JP6902368B2 - 赤色蛍光体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、一般式がMAlSiN(Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Euの群の中から選択される一種以上の元素である)で示される赤色蛍光体の製造方法に関する。
白色発光ダイオード(以降、発光ダイオードをLEDとも記載する)は、半導体発光素子と蛍光体との組み合わせにより疑似白色光を発光するデバイスであり、その代表的な例として、青色LEDと黄色のイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(以降YAG蛍光体と記載する)の組み合わせが知られている。しかし、この方式の白色LEDは、その色度座標値としては白色領域に入るものの、赤色発光成分が不足しているために、照明用途に用いると演色性が低く、液晶バックライトのような画像表示装置では色再現性が悪いという問題がある。そのため、不足している赤色発光成分を補うために、YAG蛍光体とともに、赤色を発光する窒化物又は酸窒化物蛍光体を併用することが提案されている(特許文献1)。
赤色を発光する窒化物蛍光体としては、一般式がMAlSiN(Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Euの群の中から選択される一種以上の元素である)で示され、例えばCaAlSiN結晶相と同一の結晶構造を有する無機化合物を母体結晶として、さらに光学活性な元素で付活したものが知られている。なかでもEu2+で付活したCaAlSiN蛍光体は特に高輝度で発光するとされている(特許文献2)。また、特許文献2には、Caの一部をSrで置換することにより、発光ピーク波長が短波長側にシフトした蛍光体が得られることが記載されている。このEu2+付活した(Sr,Ca)AlSiN蛍光体は、CaAlSiN蛍光体よりも発光波長が短く、視感度が高い領域のスペクトル成分が増えることから、高輝度白色LED用の赤色蛍光体として有望である。なお、本発明では、CaAlSiN蛍光体と(Sr,Ca)AlSiN蛍光体をまとめて、CASN系蛍光体と呼ぶ。
特開2004−071726号公報 国際公報第2005/052087号パンフレット
CASN系蛍光体は、波長が長く深みのある赤色領域にスペクトル成分を多く含むため、高い演色性を実現できる反面、視感度の低いスペクトル成分が多くなり、白色LEDとしての輝度は低くなってしまうという課題があった。なお、特に実際に蛍光体を製造する場合においては、蛍光体の主要な組成を最適化することのみならず、例えば蛍光体を焼成する温度や焼成時の環境など、一般的には見落としやすい製造中の様々な因子が輝度をはじめとする蛍光体の特性に影響を及ぼすことがあり、それら因子の影響については十分に把握されてなかった。そこで焼成容器の素材としても用いられる高融点金属が、最終的に本発明の赤色蛍光体の特性に及ぼす影響について調べ、本発明は、輝度の優れた赤色蛍光体の製造方法を提供することを目的とした。そして本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、原料混合体を焼成する際に高融点金属を共存させると、輝度が優れた赤色蛍光体となることを見出し、本発明の完成に至った。
課題を解決するための手段、即ち本発明は以下に示す(1)〜(7)である。
(1)一般式がMAlSiN(Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Euの群の中から選択される一種以上の元素である)で示される赤色蛍光体の製造方法であって、前記赤色蛍光体の原料化合物を混合して原料混合体を形成する混合工程と、焼成容器内において、前記原料混合体と、焼成温度の最高値より高い融点を有する高融点金属とを、共存させて焼成する焼成工程とを有する、赤色蛍光体の製造方法である。
(2)前記(1)記載の赤色蛍光体の製造方法では、原料混合体の平均粒子径が0.1μm〜100μmであることが好ましい。
(3)前記(1)または(2)記載の赤色蛍光体の製造方法では、焼成工程が、原料混合体と高融点金属とを、原料混合体の単位質量に対する高融点金属の接触面積が1.40cm/g以上 5.00cm/g以下の割合で接触させ共存させる工程であることが好ましい。
(4)前記(1)〜(3)いずれか一項に係る高融点金属は、鉄より高い融点を持つ金属の単体、複合体または合金であることが好ましい。
(5)さらに前記(1)〜(4)いずれか一項に係る高融点金属は、モリブデン、タンタル、タングステンの群の中から選択される一種以上の金属の単体、複合体または合金であることが好ましい。
(6)前記(1)〜(5)に係る赤色蛍光体の製造方法は、CaAlSiNである結晶相と同一の結晶構造を母体結晶とする蛍光体の製造に好ましく適用される。
(7)前記(1)〜(5)に係る赤色蛍光体の製造方法は、(Sr,Ca)AlSiNである結晶相と同一の結晶構造を母体結晶とする蛍光体の製造に好ましく適用される。
本発明の赤色蛍光体の製造方法の実施により、輝度の高い赤色蛍光体、特にCaAlSiN系蛍光体を得ることができる。またLEDと前記赤色蛍光体とを組み合わせることにより、高輝度な発光素子やさらに照明装置などの発光装置をも提供することができるようになる。
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
<赤色蛍光体>
本発明は、赤色蛍光体の原料を混合して原料混合体を形成する混合工程と、前記原料混合体と高融点金属とを焼成容器内で共存させて焼成する焼成工程とを備える、赤色蛍光体の製造方法である。また本発明の製造方法に係る赤色蛍光体は、一般式がMAlSiN(Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Euの群の中から選択される一種以上の元素である)で示される赤色蛍光体である。一般式中、Mgはマグネシウム、Caはカルシウム、Srはストロンチウム、Baはバリウム、Euはユーロピウムであり、またAlはアルミニウム、Siはケイ素、Nは窒素の各元素を示す。)前記赤色蛍光体は、より具体的には、CaAlSiNまたは(Sr,Ca)AlSiNである結晶相と同一の結晶構造を母体結晶とする蛍光体、即ちCASN系蛍光体であることが好ましい。なお、蛍光体が(Sr,Ca)AlSiNである結晶相と同一の結晶構造を母体結晶とする蛍光体である場合には、St原子のモル数を、Sr原子とCa原子の合計モル数で除した値は、0.35以上0.95以下であることが好ましく、更に好ましくは0.40以上0.90以下である。蛍光体の主結晶相がCaAlSiN結晶、または(Sr,Ca)AlSiN結晶相と同一の構造か否かは、粉末X線回折測定を利用して確認することができる。結晶構造がCaAlSiN、または(Sr,Ca)AlSiN結晶相と異なる場合、発光色が赤色でなくなったり、蛍光強度が大きく低下したりするので、好ましくない。例えばCASN系蛍光体の結晶の骨格構造は、(Si,Al)−N4の正四面体が結合することにより構成され、その間隙にCa原子やSr原子が位置したものである。CaやSrの一部が、発光中心として作用するEuで置換されることにより赤色蛍光体として機能するようになる。
なお本発明の赤色蛍光体の製造方法は、本発明でいう前記赤色蛍光体をなるべく高純度で得ることを目的とした製造方法であり、前記結晶が単相で得られることが好ましいが、前記赤色蛍光体の他に副生成物や異相を全く生成しないような製造方法を意味しているわけではなく、蛍光体特性に大きな影響がない限り、副生成物や異相を含んでいても構わない。また本発明の製造方法により得られる赤色蛍光体には、不可避的成分として微量の酸素原子が含まれることもある。蛍光体の組成パラメータであるCa原子及びSr原子の割合、Si/Alモル数比やN/Oモル数比などは、赤色蛍光体の結晶構造を維持しながら、全体として電気的中性が保たれるように調整される。
<赤色蛍光体の原料混合体>
本発明に係る一般式がMAlSiN(Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Euの群の中から選択される一種以上の元素である)で示される赤色蛍光体の原料は、これを構成する元素の酸化物や窒化物、特に窒化物が好ましく用いられる。例えば赤色蛍光体がCASN系蛍光体である場合は、原料化合物としてCASN系蛍光体を構成する元素の窒化物、即ち窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化カルシウム及び窒化ストロンチウム、窒化ユーロピウムを好ましく用いることができる。またユーロピウムを含む原料化合物としては、入手が容易な酸化ユーロピウムも好ましく用いることができる。本発明では、これらの窒化物を混合工程で混合して原料混合体とする。
<混合工程>
本発明でいう混合工程は、目的とする赤色蛍光体が得られるように秤量した各原料化合物を、混合して粉末状の原料混合体と成す工程である。原料化合物を混合する方法は特に限定されないが、例えば、乳鉢、ボールミル、V型混合機、遊星ミル、ジェットミルなどの混合装置を用いて十分に混合する方法がある。なお、空気中の水分や酸素と激しく反応する窒化カルシウム、窒化ストロンチウム、窒化ユーロピウム等は、内部が不活性雰囲気で置換されたグローブボックス内や混合装置を用いて取り扱うことが適切である。
本発明の蛍光体の付活元素であるEu含有率は、あまりに少ないと発光への寄与が小さくなる傾向にあり、あまりに多いとEu同士間のエネルギー伝達による蛍光体の濃度消光現象が起こりやすくなる傾向にあるため、0.01モル%以上0.3モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.04モル%以上0.2モル%以下であり、さらに好ましくは0.06モル%以上0.15モル%以下である。
<原料混合体の平均粒子径>
本発明の製造方法は、原料混合体の粒子径や粒子の形状まで規定するものではないが、原料混合体の平均粒子径を測定した場合には、0.1μm以上100μm以下であることが焼成工程における反応性の観点から好ましい。原料混合体の平均粒子径が0.1μm未満であるとハンドリング性が悪くなり生産性に欠け、平均粒子径が100μmを超えると焼成工程での反応が進みにくくなるため、目的とする赤色蛍光体が十分得られず、蛍光体の輝度が低下する傾向が高まる。
<高融点金属>
本発明の赤色蛍光体の製造方法に係る高融点金属は、焼成工程における焼成温度の最高値よりも高い融点を有する金属であり、前記金属は単体でも、複数の金属単体からなる複合体でも、合金でもよい。なお焼成温度の最高値よりも高い融点とは、より具体的な設定として鉄の融点(1538℃)と定めることが好ましい。このような高融点金属としては、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウムの群の中から選択される一種以上の金属の単体、複合体または合金を挙げることができる。ハンドリング性、工業的生産性などを考慮するとモリブデン、タンタル、タングステンの単体が更に好ましい。本発明では、焼成容器内に原料混合体と高融点金属とを共存させて焼成する。この場合、高融点金属の形状等には特に規定はないが、形状としては板状、箔状が好ましい。原料混合体と接触する側の面の一部または全面を高融点金属とした焼成容器を用いるようにしても良い。また前記高融点金属製の焼成容器も好ましく用いることができる。
高融点金属材の形状は、本発明の範囲内であれば特に制限はないが、焼成工程後に高融点金属を除去することを考慮すると、形状としてはワイヤー状、粒子状、タブレット状、棒状、箔状、板状が挙げられ、また焼成容器そのものでも構わない。箔状や板状である場合は、ハンドリング性、反応性の観点から、その厚みが0.1mm以上3mm以下であることが好ましい。
<焼成容器内における原料混合体と高融点金属との共存>
本発明では焼成容器内に原料混合体と高融点金属とを共存させて焼成する必要がある。本発明でいう共存とは、少なくとも同じ反応系内、例えば焼成容器内に原料混合体と高融点金属とが存在していることを意味している。この場合、高融点金属が原料混合体の赤色蛍光体への焼成に及ぼす、好ましい効果を期待するものであるから、両者はなるべく接近していることが好ましく、原料混合体が高融点金属に接触していることがより好ましい。このとき、高融点金属に接触するのは全ての原料混合体ではなく原料混合体の一部である。原料混合体の一部と表現したのは、原料混合体が粉末の集合体であることを考慮した表現であり、原料混合体を構成している多数の粒子のうちの限られた一部が高融点金属に接触している状態を表すものである。なお原料混合体と高融点金属とが接触している場合、原料混合体と高融点金属の相対的な関係としては、原料混合体の単位質量に対する高融点金属材の接触面積が、1.40cm/g以上5.00cm/g以下となるように、より好ましくは1.50cm/g以上3.20cm/g以下となるように、設定することが好ましい。なおここでいう接触面積とは、高融点金属に接触している原料混合体を一体物と見なし、その一体物が覆っている面積の合計である。原料混合体と高融点金属の接触面積が1.40cm/g以上であれば、得られる赤色蛍光体中への不純物元素、特に酸素原子の混入を抑えることができ、その結果赤色蛍光体の輝度を高くできる。また接触面積が、5.00cm/g以下であれば、得られる赤色蛍光体中への高融点金属元素の混入を抑制し、蛍光体の輝度の低下を抑制できるため好ましい。さらに、原料混合体が高融点金属と直に接触してない場合でも、両者間の距離は、直線距離にして10cmの範囲内に納めることが好ましく、5cmの範囲内であればさらに好ましい。
<焼成工程>
本発明の赤色蛍光体の製造方法において、その焼成工程では、前記の原料混合体と高融点金属とが焼成容器内で共存するよう、好ましくは原料混合体の一部が高融点金属と接触するように、焼成容器内部に充填して焼成する。前記焼成容器は、気密性を高められる構造を備えていることが好ましく、容器内部はアルゴン、ヘリウム、水素、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気ガスで満たすことが好ましい。焼成容器は、高温の雰囲気ガス下において安定で、原料混合体及びその反応生成物と反応しにくい材質で構成されることが好ましく、例えば窒化ホウ素製、カーボン製の容器や、モリブデンやタンタルやタングステン等の高融点金属製の容器を使用することが好ましい。原料混合体に含まれる不純物元素、特に酸素原子が高融点金属と反応することが推定され、目的とする赤色蛍光体に不純物元素が取り込まれることを抑制することができる。
<焼成温度>
焼成工程では、原料混合体を充填した焼成容器を速やかに焼成炉内に置き、焼成雰囲気に例えば窒素ガスを用い、1000℃以上2000℃以下で焼成する。この温度範囲であれば、焼成工程終了後の未反原料を少なくでき、また主結晶相の分解を抑制できるため好ましい。好ましい焼成温度の範囲は1500℃以上2000℃以下であり、さらに好ましくは1600℃以上2000℃以下の範囲である。
<焼成雰囲気ガスの種類>
焼成工程における焼成雰囲気ガスの種類としては、例えば元素としての窒素を含むガスを好ましく用いることができる。具体的には、窒素(N)及び/又はアンモニアを挙げることができ、特に窒素が好ましい。また同様に、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスも好ましく用いることができる。なお焼成雰囲気ガスは1種類のガスで構成されていても、複数の種類のガスの混合ガスであっても構わない。
<焼成雰囲気ガスの圧力>
焼成雰囲気ガスの圧力焼成雰囲気ガスの圧力は、焼成温度に応じて選択されるが、通常0.1MPaG以上10MPaG以下とする加圧状態である。本発明に係る赤色蛍光体は、約1800℃までの温度では大気圧下で安定して存在することができるが、1800℃以上の温度で焼成する場合は、赤色蛍光体の分解を抑制するため、さらに加圧状態することが好ましい。即ち圧力はより好ましくは0.2MPaG以上2.0MPaG以下であり、さらに好ましくは0.5MPaG以上2.0MPaG以下であり、さらに好ましくは0.5MPaG以上1.5MPaG以下である。雰囲気圧力が高いほど、蛍光体の分解温度は高くなるが、工業的生産性を考慮すると0.5MPaG以上1MPaG以下とすることが好ましい。
<焼成時間>
焼成工程における焼成時間は、未反応物が多く存在したり、赤色蛍光体の粒子が成長不足であったり、或いは生産性の低下という不都合が生じない時間範囲が選択される。本発明の赤色蛍光体の製造方法では、焼成時間は0.5時間以上48時間以下であることが好ましく、2時間以上24時間以下であることがより好ましい。
焼成後、高融点金属材を除去した焼成物の状態は、原料配合や焼成条件によって、粉体状、塊状と様々である。蛍光体として実際に使用する場合に備えて、焼成物を所定のサイズの粉末にする解砕・粉砕工程及び/又は分級操作工程を備えていてもよい。なお蛍光体の平均粒子径は、励起光の吸収効率及び十分な発光効率を得るという点から、LED用蛍光体として好適に使用する場合には、蛍光体の平均粒子径が5〜30μmとなる様に調整するのが好ましい。また前記解砕・粉砕工程では、その処理に由来する不純物の混入を防ぐため、蛍光体と接触する機器の部材が、窒化ケイ素、アルミナ、サイアロンといった高靭性セラミックス製であることが好ましい。
本発明の赤色蛍光体の製造方法では、焼成工程終了後、得られた赤色蛍光体の特性を改善するため、赤色蛍光体中の不純物を除去する酸処理工程、赤色蛍光体の結晶性を向上するアニール工程をさらに実施することができる。
<酸処理工程>
酸処理工程を実施する場合、特に手順や方法に特に限定はないが、例えば塩酸、蟻酸、酢酸、硫酸、硝酸の群から選ばれる1種以上の酸の水溶液中に、焼成工程で得た赤色蛍光体を粉砕したものを分散させ、数分から数時間撹拌した後に、さらに液が沸騰するまで加温して沸騰状態を数分から数時間維持しながら撹拌し、最後に水洗する方法を挙げることができる。酸処理工程により、得られた赤色蛍光体中に含まれる、原料化合物由来の不純物元素、焼成容器由来の不純物元素、焼成工程で生じた異相、粉砕工程にて混入した不純物元素を溶解除去することができる。
<アニール工程>
アニール工程における赤色蛍光体の加熱温度は、少なくとも350℃以上であって、赤色蛍光体が分解しない温度範囲内とすることができる。
以下、本発明の赤色蛍光体の製造方法を、実施例及び比較例により、さらに具体的に説明する。
(実施例1)
赤色蛍光体の原料化合物として、α型窒化ケイ素粉末(SN−E10グレード、宇部興産社製)52.0質量%、窒化アルミニウム粉末(Eグレード、トクヤマ社製)45.6質量%、酸化ユーロピウム(RUグレード、信越化学工業社製)2.4質量%を、ナイロン製ポットと窒化ケイ素製ボールを用い、また混合溶媒としてエタノールを使用して、ボールミル混合を行った。溶媒を乾燥除去後、目開き75μmの篩を用いて分級し、篩下の粉末を回収した。
前記篩下の粉末を、水分1質量ppm以下、酸素1質量ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中に移動させ、そこで窒化ストロンチウム(Materion社製)、窒化カルシウム(太平洋セメント社製)をさらに配合し、乾式混合した。配合比は、前記の篩下粉末:窒化ストロンチウム:窒化カルシウム=49.5質量%:48.1質量%:2.4質量%とした。乾式にて混合した原料粉末の大きさを揃えるため、再度、目開き250μmのナイロン製篩で分級し、篩下からの回収粉末を、実施例1の原料混合体とした。
焼成容器である蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(N−1グレード、デンカ社製)中に、0.3mm厚のタングステン箔を入れ、さらに前記実施例1の原料混合体を230g充填した。このとき原料混合体とタングステン箔の接触面積は350cmであった。なお焼成容器の蓋は完全密閉するものではない(以降も同様)。
原料混合体を充填した焼成容器をグローブボックスから取り出し、カーボンヒーターを備える電気炉内に速やかに置いて、電気炉内をいったん0.1PaG以下まで十分に真空排気した。真空排気したまま加熱を開始し、600℃からは窒素ガスを電気炉内に導入し、炉内雰囲気圧力を0.9MPaGとした。窒素ガス導入後もそのまま1800℃まで昇温し、1800℃で4時間の焼成を実施した。
電気炉への通電を止めて常温(25℃)にまで冷却した後、焼成容器内のタングステン箔を取り除いた。焼成体はボールミルを用いて解砕し、さらに目開き45μmの振動篩により分級し、実施例1の赤色蛍光体を得た。
(比較例1)
高融点金属を原料混合体と共存させなかったこと以外は、実施例1と同じ方法で比較例1の赤色蛍光体を作製した。
(実施例2)
焼成容器として高融点金属でもあるモリブデン製ルツボを使用し、またタングステン箔を用いなかったこと以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2の赤色蛍光体を作製した。なおモリブデン製ルツボと実施例2の原料混合体とが接触する面積は300cmであった。
(実施例3)
焼成容器内には0.3mm厚のタングステン箔と0.3mm厚のモリブデン箔を入れて焼成したこと以外は、実施例1と同じ方法で実施例3の赤色蛍光体を作製した。実施例3の原料混合体と高融点金属との接触面積の合計は450cmであった。
(実施例4〜7)
実施例1と同じ原料混合体を使用し、表1に示す原料混合体充填量、高融点金属の箔を用い、即ち原料混合体と高融点金属との接触面積を変えて、実施例1と同じ条件で実施例4〜7の蛍光体を作製した。
(粉末X線回折測定)
得られた実施例1〜7、比較例1の赤色蛍光体に対して、粉末X線回折測定装置(株式会社リガク製UltimaIV)を用い、CuKα線を用いた粉末X線回折を行った。得られたX線回折パターンは、全て(Sr,Ca)AlSiN結晶と同一の回折パターンが認められ、実施例1〜7、比較例1の赤色蛍光体は、主結晶相が(Sr,Ca)AlSiN結晶と同一の結晶構造を有することが確認された。
(蛍光スペクトルの測定)
実施例1〜7、比較例1の赤色蛍光体が示す蛍光スペクトルを、ローダミンBと副標準光源により補正を行った分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−7000)を用いて測定した。測定には、光度計に付属の固体試料ホルダーを使用し、励起波長455nmでの蛍光スペクトルを測定した。なお蛍光スペクトルのピーク波長は全て625nmであった。また蛍光体の輝度は、蛍光スペクトルのピーク波長におけるピーク強度を指標として評価した。実施例1〜7、比較例1の比較では、比較例1のピーク強度を100%とした場合の相対値として示し、5%以上の改善、即ち105%を超えるピーク強度を示した場合、輝度が改善されたと評価した。
実施例1〜7、比較例1を製造する際の、焼成容器中への原料混合体の充填量、用いた高融点金属の材質、原料混合体と高融点金属との接触面積、原料混合体の単位質量に対する高融点金属の接触面積、発光ピーク強度、発光ピーク強度から得られる蛍光体輝度の判定結果(改善されたものに○印)を表1に示した。
Figure 0006902368
(実施例8)
赤色蛍光体の原料化合物として、α型窒化ケイ素粉末(SN−E10グレード、宇部興産社製)52.9質量%、窒化アルミニウム粉末(Eグレード、トクヤマ社製)46.3質量%、酸化ユーロピウム(RUグレード、信越化学工業社製)0.8質量%を、ナイロン製ポットと窒化ケイ素製ボールを用い、また混合溶媒としてエタノールを使用して、ボールミル混合を行った。溶媒を乾燥除去後、目開き75μmの篩を用いて分級し、篩下の粉末を回収した。
前記篩下の粉末を、水分1質量ppm以下、酸素1質量ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中に移動させ、そこで窒化カルシウム(太平洋セメント社製)をさらに配合し、乾式混合した。配合比は、前記篩下の粉末:窒化カルシウム=64.3質量%:35.7質量%とした。乾式にて混合した原料粉末の大きさを揃えるため、再度、目開き250μmのナイロン製篩で分級し、篩下からの回収粉末を、実施例8の原料混合体とした。
焼成容器である蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(N−1グレード、デンカ社製)中に、0.3mm厚のタングステン箔を入れ、さらに前記実施例8の原料混合体を230g充填した。このとき原料混合体とタングステン箔の接触面積は450cmであった。
原料混合体を充填した焼成容器をグローブボックスから取り出し、カーボンヒーターを備える電気炉内に速やかに置いて、電気炉内をいったん0.1PaG以下まで十分に真空排気した。真空排気したまま加熱を開始し、600℃からは窒素ガスを電気炉内に導入し、炉内雰囲気圧力を0.1MPaGとした。窒素ガス導入後もそのまま1800℃まで昇温し、1800℃で4時間の焼成を実施した。
電気炉への通電を止めて常温(25℃)にまで冷却した後、焼成容器内のタングステン箔を取り除いた。焼成体はボールミルを用いて解砕し、さらに目開き45μmの振動篩により分級し、実施例8の赤色蛍光体を得た。
(比較例2)
高融点金属材を原料混合体と共存させなかったこと以外は、実施例8と同じ方法にて比較例2の赤色蛍光体を作製した。
得られた実施例8と比較例2の赤色蛍光体に対して、実施例1と同じ方法で粉末X線回折測定を実施した。得られたX線回折パターンは、どちらもCaAlSiN結晶と同一の回折パターンが認められ、実施例8、比較例2の赤色蛍光体は、主結晶相がCaAlSiN結晶と同一の結晶構造を有することが確認された。
実施例8及び比較例2の赤色蛍光体に関して、実施例1と同じ方法で、蛍光スペクトルを測定し、それらの蛍光スペクトルのピーク波長、ピーク強度を測定した。なお、ピーク波長はどちらも645nmであった。実施例8、比較例2の比較では、比較例2のピーク強度を100%とした場合の相対値として示し、5%以上の改善、即ち105%を超えるピーク強度を示した場合、輝度が改善されたと評価した。
実施例8、比較例2を製造する際の、焼成容器への原料混合体の充填量、用いた高融点金属の材質、原料混合体との接触面積、原料混合体の単位質量あたりの接触面積、発光ピーク強度、発光ピーク強度から得られる蛍光体輝度の判定結果(改善されたものに○印)を表2に示した。
Figure 0006902368
表1〜2に示される結果から、本発明の赤色蛍光体の製造方法を実施することにより、得られる赤色蛍光体の輝度が向上することがわかる。

Claims (6)

  1. 一般式がMAlSiN(Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Euの群の中から選択される一種以上の元素である)で示される赤色蛍光体の製造方法であって、前記赤色蛍光体の原料化合物を混合して原料混合体を形成する混合工程と、焼成容器内において、前記原料混合体と、焼成温度の最高値より高い融点を有する高融点金属とを、共存させて焼成する焼成工程とを有
    前記高融点金属が、ワイヤー状、粒子状、タブレット状、棒状、箔状、および、板状から選択される形状を有し、
    前記焼成工程が、前記原料混合体と前記高融点金属とを、前記原料混合体の単位質量に対する前記高融点金属の接触面積が1.40cm /g以上 5.00cm /g以下の割合で接触させ共存させる工程である、赤色蛍光体の製造方法。
  2. 原料混合体の平均粒子径が0.1μm以上100μm以下である、請求項1記載の赤色蛍光体の製造方法。
  3. 高融点金属が、鉄より高い融点を持つ金属の単体、複合体または合金である、請求項1〜いずれか一項記載の赤色蛍光体の製造方法。
  4. 高融点金属が、モリブデン、タンタル、タングステンの群の中から選択される一種以上の金属の単体、複合体または合金である、請求項1〜いずれか一項記載の赤色蛍光体の製造方法。
  5. 赤色蛍光体が、CaAlSiNである結晶相と同一の結晶構造を母体結晶とする蛍光体である、請求項1〜請求項いずれか一項記載の赤色蛍光体の製造方法。
  6. 赤色蛍光体が、(Sr,Ca)AlSiNである結晶相と同一の結晶構造を母体結晶とする蛍光体である、請求項1〜いずれか一項記載の赤色蛍光体の製造方法。
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