JP2015118846A - 溶融塩電池およびその充放電方法 - Google Patents

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瑛子 今▲崎▼
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耕司 新田
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篤史 福永
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Abstract

【課題】優れたサイクル寿命と高容量とを両立する溶融塩電池(ナトリウムイオン二次電池)を提供する。
【解決手段】溶融塩電池において、溶融塩電解質は、イオン液体を90質量%以上含み、イオン液体は、第一塩および第二塩を含み、第一塩は、第一カチオンであるナトリウムイオンと、第一アニオンとを有し、第二塩は、第二カチオンである有機カチオンと、第二アニオンとを有する。ナトリウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する正極活物質は、層状P2型の結晶構造を有する第一酸化物および/または層状O3型の結晶構造を有する第二酸化物を含み、第一酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が40〜60原子%、第二酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が57〜77原子%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ナトリウム化合物を正極活物質として用いる溶融塩電池に関する。
近年、電気エネルギーを蓄えることができる高エネルギー密度の電池として、非水電解質二次電池の需要が拡大している。非水電解質二次電池の中でも、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いるリチウムイオン二次電池は、高容量かつ高電圧であり、その実用化が進んでいる。しかし、コバルトおよびリチウムは非常に高価である。
そこで、より安価で安定なナトリウム化合物を正極活物質として用いるナトリウムイオン二次電池が注目を集めつつある。なかでも、亜クロム酸ナトリウムを正極活物質として用い、ハードカーボンを負極活物質として用いるナトリウムイオン二次電池は、平均3V程度の電圧を有し、熱安定性が高く、今後の開発の進展が期待されている(特許文献1)。
しかし、亜クロム酸ナトリウムは、容量が比較的小さいため、これを正極活物質として用いる限り、ナトリウムイオン二次電池の高容量化には限界がある。そこで、高容量な正極活物質が模索されている。
例えば、層状P2型のNa2/3Fe1/2Mn1/22は、熱力学的安定相として知られている層状O3型のNaFeO2よりも高容量になるという報告がある(非特許文献1)。また、層状P2型のNa2/3Fe1/3Mn2/32は、80℃でも充放電可能であるという報告がある(特許文献2)。
国際公開第2011/148864号パンフレット 特開2012−182087号公報
PF NEWS Vol.30 No.3 NOV, 2012
非特許文献1、特許文献2が提案する層状構造の正極活物質は、亜クロム酸ナトリウムに比べると高容量である。また、特許文献2が提案する正極活物質は、80℃でも充放電が可能である。しかし、これらの正極活物質は、遷移金属としてFeおよびMnを含むため、正極活物質中の遷移金属が電解質に溶出する現象が起こりやすい。遷移金属の溶出は、正極活物質を劣化させ、サイクル寿命を短くする要因となる。特に60℃を超える温度下では、遷移金属の溶出を抑制することは困難である。
以上のように、ナトリウムイオン二次電池としての溶融塩電池の分野においては、優れたサイクル寿命と高容量とを両立することが課題となっている。
本発明の一局面は、ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出する正極活物質を含む正極と、ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出する負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、溶融塩電解質と、を含み、前記溶融塩電解質は、イオン液体を90質量%以上含み、前記イオン液体が、第一塩および第二塩を含み、前記第一塩が、第一カチオンであるナトリウムイオンと、第一アニオンとを有し、前記第二塩が、第二カチオンである有機カチオンと、第二アニオンとを有し、前記正極活物質が、Na、FeおよびMnを含む層状P2型の結晶構造を有する第一酸化物および/またはNa、FeおよびMnを含む層状O3型の結晶構造を有する第二酸化物を含み、前記第一酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が、40〜60原子%であり、前記第二酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が、57〜77原子%である、溶融塩電池(ナトリウムイオン二次電池)に関する。
本発明の別の一局面は、上記の溶融塩電池(ナトリウムイオン二次電池)の充放電方法であって、前記溶融塩電池を、60℃以下の温度範囲で充放電する工程を有する、充放電方法に関する。
本発明の溶融塩電池(ナトリウムイオン二次電池)は、FeおよびMnを含む層状P2型および/または層状O3型の結晶構造を有する高容量な正極活物質を用いるにもかかわらず、遷移金属が電解質に溶出しにくいため、優れたサイクル寿命と高容量とを両立することができる。
本発明の一実施形態に係る溶融塩電池の構造を概略的に示す縦断面図である。 本発明の一実施形態に係る充放電システムの概略構成を示すブロック図である。 実施例1の溶融塩電池のサイクル数と、正極活物質1gあたりの放電容量との関係を示す図である。 実施例2の溶融塩電池のサイクル数と、正極活物質1gあたりの放電容量との関係を示す図である。
[発明の実施形態の説明]
最初に発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一実施形態は、ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出する正極活物質を含む正極と、ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出する負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、溶融塩電解質と、を含み、前記溶融塩電解質は、イオン液体を90質量%以上含み、前記イオン液体が、第一塩および第二塩を含み。前記第一塩が、第一カチオンであるナトリウムイオンと、第一アニオンとを有し、前記第二塩が、第二カチオンである有機カチオンと、第二アニオンとを有し、前記正極活物質が、Na、FeおよびMnを含む層状P2型の結晶構造を有する第一酸化物および/またはNa、FeおよびMnを含む層状O3型の結晶構造を有する第二酸化物を含み、前記第一酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が、40〜60原子%であり、前記第二酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が、57〜77原子%である、溶融塩電池に関する。
上記のように、FeおよびMnを含む層状P2型および/または層状O3型の結晶構造を有する正極活物質と、有機カチオンを含むイオン液体を含む溶融塩電解質と、を組み合わせることにより、正極活物質からの遷移金属の溶出が抑制される。よって、優れたサイクル寿命と高容量とを両立することができる。
ここで、層状P2型の第一酸化物は、例えば、Nax1Fey1Mnz12(0.6≦x1≦0.7、0.45≦y1≦0.55、0.45≦z1≦0.55、y1+z1=1)で表される。また、層状O3型第二酸化物は、Nax2Fey2Mnz22(0.95≦x2≦1.05、0.28≦y2≦0.38、0.62≦z2≦0.72、y2+z2=1)で表される。これらの第一および第二酸化物は、熱的により安定であり、かつ高容量を得やすい。
第一酸化物の代表例として、Na2/3Fe1/2Mn1/22を挙げることができる。また、第二酸化物の代表例として、NaFe1/3Mn2/32を挙げることができる。これらの第一および第二酸化物は、特に熱的に安定であり、かつ高容量を得やすい。
第一アニオンおよび第二アニオンは、それぞれ独立に、一般式:[(R1SO2)(R2SO2)]N-(R1およびR2は、それぞれ独立に、FまたはCn2n+1であり、1≦n≦5である)で表わされることが好ましい。これにより、溶融塩電解質の耐熱性やイオン伝導性がより優れたものとなる。
有機カチオンは、第4級アンモニウムカチオンおよび窒素含有へテロ環を有する有機カチオンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、溶融塩電解質の融点をより低くすることができ、かつ耐熱性やイオン伝導性もより優れたものとなる。また、正極活物質からの遷移金属の溶出をより抑制しやすくなる。
負極活物質は、ハードカーボン、ナトリウム含有チタン酸化物およびリチウム含有チタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、充放電の可逆性および熱的安定性により優れた溶融塩電池が得られる。
本発明の別の実施形態は、上記の溶融塩電池の充放電方法であって、溶融塩電池を、60℃以下の温度範囲で充放電する工程、あるいは、0℃〜50℃の温度範囲で充放電する工程を有する、充放電方法に関する。これにより、溶融塩電池のサイクル寿命をより長くすることができる。
[発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
[正極]
正極は、正極活物質として、下記の第一酸化物および/または第二酸化物を含む。これらの酸化物は、遷移金属(Me)と酸素とで構成されるMeO2層の積層構造を有する。層間にはナトリウムが可逆的に挿入および脱離する。これらの材料は、亜クロム酸ナトリウムに比べ、高容量である。
[第一酸化物]
第一酸化物は、Na、FeおよびMnを含み、層状P2型の結晶構造を有する。層状P2型の結晶構造では、酸素配列を持つMeO2層が交互に積層されている。ナトリウムは、これらの層間の三角柱サイトを占有する。層状P2型の結晶構造を有するナトリウム化合物は、熱的に安定であり、より多くのナトリウムを引き抜くことが可能であり、高容量を達成しやすい。
第一酸化物は、Na、FeおよびMnを必須元素として含むが、ナトリウムサイトの一部をNa以外の第三元素が占有してもよい。ナトリウムサイトを占有し得る第三元素としては、例えばFe、Mn、Ti、Ni、Co、Crなどの遷移金属元素、Alなどの典型元素、Li、Kなどのアルカリ金属元素などが挙げられる。ただし、安定な充放電を行う観点からは、ナトリウムサイトを占める第三元素の割合は、ナトリウムと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。
同様に、遷移金属サイトの一部をFeおよびMn以外の第三元素が占有してもよい。遷移金属サイトを占有し得る第三元素としては、例えばNa、K、Liなどのアルカリ金属、Alなどの典型元素、Ti、Ni、Co、Crなどの遷移金属元素などが挙げられる。ただし、安定な結晶構造を維持する観点からは、遷移金属サイトを占める第三元素の割合は、FeとMnと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。
第一酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量は、40〜60原子%であり、45〜55原子%が好ましく、48〜52原子%が特に好ましい。すなわち、FeとMnは、ほぼ同比率で第一酸化物に含まれていることが、結晶構造を安定化させる観点から好ましい。
第一酸化物は、例えば、Nax1Fey1Mnz12(0.6≦x1≦0.7、0.45≦y1≦0.55、0.45≦z1≦0.55、y1+z1=1)で表される組成を有する。ここで、x1の範囲は、第一酸化物の合成直後の初期状態における値であり、ナトリウムのプレドープまたは充放電により変化する。充電時におけるx1の下限値は、例えば、0.25〜0.35である。また、放電時におけるx1の上限値は、例えば、0.85〜1.1である。すなわち、第一酸化物は、初期状態よりも多くのナトリウムを吸蔵することができる。
第一酸化物の合成直後の初期状態の組成の代表例として、x1=2/3、y1=1/2、z1=1/2であるNa2/3Fe1/2Mn1/22を挙げることができる。ただし、Naの係数は、2/3を中心に、例えば上下にそれぞれ3%程度の変動があってもよい。同様に、FeおよびMnの係数は、1/2を中心に、例えば上下にそれぞれ3%程度の変動があってもよい。
[第二酸化物]
第二酸化物は、Na、FeおよびMnを含み、層状O3型の結晶構造を有する。層状O3型の結晶構造では、互いに異なる酸素配列を持つ3種のMeO2層が規則的順序で積層されている。ナトリウムは、これらの層間の八面対サイトを占有する。層状O3型の結晶構造を有するナトリウム化合物は、LiCoO2、NaCoO2、NaFeO2などと同様の結晶構造であり、層状P2型に比べると、引き抜き可能なナトリウム量は少ないが、NaCrO2に比べて高容量である。
第二酸化物は、Na、FeおよびMnを必須元素として含むが、ナトリウムサイトの一部をNa以外の第三元素が占有してもよい。ナトリウムサイトを占有し得る第三元素としては、例えばFe、Mn、Ti、Ni、Co、Crなどの遷移金属元素、Alなどの典型元素、Li、Kなどのアルカリ金属などが挙げられる。ただし、安定な充放電を行う観点からは、ナトリウムサイトを占める第三元素の割合は、ナトリウムと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。
同様に、第二酸化物の遷移金属サイトの一部をFeおよびMn以外の第三元素が占有してもよい。遷移金属サイトを占有し得る第三元素としては、例えばNa、K、Liなどのアルカリ金属、Alなどの典型元素、Ti、Ni、Co、Crなどの遷移金属元素などが挙げられる。ただし、安定な結晶構造を維持する観点からは、遷移金属サイトを占める第三元素の割合は、FeとMnと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。
第二酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量は、57〜77原子%であり、62〜72原子%が好ましく、65〜70原子%が特に好ましい。すなわち、FeとMnは、ほぼ1:2の比率で第二酸化物に含まれていることが、結晶構造を安定化させる観点から好ましい。
第二酸化物は、例えば、Nax2Fey2Mnz22(0.95≦x2≦1.05、0.28≦y2≦0.38、0.62≦z2≦0.72、y2+z2=1)で表される組成を有する。ここで、x2の範囲は、第二酸化物の合成直後の初期状態における値であり、充放電により変化する。充電時におけるx2の下限値は、例えば、0.55〜0.65である。また、放電時におけるx2の上限値は、例えば、0.85〜1.1である。
第二酸化物の合成直後の初期状態の組成の代表例として、x2=1、y2=1/3、z2=2/3であるNaFe1/3Mn2/32を挙げることができる。ただし、Naの係数は、1を中心に、例えば上下にそれぞれ3%程度の変動があってもよい。同様に、Feの係数は、1/3を中心に、例えば上下にそれぞれ3%程度の変動があってもよい。同様に、Mnの係数は、2/3を中心に、例えば上下にそれぞれ3%程度の変動があってもよい。
第一酸化物および第二酸化物は、FeおよびMnを含むことから、有機溶媒を含む有機電解液や、無機溶融塩へのFeおよびMnの溶出が起り易い。ここで、有機電解液とは、炭酸エステルなどの有機溶媒にナトリウム塩を溶解させた電解液であり、一般的な有機電解液には、有機溶媒が例えば60質量%以上含まれている。無機溶融塩とは、有機カチオンを含まない溶融塩、例えばカリウム塩とナトリウム塩との混合物を意味する。
一方、第一酸化物および第二酸化物は、FeおよびMnを含むにもかかわらず、有機カチオンを含むイオン液体へのFeおよびMnの溶出を起こしにくい傾向がある。その理由は明確ではないが、電解質に含まれるイオン濃度、溶媒和する遷移金属の電解質中での安定性などが関連しているものと考えられる。
なお、正極活物質は、第一酸化物および第二酸化物以外の第三活物質を含んでいてもよい。第三活物質としては、例えば、亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2)、Na2FePO4F、NaVPO4F、NaCoPO4、NaNiPO4、NaMnPO4、NaMn1.5Ni0.54、NaMn0.5Ni0.52などが挙げられる。ただし、高容量と優れたサイクル寿命とを両立する観点からは、正極活物質の90質量%以上が、第一酸化物および/または第二酸化物で占められていることが好ましい。
正極活物質の平均粒径は、2μm以上、20μm以下であることが好ましい。このような粒径範囲であれば、均質な正極活物質層を形成しやすく、電極反応もスムーズに進行しやすい。なお、平均粒径(体積粒度分布における累積体積50%における粒子径)は、レーザー回折式粒度分布測定装置により得られる体積粒度分布におけるメディアン径である。
正極は、例えば、正極集電体および正極集電体に付着した正極活物質層を含む。正極活物質層は、正極活物質を必須成分として含み、任意成分として導電性材料、結着剤等を含んでもよい。
正極に含ませる導電性材料としては、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。導電性材料のうちでは、少量使用で十分な導電経路を形成しやすいことから、例えばカーボンブラックが好ましい。導電性材料の量は、正極活物質100質量部あたり、2〜15質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。
結着剤は、正極活物質同士を結合させるとともに、正極活物質を正極集電体に固定する役割を果たす。結着剤としては、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドアミド等を用いることができる。フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF:polyvinylidenefluoride)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を用いることができる。結着剤の量は、正極活物質100質量部あたり、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。
正極集電体としては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。正極集電体を構成する金属としては、正極電位で安定であることから、アルミニウムやアルミニウム合金が好ましいが、特に限定されない。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウム以外の金属成分(例えばFe、Si、Ni、Mnなど)は0.5質量%以下であることが好ましい。正極集電体となる金属箔の厚さは、例えば10〜50μmである。正極集電体となる金属繊維の不織布や金属多孔体シートの厚さは、例えば100〜600μmである。
[負極]
負極は、負極活物質として、例えば、ハードカーボン、ナトリウム含有チタン酸化物およびリチウム含有チタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。これらの材料は、ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出するため、充放電の可逆性に優れた溶融塩電池が得られる。
[ハードカーボン]
ハードカーボンは、炭素網面が層状に重なりあった黒鉛型結晶構造を有する黒鉛とは異なり、炭素網面が三次元的にずれた状態で重なりあった乱層構造を有する。ハードカーボンは、高温(例えば、3000℃)での加熱処理によっても、乱層構造から黒鉛構造への転換が起こらず、黒鉛結晶子の発達が見られない。そのため、ハードカーボンは、難黒鉛化性炭素(non-graphitizable carbon)とも称される。
炭素質材料における黒鉛型結晶構造の発達の程度の指標の1つとして、炭素質材料のX線回折(XRD)スペクトルで測定される(002)面の平均面間隔d002が使用されている。一般に、黒鉛に分類される炭素質材料の平均面間隔d002は0.337nm未満と小さいが、乱層構造を有するハードカーボンの平均面間隔d002は大きく、例えば、0.37nm以上、好ましくは0.38nm以上である。ハードカーボンの平均面間隔d002の上限は特に制限されないが、平均面間隔d002を、例えば、0.42nm以下とすることができる。ハードカーボンの平均比重は、例えば、1.7g/cm3以下であり、好ましくは1.4〜1.7g/cm3である。また、ハードカーボンの平均粒径(体積粒度分布における累積体積50%における粒子径)は、例えば、3〜20μmであり、好ましくは5〜15μmである。
[ナトリウム含有チタン酸化物]
ナトリウム金属含有チタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸ナトリウムが好ましく、より具体的には、Na2Ti37およびNa4Ti512よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。チタン酸ナトリウムのTiまたはNaの一部を第三元素、例えばNi、Co、Mn、Fe、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種で置換してもよい。ただし、Naサイトを占める第三元素の割合は、Naと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。また、Tiサイトを占める第三元素の割合は、Tiと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。
[リチウム含有チタン酸化物]
リチウム含有チタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸リチウムが好ましく、より具体的には、Li2Ti37およびLi4Ti512よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。チタン酸リチウムのTiまたはLiの一部を第三元素、例えばNi、Co、Mn、Fe、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種で置換してもよい。ただし、Liサイトを占める第三元素の割合は、Liと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。また、Tiサイトを占める第三元素の割合は、Tiと第三元素の合計に対して0.1原子%以下であることが好ましい。
ナトリウム含有チタン酸化物およびリチウム含有チタン酸化物の平均粒径(体積粒度分布における累積体積50%における粒子径)は、例えば、2〜20μmであり、好ましくは2〜10μmである。
負極活物質層には、ナトリウムと合金化する金属、例えば、亜鉛、亜鉛合金、錫、錫合金、ケイ素、ケイ素合金などを用いることもできる。
負極は、例えば、負極集電体および負極集電体に付着した負極活物質層を含む。負極活物質層は、負極活物質を必須成分として含み、任意成分として導電性材料、結着剤等を含んでもよい。負極に用いる結着剤および導電材としては、正極の構成要素として例示した材料を用いることができる。結着剤の量は、負極活物質100質量部あたり、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。導電材の量は、負極活物質100質量部あたり、5〜15質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。
負極集電体としては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。負極集電体を構成する金属としては、負極電位で安定であることから、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金などが好ましい。例えば、正極集電体と同様のアルミニウム合金を用いることができる。負極集電体となる金属箔の厚さは、例えば10〜50μmである。負極集電体となる金属繊維の不織布や金属多孔体シートの厚さは、例えば100〜600μmである。
[ナトリウムのプレドープ]
合成直後の初期状態の正極活物質(特に第一酸化物)には、ナトリウムをプレドープすることが望ましい。また、負極活物質が、ハードカーボン、ナトリウム含有チタン酸化物およびリチウム含有チタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種である場合、負極にもナトリウムをプレドープすることが好ましい。このような負極活物質は、不可逆容量を有するからである。
プレドープは、正極と、負極とを、溶融塩電解質と接触させた状態で行うことが好ましい。効率的にプレドープを行うには、最初に負極中の負極活物質に、ナトリウムをプレドープする。例えば、負極と対向するようにナトリウム箔を配置し、負極とナトリウム箔とを電解質と接触させると、負極活物質へのナトリウムのプレドープが進行する。
次に、負極活物質にプレドープされたナトリウムの一部を、正極中の正極活物質に移動させる。例えば、予め負極に不可逆容量を超える量のナトリウムをプレドープし、その後、放電反応を進行させて、負極から正極にナトリウムの一部を移動させる。これにより、Naの量を、初期状態の量より大きくすることができる。このとき、正極中の正極活物質に、Na以外の金属元素の合計に対するNaの量が90〜110原子%(好ましくは95〜100原子%)になるまでナトリウムをプレドープすることにより、正極の能力を最大限に発揮させることができる。
一方、Na以外の金属元素の合計に対するNaの量が90〜110原子%(好ましくは95〜100原子%)になるまで正極活物質にナトリウムがプレドープされたとき、負極中の負極活物質には、負極活物質の不可逆容量分以上のナトリウムがドープされていることが好ましい。これにより、充放電に関与するナトリウム量を効果的に増大させることができる。
[溶融塩電解質]
溶融塩電解質とは、イオン液体(溶融塩)を主体とする電解質であり、イオン液体を90質量%以上含む。なお、イオン液体は、溶融状態の塩(溶融塩)と同義であり、アニオンとカチオンとで構成される液状イオン性物質である。イオン液体は、第一塩および第二塩を含む。第一塩は、第一カチオンであるナトリウムイオンと、第一アニオンとを有する。第二塩は、第二カチオンである有機カチオンと、第二アニオンとを有する。このような溶融塩電解質は、耐熱性が高く、不燃性を有する。また、正極活物質からの遷移金属の溶出を抑制する効果が得られる。
溶融塩電解質は、耐熱性および不燃性を大きく損なわない量の様々な添加剤や有機溶媒を含んでもよい。また、溶融塩電解質は、ナトリウムイオン以外のアルカリ金属カチオンの塩を含んでもよい。このようなアルカリ金属カチオンとしては、リチウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが例示できる。ただし、イオン液体の95〜100質量%が、第一塩(ナトリウム塩)および第二塩(有機カチオンの塩)により占められていることが好ましい。
第一塩を構成する第一アニオンとしては、多原子アニオンが好ましく、例えば、PF6 -、BF4 -、ClO4 -、[(R1SO2)(R2SO2)]N-(R1およびR2は、それぞれ独立に、FまたはCn2n+1であり、1≦n≦5である)で表わされるビス(スルホニル)アミドアニオンなどが例示できる。なかでも、ビス(スルホニル)アミドアニオンが、溶融塩電池の耐熱性やイオン伝導性の点で好ましい。第一アニオンは、1種を単独で用いてもよく、複数種を用いてもよい。すなわち、第一塩は、第一アニオンの種類が異なる複数種のナトリウム塩を含んでもよい。
第二塩を構成する第二アニオンとしても、多原子アニオンが好ましく、第一アニオンと同様のアニオンを用いることができる。第一アニオンと第二アニオンは、同じでもよく、異なってもよい。また、第二アニオンは、1種を単独で用いてもよく、複数種を用いてもよい。すなわち、第二塩は、第二アニオンの種類が異なる複数種の有機カチオンの塩を含んでもよい。第二アニオンとしても、ビス(スルホニル)アミドアニオンが好ましく、特に第一アニオンと第二アニオンとが同じビス(スルホニル)アミドアニオンであることが好ましい。
ビス(スルホニル)アミドアニオンには、具体的には、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン、(フルオロスルホニル)(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオン、およびビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミドアニオンが含まれる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、例えば1〜5であり、1〜2が好ましく、1がより好ましい。なかでも、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン(FSA:bis(fluorosulfonyl)amide anion));ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン(TFSA:bis(trifluoromethylsulfonyl)amide anion)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオン、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンなどが好ましい。
第一塩の具体例としては、ナトリウムイオンとFSAとの塩(Na・FSA)、ナトリウムイオンとTFSAとの塩(Na・TFSA)などが挙げられる。
第二塩を構成する有機カチオンとしては、窒素含有カチオン、イオウ含有カチオン、リン含有カチオンなどが例示できる。これらのうちでは、窒素含有カチオンが好ましい。窒素含有カチオンとしては、脂肪族アミンや脂環族アミンに由来するカチオン(例えば第4級アンモニウムカチオン)の他、窒素含有へテロ環を有する有機カチオンなどが例示できる。
第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン(TEA:tetraethylammonium cation)、トリエチルメチルアンモニウムカチオン(TEMA:methyltriethylammonium cation)などのテトラアルキルアンモニウムカチオン(特にテトラC1-5アルキルアンモニウムカチオンなど)などが例示できる。
窒素含有へテロ環を有する有機カチオンの骨格としては、ピロリジン、イミダゾール、ピリジン、ピペリジンなどが例示できる。これらの骨格の構成原子である窒素原子は、アルキル基などの有機基を置換基として有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などの炭素数が1〜5個のアルキル基が例示できる。アルキル基の炭素数は、1〜4がさらに好ましく、1〜3であるのが特に好ましい。
窒素含有へテロ環を有する有機カチオンの中でも、ピロリジン骨格を有する有機カチオンは、特に耐熱性が高く、製造コストも小さく、溶融塩電解質として有望である。ピロリジン骨格を有する有機カチオンは、ピロリジン環を構成する1つの窒素原子に、2つのアルキル基を有することが好ましい。
ピロリジン骨格を有する有機カチオンの具体例としては、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジエチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン(Py13:1-methyl-1-propylpyrrolidinium cation)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン(Py14:1-butyl-1-methylpyrrolidinium cation)、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。これらのうちでは、特に電気化学的安定性が高いことから、Py13およびPy14が好ましい。
イミダゾール骨格を有する有機カチオンの具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI:1-ethyl-3-methylimidazolium cation)、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI:1-buthyl-3-methylimidazolium cation)、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。これらのうちでは、特にEMIおよびBMIが好ましい。
第一塩と第二塩との合計に占める第一塩の割合(すなわちナトリウムイオンと有機カチオンとの合計に占めるナトリウムイオンの割合)は、10モル%以上、20モル%以上または25モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることが更に好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。また、65モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることが特に好ましい。このような溶融塩電解質は、比較的低粘度であり、かつ高レートでの充放電を行う場合に、高容量を達成する上で有利である。第一塩の割合の好ましい上限と下限は、任意に組み合わせて、好ましい範囲を設定することができる。例えば、第一塩と第二塩との合計に占める第一塩の割合の好ましい範囲は、10〜55モル%でもあり得るし、20〜55モル%でもあり得るし、25〜55モル%でもあり得る。
第二塩の具体例としては、Py13とFSAとの塩(Py13・FSA)、Py13とTFSAとの塩(Py13・TFSA)、Py14とFSAとの塩(Py14・FSA)、Py14とTFSAとの塩(Py14・TFSA)、BMIとFSAとの塩(BMI・FSA)、BMIとTFSAとの塩(BMI・TFSA)、EMIとFSAとの塩(EMI・FSA)、EMIとTFSAとの塩(EMI・TFSA)、TEMAとFSAとの塩(TEMA・FSA)、TEMAとTFSAとの塩(TEMA・TFSA)、TEAとFSAとの塩(TEA・FSA)、TEAとTFSAとの塩(TEA・TFSA)などが挙げられる。
[セパレータ]
正極と負極との間には、セパレータを配置することができる。セパレータの材質は、電池の使用温度を考慮して選択すればよいが、溶融塩電解質との副反応を抑制する観点からは、ガラス繊維、シリカ含有ポリオレフィン、フッ素樹脂、アルミナ、ポリフェニレンサルファイト(PPS)などを用いることが好ましい。セパレータの厚さは、10μm〜500μm、更には20〜50μmであることが好ましい。
[電極群]
溶融塩電池は、上記の正極と負極を含む電極群および溶融塩電解質を、電池ケースに収容した状態で用いられる。電極群は、正極と負極とを、これらの間にセパレータを介在させて積層または捲回することにより形成される。
[溶融塩電池]
図1は、溶融塩電池の一例の構造を概略的に示す縦断面図である。ただし、本発明に係る溶融塩電池の構造は、この構造に限定されるものではない。
溶融塩電池は、積層型の電極群、溶融塩電解質(図示せず)およびこれらを収容する角型のアルミニウム製のケース10を具備する。ケース10は、上部が開口した有底の容器本体12と、上部開口を塞ぐ蓋体13とで構成されている。
溶融塩電池を組み立てる際には、まず、正極2と負極3とをこれらの間にセパレータ1を介在させた状態で積層することにより電極群が構成され、構成された電極群がケース10の容器本体12に挿入される。その後、容器本体12に溶融塩電解質を注液し、電極群を構成するセパレータ1、正極2および負極3の空隙に溶融塩電解質を含浸させる工程が行われる。あるいは、溶融塩電解質を電極群に含浸させ、その後、電解質を含んだ状態の電極群を容器本体12に収容してもよい。
蓋体13の中央には、ケース10の内圧が上昇したときに内部で発生したガスを放出するための安全弁16が設けられている。安全弁16を中央にして、蓋体13の一方側寄りには、蓋体13を貫通する外部正極端子が設けられ、蓋体13の他方側寄りの位置には、蓋体13を貫通する外部負極端子15が設けられる。
積層型の電極群は、いずれも矩形のシート状である、複数の正極2と複数の負極3およびこれらの間に介在する複数のセパレータ1により構成されている。図1では、セパレータ1は、正極2を包囲するように袋状に形成されているが、セパレータの形態は特に限定されない。複数の正極2と複数の負極3は、電極群内で積層方向に交互に配置される。
各正極2の一端部には、正極リード片2aを形成してもよい。複数の正極2の正極リード片2aを束ねるとともに、ケース10の蓋体13に設けられた外部正極端子に接続することにより、複数の正極2が並列に接続される。同様に、各負極3の一端部には、負極リード片3aを形成してもよい。複数の負極3の負極リード片3aを束ねるとともに、ケース10の蓋体13に設けられた外部負極端子に接続することにより、複数の負極3が並列に接続される。正極リード片2aの束と負極リード片3aの束は、互いの接触を避けるように、電極群の一端面の左右に、間隔を空けて配置することが望ましい。
外部正極端子および外部負極端子は、いずれも柱状であり、少なくとも外部に露出する部分が螺子溝を有する。各端子の螺子溝にはナット7が嵌められ、ナット7を回転することにより蓋体13に対してナット7が固定される。各端子のケース10内部に収容される部分には、鍔部8が設けられており、ナット7の回転により、鍔部8が、蓋体13の内面に、ワッシャ9を介して固定される。
電極群は、積層タイプに限らず、正極と負極とをセパレータを介して捲回することにより形成したものであってもよい。負極にナトリウムが析出するのを防止する観点から、正極よりも負極の寸法を大きくしてもよい。
[充放電方法]
本発明の一実施形態に係る溶融塩電池の充放電方法は、溶融塩電池を、60℃以下(例えば−20〜60℃)の温度範囲で充放電する工程、あるいは、0℃〜50℃の温度範囲で充放電する工程を有する。これにより、正極活物質からの遷移金属の溶出を抑制する効果が高められる。よって、溶融塩電池のサイクル寿命をより長くすることができる。遷移金属の溶出を抑制する効果をより高める観点からは、充放電の温度範囲は−20℃〜50℃であることが好ましく、0℃〜50℃であることが更に好ましく、0℃以上40℃未満であることが特に好ましい。ただし、充放電特性を向上させる観点からは、充放電の温度範囲は40℃〜60℃であることが好ましく、50℃〜60℃であることが更に好ましい。なお、有機電解液を用いる場合には、40〜60℃で充放電を繰り返すことは一般に困難である。
具体的には、上記充放電方法は、溶融塩電池を、60℃以下の温度範囲で、所定の上限電圧まで充電する工程と、60℃以下の温度範囲で、所定の下限電圧まで放電する工程と、を含む。溶融塩電池の充放電の上限電圧および下限電圧は、ユーザーなどにより自由に決定できるものではなく、溶融塩電池の構成要素に応じて、設計時に決定される溶融塩電池の特性である。充電と放電は、通常、溶融塩電池を含む充放電システムが備える充電制御ユニットおよび放電制御ユニットにより制御される。充放電システムには、溶融塩電池の温度を制御する温度制御装置を備えることができる。温度制御装置は、例えば、溶融塩電池を加熱するヒーター、溶融塩電池を冷却するクーラーなどを備える。充放電システムは、充電制御ユニット、放電制御ユニット、温度制御装置などを統括して制御するマネジメントシステムを具備することが好ましい。
[充放電システム]
図2は、一実施形態に係る充放電システムを概略的に示す構成図である。
充放電システム100は、溶融塩電池101と、溶融塩電池101の充放電を制御する充放電制御ユニット102と、溶融塩電池101から供給される電力を消費する負荷機器103と、溶融塩電池101の温度を制御する温度制御装置105とを含む。充放電制御ユニット102は、溶融塩電池101を充電する際の電流および/または電圧などを制御する充電制御ユニット102aと、溶融塩電池101を放電する際の電流および/または電圧などを制御する放電制御ユニット102bとを含む。
[実施例]
次に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
《実施例1》
(正極活物質の合成)
Na22、α−Fe23およびMn23を、所定の質量比で、ポリエチレン容器中で8時間遊星ボールミルにより混合した。得られた混合物を、空気中で12時間、900℃で焼成し、Na0.67Fe0.5Mn0.52を得た。
(正極の作製)
平均粒子径5μmのNa0.67Fe0.5Mn0.52(正極活物質)85質量部、アセチレンブラック(導電剤)10質量部およびPVdF(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、正極ペーストを調製した。得られた正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、厚さ90μmの正極を作製した。正極は、直径12mmのコイン型に打ち抜いた。
(負極の作製)
金属ナトリウムディスク(アルドリッチ社製、厚さ200μm)をニッケル集電体に圧着して、総厚700μmの負極を作製した。負極は、直径14mmのコイン型に打ち抜いた。
(セパレータ)
ガラスマイクロファイバー(ワットマン社製、グレードGF/A、厚さ260μm)製のセパレータを準備した。
(溶融塩電解質)
Na・FSAとPy13・FSAとのモル比(Na・FSA:Py13・FSA)が40:60の混合物からなる溶融塩電解質を調製した。
(溶融塩電池の組み立て)
コイン型の正極、負極およびセパレータを、0.3Paの減圧下で、90℃以上で加熱して十分に乾燥させた。その後、浅底の円筒型のAl/SUSクラッド製容器に、コイン型の負極を載置し、その上にコイン型のセパレータを介してコイン型の正極を載置し、所定量の溶融塩電解質を容器内に注液した。その後、周縁に絶縁ガスケットを具備する浅底の円筒型のAl/SUSクラッド製封口板で、容器の開口を封口した。これにより、容器底面と封口板との間で、負極、セパレータおよび正極からなる電極群に圧力を印加し、部材間の接触を確保した。こうして、設計容量1.5mAhのコイン型電池A1(ハーフセル)を作製した。
《実施例2》
(正極活物質の合成)
Na22、α−Fe23およびMn23を、所定の質量比で、ポリエチレン容器中で8時間遊星ボールミルにより混合した。得られた混合物を、空気中で12時間、900℃で焼成し、NaFe0.33Mn0.672を得た。
(正極の作製)
平均粒子径5μmのNaFe0.33Mn0.672(正極活物質)85質量部、アセチレンブラック(導電剤)10質量部およびPVdF(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、正極ペーストを調製した。得られた正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、厚さ90μmの正極を作製した。正極は、直径12mmのコイン型に打ち抜いた。
上記正極を使用したこと以外、実施例1と同様にして、コイン型電池A2を作製した。
《比較例1》
電解質として、NaPF6を1mol/Lの濃度で含むプロピレンカーボネート溶液(NaPF6/PC)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、コイン型電池B1を作製した。
[評価]
実施例1、実施例2および比較例1のコイン型電池を恒温室内で40℃、60℃または90℃になるまで加熱した。温度が安定した状態で、以下の(1)〜(2)の条件を1サイクルとして充放電を行った。実施例1の溶融塩電池のサイクル数と、正極活物質1gあたりの放電容量との関係を図3に示す。実施例2の溶融塩電池のサイクル数と、正極活物質1gあたりの放電容量との関係を図4に示す。
(1)電流密度29.4mA/g(0.2C相当の電流値)、充電終止電圧4Vまで充電
(2)電流密度29.4mA/g(0.2C相当の電流値)、放電終止電圧2Vまで放電
実施例1の電池の10サイクル目の容量維持率およびクーロン効率(充電容量に対する放電容量の割合)を表1に示す。また、実施例2および比較例1の電池の10サイクル目の容量維持率およびクーロン効率をそれぞれ表2、3に示す。
図3、4および表1、2から、90℃という環境下においても、実施例の電池A1、電池A2は、比較的安定して充放電されていることがわかる。また、60℃以下で充放電することにより、実施例1、2では、クーロン効率が100%となり、特に優れたサイクル寿命が得られることが理解できる。
一方、比較例1の電池B1は、有機電解液を用いているため、90℃での充放電は不可能であった。また、溶融塩電解質を使用した実施例1、2の電池は、比較例1よりも、クーロン効率および容量維持率が高い数値を示した。
評価後の電池を分解し、溶融塩電解質に溶出した元素の濃度をICP分析により分析した。その結果を表4に示す。
表4は、容量維持率が低い電池ほど、FeおよびMnの溶出が多いことを示している。また、同じ温度で比較すると、有機カチオンを含む溶融塩電解質に対する溶出量は、有機電解液(NaClO4/PC)に対する溶出量よりも少ないことが理解できる。
本発明に係る溶融塩電池は、高容量であり、かつサイクル寿命に優れることから、長期的な信頼性が求められる用途、例えば、家庭用または工業用の大型電力貯蔵装置、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電源として有用である。
1:セパレータ、2:正極、2a:正極リード片、3:負極、3a:負極リード片、7:ナット、8:鍔部、9:ワッシャ、10:電池ケース、12:容器本体、13:蓋部、15:外部負極端子、16:安全弁、100:充放電システム、101:溶融塩電池、102:充放電制御ユニット、103:負荷機器、105:温度制御装置

Claims (8)

  1. ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出する正極活物質を含む正極と、
    ナトリウムを可逆的に吸蔵および放出する負極活物質を含む負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、
    溶融塩電解質と、を含み、
    前記溶融塩電解質は、イオン液体を90質量%以上含み、
    前記イオン液体が、第一塩および第二塩を含み、
    前記第一塩が、第一カチオンであるナトリウムイオンと、第一アニオンとを有し、
    前記第二塩が、第二カチオンである有機カチオンと、第二アニオンとを有し、
    前記正極活物質が、Na、FeおよびMnを含む層状P2型の結晶構造を有する第一酸化物および/またはNa、FeおよびMnを含む層状O3型の結晶構造を有する第二酸化物を含み、
    前記第一酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が、40〜60原子%であり、
    前記第二酸化物に含まれるFeとMnとの合計に占めるMnの量が、57〜77原子%である、溶融塩電池。
  2. 前記第一酸化物が、Nax1Fey1Mnz12(0.6≦x1≦0.7、0.45≦y1≦0.55、0.45≦z1≦0.55、y1+z1=1)であり、
    前記第二酸化物が、Nax2Fey2Mnz22(0.95≦x2≦1.05、0.28≦y2≦0.38、0.62≦z2≦0.72、y2+z2=1)である、請求項1に記載の溶融塩電池。
  3. 前記第一酸化物が、Na2/3Fe1/2Mn1/22であり、
    前記第二酸化物が、NaFe1/3Mn2/32である、請求項2に記載の溶融塩電池。
  4. 前記第一アニオンおよび前記第二アニオンが、それぞれ独立に、一般式:[(R1SO2)(R2SO2)]N-(R1およびR2は、それぞれ独立に、FまたはCn2n+1であり、1≦n≦5である)で表される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融塩電池。
  5. 前記有機カチオンが、第4級アンモニウムカチオンおよび窒素含有へテロ環を有する有機カチオンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶融塩電池。
  6. 前記負極活物質が、ハードカーボン、ナトリウム含有チタン酸化物およびリチウム含有チタン酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶融塩電池。
  7. 請求項1に記載の溶融塩電池の充放電方法であって、
    前記溶融塩電池を、60℃以下の温度範囲で充放電する工程を有する、充放電方法。
  8. 請求項1に記載の溶融塩電池の充放電方法であって、
    前記溶融塩電池を、0℃〜50℃の温度範囲で充放電する工程を有する、充放電方法。
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