JP6902325B2 - チタン多孔体およびチタン多孔体の製造方法 - Google Patents

チタン多孔体およびチタン多孔体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チタン多孔体およびチタン多孔体の製造方法に関するものである。特に、低い比抵抗を持つチタン多孔体を、高い寸法精度で製造することができる技術に関するものである。
チタンは耐食性、延性及び強度等に優れた性質を有するため、航空機及びゴルフクラブなどの原料として広く用いられている。また、チタンは生体に対する親和性を有するため、歯科用途及び整形外科用途などの医療用途への応用も盛んにおこなわれている。
このようにチタンは幅広い用途を有し、様々な用途開発が検討されており、今日では、高い耐食性、耐酸化性を利用し、濾過用のフィルターや二次電池の電極などにも検討が始められている。濾過用のフィルターや二次電池の電極として用いられる場合、通水性の確保が必要となるため、空隙率の高いチタン多孔体、比抵抗の小さいチタン多孔体、場合によっては、高い空隙率及び小さい比抵抗を備えたチタン多孔体が求められている。
例えば、空隙率の高いチタン多孔体の製造方法として、金型にチタン繊維を投入後、プレスで圧縮をして圧縮成形体を作成し、チタン繊維圧縮成形体の厚みを調整した後、チタン繊維を焼結することでさらに厚みを調整したチタン多孔体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、チタン多孔体を製造する際に、セッターの溶融シリカ板上にスペーサーを設置し、チタン繊維を溶融シリカ板で加圧しながら焼結することで厚さの均一なシート状のチタン多孔体の製造方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、これら製造方法では、チタン多孔体のより高精度な厚さ制御を行うことが困難である。特許文献1には、焼結前に圧縮成形処理を行うことでチタン多孔体の厚さを均一にすることが記載されているが、焼結前のチタン多孔体に圧縮成形処理を行ったとしても、焼結前にスプリングバックが起きてしまい、厚さにばらつきが生じる。
一方、特許文献2には、チタン多孔体を焼結しながら押圧を行うことが記載されているが、この方法では、スペーサー近傍の厚さは目標の厚さになるものの、シートの中央部はセッターの歪みにより外側よりも薄くなる。また、チタン多孔体を焼結した後、厚さを制御するために加圧成形を行っても良いとされているが、加圧成形により、チタン多孔体の比抵抗が高くなる問題があった。これらのことから、空隙率が高く、寸法精度が高く、比抵抗の小さいチタン多孔体が求められている。
特開2012−172179号公報 特開2007−070727号公報 特許第3083144号公報 特許第4859689号公報 特開2007−262570号公報 特開2007−246966号公報
本発明は、従来のチタン多孔体と比べて、比抵抗が小さく、寸法精度が高いチタン多孔体およびその製造方法の提供を目的とする。
かかる実情に鑑み、本発明者らは、前記課題について鋭意検討を進めたところ、比抵抗が小さく、寸法精度が高いチタン多孔体が二次電池の電極用として最適であることが分かり、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のチタン多孔体は、空隙率が65%〜90%の範囲にあり、比抵抗が225μΩ・cm〜1100μΩ・cmの範囲であることを特徴としている。
また、本発明のチタン多孔体は、チタン繊維から構成されるチタン多孔体であることを好ましい態様としている。
さらに、本発明のチタン多孔体の製造方法は、チタン繊維の積層体を、仮焼結後、ロール圧延を行い、次いで、本焼結を行うことを特徴としている。
さらに、本発明のチタン多孔体の製造方法は、仮焼結の温度が800℃〜1000℃であり、本焼結の温度が仮焼結の温度よりも50℃〜100℃高いことを好ましい態様としている。
さらに、本発明のチタン多孔体の製造方法は、ロール圧延および本焼結を2回以上繰り返し行うことを好ましい態様としている。
本発明は、チタン多孔体、およびチタン多孔体の製造方法であって、特に、焼結温度を制御することによって、従来にない小さい比抵抗、高い寸法精度を持つものができるという格別顕著な効果を奏するものである。したがって、本発明のチタン多孔体は、小さい比抵抗を持つため、二次電池の電極に好適に使用することができ、また、高い寸法精度を持つため、装置などの構成物として使用する際の高い適合性を有する。
チタン繊維の積層体から本発明のチタン多孔体を製造する工程の一例を示したものである。 本発明のチタン多孔体の製造工程において、チタン繊維の積層体とセッターが交互に配置された構造体を示したものである。 本発明のチタン多孔体の製造工程において、スペーサーを使用したチタン繊維の積層体を示すものである。 充放電特性評価装置の構成を示した図である。
本発明のチタン多孔体は、空隙率が65%〜90%であり、比抵抗が225μΩ・cm〜1100μΩ・cmである。この範囲とすることで、二次電池用の電極として好適に使用することができる。また、本発明のチタン多孔体は、従来から知られているチタン多孔体に比べて同一の空隙率で比較した場合の比抵抗が小さいため、例えば、V系に比べて起電力の大きいMn系のレドックスフロー電池の電極に好適に利用することができる。
特に、本発明のチタン多孔体の空隙率が70%〜88%、比抵抗が225μΩ・cm〜1050μΩ・cmであることが好ましく、さらに空隙率が75%〜85%、比抵抗が225μΩ・cm〜910μΩ・cmであることがさらに好ましい。
本発明のチタン多孔体の空隙率は、以下の方法により算出される値を意味する。なお、下記(1)式中、「チタン多孔体の体積」とは、空隙を含む、多孔体外形寸法から計算される体積である。
(チタン多孔体の空隙率(%))={1−チタン多孔体の重量(g)/(チタン多孔体の体積(cm)×4.51)}×100(%) ・・・(1)
また、本発明のチタン多孔体の比抵抗は、以下の方法により算出される値を意味する。
すなわち、四端子法の電気抵抗測定装置(三菱アナリテック製、ロレタスGP、MCP−T610)により、得られたチタン多孔体の電気抵抗値を測定し、材料固有の値である比抵抗に換算する。換算の方法は、比抵抗の明らかな純チタン板(比抵抗:54μΩ・cm)の電気抵抗値を同様に測定し、測定値と比抵抗の換算係数
(比抵抗値の換算係数(cm))=(純チタンの比抵抗値(54μΩ・cm))/(純チタンの電気抵抗値(μΩ)) ・・・(2)
を求める。
チタン多孔体の比抵抗への換算式は下記(3)式に示す通りである。
(チタン多孔体の比抵抗(μΩ・cm))=(換算係数(cm))×(チタン多孔体の電気抵抗値(μΩ)) ・・・(3)
本発明のチタン多孔体は、チタン繊維から構成されたチタン多孔体であることが好ましい。また、チタン繊維は、直径が1〜300μmの範囲が好ましく、20μm〜30μmの範囲がより好ましい。チタン繊維の長さは、1.0mm〜5.0mmが好ましい。チタン繊維の直径、長さをこの範囲にすることで、空隙分布が均一でかつ65〜90%の範囲の高い空隙率を有するチタン多孔体を効率良く得ることができる。
本発明で用いるチタン繊維の製造方法としては、例えば、特許文献3に開示されたコイル切削法や、特許文献4に開示されたびびり振動法などがある。本発明では、チタン繊維の直径および長さを調整しやすいため、特に、びびり振動法やコイル切削法により製造されたチタン繊維が好ましい。
本発明のチタン多孔体の厚さは、0.3mm〜3.5mmの範囲、更に0.5mm〜2.0mmの範囲が好ましい。この範囲とすることで、二次電池用の電極、特にレドックスフロー電池の電極に好適に利用することができる。
本発明のチタン多孔体の大きさには制限はないが、二次電池用の電極向けとしては、幅100〜500mm、長さ200〜1000mm程度の大きさが実用的に好ましい。
次に、本発明のチタン多孔体の製造方法について述べる。
チタン多孔体を製造する方法は、本発明のチタン多孔体の物性を有するものを製造し得る方法であればよく、本発明のチタン多孔体の製造方法では、例えば、チタン繊維の積層体を、仮焼結後、ロール圧延を行い、次いで、本焼結を行うことを特徴としている。
本発明のチタン多孔体の製造方法のチタン繊維の積層体としては、公知の方法で前述したチタン繊維を積層したものである。例えば、チタン繊維を型枠に充填し、所定の三次元形状に積層し、所定の範囲の空隙率となるように成形する方法、またはチタン繊維をシート状に積層する方法等がある(例えば、特許文献5および6参照)。
図1は、チタン繊維の積層体の製造工程の一例を図示したものである。まず、焼結時に使用する平板状のセッター3の上に、型枠2を配置する。前記型枠2の内部に所定の重量のチタン繊維1を充填した後、前記型枠2を除去することにより、セッター3の上にチタン繊維1の積層体が載置された状態となる。チタン繊維1の所定の重量は、最終製品であるチタン多孔体の大きさと空隙率から算出する。
ここで、上記のように型枠2を外す際に、単に粉末などが充填されただけの積層体であれば一般的には崩れることがあるが、チタン繊維を原料としている場合は、繊維同士が絡まり合い、型崩れが起こりにくく、チタン繊維の積層体を形成することができる。図1の型枠2はチタン繊維1を充填するためのガイドであるため、金属が溢れない程度の高さがあれば良い。
また、本発明のチタン多孔体の製造方法は、上記の方法で形成されたチタン繊維1の積層体が載置されたセッター3を複数準備し、図2に示すようなチタン繊維1の積層体とセッター3が交互に配置された構造体を構成することが好ましい。
なお、最上段のチタン繊維1の積層体の上にセッター3を載置することが好ましい。前記したセッター3をチタン繊維1の積層体上に載置することで、前記チタン繊維1の焼結後の形状を所定の大きさに保持することができる。
セッターの材料は、高温の焼結時において本発明で用いるチタンと反応しないような材質が好ましく、BN、石英、Mo、W、ステンレス鋼、またはBN粉をスプレーした石英、Mo、W、ステンレス鋼などの材料で構成することができる。
また、チタン繊維1の積層体とセッター3が交互に配置された構造体を構成する際に、図3に示すようにチタン繊維1の積層体を載置したセッター3の周囲にスペーサー4を載置することが好ましい。
スペーサー4は、仮焼結後または本焼結後のチタン繊維1の積層体の高さを規定するためのものであり、その高さは、仮焼結後または本焼結後に得られるチタン多孔体高さの上限値に設定しておくことが好ましい。スペーサー4を載置することにより、チタン繊維1の積層体はスペーサー4の高さ未満には圧縮されることはなく、チタン多孔体の目標の厚さを確保することができる。
図3に示したスペーサー4の材質は、BN、石英、Mo、W、ステンレス鋼、またはBN粉をスプレーした石英、Mo、W、ステンレス鋼、多孔体と同じ材料であるチタンなどのような材料で構成することができる。
仮焼結とは、チタン繊維1の積層体またはチタン繊維1の積層体とセッター3が交互に配置された構造体を加熱して、チタン繊維同士の接触部の一部が焼結している程度の焼結を意味する。
仮焼結は、真空下1×10−4mbar以下で行うことが好ましい。仮焼結の温度は、800℃〜1000℃の範囲が好ましく、850℃〜1000℃がより好ましく、さらに900℃〜1000℃が好ましい。仮焼結処理の際の加熱時間は、1時間〜5時間が好ましく、1時間〜2時間がより好ましい。
ロール圧延は、仮焼結状態にあるチタン多孔体を圧縮成形することで、製品として求められている厚さのチタン多孔体を得る処理である。仮焼結状態にあるチタン多孔体をロール圧延により圧縮成形することで、製品として求められている厚さのチタン多孔体を得る処理である。仮焼結状態にあるチタン多孔体をロール圧延する際は、1回のロール圧延で数mmずつ厚さを減じ、複数回のロール圧延により目標の厚さまでロール圧延することが好ましい。ロール圧延を採用することにより、割れや破れのないチタン多孔体を製造することができる。
ロール圧延後は、チタン多孔体を本焼結する。本焼結は、真空下1×10−4mbar以下で行うことが好ましい。本焼結の温度は、仮焼結の温度より50℃〜100℃高いことが好ましく、60℃〜90℃高いことがより好ましく、さらに70℃〜90℃高いことが好ましい。
本焼結の時間は、1時間〜5時間が好ましく、1時間〜2時間がより好ましい。
ロール圧延後、再び焼結することにより、ロール圧延によりチタン多孔体に導入された歪を解放することができる。歪を解放することで、ロール圧延後に徐々に厚さが戻ってしまうスプリングバック現象を抑制することができる。さらに、歪を解放することでチタン多孔体の比抵抗を低くすることができるため、二次電池の電極としてより好適なチタン多孔体を製造することができる。
さらに、本発明は本焼結処理を終えた後、さらにロール圧延、次いで、本焼結を行う工程を2回以上行うことが好ましい。仮焼結後のロール圧延による圧縮成形、本焼結と合わせて、ロール圧延、本焼結処理を2回以上行うことで、高い寸法精度と比抵抗の小さいチタン多孔体を得られるという効果が得られる。2回目以降の本焼結の温度条件は、一回目の本焼結と同じ条件がより好ましい。2回目以降の本焼結時間も同様に、1時間〜2時間が好ましい。
仮焼結、本焼結は、図2に示すようにチタン繊維1の積層体とセッター3が交互に配置された構造体を焼結しても良い。焼結炉の有効容積を飛躍的に高めることができるため、1回の焼結で複数枚のチタン多孔体を焼結することができ、効率よくチタン多孔体を製造することができる。また、このような処理を行うことでチタン多孔体の厚さを均一にすることができる。
従って、チタン繊維の積層体を、仮焼結後、ロール圧延を行い、次いで、本焼結を行うことにより、厚さが均一な、比抵抗の小さいチタン多孔体を製造することができる。ロール圧延を省略した場合は、チタン多孔体の厚さが不均一となる。また、チタン繊維の積層体を、仮焼結を行わず、本焼結を行った後、ロール圧延を行い、本焼結を行わなかった場合は、比抵抗が大きくなるばかりでなく、スプリングバックにより、目標とする厚さのチタン多孔体が得られないといった問題点がある。
以上の方法で製造された金属多孔体は、レドックスフロー電池の電極やフィルター、燃料電池セルの拡散層としても好適に利用することができる。
以下、本発明の内容を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜11のチタン多孔体を製造するにあたり、使用した設備および条件を以下に列記する。また、比較例1〜3においても、下記の設備・条件を一部改変して使用した。
1.チタン繊維
1)材質:CPチタン
2)直径×長さ:30μm×2.5mm
2.チタン多孔体のサイズ(縦×横):200mm×250mm
3.セッターの材質:BN(厚さ3mm)
4.仮焼結処理の条件
1)温度:800℃〜1000℃
2)雰囲気:10−4mbarの真空雰囲気
3)時間:1Hr〜2Hr
5.本焼結処理の条件
1)温度:850℃〜1100℃
2)雰囲気:10−4mbarの真空雰囲気
3)時間:1Hr〜2Hr
6.圧延の条件
1)方法:ロール圧延
2)温度:室温
得られたチタン多孔体の空隙率、比抵抗は以下の方法により求めた。
チタン多孔体の大きさと重量を測定し、純チタンの真比重4.51(g/cm)を用い、上述した(1)式により換算し、チタン多孔体の空隙率を求めた。
四端子法の電気抵抗測定装置(三菱アナリテック製、ロレタスGP、MCP−T610)により、得られたチタン多孔体の電気抵抗値を測定した。また、比抵抗の明らかな純チタン板(比抵抗:54μΩ・cm)の電気抵抗値をチタン多孔体と同様に測定した。上述した(2)式による純チタン板の電気抵抗値と比抵抗値の換算係数(=200cm)を用い、上述した(3)式によってチタン多孔体の比抵抗を求めた。
まず、仮焼結と本焼結の温度が同じ条件にて、実施例1〜3を行った。
[実施例1](空隙率90%、厚さ2.0mm、8段積層)
上記条件で、空隙率90%、目標厚さ2.0mmのチタン多孔体を製造するのに必要なチタン繊維の量を算出し、チタン繊維を金型に充填し、BN製のセッター3を載せ、8段に積層させ、積層体を形成し、焼結炉にセットした。
焼結炉を真空排気後昇温し、3×10−5mbarの真空雰囲気下で、1000℃で1時間、仮焼結処理を行った。冷却後、金属チタン多孔体を取り出した。
次いで、これら8枚のチタン多孔体をロール圧延して、厚さ2.0mmまで厚さを調整した。その後、セッターの上にロール圧延後のチタン多孔体を載置し、その上にセッターを載置と交互に積層し、8段の積層体を焼結炉にセットした。
仮焼結処理と同じ条件で焼結処理を行い、その後、冷却し、取り出した。この8枚のチタン多孔体に対し、それぞれ三次元測定器を用いて、各多孔体10点の厚さを測定した。
各多孔体の平均厚さは2.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.02mm、最小は2.00mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.003mm〜0.005mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、90%、平均比抵抗は、1090μΩ・cmであった。
[実施例2](空隙率80%、厚さ2.0mm、8段積層)
空隙率80%の多孔体を製造するためのチタン繊維量を算出して充填した以外は実施例1と同様の条件でチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは2.00mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.01mm、最小は1.99mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.005mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、80%、平均比抵抗は、751μΩ・cmであった。
[実施例3](空隙率70%、厚さ2.0mm、8段積層)
空隙率70%の多孔体を製造するためのチタン繊維量を算出して充填した以外は実施例1と同様の条件でチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは2.00mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.01mm、最小は1.99mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.004mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、70%、平均比抵抗は、400μΩ・cmであった。
次に、本焼結を仮焼結より80℃高い温度条件で実施例4〜6を行った。
[実施例4](空隙率90%、厚さ1.0mm、8段積層)
本焼結の温度を仮焼結の温度よりも80℃高くし、厚さ1mmの多孔体を製造するためのチタン繊維量を算出して充填した以外は、実施例1と同じ条件で、空隙率90%、目標厚さ1.0mmのチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは1.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は1.02mm、最小は1.00mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.005mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、90%、平均比抵抗は、1084μΩ・cmであった。
[実施例5](空隙率80%、厚さ1.0mm、8段積層)
空隙率80%の多孔体を製造するためのチタン繊維量を算出して充填した以外は、実施例4と同じ条件で、空隙率80%、目標厚さ1.0mmのチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは1.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は1.02mm、最小は1.00mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.004mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、80%、平均比抵抗は、742μΩ・cmであった。
[実施例6](空隙率70%、厚さ1.0mm、8段積層)
空隙率70%の多孔体を製造するためのチタン繊維量を算出して充填した以外は、実施例4と同じ条件で、空隙率70%、目標厚さ1.0mmのチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは1.00mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は1.01mm、最小は1.99mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.005mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、70%。平均比抵抗は、394μΩ・cmであった。
[実施例7]
チタン繊維をセッター上に載置したものを12段に積層させた集合体を3組準備し、1組ずつステンレス容器に入れ、このステンレス容器を焼結炉に3段に重ねて36枚のチタン多孔体をセットして仮焼結および本焼結を行い、本焼結の温度が仮焼結の温度よりも70℃高く、空隙率65%、目標厚さ2mmの多孔体を製造した以外は、実施例1と同じ条件でチタン多孔体を製造した。この36枚のチタン多孔体に対し、それぞれ三次元測定器を用いて、各多孔体10点の厚さを測定した。
各ステンレス容器内の多孔体の平均厚さはそれぞれ、2.01mm、2,00mm、2.00mmであった。また、各ステンレス容器内の12枚の多孔体の平均厚みの最大はステンレス容器1が、2.02mm、ステンレス容器2が、2.01mm、ステンレス容器3が、2.01mm、最小はステンレス容器1が2.00mm、ステンレス容器2が1.99mm、ステンレス容器3が1.99mmであった。1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は、3つのステンレス容器とも、0.002mm〜0.005mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、65%、平均比抵抗は、225μΩ・cmであった。
本焼結の温度を様々に変えて、実施例8〜10を行った。
[実施例8]
仮焼結の温度が980℃、本焼結の温度が仮焼結の温度よりも90℃高い以外は、実施例1と同じ条件で空隙率80%、厚さ2mmのチタン多孔体を作成した。
各多孔体の平均厚さは2.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.01mm、最小は2.00mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.004mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、80%、平均比抵抗は、740μΩ・cmであった。
[実施例9]
仮焼結の温度が980℃、本焼結の温度が仮焼結の温度よりも60℃高い以外は、実施例1と同じ条件で空隙率80%、厚さ2mmのチタン多孔体を作成した。
各多孔体の平均厚さは2.00mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.00mm、最小は1.99mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.004mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、80%、平均比抵抗は、744μΩ・cmであった。
[実施例10]
仮焼結の温度が980℃、本焼結の温度が仮焼結の温度よりも75℃高い以外は、実施例1と同じ条件で空隙率80%、厚さ2mmのチタン多孔体を作成した。
各多孔体の平均厚さは2.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.01mm、最小は2.00mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.004mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、80%、平均比抵抗は、742μΩ・cmであった。
[実施例11]
本焼結の後に、ロール圧延を行い、その後再び本焼結を行い、空隙率90%、厚さ2mmの多孔体を製造したこと以外は、実施例8と同じ条件でチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは2.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.01mm、最小は2.00mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.002mm〜0.004mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、90%、平均比抵抗は、1078μΩ・cmであった。
[比較例1]
仮焼結及びロール圧延を行なわず、本焼結のみを行った以外は実施例1と同じ条件で、空隙率90%、厚さ2mmのチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは2.50mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.60mm、最小は2.40mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.015mm〜0.024mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、91%、平均比抵抗は、1250μΩ・cmであった。
[比較例2]
本焼結を行わない以外は実施例1と同じ条件で、空隙率90%、厚さ2mmのチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは2.05mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.08mm、最小は2.03mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.005mm〜0.009mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、90%、平均比抵抗は、4000μΩ・cmであった。
[比較例3]
ロール圧延ではなく、プレス成形を行った以外は実施例1と同じ条件で、空隙率90%、厚さ2mmのチタン多孔体を製造した。
各多孔体の平均厚さは2.01mmであった。8枚の多孔体の平均厚みの最大は2.01mm、最小は1.99mm、1枚の多孔体における10点の測定データの厚みの標準偏差は0.005mm〜0.015mmであった。このチタン多孔体の空隙率と比抵抗を測定したところ、平均空隙率は、90%、平均比抵抗は、1110μΩ・cmであった。
次に、実施例1〜11および比較例1〜3の各チタン多孔体について、図4のような装置を組立て、25℃で、導線を充放電特性評価装置に連結し、端子電圧と流れる電流を測定し、その傾きから内部抵抗を評価した。ここで得られる内部抵抗は、多孔体の通液性と隔膜との電子の授受の容易性によって決まってくる値であり、レドックスフロー電池用の電極として組み立てたときの電極セル抵抗と同等の傾向を示す。また、この測定で得られる内部抵抗は、隔膜の断面積、電解液の撹拌速度、電解液の種類により、その絶対値は変わってくる性質のものであるため、ある特定の条件で得られた値を100とおき、指数で評価した。ここでは、実施例1のチタン多孔体を用いて得られた内部抵抗値を100とおいて、他の多孔体で得られた内部抵抗を指数で示したものを表1に併記する。
Figure 0006902325
本発明は、レドックスフロー電池のような二次電池の電極材として好適なチタン多孔体の製造方法として有効に利用することができる。
1:チタン繊維
2:型枠
3:セッター
4:スペーサー
5:シール
6:隔膜
7:導線
8:チタン多孔体

Claims (3)

  1. スラリーを用いずに形成したチタン繊維の積層体を、仮焼結後、ロール圧延を行い、次いで、本焼結を行うことを特徴とするチタン多孔体の製造方法。
  2. 前記仮焼結の温度が800℃〜1000℃であり、本焼結の温度が仮焼結の温度よりも50℃〜100℃高いことを特徴とする請求項に記載のチタン多孔体の製造方法。
  3. 前記ロール圧延および本焼結を2回以上繰り返し行うことを特徴とする請求項1または2に記載のチタン多孔体の製造方法。
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