本発明の光硬化性樹脂組成物は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と、(メタ)アクリルアミド化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、を含有する。前記末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)及び(a−II)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。前記(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、(メタ)アクリルアミド化合物(b−I)及び(メタ)アクリルアミド化合物(b−II)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性など)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。また、本明細書において、式中の各記号の数値も、適宜組み合わせ可能である。
[末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)]
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、本発明の光硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂組成物の硬化物に柔軟性、衝撃吸収性、耐破壊性及び耐水性を付与するために用いられる。また、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、光で硬化した際に、寸法精度に優れ、造形性に優れる。末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、共役ジエン重合体骨格が極めて低極性で疎水性であり、かつ硬化物中で、共役ジエン重合体部位がマトリックス化することによって、耐水性に優れると考えられる。また、通常、ウレタンアクリレート及びアクリルアミド骨格は、極性が強く、親水性であるため、これらと共役ジエン重合体とは混和性が得られないが、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)では、末端(メタ)アクリロイル変性することによって、共役ジエン重合体骨格の有する性質を損なうことなく、(メタ)アクリルアミド化合物(B)との混和性が得られるようになったものと考えられる。
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)として、上記一般式(I)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)(以下、これを「末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)」という。)、及び上記一般式(II)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)(以下、これを「末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)」という。)について説明する。
[末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)]
式(I)の各記号について説明する。R1は水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。R2は炭素数2〜4のアルキレン基であり、例として、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。aは1又は2であり、2が好ましい。
また、式(I)において、基A1は共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物である。共役ジエン化合物の例としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、ファルネセンなどが挙げられる。基A1は、ブタジエン及び/又はその水素添加物;イソプレン及び/又はその水素添加物;ブタジエン及びイソプレン及び/又はこれらの水素添加物から構成されていることが好ましい。
基A1の共役ジエン化合物の重合体に関し、共役ジエン重合体のミクロ構造は特に制限されないが、共役ジエンがブタジエンである場合には、その1,2−結合単位の含有量が1〜99モル%であることが好ましく、2.5〜95モル%であることがより好ましい。また、共役ジエン化合物が、イソプレンである、又はブタジエンとイソプレンの混合物である場合は、その1,2−結合単位の含有量及び3,4−結合単位の含有量の合計が1〜99モル%であることが好ましく、2.5〜95モル%であることがより好ましい。
また、基A1が2種以上の共役ジエン(例えば、ブタジエンとイソプレン)を含む場合は、それらの結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパード、完全交互、一部ブロック状、又はブロック状であってもよく、それらの2種以上の組合せであってよい。
基A1の水素添加物は、通常、共役ジエン重合体を製造し、これを水素添加することによって導入される。共役ジエン重合体が水素添加された末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、共役ジエン重合体が水素添加されていない末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)よりも、保存安定性が高い。そこで、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)が、共役ジエン重合体に水素添加物を含む場合には、水素添加率は50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
なお、基A1の水素添加物の水素添加率は、ヨウ素価測定、赤外分光測定、NMR測定などにより求めることができる。
基A1は、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、共役ジエン重合体以外に、その他のモノマー単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、ビニルメチルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフランなどに由来する構造単位が挙げられる。基A1は、これらのモノマーを、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
基A1の数平均分子量は、500〜100,000の範囲であり、好ましくは750〜75,000の範囲であり、より好ましくは1,000〜50,000の範囲である。基A1の数平均分子量が500未満である場合には、光硬化性樹脂組成物の硬化物の力学的強度が低下するおそれがあり、一方、100,000を超える場合には光硬化性樹脂組成物の硬化物の流動性が得られないおそれがある。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求まるポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
本発明の基A1の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量:Mw/Mn)は、組成物の適切な粘度と賦形性及び硬化物の高い柔軟性を得やすいことから、1.0〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.4であることがより好ましく、1.0〜1.3であることがさらに好ましい。このような分子量分布の基A1は、リビングアニオン重合法により得ることができる。重量平均分子量は、数平均分子量と同様に、GPC法により測定できる。
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)の製造方法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記一般式(I)で表される化合物、及びその化合物を含有する光硬化性樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)は好ましくは以下の方法で製造できる。
<末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)の代表的な製法例>
(1)テトラヒドロフラン溶媒中で1,4−ジリチオ−1,1,4,4−テトラフェニルブタンなどのジアニオン系開始剤を用いて共役ジエンを重合後に、エチレンオキシドを添加して末端リチウムオキシドに変換し、メタノールを添加して反応を完全に停止させて、下記一般式(V)
(式中、R
2、A
1、及びaは上記と同一意味を有する。)
で表される末端水酸基変性共役ジエン共重合体を得る。
(2)A
1の骨格に相当する共役ジエン化合物の重合体が水添されている末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、すなわち、共役ジエン重合体の水素添加物を含む末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)を製造するには、上記(1)の方法で得られた末端水酸基変性共役ジエン共重合体を、例えば、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶媒中で、水素添加触媒の存在下で、通常、反応温度として20〜100℃の範囲で、水素圧力0.1〜10MPaの範囲の条件下で水素添加すればよい。前記水素添加触媒としては、例えば、ラネーニッケル触媒;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、硅藻土などの担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルトなどの第9、10族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物又は有機リチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー・ナッタ触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛又はマグネシウムなどを含む有機金属化合物の組合せからなるメタロセン系触媒などが挙げられる。
(3)一般式(V)で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体1モルに対して、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物又は(メタ)アクリル酸無水物を反応させることによって、下記一般式(I)
(式中、R
1、R
2、A
1、及びaは上記と同一意味を有する。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)を製造する。
[末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)]
式(II)の各記号について説明する。R3は水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。R4、R5はそれぞれ独立に、2価の非置換又は置換された炭化水素基であり、該炭化水素基が、脂肪族、芳香族及び/又は脂環式の炭素数6〜20の炭化水素基であることが好ましい。R6は炭素数2〜4のアルキレン基であり、例として、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。bは1又は2であり、2が好ましい。
また、式(II)において、基A2は共役ジエン化合物の重合体及びその水素添加物であり、基A1と同様である。
前記R4、R5が脂肪族炭化水素基の場合、例として、直鎖状又は分岐鎖状の、アルキレン基、アルケニレン基などが挙げられる。アルキレン基としては、例えば、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、エイコサメチレン基などが挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基などが挙げられる。
前記R4、R5が脂環式炭化水素基の場合、例として、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、ジメチルシクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などが挙げられる。シクロアルケニレン基としては、例えば、シクロヘキセニレン基、シクロヘプテニレン基、シクロオクテニレン基、シクロノネニレン基、シクロデセニレン基などが挙げられる。
前記R4、R5が芳香族炭化水素基の場合、例として、アリーレン基が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、メチルフェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ビフェニレン基、フルオニレン基などが挙げられる。
これらの炭化水素基は、異性体がある場合、本発明の効果を有する限り、その異性体を含む。また、前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基からなる群から選ばれる2種以上を組みあわせた基であってもよく、例えば、アルキレン基とアリーレン基との組み合わせ;シクロアルキレン基とアリーレン基との組み合わせ;アルキレン基とシクロアルキレン基との組み合わせ;アルキレン基とシクロアルキレン基とアリーレン基との組み合わせであってもよい。
前記炭化水素基が有する置換基の数は、通常1〜10個であり、1〜8個が好ましく、1〜6個がより好ましく、1〜4個がさらに好ましい。前記炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルキル基;炭素数1〜12の直鎖状又は分枝状のアルコキシ基;炭素数6〜14のアリール基;炭素数3〜20のシクロアルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、テトラメチルフェニル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基などが挙げられる。なお、これらの置換基は、異性体がある場合、本発明の効果を有する限り、その異性体を含む。
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)は、後記するように、一般式;R5−(NCO)2(R5は前記と同一意味を有する。)で表されるジイソシアネート化合物を用いて好ましく製造することができる。基R5の好ましい具体例としては、イソホロン基、トリレン基、4,4’−ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’−ジクロロ−4,4’−フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’−ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、テトラメチルキシレン基などが挙げられる。
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)の製法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記一般式(II)で表される化合物、及びその化合物を含有する光硬化性樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)は好ましくは以下の方法で製造できる。
<末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)の代表的な製法例>
(4)下記一般式(VI)
(式中、R
5は上記と同一意味を有する。)
で表されるジイソシアネート1モルに対して、下記一般式(VII)
(式中、R
3及びR
4は上記と同一意味を有する。)
で表される水酸基含有(メタ)アクリレートを、一般式(VI)の一方のイソシアネートと反応させて、下記一般式(VIII)
(式中、R
3、R
4及びR
5は上記と同一意味を有する。)
で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを生成し;次いで
(5)上記(4)で得られる一般式(VIII)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを、下記一般式(IX)
(式中、R
6、A
2、及びbは上記と同一意味を有する。)
で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体と反応させることによって、下記一般式(II)
(式中、R
3、R
4、R
5、R
6、A
2、及びbは上記と同一意味を有する。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)を製造する。
上記(4)の反応は、一般式(VII)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートを、必要に応じて、3級アミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルピリジン、4−ピロリジノピリジン)、有機スズ触媒(例えば、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレエートなどのジブチルスズ化合物)、カチオン触媒及びアニオン触媒(例えば、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)などのアルキル金属、金属の酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコキシドなどの化合物など)などを用いて、一般式(VI)で表されるジイソシアネートと反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(VIII)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを円滑に得ることができる。前記反応温度としては、20〜80℃が好ましい。
上記(5)の反応は、一般式(IX)で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体を(4)と同様に、一般式(VIII)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(II)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)を円滑に得ることができる。前記反応温度としては、20〜80℃が好ましい。
一般に、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)及び末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)は、いずれも常温では低粘度の液状〜高粘度の液状を呈しており、(メタ)アクリルアミド化合物(B)として適当なものを選んで組み合わせることによって、取り扱い性に優れる低粘度の光硬化性樹脂組成物を調製できる。また、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と(メタ)アクリルアミド化合物(B)とを組み合わせることによって、光で硬化した際に、特に光学的立体造形法又はそれに用いる装置で造形した際に、造形性に優れ、硬化物の柔軟性、衝撃吸収性、耐破壊性及び耐水性に優れる光硬化性樹脂組成物を調製できる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)として、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I)及び末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)のうちの1種のみを含有していてもよく、又は2種を含有していてもよい。中でも光硬化性樹脂組成物の硬化性、耐衝撃性及び耐水性がより優れる観点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)が好ましい。
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)の含有量は、硬化物の柔軟性、衝撃吸収性、耐衝撃性及び耐水性が優れる観点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン共重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量を100質量%とした場合に、10〜90質量%であることが好ましく、光学的立体造形法又はそれに用いる装置で造形した際の造形性に優れる点から、20〜85質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
[(メタ)アクリルアミド化合物(B)]
(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、本発明の光硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂組成物の粘度低減、及び硬化物に耐破壊性を付与するために用いられる。また、(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン共重合体(A)と組み合わされた場合に、硬化物の柔軟性、衝撃吸収性及び耐水性にも寄与する。
本発明の光硬化性樹脂組成物で用いる(メタ)アクリルアミド化合物(B)として、上記一般式(IV)で表される(メタ)アクリルアミド化合物(b−I)(以下、これを「(メタ)アクリルアミド化合物(b−I)」という。)、及び上記一般式(V)で表される(メタ)アクリルアミド化合物(b−II)(以下、これを、「(メタ)アクリルアミド化合物(b−II)」という。)について説明する。
[(メタ)アクリルアミド化合物(b−I)]
式(III)の各記号について説明する。得られる本発明の光硬化性樹脂組成物が硬化性に優れる点から、式(III)において、R7は水素原子又はメチル基であり、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物の耐破壊性が優れる点から、水素原子が好ましい。R8及びR9はそれぞれ独立に、水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜8のアルキル基である。前記アルキル基としては、炭素数1〜5が好ましく、炭素数1〜4がより好ましく、炭素数1〜3がさらに好ましい。R8及びR9としては、いずれか一方の基が水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、かつ他方の基が非置換又は置換された炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、いずれか一方の基が水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜4のアルキル基であり、かつ他方の基が非置換又は置換された炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、いずれか一方の基が水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、かつ他方の基が非置換又は置換された炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましい。R8及びR9は直接結合していない。R8及びR9が炭素数9以上である場合、重合基の密度が小さくなるため硬化性が低下する。また、R8及びR9が直接結合する場合、剛直で嵩高い環状構造が形成されるため、柔軟性が低下する。R8及びR9のアルキル基としては、直鎖状又は分枝状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられる。前記アルキル基が有する置換基の数は、通常1〜10個であり、1〜8個が好ましく、1〜6個がより好ましく、1〜4個がさらに好ましい。前記アルキル基の置換基としては、上述の末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)の基R4及びR5の炭化水素基の置換基と同様のものが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物(b−I)の例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、光硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物の耐破壊性が優れる点で、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドがさらに好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドが特に好ましく、N,N−ジエチルアクリルアミドが最も好ましい。
[(メタ)アクリルアミド化合物(b−II)]
式(IV)の各記号について説明する。得られる本発明の光硬化性樹脂組成物が硬化性、耐破壊性に優れる点から、式(IV)において、R10は水素原子又はメチル基であり、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物の耐破壊性が優れる点から、水素原子が好ましい。R12は非置換又は置換された炭素数1〜8のアルキレン基である。前記アルキレン基としては、炭素数1〜6が好ましく、炭素数2〜5がより好ましく、炭素数2〜4がさらに好ましい。R11、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜8のアルキル基である。前記アルキル基としては、炭素数1〜5が好ましく、炭素数1〜4がより好ましく、炭素数1〜3がさらに好ましい。R11、R13及びR14としては、いずれか1つ又は2つの基が水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜5のアルキル基であり、かつ残りの基が非置換又は置換された炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、いずれか1つ又は2つの基が水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜4のアルキル基であり、かつ残りの基が非置換又は置換された炭素数1〜4のアルキル基であることよりが好ましく、いずれか1つ又は2つの基が水素原子又は非置換又は置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、かつ残りの基が非置換又は置換された炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましい。R11及びR12は直接結合していない。R11及びR13は直接結合していない。R11及びR14は直接結合していない。R12及びR13は直接結合していない。R13及びR14は直接結合していない。R11、R12、R13及びR14が炭素数9以上である場合、重合基の密度が小さくなるため硬化性が低下する。また、R11及びR12が直接結合する場合、剛直で嵩高い環状構造が形成されるため、柔軟性が低下する。R12のアルキレン基としては、直鎖状又は分枝状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、n−プロピレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、イソブチリデン基、sec‐ブチリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基などが挙げられる。前記アルキレン基が有する置換基の数は、通常1〜10個であり、1〜8個が好ましく、1〜6個がより好ましく、1〜4個がさらに好ましい。前記アルキレン基の置換基としては、上述の末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II)の基R4及びR5の炭化水素基の置換基と同様のものが挙げられる。R11、R13及びR14のアルキル基としては、R8及びR9のアルキル基と同様のものが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物(b−II)の例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、光硬化性樹脂組成物の硬化性及び硬化物の耐破壊性が優れる点で、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドがさらに好ましく、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが最も好ましい。
(メタ)アクリルアミド化合物(B)の含有量は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン共重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量を100質量%とした場合に、1〜70質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。
[多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)]
本発明の光硬化性樹脂組成物は、更に、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)を含有することが好ましい。
多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)としては、芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が挙げられる。
芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、及び1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光硬化性樹脂組成物の硬化物の力学的強度が優れる点で、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光硬化性樹脂組成物の硬化物の力学的強度が優れる点で、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体又は(メタ)アクリルアミド系重合性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス[2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール]テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン、及びこれらの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光硬化性樹脂組成物の硬化物の強度が優れる点で、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレートが好ましい。
多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)の含有量は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン共重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量を100質量%とした場合に、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)の含有量が0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1.0〜30質量%がさらに好ましい。多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)の含有量が50質量%以下であると、光硬化性樹脂組成物の硬化物の柔軟性が良好となる。
また、多官能性の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)が、力学的強度と耐破壊性の観点から、ウレタン結合を有する少なくとも1種類の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(単に、「ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体」と記載することもある)を含むことが好ましい。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体は、例えば、後述するイソシアネート基(−NCO)を有する化合物と、水酸基(−OH)を有する(メタ)アクリレート化合物を付加反応させることにより容易に合成できる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、トリシクロデカンジイソシアネート(TCDDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、及びアダマンタンジイソシアネート(ADI)などが挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物との付加反応は、公知の方法に従って行うことができ、特に限定はない。
得られるウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、例えば、前記のイソシアネート基を有する化合物の中から選択される1種以上の化合物と水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中から選択される1種以上の化合物の任意の組み合わせの反応物が挙げられる。
これらのなかでも、硬化物の力学的強度および耐破壊性に優れる観点から、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス[2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール]テトラメタクリレート(通称「U4TH」)、及び脂環式ジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物(例えば、IPDIと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物、TCDDIと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物、及びADIと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物)が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他、ジオールとジイソシアネートが反応して得られたポリウレタンの両末端に、(メタ)アクリル基を有するマクロモノマーなども用いることができる。
ウレタン結合を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の含有量は、強度および耐破壊性の観点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量を100質量%とした場合に、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1.0〜30質量%がさらに好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲で(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)以外の重合性単量体を含むことができる。このような重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物(B)以外のアクリルアミド、単官能の(メタ)アクリル酸エステル、α−シアノアクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエステル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、及びスチレン誘導体などが挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物に含まれる重合性成分は、実質的に末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)及び(メタ)アクリルアミド化合物(B)のみから構成されていてもよく、実質的に末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)のみから構成されていてもよい。重合性成分が、実質的に末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)及び(メタ)アクリルアミド化合物(B)のみから構成されるとは、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)及び(メタ)アクリルアミド化合物(B)以外の他の重合性成分の含有量が末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン共重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量を100質量%とした場合に、10.0質量%未満であり、好ましくは5.0質量%未満であり、より好ましくは1.0質量%未満であり、さらに好ましくは0.1質量%未満であり、特に好ましくは0.01質量%未満であることを意味する。同様に、重合性成分が、実質的に末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)のみから構成されるとは、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)以外の他の重合性成分の含有量が重合性成分の総量を100質量%とした場合に10.0質量%未満であり、好ましくは5.0質量%未満であり、より好ましくは1.0質量%未満であり、さらに好ましくは0.1質量%未満であり、特に好ましくは0.01質量%未満であることを意味する。
[光重合開始剤(C)]
本発明に用いられる光重合開始剤(C)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている光重合開始剤が好ましく用いられる。
光重合開始剤(C)としては、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
これらの光重合開始剤(C)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類(塩を含む)、及びα−ジケトン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、紫外領域及び可視光領域での光硬化性に優れ、レーザー、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、及びキセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す光硬化性樹脂組成物が得られる。
(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのアンモニウム塩が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物が挙げられる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩を光重合開始剤(C)として用いることが特に好ましい。
α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノンが挙げられる。これらの中でも、可視光領域の光源を使用する場合には、カンファーキノンが特に好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物における光重合開始剤(C)の含有量は特に限定されないが、得られる光硬化性樹脂組成物の硬化性などの観点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が前記総量100質量部に対し、0.01質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、成形品が得られないおそれがある。光重合開始剤(C)の含有量は、前記総量100質量部に対し、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。一方、光重合開始剤(C)の含有量が前記総量100質量部に対し、20質量部を超える場合、重合開始剤自体の溶解性が低い場合には、光硬化性樹脂組成物からの析出を招くおそれがある。光重合開始剤(C)の含有量は、前記総量100質量部に対し、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5.0質量部以下がとりわけ好ましい。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記の末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含有していれば特に限定はなく、例えば、これ以外の成分を含んでいてもよい。本発明の光硬化性樹脂組成物は、公知の方法に準じて製造できる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、光硬化性の向上を目的として、重合促進剤(E)を含むことができる。重合促進剤(E)としては、例えば、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチルが挙げられる。これらの中でも、光硬化性樹脂組成物に優れた硬化性を付与する観点から、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1つが好ましく用いられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、ペースト性状を調整するために、又は、光硬化性樹脂組成物の硬化物の機械的強度を高めるために、フィラー(F)がさらに配合されていてもよい。フィラー(F)として、例えば、有機フィラー、無機フィラー、有機−無機複合フィラーなどが挙げられる。フィラー(F)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機フィラーの材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用できる。
無機フィラーの材料としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスが挙げられる。これらもまた、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機フィラーの形状は特に限定されず、不定形フィラー又は球状フィラーなどを適宜選択して使用できる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、柔軟性、流動性などの改質を目的として他の重合体を添加できる。例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム及びその水素添加物、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、又はスチレン系エラストマーを添加できる。添加可能な他の重合体の具体例としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)ブロック共重合体、ポリ(p−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(p−メチルスチレン)ブロック共重合体、又はこれらの水素添加物などが挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイルなどの石油系軟化剤、及び、パラフィン、落花生油、ロジンなどの植物油系軟化剤が挙げられる。これらの軟化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。軟化剤の含有量は、本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量100質量部に対して200質量部以下であり、好ましくは100質量部以下である。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物には、劣化の抑制、又は光硬化性の調整を目的として、公知の安定剤を配合できる。かかる安定剤としては、例えば、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンが挙げられる。重合禁止剤の含有量は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及びその他の重合性成分の総量100質量部に対し、0.001〜1.0質量部が好ましい。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物には、色調又はペースト性状の調整を目的として、公知の添加剤を配合できる。かかる添加剤としては、例えば、顔料、染料、有機溶媒、増粘剤が挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、造形性に優れ、硬化後の柔軟性、衝撃吸収性、耐破壊性及び耐水性に優れる。従って、本発明の光硬化性樹脂組成物は、このような利点が生かされる用途に適用でき、特に、マウスガード、咬合用スプリント及び義歯床材に最適である。本発明の光硬化性樹脂組成物を用いる硬化物の形状は、各用途に応じて変更できる。また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、マウスガード、咬合用スプリント及び義歯床材などの用途毎に、各成分(末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合開始剤(C)、多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)及び各種任意の成分((A)、(B)、及び(D)以外の重合性成分、重合促進剤(E)、フィラー(F)、他の重合体、軟化剤、安定剤、添加剤など))の種類及び含有量を調整できる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、その特性、特に光で硬化した際に、体積収縮率が小さくて高い寸法精度を有するという優れた造形性に加えて、硬化後の柔軟性及び力学的特性に優れる成形品あるいは立体造形物、更にはその他の硬化物が得られるという特性を活かして種々の用途に使用することができ、例えば、光学的立体造形法による立体造形物の製造、流延成形法や注型などによる膜状物あるいは型物などの各種成形品の製造、被覆用、真空成形用金型などに用いることができる。
そのうちでも、本発明の光硬化性樹脂組成物は、上記した光学的立体造形法で用いるのに適しており、その場合には、光硬化時の体積収縮率を小さく保ちながら、寸法精度に優れ、且つ柔軟性及び力学的特性に優れる立体造形物を円滑に製造できる。
本発明の他の実施態様としては、前記したいずれかの光硬化性樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法が挙げられる。
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の光学的立体造形方法及び装置(例えば、DWS社製 DigitalWax(登録商標) 028J−Plus等の光造形機)のいずれもが使用できる。そのうちでも、本発明では、樹脂を硬化させるための光エネルギーとして、活性エネルギー光線を用いるのが好ましい。「活性エネルギー光線」は、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などのような光硬化性樹脂組成物を硬化させ得るエネルギー線を意味する。例えば、活性エネルギー光線は、300〜400nmの波長を有する紫外線であってもよい。活性エネルギー光線の光源としては、Arレーザー、He−Cdレーザーなどのレーザー;ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、水銀灯、蛍光灯などの照明などが挙げられ、レーザーが特に好ましい。光源としてレーザーを用いた場合には、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮することが可能であり、しかもレーザー光線の良好な集光性を利用して、造形精度の高い立体造形物を得ることができる。
上記したように、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の方法及び従来公知の光造形システム装置のいずれもが採用でき特に制限されないが、本発明で好ましく用いられる光学的立体造形法の代表例としては、所望のパターンを有する硬化層が得られるように、光硬化性樹脂組成物に活性エネルギー光線を選択的に照射して硬化層を形成する工程、次いでその硬化層にさらに未硬化液状の光硬化性樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層する工程を繰り返すことによって、最終的に目的とする立体的造形物を得る方法が挙げられる。また、それによって得られる立体造形物はそのまま用いてもよく、場合によっては更に光照射によるポストキュアあるいは熱によるポストキュアなどを行って、その力学的特性あるいは形状安定性などを一層高いものとしてから使用するようにしてもよい。
光学的立体造形法によって得られる立体造形物の構造、形状、サイズなどは特に制限されず、各々の用途に応じて決めることができる。そして、本発明の光学的立体造形法の代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル;部品の機能性をチェックするためのモデル;鋳型を制作するための樹脂型;金型を制作するためのベースモデル;試作金型用の直接型などの作製などが挙げられる。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[合成例1][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−I−1)の製造]
5LのSUSオートクレーブ中、空気雰囲気下でアクリル酸クロライド160gと、ピリジン200gと、末端を水酸基で変性した水素添加ポリブタジエン(GI−1000、数平均分子量1,500、Mw/Mn1.15、1,2−結合単位の含有量7モル%、ヨウ素価測定による水素添加率96モル%、日本曹達社製)1500gを混合し、60℃にて48時間反応させた。反応液をトルエン1Lで希釈した後、蒸留水0.5Lで3回洗浄、蒸留水/メタノールの50/50(体積比)の溶媒で再沈、減圧乾燥して、末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−I−1)を得た。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−I−1)について、IR測定を行い1735cm-1(CO)のカルボニル基の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−I−1)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、3,000であった。
[合成例2][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II−1)の製造]
5LのSUSオートクレーブ中、空気雰囲気下でイソホロンジイソシアネート390gと、アルミキレートM3.5gと、2−ヒドロキシエチルアクリレート200gを混合し、60℃にて1時間反応させ、反応物Aを合成した。次に、空気雰囲気下にて、先に合成した反応物A600gと、末端を水酸基で変性した水素添加ポリブタジエン(GI−1000、数平均分子量1,500、Mw/Mn1.15、1,2−結合単位の含有量7モル%、ヨウ素価測定による水素添加率96モル%、日本曹達社製)1500gと、アルミキレートM12.0gを混合し、60℃にて2時間反応させた。残存NCOが0.1%以下であることを確認して反応を終了し、反応液をトルエン1Lで希釈した後、蒸留水0.5Lで3回洗浄、蒸留水/メタノールの50/50(体積比)の溶媒で再沈、減圧乾燥して、末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−1)を得た。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−1)について、1H−NMR測定を行い、2つのNHシグナル(4.55ppm、4.70ppm)を確認した。また、IR測定を行い1728cm-1(CO)、3339cm-1(NH)のウレタン結合の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−1)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、3,200であった。なお、「残存NCO(%)」とは、化合物の質量中に占めるイソシアネート部位の質量(モル数と42.02(NCO分子量)の乗数)を%で示したものである。
[合成例3][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II−2)の製造]
GI−1000を、末端を水酸基で変性した水素添加ポリブタジエンGI−3000(数平均分子量3,100、Mw/Mn1.12、1,2−結合単位の含有量7モル%、ヨウ素価測定による水素添加率96モル%、日本曹達社製)に変えたこと以外、合成例2と同様に反応、洗浄を行い、末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−2)を得た。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−2)について、1H−NMR測定を行い、2つのNHシグナル(4.55ppm、4.70ppm)を確認した。また、IR測定を行い1728cm-1(CO)、3339cm-1(NH)のウレタン結合の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−2)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、4,500であった。
[合成例4][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a−II−3)の製造]
GI−1000を、末端を水酸基で変性した未水添ポリブタジエンG−1000(数平均分子量1,400、Mw/Mn1.15、1,2−結合量85モル%、日本曹達社製)に変えたこと及びイソホロンジイソシアネートをトリレンジイソシアネートに変えたこと以外、合成例2と同様に反応、洗浄を行い、末端アクリロイル変性未水添ポリブタジエン(a−II−3)を得た。得られた末端アクリロイル変性添加ポリブタジエン(a−II−3)について、1H−NMR測定を行い、2つのNHシグナル(4.55ppm、4.70ppm)を確認した。また、IR測定を行い1728cm-1(CO)、3339cm-1(NH)のウレタン結合の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a−II−3)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、2,900であった。
実施例又は比較例に係る重合性組成物に用いた各成分を略号とともに以下に説明する。
[(メタ)アクリルアミド化合物(B)]
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製)
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ社製)
DMAPAA:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ社製)
[光重合開始剤(C)]
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
[多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(D)]
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
U4TH:N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート
[その他の重合性単量体]
LA:ドデシルアクリレート(共栄社化学社製)
[重合禁止剤]
BHT:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
表1及び表2に示す分量で各成分を常温(20℃±15℃、JIS(日本工業規格) Z 8703:1983)下で混合して、実施例1〜10及び比較例1〜6に係る光硬化性樹脂組成物としてのペーストを調整した。
<造形性>
各実施例及び各比較例に係る光硬化性樹脂組成物について、光造形機(DWS社製 DigitalWax(登録商標) 028J−Plus)を用いて厚さ2.0mm×長さ11cm×幅5.0cmのシートの造形を行った。寸法通りのシート(厚さ2.0mm±0.1mm、幅5.0cm±0.5mm、長さ11cm±0.5mm)が造形可能であった場合を造形可能○とし、造形物が得られなかった場合を造形不可×とした。
<柔軟性試験(硬度)>
各実施例及び各比較例に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物について、上記のシートを2枚重ね厚さ4mmとしたのち、その試験片を用いて、JIS K 7215:1986に基づいて、タイプAデュロメータで23℃における硬化物の硬度(A硬度)を測定し、柔軟性の指標とした。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。この測定において、23℃におけるA硬度が70〜85である場合、その硬化物は柔軟性が優れるということができる。
<衝撃吸収性(反発係数)>
衝撃吸収性は落下衝撃試験によって測定した。ストーンテーブル上に、上記の光造形機により作製したシートを2枚重ねて厚さ4mmとし、φ3/8インチ(3.58g)の鋼球を、高さ50cmから自然落下させて、その跳ね返った高さをボール落下式反発弾性試験機EFK07(bareiss社製)を用いて測定し、反発係数を算出した。反発係数の計算式を次式に示す。反発係数が30以下であると、衝撃吸収性に優れる。
反発係数=〔跳ね返った高さ(cm)/50(cm)〕×100
<耐破壊性(引裂強度)>
各実施例及び各比較例に係る硬化物について、上記のシートからJIS K 6252−1:2015(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引裂強さの求め方)に記載されているトラウザ形試験片と同じ寸法の試験片を打抜き刃にて作製した。作製した試験片を用い、オートグラフAG−1(島津製作所社製)を用いて試験スピード500mm/minにて引張試験を行った。この試験による引裂強度が10kN/m以上であると耐破壊性に優れる。
<耐破壊性(引張強度及び引張伸度)>
各実施例及び各比較例に係る硬化物について、上記のシートからJIS K 6251:2010(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方)に記載されているダンベル状8号形試験片と同じ寸法の試験片を打抜き刃にて作製した。作製した試験片を用い、試験スピード500mm/minにて引張試験を行った。この試験による引張強度が5.0MPa以上かつ引張伸度50%以上であると耐破壊性に優れる。
<耐水性>
各実施例及び各比較例に係る硬化物について、37℃水中浸漬24時間後、上記と同様に、引裂強度及び引張強度を測定した。初期の引裂強度及び引張強度に対する、37℃水中浸漬後の引裂強度及び引張強度の変化率(低下率)が10%以下であれば耐水性に優れる。
引裂強度の変化率=〔初期の引裂強度(kN/m)−水中浸漬後の引裂強度(kN/m)〕/初期の引裂強度(kN/m)×100
引張強度の変化率=〔初期の引張強度(MPa)−水中浸漬後の引張強度(MPa)〕/初期の引張強度(MPa)×100
表1及び表2に示す通り、実施例1〜10における光硬化性樹脂組成物の硬化物は、造形性に優れ、さらに、柔軟性、衝撃吸収性、耐破壊性及び耐水性に優れていた。特に、実施例1〜10に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の柔軟性は、比較例3及び4に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物より優れていた。実施例1〜10に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の衝撃吸収性は、比較例3及び4に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の衝撃吸収性より優れていた。実施例1〜10に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐破壊性は、比較例3及び4に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐破壊性より優れていた。実施例1〜10に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐水性は、比較例3及び4に係る光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐水性より優れていた。実施例1〜10に係る光硬化性樹脂組成物の造形性は、比較例1、2、5及び6に係る光硬化性樹脂組成物の造形性より優れていた。比較例1、2、5及び6に係る光硬化性樹脂組成物は、光造形機を用いてシートを造形できず、各特性を測定できなかった。