JP6893604B2 - ポリイミド系フィルム、及びポリイミド系フィルムの製造方法 - Google Patents

ポリイミド系フィルム、及びポリイミド系フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリイミド系フィルム、およびポリイミド系フィルムの製造方法に関する。
従来、太陽電池やディスプレイ等の各種表示部材の基材材料として、ガラスが用いられてきた。しかしながら、ガラスは、割れやすい、重いとった欠点があるとともに、近年のディスプレイの薄型化および軽量化や、フレキシブル化に関して、充分な材質を有していなかった。そのため、ガラスに代わるフレキシブルデバイスの透明部材として、ポリイミド系フィルムが検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
米国特許第8207256号明細書 特開2008−163309号公報
しかしながら、従来のポリイミド系フィルムは、基材からの剥離性が十分でなく、外観不良が起きる場合がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基材からの剥離性が高く、良好な外観不良を実現可能なポリイミド系フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るポリイミド系フィルムは、ポリイミド系高分子と、
γブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選ばれる少なくとも一つとを含有し、黄色度が10以下である。そして、γブチロラクトンの質量割合をG(ppm)、N,N−ジメチルアセトアミドの質量割合をD(ppm)としたときに、30≦G+D≦10000を満たす。
ここで、上記フィルムは、ヘイズが1以下であることが好ましい。
また、上記フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
本発明に係るポリイミド系フィルムの製造方法は、
(a)γブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドの少なくとも一方、及び、ポリイミド系高分子を含む液を基材に塗布する工程と、
(b)塗布された液を乾燥させてフィルムを形成する工程と、を備える。
そして、前記フィルム中のγブチロラクトンの質量割合をG(ppm)、N,N−ジメチルアセトアミドの質量割合をD(ppm)としたときに、前記(b)工程後のフィルムが30≦G+D≦10000を満たす。
本発明によれば、基材からの剥離性が高く、良好な外観を実現可能なポリイミド系フィルム、及び、その製造方法が提供される。
(ポリイミド系フィルム)
このポリイミド系フィルムは、ポリイミド系高分子、及び、γブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む。
本明細書において、ポリイミド系高分子とは、式(PI)、式(a)、式(a’)又は式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種含む重合体を意味する。
Figure 0006893604
式(PI)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a)中のGは3価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a’)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(b)中のG及びAは、それぞれ2価の有機基を表す。
式(PI)中のGとしては、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選ばれる4価の有機基が挙げられる。樹脂フィルム10の透明性及び屈曲性の観点から、Gは、環式脂肪族基及び芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、および、芳香族基が直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基等が挙げられる。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、Gは、環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する環式脂肪族基、フッ素系置換基を有する単環式芳香族基、フッ素系置換基を有する縮合多環式芳香族基又はフッ素系置換基を有する非縮合多環式芳香族基であることが好ましい。
本明細書においてフッ素系置換基とは、フッ素原子を含む基を意味する。フッ素系置換基は、好ましくはフルオロ基(フッ素原子,−F)およびパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくはフルオロ基及びトリフルオロメチル基である。
より具体的には、Gは、例えば、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及び、これらのうちの任意の2つの基(同一でもよい)を有しこれらが直接又は結合基により相互に連結された基から選ばれる。結合基としては、−O−、炭素数1〜10のアルキレン基、−SO−、−CO−又は−CO−NR−(Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す)が挙げられる。
Gの炭素数は通常2〜32であり、好ましくは4〜15であり、より好ましくは5〜10であり、さらに好ましくは6〜8である。Gが環式脂肪族基又は芳香族基である場合、炭素原子の一部がヘテロ原子で置き換えられていてもよい。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられる。
Gの具体例としては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)又は式(26)で表される基が挙げられる。式中の*は結合手を示す。式(26)中のZは、単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH−Ar−、−Ar−C(CH−Ar−又は−Ar−SO−Ar−を表す。Arは炭素数6〜20のアリール基を表し、例えばはフェニレン基が挙げられる。これらの基の水素原子のうち少なくとも1つが、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
Figure 0006893604
式(PI)中のAは、非環式脂肪族基、環式脂肪族基及び芳香族基からなる群から選択される2価の有機基であってもよい。Aで表される2価の有機基は、環式脂肪族基及び芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、および2以上の芳香族環を有しそれらが直接または結合基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基が挙げられる。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、Aの少なくとも一部には、フッ素系置換基が導入されていることが好ましい。
より具体的には、Aは、例えば、飽和又は不飽和シクロアルキル基、飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアルキルアリール基、及び、これらの内の任意の2つの基(同一でもよい)を有しそれらが直接又は結合基により相互に連結された基から選ばれる。ヘテロ原子としては、O、N又はSが挙げられ、結合基としては、−O−、炭素数1〜10のアルキレン基、−SO−、−CO−又は−CO−NR−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を含む)が挙げられる。
Aで表される2価の有機基の炭素数は、通常2〜40であり、好ましくは5〜32であり、より好ましくは12〜28であり、さらに好ましくは24〜27である。
Aの具体例としては、以下の式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基が挙げられる。式中の*は結合手を示す。Z〜Zは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−CO−又は―CO―NR−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す)を表す。下記の基において、ZとZ、及び、ZとZは、それぞれ、各環に対してメタ位又はパラ位にあることが好ましい。また、Zと末端の単結合、Zと末端の単結合、及び、Zと末端の単結合とは、メタ位又はパラ位にあることが好ましい。1つの例は、Z及びZが−O−であり、かつ、Zが−CH−、−C(CH−又は−SO−である。これらの基の水素原子の1つ又は2つ以上が、フッ素系置換基で置換されていてもよい。
Figure 0006893604
A及びGの少なくとも一方において、少なくとも1つの水素原子が、フッ素系置換基、水酸基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基等からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で置換されていてもよい。また、A及びGがそれぞれ環式脂肪族基又は芳香族基である場合に、A及びGの少なくとも一方がフッ素系置換基を有することが好ましく、A及びGの両方がフッ素系置換基を有することがより好ましい。
式(a)中のGは、3価の基である点以外は、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。例えば、Gは、Gの具体例として例示された式(20)〜式(26)で表される基における4つの結合手のうちいずれか1つが水素原子に置き換わった基であってもよい。式(a)中のAは式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
式(a’)中のGは、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。式(a’)中のAは、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
式(b)中のGは、2価の基である点以外は、式(PI)中のGと同様の基から選択することができる。例えば、Gは、Gの具体例として例示された式(20)〜式(26)で表される基における4つの結合手のうちいずれか2つが水素原子に置き換わった基であってもよい。式(b)中のAは、式(PI)中のAと同様の基から選択することができる。
樹脂フィルム10に含まれるポリイミド系高分子は、ジアミン類と、テトラカルボン酸化合物(酸クロライド化合物およびテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸化合物類縁体を含む)又はトリカルボン酸化合物(酸クロライド化合物およびトリカルボン酸無水物などのトリカルボン酸化合物類縁体を含む)の少なくとも1種類と重縮合することにより得られる縮合型高分子であってもよい。さらにジカルボン酸化合物(酸クロライド化合物などの類縁体を含む)を重縮合させてもよい。式(PI)又は式(a’)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(a)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びトリカルボン酸化合物から誘導される。式(b)の繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類及びジカルボン酸化合物から誘導される。
テトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸化合物、脂環式テトラカルボン酸化合物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸化合物が挙げられる。これらは、2種以上併用してもよい。テトラカルボン酸化合物は、好ましくはテトラカルボン酸二無水物である。テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、テトラカルボン酸化合物は、脂環式テトラカルボン化合物及び芳香族テトラカルボン酸化合物等であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、テトラカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式テトラカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族テトラカルボン酸化合物であることが好ましく、脂環式テトラカルボン酸化合物であることがさらに好ましい。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。トリカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族トリカルボン酸、脂環式トリカルボン酸、非環式脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物である。トリカルボン酸化合物は、2種以上併用してもよい。
溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、トリカルボン酸化合物は、脂環式トリカルボン酸化合物及び芳香族トリカルボン酸化合物であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、トリカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式トリカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族トリカルボン酸化合物であることが好ましい。
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物、酸無水物等が挙げられる。ジカルボン酸化合物は、好ましくは芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、非環式脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロライド化合物である。ジカルボン酸化合物は、2種以上併用してもよい。
溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジカルボン酸化合物は、脂環式ジカルボン酸化合物及び芳香族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。樹脂フィルムの透明性及び着色の抑制の観点から、ジカルボン酸化合物は、フッ素系置換基を有する脂環式ジカルボン酸化合物及びフッ素系置換基を有する芳香族ジカルボン酸化合物であることがさらに好ましい。
ジアミン類として、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンが挙げられる。ジアミン類は、2種以上併用してもよい。溶剤に対する溶解性、樹脂フィルム10を形成した場合の透明性及び屈曲性の観点から、ジアミン類は、脂環式ジアミン及びフッ素系置換基を有する芳香族ジアミンであることが好ましい。
ポリイミド系高分子は、異なる種類の複数の上記の繰り返し単位を含む共重合体でもよい。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、通常10,000〜500,000である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量は、好ましくは50,000〜500,000であり、さらに好ましくは70,000〜400,000である。重量平均分子量は、GPCで測定した標準ポリスチレン換算分子量である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きい方が高い屈曲性を得られやすい傾向があるが、ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きすぎると、ワニスの粘度が高くなり、加工性が低下する傾向がある。
ポリイミド系高分子は、上述のフッ素系置換基等によって導入できるフッ素原子等のハロゲン原子を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子がハロゲン原子を含むことにより、樹脂フィルムの弾性率を向上させ且つ黄色度を低減させることができる。これにより、樹脂フィルムにキズ及びシワ等が発生することを抑制し、且つ、樹脂フィルムの透明性を向上させることができる。ハロゲン原子として好ましくは、フッ素原子である。ポリイミド系高分子におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系高分子の質量を基準として、1質量%〜40質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましい。
樹脂フィルム10は、1種又は2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。ポリイミド系高分子と適切に組み合わせることのできる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
紫外線吸収剤の量は、樹脂フィルムの全体質量に対して、通常1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。紫外線吸収剤がこれらの量で含まれることで、樹脂フィルム10の耐候性を特に効果的に高めることができる。
(残存溶媒)
ポリイミド系フィルムは、γブチロラクトン(以下、GBLと記載する場合がある)の質量割合をG(ppm)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMACと記載する場合がある)の質量割合をD(ppm)としたときに、30≦G+D≦10000を満たす。
好ましくは、100≦G+Dであり、G+D≦8000である。G及びDのいずれか一方は、0であってもよい。
なお、ポリイミド系フィルムは、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)などの他の有機溶媒を含むこともできるが、これらの合計の質量割合は、30ppm以下であることが好ましい。
(無機粒子)
ポリイミド系フィルムは、強度を高める観点から、無機粒子を更に含有することができる。無機粒子としてはケイ素原子を含む粒子が挙げられ、ケイ素原子を含む粒子としては、シリカ粒子が挙げられる。無機粒子の他の例は、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子等が挙げられる。
無機粒子の平均一次粒子径は、通常10nm〜100nmであり、20nm〜80nmであることが好ましい。無機粒子の平均一次粒子径が上記の範囲内であることが好ましい理由は、平均一次粒子径が100nm以下であるとフィルムの透明性が向上するとともに、平均一次粒子径が10nm以上であるとフィルムの強度が向上するためである。また、シリカ粒子の平均一次粒子径が10nm以上であると、シリカ粒子の凝集力が弱まるために取り扱いやすくなる傾向がある。一次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)による定方向径の10点平均値とすることができる。
ポリイミド系フィルムにおいて、ポリイミドと無機粒子との配合比は、質量比で、1:9〜10:0であることが好ましく、3:7〜10:0であることがより好ましく、3:7〜8:2であることがさらに好ましく、3:7〜7:3であることがよりさらに好ましい。ポリイミドと無機粒子との配合比が上記の範囲内であると、透明性や機械的強度が向上する傾向を示す。
無機粒子同士は、シロキサン結合(−SiOSi−)を有する分子により結合されていてもよい。
ポリイミド系フィルムは、透明性および屈曲性を損なわない範囲で、更に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、滑剤、増粘剤及びレベリング剤等が挙げられる。
ポリイミドフィルムは、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)等の4級アルコキシシラン、シルセスキオキサン誘導体等の有機ケイ素化合物を含むこともできる。
ポリイミド、無機材料及び溶媒以外の成分は、樹脂フィルム10の質量に対して、0%超20質量%以下であることが好ましく、0%超10質量%以下であることがより好ましい。
ポリイミド系フィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、通常、10μm〜500μmであり、15μm〜200μmであることが好ましく、20μm〜100μmであることがより好ましい。
このポリイミド系フィルムは、JIS K 7136:2000に準拠した全光線透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
また、このポリイミド系フィルムは、JIS K 7136:2000に準拠したHazeが2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.9以下であることが更に好ましい。
また、このポリイミド系フィルムは、JIS K 7373:2006に準拠した黄色度YIが10以下であり、好ましくは、5以下である。
Hazeが2以下であることはフィルムが実質的に透明であることを意味し、YIが10以下であることはフィルムが実質的に無色であることを意味する。
このようなポリイミド系フィルムは、フィルム形成用基材からの剥離が容易であり、その結果外観に優れる。基材からの剥離性が容易である理由は明らかではないが、以下のような理由が考えられる。G+Dが10000を超えると、未だフィルム形成用基材に対し濡れ性が高い溶媒が残存している為か、フィルム形成用基材との密着性が高く、剥離性が不安定になり、一部剥離不良に伴う折れ痕等の外観不良が発生し易い傾向がある。一方、G+Dが30未満であると、再びフィルム形成用基材との密着性が高くなる傾向となり、剥離が困難となることが考えられる。
(製造方法)
次に、本実施形態のポリイミド系フィルムの製造方法を説明する。
公知のポリイミド等の合成手法を用いて、重合された溶媒可溶なポリイミド系高分子を溶媒に溶解し、ポリイミド系高分子ワニスを調製する。ポリイミド系高分子としては、溶媒可溶なポリイミド系高分子であればよく前述の構造であることができる。
溶媒は、少なくとも、上述したγブチロラクトン、及び/又は、N,N−ジメチルアセトアミドを含む。溶媒がγブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドの混合物である場合、これらの比率は任意である。溶媒は、DMFやDMSOなどの他の有機溶媒を含むこともできるが、全溶媒中のγブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドの質量割合は80%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましい。
ポリイミドワニスは、上記溶媒以外に水を含有することができる。水の含有量は、ワニス中の固形分100質量部に対して、通常0.1〜20質量部である。
ポリイミドワニスは、さらに、上述の無機粒子を含有することができる。ポリイミドワニスが無機粒子を含む場合には、ワニスが水を含有することが好ましい。
ポリイミドワニスが無機粒子を含有する場合、ワニスは、溶液安定性を向上させるために、アルコキシシランなどの金属アルコキシドを含有してもよい。好ましい金属アルコキシドは、アミノ基を有するアルコキシシランである。アルコキシシランは、無機粒子同士の結合形成に寄与する。
金属アルコキシドの添加量は、無機粒子の100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、0.5〜5質量部であることが好ましい。
また、ポリイミドワニスには、さらなる添加剤が添加されていてもよく、添加剤として、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、滑剤、増粘剤、及びレベリング剤等を添加してもよい。
次いで、公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、PETフィルム、SUSベルト、及び、ガラス板等の基材上に、上記のワニスを塗布して塗膜を形成する。次に、その塗膜を乾燥して溶媒を除去し、ポリイミド系フィルムを形成する。その後、フィルムを基材から剥離する。
特に、本実施形態では、剥離前のフィルムが30≦G+D≦10000を満たすようにフィルムの乾燥を行う。
溶媒の乾燥は、温度50℃〜350℃にて、適宜、不活性雰囲気あるいは減圧の条件下に溶媒を蒸発させることにより行うことができる。G+Dの調節は、乾燥温度、乾燥時間、乾燥雰囲気圧力の調整、溶媒の組成の調整、例えば、γブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドの混合比、水の濃度等の調整、ポリイミドの分子構造の選択等により適宜行うことができる。
(用途)
このようなポリイミド系フィルムは、基材からの剥離性に優れるので、外観が向上し、フレキシブルディスプレイの構成要素として好適に使用できる。例えば、フレキシブルディスプレイの表面保護用の前面板(ウィンドウフィルム)として使用することができる。
また、このポリイミドフィルムに、紫外線吸収層、ハードコート層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層などの種々の機能層を付加した積層体とすることもできる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
窒素置換した重合槽に、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)及び触媒1.5gを仕込んだ。仕込み量は、式(1)で表される化合物75.0g、式(2)で表される化合物36.5g、式(3)で表される化合物76.4g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとした。式(2)で表される化合物と式(3で表される化合物とのモル比は3:7、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物の合計と式(1)で表される化合物とのモル比は、1.00:1.02であった。
Figure 0006893604
重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合した。なお、この加熱中に、液中の水を除去した。その後、精製及び乾燥により、ポリイミドを得た。
次に、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した溶液、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液、及び、水を混合し、30分間攪拌した。
ここで、シリカとポリイミドの質量比を60:40、アミノ基を有するアルコキシシランの量をシリカ及びポリイミドの合計100質量部に対して1.67部、水をシリカ及びポリイミドの合計100質量部に対して10質量部とした。
混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分、210℃で1時間加熱して溶媒の乾燥をしてポリイミド系フィルムを形成した。その後、フィルムをガラス基板から剥離して厚み75μmの透明ポリイミド系フィルムを得た。
(実施例2)
式(1)で表される化合物に代えて1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を用いてポリイミドを合成した以外は実施例1と同様とした。
(実施例3)
ポリイミドを三菱ガス化学社製「ネオプリム」とした以外は、実施例1と同様とした。
(実施例4)
ポリイミドを三菱ガス化学社製「ネオプリム」とし、乾燥条件を210℃で20分とした以外は、実施例1と同様とした。
(比較例1)
実施例1の乾燥条件において、乾燥時間を短縮した以外は実施例1と同様とした。
(比較例2)
実施例4の乾燥温度を300℃ 3hとした以外は実施例4と同様とした。
(フィルムの溶媒残存量)
フィルムを冷凍粉砕機(日本分析工業社製 Model JFC-300型)を用いてプレクール5分後10分間粉砕した。粉砕したフィルム約200mgを高速溶媒抽出装置(Dionex社製 ASE―200)を用い、温度140℃、圧力1000psi、時間10分、N2パージ100s、2−プロパノール(IPA)にて抽出した。抽出液に窒素を吹き付け、IPAを蒸発させ、アセトン0.2mLを加えた。得られたアセトン溶液を以下のガスクロマトグラフの条件にて分析し、絶対検量線法にてGBL(保持時間2.9分)およびDMAc(保持時間3.3分)の溶媒量を算出した。
装置:ガスクロマトグラフ(アジレント社製 ガスクロマトグラフ6890N型)
注入口温度:280℃
注入量:1μL
オーブン温度:50℃1分ホールド後、昇温速度20℃/分にて、350℃まで昇温後、350℃で5分ホールド。
キャリアガス:He 1.0ml/min
カラム:SGE社製BPX5 (0.25mmφ×30m 膜厚 0.25μm)
スプリット比:50:1
検出器:水素炎イオン化型検出器
検出器温度:355℃
(剥離性の評価)
乾燥後のフィルムを基材から剥離する際の剥離性を以下のように評価した。
フィルムを基材の表面に対して90°となる引きはがし角度で、基材からフィルムを剥離した。安定した剥離強度と剥離速度で剥離できた場合を○とし、剥離強度あるいは剥離速度が不安定な場合を△とし、剥離強度と剥離速度が不安定な場合を×とした。
(外観の評価)
剥離後の各フィルムの外観を以下のように評価した。剥離不良なく外観良好なフィルムが得られた場合は○とし、剥離不良あるいは外観不良なフィルムが得られた場合を△とし、剥離時にフィルムの一部に折れ痕や破れ等の剥離不良が発生した場合は×とした。
(YIの評価)
実施例および比較例のフィルムの黄色度(Yellow Index:YI)を、JIS K 7373:2006に準拠して日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計V−670によって測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、フィルムをサンプルホルダーにセットして、300nm〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求めた。YIを、下記の式に基づいて算出した。
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y
(Hazeの評価)
フィルムのHaze(%)を、JIS K 7136:2000に準拠して、スガ試験機社製の全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DPにより測定した。
(全光線透過率Trの評価)
フィルムの全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、スガ試験機社製の全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DPにより測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 0006893604

Claims (4)

  1. 式(PI)、式(a)、式(a’)又は式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種含む重合体であるポリイミド系高分子と、
    Figure 0006893604

    [式(PI)中のGは4価の有機基を表し、Aは式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基を表す。式(a)中のGは3価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a’)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(b)中のG及びAは、それぞれ2価の有機基を表す。]
    Figure 0006893604

    [式中の*は結合手を示す。Z〜Zは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−CO−又は―CO―NR−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、A及びGの少なくとも一方において、少なくとも1つの水素原子が、フッ素系置換基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で置換されていてもよい。]
    γブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミドと、シリカ粒子と、を含有し、
    黄色度が10以下であり、
    全光線透過率が85%以上であり、
    前記ポリイミド系高分子と前記シリカ粒子との配合比は、質量比で、3:7〜8:2であり、
    γブチロラクトンの質量割合をG(ppm)、N,N−ジメチルアセトアミドの質量割合をD(ppm)としたときに、30≦G+D≦10000を満たすポリイミド系フィルム。
  2. ヘイズが2以下である請求項1記載のポリイミド系フィルム。
  3. (a)γブチロラクトン及びN,N−ジメチルアセトアミド、シリカ粒子、並びに、
    式(PI)、式(a)、式(a’)又は式(b)で表される繰り返し構造単位を少なくとも1種含む重合体であるポリイミド系高分子
    Figure 0006893604

    [式(PI)中のGは4価の有機基を表し、Aは式(30)、式(31)、式(32)、式(33)又は式(34)で表される基を表す。式(a)中のGは3価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(a’)中のGは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。式(b)中のG及びAは、それぞれ2価の有機基を表す。]
    Figure 0006893604

    [式中の*は結合手を示す。Z〜Zは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−SO−、−CO−又は―CO―NR−(Rはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す)を表し、A及びGの少なくとも一方において、少なくとも1つの水素原子が、フッ素系置換基、スルホン基、炭素数1〜10のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で置換されていてもよい。]
    を含む液を基材に塗布する工程と、
    (b)塗布された液を乾燥させてフィルムを形成する工程と、
    を備えるポリイミド系フィルムの製造方法であって、
    前記ポリイミド系高分子と前記シリカ粒子との配合比は、質量比で、3:7〜8:2であり、
    剥離後のポリイミド系フィルムの黄色度が10以下であり、
    剥離後のポリイミド系フィルムの全光線透過率が85%以上であり、
    前記フィルム中のγブチロラクトンの質量割合をG(ppm)、N,N−ジメチルアセトアミドの質量割合をD(ppm)としたときに、前記(b)工程後のフィルムが30≦G+D≦10000を満たすポリイミド系フィルムの製造方法。
  4. さらに、(c)フィルムを基材からフィルムを剥離する工程を備える請求項3に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
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