本発明で使用する硬化性有機重合体にはウレタン樹脂や珪素原子に結合した加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる基を有する有機重合体をあげることができる。(以下、珪素原子に結合した加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る珪素含有基を架橋性珪素基ともいう。)
ウレタン樹脂としては分子鎖末端等にイソシアネート基を有する有機重合体をあげることができる。重合体の主鎖としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン等の飽和炭化水素系重合体、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、および/またはスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸、テレフタル酸、琥珀酸等の多塩基酸とビスフェノールA、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとの縮合重合体やラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをイオン重合やラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル共重合体等のアクリル酸エステル系重合体;前記有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。分子鎖末端にイソシアネート基を有する有機重合体は分子鎖末端等に水酸基等の活性水素基を有する重合体とポリイソシアネートと反応することにより得ることができる。
架橋性珪素基を有する有機重合体中、架橋性珪素基の代表例としては、式(1):
(式中、R1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはR2 3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基(R2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基)を示し、R1が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またn個の式(2):
におけるbは同一である必要はない。nは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)で表わされる基があげられる。
該加水分解性基は1個の珪素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+(bの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基が架橋性珪素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
架橋性珪素基を形成する珪素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個程度あってもよい。
なお、式(3):
(式中、R1,X,aは前記と同じ)で表わされる架橋性珪素基が、入手が容易である点から好ましい。また、式(3)の架橋性珪素基においてaが2又は3である場合が好ましい。aが3の場合、aが2の場合よりも硬化速度が大きくなる。
上記R1の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R2 3SiO−(R2はメチル基、エチル基等の炭化水素基)で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、たとえば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基がさらに好ましい。加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常メトキシ基やエトキシ基が使用される。式(3)で示される架橋性珪素基の場合、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
架橋性珪素基の具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、−Si(OR)3、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基、−SiR1(OR)2、があげられる。ここでR1は前記と同じであり、Rはメチル基やエチル基のようなアルキル基である。
また、架橋性珪素基は1種で使用しても良く、2種以上併用してもかまわない。架橋性珪素基は、主鎖または側鎖あるいはいずれにも存在しうる。硬化物の引張特性等の硬化物の物性が優れる点で架橋性珪素基が分子鎖末端に存在するのが好ましい。
架橋性珪素基は重合体1分子中に平均して少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。分子中に含まれる架橋性珪素基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また多すぎると網目構造があまりに密となるため良好な機械特性を示さなくなる。
架橋性珪素基を有する有機重合体の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン等の飽和炭化水素系重合体、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、および/またはスチレン等との共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸、テレフタル酸、琥珀酸等の多塩基酸とビスフェノールA、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとの縮合重合体やラクトン類の開環重合体等のポリエステル系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをイオン重合やラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル共重合体等のアクリル酸エステル系重合体;前記有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体等が例示される。
上記主鎖骨格をもつ重合体のうち、ポリエステル系重合体、アクリル酸エステル系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、ポリカーボネート系重合体等が好ましい。特に、架橋性珪素基を分子鎖末端に導入させ易く、比較的低粘度で安価でもあり、ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れるオキシアルキレン系重合体、耐熱性、耐候性や接着性に優れるアクリル酸アルキルエステル系重合体や電気特性に優れる飽和炭化水素系重合体が好ましい。
架橋性珪素基を有する有機重合体は、直鎖状でもよくまたは分岐を有してもよく、数平均分子量で500〜50,000程度が好ましく、1,000〜30,000がさらに好ましい。分子量が大きくなると、硬度が小さくなる傾向にある。
上記重合体の中でポリオキシアルキレン系重合体は本質的に式(4)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
(式中、R3は2価の有機基)
式(4)におけるR3は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。式(4)で示される繰り返し単位の具体例としては、例えば、
−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C2H5)O−、−CH2C(CH3)2O−、−CH2CH2CH2CH2O−
等があげられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にオキシプロピレンを主成分とする重合体から成るのが好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体を使用する場合、その分子量は硬化物の引張特性である引張モジュラスを小さくし破断時伸びを大きくするため大きいほうが好ましい。本発明においては、数平均分子量の下限としては5,000が好ましく、10,000がさらに好ましい。また、数平均分子量の上限は50,000が好ましく、30,000がさらに好ましい。なお、本発明でいう数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量をいう。数平均分子量が5,000未満の場合、引張モジュラスや破断時伸びが十分でない場合があり、50,000を超えると組成物の粘度が大きくなり作業性が低下することがある。
ポリオキシアルキレン系重合体は直鎖状でもよくまたは分岐を有してもよいが、硬化物の引張モジュラスを小さくし破断時伸びを大きくできるため直鎖状の重合体が好ましい。また、架橋性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布は2以下、特には1.6以下が好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、たとえば特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−215623号に示されるような有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる、有機アルミニウム−ポルフィリン錯体触媒による重合法、たとえば特公昭46−27250号および特公昭59−15336号などに示される複金属シアン化物錯体触媒による重合法等があげられるが、特に限定されるものではない。有機アルミニウム−ポルフィリン錯体触媒による重合法や複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
上記ポリオキシアルキレン類の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては、たとえばトルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン類との反応から得られるものをあげることができる。
ポリオキシアルキレン系重合体への架橋性珪素基の導入は、分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させることにより行うことができる。この方法(以下、高分子反応法という)はポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、リビング重合により得られる不飽和単量体の重合体にも好適に使用される。これらの重合体は分子鎖末端に水酸基等の官能基を有しているので、末端に架橋性珪素基を導入しやすいためである。
高分子反応法の具体例として、不飽和基含有オキシアルキレン系重合体に架橋性珪素基を有するヒドロシランや架橋性珪素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得る方法をあげることができる。不飽和基含有オキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有する有機重合体に、不飽和ハロゲン化合物のような、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
また、高分子反応法の他の具体例として、末端に水酸基を有するオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法や末端にイソシアネート基を有するオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基および架橋性珪素基を有する化合物を反応させる方法をあげることができる。イソシアネート化合物を使用すると、容易に架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を得ることができる。高分子反応法はオキシアルキレン系重合体以外の他の重合体にも適用することが可能である。
架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の具体例としては、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同57−164123号、特公平3−2450号、特開2005−213446号、同2005−306891号、国際公開特許WO2007−040143号、米国特許3,632,557号、同4,345,053号、同4,960,844号等の各公報に提案されているものをあげることができる。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は本質的に式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
(式中、R4は水素原子またはメチル基、R5はアルキル基を示す)
式(5)におけるR5はアルキル基であり、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R5は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。また、ハロゲン原子やフェニル基等を有する置換アルキル基でもよい。R5の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基、グリシジル基等のエポキシ基置換アルキル基、ジエチルアミノエチル基等のアミノ基置換アルキル基等をあげることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の分子鎖は本質的に式(5)の単量体単位からなるが、ここでいう本質的にとは該重合体中に存在する式(5)の単量体単位の合計が50重量%をこえることを意味する。式(5)の単量体単位の合計は好ましくは70重量%以上である。
式(5)以外の単量体単位の例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含む単量体;その他アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位があげられる。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は上記したように、オキシアルキレン系重合体と混合して使用されることがある。この場合、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体との相溶性が大きい点で、架橋性珪素基を有し分子鎖が、下記式(6):
(式中、R4は前記に同じ、R6は炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、下記式(7):
(式中、R4は前記に同じ、R7は炭素数6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体が好ましい。
前記式(6)のR6としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜5、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2のアルキル基があげられる。なお、R6は一種でもよく、2種以上混合していてもよい。
前記式(7)のR7としては、たとえば2−エチルヘキシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等の炭素数6以上、通常は7〜30、好ましくは8〜20の長鎖のアルキル基があげられる。なお、R7は一種でもよく、2種以上混合したものであってもよい。また、式(6)の単量体単位と式(7)の単量体単位の存在比は、重量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40がさらに好ましい。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体は通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをラジカル共重合して得ることができる。また、架橋性珪素基を有する開始剤や架橋性珪素基を有する連鎖移動剤を使用すると分子鎖末端に架橋性珪素基を導入することができる。
特開2001−040037号公報、特開2003−048923号公報および特開2003−048924号公報には架橋性珪素基を有するメルカプタンおよびメタロセン化合物を使用して得られる架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。また、特開2005−082681号公報合成例には高温連続重合による架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体が記載されている。
特開2000−086999号公報等にあるように、架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体であって架橋性珪素基が分子鎖末端に高い割合で導入された重合体も知られている。このような重合体はリビングラジカル重合によって製造されているため、高い割合で架橋性珪素基を分子鎖末端に導入することができる。本発明では以上に述べたような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体を使用することができる。
ポリオキシアルキレン系重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物は硬化物の機械強度に優れ、且つ、耐熱性や基材との接着性にも優れる特性を有するため、本発明に適している。特に、ポリオキシアルキレン系重合体と上記式(6)と上記式(7)の単量体単位からなる架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の混合物が好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物を使用する場合、オキシアルキレン系重合体100重量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を5〜200重量部使用することが好ましく、5〜50重量部使用することがさらに好ましい。
架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体やこの重合体と架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の混合物の具体例は、特開昭59−122541号、同63−112642号、同特開平6−172631号等の各公報に記載されている。また、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報には、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行い、架橋性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体と架橋性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体の混合物を得る方法が記載されている。
有機重合体の中で飽和炭化水素系重合体は、芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、その骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素原子数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させ、あるいは、オレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加するなどの万法により得ることができるが、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましく、イソブチレン系重合体が特に好ましい。
主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体であるものは、耐熱性、耐候性、耐久性、及び、湿気遮断性に優れる特徴を有する。イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよいが、ゴム特性の面からイソブチレンに由来する繰り返し単位を50質量%以上含有するものが好ましく、80質量%以上含有するものがより好ましく、90〜99質量%含有するものが特に好ましい。
飽和炭化水素系重合体の合成法としては、従来、各種重合方法が報告されているが、特に近年多くのいわゆるリビング重合が開発されている。飽和炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体の場合、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J. P. Kennedyら、 J. Polymer Sci., Polymer Chem.Ed.1997年、15巻、2843頁)を用いることにより容易に製造することが可能であり、分子量500〜100,000程度を、分子量分布1.5以下で重合でき、分子末端に各種官能基を導入できることが知られている。
架橋性珪素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法としては、たとえば、持公平4ー69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開平1−197509号、特許公報第2539445号、特許公報第2873395号、特開平7−53882号の各明細書などに記載されているが、特にこれらに限定されるものではない。
上記の架橋性珪素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
本発明では(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子を使用する。(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子は、殻壁が塩化ビニリデン樹脂により構成された平均粒径が1mm以下の球状中空体をいう(サランバルーンという場合がある。)。塩化ビニリデン系樹脂とは、塩化ビニリデンの単独重合物、塩化ビニリデンの共重合物またはこれらの混合物をいう。(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子の平均粒径は、1〜500μmが好ましく、1〜250μmがより好ましく、5〜100μmがさらに好ましい。なお、(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子の殻壁内部には低沸点炭化水素等の低分子化合物や発泡剤等が存在していてもよく、この場合においては加熱等により中空微粒子が膨張し平均粒径が増大することがあるが、上記の平均粒径は膨張前の平均粒径を意味する。なお、上記平均粒径は、例えばレーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により、重量平均値(メジアン径)等として求めることができる。
(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子としては、DOW CHEMICAL社より提供されるSARANMI CROSPHERES、日本フィライトより提供されるエクスパンセルを使用することができる。(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子の使用量は(A)硬化性有機重合体100質量部に対し、0.1〜100質量部であり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。
本発明の硬化性組成物には、塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子に加えさらに充填剤、可塑剤、老化防止剤、エチルシリケート等の水分吸収剤、パラフィン等の希釈剤、シランカップリング剤などの接着付与剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、発泡剤、他の重合体などを必要に応じて添加することができる。
充填剤の例としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、硬化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華および塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子以外の中空微粒子、などの如き充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤等が使用できる。
これらの充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にフュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤を使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、および酸化亜鉛などから選ばれる充填剤を使用すれば好ましい結果が得られる。
塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子以外の中空微粒子としてはフェノール樹脂微小中空体、エポキシ樹脂微小中空体、尿素樹脂微小中空体、ポリスチレン微小中空体、ポリメタクリレート微小中空体、ポリビニルアルコール微小中空体、スチレン−アクリル系樹脂微小中空体が挙げられる。また、樹脂微小中空体の表面を熱硬化性樹脂で被覆した微小中空体も使用することができる。さらには、樹脂微小中空体の表面を炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の無機粉体でコーティングした微小中空体も使用可能である。塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子以外の中空微粒子を使用する場合、本発明の目的や効果が達成されるように注意すべきである。
これらの充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。充填剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常1〜300質量部の範囲、好ましくは5〜300質量部の範囲、さらに好ましくは5〜250質量部で使用するのが良い。
可塑剤の具体例としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル等のリン酸エステル類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン−ナフテン系混合炭化水素等の炭化水素系可塑剤類;塩素化パラフィン類;低分子量のアクリル酸エステル重合体等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。特にアクリル酸エステル重合体を使用すると硬化物の耐候性を改善することができる。
可塑剤を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常10〜300質量部の範囲、好ましくは20〜250質量部の範囲で使用されるのが良い。可塑剤の使用量が10質量部未満の場合には組成物の粘度が高くなりすぎる場合があり、また300質量部を越える場合は硬化物からの可塑剤の染み出しなどが生じる場合があるため好ましくない。
硬化触媒の例としては、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩、ビスマストリス2−エチルヘキソエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の如きカルボン酸の金属塩:ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等の如きアミン塩:並びに他の酸性触媒および塩基性触媒をあげることができる。これらの中では有機錫化合物が好ましい。硬化触媒は(A)硬化性有機重合体の硬化触媒として作用する。硬化触媒を使用する場合、(A)成分100質量部に対し、通常0.1〜20質量部の範囲、好ましくは0.2〜10質量部の範囲で使用するのが良い。
本発明の硬化性組成物は、(A)硬化性有機重合体に(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子を加えて混合することによって製造することができる。重合体(A)の原料に(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子を加え、この後重合体(A)の原料を重合体(A)に変換してもよい。重合体(A)や重合体(A)の原料に(B)塩化ビニリデン樹脂製中空微粒子を混合する際、50℃以上の加熱下に撹拌してもよい。50℃以上の加熱下に撹拌する場合、本発明の効果が大きく発現し、70℃以上、さらには80℃以上で特に大きく発現する。また、系中の水分を減少させるため、系を減圧下加熱することが好ましい。
得られた硬化性組成物は加圧して容器に充填され、接着剤やシーリング材が製造されるが、加圧時に中空微粒子が破損していると加圧時に硬化性組成物の密度の増加が顕著になる。
本発明のシーリング材組成物は一成分型硬化性組成物としてもよく、多成分型硬化性組成物とすることもできる。一成分型硬化性組成物の場合、使用時に混合作業の必要がないため、使用しやすい。また、(A)硬化性有機重合体は水分が存在すると硬化反応が進行する場合があるので水分を除去し、脱水剤を添加して密閉容器に入れて保管するのが望ましい。多成分型硬化性組成物の場合、互いに反応する成分を使用することができるが、使用時に混合作業の必要がある。本発明の硬化性組成物は特に一成分型として好適に使用することができる。本発明の硬化性組成物は常温で湿気により硬化する、または常温で混合により硬化する硬化性組成物であるが、必要に応じて加熱し硬化を促進してもよい。
本発明の硬化性組成物は接着剤やシーリング材、塗料等として、屋外で使用されたり、屋内でも浴室や台所等の水回りで使用される場合、好適に使用することができる。
(実施例1)
表1に示すように(A)成分として硬化性有機重合体、重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム及び(B)塩化ビニリデン系樹脂製中空微粒子をそれぞれ表に示す所定量ずつ仕込み、加熱減圧混合撹拌を100℃にて2時間行い、配合物の脱水を行った。更に、充填剤、可塑剤、水分吸収剤、酸化防止剤、接着付与剤及び硬化触媒を表に示す所定量添加し、撹拌混合して硬化性組成物を調製した。なお、表1において添加成分の量は質量部である。
得られた硬化性組成物の密度及び該硬化性組成物の加圧後の密度を表1に示す。また、得られた硬化性組成物の各種基材への引張せん断接着強さと破壊モードを表1に示す。
CF:凝集破壊、AF:界面破壊、C1A9〜C9A1:CF及びAFの破壊状態の面積をおおよその割合で表したものであり、CnA(10−n)はCFn%、AF(10−n)%の破壊状態を意味する。
さらに得られた硬化性組成物の硬化物の2号ダンベルの破断強度及び破断時伸びを表1に示す。
なお、密度は比重カップ法で測定した。また、加圧後の密度は金属製の耐圧容器に気泡が入らないように硬化性組成物を充填した後、5気圧(0.5MPa)および7気圧(0.7MPa)の圧力を5分間かけ、その後を容器から取り出し、比重カップ法で測定した。
(比較例1)
(B)塩化ビニリデン系樹脂製中空微粒子に代えてアクリロニトリル樹脂製中空微粒子を用いた以外は実施例1と同様に硬化性組成物を調製した。
(比較例2)
(B)塩化ビニリデン系樹脂製中空微粒子に代えてガラス製中空微粒子を用いた以外は実施例1と同様に硬化性組成物を調製した。
*1:架橋性珪素基を有する有機重合体、末端にメチルジメトキシ基を有するポリプロピレンオキシド、EST280、(株)カネカ製
*2:塩化ビニリデン系樹脂製中空微粒子、EMC−20(B)EV、日本フィライト(株)製
*3:アクリロニトリル系樹脂製中空微粒子、MFL−81GCA、松本油脂製薬(株)製
*4:ガラス製中空微粒子、S22、3M社製
*5:重質炭酸カルシウム、omyacarb15、OMYA社製
*6:表面処理炭酸カルシウム、SP60、竹原化学工業(株)製
*7:ポリプロピレングリコール、アクトコールD3000、三井化学(株)製
*8:フェノール系酸化防止剤、SONGNOX2450、Songwon社製
*9:テトラエトキシシラン、エチルシリケート28、コルコート(株)製
*10:パラフィン系希釈剤、カクタスノルマルパラフィンN−12、(株)ENEOSサンエナジー製
*11:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM−603、信越化学工業(株)製
*12:ジブチル錫化合物、U700ES、日東化成(株)製
実施例1と比較例1を比較すると、加圧後、実施例1において密度の変化は無いが比較例1では圧力に応じて密度が増加していることがわかる。また、実施例1と比較例2を比較すると、様々な被着材の種類に対して、実施例1の接着強度が高いことがわかる。さらに実施例1と比較例2を比較すると、破断強度については変わらないが、破断時の伸びが実施例1では比較例2より大きいことがわかる。