以下、エレベーターのロープ交差防止治具の実施の形態例について、図1〜図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
1.エレベーター
1−1.エレベーターの構成例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という)にかかるロープ交差防止治具が用いられるエレベーターの構成の一例について、図1を参照して説明する。
図1は、エレベーターの構成例を示す概略構成図である。
図1に示すエレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路100の上方に機械室を有しない、いわゆる機械室レスエレベーターである。
エレベーター1は、昇降路100内を昇降する乗りかご110と、巻上機120と、釣合おもり130と、第1の従動プーリ140と、第2の従動プーリ150と、主ロープ170を有している。
乗りかご110の下部には、せり上げ用プーリ111が設けられている。せり上げ用プーリ111には、主ロープ170が巻き掛けられている。釣合おもり130には、おもり側プーリ131が設けられている。おもり側プーリ131には、主ロープ170が巻き掛けられている。
巻上機120は、昇降路100の最下部に設置されたピット103に配置されている。巻上機120には、主ロープ170が巻き掛けられる綱車122と、綱車122を支持するフレーム121とを有している。そして、巻上機120は、主ロープ170を介して乗りかご110及び釣合おもり130をつるべ式に昇降させる。
第1の従動プーリ140及び第2の従動プーリ150は、昇降路100の最上部に設けたマシンビーム160に固定されている。また、主ロープ170における釣合おもり130側から延在する端部には、第1ロープソケット180が設けられている。さらに、主ロープ170における乗りかご110側から延在する端部には、第2ロープソケット190が設けられている。そして、第1ロープソケット180は、おもり側シンブルロッドを介してマシンビーム160に取り付けられ、第2ロープソケット190は、かご側シンブルロッドを介してマシンビーム160に取り付けられる。
主ロープ170は、第1ロープソケット180からおもり側プーリ131を通過し、第1の従動プーリ140に装架される。そして、主ロープ170は、巻上機120の綱車122、第2の従動プーリ150、せり上げ用プーリ111の順に巻き掛けられている。巻上機120が駆動することで、乗りかご110及び釣合おもり130が昇降路100内を昇降移動する。
また、建築構造物の各階には、乗りかご110が停止する乗場101には、人や物が乗りかご110へ出入りするための出入り口102が設けられている。また、出入り口102には、不図示の乗り場ドアを移動可能に支持するポケット102aが設けられている。
1−2.主ロープの交換作業例
次に、図2から図4を参照して上述した構成を有するエレベーター1の主ロープ170の交換作業例について説明する。
図2は、主ロープ170の交換作業を示す概略構成図である。図3及び図4は、主ロープ170の交換作業を示すフローチャートであり、図3は、準備作業を示し、図4は、ロープ接続及び交換作業を示している。なお、旧ロープ170Aから新ロープ170Bに交換する例について説明する。
まず、図2及び図3に示すように、旧ロープ170Aを巻き上げるウインチ11と、乗りかご110を吊り上げる不図示の吊り具を設置する(ステップS1)。ウインチ11は、釣合おもり130を昇降可能に支持する不図示のおもり側ガイドレールの頂部に設置される。また、吊り具は、マシンビーム160に設置される。
さらに、旧ロープ170A及び新ロープ170Bを保持する第1ロープ保持具12をおもり側ガイドレールの頂部に設置する(ステップS2)。なお、第1ロープ保持具12は、おもり側ガイドレールにおいてウインチ11よりも昇降方向の下方に設置される。
次に、新ロープ案内治具13を設置する(ステップS3)。新ロープ案内治具13は、乗りかご110を昇降可能に支持する不図示のかご側ガイドレールの頂部に設置される。新ロープ案内治具13は、後述するロープ送り出し・巻き取り治具19から送り出された新ロープ170Bを乗りかご110のせり上げ用プーリ111に向けて案内する。さらに、かご側ガイドレールの頂部に、旧ロープ170A及び新ロープ170Bを保持する第2ロープ保持具14を設置する(ステップS4)。なお、第2ロープ保持具14は、かご側ガイドレールにおいて新ロープ案内治具13よりも昇降方向の下方に設置される。
次に、新旧ロープ案内治具18を、最上階のポケット102aに設置する(ステップS5)。新旧ロープ案内治具18は、旧ロープ170Aをロープ送り出し・巻き取り治具19に向けて案内し、ロープ送り出し・巻き取り治具19から送り出された新ロープ170Bを新ロープ案内治具13に向けて案内する。
次に、釣合おもり受雇15をおもり側ガイドレールの最下部にセットする。この釣合おもり受雇15は、昇降路100におけるピット103に設置される。そして、釣合おもり130を下降させて、ピット103において釣合おもり130を釣合おもり受雇15によって支持する(ステップS6)。
次に、巻上機120の上部に本例のロープ交差防止治具10を設置する(ステップS7)。なお、ロープ交差防止治具10の詳細な構成については後述する。また、不図示の吊り具において乗りかご110を吊り上げる(ステップS8)。
次に、最上階乗場101にロープ送り出し・巻き取り治具19を設置する(ステップS9)。ロープ送り出し・巻き取り治具19は、旧ロープ170Aを巻き取ると共に、新ロープ170Bを最上階乗場101の出入り口102から昇降路100内に向けて送り出す。そして、ロープ送り出し・巻き取り治具19に新たに設置する新ロープ170Bを全数セットする(ステップS10)。これにより、ロープ交換作業の準備が完了する。また、ロープ交換作業の準備の段階では、巻上機120における綱車122の回転を制動するブレーキが作動している。
ステップS6の処理において、釣合おもり130は、釣合おもり受雇15によってピット103で支持されている。また、ステップS8の処理において、乗りかご110は、吊り具によって昇降路100の頂部に吊り上げられている。そのため、交換を行う旧ロープ170Aの張力を緩めても、乗りかご110及び釣合おもり130が落下するおそれがない。
まず、図2及び図4に示すように、乗りかご110側からマシンビーム160に向けて延在する旧ロープ170Aの端部を第2ロープ保持具14で固定する(ステップS12)。次に、第2ロープソケット190(図1参照)をマシンビーム160から取り外す(ステップS13)。そして、旧ロープ170Aにおける乗りかご110側から延在する旧ロープ170Aを、最上階乗場101に引き出す(ステップS13)。この引き出された旧ロープ170Aと新ロープ170Bを編み込み接続部17で接続する(ステップS14)。
次に、釣合おもり130側からマシンビーム160に向けて延在する旧ロープ170Aの端部を第1ロープ保持具12で固定する(ステップS15)。次に、第1ロープソケット180(図1参照)をマシンビーム160から取り外す(ステップS16)。釣合おもり130側の旧ロープ170Aをウインチ11にセットする(ステップS17)。そして、ウインチ11及び新旧ロープ案内治具18を介して、旧ロープ170Aを出入り口102から最上階乗場101に引き出す(ステップS18)。
次に、強制開放ボルトで巻上機120のブレーキを開放させる(ステップS19)。そして、第1ロープ保持具12と第2ロープ保持具14を開放させる(ステップS20)。また、ステップS19の処理で巻上機120のブレーキを開放させることで、綱車122が回転可能となる。これにより、新ロープ170Bを綱車122に巻き掛ける際に、新ロープ170Bや綱車122が損傷することを防ぐことができる。
次に、ウインチ11を作動させて、旧ロープ170Aを巻き取ると共に、ロープ送り出し・巻き取り治具19を回転させる。これにより、旧ロープ170Aがロープ送り出し・巻き取り治具19に巻き取られ、新ロープ170Bがロープ送り出し・巻き取り治具19により昇降路100内に送り出される。そして、昇降路100内の主ロープを全て旧ロープ170Aから新ロープ170Bに交換する(ステップS21)。このとき、新ロープ170Bは、ロープ交差防止治具10を通過して、巻上機120の綱車122に巻き掛けられる。
ステップS21の処理により、全ての主ロープが旧ロープ170Aから新ロープ170Bに交換されると、第1ロープ保持具12及び第2ロープ保持具14で新ロープ170Bを固定する(ステップS22)。次に、新ロープ170Bから旧ロープ170Aを取り外し、新ロープ170Bの第1ロープソケット180をおもり側シンブルロッドへセットし、マシンビーム160に固定する(ステップS23)。さらに、新ロープ170Bの第2ロープソケット190をかご側シンブルロッドへセットし、マシンビーム160に固定する(ステップS24)。
ステップS22の処理において、新ロープ170Bを第1ロープ保持具12及び第2ロープ保持具14を固定することで、新ロープ170Bをマシンビーム160に固定する際に、新ロープ170Bが自重により落下することを防ぐことができる。
次に、強制開放ボルトを巻上機120のブレーキから取り外し、巻上機120のブレーキを復旧させる(ステップS25)。これにより、巻上機120の綱車122は、ブレーキによりその回転が制動される。
最後に、主ロープ170(新ロープ170B)の交差を確認する(ステップS26)と共に、各プーリのシーブ溝に確実に主ロープ170(新ロープ170B)が嵌り込んでいるが確認する(ステップS27)。これにより、主ロープ170の交換作業が完了する。そして、図3に示す準備作業で取り付けた、保持具や治具を昇降路100、巻上機120、釣合おもり130等から取り外す。
2.ロープ交差防止治具
2−1.ロープ交差防止治具の構成例
次に、ロープ交差防止治具10の構成について図5から図9を参照して説明する。
図5は、ロープ交差防止治具10を巻上機120に設置した状態を示す正面図である。
図5に示すように、ロープ交差防止治具10は、巻上機120のフレーム121に固定される。また、ロープ交差防止治具10は、フレーム121において、送り出された主ロープ170が綱車122に送り込まれる方向の上流側に固定される。そのため、図5に示す例では、ロープ交差防止治具10は、フレーム121の上下方向の上端部で、かつ幅方向の一端部に固定される。
なお、送り出された主ロープ170が綱車122に送り込まれる方向が図5に示す例と反対方向の場合では、ロープ交差防止治具10Aに示すように、フレーム121の幅方向の一端部とは反対側の他端部に固定される。
なお、本例では、ロープ交差防止治具10を巻上機120のフレーム121に固定した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、巻上機120のフレーム121を支持する支持レールにロープ交差防止治具10を固定してもよい。しかしながら、ロープ交差防止治具10をフレーム121に固定することで、ロープ交差防止治具10と綱車122の間隔を狭めることができる。これにより、主ロープ170の交差を綱車122の近傍で確実に防止することができる。
図6は、ロープ交差防止治具10を示す正面図、図7は、ロープ交差防止治具10を示す平面図、図8は、ロープ交差防止治具10を示す側面図である。なお、図8では、ロープ交差防止治具10を巻上機120のフレーム121に固定した例を示す。以下、主ロープ170が延在する方向を第1の方向とし、第1の方向と直交する方向を第2の方向とする。また、第1の方向及び第2の方向とも直交する方向を第3の方向とする。
図6〜図8に示すように、ロープ交差防止治具10は、本体部20と、複数(本例では、4つ)の交差防止部材31と、交差防止部材31を本体部20に固定する固定部材の一例を示す蝶ナット32とを有している。
本体部20は、略平板状の部材を折り曲げることで形成されている。本体部20は、固定面部21と、支持面部22と、固定面部21と支持面部22を接続する接続面部23とを有している。また、本体部20には、挟持部24と、本体側交差防止部33が固定されている。
固定面部21は、略矩形状に形成されている。そして、図8に示すように、固定面部21における第1の方向の他端部から接続面部23がフレーム121とは反対方向である第2の方向に向けて延在する。そして、接続面部23における固定面部21とは反対側の端部から支持面部22が第3の方向に向けて略垂直に屈曲して連続する。
固定面部21には、挟持部24が例えば、溶接により固定されている。挟持部24は、固定面部21における主ロープ170と対向する一面に固定されている。なお、挟持部24の固定方法は、溶接に限定されるものではなく、固定ボルトによる締結固定により固定面部21に固定してもよい。さらに、本体部20の一部を折り曲げることで、挟持部24を形成してもよい。
また、挟持部24は、略L字状に形成されており、固定面部21に固定される固定片24bと、固定片24bから略垂直に屈曲する挟持片24cとを有している。この挟持片24cは、固定面部21と間隔を空けて対向する。挟持片24cと固定面部21との間にフレーム121が挿入される(図10参照)。
また、挟持片24cには、固定孔24aが形成されている。固定孔24aには、蝶ボルト25が螺合されている。蝶ボルト25は、固定孔24aに螺合された際、ネジ部が挟持片24cから固定面部21に向けて突出する。この蝶ボルト25と固定面部21によって、本体部20をフレーム121に着脱可能に固定する固定機構が構成される。そして、蝶ボルト25を締め付けることで、フレーム121が固定面部21に押し付けられる。これにより、本体部20が巻上機120のフレーム121に固定される。
接続面部23には、本体側交差防止部33が固定されている。本体側交差防止部33は、略L字状に形成されており、脱出防止片33aと、脱出防止片33aから略垂直に屈曲する固定片33bとを有している。固定片33bは、接続面部23に固定ボルト34を介して固定されている。そして、脱出防止片33aは、接続面部23から主ロープ170に向けて突出している(図10参照)。なお、本体側交差防止部33の固定方法は、固定ボルト34による締結固定に限定されるものではなく、溶接により本体側交差防止部33を接続面部23に固定してもよい。
支持面部22には、複数(本例では、4つ)の支持孔27が形成されている。図6に示すように、複数の支持孔27は、支持面部22の第3の方向に沿って互い違いに配置されている。具体的には、複数の支持孔27は、支持面部22の第3の方向で隣り合う支持孔27と第1の方向、すなわち上下方向の高さが異なる位置に形成されている。そのため、複数の支持孔27は、支持面部22に千鳥状に配置される。
支持面部22における支持孔27の周縁部には、支持孔27を囲むようにして座グリ穴28が形成されている。座グリ穴28は、支持面部22における主ロープ170と対向する一面に形成されている。この座グリ穴28は、互いに平行に対向する2つの規制面28a、28aを有する略楕円形状に形成されている。2つの規制面28a、28aは、支持孔27の軸方向と直交する方向に形成されている。本例では、2つの規制面28a、28aは、第3の方向で対向している。しかしながら、2つの規制面28a、28aが対向する方向は、第3の方向に限定されるものではなく、第1の方向で対向してもよい。
なお、座グリ穴28の形状は、略楕円形状に限定されるものではなく、少なくとも互いに平行に対向する2つの規制面28a、28aを有する形状であればよく、例えば、矩形状でもよい。
支持面部22の支持孔27には、交差防止部材31が回転可能に挿入されている。
図9A及び図9Bは、交差防止部材31を示す図である。
図9A及び図9Bに示すように、交差防止部材31は、略棒状の部材を略L字状に屈曲させることで形成されている。交差防止部材31は、仕切り部36と、脱出防止部37と、固定ねじ部38と、回転規制片39とを有している。図7に示すように、交差防止部材31を支持面部22に取り付けた際、仕切り部36は、支持面部22の一面から略垂直に突出する。また、仕切り部36は、第2の方向、すなわち水平方向と略平行に配置される(図10参照)。
図9Aに示すように、仕切り部36の一端部には、脱出防止部37が略垂直に屈曲して連続している。また、仕切り部36の一端部とは反対側の他端部には、固定ねじ部38が形成されている。固定ねじ部38の側面部には、雄ねじが形成されている。そして、図7に示すように、固定ねじ部38は、支持面部22の支持孔27に回転可能に挿入され、支持面部22を貫通している。そして、固定ねじ部38における支持面部22から貫通した部分には、蝶ナット32が取り付けられる。
蝶ナット32を締め付けることで、交差防止部材31は、本体部20の支持面部22に固定される。上述したように、交差防止部材31が取り付けられる支持孔27は、千鳥状に配置されている。そのため、複数の交差防止部材31は、支持面部22の長手方向である第3の方向に沿って、第1の方向の高さが互い違いの千鳥状に配置される。
また、図9A及び図9Bに示すように、仕切り部36と固定ねじ部38の間には、回転規制片39が設けられている。回転規制片39は、正方形の平板状に形成されている。この回転規制片39は、仕切り部36から略垂直に突出するフランジ片である。そして、図6から図9に示すように、回転規制片39は、支持面部22に形成した座グリ穴28に嵌め込まれる。回転規制片39は、座グリ穴28に設けた2つの規制面28a、28aに当接する。これにより、交差防止部材31が支持孔27を中心に回転することが規制される。
なお、本例では、交差防止部材31を略L字状に形成した例を説明したがこれに限定されるものではない。例えば、脱出防止部37を略円弧状に形成し、交差防止部材31を略J字状に形成してもよい。しかしながら、円弧状に屈曲した略J字状よりも略垂直に屈曲する略L字状のほうが交差防止部材31の製造を容易に行うことができる。
さらに、交差防止部材31の固定ねじ部38を支持面部22の支持孔27に貫通させた後に、固定ねじ部38における支持面部22から貫通した先端部を潰す、又は先端部に突起を設けてもよい。これにより、交差防止部材31が支持面部22の支持孔27から抜け落ちることを防止することができる。
なお、本例のロープ交差防止治具10によれば、図6及び図8に示すように、本体部20を着脱可能に固定する固定面部21は、本体部20における第1の方向の一端部に設けられている。そして、交差防止部材31が取り付けられる支持面部22は、本体部20における第1の方向の他端部に設けられている。すなわち、固定面部21と支持面部22を第1の方向に分割して配置している。そのため、図7に示すように、本体部20における第3の方向の長さを短くすることができる。これにより、ロープ交差防止治具10の小型化を図ることができ、主ロープ170の周囲の空間が小さい狭小スペースでも設置することができる。
なお、本例では、固定面部21を本体部20における第1の方向の下側に配置し、支持面部22を本体部20における第1の方向の上側に配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、固定面部21を第1の方向の上側に配置し、支持面部22を第1の方向の下側に配置してもよい。
なお、本例のロープ交差防止治具10では、交差防止部材31を4つ設けた例を説明したが、交差防止部材31の数は、これに限定されるものではない。交差防止部材31の数は、エレベーター1に設置される主ロープ170の本数に応じて適宜設定されるものである。
2−2.ロープ交差防止治具の設置作業の一例
次に、上述した構成を有するロープ交差防止治具10の設置作業の一例について図8、図10及び図11を参照して説明する。
図10及び図11は、ロープ交差防止治具10を設置した状態を示す平面図である。
まず、交差防止部材31の回転規制片39を座グリ穴28から引き出し、支持孔27を中心に、交差防止部材31を90度回転させる。すなわち、脱出防止部37を第1の方向に向ける。そして、回転規制片39を座グリ穴28に嵌め込み、蝶ナット32を固定ねじ部38に締め付ける。
次に、複数の交差防止部材31の仕切り部36の間に1本ずつ主ロープ170が入るように、ロープ交差防止治具10を複数の主ロープ170に差し込む。これにより、複数の主ロープ170における隣り合う2つの主ロープ170、170の間に仕切り部36が配置される。このとき、脱出防止部37が第1の方向に向いているため、脱出防止部37が主ロープ170の周囲に配置された部材に引っ掛かることを防止することができる。
また、回転規制片39が座グリ穴28の2つの規制面28a、28aに当接しているため、交差防止部材31の回転が規制される。これにより、作業中に、意図に反して交差防止部材31が回転することを防止することができ、作業効率の向上を図ることができる。
さらに、図8及び図10に示すように、巻上機120のフレーム121が固定面部21と挟持部24の挟持片24cの間に嵌り込むように、本体部20をフレーム121に取り付ける。そして、挟持部24に設けた蝶ボルト25を締め付ける。これにより、フレーム121は、蝶ボルト25と固定面部21によって挟持される。その結果、ロープ交差防止治具10がフレーム121に固定される。
次に、蝶ナット32を緩め、交差防止部材31の回転規制片39を座グリ穴28から引き出す。そして、図11に示すように、支持孔27を中心に、交差防止部材31を90度回転させる。これにより、脱出防止部37は、第3の方向、すなわち水平方向と平行になる。そのため、主ロープ170は、交差防止部材31の仕切り部36と脱出防止部37によって囲まれる。
なお、複数の交差防止部材31のうち接続面部23側に配置された交差防止部材31は、脱出防止部37を本体側交差防止部33の脱出防止片33aに向ける。これにより、複数の主ロープ170のうちフレーム121側に配置された主ロープ170は、交差防止部材31と本体側交差防止部33によって囲まれる。これにより、複数の主ロープ170が干渉し、交差することをロープ交差防止治具10によって防止することができる。
また、交差防止部材31は、回転規制片39により回転が規制されている。そのため、主ロープ170の交換作業中に交差防止部材31が回転し、主ロープ170がロープ交差防止治具10から抜け出すことを防ぐことができる。
上述したように、複数の交差防止部材31は、第1の方向の高さが互い違いの千鳥状に配置されている。そのため、脱出防止部37は、第1の方向で重なり合い、隣り合う脱出防止部37に干渉することを防ぐことができる。これにより、支持面部22における第3の方向の長さを短くすることができ、ロープ交差防止治具10の小型化を図ることができる。そして、ロープ交差防止治具10の小型化を図ることができるため、主ロープ170の周囲の空間が小さい狭小スペースでもロープ交差防止治具10を設置することができる。
さらに、複数の交差防止部材31を第1の方向の高さが互い違いの千鳥状に配置することで、交差防止部材31を固定する蝶ナット32の摘み部が隣り合う蝶ナット32の摘み部に干渉することを防ぐこともできる。その結果、蝶ナット32の操作を容易に行うことができる。
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施の形態例では、巻上機120が昇降路100の最下部に設置されたエレベーター1に適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、巻上機120が昇降路100の頂部に設置されているエレベーターに対しても本例のロープ交差防止治具10は、適用できるものである。この場合、主ロープ170は、巻上機120の綱車122に対して上下方向の下方から送り込まれる。そのため、ロープ交差防止治具10は、フレーム121の上下方向の下端部に固定される。
さらに、締結部材として蝶ボルト25や蝶ナット32を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。締結部材としては蝶ボルト25の代わりに六角ボルトや、蝶ナット32の代わりに六角ナット等その他各種の締結部材を適用してもよい。しかしながら、締結部材として、摘み部を有する蝶ボルト25や蝶ナット32を用いることで、スパナやレンチ等の工具を用いることなく、作業を行うことができる。その結果、ロープ170の周囲の空間が小さく、工具の挿入が困難な場合でも、ロープ交差防止治具10を設置することができる。
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。