以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「パターンシート」は、「パターン板(基板)」や「パターンフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。さらに、本明細書において、「抵抗」の用語は電気抵抗のことを指す。
図1は本開示の一実施形態による導電性発熱体5の平面図である。図1の導電性発熱体5は、例えば80mm角四方の範囲31に配置された複数の曲線発熱体32を有する発熱体列33を備えている。発熱体列33は、図2に示すように、平面内に於いて縦横に複数個ずつ配置することができる。80mmは一例であり、その数値は任意に変更可能である。後述するように、本実施形態では、一つの発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の形状を不規則にしているが、発熱体列33を縦横に配置すると、発熱体列33の単位で各曲線発熱体32が周期的な構造となる。
各曲線発熱体32が周期的な構造となっても、光芒やチラツキが目立たないようにするには、発熱体列33のサイズをある程度以上に大きくすればよいことが知られている。具体的には、発熱体列33の1辺が50mmを超えると、複数の発熱体列33を縦横に配置しても、光芒やチラツキが目立たなくなる。以下では、一例として、発熱体列33の縦横サイズを80mmとした。
発熱体列33に含まれる各曲線発熱体32は、タングステンや銅などの導電性材料からなる線状の電熱線である。各曲線発熱体32の線幅は、例えば5〜20μm、好ましくは7〜10μmである。透明基材上に配置された複数の曲線発熱体32が視認されにくくするには、曲線発熱体32の線幅を15μm以下にするのが望ましい。ただし、線幅が小さくなるほど断線しやすくなるため、断線防止の観点では10μm以上の線幅は確保した方がよい。
図1の各曲線発熱体32は、第1方向xに互いに離間して配置されて、それぞれ第1方向xに交差する第2方向yに延びている。図1では、第1方向xと第2方向yが互いに直角である例を示しているが、必ずしも直角でなくてもよい。
図1の各曲線発熱体32は、1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にした複数の第1周期曲線(例えば正弦波)を第2方向yに順に繋げたものである。図3は、図1の1本の曲線発熱体32の一部を拡大した図である。図3に示すように、曲線発熱体32を構成する各第1周期曲線30は、1/4周期の長さを有し、各第1周期曲線30の周期および振幅は不規則である。すなわち、各第1周期曲線30の周期および振幅は一定でない。各第1周期曲線30を1/4周期の長さとした理由は、曲線発熱体32の周期性をできるだけなくすためである。曲線発熱体32は、1/4周期で、周期および振幅がランダムに変化するため、曲線発熱体32で反射した光が無相関な方向に進行し、光芒とチラツキが視認されにくくなる。
尚、此処で、「周期」とは、曲線を其の延在方向である第2方向yに沿って一方の向き(例えば、図1ではy軸の+方向)に向かって進んだときに、該延在方向と直交する第1方向xの一方の向き(図1ではx軸方向の+方向)について連続的に且つ交互に増加と減少を繰り返す場合に於いて、其の振幅が0の線(図1ではx=0のy軸)から先ず増加して次いで減少して再度増加に転ずる迄の該第2方向(図1ではy軸方向)の距離を言う。
又、「不規則」とは、曲線の振幅及び周期のうちの少なくとも1つは、各曲線発熱体32を第2方向に向かって進むときに、上記定義による1周期毎に全て異なり繰り返しが無いことを言う。
そして、「1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にした複数の第1周期曲線(例えば正弦波)30を第2方向yに順に繋げた」とは、以下の(1)〜(4)により上記定義による曲線発熱体32の1周期分を構成した場合に、其の基となった各正弦波の周期T1、T2、T3、及びT4は互に全て異なり、且つ各正弦波の振幅A1、A2、A3、及びA4は互に全て異なることを意味する。
(1)元來、通常の定義に於いて第1周期曲線30である周期T1及び振幅A1を有する正弦波の「1/4周期分を切り取って、曲線発熱体32の本開示の定義に於ける第1番目の1/4周期分に相当する箇所に嵌め込み、
(2)次いで、通常の定義に於いて第1周期曲線30である周期T2及び振幅A2を有する正弦波の「1/4周期分を切り取って、曲線発熱体32の本開示の定義に於ける第2番目の1/4周期分に相当する箇所に嵌め込み、
(3)次いで、通常の定義に於いて第1周期曲線30である周期T3及び振幅A3を有する正弦波の「1/4周期分を切り取って、曲線発熱体32の本開示の定義に於ける第3番目の1/4周期分に相当する箇所に嵌め込み、
(4)次いで、通常の定義に於いて第1周期曲線30である周期T4及び振幅A4を有する正弦波の「1/4周期分を切り取って、曲線発熱体32の本開示の定義に於ける第4番目の1/4周期分に相当する箇所に嵌め込む。
なお、図3では、1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にしているが、これは一例にすぎない。ただし、第1周期曲線30の半周期未満の長さを単位として第1周期曲線30の周期および振幅を不規則にするのが望ましい。半周期を超える長さを単位として第1周期曲線30の周期および振幅を不規則にすると、少なくとも半周期の間は、周期性のある曲線が継続してしまうため、光芒やチラツキが生じやすくなる。
また、各曲線発熱体32は、正弦波以外の任意の第1周期曲線30を複数繋げたものでもよい。なお、第1周期曲線30の種類は任意だが、複数繋げる第1周期曲線30の種類は同じものであり、周期と振幅を1/4周期ごとに不規則にしている。図1の座標系XYに於いて一般式で表すと、X=Asin{(2π/λ)X+α}となる。ここで、Aは振幅、λは波長(或いは周期、αは位相である。又、正弦波以外の第1周期曲線30としては、楕円関数曲線、ベッセル関数曲線等を挙げることができる。また、第1周期曲線30は、振幅変調や周波数変調などの変調波の曲線でもよい。
ここで、不規則とは、第1周期曲線30の周期と振幅が1/4周期ごとにランダムであり、かつ80mm角四方の範囲31内では、複数の第1周期曲線30の周期と振幅が周期性を持たないことを意味する。また、第1方向xに離隔して配置される複数の曲線発熱体32の周期および振幅も互いに不規則である。
このように、80mm各四方の複数の曲線発熱体32は、第1方向xと第2方向yのいずれにおいても、周期および振幅が1/4周期ごとに不規則な複数の第1周期曲線30を繋げたものである。
図1の左下隅を原点O(0,0)とし、複数の曲線発熱体32の開始点(先頭位置)を、第2方向yの最小座標位置とすると、第1方向xに沿って離隔して配置される複数の曲線発熱体32の第2方向yの開始位置は、不規則になっている。これは、複数の曲線発熱体32の位相が不規則にずれていることを示している。
複数の曲線発熱体32の位相を不規則にずらす理由は以下の通りである。例えば、複数の曲線発熱体32の開始点がいずれも第2方向yの座標位置y=0であったとすると、座標位置y=0においては、複数の曲線発熱体32の振幅がいずれもゼロになる。よって、80mm四方の発熱体列33を第1方向xおよび第2方向yに複数個ずつ並べて配置したとすると、各発熱体列33の単位で、複数の曲線発熱体32の振幅がいずれもゼロになる箇所が周期的に出現してしまい、この箇所が光芒やチラツキの要因になるおそれがある。そこで、本実施形態では、80mm角四方の発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の第2方向yの最小座標位置を不規則にずらして、複数の曲線発熱体32の位相をランダム化している。
このように、本実施形態では、例えば80mm角四方の範囲31で、複数の曲線発熱体32の周期と振幅を第1方向xと第2方向yのいずれにおいても不規則にするため、各曲線発熱体32で反射された反射光同士が干渉を起こすおそれが少なくなり、光芒を抑制できる。また、各曲線発熱体32は蛇行しており、しかも蛇行の大きさが不規則であるため、各曲線発熱体32で反射された反射光の進行方向も不規則になり、特定方向に強いチラツキを感じさせるおそれが少なくなる。
本実施形態は、曲線発熱体32を構成する各第1周期曲線30の1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にするため、複数の曲線発熱体32の全体では、各第1周期曲線30の密度を均一化できる。すなわち、各第1周期曲線30の1/4周期の範囲内では、第1周期曲線30の密度に大きな違いがあるが、1/4周期で第1周期曲線30の周期と振幅が変化するため、複数の曲線発熱体32の全体では、各第1周期曲線30の密度が平均化されて、熱ムラと濃淡ムラが低減する。
図4(a)および図4(b)はそれぞれ、第1周期曲線30の周期と振幅を1/2周期、1/4周期ごとにランダムにした場合の光芒の撮影画像である。これらの撮影画像は、LED(Light Emitting Device)光源からの光を、第1周期曲線30の形成されたサンプル面に垂直に入射させた状態で、カメラにてサンプル面を撮影した画像である。より具体的には、暗室内にLED光源、サンプル面、カメラを直線状に配置し、LED光源とサンプル面との距離を4m、サンプル面とカメラとの距離を1mとした。カメラは、LED光源に焦点が合うように撮影した。
第1周期曲線30の1/2周期ごとに周期と振幅をランダム化すると、図4(a)に示すように、特定方向に反射する光の成分が大きくなる。すなわち、反射光の指向性が強くなり、これが光芒として視認され易くなってしまう。これに対して、第1周期曲線30の1/4周期ごとに周期と振幅をランダム化すると、図4(b)に示すように、反射光が多方向に散乱し、各方向への光量が小さくなることから、光芒が視認されにくくなる。
また、第1周期曲線30の1/2周期ごとに周期と振幅をランダム化する場合、1/2周期の間は、第1周期曲線30のつなぎ目がないため、第1周期曲線30の1/2周期の間に直線に近い形状が含まれていると、光芒が生じやすくなる。これに対して、第1周期曲線30の1/4周期ごとに周期と振幅をランダム化する場合、つなぎ目がない区間の長さが短くなり、この区間内に直線に近い形状が含まれていたとしても、その長さが短いことから、光芒が生じにくくなる。
曲線発熱体32の線幅が細くなるほど、曲線発熱体32が視認されにくくなり、窓ガラス等に組み込む際には好ましいが、その一方で、断線しやすくなる。そこで、本実施形態では、後述する図6に示すように、第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32同士をバイパス発熱体34で接続してもよい。バイパス発熱体34は、各曲線発熱体32に同じ数ずつ接続されている。
また、バイパス発熱体34の配置場所が周期的であると、光芒やチラツキの要因になり得るため、バイパス発熱体34の配置場所は不規則に設定されている。さらに、バイパス発熱体34が熱ムラの要因にならないように、バイパス発熱体34は80mm各四方の範囲31内で発熱体列33に均等に配置されている。
発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の周期および振幅は、コンピュータを用いて自動的に生成することが可能である。図5は発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32を自動生成する発熱体生成装置41の概略構成を示すブロック図である。図5の発熱体生成装置41は、パラメータ取得部42と、曲線発熱体生成部43と、正規化部44と、周期曲線判定部45と、曲線発熱体記憶部46と、発熱体群生成部47と、位相調整部48と、発熱体列記憶部49とを備えている。
図5の発熱体生成装置41は、コンピュータにより実行可能なソフトウェアとして実現可能である。あるいは、図5の発熱体生成装置41内の少なくとも一部の構成部分をハードウェアで実現してもよい。すなわち、図5の発熱体生成装置41は、必ずしも1台のコンピュータで実現されるとは限らない。
パラメータ取得部42は、複数の曲線発熱体32の形状の特徴を表す種々のパラメータからなるパラメータ群を取得する。パラメータ取得部42は、パラメータ群を予めデータベース等に記憶しておき、その中から必要なパラメータを取得してもよいし、操作者がキーボードやマウス等で入力または選択した各パラメータを取得してもよい。
パラメータ群に含まれるパラメータの一例として、例えば、下記の1)〜8)が考えられる。下記のうち、5)〜8)は必ずしも必須ではない。
1)第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32の最小距離と最大距離。
2)各曲線発熱体32の振幅の最小値と最大値。
3)各曲線発熱体32の周期の最小値と最大値。
4)各曲線発熱体32の位相の最小値と最大値。
5)各曲線発熱体32を構成する各第1周期曲線30の振幅の最小値と最大値。
6)各曲線発熱体32を構成する各第1周期曲線30の周期の最小値と最大値。
7)発熱体列33の第1方向xの長さと第2方向yの長さ。
8)発熱体列33に含まれる曲線発熱体32の数。
曲線発熱体生成部43は、第2方向yに延びる一本の曲線発熱体32を生成する。より具体的には、曲線発熱体生成部43は、各1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にした複数の第1周期曲線30を第2方向yに繋げて、一本の曲線発熱体32を生成する。
正規化部44は、曲線発熱体生成部43で生成した曲線発熱体32の第2方向yの両端部間の最短距離を80mmに合わせるべく、曲線発熱体32に含まれる複数の第1周期曲線30の周期を調整する。
周期曲線判定部45は、正規化部44で正規化した曲線発熱体32を構成する各第1周期曲線30の周期と振幅が1/4周期ごとに不規則であるか否かを判定する。
周期曲線判定部45にて、周期と振幅が不規則でないと判定されると、曲線発熱体生成部43にて、再度、曲線発熱体32を生成し直す。曲線発熱体記憶部46は、周期と振幅が不規則であると判定された曲線発熱体32を記憶する。
発熱体群生成部47は、80mm角四方の範囲31内に含まれる複数の曲線発熱体32を生成する。より具体的には、発熱体群生成部47は、曲線発熱体生成部43、周期曲線判定部45および単位圧発熱体記憶部と連携して、80mm角四方の範囲31内で第1方向xに離間して配置される複数の曲線発熱体32を生成する。
位相調整部48は、発熱体群生成部47が生成した複数の曲線発熱体32の位相を不規則にする処理を行う。より具体的には、位相調整部48は、80mm角四方の範囲31内で、複数の曲線発熱体32の第2方向yの開始位置(先頭位置)を不規則にする。発熱体列記憶部49は、位相調整部48で位相を不規則にした複数の曲線発熱体32を記憶する。
図6は図5の発熱体生成装置41の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、80mm角四方の範囲31内の発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32を生成する処理手順を示している。以下では、曲線発熱体32に含まれる複数の第1周期曲線30が正弦波である例を説明する。
まず、パラメータ取得部42は、上述した1)〜8)のパラメータを取得する(ステップS1)。次に、曲線発熱体生成部43は、正弦波の第2方向yの開始点座標をゼロに設定する(ステップS2)。次に、曲線発熱体生成部43は、正弦波の第1方向xの開始点座標をゼロに設定する(ステップS3)。そして、曲線発熱体生成部43は、取得したパラメータに基づいて、正弦波の周期と振幅をランダムに設定して、第2方向yに沿って1/4周期分の正弦波を生成する(ステップS4)。
次に、曲線発熱体生成部43は、第2方向yの座標位置を、ステップS4で設定した1/4周期分足し合わせて更新する(ステップS5)。次に、曲線発熱体生成部43は、足し合わせた第2方向yの長さが80mmを超えたか否かを判定する(ステップS6)。まだ、80mmを超えていなければ、ステップS4〜S6の処理を繰り返す。
ステップS6で80mmを超えたと判定されると、正規化部44にて、曲線発熱体32の第2方向yの両端部間の最短距離が80mmになるように、曲線発熱体32に含まれる各正弦波の周期を調整する(ステップS7)。この作業を正規化処理と呼ぶ。正規化処理では、曲線発熱体32に含まれる各正弦波の周期を同じ比率で縮小する。
次に、周期曲線判定部45は、正規化した曲線発熱体32を構成する各第1周期曲線30の周期と振幅が1/4周期ごとに不規則であるか否かを判定する(ステップS8)。ここでは、例えば、1本の曲線発熱体32を構成する複数の第1周期曲線30の周期同士に相関性がなく、かつ振幅同士にも相関性がない場合に、周期曲線判定部45は不規則であると判定する。
不規則でなければ、ステップ2に戻って、曲線発熱体32を生成し直す。不規則でない場合に、曲線発熱体32を生成し直す理由は、複数の第1周期曲線30同士に相関性があると、光芒やチラツキが視認されやすくなり、また熱ムラや濃淡ムラも生じやすくなるためである。
ステップS8で、不規則であると判定されると、正規化した曲線発熱体32を曲線発熱体記憶部46に記憶する(ステップS9)。
次に、発熱体群生成部47は、パラメータ取得部42が取得したパラメータに基づいて、第1方向xに1ピッチずらした座標位置を設定する(ステップS10)。1ピッチの大きさは、ステップS1で取得したパラメータにより設定される。
次に、発熱体群生成部47は、第1方向xの長さが80mmを超えたか否かを判定する(ステップS11)。80mmを超えていなければ、ステップS2以降の処理を繰り返して、新たな曲線発熱体32を生成する。
ステップS11で80mmを超えていると判定されると、位相調整部48は、発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の位相を不規則にする調整を行う(ステップS12)。次に、位相調整を行った複数の曲線発熱体32を発熱体列記憶部49に記憶する(ステップS13)。
図3に示すように、1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にした複数の第1周期曲線30を第2方向yに順に繋げると、つなぎ目が屈曲点となり、チラツキが生じるおそれがある。よって、望ましくは、隣接する2つの第1周期曲線30同士のつなぎ目付近で、屈曲点が目立たないようにスムージング処理を行うのがよい。ここで、屈曲点とは、互いに異なる曲率の2つの曲線のつなぎ目、すなわち曲線が不連続に繋がる点である。
図7は図6の発熱体生成装置41の処理手順にスムージング処理を追加した例を示すフローチャートである。図7では、図6のステップS4とS5の間に、スムージング処理(ステップS14)を追加しており、それ以外の処理手順は図6と同じである。
ステップS14のスムージング処理では、隣接する2つの第1周期曲線30のつなぎ目付近で、屈曲点が目立たないように例えば多項式の曲線近似を行う。図8(a)はスムージング処理を行う前のつなぎ目付近の様子を示す図、図8(b)はスムージング処理を行った後のつなぎ目付近の様子を示す図である。第1周期曲線30のつなぎ目付近は直線に近い形状であり、しかも、各第1周期曲線30のつなぎ目付近の傾きが異なるため、図8(a)のように、二つの第1周期曲線30のつなぎ目p0に屈曲点が生じてしまう。そこで、二つの第1周期曲線30のつなぎ目付近のp1〜p2の範囲で多項式の曲線近似を行うことで、図8(b)のように、つなぎ目p0の屈曲点がほとんど目立たなくなる。
なお、1/4周期内のどの程度の範囲について、多項式の曲線近似を行うかは任意であるが、曲線近似を行う範囲が長いと、スムージング処理に時間がかかるため、例えば、1周期を100%として、1/4周期(25%)内のつなぎ目p0の両側の±5%以内の範囲p1〜p2について曲線近似を行うのが望ましい。
図6の処理手順で生成した80mm角四方の発熱体列33は、図2に示すように、縦横に任意の数分を並べて配置することで、任意のサイズおよび形状の導電性発熱体5を作製することができる。本実施形態による導電性発熱体5は、種々の目的および用途に利用できるが、以下では、乗物のフロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウなどに本実施形態の導電性発熱体5を組み込んだ例を説明する。
図6のフローチャートでは省略しているが、導電性発熱体5には、図9に示すように、第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32同士を接続するバイパス発熱体34を設けるのが望ましい。バイパス発熱体34は、任意の曲線発熱体32が断線しても、その隣の曲線発熱体32を介して電流を流せるようにしたものである。バイパス発熱体34は、80mm各四方の範囲31内の複数の曲線発熱体32を生成した後に生成してもよいし、あるいは、第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32が生成された段階で、これら2本の曲線発熱体32を接続するバイパス発熱体34を生成してもよい。
バイパス発熱体34は、曲線発熱体32と同じ線幅(例えば5〜20μm、好ましくは7〜10μm)であり、80mm角四方の発熱体列33において均一な密度で配置される。均一な密度でバイパス発熱体34を配置することで、発熱体列33における熱ムラを防止できる。各曲線発熱体32に接続されるバイパス発熱体34の数は同数であり、かつ第1方向xおよび第2方向yにおいて、バイパス発熱体34の配置場所が不規則になるように配置される。また、バイパス発熱体34の形状は特に問わない。曲線状でもよいし、直線状でもよいし、折れ線形状でもよい。各バイパス発熱体34の形状を変えてもよい。また、少なくとも一部のバイパス発熱体34の延在方向は、任意の方向に揃っていてもよいし、ランダム(不規則)に相違していてもよい。すなわち、各バイパス発熱体4の延在方向は、任意に傾斜していてもよい。
バイパス発熱体34が場合によっては、光芒やチラツキの要因になることも考えられる。そこで、曲線発熱体32と同様に、少なくとも一部のバイパス発熱体34は、1/4周期ごとに周期および振幅を不規則にした複数の第2周期曲線(例えば正弦波)を延在方向(例えば、第1方向x)に順に繋げたものであってもよい。
図10は乗用車のフロントウィンドウ2に本実施形態の導電性発熱体5を組み込んだ例を示している。このフロントウィンドウ2は、導電性発熱体5を組み込んだ合わせガラスである。
図10のフロントウィンドウ2は、一対のガラス板3,4と、一対のガラス板3,4の間に配置される導電性発熱体5とを備えている。導電性発熱体5は、2つのバスバー電極(一対の電極)6,7と、これらバスバー電極に接続される複数の波線発熱体8とを有する。図10では、各波線発熱体8を直線で描いているが、実際には、図1に示すように、各波線発熱体8は、周期および振幅が不規則な第3周期曲線を繋げて構成されている。
より具体的には、複数の波線発熱体8は、上述した発熱体列33を複数個組み合わせて形成されている。すなわち、各波線発熱体8の両端は2つのバスバー電極6,7に接続されており、各波線発熱体8は、図1に示したように、第1方向xに配置された複数の発熱体列33内の各1本の曲線発熱体32を繋げたものである。
図10の例では、2つのバスバー電極6,7は、フロントウィンドウ2の長手方向の両端辺に沿って配置されているが、図11に示すように、フロントウィンドウ2の短手方向の両端辺に沿って2つのバスバー電極6,7を配置し、フロントウィンドウ2の長手方向に沿って複数の波線発熱体8を配置してもよい。
図10と図11における各波線発熱体8の形状は、不規則であるが、各波線発熱体8の基準線(図1の破線32a)の間隔(ピッチ)は略一定であり、基準線同士は略平行である。例えば、各波線発熱体8は、フロントウィンドウ2の長手方向の1cm当たり8本以内の本数で配置される。すなわち、波線発熱体8のピッチは、0.125cm以上が望ましい。
複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7とは、共通の導電材料により一体成形されている。導電材料としては、例えば、導電性に優れてエッチング処理が容易な銅が用いられる。後述するように、本実施形態では、フォトリソグラフィにて、複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7とを一体的に形成する。導電性に優れて、かつフォトリソグラフィのエッチングで容易に加工可能な材料であれば、銅以外の導電性材料を用いてもよい。
2つのバスバー電極6,7間に所定の電圧を印加することにより、これらバスバー電極6,7間の複数の波線発熱体8に電流が流れ、各波線発熱体8の抵抗成分によって、各波線発熱体8が加熱される。これにより、一対のガラス板3,4が温められて、これらガラス板に付着した結露による曇りを除去することができる。また、外側のガラス板に付着した雪や氷を溶かすこともできる。よって、乗物内の乗員の視界を良好に確保可能となる。このように、導電性発熱体5は、デフロスタ電極として機能する。
バスバー電極6,7には、電力損失なく各波線発熱体8に電圧を印加する必要があるため、各バスバー電極6,7の短手方向の幅を、各波線発熱体8の短手方向の幅よりも大きくしている。本実施形態は、銅の薄膜をエッチング処理してバスバー電極6,7と波線発熱体8のパターンを形成するため、バスバー電極6,7用のパターン幅は、波線発熱体8用のパターン幅よりも広く形成されている。
2つのバスバー電極6,7に印加される電圧は、例えば図12に示すように、乗物に搭載されるバッテリ9や電池などから供給される。
複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7とが一体成形された導電性発熱体5は、図13に示すように、透明基材11の上に形成されている。この透明基材11は、剥離されずにそのまま、一対のガラス板3,4の間に挟み込まれてもよいし、透明基材11を剥離した導電性発熱体5のみを一対のガラス板3,4の間に挟み込んでもよい。本明細書では、導電性発熱体5が形成された透明基材11を発熱体シート12と呼ぶ。
波線発熱体8は、周期および振幅が不規則の複数の正弦波を第2方向yに繋げたものであり、銅箔をエッチング処理して形成されたり、あるいは、導電インキの塗布により形成される。例えば、エッチング処理により波線発熱体8を形成すると、波線発熱体8の側面は、上面や底面に対して直角に近い角度方向に配置される。このため、側面が平面状であると、側面からの反射光は特定方向に進行することになり、この方向にいる人間に強いチラツキを感じさせることになる。ところが、本実施形態では、波線発熱体8を不規則な曲線形状にしているため、その側面も不規則な形状となり、特定方向に強いチラツキを感じさせるおそれがなくなる。
図13は透明基材11上に導電性発熱体5が形成された発熱体シート12を一対のガラス板3,4の間に挟み込んだフロントウィンドウ2の図10のA−A線断面図である。図13の場合、湾曲した一方のガラス板3の上に、接合層(第1の接合層)13を介して、発熱体シート12の透明基材11が接合されている。発熱体シート12の導電性発熱体5の上には、接合層(第2の接合層)14を介して、他方のガラス板4が接合されている。
発熱体シート12の透明基材11と導電性発熱体5はともに十分に薄いため、発熱体シート12自体が柔軟性を備えており、湾曲したガラス板3,4の湾曲形状に沿って発熱体シート12を湾曲させた状態で、ガラス板3,4に安定的に接合することができる。
ガラス板3,4は、特に乗物のフロントウィンドウ2に用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このようなガラス板3,4の材質としては、ソーダライムガラスや青板ガラス等が例示できる。ガラス板3,4は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、ガラス板3,4の可視光透過率は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、ガラス板3,4の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、ガラス板3,4は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れたガラス板を得ることができる。
ガラス板3,4と、透明基材11上に形成された導電性発熱体5とは、それぞれ接合層13,14を介して接合されている。このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層13,14としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
なお、フロントウィンドウ2等の合わせガラスには、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、一つの機能層が二以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、合わせガラス1のガラス板3,4、接合層13,14や、透明基材11の少なくとも1つに種々の機能を付与してもよい。例えば、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、偏光機能、防汚機能等が一例として挙げられる。
透明基材11は、導電性発熱体5を支持する基材として機能する。透明基材11は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板であって、熱可塑性樹脂を含んでいる。
透明基材11に主成分として含まれる熱可塑性樹脂としては、可視光を透過する熱可塑性樹脂であればいかなる樹脂でもよいが、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂やポリエチレンテレフタレートは、光学特性に優れ、成形性が良いので好ましい。
また、透明基材11は、製造中の導電性発熱体5の保持性や、光透過性等を考慮すると、0.02mm以上0.20mm以下の厚みを有していることが好ましい。
図14は導電性発熱体5の製造工程を示す断面図であり、図10のA−A線方向の断面構造を示している。まず、図14(a)に示すように、透明基材11上に銅の薄膜21を形成する。この薄膜21は、電界銅箔や圧延銅箔、スパッタリング、真空蒸着などにより形成可能である。
次に、図14(b)に示すように、銅の薄膜21の上面をフォトレジスト22で覆う。フォトレジスト22は、例えば特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有する樹脂層である。この樹脂層は、樹脂フィルムを貼着して形成してもよいし、流動性の樹脂をコーティングすることにより形成してもよい。また、フォトレジスト22の具体的な感光特性は特に限られない。例えば、フォトレジスト22として、光硬化型の感光材が用いられてもよく、若しくは、光溶解型の感光材が用いられてもよい。
続いて、図14(c)に示すように、フォトレジスト22をパターニングして、レジストパターン23を形成する。フォトレジスト22をパターニングする方法としては、公知の種々の方法を採用することができるが、この例では、フォトレジスト22として、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有する樹脂層を用い、公知のフォトリソグラフィー技術を用いてパターニングしている。まず、フォトレジスト22上に、パターン化したい部分を開口したマスク、又は、パターン化したい部分を遮蔽したマスクを配置する。上述したように、マスクには、波線発熱体8の長手方向に延びる両端面が蛇行するようなパターンが描かれている。また、場合によっては、波線発熱体8の長手方向が全体として蛇行しているようなパターンがマスクに描かれていてもよい。
次に、このマスクを介してフォトレジスト22に紫外線を照射する。その後、紫外線がマスクにより遮蔽された部分、又は、紫外線が照射された部分を現像等の手段により除去する。これにより、パターニングされたレジストパターン23を形成することができる。なお、マスクを用いないレーザーパターニング法を用いることもできる。
次に、図14(d)に示すように、レジストパターン23の上方からウェットエッチング用のエッチング液を噴射して、レジストパターン23で覆われていない銅の薄膜21をエッチング除去し、レジストパターン23で覆われた領域のみ、銅の薄膜21を残す。次に、図14(e)に示すように、レジストパターン23を剥離することで、複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7とが作製される。その後、透明基材11上に形成された複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7は、一対のガラス板3,4に挟み込まれて封止される。
なお、パターニングした銅の薄膜21の表面や、あるいは銅の薄膜21の下面側に、導電性発熱体5の反射率を抑制するための暗色層を形成してもよい。暗色層を形成することで、外光が波線発熱体8やバスバー電極6,7の表面に照射された場合の反射光を抑制でき、チラツキの発生をより抑制できる。
バスバー電極6,7を一体成形せずに、複数の波線発熱体8のみをフォトリソグラフィにより形成する場合、フォトリソグラフィのエッチング工程で、エッチング液を噴射した際に、波線発熱体8の長手方向両端部側が長手方向中央部よりもエッチングがより進行し、波線発熱体8の長手方向両端部の幅が細くなりすぎて、バスバー電極6,7と導通しなくなったり、波線発熱体8の長手方向両端部の抵抗が異常に高くなったりする。これに対して、本実施形態のように、複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7とを一体成形する場合には、複数の波線発熱体8の長手方向中央部側から両端部側に流れたエッチング液がバスバー電極6,7でせき止められるため、波線発熱体8が全体として均一にエッチング液に浸漬され、波線発熱体8の長手方向両端部がより多くエッチング除去される等の不具合が起きなくなる。
また、本実施形態では、複数の波線発熱体8と2つのバスバー電極6,7とをフォトリソグラフィにより一体成形するため、先にフォトリソグラフィで複数の波線発熱体8を形成し、その後、別体のバスバー電極6,7を波線発熱体8に接合する場合と比べて、波線発熱体8とバスバー電極6,7との接触性が向上し、波線発熱体8とバスバー電極6,7との接合部での電力損失が少なくなり、発熱効率が向上する。
図14の製造工程により作製された発熱体シート12は、湾曲した一対のガラス板3,4の間に配置される。より詳細には、一方のガラス板3、接合層13、発熱体シート12、接合層14、ガラス板4の順に重ね合わせて、加圧しながら加熱することで、合わせガラスが作製される。
上述した図14の製造工程は、透明基材11上にエッチング等により波線発熱体8等を形成した後に一対のガラス板3,4で封止して合わせガラスを形成する例を示したが、一対のガラス板3,4間に透明基材11も含まれることになり、一対のガラス板3,4間の層数が増えてしまい、厚みが増えて重量が増すとともに、各層の光学特性の相違により視認性が低下するおそれもある。さらには、透明基材11を含むことで、熱の伝達特性も低下する。また、一対のガラス板3,4は、図13のように湾曲しているため、透明基材11にしわが生じるおそれもある。
そこで、図15に示すように、透明基材11上に剥離層15を介してバスバー電極6,7と波線発熱体8を含む導電性発熱体5を形成した発熱体シート12を作製し、この発熱体シート12を一方のガラス板に貼り付けた後に、透明基材を剥離し、その後に他方のガラス板を張り付けてもよい。図16〜図19は図15の発熱体シート12を用いた合わせガラスの製造工程の一例を示す断面図である。
まず、発熱体シート12に、発熱体形成面側(図16の上側)から、接合層14及びガラス板4を積層し、その後、発熱体シート12、接合層14及びガラス板4を接合して第1中間部材17を作製する。例えば、発熱体シート12に接合層14及びガラス板4を積層したものをオートクレーブ装置へ搬入し、発熱体シート12、接合層14及びガラス板4を加熱・加圧し、オートクレーブ装置から取り出すようにすることができる。この場合、発熱体シート12、接合層14及びガラス板4を加熱・加圧する前に、オートクレーブ装置内を減圧するようにすると、接合層14内や、接合層14と発熱体シート12との界面、接合層14とガラス板3との界面に、気泡が残留することを抑制することができる。
これにより、図16に示されているように、透明基材11、剥離層15、導電性発熱体5、接合層14及びガラス板4が積層された第1中間部材17が得られる。この第1中間部材17の接合層14は、第1の面14a及び第2の面14bを有しており、導電性発熱体5が、接合層14の第1の面14aに少なくとも部分的に埋め込まれている。図示された例では、導電性発熱体5は、接合層14の第1の面14aの側から接合層14内に完全に埋まり込んでいる。結果として、導電性発熱体5間の隙間を介して、接合層14が剥離層15に面接触している。さらには、接合層14は、発熱体の33内に露出している剥離層15の全域に面接触している。
なお、図16〜図19に示した例では、図示の簡略化のためにガラス板3、4を平らなもので示しているが、実際には、図13と同様に湾曲している。第1中間部材17はガラス板4に接合されるため、第1中間部材17もガラス板4の形状に合わせて湾曲した形状となる。
次に、図17に示されているように、第1中間部材17の発熱体シート12の透明基材11を除去して、第2中間部材18(合わせガラス用中間部材)を作製する。図17に示された例において、発熱体シート12の透明基材11を、剥離層15を用いて第1中間部材17から剥離し、第1中間部材17から除去する。剥離層15として、透明基材11との密着性と比べて、接合層14及び導電性発熱体5との密着性が相対的に低い層を有する界面剥離型の剥離層15を用いた場合、剥離層15と接合層14及び導電性発熱体5との間で剥離される。この場合、剥離層15が、接合層14と導電性発熱体5側に残らないようにすることができる。すなわち、透明基材11は、剥離層15とともに、第1中間部材17から除去される。このようにして透明基材11及び剥離層15が除去された第1中間部材17において、導電性発熱体5間の隙間内に、接合層14が露出するようになる。
その一方で、剥離層15として、接合層14及び導電性発熱体5との密着性と比べて、透明基材11との密着性が相対的に低い界面剥離型の剥離層15を用いた場合には、剥離層15と透明基材11との間で剥離が生じるようになる。剥離層15として、複数層のフィルムを有し、接合層14及び導電性発熱体5や、透明基材11との密着性と比べて、当該複数層間相互の密着性が相対的に低い層間剥離型の剥離層15を用いた場合には、当該複数層間で剥離が生じるようになる。一方、剥離層15として、連続相としてのベース樹脂中に分散相としてのフィラーを分散させた凝集剥離型の剥離層15を用いた場合には、剥離層15内での凝集破壊による剥離が生じる。
第2中間部材18においても、接合層14は、第1の面14a及び第2の面14bを有しており、導電性発熱体5が、接合層14の第1の面14aに少なくとも部分的に埋め込まれている。
以上のようにして製造された合わせガラス10を図18に示す。合わせガラス10は、一対のガラス板3,4と、一対のガラス板3,4の間に配置され、一対のガラス板3,4を接合する接合層14と、接合層14と一対のガラス板3,4の一方との間に配置された導電性発熱体5と、を有している。この合わせガラス10は、上述したように、発熱体シート12を用いて製造することができる。発熱体シート12の導電性発熱体5は、種々の材料および種々の方法を用いて、透明基材11上に作製することができ、さらに、所望のパターンを高精度に付与することもできる。したがって、導電性発熱体5を構成する波線発熱体8での光の拡散や回折による視認性への悪影響を低減させることが可能となる。また、導電性発熱体5と一対のガラス板3,4の一方とが接触しているので、導電性発熱体5によるガラス板3,4の加熱効率を上げることができる。さらに、合わせガラス10内の界面数を低減することができ、且つ、合わせガラス10全体の厚みを小さくすることができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下を抑制することができる。加えて、合わせガラス10全体の重量を軽くすることができ、車両の燃費改善に寄与する。
また、図示した発熱体シート12は、ガラス板3,4と面接触している。このような合わせガラス10では、発熱体シート12によるガラス板11の加熱効率を一層上げることができる。
また、図18の合わせガラス10では、湾曲したガラス板3,4と発熱体シート12との間に透明基材11が存在しないので、一対のガラス板3,4が湾曲していても、接合層14及び導電性発熱体5がガラス板3,4の湾曲に追従しやすくなる。すなわち、透明基材11が,一対のガラス板3,4間でしわを発生させてしまうといった不具合を解消することができる。
また、図16〜図18に示した製造方法は、透明基材11と、透明基材11上に設けられた剥離層15と、剥離層15上に設けられた導電性発熱体5と、を有する発熱体シート12に、導電性発熱体5の側から、接合層14を介してガラス板4を接合する工程と、透明基材11を除去する工程と、接合層14に、ガラス板4に対面する側とは反対の側から、他のガラス板3を接合する工程と、を有する。この例では、透明基材11を第1中間部材17から剥離する際に、接合層14及び導電性発熱体5がガラス板4に保持されているので、透明基材11の剥離が容易となる。また、発熱体シート12への接合層14及びガラス板4の接合を一度に行うので、工程数を削減できる利点がある。
なお、上述のように、剥離層15として、接合層14及び発熱体シート12との密着性と比べて、透明基材11との密着性が相対的に低い界面剥離型の剥離層を用いた場合には、剥離層15と透明基材11との間で剥離が生じるようになる。剥離層15として、複数層のフィルムを有し、接合層14及び発熱体シート12や、透明基材11との密着性と比べて、当該複数層間相互の密着性が相対的に低い層間剥離型の剥離層を用いた場合には、当該複数層間で剥離が生じるようになる。剥離層15として、連続相としてのベース樹脂中に分散相としてのフィラーを分散させた凝集剥離型の剥離層を用いた場合には、剥離層15内での凝集破壊による剥離が生じる。これらの剥離層15を用いた場合、剥離層15を用いて透明基材11が除去された第2中間部材18において、剥離層15の少なくとも一部が接合層14及び発熱体シート12側に残る。したがって、波線発熱体8間の隙間内に、接合層14が露出していない状態が生じる。この場合、第2中間部材18にガラス板4を積層する際、第2中間部材18とガラス板4との間に更なる接合層13を設けることが、ガラス板11の確実な接合を確保する上で、好ましい。この場合、接合層14及び発熱体シート12側に残った剥離層15は、発熱体シート12を支持する支持層19となる。その結果得られる合わせガラス10は、図19に示すように、一対のガラス板3,4と、一対のガラス板3,4の間に配置された一対の接合層14,13と、一対の接合層14,13の間に配置された支持層19と、一対の接合層14,13の一方と支持層19との間に配置され、支持層19に支持された発熱体シート12と、を有するようになる。
上述したように、本実施形態による曲線発熱体32は、1/4周期ごとに周期と振幅が異なる複数の第1周期曲線30を繋げたものである。発熱体シート12内の各曲線発熱体32が、1/4周期ごとに周期と振幅が異なる複数の第1周期曲線30を繋げたものか否かは、例えば、図20の処理手順にて判断できる。
まず、対象となる発熱体シート(以下、対象物)内の発熱体の外観を2次元スキャナで撮像する(ステップS21)。次に、撮像した画像データの中から個々の発熱体を抽出し、抽出した発熱体の線幅を最小化(細線化)する(ステップS22)。次に、細線化した発熱体を構成する複数の第1周期曲線30を抽出する(ステップS23)。次に、各第1周期曲線30の1/4周期の長さと振幅を検出する(ステップS24)。次に、ステップS23で検出した各第1周期曲線30の1/4周期の長さと振幅が不規則であるか否かを判定する(ステップS25)。ステップS24の判定処理は、簡単には、連続した複数の第1周期曲線30の振幅が一致せず、かつ1/4周期の長さも一致しなければ、不規則であると判断すればよい。
このように、本実施形態では、半周期未満の複数の第1周期曲線30を繋げて各曲線発熱体を形成し、各第1周期曲線30の形状を不規則にするため、各曲線発熱体の周期性が弱くなり、光芒やチラツキを抑制できるとともに、熱ムラや濃淡ムラも抑制できる。