出したものであり、一般的にチョコレート等の食品原料として用いられる。ココアバターに含まれるトリアシルグリセロールは、パルミチン酸(C16:0(炭素数が16で、炭素原子間の二重結合がない脂肪酸であることを示す。以下、同様の表記をすることがある。))、オレイン酸(C18:1)、ステアリン酸(C18:0)の主に3種類の脂肪酸により構成されている。また、トリアシルグリセロールの他に、わずかながら遊離脂肪酸が含まれている。
(乳製品)
乳製品としては、牛乳を乾燥して粉末状にした全脂粉乳や、牛乳から乳脂肪分を除去した脱脂乳を乾燥して粉末状にした脱脂粉乳等を用いることができる。
(甘味料)
甘味料としては、一般的に食品に用いられる甘味料を用いることができる。例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類、糖アルコール、合成甘味料等を用いることができ、また、具体的には、グルコース、果糖、スクロース、マルトース、乳糖、エリスリトール、トレハロース、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等を用いることができる。甘味料の形態は特に限定されず、粉末状、顆粒状、液体状のもの等を適宜使用することができる。
(その他の成分)
その他の成分として、必要に応じて、乳化剤、植物油脂等の油脂成分、油脂結晶の安定化促進のための油脂加工食品、香料等の添加物等を用いることができる。
以下、本発明の一実施形態にかかる、ココアバターのアルカリ処理方法、アルカリ処理ココアバターを用いた粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、アルカリ処理ホワイトチョコレートを用いた粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法について説明する。
なお、カカオ豆の加工プロセスにおいてもアルカリ処理が行われるが、このアルカリ処理は、通常ロースト前のニブに炭酸カリウム溶液を添加する形で行われ、ココアパウダーの溶解性向上、風味向上、色調向上などを目的とするものであり、粉砕緑茶含有チョコレートの退色抑制を目的として、遊離脂肪酸を脂肪酸塩とするものではない。この点において、本発明のココアバターまたはホワイトチョコレートに対するアルカリ処理と、カカオ豆の加工プロセスで行われるアルカリ処理とは全く異なるものである。
なお、以下の実施形態に記載の粉砕緑茶、アルカリ処理に供するホワイトチョコレートおよびココアバター、乳成分、甘味料は、従来の粉砕緑茶含有チョコレートに用いられるものと同様のものを用いることができ、以下の実施形態においては説明を省略する。
[ココアバターのアルカリ処理方法]
本実施形態のココアバターのアルカリ処理方法は、特に粉砕緑茶含有チョコレートの原料として用いるココアバターに適用することができる。また、本実施形態のココアバターのアルカリ処理方法により得られたココアバターは、種々のチョコレート生地、チョコレート製品の原料として用いることができる。
本実施形態のココアバターのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる析出工程と、ココアバターとアルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、混合物から脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る固体除去工程と、を含む。
(析出工程)
析出工程は、遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる工程である。析出工程は、例えば、以下の手順で行う。ココアバターは常温では固体のため、まず、ココアバターを加熱して融解させて液状物とする。ココアバターの液状物にアルカリ性水溶液を加えて撹拌することにより、ココアバターに含まれる遊離脂肪酸がアルカリ性水溶液と反応して脂肪酸塩が生じて、白濁した混合物が得られる。
また、アルカリ性水溶液としては、水に溶けてアルカリ性を有する化合物の水溶液であれば特に限定されず、例えば、炭酸水素塩水溶液、または、炭酸塩水溶液を用いることができる。具体的には、食品に対する添加物として一般的に用いられる、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または、炭酸カリウム水溶液を好適に用いることができる。
中でも、炭酸カリウムは、水への溶解度が高く、粉砕緑茶含有チョコレート全体に対する添加するべき水分の割合を低くできるため、特に好適に用いることができる。粉砕緑茶含有チョコレートにおける水分の割合が高いと、いわゆるガナッシュ状となり、チョコレートとしての状態が保てない可能性があるため、粉砕緑茶含有チョコレートにおける水分含量は低い方が好ましい。また、全国チョコレート業公正取引協議会の規約においてチョコレート生地、準チョコレート生地の水分値は3%以下であることが規定されており、この点からもチョコレートとしての品質を保持するために、ココアバターのアルカリ処理方法において添加する水分量も少ない方が好ましい。このことから、飽和水溶液等の、可能な限り高濃度のアルカリ性水溶液を用いることが好ましい。
また、ココアバターに対するアルカリ性水溶液の混合割合は、特に限定されず、例えば、ココアバターに含まれる遊離脂肪酸の量に合わせて設定することができる。ココアバターに含まれる遊離脂肪酸の量は、ココアバターの酸価を指標とすることができる。例えば、炭酸カリウムを用いる場合、ココアバター100gに対して、炭酸カリウム0.1g〜0.5gの割合で、炭酸カリウム水溶液を加えることができる。
(酸価)
酸価(AV)は、油脂の性質を示す指標の一つで、油脂1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)として定義される。この定義から酸価と遊離脂肪酸量は同じものであり、オレイン酸換算の遊離脂肪酸量をFFAとすると、「AV=1.99×FFA」という換算式で表すことができる。
(固体除去工程)
固体除去工程は、ココアバターとアルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、混合物から脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る工程である。
上述したように、析出工程において、ココアバターとアルカリ性水溶液とを混合すると、ココアバターに含まれる遊離脂肪酸とアルカリ性水溶液が反応して脂肪酸塩が生じ、混合物が白濁する。固体除去工程では、ココアバターとアルカリ性水溶液との混合物における液状部分と脂肪酸塩の析出物を固液分離して、析出物を除去することにより、アルカリ処理ココアバターを得る。
なお、得られたアルカリ処理ココアバターは冷却すると固化することから、冷却せずに後述する粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法に用いてもよいし、冷却したのち、粉砕緑茶含有チョコレート等の原料として用いるまで、固化させた状態で保存しておくことができる。
ココアバターとアルカリ性水溶液との混合物の固液分離は、メッシュ等を用いてろ過することにより固体部分を除去する方法や、遠心分離により固体部分を沈殿させたのち、上清の液体部分をろ過やデカンテーションにより分離する方法が考えられる。遠心分離の条件は、特に限定されず、例えば、4000rpm程度(2865×g程度)で、数分〜10分間とすることができる。
本実施形態のココアバターのアルカリ処理方法によれば、遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる析出工程と、ココアバターとアルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、混合物から脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る固体除去工程と、を含む。このような処理を行うことにより、ココアバターから、変色を促進する因子である遊離脂肪酸を除去することができる。よって、粉砕緑茶含有チョコレートの原料としてアルカリ処理ココアバターを用いた場合に粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制して、着色料を用いなくても、粉砕緑茶本来の鮮やかな緑色を保持した粉砕緑茶含有チョコレートを得ることができる。
[アルカリ処理ココアバターを用いた粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法]
本実施形態の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、前述した実施形態のココアバターのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ココアバターの液状物と、粉砕緑茶と、を含む原料を混合する原料混合工程を含む。
原料混合工程においては、アルカリ処理を行わない未処理のココアバター、着色料を除き、従来の粉砕緑茶含有チョコレートに用いられる原料を、アルカリ処理ココアバター、粉砕緑茶に加えて用いることができる。具体的には、アルカリ処理ココアバターを湯煎等で融解させて液状物としたのち、その他の原料を加えて撹拌混合することにより、原料の混合物が得られる。
(その他の工程)
その他の工程として、原料混合工程により得られた原料混合物を成型、冷却等することにより、粉砕緑茶含有チョコレートが得られる。
(水分値)
粉砕緑茶含有チョコレートの水分値について、チョコレート類の表示に関する公正競争規約において、チョコレート生地の水分値は全重量の3%以下と定められており、また、一般的に流通している業務用チョコレートに水分規格がある場合は1%以下であることが多い。よって、本実施形態の製造方法により得られた粉砕緑茶含有チョコレートの水分含有量は、例えば、1.5%以下とすることができる。
また、一般的に、微生物が繁殖しないとされる水準は水分活性0.5以下とされていることから、粉砕緑茶含有チョコレートの水分活性についても水分活性0.5以下であることが好ましい。
本実施形態の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法であれば、前述した実施形態のココアバターのアルカリ処理方法により得られた、遊離脂肪酸が除去されたアルカリ処理ココアバターを用いることから、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる。よって、着色料を用いなくても、粉砕緑茶本来の鮮やかな緑色を保持することができ、知覚品質が安定した、顧客満足の高い粉砕緑茶含有チョコレートを製造することができる。
[ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法]
本実施形態のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含み、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)を含まないホワイトチョコレートの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、前記遊離脂肪酸を脂肪酸塩にするアルカリ処理工程を含む。
本実施形態のアルカリ処理工程は、例えば、湯煎等により融解させたホワイトチョコレートにアルカリ性水溶液を加えて混合することにより行うことができる。なお、アルカリ処理工程により得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートにおいては、ココアバターに含まれる遊離脂肪酸が脂肪酸塩となっており、この脂肪酸塩を除去しなくても、粉砕緑茶含有チョコレートにおける変色抑制効果が得られることが見出された。よって、脂肪酸塩を除去していないアルカリ処理ホワイトチョコレートを粉砕緑茶含有チョコレートの原料として用いることができる。
アルカリ性水溶液としては、前述したココアバターのアルカリ処理方法と同様に、例えば、炭酸水素塩水溶液、または、炭酸塩水溶液を用いることができ、具体的には、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または、炭酸カリウム水溶液を好適に用いることができる。ホワイトチョコレートに対するアルカリ性水溶液の混合割合も、前述したココアバターのアルカリ処理方法と同様にして設定することができる。
本実施形態のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法は、遊離脂肪酸を含み、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を含まないホワイトチョコレートの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、前記遊離脂肪酸を脂肪酸塩にするアルカリ処理工程を含む。よって、粉砕緑茶含有チョコレートの原料としてアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いた場合に粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制して、着色料を用いなくても、粉砕緑茶本来の鮮やかな緑色を保持した粉砕緑茶含有チョコレートを得ることができる。
[アルカリ処理ホワイトチョコレートを用いた粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法]
本実施形態の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法は、前述した実施形態のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートの液状物と、粉砕緑茶と、を含む原料を混合する原料混合工程を含む。
原料混合工程においては、着色料を除き、従来の粉砕緑茶含有チョコレートに用いられる原料を、アルカリ処理ホワイトチョコレート、粉砕緑茶に加えて用いることができる。具体的には、アルカリ処理ホワイトチョコレートを湯煎等で融解させて液状物としたのち、その他の原料を加えて撹拌混合することにより、原料の混合物が得られる。
(その他の工程)
その他の工程として、原料混合工程により得られた原料混合物を成型、冷却等することにより、粉砕緑茶含有チョコレートが得られる。
また、前述したアルカリ処理ココアバターを用いた粉砕緑茶チョコレートと同様に、本実施形態の製造方法により得られた粉砕緑茶含有チョコレートの水分含有量は1.5%以下とすることができる。また、本実施形態の製造方法により得られた粉砕緑茶含有チョコレートの水分活性は0.5以下とすることが好ましい。
本実施形態の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法であれば、前述した実施形態のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法により得られた、遊離脂肪酸が脂肪酸塩となったアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いることから、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制することができる。よって、着色料を用いなくても、粉砕緑茶本来の鮮やかな緑色を保持することができ、知覚品質が安定した、顧客満足の高い粉砕緑茶含有チョコレートを製造することができる。
[粉砕緑茶含有チョコレートの評価方法]
前述した実施形態により得られた粉砕緑茶含有チョコレートにおける色調の変化は、L*a*b表色系を指標とすることができる。
(色調の評価)
L*a*b表色系において、a*は負の値が大きいほど緑色が強くなるため、a*の値を粉砕緑茶含有チョコレートの色の評価項目として使用することができる。一方で、粉砕緑茶含有チョコレートの退色は、緑色が失われる側面だけでなく、黄色化が進行することで、もともと粉砕緑茶がもっていた良好な色調が失われ、消費者の喫食意欲を削ぐことがわかっており、a*のみの評価では官能評価との相関性が十分ではなかった。
そこで本発明者は、粉砕緑茶の緑色の評価にL*a*b表色系における黄色の要素をもつb*を利用し、a*をb*で除して正負を逆転した指標、すなわち、−a*/b*が官能評価との相関性が良好であることを見出した。本実施形態の粉砕緑茶含有チョコレートにおいては、−a*/b*を色調の良好さという指標として用いることができる。なお、−a*/b*が0.3を下回ると、良好な色調とは言えない水準と設定することができる。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
<粉砕緑茶含有チョコレートにおける変色促進因子>
粉砕緑茶含有チョコレートにおける変色促進因子を検討した。予備試験1として、ココアバター不使用の粉砕緑茶含有チョコレートを製造して評価した。予備試験2として、種々の酸価のホワイトチョコレートを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造して評価した。
[予備試験1:ココアバター不使用の粉砕緑茶含有チョコレートにおける色調変化]
(実験例1)
ココアバター不使用の粉砕緑茶含有チョコレートにおける色調変化を確認した。まず、ココアバター(PPP、Cargill)105質量部を湯煎で融解させ、純粉糖(Cotta純粉糖、(株)Cotta)129質量部、全脂粉乳(北海道全粉乳、よつ葉乳業(株))66質量部を加えて、家庭用フードプロセッサー(LLJ−B12K1、HAUTURE)で1分間ミキシングした。さらに、抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)15質量部を投入してよく攪拌し、成型、冷却して粉砕緑茶含有チョコレートを得た。ココアバターPPPのAV(酸価)は3.0であった。
(実験例2)
実験例1におけるココアバターPPPを粉末油脂(TP−9、日油(株))105質量部に変更し、疑似的な粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。なお、実験例2においてはココアバターを用いていないことから得られたものはチョコレートと称することはできないが、ここでは便宜上「粉砕緑茶含有チョコレート」と称する。粉末油脂TP−9をステンレス鍋で60℃以上に加熱して融解させたこと以外は、実験例1と同様にして粉砕緑茶含有チョコレートを得た。粉末油脂TP−9は、AV(酸価)が0.2以下であり、遊離脂肪酸をほとんど含まない。
(粉砕緑茶含有チョコレートの評価)
得られた粉砕緑茶含有チョコレートを15℃、5℃、−18℃に保ち、製造直後、1週間後、2週間後に、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタジャパン(株))にてL*a*b*を計測した。粉砕緑茶含有チョコレートの変色の指標として、−a*/b*、退色率を用いた。本試験における退色率とは、−a*/b*の変化率のことであり、−a*/b*=Tとした場合、退色率=(T−初期T)/初期Tで表される。本試験における初期とは、製造直後を指すものである。結果を表1に示した。また、−a*/b*が0.3以上の場合に、粉砕緑茶含有チョコレートらしい良好な色調であると判断した。
Figure 0006905649
(評価結果)
実験例1の粉砕緑茶含有チョコレートは、経時的に−a*/b*が徐々に低下し、15℃、2週間後には0.280となり、黄色に変色して抹茶(粉砕緑茶)らしい鮮やかな色調は失われていた。実験例2の粉砕緑茶含有チョコレートは、15℃2週間後においても−a*/b*が0.501と高い値を保ち、抹茶らしい鮮やかな緑色を保っていた。保存温度帯が低くなるほど退色率が改善し、実験例1、実験例2の差異は、いずれの温度帯でも確認された。
[予備試験2:ホワイトチョコレートの酸価と粉砕緑茶含有チョコレートの色調変化]
予備試験2として、ホワイトチョコレートの酸価と粉砕緑茶含有チョコレートの色調変化との相関性を確認した。予備試験2においては、5種類の市販のホワイトチョコレートを使用して粉砕緑茶含有チョコレートを作成した。
(実験例3)
ホワイトチョコレートとして、バンホーテン ホワイトチョコレート(片岡物産(株))を用いた。ホワイトチョコレート300質量部を湯煎で融解し、粉砕緑茶として抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)15質量部を加えてよく攪拌し、テンパリングを行った後、成型、冷却して粉砕緑茶含有チョコレートを得た。
(実験例4〜実験例7)
ホワイトチョコレートとして、実験例4においてTOMIZ クーベルチュールホワイトフレーク((株)富澤商店)、実験例5においてTOMIZ ノベルビアンコホワイト((株)富澤商店)、実験例6において 森永 ホワイトエフィカスブラン(森永商事(株))、実験例7においてパイオニア企画 タブレットチョコホワイト((株)パイオニア企画)を用いたこと以外は、実験例3と同様にして粉砕緑茶含有チョコレートを得た。
(粉砕緑茶含有チョコレートの評価)
得られた粉砕緑茶含有チョコレートを5℃の冷蔵庫に入れて、製造直後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後に、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタジャパン(株))を用いて粉砕緑茶含有チョコレートのL*a*b*を計測した。予備試験1と同様に、粉砕緑茶含有チョコレートの変色の指標として、−a*/b*、退色率を用いた。結果を表2に示した。また、−a*/b*が0.3以上の場合に、粉砕緑茶含有チョコレートらしい良好な色調であると判断した。
また、これら粉砕緑茶含有チョコレートのAV(酸価)を測定し、表2に示した。酸価は抽出油脂1mgあたりの値で示されるため、もとのホワイトチョコレートに含まれる脂質の割合から、ホワイトチョコレート1mgあたりの値に換算したAV(酸価)を算出した。本実験例においては、ホワイトチョコレート1mgあたりの値に換算したAVを換算酸価(換算AV)と称する。
Figure 0006905649
また、AVと退色率との相関関係を調べるために、1週間後から4週間後の粉砕緑茶含有チョコレートについて、実験例3〜実験例7の粉砕緑茶含有チョコレートの換算AVと退色率をプロットし、近似直線の近似式と決定係数Rを算出した。結果を図1に示した。図1のグラフにおいて、横軸はサンプル(粉砕緑茶含有チョコレート)1mgあたりのAV、縦軸は退色率を示す。また、グラフ中のAは実験例3、Bは実験例4、Cは実験例5、Dは実験例6、Eは実験例7を示す。
(評価結果)
図1に示すように、換算AVが高いほど退色率が高く、換算AVと退色率には高い相関関係が見られた。決定係数は0.946〜0.959と高い値を示した。この結果より、粉砕緑茶含有チョコレートに含まれる遊離脂肪酸が多いほど、粉砕緑茶含有チョコレートの退色が促進されることが示された。
以上の予備実験1、2から、粉砕緑茶含有チョコレートの退色促進因子が遊離脂肪酸であること、また、退色促進の程度は、粉砕緑茶含有チョコレートに含まれる遊離脂肪酸の存在量に依存することが示された。
また、実験例2は、ココアバターに替えて、酸価が0.2以下である粉末油脂を用いて疑似的な粉砕緑茶含有チョコレートを作成したものであり、全粉乳は配合されているものの、実験例1に比べると退色がほとんど生じていない。このことより、全粉乳(及びココアバター以外のその他の原料)は退色因子とはなっていない、または、退色への影響が極めて低いことが示された。
以上に示したように、本発明者は、ココアバターにわずかに含まれる遊離脂肪酸の存在によって粉砕緑茶の退色が促進されることを発見した。さらに、ココアバターまたはホワイトチョコレートをアルカリ処理することで、退色促進要素である遊離脂肪酸をチョコレートとしての本来の性質を損ねることなく除去して、粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
<アルカリ処理ココアバターを用いた粉砕緑茶含有チョコレートの評価>
[実施例1]
実施例1として、前述した実施形態のココアバターのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ココアバターを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造して評価した。
まず、ココアバターのアルカリ処理を行った。ココアバター(PPP、Cargill)100質量部をステンレス鍋で50℃まで加温して融解させ、超純水で溶解した0.05g/mlの炭酸ナトリウム水溶液2質量部を加えて1分間攪拌して脂肪酸塩を析出させた。さらに、このココアバターとアルカリ性水溶液の混合物を固液分離して、混合物から析出物を除去するために、コクサン卓上遠心機H−36(株式会社コクサン)を用いて、4000rpm(2865×g)で10分間遠心分離後、析出物を除去して冷却し、固体状のアルカリ処理ココアバターを得た。この固体状のアルカリ処理ココアバターのAV(酸価)は2.0であった。
次に、得られたアルカリ処理ココアバターを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。アルカリ処理ココアバター105質量部を湯煎で融解し、純粉糖(Cotta純粉糖、(株)Cotta)129質量部、全脂粉乳(北海道全粉乳、よつ葉乳業(株))66質量部を順に投入し、フードプロセッサー(LLJ−B12K1、HAUTURE)で1分間ミキシングし、抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)15質量部を投入して混合して、原料の混合を行った。さらに、原料の混合物を、テンパリング、成型、冷却を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。
[実施例2]
ココアバターのアルカリ処理において、0.05g/ml炭酸ナトリウム水溶液を4質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、ココアバターのアルカリ処理、粉砕緑茶含有チョコレートの製造を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。固体状のアルカリ処理ココアバターのAV(酸価)は1.3であった。
[比較例1]
ココアバターのアルカリ処理において、0.05g/ml炭酸ナトリウム水溶液を4加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、ココアバターのアルカリ処理操作、粉砕緑茶含有チョコレートの製造を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。ココアバターPPPのAV(酸価)は3.0であった。
(粉砕緑茶含有チョコレートの評価)
得られた粉砕緑茶含有チョコレートを25℃、15℃、5℃、−18℃に保ち、製造直後、2日後、1週間後、2週間後、4週間後に、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタジャパン(株))にてL*a*b*を計測した。これらの温度帯は、粉砕緑茶含有チョコレートを保存、流通、販売することを想定し設定されたものであり、いずれの温度帯においても変色が抑制されることが望ましい。
また、予備試験1と同様に、粉砕緑茶含有チョコレートの変色の指標として、−a*/b*、退色率を用いた。結果を表3に示した。また、−a*/b*が0.3以上の場合に、粉砕緑茶含有チョコレートらしい良好な色調であると判断した。また、図2には、実施例1、実施例2、比較例1の粉砕緑茶含有チョコレートを各温度帯で保存したときの、−a*/b*の経時的な変化を示すグラフを示した。各グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は−a*/b*を示している。
Figure 0006905649
実施例1、実施例2の粉砕緑茶含有チョコレートは、比較例1の粉砕緑茶含有チョコレートに比べて、いずれの温度帯・いずれの観測時点でも退色率が改善していた。また、実施例2における退色率は、実施例1における退色率よりも、いずれの温度帯・いずれの観測時点でも小さくなった。
ココアバターに炭酸ナトリウム水溶液を添加するというココアバターへのアルカリ処理を行うことでココアバター中の遊離脂肪酸を減少させ、粉砕緑茶含有チョコレートの退色が抑制できることが確認された。AV(酸価)と退色率の間にも相関がみられ、「粉砕緑茶含有チョコレートの退色促進因子が遊離脂肪酸であること、また、退色促進の程度は、粉砕緑茶含有チョコレートに含まれる遊離脂肪酸の存在量に依存すること」という予備実験で得られた知見が支持された。
[実施例3]
実施例3として、ココアバターのアルカリ処理において、アルカリ性水溶液として炭酸カリウム水溶液を用いてアルカリ処理ココアバターを製造し、これを用いた粉砕緑茶含有チョコレートを製造して評価した。
まず、ココアバターのアルカリ処理を行った。ココアバター(PPP、Cargill)100質量部をステンレス鍋で50℃まで加温して融解させ、超純水で溶解した0.05g/mlの炭酸カリウム水溶液Aを4質量部加えて1分間攪拌して、脂肪酸塩を析出させた。さらに、このココアバターとアルカリ性水溶液の混合物を固液分離するために、4000rpmで10分間遠心分離後、析出物を除去して冷却し、固体状のアルカリ処理ココアバターを得た。この固体状のアルカリ処理ココアバターのAV(酸価)は1.74であった。
次に、得られたアルカリ処理ココアバターを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。アルカリ処理ココアバター105質量部を湯煎で融解し、純粉糖(Cotta純粉糖、(株)Cotta)129質量部、全脂粉乳(北海道全粉乳、よつ葉乳業(株))66質量部を順に投入し、フードプロセッサーで1分間ミキシングし、抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)15質量部、油脂加工食品(チョコシードB、不二製油(株))0.15質量部を投入して混合して、原料の混合を行った。さらに、原料の混合物を、テンパリング、成型、冷却を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。
[実施例4]
ココアバターのアルカリ処理において、炭酸カリウム水溶液Aを6質量部にしたこと以外は、実施例3と同様にして、ココアバターのアルカリ処理を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。固体状のアルカリ処理ココアバターのAV(酸価)は1.31であった。
[実施例5]
超純水で溶解した0.2g/mlの炭酸カリウム水溶液Bを用意し、炭酸カリウム水溶液Aの代わりに炭酸カリウム水溶液Bを1.05質量部加えたこと以外は、実施例3と同様にして、ココアバターのアルカリ処理を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。固体状のアルカリ処理ココアバターのAV(酸価)は1.40であった。
[実施例6]
超純水で溶解した0.4g/mlの炭酸カリウム水溶液Cを用意し、炭酸カリウム水溶液Aの代わりに炭酸カリウム水溶液Cを1.05質量部加えたこと以外は、実施例3と同様にして、ココアバターのアルカリ処理を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。固体状のアルカリ処理ココアバターのAV(酸価)は0.95であった。
[比較例2]
ココアバターのアルカリ処理において、炭酸カリウム水溶液を加えなかったこと以外は実施例3と同様にして、ココアバターのアルカリ処理操作、粉砕緑茶含有チョコレートの製造を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。ココアバターPPPのAV(酸価)は3.14であった。
(粉砕緑茶含有チョコレートの評価)
得られた粉砕緑茶含有チョコレートを25℃、15℃、5℃、−18℃に保ち、製造直後、2日後、1週間後、2週間後、4週間後に、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタジャパン(株))にてL*a*b*を計測した。予備試験1と同様に、粉砕緑茶含有チョコレートの変色の指標として、−a*/b*、退色率を用いた。結果を表4に示した。また、−a*/b*が0.3以上の場合に、粉砕緑茶含有チョコレートらしい良好な色調であると判断した。また、図3には、実施例3〜実施例6、比較例2の粉砕緑茶含有チョコレートを各温度帯で保存したときの、−a*/b*の経時的な変化を示すグラフを示した。各グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は−a*/b*を示している。
Figure 0006905649
(評価結果)
実施例3、実施例4の粉砕緑茶含有チョコレートは、比較例2の粉砕緑茶含有チョコレートに比べて、ほぼいずれの温度帯・いずれの観測時点でも退色率が改善していた。また、実施例4における退色率は、実施例3における退色率よりも、いずれの温度帯・いずれの観測時点でも小さくなった。−18℃、2日後の粉砕緑茶含有チョコレートにおいては、実施例3よりも比較例2の方が、退色率が小さくなったが、変化量自体が小さく、差がつかなかったものと考えられた。
実施例5、実施例6の粉砕緑茶含有チョコレートも同様に、比較例2の粉砕緑茶含有チョコレートに比べて、いずれの温度帯・いずれの観測時点でも退色率が改善した。また、実施例6における退色率は、実施例5における退色率よりも、いずれの温度帯・いずれの観測時点でも小さくなった。
以上の結果から、ココアバターに炭酸カリウム水溶液を添加するというココアバターへのアルカリ処理を行うことでココアバター中の遊離脂肪酸を減少させ、いずれの温度帯・観測時点でも、粉砕緑茶含有チョコレートの退色を抑制できることが確認された。また、炭酸カリウムは水への溶解度が高く、高濃度の水溶液とすることができることから、ココアバター100質量部に対して1質量部程度、粉砕緑茶含有チョコレート全体の質量に対して約0.3%程度の水溶液添加で十分な退色抑制が実現できることが確認された。
<アルカリ処理ホワイトチョコレートを用いた粉砕緑茶含有チョコレートの評価>
[実施例7]
実施例7として、前述した実施形態のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造して評価した。
まず、ホワイトチョコレートのアルカリ処理を行った。ホワイトチョコレート(バンホーテンプロフェッショナルW28S、片岡物産(株))100質量部を50℃の湯煎で溶かし、超純水で溶解した0.2g/mlの炭酸カリウム水溶液B 0.4質量部を加えて混合して、アルカリ処理ホワイトチョコレートを得た。
続けて、得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。アルカリ処理ホワイトチョコレートを湯煎からおろして、35℃になったときに、抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)5質量部、油脂加工食品(チョコシードB、不二製油(株))0.1質量部を投入して混合して、原料の混合を行った。さらに、原料の混合物を、テンパリング、成型、冷却を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。得られた粉砕緑茶含有チョコレートのAV(酸価)は2.93であった。
[実施例8]
ホワイトチョコレートのアルカリ処理において、超純水で溶解した0.4g/mlの炭酸カリウム水溶液C 0.4質量部を使用したこと以外は実施例7と同様にして、ホワイトチョコレートのアルカリ処理を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。得られた粉砕緑茶含有チョコレートのAV(酸価)は2.57であった。
[実施例9]
ホワイトチョコレートのアルカリ処理において、超純水で溶解した0.6g/mlの炭酸カリウム水溶液D 0.4質量部を使用したこと以外は実施例7と同様にして、ホワイトチョコレートのアルカリ処理を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。得られた粉砕緑茶含有チョコレートのAV(酸価)は2.35であった。
[比較例3]
ホワイトチョコレートのアルカリ処理において、炭酸カリウム水溶液を加えなかったこと以外は、実施例7と同様にして、ホワイトチョコレートのアルカリ処理操作、粉砕緑茶含有チョコレートの製造を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。得られた粉砕緑茶含有チョコレートのAV(酸価)は3.39であった。
(粉砕緑茶含有チョコレートの評価)
得られた粉砕緑茶含有チョコレートを25℃、15℃、5℃、−18℃に保ち、製造直後、2日後、1週間後、2週間後、4週間後に、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタジャパン(株))にてL*a*b*を計測した。予備試験1と同様に、粉砕緑茶含有チョコレートの変色の指標として、−a*/b*、退色率を用いた。結果を表5に示した。また、−a*/b*が0.3以上の場合に、粉砕緑茶含有チョコレートらしい良好な色調であると判断した。また、図4には、実施例7〜実施例9、比較例3の粉砕緑茶含有チョコレートを各温度帯で保存したときの、−a*/b*の経時的な変化を示すグラフを示した。各グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は−a*/b*を示している。
Figure 0006905649
(評価結果)
実施例7〜実施例9の粉砕緑茶含有チョコレートは、比較例3の粉砕緑茶含有チョコレートに比べて、ほぼいずれの温度帯・いずれの観測時点でも退色率が改善されていた。また、実施例8における退色率は、実施例7における退色率よりも、いずれの温度帯・いずれの観測時点でも小さくなった。また、実施例9における退色率は、実施例8における退色率よりもいずれの温度帯・いずれの観測時点でも小さくなった。−18℃、2日後の粉砕緑茶含有チョコレートは、実施例7のものよりも比較例3のものの方が、退色率が小さくなったが、変化量自体が小さく、差がつかなかったものと考えられた。
以上の結果より、ホワイトチョコレートに炭酸カリウム水溶液を添加することでココアバター中の遊離脂肪酸を減少させ、粉砕緑茶含有チョコレートの退色を抑制することができることが確認された。
<粉砕緑茶含有チョコレートの水分値および水分活性>
上述の実施例1〜実施例9、比較例1〜実施例3により得られた粉砕緑茶含有チョコレートについて、水分値および水分活性を測定した。
粉砕緑茶含有チョコレートの水分値は、食品分析開発センターSUNATECに分析委託し、減圧加熱乾燥法により測定した。粉砕緑茶含有チョコレートの水分活性は、実施例1〜実施例6、比較例1、比較例2については、フロイント産業EZ−100(電気抵抗式、測定範囲は0.30<)を用いて測定した。また、実施例7〜実施例9、比較例3の粉砕緑茶含有チョコレートの水分活性については、食品分析開発センターSUNATECに分析委託し、電気抵抗式分析により測定した。結果を表6に示した。
Figure 0006905649
水分値について、チョコレート類の表示に関する公正競争規約において、チョコレート生地の水分値は全重量の3%以下と定められており、また、一般的に流通している業務用チョコレートに水分規格がある場合は1%以下であることが多い。アルカリ処理において水分を添加していない比較例はもちろん、アルカリ処理において水分を添加している各実施例の粉砕緑茶含有チョコレートにおいても、この基準を満たしていた。
次に、水分活性については、いずれの実施例も0.35以下となり、アルカリ処理において水分を添加していない各比較例とほとんど同じであった。一般的に、微生物が繁殖しないとされる水準は水分活性0.5以下とされており、いずれの実施例もこれを大きく下回っていることから、微生物繁殖の指標という意味で、実施例、比較例の粉砕緑茶含有チョコレートはほぼ同等と評価できる。いずれにせよ、実施例のように水分を添加したものであっても、水分値、水分活性においてチョコレートとしての性質を変化させるものではないことが示された。
<粉末状炭酸カリウムによるアルカリ処理ホワイトチョコレートを用いた、粉砕緑茶含有チョコレートの評価>
次に、ホワイトチョコレートのアルカリ処理において、アルカリ性水溶液ではなく、粉末状の炭酸塩を用いた場合に、粉砕緑茶含有チョコレートにおける退色抑制効果が得られるかを検討した。
[比較例4]
アルカリ性水溶液を用いることなく、ホワイトチョコレートのアルカリ処理の操作を行った。ホワイトチョコレート(バンホーテンプロフェッショナルW28S、片岡物産(株))100質量部を50℃の湯煎で溶かしたのち、このホワイトチョコレートを用いて粉砕緑茶含有チョコレートを製造した。ホワイトチョコレートを湯煎からおろして、35℃になったときに、抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)5質量部、油脂加工食品(チョコシードB、不二製油(株))0.10質量部を投入して混合して、原料の混合を行った。さらに、原料の混合物を、テンパリング、成型、冷却を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。
[比較例5]
粉末状の炭酸カリウムを用いてホワイトチョコレートのアルカリ処理を行った。ホワイトチョコレート(バンホーテンプロフェッショナルW28S、片岡物産(株))100質量部を50℃の湯煎で溶かし、炭酸カリウム((株)松葉薬品)0.15質量部を水溶液にせず粉末状のまま加えて混合した。粉末状の炭酸カリウムを用いて処理したホワイトチョコレートを湯煎からおろして、35℃になったときに、抹茶(TNR−1、(株)辻利一本店)5質量部、油脂加工食品(チョコシードB、不二製油(株))0.10質量部を投入して混合して、原料の混合を行った。さらに、原料の混合物を、テンパリング、成型、冷却を行い、粉砕緑茶含有チョコレートを得た。
(粉砕緑茶含有チョコレートの評価)
得られた粉砕緑茶含有チョコレートを25℃に保ち、製造直後、3日後、1週間後、2週間後、4週間後に、色彩色差計(CR−400、コニカミノルタジャパン(株))にてL*a*b*を計測した。予備試験1と同様に、粉砕緑茶含有チョコレートの変色の指標として、−a*/b*、退色率を用いた。結果を表7に示した。また、−a*/b*が0.3以上の場合に、粉砕緑茶含有チョコレートらしい良好な色調であると判断した。
Figure 0006905649
(評価結果)
比較例5の粉砕緑茶含有チョコレートの退色の傾向は、アルカリ性水溶液を用いなかった比較例4と同程度であった。すなわち、比較例5のように、ホワイトチョコレートのアルカリ処理において、水溶液ではなく粉末状の炭酸カリウムをそのまま添加した場合、粉砕緑茶含有チョコレートにおける退色抑制効果は見られなかった。アルカリ処理において、遊離脂肪酸との反応が起こらず、遊離脂肪酸が脂肪酸塩とならずにそのまま残存して、粉砕緑茶含有チョコレートの退色が起こったものと考えられた。
以上の評価結果より、本発明の例示的態様である実施例1〜実施例9の粉砕緑茶含有チョコレートにおいては、保存中における経時的な変色が抑制されたことが示された。よって、本発明のココアバターのアルカリ処理方法、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法によれば、得られた粉砕緑茶含有チョコレートの変色を抑制できることが示された。

Claims (10)

  1. 遊離脂肪酸を含むココアバターの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、脂肪酸塩を析出させる析出工程と、
    前記ココアバターと前記アルカリ性水溶液との混合物を固液分離して、前記混合物から前記脂肪酸塩の析出物を除去してアルカリ処理ココアバターを得る固体除去工程と、を含む、ココアバターのアルカリ処理方法。
  2. 前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素塩水溶液、または、炭酸塩水溶液である、請求項1に記載のココアバターのアルカリ処理方法。
  3. 前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または、炭酸カリウム水溶液である、請求項1または2に記載のココアバターのアルカリ処理方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のココアバターのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ココアバターの液状物と、粉砕緑茶と、を含む原料を混合する原料混合工程を含む、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法。
  5. 前記粉砕緑茶含有チョコレートの水分含有量が1.5%以下である、請求項4に記載の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法。
  6. 遊離脂肪酸を含み、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を含まないホワイトチョコレートの液状物とアルカリ性水溶液を混合して、前記遊離脂肪酸を脂肪酸塩にするアルカリ処理工程を含む、ホワイトチョコレートのアルカリ処理方法。
  7. 前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素塩水溶液、または、炭酸塩水溶液である、請求項6に記載のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法。
  8. 前記アルカリ性水溶液が、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、または、炭酸カリウム水溶液である、請求項6または7に記載のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載のホワイトチョコレートのアルカリ処理方法により得られたアルカリ処理ホワイトチョコレートの液状物と、粉砕緑茶と、を含む原料を混合する原料混合工程を含む、粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法。
  10. 前記粉砕緑茶含有チョコレートの水分含有量が1.5%以下である、請求項9に記載の粉砕緑茶含有チョコレートの製造方法。
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