JP6890827B2 - 溶融塩電解質およびカリウム溶融塩電池 - Google Patents

溶融塩電解質およびカリウム溶融塩電池 Download PDF

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Description

本発明は、カリウム溶融塩電池用の溶融塩電解質およびそれを用いたカリウム溶融塩電池に関する。
カリウム溶融塩電池では、カリウムイオンが電子のキャリアになる。カリウムは、酸化還元電位が高く、電気化学窓が広い。そのため、カリウム溶融塩電池では、高い作動電圧および高いエネルギー密度が期待される。また、カリウムイオンは、リチウムイオンに比べてイオン伝導性が高いため、出力が高く、高速充放電も可能であると考えられている。しかも、カリウムは、リチウムに比べて安価であり、電池の低コスト化も期待される。
特許文献1には、正極活物質としての金属錯体と、負極活物質としてのハードカーボンおよび/または黒鉛とを用いたカリウム溶融塩電池が提案されている。特許文献1では、カリウムビス(フルオロスルホニル)アミドが溶融塩電解質として使用され、120℃や90℃で電池を作動させている。
特開特開2015−64932号公報
カリウムビス(フルオロスルホニル)アミドは融点が高いため、特許文献1のように、電池の作動温度は、120℃や90℃といった比較的高温である。カリウム溶融塩電池の実用化に際して、室温以下の温度で電池を作動させることができれば、用途を拡大し易い。例えば、溶融塩電解質を複数のイオン液体の混合物とすることで溶融塩電解質の融点を下げることができる。一方、カリウムイオンの濃度が低くなると、充放電時などにカリウムが局所的に析出し易くなり、短絡が起こり易くなる。
本発明の一局面は、カリウムイオン伝導性を有するカリウム溶融塩電池用の溶融塩電解質であって、
前記溶融塩電解質は、アニオンおよびカチオンからなる塩を含み、
前記カチオンは、カリウムイオンと、有機カチオンとを含み、
前記有機カチオンは、窒素含有ヘテロ環骨格を有する有機カチオンを含み、
前記カリウムイオンと前記有機カチオンとの合計に占める前記カリウムイオンのモル分率は、0.2より大きく0.7以下である、溶融塩電解質に関する。
本発明の他の局面は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、上記の溶融塩電解質とを含み、
前記正極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含み、
前記負極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含む、カリウム溶融塩電池に関する。
本発明の上記局面によれば、短絡を抑制しながら、室温以下の温度でカリウム溶融塩電池を作動させることができるカリウム溶融塩電池用の溶融塩電解質およびそれを用いるカリウム溶融塩電池を提供することにある。
本発明の一実施形態に係るカリウム溶融塩電池を概略的に示す縦断面図である。 実施例2の溶融塩電解質の相図である。
[発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一実施形態は、カリウムイオン伝導性を有するカリウム溶融塩電池用の溶融塩電解質に関する。溶融塩電解質は、アニオンおよびカチオンを含み、カチオンは、カリウムイオンと、有機カチオンとを含む。有機カチオンは、窒素含有ヘテロ環骨格を有する有機カチオンを含む。カリウムイオンと有機カチオンとの合計に占めるカリウムカチオンのモル分率は、0.2より大きく0.7以下である。
また、本発明の一実施形態には、上記溶融塩電解質を含むカリウム溶融塩電池も含まれる。カリウム溶融塩電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、正極および負極の間に介在するセパレータと、上記溶融塩電解質とを含む。正極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含み、負極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含む。
カリウムイオンおよび有機カチオンの合計に占めるカリウムイオンのモル分率が0.2より大きく0.7以下の範囲では、上記の溶融塩電解質は、少なくとも一部が室温でも液体の状態で存在する。また、カリウムイオンのモル分率が上記の範囲では、ガラス転移点(Tg)が現れるため、過冷却により室温よりも低い温度でも電解質が液体の状態となる。そのため、上記の溶融塩電解質を、カリウム溶融塩電池に用いると、室温以下の温度でも電池を作動させることができる。また、モル分率が上記の範囲では、充放電時などにカリウムが局所的に析出することが抑制され、短絡が起こり難くなる。なお、カリウムイオンのモル分率が0.2以下といった低濃度である場合には、充放電時などにカリウムが局所的に析出し易くなり、短絡が起こり易くなる。本実施形態では、カリウムイオンのモル分率を0.2より大きく0.7以下とすることで、このような短絡も抑制できる。
なお、カリウムイオンのモル分率が上記の範囲でも、室温では、塩が析出することがある。しかし、塩が析出した状態でも、一部の電解質は、液体の状態で存在させることができるため、電池を作動させることができる。
ここで、溶融塩電解質とは、溶融塩を含む電解質を意味する。また、溶融塩電池とは、溶融塩を電解質として含む電池の総称である。溶融塩とは、溶融状態の塩(またはイオン液体)を意味する。カリウム溶融塩電池とは、カリウムイオン伝導性を示す溶融塩電解質を含み、カリウムイオンが、充放電反応に関与するとともに、電荷のキャリアとなるものを言う。なお、イオン液体は、アニオンとカチオンとで構成される液体である。
また、本明細書中、室温とは、25℃以上35℃以下の温度を言うものとする。
カリウムイオンのモル分率は、0.2より大きく0.4以下であることが好ましい。カリウムイオンのモル分率がこのような範囲では、塩が析出しても、多くの電解質を液体の状態で存在させることができるため、高いイオン伝導性を確保し易い。
有機カチオンは、ピロリジニウムカチオンおよびイミダゾリウムカチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。また、有機カチオンは、少なくともピロリジニウムカチオンを含むことがさらに好ましい。これらの場合、カリウムイオンのモル分率が上記の範囲において、室温以下の温度で、溶融塩電解質を液体の状態に保ち易く、高いイオン伝導性を確保し易い。
アニオンは、ビススルホニルアミドアニオンを含むことが好ましい。この場合、溶融塩電解質の融点を低く保ち易い。また、溶融塩電解質の粘度を低くすることができるため、高いイオン伝導性を確保し易くなる。
好ましい実施形態では、溶融塩電解質は、アニオンおよびカチオンを含むイオン液体を、80質量%以上含む。この場合、溶融塩電解質の難燃性を高めることができる。
カリウム溶融塩電池において、負極活物質は、ハードカーボンおよび黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。このような負極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができ、上記の溶融塩電解質と組み合わせることで、安定に充放電を行うことができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るカリウム溶融塩電池用の溶融塩電解質およびそれを用いたカリウム溶融塩電池の具体例について以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
(溶融塩電解質)
溶融塩電解質は、少なくとも溶融時にイオン伝導性を有する必要があるため、溶融塩電池内において、充放電反応の電荷のキャリアとなるイオン(カチオンおよびアニオン)を含む。より具体的には、溶融塩電解質は、カチオンとアニオンとの塩を含む。本発明の一実施形態において、溶融塩電解質は、カリウムイオン伝導性を有する必要があるため、カチオンは、カリウムイオンを含む。また、溶融塩電解質は、比較的低温でも液体の状態を維持するため、有機カチオンを含んでおり、有機カチオンは、窒素含有ヘテロ環骨格を有する有機カチオンを含む。
窒素含有ヘテロ環骨格としては、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾール、ピリジン、ピペリジンなどの環の構成原子として1または2個の窒素原子を有する5〜8員ヘテロ環;モルホリンなどの環の構成原子として1または2個の窒素原子と他のヘテロ原子(酸素原子、イオウ原子など)とを有する5〜8員ヘテロ環が例示できる。
なお、環の構成原子である窒素原子は、アルキル基などの有機基を置換基として有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素数が1〜10個のアルキル基が例示できる。アルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜4がさらに好ましく、1、2、または3であるのが特に好ましい。
窒素含有ヘテロ環骨格として、ピロリジン、またはイミダゾールを有するものが好ましい。ピロリジン骨格を有する有機カチオンは、ピロリジン環を構成する1つの窒素原子に、2つの上記アルキル基を有することが好ましい。イミダゾール骨格を有する有機カチオンは、イミダゾール環を構成する2つの窒素原子に、それぞれ、1つの上記アルキル基を有することが好ましい。
ピロリジン骨格を有する有機カチオンの具体例としては、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジエチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン(Cpyrr:1−methyl−1−propylpyrrolidinium cation)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン(Cpyrr:1−butyl−1−methylpyrrolidinium cation)、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。これらのうちでは、特に電気化学的安定性が高いことから、Cpyrr、Cpyrrなどの、メチル基と、炭素数2〜4のアルキル基とを有するピロリジニウムカチオンが好ましい。
イミダゾール骨格を有する有機カチオンの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+: 1−ethyl−3−methylimidazolium cation)、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI+:1−buthyl−3−methylimidazolium cation)、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。これらのうち、EMI+、BMI+などのメチル基と炭素数2〜4のアルキル基とを有するイミダゾリウムカチオンが好ましい。
これらの有機カチオンは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。これらの有機カチオンのうち、溶融塩電解質の融点を低く調節し易い観点からは、ピロリジニウム骨格を有する有機カチオンおよび/またはイミダゾール骨格を有する有機カチオンが好ましく、特に、有機カチオンが、少なくともピロリジニウム骨格を有する有機カチオンを含む場合が好ましい。
有機カチオンは、窒素含有ヘテロ環骨格を有する有機カチオン以外の他の有機カチオンを含んでもよい。他の有機カチオンとしては、第4級アンモニウムカチオン、イオウ含有有機カチオン、リン含有有機カチオンなどが例示できる。他の有機カチオンは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオンは、カリウムイオン以外の他の無機カチオンを含んでもよい。他の無機カチオンとしては、カリウムイオン以外のアルカリ金属カチオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンなど)、アンモニウムカチオンなどが例示できる。他の無機カチオンは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機カチオン全体に占める窒素含有ヘテロ環骨格を有する有機カチオンの割合は、90質量%以上であることが好ましく、有機カチオンを、窒素含有ヘテロ環骨格を有する有機カチオンのみで構成してもよい。
カチオン全体に占めるカリウムカチオンおよび有機カチオンの合計割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であってもよく、カチオンとして、カリウムカチオンおよび有機カチオンのみを用いてもよい。
本実施形態では、溶融塩電解質において、カリウムイオンと上記有機カチオンとの合計に占めるカリウムイオンのモル分率を、0.2より大きく0.7以下とすることが重要である。モル分率をこのような範囲に調節することで、溶融塩電解質の融点が下がり、室温以下の温度でも溶融塩電解質を液体の状態に維持することができる。また、溶融塩電解質がTgを有することになるため、過冷却により、低温でも電解液を液体の状態で存在させることができる。よって、室温より低い温度でも電池を作動させることができるようになる。また、電解質中のカリウムイオンの濃度が低くなり難く、カリウム溶融塩電池の充放電時にカリウムが局所的に析出することが抑制されるため、短絡が起こり難くなる。なお、溶融塩電解質のTgは、例えば、−100℃以上−70℃以下である。
上記カリウムイオンのモル分率が0.2以下である場合には、電解質中のカリウムイオンの濃度が低くなり易く、カリウム溶融塩電池の充放電時にカリウムが局所的に析出し易くなるため、短絡が起こり易くなる。また、カリウムイオンのモル分率が0.2以下である場合には、溶融塩電解質がTgを有さなくなるため、低温で電池を作動させにくくなる。
カリウムイオンのモル分率は、0.2より大きく0.4以下であることが好ましい。モル分率がこのような範囲である場合、室温において、溶融塩電解質中に塩が析出しても、溶融塩電解質の多くを液体の状態で存在させることができるため、高いイオン伝導性を確保できる。また、カリウムイオンのモル分率は、0.2より大きく0.35以下であることがより好ましく、0.2より大きく0.3以下であることがさらに好ましい。モル分率がこのような範囲である場合、溶融塩電解質の融点を低く抑えることができるとともに、溶融塩電解質中における塩の析出自体を抑制することができる。上記の範囲において、カリウムイオンのモル分率の下限は、好ましくは0.21以上であり、0.25以上であってもよい。
溶融塩電解質のアニオンは、ビススルホニルアミドアニオンを含むことが好ましい。溶融塩電解質がビススルホニルアミドアニオンを含むことにより、溶融塩電解質の粘度を低下させることができ、高いイオン伝導性を確保し易くなる。ビススルホニルアミドアニオンとしては、例えば、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン[FSA-:bis(fluorosulfonyl)amide anion)]、(フルオロスルホニル)(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオン[(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン((FSO2)(CF3SO2)N-)、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオン((FSO2)(SO225)N-)など]、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオン[ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(TFSA-:bis(trifluoromethylsulfonyl)amide anion)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオン(N(SO2252 -)など]などが挙げられる。なお、電解質の粘度および/または融点を低下させやすい観点から、パーフルオロアルキル基を有するビススルホニルアミドアニオンにおいて、パーフルオロアルキル基の炭素数は、例えば、1〜10、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4、特に1、2、または3である。
これらのアニオンは、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。
上記のビススルホニルアミドアニオンのうち、FSA-;TFSA-、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオン、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンなどのビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオンなどが好ましい。融点を低下させ易い観点からは、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオンなどの非対称構造のビススルホニルアミドアニオンを用いることも好ましい。
カリウム溶融塩電池において使用される電解質は、必要に応じて、公知の添加剤を含むことができるが、電解質の大部分が上記溶融塩(上記カチオンおよび上記アニオンを含むイオン液体)であることが好ましい。電解質中の溶融塩の含有量は、例えば、80質量%以上(例えば、80〜100質量%)、好ましくは90質量%以上(例えば、90〜100質量%)である。溶融塩の含有量がこのような範囲である場合、電解質の難燃性を高めやすい。
(カリウム溶融塩電池)
本発明の一実施形態に係るカリウム溶融塩電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に介在するセパレータと、カリウムイオン伝導性を有する上記の溶融塩電解質とを含む。以下に、適宜図面を参照しながら、溶融塩電解質以外の各構成要素についてより具体的に説明する。
(負極)
負極は、負極活物質を含む。負極活物質としては、カリウムイオンを可逆的に吸蔵(もしくは、挿入または吸着)および放出(または脱離)する材料が使用される。このような材料としては、例えば、黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料、およびハードカーボンなどが好ましい。黒鉛型結晶構造とは、層状の結晶構造を意味し、立方晶型結晶構造、菱面体晶型結晶構造などが例示できる。黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボン小球体などが例示できる。負極活物質は、一種を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
炭素質材料を含む負極活物質を用いる場合、カリウム溶融塩電池内では、充電時には、炭素質材料の黒鉛型結晶構造の層間にカリウムイオンが挿入され、放電時には、黒鉛型結晶構造の層間からカリウムイオンが放出される。
炭素質材料における黒鉛型結晶構造の発達の程度の指標の1つとして、炭素質材料のX線回折(XRD:X−ray diffraction)スペクトルで測定される(002)面の平均面間隔d002が使用されている。カリウムイオンが挿入および放出され易い観点から、負極活物質に使用される炭素質材料は、平均面間隔d002が、0.337nm未満であることが好ましい。平均面間隔d002の下限は特に制限されないが、平均面間隔d002を、例えば、0.335nm以上とすることができる。
ハードカーボンは、炭素網面が層状に重なりあった黒鉛型結晶構造を有する黒鉛とは異なり、炭素網面が三次元的にずれた状態で重なりあった乱層構造を有する。ハードカーボンは、高温(例えば、3000℃)での加熱処理によっても、乱層構造から黒鉛構造への転換が起こらず、黒鉛結晶子の発達が見られない。そのため、ハードカーボンは、難黒鉛化性炭素(non−graphitizable carbon)とも称される。
乱層構造を有するハードカーボンの平均面間隔d002は、例えば、0.37nm以上である。ハードカーボンの平均面間隔d002の上限は特に制限されないが、平均面間隔d002を、例えば、0.42nm以下とすることができる。
なお、ハードカーボンは、黒鉛に比べて平均比重が低い。黒鉛の平均比重は2.1〜2.25g/cm3程度であるが、ハードカーボンの平均比重は、例えば、1.4〜1.7g/cm3である。
リチウムイオン電池では、負極に黒鉛が使用されているが、リチウムイオンは、黒鉛中に含まれる黒鉛型結晶構造(具体的には、炭素網面の層状構造)の層間に挿入される。ハードカーボンにカリウムイオンが吸蔵される場合、カリウムイオンは、ハードカーボンにわずかに含まれる黒鉛型結晶構造の層間に挿入される他、乱層構造内(具体的には、黒鉛型結晶構造の層間以外の部分)に入り込むこと、および/またはハードカーボンに吸着されることにより、ハードカーボンに吸蔵されると考えられる。
負極は、例えば、負極活物質と、負極活物質を固定化または担持する負極集電体とを含んでもよい。負極は、任意成分として、結着剤、および/または導電助剤などを含んでもよい。
集電体としては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。負極集電体を構成する金属としては、カリウムと合金化せず、負極電位で安定であることから、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金などが好ましいが、特に限定されない。
容量密度および活物質の利用率を確保し易い観点から、集電体となる金属箔の厚さは、例えば10〜50μmであり、金属繊維の不織布および金属多孔体シートの厚さは、それぞれ、例えば100〜800μmである。
結着剤は、負極活物質同士を結合させるとともに、負極活物質を負極集電体に固定する役割を果たす。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;芳香族ポリアミドなどのポリアミド樹脂;ポリイミド(芳香族ポリイミドなど)、ポリアミドイミドなどのポリイミド樹脂;スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムなどのゴム状重合体;カルボキシメチルセルロースまたはその塩(Na塩など)などのセルロース誘導体(セルロースエーテルなど)などが例示できる。結着剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。高い結着性および容量を確保し易い観点から、結着剤の量は、負極活物質100質量部あたり、1〜10質量部が好ましい。
導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、炭素繊維などの炭素質導電助剤;金属繊維などが挙げられる。導電助剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。高い導電性および容量を確保し易い観点から、導電助剤の量は、負極活物質100質量部あたり、例えば、0〜15質量部の範囲から適宜選択できる。
負極は、例えば、負極活物質を含む負極合剤ペーストを、負極集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要により圧延することにより形成できる。負極合剤ペーストは、負極活物質、並びに任意成分としての結着剤および導電助剤を、分散媒に分散させることにより得られる。分散媒としては、アセトンなどのケトン;テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルアセトアミドなどのアミド;N−メチル−2−ピロリドンなどが例示できる。これらの分散媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(正極)
正極は、正極活物質を含む。正極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含む。このような材料としては、例えば、金属化合物などが挙げられる。金属化合物としては、Kαβγ(M:金属イオン、A:単原子アニオンもしくは多原子アニオン)、金属錯体などが挙げられる。α、βおよびγは、それぞれ、0≦α≦3、0<β≦2、0<γ≦3が好ましい。
金属イオンMを構成する金属としては、3価の価数を取り得る限り特に制限されず、遷移金属(V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Nb、Moなど)が挙げられる。Aで表されるアニオンとしては、単原子アニオン(O2-、F-、S2-など)や多原子アニオン(PO4 3-、P27 4-、PO44-、SO4 2-、SO43-など)が挙げられる。Kαβγの具体例としては、K0.3MnO2、FePO4、FeSO4F、K32(PO43、KVPO4Fなどが挙げられる。
金属錯体は、カリウムイオンを吸蔵することで、カリウムイオンを含む複錯体を形成することができる。このような金属錯体としては、負極活物質よりも高い電位でカリウムイオンの吸蔵および放出を行うことができるものが使用される。また、金属錯体は、溶融塩電解質に対して不溶性または難溶性のものが使用される。金属錯体は、金属イオン(カチオン)と、この金属イオンに配位した配位子(アニオン性配位子)とを含む。
金属錯体としては、下記式(1):
x1[M2(CN)6-yyz (1)
(式中、M1は第1金属イオンであり、M2は第2金属イオンであり、LはCN-以外の1価のアニオンであり、x、yおよびzは、それぞれ、0<x≦2、0≦y<6および0.5≦z≦1.5を充足する。)で表されものが好ましい。
カリウムイオンの比率xは、0<x≦1.5が好ましく、0.1≦x≦1.1または0.1≦x≦0.7であってもよい。なお、完全に充電された状態の場合に、金属錯体におけるカリウムイオンの比率xは最少(理論的には、0)となる。
第1金属イオンを構成する第1金属としては、3価の価数を取り得る限り特に制限されず、遷移金属(Cr、Mn、Fe、Co、Ni、および/またはCuなど)、周期表第12族〜第15族の典型金属(Zn、および/またはSnなど)などが挙げられる。金属錯体は、1種の第1金属イオンを含んでもよく、複数種の第1金属イオンを含んでもよい。これらのうち、周期表第4周期の金属(Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、および/またはZnなど)のイオンが好ましく、特に、Cr3+、Mn3+、Fe3+、およびCo3+からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。第1金属イオンは、少なくともFe3+を含むことが好ましい。第1金属イオンに占めるFe3+の比率は、例えば、80〜100mol%、好ましくは90〜100mol%であり、第1金属イオンが、Fe3+のみを含んでいてもよい。
第2金属イオンを構成する第2金属としては、2価の価数を取り得る限り特に制限されず、遷移金属(Cr、Mo、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、および/またはCuなど)、周期表第12族〜第15族の典型金属(Zn、および/またはSnなど)などが挙げられる。金属錯体は、1種の第2金属イオンを含んでもよく、複数種の第2金属イオンを含んでもよい。これらのうち、周期表第4周期の金属(Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、および/またはZnなど)、第5周期の金属(Mo、Ru、および/またはSnなど)などのイオンが好ましく、特に、Cr2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+およびSn2+からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。第2金属イオンは、少なくともFe2+を含むことが好ましい。第2金属イオンに占めるFe2+の比率は、例えば、80〜100mol%、好ましくは90〜100mol%であり、第2金属イオンが、Fe2+のみを含んでいてもよい。
式(1)において、Lで表される1価のアニオンとしては、単原子アニオン(Cl-、Br-、I-などのハロゲンアニオンなど)であってもよいが、CN-以外の1価の多原子アニオンが好ましい。1価の多原子アニオンとしては、例えば、SCN-、OH-、SH-、オキソ酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられる。オキソ酸アニオンとしては、例えば、NO3 -、ClO4 -、HCO3 -、H2PO4 -、H2SO4 -などが挙げられる。カルボン酸アニオンとしては、CH3COO-、CH3COCH2COO-などが挙げられる。
アニオンLの配位数を示すyは、好ましくは0≦y≦4、さらに好ましくは0≦y≦2または0≦y≦1である。
式(1)において、zは、好ましくは0.7≦z≦1.3、さらに好ましくは0.85≦z≦1.15である。
このような金属錯体は、プルシアンブルー型の結晶構造を形成するため、プルシアンブルー型錯体(またはプルシアンブルー類似体)とも称される。この結晶構造は、ジャングルジムのような格子構造の開骨格を有するため、この開骨格内の空間にカリウムイオンが挿入されることで、金属錯体はカリウムイオンと複錯体を形成することができる。金属錯体において、複錯体の形成は可逆的に行うことができる。つまり、金属錯体は、放電時には、開骨格内にカリウムイオンを取り込んで複錯体を形成し、充電時には、開骨格内からカリウムイオンを放出すると考えられる。このような機構により、より安定して、カリウム溶融塩電池の充放電を行うことができる。
金属錯体中に含まれる第1金属イオンおよび第2金属イオンの価数は、それぞれ、カリウムイオンの吸蔵および放出に応じて変化する場合がある。例えば、第1金属イオンの少なくとも一部が、2価の金属イオンとなることがある。また、第2金属イオンの少なくとも一部が、3価の金属イオンとなることがある。
金属錯体は、配位水および/または結合水を含んでもよい。
正極は、例えば、正極活物質と、正極活物質を固定化または担持する正極集電体とを含むことができる。
集電体としては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。正極集電体を構成する金属としては、正極電位で安定であることから、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましいが、特に限定されない。集電体の厚さは、負極集電体について記載した範囲から適宜選択できる。
正極は、任意成分として、結着剤、および/または導電助剤などを含んでもよい。結着剤、導電助剤としては、負極について例示したものと同様のものから適宜選択できる。
正極は、負極の形成方法に準じて形成できる。具体的には、正極は、正極活物質を含む正極合剤ペーストを、正極集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要により圧延することにより形成できる。正極合剤ペーストは、正極活物質、並びに任意成分としての結着剤および導電助剤を、分散媒に分散せることにより得られる。分散媒としては、負極について例示したものと同様のものから適宜選択できる。
高容量化の観点から、正極活物質および負極活物質の少なくともいずれか一方には、カリウムイオンをプレドープしておくことが好ましい。負極活物質にカリウムイオンをプレドープする場合、プレドープは、電池の組み立て工程で行うことができる。例えば、負極の表面にカリウム金属箔を貼り付けて、正極および電解質とともに、電池ケース内に収容して電池を組み立てると、カリウム金属箔からカリウムイオンが溶出して、負極活物質にドープさせることができる。ドープの際には、必要に応じて、通電してもよい。
正極活物質にカリウムイオンをプレドープする場合、カリウム金属箔を正極表面に貼り付け、負極活物質にプレドープする場合に準じてドープさせてもよいが、金属錯体にカリウムイオンを吸蔵させた状態の複錯体を予め調製し、これを正極活物質として使用することが好ましい。カリウムイオンが吸蔵された状態の金属錯体(複錯体)は、例えば、式(1)において、カリウムイオンの係数xが0<x≦2(好ましくは0.5≦x≦2)を充足するものである。
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、樹脂製の微多孔膜の他、不織布などが使用できる。セパレータは、微多孔膜の層または不織布の層だけで形成してもよく、組成および/または形態の異なる複数の層の積層体で形成してもよい。積層体としては、組成の異なる複数の樹脂多孔層を有する積層体、微多孔膜の層と不織布の層とを有する積層体などが例示できる。
微多孔膜および不織布を形成する繊維に含まれる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが例示できる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、不織布を形成する繊維は、ガラス繊維などの無機繊維であってもよい。セパレータは、ガラス繊維、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種で形成するのが好ましい。
セパレータは、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーとしては、セラミックス(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト、チタニアなど)、タルク、マイカ、および/またはウォラストナイトなどが例示できる。
セパレータの厚さは、特に限定されないが、例えば、10〜300μm程度の範囲から選択できる。
(電極群)
溶融塩電池は、正極と、負極と、これらの間に介在するセパレータと、電解質とを、電池ケースに収容した状態で用いられる。正極と負極とを、これらの間にセパレータを介在させることにより、もしくはこれらをさらに積層または捲回することにより電極群を形成し、この電極群を電池ケース内に収容してもよい。このとき、金属製の電池ケースを用いるとともに、正極および負極の一方を電池ケースと導通させることにより、電池ケースの一部を第1外部端子として利用することができる。一方、正極および負極の他方は、電池ケースと絶縁された状態で電池ケース外に導出された第2外部端子と、リード片などを用いて接続される。
図1は、カリウム溶融塩電池を概略的に示す縦断面図である。
カリウム溶融塩電池は、積層型の電極群、電解質(図示せず)およびこれらを収容する角型のアルミニウム製の電池ケース10を具備する。電池ケース10は、上部が開口した有底の容器本体12と、この容器本体12の上部開口を塞ぐ蓋体13とで構成されている。
カリウム溶融塩電池を組み立てる際には、まず、正極2と負極3とをこれらの間にセパレータ1を介在させた状態で積層することにより電極群が構成され、構成された電極群が電池ケース10の容器本体12に挿入される。その後、容器本体12に溶融塩を注液し、電極群を構成するセパレータ1、正極2および負極3の空隙に電解質を含浸させる工程が行われる。あるいは、溶融塩に電極群を含浸し、その後、溶融塩を含んだ状態の電極群を容器本体12に収容してもよい。
蓋体13の中央には、電池ケース10の内圧が上昇したときに内部で発生したガスを放出するための安全弁16が設けられている。安全弁16を中央にして、蓋体13の一方側寄りには、電池ケース10と絶縁された状態で蓋体13を貫通する外部正極端子14が設けられ、蓋体13の他方側寄りの位置には、電池ケース10と導通した状態で蓋体13を貫通する外部負極端子が設けられる。
積層型の電極群は、いずれも矩形のシート状である、複数の正極2と複数の負極3およびこれらの間に介在する複数のセパレータ1により構成されている。図1では、セパレータ1は、正極2を包囲するように袋状に形成されているが、セパレータの形態は特に限定されない。複数の正極2と複数の負極3は、電極群内で積層方向に交互に配置される。
各正極2の一端部には、正極リード片2aを形成してもよい。複数の正極2の正極リード片2aを束ねるとともに、電池ケース10の蓋体13に設けられた外部正極端子14に接続することにより、複数の正極2が並列に接続される。同様に、各負極3の一端部には、負極リード片3aを形成してもよい。複数の負極3の負極リード片3aを束ねるとともに、電池ケース10の蓋体13に設けられた外部負極端子に接続することにより、複数の負極3が並列に接続される。正極リード片2aの束と負極リード片3aの束は、互いの接触を避けるように、電極群の一端面の左右に、間隔を空けて配置することが望ましい。
外部正極端子14および外部負極端子は、いずれも柱状であり、少なくとも外部に露出する部分が螺子溝を有する。各端子の螺子溝にはナット7が嵌められ、ナット7を回転することにより蓋体13に対してナット7が固定される。各端子の電池ケース内部に収容される部分には、鍔部8が設けられており、ナット7の回転により、鍔部8が、蓋体13の内面に、ワッシャ9を介して固定される。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)電解質の調製
K・FSAと、Cpyrr・FSAとを、3:7のモル比で混合することにより室温で液体状の電解質を調製した。
(2)負極の作製
ハードカーボン(クレハ製)100質量部およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、負極合剤ペーストを調製した。得られた負極合剤ペーストを、負極集電体としてのアルミニウム箔(縦10cm×横10cm、厚さ20μm)の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ15μmの負極合剤層を有する総厚50μmの負極を9枚作製した。また、負極集電体の片面のみに負極合剤層を形成する以外は、上記と同様にして、2枚の負極を作製した。なお、負極の一辺の一方側端部には、集電用のリード片を形成した。
(3)正極の作製
正極活物質としてのプルシアンブルー型金属錯体(KFe[Fe(CN)6])100質量部、アセチレンブラック(導電助剤)5質量部およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、正極合剤ペーストを調製した。得られた正極合剤ペーストを、正極集電体としてのアルミニウム箔(縦10cm×横10cm、厚さ20μm)の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ15μmの正極合剤層を有する総厚50μmの正極を10枚作製した。正極の一辺の一方側端部には、集電用のリード片を形成した。
(4)電極群の組み立て
正極と、負極との間に、セパレータを介在させて、正極リード片同士および負極リード片同士が重なり、かつ正極リード片の束と負極リード片の束とが左右対称な位置に配置されるように積層し、電極群を作製した。電極群の両方の端部には、片面のみに負極合剤層を有する負極を、その負極合剤層が正極と対向するように配置した。セパレータとしては、ガラス繊維不織布(サイズ35×35mm、厚さ200μm)を用いた。
(5)溶融塩電池の組み立て
上記(4)で得られた電極群と、上記(1)で得られた電解質とを、アルミニウム製の容器本体に収容し、容器本体の開口部を、アルミニウム製の蓋体(封口板)で密閉して、図1に示すカリウム溶融塩電池を完成させた。
カリウム溶融塩電池を、25℃で、時間率0.2Cレートの電流値で3.8Vになるまで定電流充電し3.8Vで定電圧充電を行った。そして、時間率0.2Cレートの電流値で、2.5Vになるまで放電を行った。さらに上記の充放電サイクルを20回繰り返した。このように、得られたカリウム溶融塩電池は、可逆的に充放電を行うことができた。
実施例2
K・FSAと、Cpyrr・FSAとのモル比が異なる溶融塩電解質を調製した。各溶融塩電解質の融点、およびTgを、示差走査熱量計を用いて測定した。なお、融点については、溶融塩電解質の溶融開始温度Tm_oおよび溶融終了温度Tm_eを測定した。
実施例2の相図を図2に示す。図2の横軸はカリウムイオンのモル分率である。図2から、溶融塩電解質中のK・FSAの比率(つまり、溶融塩電解質に含まれるカチオン中のカリウムイオンのモル分率)が0.2〜0.7の範囲では、電解質はTg(約175〜200K)を有する。そのため、過冷却により室温より低い温度でも電解質は液体の状態が維持される。ただし、充放電時のカリウムの局所的な析出による短絡の発生を抑制する観点からは、カリウムイオンのモル分率が0.2より大きくする必要がある。なお、図2に示されるように、カリウムイオンのモル分率が約0.28以下の場合には、電解質の融点は、270K以下であり、電解質は室温では液体である。
図2に示すように、カリウムイオンのモル分率が0.3よりも大きい場合には、電解質の融点は、モル分率が0.3以下の場合に比べて著しく上昇し、350Kを超える。そのため、室温付近では、電解質中に塩が析出した状態となる。しかし、カリウムイオンのモル分率が0.7以下であれば、液体の状態の電解質がある程度存在するため、電池を作動させることができる。室温において、液体の状態の電解質が多く存在し、イオン伝導性を確保し易い観点からは、カリウムイオンのモル分率は0.4以下であることが好ましい。また、室温において、電解質のほとんどが液体で存在する観点からは、カリウムイオンのモル分率は0.3以下であることが好ましい。
比較例1
K・FSAと、Cpyrr・FSAとを、モル比2:8で使用して両者を混合し、室温で液体の状態の溶融塩電解質を調製した。得られた溶融塩電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、カリウム溶融塩電池を作製し、充放電を試みたが、充電途中で電圧が上がらなくなった。これは内部短絡が生じたためと考えられる。
実施例3
K・FSAと、EMI・FSAとを、モル比3:7で使用して、両者を混合し、室温で液体の状態の溶融塩電解質を調製した。得られた溶融塩電解質の融点、およびTgを、示差走査熱量計を用いて測定した。その結果、過冷却により低温でも液体の状態に維持されていた。また、Tgは約−90℃であった。
本発明の一実施形態に係る溶融塩電解質によれば、室温以下の温度でカリウム溶融塩電池を作動させることができる。そのため、カリウム溶融塩電池は、例えば、家庭用または工業用の大型電力貯蔵装置、電気自動車またはハイブリッド自動車の電源などの様々な用途に利用できる。
1:セパレータ
2:正極
2a:正極リード片
3:負極
3a:負極リード片
7:ナット
8:鍔部
9:ワッシャ
10:電池ケース
12:容器本体
13:蓋体
14:外部正極端子
16:安全弁

Claims (9)

  1. カリウムイオン伝導性を有するカリウム溶融塩電池用の溶融塩電解質であって、
    前記溶融塩電解質は、アニオンおよびカチオンからなる塩を含み、
    前記アニオンは、ビススルホニルアミドアニオンを含み、
    前記カチオンは、カリウムイオンと、有機カチオンとを含み、
    前記有機カチオンは、ピロリジン骨格を有する有機カチオンおよびイミダゾール骨格を有する有機カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、
    前記カリウムイオンと前記有機カチオンとの合計に占める前記カリウムイオンのモル分率は、0.2より大きく0.7以下であり、
    25℃以上35℃以下の温度において、前記溶融塩電解質の少なくとも一部が液体の状態で存在する、溶融塩電解質。
  2. 前記溶融塩電解質は、−100℃以上−70℃以下の範囲にガラス転移点を有する、請求項1に記載の溶融塩電解質。
  3. 前記カリウムイオンのモル分率は、0.2より大きく0.4以下である、請求項1または請求項2に記載の溶融塩電解質。
  4. 前記有機カチオンは、少なくともピロリジン骨格を有する有機カチオンを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶融塩電解質。
  5. 前記有機カチオンは、ピロリジニウムカチオンおよびイミダゾリウムカチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶融塩電解質。
  6. 前記アニオンは、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオンを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の溶融塩電解質。
  7. 前記塩を80質量%以上含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の溶融塩電解質。
  8. 正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極および前記負極の間に介在するセパレータと、請求項1に記載の溶融塩電解質とを含み、
    前記正極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含み、
    前記負極活物質は、カリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する材料を含む、カリウム溶融塩電池。
  9. 前記負極活物質は、ハードカーボンおよび黒鉛型結晶構造を有する炭素質材料からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載のカリウム溶融塩電池。
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