JP6877135B2 - 小麦膨化食品 - Google Patents

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Description

本発明は、焼成時の窯落ちや腰折れ、及び焼成後の経時的な収縮が抑制され、かつ食感が軽くてソフトな小麦膨化食品に関する。
近年、消費者の嗜好の多様化に合わせて、様々なパン類及びケーキ菓子製品等の小麦膨化食品が発売されている。特に、ふっくらしてボリューム感がある外観を有し、ソフト感(ふんわり感)及びしっとり感等の食感を有する小麦膨化食品に対するニーズがある。
小麦膨化食品は、焼成前の生地中に、酵母やベーキングパウダー等で気泡を発生させ、その気泡が焼成時に膨らむことで得られるが、この気泡を支える気泡膜は、小麦粉又は卵等に含まれるタンパク質によって強度が保たれている。
ふっくらしてボリューム感があり、ソフトでふんわりした食感の小麦膨化食品を得ようとする場合は、小麦膨化食品中の気泡の体積をなるべく多くすることが望ましい。その場合、小麦膨化食品中の気泡膜を形成ずるタンパク質の量を減らし、より気泡膜を薄くすることが必要となる。ゆえに、パンの場合は水を増やす、すなわち多加水の生地を用いて製造し、あるいは、スポンジケーキ等の卵を使用する小麦膨化食品の場合は卵の量を減らして製造する。
しかしながら、タンパク質の量を減らすと、膨化時に気泡膜が耐え切れずに気泡が壊れて逆に生地が落ち込む、いわゆる「窯落ち」現象が起こりやすいことが知られている。窯落ちを起こすと、仕上がり時の外観の美しさを損ねるだけでなく、ボリューム感、ソフトな食感も損なわれてしまう。
したがって、タンパク質の量を減らして気泡膜を薄くさせながらも、同時に気泡膜の強度を上げて、気泡膜を維持することで、ふっくらしてボリューム感があり、ソフトでふんわりした食感の小麦膨化食品を得る技術が求められている。
小麦膨化食品の製造において、タンパク質の量を減らしながら、窯落ちを抑制する方法としては、例えば、焙焼後のケーキ類を逆様に吊るした状態で常温まで冷却する方法(例えば、特許文献1参照。)、生地に植物ステロール類(例えば、特許文献2参照。)、ジグリセリン脂肪酸エステル(例えば、特許文献3参照。)、大豆タンパク質の加水分解物(例えば、特許文献4参照。)、又はサイリウムシードガムとタマリンドシードガムとの混合物(例えば、特許文献5参照。)を配合する方法、卵を大豆に代替する方法(例えば、特許文献6参照。)等が挙げられる。
一方、小麦膨化食品において、セルロースを配合することで、例えば、粘着性の改善(例えば、特許文献7参照。)、生地のダレ及び酵母による発酵による膨れ(巣立ち)の改善(例えば、特許文献8参照。)、及び比重の大きな具材の分散(例えば、特許文献9参照)等ができることが知られている。
特開2004−267038号公報 特開2007−267715号公報 特開平5−284897号公報 特開2001−57842号公報 特開2006−34284号公報 特開2012−130278号公報 特公平6−61212号公報 特開昭63−304937号公報 特開2013−226103号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、逆様に吊るすための特別な装置の導入が不可欠であり、連続大量生産には適した方法ではない。
また、特許文献2〜6に記載の方法では、配合する物質がそれぞれ独特の風味を有することから、小麦膨化食品の風味が悪化する問題があった。また、気泡膜を補強することにより、硬い食感となりやすく、ふんわりとソフトな食感を出すことは困難であった。特に、植物ステロールは、体内に蓄積されると、細胞膜の柔軟性を奪い、脳卒中を引き起こすとも言われており、近年は植物ステロールの食品への使用は控えられる傾向にあった。
また、特許文献7〜9に記載のセルロースを配合する方法では、食感及び風味を保ちながら、膨化時の窯落ちや、腰折れを十分に抑制することは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、風味が悪化することを防ぎつつ、膨化時の窯落ちや腰折れ、膨化後の経時的な収縮が抑制され、ボリューム感があり、食感が軽くてソフトな小麦膨化食品を提供する。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロース製剤を含む小麦膨化食品において、風味が悪化することを防ぎつつ、膨化時の窯落ちや、膨化後の経時的な収縮を抑制して、ボリューム感があり、ソフトな食感の小麦膨化食品が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1] セルロース製剤及び卵タンパク質を含む、小麦膨化食品であって、前記セルロース製剤が晶セルロース粉末であり、前記セルロース製剤の平均粒径が15μm以上であり、前記セルロース製剤の配合量が、固形分換算で1.47質量%以上3質量%以下であり、前記卵タンパク質の配合量が、固形分換算で3.5質量%以上質量%以下であり、密度が0.20g/cm 以下であり、テクスチャーアナライザー(TA.XT plus型)を用い、測定治具:HDP/BSG(ギロチン型)、温度:25℃、Mode:Measure Force in compression、Option:Returen to start、Pre−test speed:5mm/s、Post−test speed:1mm/sとし、Triggar force:5g、Distance:30mmとして測定した、押込荷重が10Nを超える押込距離が15mm以上、かつ押込最大荷重が50N以下であり、前記小麦膨化食品がスポンジケーキ類である、小麦膨化食品。
[2]前記セルロース製剤の平均粒径が30μm以上90μm未満である、[1]に記載の小麦膨化食品。
]油脂類の配合量が、固形分換算で10質量%未満である、[1]又は[2]に記載の小麦膨化食品。
]高さが3cm以上である、[1]〜[]のいずれか一つに記載の小麦膨化食品。
本発明によれば、風味が悪化することを防ぎつつ、膨化時の窯落ちや腰折れ、膨化後の経時的な収縮が抑制され、ボリューム感があり、食感が軽くてソフトな小麦膨化食品を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」と称する場合がある。)について詳細に説明する。以下に示す本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
≪小麦膨化食品≫
一実施形態において、本発明は、セルロース製剤を含み、密度が0.30g/cm未満、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上、かつ押込最大荷重が55N以下である小麦膨化食品を提供する。
本実施形態の小麦膨化食品は、風味が悪化せず、膨化時の窯落ちや腰折れ、膨化後の経時的な収縮が抑制され、ボリューム感があり、食感が軽くてソフトである。
従来の小麦膨化食品において、密度が0.30g/cm以下、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上、かつ押込最大荷重が55N以下という条件を同時に満たすことは困難であった。気泡膜を全体的に薄く、硬くするために、糊剤を添加すれば、最大押込荷重を小さくすることは可能であるが、その場合は押込距離が10Nを超える押込距離を13mm以上にすることはできなかったためである。
また、密度が0.30g/cm以下で、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上で、かつ押込最大荷重を55N以下の小麦膨化食品は、「ふんわりとしてソフトな食感」が得られるものの、これは小麦膨化食品の製品としての機械的強度が低いことも意味しており、従来の技術では、このような小麦膨化食品を得ようとしても、その食品の製造過程において焼成時に上面が凹む「窯落ち」や、側面の中央部が内側に折れ曲がって外観を損なう「腰折れ」(ケーブイン又はケービング等と称する場合もある。)が発生しやすくなるという問題があった。なお、「腰折れ」は、小麦膨化食品の内部が膨化時又は膨化後に、強度が耐え切れずに収縮することで起こる現象であり、「窯落ち」と根本的には同じ現象である。また、「小麦膨化食品の内部」とは、例えば、食パンの場合は、いわゆる「耳」の部分より内側にある、「クラム」と呼ばれる部分であり、スポンジケーキ類の場合は、スポンジケーキの硬質化した表面層よりも内側にある、いわゆる「スポンジ」状の部分を意味する。
特に、製造スケールが大きくなると、パンであれば耳の部分、スポンジケーキであれば周辺の硬い部分の比率が、パンのクラムや、スポンジケーキのスポンジの部分に対して減少していくため、さらに「窯落ち」や「腰折れ」は発生しやすくなる問題があった。
これに対して、本発明らは、小麦膨化食品に、適量の特定のセルロース製剤を添加することで、密度が0.30g/cm未満でボリューム感のある小麦膨化食品で、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上で、かつ押込最大荷重を55N以下として、ふんわり、かつソフトな食感を維持しながらも、窯落ちや腰折れ等を同時に抑制することが可能であることを見出した。
本実施形態の小麦膨化食品において、ふんわり、かつソフトな食感を維持しながらも、窯落ちや腰折れなどを同時に抑制することが可能な理由としては、セルロースは水に不溶で生地中には分散しないため、小麦膨化食品の生地の中に点在することで、膨化時に、気泡膜の所々にセルロースが点在する形となり、気泡の膨化自体は抑制せず、適度に気泡膜の構造を補強することができるためであると推測される。
<小麦膨化食品の種類>
本明細書における「小麦膨化食品」とは、小麦粉を使用した食品であり、焼成、蒸し、フライなどの加熱によって小麦粉を含有する生地を膨化させた食品を意味する。具体的には、例えば、洋菓子類、和菓子類、パン類等が挙げられる。
(洋菓子類)
本実施形態における洋菓子類としては、例えば、スポンジケーキ類、バターケーキ類、シュー菓子類、発酵菓子類、フィユタージュ類、ワッフル類、デザート菓子類等が挙げられる。中でも、本実施形態における洋菓子類としては、軽い食感が求められることから、スポンジケーキ類、シュー菓子類、又はフィユタージュ類が好ましく、スポンジケーキ類がより好ましい。
また、一般に、「スポンジケーキ」とは、小麦粉・鶏卵・砂糖を主材料として、必要に応じて膨化剤などを副原料として、スポンジ状に焼き上げたものを意味する。
本実施形態におけるスポンジケーキ類としては、スポンジケーキを土台としたショートケーキ、デコレーションケーキ、ロールケーキ、シフォンケーキ等の総称を意味する。これらのスポンジケーキ類は、土台を形成している、いわゆるスポンジ部分と、生クリーム等のいわゆるデコレーション部分に分けられる。
スポンジケーキ類のスポンジ部分において、焼成時に膨らみが足りずにボリューム感が不足し、焼成時に膨らんでも常温で放置して冷却する際にスポンジケーキ類の上面の一部が陥没し、全体的に萎んでボリュームが低下し外観が悪化する(窯落ち現象)場合がある。とりわけ工場などで大量生産する場合には、製造条件の微調整が難しいことから窯落ち現象が起こりやすく、製品ロスにつながる問題が知られている。
本実施形態においては、上述のとおり、セルロース製剤を配合し、密度が0.30g/cm未満、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上、かつ押込最大荷重が55N以下とすることで、スポンジケーキ類のスポンジ部分の風味が悪化することを防ぎつつ、膨化時の窯落ちや腰折れ、膨化後の経時的な収縮が抑制され、ボリューム感があり、軽くてソフトな食感を達成することができる。
(和菓子類)
本実施形態における和菓子類としては、例えば、蒸し菓子類や焼き菓子類等が挙げられ、具体的には、例えば、どら焼き、桜餅、中花、金つば、つやぶくさ、茶通、唐まんじゅう、栗まんじゅう、げっぺい、桃山、カステラまんじゅう、カステラ等が挙げられる。
(パン類)
本実施形態におけるパン類とは、食パン、菓子パン、フランスパン、ライ麦パン、クロワッサン、ナン、蒸しパン、ベーグル、パイ、調理パン、パン粉等が挙げられる。中でも、本実施形態におけるパン類としては、食パンが好ましい。
食パンは、焼成時に上面が凹む「窯落ち」が起こりやすいことが知られている。また、見た目には窯落ちしていなくても、食パンの内部のクラム(白い部分)が凹んで、クラスト(耳)と剥離する、クラストフレーキングと呼ばれる現象が発生する場合がある。また、食パンを直方体の型に入れて焼く場合には、側面の中央部が内側に折れ曲がって外観を損なう「腰折れ」現象が発生することが知られている。食パンでこれらの現象が起こると、商品価値が劣り、不良品とされることもある。また、近年は、焼き上がり後の食パンの食感がふんわりとソフトなものが好まれているが、そのような食パンを作る場合は生地を作製する段階で水を多くする必要がある。しかし、水が多くなれば、気泡膜を構成するタンパク質の量が相対的に減ることから、より腰折れや窯落ちが起こりやすくなっており、この「窯落ち」及び「腰折れ」を防止する手段が望まれていた。
本実施形態においては、上述のとおり、セルロース製剤を配合し、密度が0.30g/cm未満、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上、かつ押込最大荷重が55N以下とすることで、風味が悪化することを防ぎつつ、膨化時の窯落ちや腰折れ、膨化後の経時的な収縮が抑制され、ボリューム感があり、ソフトな食感の食パンを得ることができる。
中でも、本実施形態の小麦膨化食品としては、スポンジケーキ類又はパン類であることが好ましい。
<物性>
(密度)
本実施形態の小麦膨化食品の密度の上限は0.30g/cm未満であることが好ましく、0.25g/cm以下であることがより好ましく、0.225g/cm以下であることがさらに好ましく、0.20g/cm以下であることが特に好ましい。
小麦膨化食品の密度が上記上限値以下であることにより、ボリューム感があり、かつふんわりとソフトな軽い食感の小麦膨化食品が得られる。
小麦膨化食品の密度の下限については、特に制限はないが、実質的に小麦膨化食品の形状を維持するためには、ある程度の密度が必要であることから、0.05g/cm以上であることが好ましく、0.10g/cm以上であることがより好ましく、0.15g/cm以上であることがさらに好ましい。
なお、ここでいう「小麦膨化食品の密度」とは、見かけ密度を意味し、小麦膨化食品の膨化している内部を2cm角の立方体状に切断して質量を測定し、前記質量を該体積である8cmで割ることで求められる。
本実施形態の小麦膨化食品がスポンジケーキである場合、密度は0.25g/cm以下であることが好ましく、0.20g/cm以下であることがより好ましく、0.185g/cm以下であることがさらに好ましい。スポンジケーキの密度が上記上限値以下であることにより、焼成時に膨化しないか、膨化しても気泡が破壊される「窯落ち」が起こることを防ぎ、焼成後の膨らみがなかったり、ケーキの上面の一部が陥没したり、経時的にスポンジケーキの高さが収縮することなく、ボリュームと食感と風味とのバランスを良好にすることができる。
また、スポンジ部分のしっとり感や食感を維持する観点から、スポンジケーキの密度は、0.15g/cm以上であることが好ましい。
(押込荷重、押込距離)
本実施形態の小麦膨化食品は、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上であり、14mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましい。
本発明の小麦膨化食品の押込荷重及び押込距離は、以下の方法で測定する。
1)まず、作製した小麦膨化食品の内部を2cm角の立方体形状に切断する。作製直後の小麦膨化食品は、常温まで放冷してから内部を切断する。すでに市場に流通しており、作製から時間が経過している場合は、適切な状態で保存されているものであれば、消費期限以内に切断すればよい。
2)次いで、テクスチャーアナライザーを用いた押し込み試験により測定する。
テクスチャーアナライザーとしては、例えば、TA.XT plus型(英弘精機株式会社製)を用いることができる。具体的には、テクスチャーアナライザー(TA.XT plus型)を用い、測定治具:HDP/BSG(ギロチン型)、温度:25℃、Mode:Measure Force in compression、Option:Returen to start、Pre−test speed:5mm/s、Post−test speed:1mm/sとし、Triggar force:5g、Distance:30mmとして測定する。
押込荷重が10Nを超える時の押込距離が長いほど、その食品が小さい力で縮むことから、その食品は「柔らかい」又は「ふんわりしたソフトな」食感となる。逆に、押込荷重が10Nを超える押込距離が短いほど、「硬い」又は「サクサクとした」食感となる。具体的には、押込荷重が10Nを超える押込距離が13mm以上であると、食品を噛んだ時に、本実施形態で所望する「ふんわりしてソフトな食感」を得られるようになる。
また、押込荷重が10Nを超える押込距離の上限に特に制限はないが、押込距離が大きすぎると、小麦膨化食品の膨化状態が維持できず、窯落ちや腰折れが起こることから、19mm以下が好ましい。
本実施形態の小麦膨化食品の押込最大荷重の上限は55N以下であり、50N以下であることが好ましく、45N以下であることがより好ましい。
本明細書における「押込最大荷重」とは、上記の測定方法で押込荷重及び押込距離を測定する際、測定される押込荷重の最大値であり、上記のギロチン型の測定治具で小麦膨化食品を押し込んでいき、最終的に破断される点を意味する。
小麦膨化食品の最大押込荷重が上記上限値以下の場合は、本実施形態で所望する「軽い食感」又は「ソフトな食感」を得られる。一方、上記上限値を超える場合、その食品は破断するために力を必要とすることから、「軽い食感」又は「ソフトな食感」が得られなくなる。
また、押込最大荷重の下限は特に制限はないが、押込最大荷重が小さ過ぎると小麦膨化食品の膨化状態が維持できず、窯落ちや腰折れが起こることから、10N以上が好ましく、20N以上がより好ましく、30N以上がさらに好ましい。
(形状)
本実施形態における小麦膨化食品の形状は特に限定されない。例えば、一般的な円柱形、直方体形、立方形に限らず、星形、ハート型等、自由な形状をとることができる。
(高さ)
本実施形態における小麦膨化食品の高さは3cm以上であることが好ましく、5cm以上であることがより好ましい。本実施形態の小麦膨化食品の高さが上記範囲であることにより、本実施形態の小麦膨化食品は密度が小さく、潰れにくいため、小麦膨化食品の厚みが増す場合でも、釜落ちや腰折れを有意に防ぐことができる。
なお、ここでいう「小麦膨化食品の高さ」とは、焼成時に鉛直下方向に向けた面を底面とし、底面から小麦膨化食品の最上部までの高さを意味する。
<配合成分>
本実施形態の小麦膨化食品に配合される成分を以下に詳細に説明する。
(セルロース製剤)
本実施形態の小麦膨化食品において、セルロース製剤を配合することで、小麦膨化食品の気泡膜構造を補強することが可能となり、ふんわりとしての食感の軽い小麦膨化食品を製造することを可能とする。
本実施形態において用いられるセルロース製剤とは、セルロースを含有する水不溶性繊維質物質の粉末を意味する。
また、セルロース製剤は、完全に無味無臭な食品添加物であるので、スポンジケーキの風味を変化させることがなく、やわらかさと食感を改善することが可能である。さらに、セルロース製剤は体内では食物繊維と同様に、消化されずに排出されるため、植物ステロール類、ジグリセリン脂肪酸エステル、ガム類と異なり、体内への蓄積による影響や、摂取カロリー量の増加等の問題がないことも利点である。
○原料
セルロース製剤の原料としては、天然セルロース系物質が好ましく、具体的には、例えば、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用してもよいし、また2種以上を混合したものを使用することも可能である。上述の原料を酸加水分解、酵素分解、アルカリ加水分解、又は爆砕処理等により特定の重合度に加水分解し、必要に応じ、摩砕、粉砕等の機械的処理を経て、粉末化したものを用いることが好ましい。
○種類
セルロース製剤としては、例えば、粉末セルロース、結晶セルロース粉末、結晶セルロース複合体等を使用することができる。中でも、本実施形態におけるセルロース製剤としては、粉末セルロース又は結晶セルロース粉末であることが好ましく、結晶セルロース粉末であることがより好ましい。
結晶セルロース複合体をセルロースとして用いた場合、とりわけ、水溶性高分子と高分子物質ではない親水性物質とを含む結晶セルロース複合体をセルロースとして用いた場合は、水分を多く含む生地の段階で攪拌、起泡する際に、結晶セルロース複合体からセルロースが一次粒子の大きさに解れて、小麦膨化食品の生地中で、15μm未満の平均粒径のセルロース粒子が増加する虞がある。
一方、粉末セルロースはパルプを粉砕したものであり、結晶セルロース粉末は、加水分解後の乾燥時に結晶セルロースの一次粒子が強固に水素結合しながら凝集してできた粉末であるから、水の存在下で攪拌、起泡時に力を加えても、平均粒径が15μm未満になることは稀である。そのため、膨化時は、セルロース粒子は気泡膜の間に適度に点在する形となり、生地の膨化を抑制することなく、同時に膨化後の気泡膜を適度に強化することができる。ゆえに、窯落ちや腰折れを抑制して、密度が0.25g/cm以下の小麦膨化食品としながらも、押込荷重を50N以下に留めて、ふんわりとソフトな食感を維持することができる。
ただし、粉末セルロースは、セルロースを粉砕して得たものであり、食べた時に繊維質な食感を感じることがあり、また、結晶セルロース粉末と比較して、同じ配合量の場合にやや小麦膨化食品の強度を高めにする傾向がある。セルロース原料を粉砕して得る際に、いわゆる「ささくれ」があるため、生地との接触面積が増える影響と考えられる。したがって、よりソフトで滑らかな食感を得るためには、結晶セルロース粉末を用いることがより好ましい。
・粉末セルロース
一般に、「粉末セルロース(粉末形態であるセルロース)」とは、セルロース系素材原料を、ヘミセルロース、リグニン等の非晶領域を除くことなく機械的に粉砕したものを意味する。例えば、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」に記載の、粉末セルロースに該当するものである。
粉末セルロースの平均重合度は、一般に440より大きいと規定されている。この値は、「第十五改正日本薬局方解説書(廣川書店発行)」の「確認試験(3)」に記載の、銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法に従い、測定することができる。
粉末セルロースとしては、具体的には、例えば、日本製紙(株)製のKCフロックシリーズ等が挙げられる。
・結晶セルロース粉末
一般に、「結晶セルロース粉末(結晶形態であるセルロース)」とは、例えば、木材パルプ、精製リンター等のセルロース系素材原料を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解等により解重合処理して非晶領域(ヘミセルロース、リグニン等)を除いた後、乾燥工程を経て得られる粉体状ものを意味する。平均重合度は、通常、10〜500程度である。
結晶セルロース粉末は、例えば、加水分解処理された天然セルロースを乾燥することにより得られる。この場合、加水分解処理により得られる反応溶液から、加水分解処理されたセルロースを含む固形分を単離し、これを適当な媒体に分散させて調製した分散液を乾燥してもよく、同加水分解溶液がそのままの状態でセルロース分散液を形成している場合は、この分散液を直接乾燥してもよい。
・結晶セルロース複合体
一般に、「結晶セルロース複合体」とは、主成分である結晶セルロースに水溶性高分子が複合化されたものを意味する。なお、ここでいう「複合化」とは、結晶セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、水溶性高分子で被覆された形態を意味する。したがって、結晶セルロース複合体は、結晶セルロース粉末と水溶性高分子とを単に混合した状態ではなく、水溶性高分子が結晶セルロース表面を被覆した状態である。そのため、結晶セルロース複合体を水系媒体中に分散させると、水溶性高分子が結晶セルロース表面から剥離することなく、表面から放射状に広がった構造を形成し、水中でコロイド状となる。そのため、結晶セルロース複合体の場合、セルロースは、乾燥させて一次粒子が凝集した粉体の状態からでも、元のセルロースの一次粒子の大きさに分散させることができる。
本明細書における「水溶性高分子」とは、親水性高分子物質のことを意味する。なお、ここでいう「親水性」とは、常温のイオン交換水に一部が溶解する特性を有することを意味する。定量的に親水性を定義すると、例えば、水溶性高分子0.05gを、50mLのイオン交換水に、(スターラーチップ等による)攪拌下で平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターを通過させた際に、水溶性高分子の1質量%以上が通過することであるといえる。
水溶性高分子としては、化学構造の一部に糖又は多糖を含むものが挙げられる。例えば、ジェランガム、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、グルコマンナン、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、カードラン、プルラン、デキストラン等の水溶性多糖類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ゼラチン等の糖を含まない水溶性高分子等が挙げられ、これらに限定されない。水溶性高分子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性高分子が水溶性多糖類である場合、結晶セルロースと複合体を形成する水溶性多糖類としては、陰イオン性多糖類が好ましい。一般に、「陰イオン性多糖類」とは、それを水中で分散又は溶解した際に、陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなるものを意味する。陰イオン性多糖類は、セルロースと複合化しやすいため好適である。
陰イオン性多糖類としては、上述の水溶性多糖類のうち、例えば、キサンタンガム、カラヤガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、HMペクチン、LMペクチン等が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は、1種のみを結晶セルロースと複合化してもよく、2種以上を組み合わせてセルロースと複合化してもよい。
結晶セルロース複合体は、さらに、例えば、澱粉加水分解物、加工澱粉等の比較的低分子量の多糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類;ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類;マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等の親水性物質を含んでいてもよい。上述の親水性物質は、水系媒体中にセルロースを分散させた際の、崩壊剤又は導水剤として機能する。
○平均粒径
本実施形態の小麦膨化食品に用いられるセルロース製剤の平均粒径の下限は、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
セルロース製剤中のセルロース粒子は、小麦膨化食品の膨化前の、攪拌及び起泡の段階で、水を含む生地の状態で攪拌力を受ける。このとき、セルロース製剤の平均粒径が上記下限値以上であることにより、セルロース粒子がその際の攪拌力で細かく分散し過ぎることなく、生地中のセルロース同士の接点が増加しすぎないため、焼成時にセルロース同士の水素結合等による小麦膨化食品の膨化自体の抑制を引き起こすことなく、所望の密度や押込荷重を得ることができる。
また、セルロース製剤の平均粒径の上限としては100μm以下であることが好ましい。セルロース製剤の平均粒径が上記上限値以下であることにより、例えば、口に入れた際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りの小麦膨化食品を提供することができる。
なお、本明細書における「セルロース製剤の平均粒径」とは、セルロース製剤を水に分散させた際の平均粒径、すなわち、セルロース粒子の水分散体の平均粒径であり、セルロース粒子全体の体積に対して、積算体積が50%になるときのセルロース粒子の球形換算直径のことを意味し、メジアン径とも呼ばれる。
セルロース製剤の平均粒径の測定方法としては、例えば、まず、セルロース製剤を1質量%濃度の純水懸濁液(すなわち、セルロース粒子の水分散体)として調製する。具体的には、固形分濃度が1%、セルロース粒子の水分散体の総量が1500mLとなるように、セルロース製剤と純水とを2L容のSUSビーカーに量り取り、汎用撹拌翼かい十字(半径35mm)を取り付けたプロペラ攪拌機(スリーワンモーター、HEIDON製、BL−600)を用いて、25℃、500rpmで20分間分散して調整する。
次いで、前記純水懸濁液(セルロース粒子の水分散体)を試料として、当該試料に対してレーザー回折法(例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置として、堀場製作所(株)製、商品名「LA−950」を用いて超音波処理1分間、屈折率1.20の条件で測定する等。)を実施することにより、平均粒径を測定することができる。前記レーザー回折法により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径を、上述のとおり、「セルロース製剤の平均粒径」と称する。
○平均重合度
本実施形態で用いるセルロース製剤において、セルロースの平均重合度の上限に限定はないが、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることがさらに好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方(廣川書店発行)」の「結晶セルロース確認試験(3)」に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。
平均重合度が上記上限値以下であることにより、生地との混合工程において、セルロースが攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、混合が促進されやすくなるため好ましい。
また、平均重合度は、小さいほど混合の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、10以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。
上記範囲にセルロースの平均重合度を制御する方法としては、例えば、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースやリグニン等の不純物も取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、セルロース複合体を製造する場合には、セルロースと水溶性ガムとに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、水溶性ガムとの複合化の制御が容易になる。
加水分解処理の方法は特に制限されないが、例えば、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
酸加水分解の方法として具体的には、例えば、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌しながら加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調整されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、20℃以上140℃以下(好ましくは、40℃以上100℃以下)の温度で、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
なお、加水分解時のセルロース系物質の分散液には、水の他、本件発明の効果を損なわない範囲であれば、有機溶媒を少量含んでいてもよい。
上記操作により得られた加水分解処理時のセルロース系物質の分散液は乾燥によって粉末にすればよい。加水分解反応後、洗浄及びpH調整した乾燥前のセルロース分散液のIC(電気伝導度)は300μS/cm以下であることが好ましく、150μS/cmであることがより好ましく、100μS/cm以下であることがさらに好ましい。
上記上限値以下であることにより、粒子の水中での分散性が良好であり、崩壊が良好となる。
加水分解処理、及びその後必要に応じて行われる撹拌により得られたセルロース粒子の分散体を噴霧乾燥することにより、セルロース粉末が得られる。
噴霧乾燥を行う品温は、130℃未満であることが好ましく、100℃未満であることより好ましい。なお、本明細書における「品温」とは、噴霧乾燥時の入口温度ではなく排風温度のことを意味する。噴霧乾燥ではセルロース粒子の分散体中の凝集粒子が全方向からの熱収縮応力によって圧密され、緻密化(重質化)して流動性が良好なものとなり、また凝集粒子間の水素結合が弱いために崩壊性が良好なものになる。
乾燥前のセルロース粒子の分散体の濃度の上限は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。セルロース粒子の分散体の濃度が上記上限値以下であることにより、乾燥中に粒子が凝集しすぎることがないため、乾燥後の粒径が増大せず、スポンジケーキ類等の気泡膜の構造強化の効果を大きくすることができる。
また、セルロース粒子の分散体の濃度の下限については、1質量%以上であることが好ましい。セルロース粒子の分散体の濃度が上記下限値以上であることにより、生産性の観点から、低コストを実現できる。
また、本発明の効果を損なわない程度に、乾燥後に粉砕してもよい。
○配合量
本実施形態の小麦膨化食品におけるセルロース製剤の配合量としては、固形分換算で0.1質量%以上5質量%以下である。
本実施形態において、セルロース製剤の配合量の下限は、小麦膨化食品に対して0.1質量%以上であり、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
また、セルロース配合量の上限は、小麦膨化食品に対して5質量%以下であり、3質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましい。
セルロース製剤の配合量が上記範囲内であることにより、小麦膨化食品の腰折れや窯落ち抑制に好適な効果を奏し、さらに軽くてソフトな食感、風味の良い小麦膨化食品を提供することができる。
なお、セルロース製剤の固形分換算の配合量は、下記[1]で表される式を用いて、計算される。
{(セルロース製剤の仕込重量[g])×(セルロース製剤の固形分率[%])/100}/{(小麦膨化食品重量[g])×(小麦膨化食品の固形分率[%])/100}×100 [1]
セルロース製剤及び小麦膨化食品の固形分率は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所(kett)製、型番:FD−240)を用いて、まずセルロース製剤及び小麦膨化食品の質量を測定し、次いでセルロースを質量変化がなくなるまで105℃で維持し、質量変化がなくなったときの質量を測定し、下記[2]で表される式を用いて、算出した。
固形分率[%]={(加熱後の質量[g])/(加熱前の質量[g])}×100 [2]
ここでいう「セルロース製剤」の配合量は、例えば、粉末セルロースや結晶セルロース粉末のようにセルロース単体をスポンジケーキ類に配合する場合は、セルロース自体の質量より算出され、セルロース複合体の形態でスポンジケーキに配合する場合は、該セルロース複合体の質量から算出される(すなわち、該セルロース複合体中のセルロース含量ではない)。
(スポンジケーキ類の配合成分)
次いで、本実施形態の小麦膨化食品がスポンジケーキ類である場合の配合成分について、以下に説明する。
○卵タンパク質
・原料
本実施形態の小麦膨化食品で用いられる卵タンパク質の原料としては、食用卵として流通している卵を用いることができ、鳥卵を用いることが好ましい。鳥卵としては、例えば、鶏卵、ウズラ卵、アヒル卵、ダチョウ卵、ハト卵が挙げられ、これらを組合せて使用することもできる。中でも、本実施形態における卵タンパク質の原料としては、加工性及び味の点で、鶏卵であることが好ましい。
卵は、生卵をそのまま用いることも、乾燥された加工卵を用いることもできる。中でも、本実施形態における卵タンパク質の原料としては、加工性の点で、生卵であることが好ましい。
・配合量
本実施形態のスポンジケーキ類は、卵タンパク質を含む。
本実施形態の小麦膨化食品における卵タンパク質の配合量の上限は、固形分換算で10質量%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが特に好ましい。
卵タンパク質の配合量は、多いほど風味は良くなるが、多過ぎると、気泡膜を形成する卵タンパク質の量も多くなることから、スポンジケーキ類は密度が高く、硬さのあるものとなりやすい。よって、卵タンパク質の配合量が上記上限値以下であることにより、ふっくらしてボリューム感があり、ソフトでふんわりした食感を出すことができる。
また、卵タンパク質の配合量の下限は、固形分換算で1.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましく、4.5%以上であることが特に好ましい。
卵タンパク質の配合量が上記下限値以上であることにより、スポンジケーキ類中の卵の風味の低下を防ぎつつ、気泡膜に適度な強度を与え、密度0.30g/cm未満のスポンジケーキ類を得やすくなる。
卵タンパク質の固形分換算の配合量は、下記[3]で表される式で計算される。
{(卵の仕込重量[g])×0.123}/{(小麦膨化食品重量[g])×(小麦膨化食品の固形分率[%])/100}×100 [3]
小麦膨化食品の固形分率は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所(kett)製、型番:FD−240)を用いて、まず小麦膨化食品の質量を測定し、次いで小麦膨化食品を質量変化がなくなるまで105℃で維持し、質量変化がなくなったときの質量を測定し、下記[4]で表される式を用いて、算出した。
固形分率[%]={(加熱後の質量[g])/(加熱前の質量[g])}×100 [4]
なお、卵中のタンパク質の重量は、食品成分データベース(文部科学省)を基に、全卵(生)の12.3%がタンパク質であると見なして算出した。
○小麦粉
本実施形態のスポンジケーキ類に用いられる小麦粉は、通常スポンジケーキ類に用いられるものであれば使用することができる。例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉等が挙げられる。中でも、生地の延性の観点から、強力粉、中力粉、薄力粉が好ましく、生地の延性及び焼成時の膨化のしやすさの観点から、薄力粉がより好ましい。
一般に、「強力粉」とは、タンパク質の割合が12質量%以上のものであり、「中力粉」とは、タンパク質の割合が11.9〜8.6質量%のもので、「薄力粉」とは、タンパク質の割合が8.5質量%以下のものである。これらのうち、1種の穀粉を使用しても、2種以上を混合したものを使用してもよい。
○糖類
本実施形態のスポンジケーキ類には、糖類を適宜配合してもよい。糖類しては、例えば、ショ糖(砂糖)、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖(グルコース)、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、トレハルロース、ネオトレハロース、パラチノース、D−キシロース、澱粉加水分解物、デキストリン等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類を挙げることができる。これらの糖類は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でもショ糖が味の点で好ましい。
○その他配合成分
本実施形態のスポンジケーキ類において、前述の小麦粉、糖類、卵の他にも、効果に影響を与えない限りにおいて、通常の食品と同様の原料を用いることができる。かかる原料として、例えば、ベーキングパウダー、重曹等の膨張剤;甘味料;起泡性乳化油脂、マーガリン、ショートニング、乳化剤、バター等の油脂類;牛乳、濃縮乳、生クリーム、脱脂粉乳、練乳、チーズ等の乳製品;果実、果実加工品等の果実類;ココア、ココアパウダー、カカオマス、カカオバター、チョコレート等のチョコレート類;アーモンド、カシューナッツ、マカデミアナッツ等のナッツ類;コアントロー、シェリー酒、ブランデー等の洋酒類;香料、酸味料、食塩等の調味料;着色料、増粘剤、酸化防止剤等が挙げられる。
・油脂類
また、本実施形態のスポンジケーキ類に用いられる油脂類としては、起泡性乳化油脂であることが好ましい。起泡性乳化油脂を用いることにより、起泡力を補うことができ、密度の小さいスポンジケーキ類を得やすい傾向にある。
起泡性乳化油脂としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。中でも、起泡性乳化油脂としては、風味及び摂取量の観点から、ショ糖脂肪酸エステル又はグリセリンが脱水縮合していないグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、特に風味の点で、ショ糖脂肪酸エステルがより好ましい。
本実施形態におけるスポンジケーキ類において、油脂類の配合量の上限は、固形分換算で10質量%未満であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。ただし、本明細書における「油脂類の配合量」には、小麦粉や卵など、他の原料にもともと含まれる油脂は含まない。
風味や食感を改善する観点であれば、油脂量は上記上限値以上であっても多くても特に問題は無いが、近年の健康志向の高まりから、スポンジケーキ類においても低カロリー化のニーズが高まり、油脂類の使用が控えられる傾向にある。油脂量が上記上限値以下であることにより、本実施形態におけるスポンジケーキ類は、密度が小さく、ふんわりしてソフトな食感を有するため、油脂量が少ない場合でも良好な風味を維持することができる。
油脂類が起泡性乳化油脂である場合、配合量の上限は、入れ過ぎると風味の悪化や、逆に起泡力が低下するため、固形分換算で10%未満であることが好ましく、7.5%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
また、配合量の下限は、起泡力を出すためには、0.1%以上が好ましく、0.5%がより好ましく、1%以上がさらに好ましい。
(パン類の配合成分)
次いで、本実施形態の小麦膨化食品がパン類である場合の配合成分について、以下に説明する。
○小麦粉
本実施形態のパン類に用いられる小麦粉は、通常パン類に用いられるものであれば使用することができる。小麦粉は小麦を挽いて作られた粉末のことであり、その中に含まれるタンパク質の割合と形成されるグルテンの性質とによって薄力粉、中力粉、強力粉、浮き粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉等に分類されるが、いずれも本実施形態で用いることができる。また、これらは、複数用いることもできる。
○油脂類
本実施形態のパン類に用いられる油脂類としては、通常パン類に用いられるものであれば配合することができる。動物性、植物性のいずれでも良く、バター、ラード、マーガリン、ショートニングなどの可塑性を持ったもの、液状油、又はそれらに水素添加した硬化油(固体脂)、エステル交換油等が挙げられる。また、これら複数を組み合わせて用いることができる。
油脂類の配合量としては、製パン作業性及び風味の点から、小麦粉100質量部に対し、0.5質量部以上70質量部以下であることが好ましく、1質量部以上60質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上50重量部質量部以下であることがさらに好ましい。
○乳化剤
本実施形態のパン類に用いられる乳化剤としては、通常パン類に用いられるものであれば配合することができる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、レシチン誘導体等が挙げられる。また、これら複数を組み合わせて用いることもできる。
乳化剤の配合量は、生地の調整時の作業性、食感、及び保存性の点から、小麦粉100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上7質量部以下であることがさらに好ましい。
○糖類
本実施形態のパン類に用いられる糖類は、食品に供し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、アラビノース、キシロース、リボース、ガラクトース、ガラクツロン酸、ウロン酸、ラムノース、フコース、マンノース、又はこれらを構成成分とする還元糖を有する物質や混合物である水あめ等が挙げられ、単独又は複数を混合して使用出来る。
糖類の配合量は、小麦粉100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
○イースト
本実施形態のパン類に用いられるイーストは、生系イースト、ドライ系イーストのどちらでも良い。
○その他配合成分
本実施形態のパン類において、前述の小麦粉、油脂類、乳化剤、糖類、イーストの他にも、効果に影響を与えない限りにおいて、通常の食品と同様の原料を用いることができる。かかる原料としては、上述の(スポンジケーキ類の配合成分)の「○その他配合成分」に記載のものと同様のものが挙げられる。
(その他添加剤)
本実施形態における小麦膨化食品は、さらに、保存料、酸化防止剤、甘味料、天然着色料、合成着色料、品質改良剤、調味料、酸味料、強化剤、香料、酵素、膨張剤等を配合しても良い。
○保存料
保存料としては、例えば、過酸化水素、ソルビン酸及びソルビン酸K、デヒドロ酢酸Na、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸及び安息香酸Na、プロピオン酸及びその塩類、次亜塩素酸Na、酢酸、酢酸ナトリウム、グリシン、エチルアルコール、ポリリジン及びその製剤、プロタミン及びその製剤、リゾチーム及びその製剤、ペクチン分解物、アラニン、チアミンラウリル硫酸塩、ユッカフォーム抽出物、キトサン及びその製剤、プロピレングリコール等が挙げられる。
○酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、L−アスコルビン酸及びアスコルビン酸Na、エリソルビン酸及びエリソルビン酸Na、ミックストコフェノール等が挙げられる。
○甘味料
甘味料としては、例えば、サッカリン、サッカリンNa、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、甘草抽出物、ステビア、ソーマチン、グリチルリチン、ネオテーム等の高甘味度甘味料;異性化糖、水あめ、ブドウ糖、果糖、還元水あめ、ソルビトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、キシロース、カップリングシュガー、マルトース、乳糖等の低甘味度甘味料等が挙げられる。
○天然着色料
天然着色料としては、例えば、β−カロチン色素、抽出カロチン色素、ビタミンB2、銅クロロフィル及び銅クロロフィルNa、アナトー、アカキャベツ、アカダイコン、イカスミ、植物炭末、ウコン、エルダーベリー、カカオ、カロブ、クロロフィル、クチナシ黄、クチナシ青、クチナシ赤、グレープスキン、コチニール、コーリャン、シソ、シアナット、スピルリナ、タマリンド、タマネギ、トマト、パプリカ、ビートレッド、ブドウ果汁、ベニコウジ、ベニバナ黄、ベニバナ赤、マリーゴールド、ムラサキイモ、ムラサキコーン、ラック、カラメル等が挙げられる。
○合成着色料
合成着色料としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、赤色3号レーキ、赤色40号レーキ、黄色4号レーキ、黄色5号レーキ、青色1号レーキ、青色2号レーキ等が挙げられる。
○品質改良剤
品質改良剤としては、例えば、ステアロイル乳酸Ca、フィチン酸、プロピレングリコール、リン酸Ca、リン酸Na、ピロリン酸Na、ポリリン酸Na、メタ・ヘキサリン酸Na、リン酸K、リン酸アンモニウム、リン酸、焼みょうばん、生みょうばん、ホエーたん白、カゼイン、カゼイネート、卵白、プラズマパウダー、粉末状大豆たん白、粉末状小麦たん白、ペースト状小麦たん白、EDTA塩類、加工デンプン等が挙げられる。
加工デンプンとして好適な例としては、例えば、吸水性の高いアルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン;アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化架橋デンプン、リン酸架橋デンプンを含む架橋デンプン等が挙げられる。
密度が小さく、軽いパン類を得ようとする場合、生地中の加水量を多くして製造する必要があるが、吸水性の高い加工デンプンを配合すると、水を保持して生地のべたつきを防ぐとともに、生地のダレを防ぎ、生地の状態での密度を低く保つことが可能になるためである。また、この状態にさらに上述のセルロース製剤を組み合わせることにより、さらに膨化時の気泡膜構造を強くすることができ、焼成後の密度をより小さく維持することができるようになる。中でも、加工デンプンとしては、吸水性と風味等のバランスから、部分アルファー化デンプンが好ましい。
○調味料
調味料としては、例えば、グルタミン酸Na、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、エキス系調味料、酵母エキス、グリシン、アラニン等が挙げられる。
○酸味料
酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸液、グルコノデルタラクトン等が挙げられる。
○強化剤
強化剤としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、葉酸、パトテン酸Ca、グルコン酸Ca、乳酸Ca、天然Ca、ミルクCa等が挙げられる。
○香料
香料としては、例えば、ピーチフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー等のフルーツフレーバー類、アロマフレーバー類、マルトール、フラネオール等のシュガーフレーバー類、ソトロン等のフレーバーエンハンサー類、フラボノイド類、カカオマス等のポリフェノール類、プリカーサーフレーバー類、ミートフレーバー類、コーヒーフレーバー類、ミルクフレーバー、メントール類、デカラクトン類等が挙げられる。
○酵素
酵素としては、例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルコースイソメラーゼ、プロテアーゼ、レンネット、パンクレアチン、パパイン等が挙げられる。
○膨張剤
膨脹剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、DL−酒石酸水素カリウム、L−酒石酸水素カリウム、アジピン酸、L−アスコルビン酸、塩化アンモニウム又はベーキングパウダー等が挙げられる。
<小麦膨化食品の製造方法>
本実施形態の小麦膨化食品の製造方法の代表例として、スポンジケーキ類又はパン類の製造方法について以下に詳細に説明する。
(スポンジケーキ類の製造方法)
本実施形態におけるスポンジケーキ類の製造方法としては、例えば、全卵と砂糖とを熱を付け充分に泡立て小麦粉を合わせる共立て法、卵を卵黄及び卵白に分けて泡立てる別立て法、全材料を一緒に泡立てるオールインミックス法等、通常のスポンジケーキに製造方法に準じて起泡させた生地を型に流し込み、オーブン等で焼成する従来の一般的なスポンジケーキの製造方法により得られる。
中でも、全卵と砂糖とに熱を付け充分に泡立て小麦粉を合わせる共立て法において、全卵と砂糖に熱を付けて泡立てる際に、起泡性乳化油脂を添加して、その後小麦粉を合わせる方法が、生地を起泡させやすいため好ましい。
生地の起泡には、ハンドミキサー、卓上ミキサー、縦型ミキサー、連続ホイッパー等の通常のスポンジケーキの生地の起泡に使用される機械を用いることができる。
上記の装置で得られるスポンジケーキ生地は、比重が小さい程、起泡が進んで生地中に多くの気泡を抱き込んでいることを意味する。
本実施形態の小麦膨化食品の焼成後の密度の上限が0.30g/cm未満であるスポンジケーキを得るためには、焼成前の生地の密度を特定の範囲に調整することが好ましい。
焼成前のスポンジケーキ生地の密度の上限は、0.45g/cm以下であることが好ましく、0.425g/cm以下であることがより好ましく、0.40g/cm以下であることがさらに好ましい。
焼成前のスポンジケーキ生地の密度下限については、あまり起泡させ過ぎるとスポンジケーキの密度が小さくなりすぎて隙間ができたり、強度が低下して窯落ちして逆に焼成後のスポンジケーキの密度が高くなったりすることや、起泡させるためのミキサーやホイッパーでの撹拌時間が長くなり生産性を悪化させることを鑑み、0.20g/cm以上であることが好ましく、0.25g/cm以上であることがより好ましく、0.30g/cm以上であることがさらに好ましい。
起泡させた生地は、型に入れて焼成をする。焼き型のサイズは特に限定されない。焼き型として、例えば、紙製のマフィンカップや、スチールやアルミ素材の金属製焼き型等が挙げられる。また、金属製焼き型の底と側面とに紙を敷いて焼成することが好ましい。
生地の焼成には、バッチ式の固定窯、連続式のトンネルオーブン、リール式オーブン等を使用することができる。 生地の焼成温度は、160℃以上190℃以下であることが好ましく、170℃以上180℃以下であることがより好ましい。また、焼成時間は、使用する焼き型のサイズや使用するオーブン等により適宜調整すればよい。
(パン類の製造方法)
本実施形態におけるパン類の製造方法としては、例えば、公知の製パン法も好適に実施することができる。例えば、速成法、ストレート法、中種法、液種法、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法等の製パン法を適宜選択して製造することが出来る。
ストレート製法では、オールインミックス法と2段ミキシング法とがあり、オールインミックス法では、原材料全部を投入して混合する製法である。一方、2段ミキシング法では、小麦粉、イースト、乳化剤、及び水を混合し7割程度混合したあとに、油脂類を投入し再び混合して生地を仕上げる製法である。
中種製法では、原材料の一部(小麦粉、イースト、水、必要に応じてイーストフード、卵、砂糖)で種を作り、これを発酵させる。発酵終了後、残りの原材料を加え、生地を作る製法である。
液種法では、イースト、砂糖、食塩、イーストフード、モルトの全部又は一部で液種を作り、一定時間後、残りの原料と共に生地を仕込む製法である。
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。但し、実施例1、4〜14、16、17は参考例である。
[各種試験項目の測定方法]
1.セルロース製剤の平均粒径
後述する実施例において、使用したセルロース製剤の平均粒径は、以下のようにして測定した。
まず、セルロース製剤とイオン交換水とを、固形分濃度が1質量%、総量が300gとなるように量りこみ、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製 エクセルオートホモジナイザーED−7型)を用いて、15000rpmで5分間攪拌して分散液を調製した。次いで、調製した分散液の体積頻度粒度分布を、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分間、屈折率1.20)により測定し、当該体積頻度粒度分布における積算50%粒子径の値を、セルロース製剤の平均粒径とした。
2.焼成前のスポンジケーキ生地の密度
焼成前のスポンジケーキ生地を100mLの円柱状の金属カップに詰めて、上部を金属板ですり切る。
スポンジケーキ生地を充填後の金属カップの質量から金属カップ自体の質量を差し引き、100mLあたりの生地の重量[g]を求め、前記重量を100mLで割ることで求めた。
3.スポンジケーキの高さ収縮率測定
以下の方法で、スポンジケーキの高さ収縮率を測定した。
(1)焼成0.5時間後の、網バット上に載せたスポンジケーキについて、中央付近の最も高さの高い点をスポンジケーキ高さとし、デジタルハイトゲージで測定した。
(2)さらに、4時間室温で静置(焼成4.5時間後)した後、同様に同一箇所の高さをデジタルハイトゲージで測定した。
(3) スポンジケーキは1つの生地から同時に4つ焼成し、下記[5]で表される式を用いて算出された高さ収縮率の4つの平均値を、高さ収縮率とした。
高さ収縮率[%]
=100−(焼成4.5時間後の高さ/焼成0.5時間後の高さ)×100 [5]
なお、後述の実施例15のみ8号型に一つの生地を入れて、1つを焼成し、焼成後、中央付近の最も高さの高い点1点を測定し、高さ収縮率を求めた。
4.小麦膨化食品の密度、押込荷重、押込距離
焼成4.5時間後の小麦膨化食品を、2cm角の立法体に切り出し、質量を測定し、前記質量を該体積である8cmで割ることで密度を求めた。
次いで、押込荷重及び押込距離は、以下の方法で測定した。
2cm角の立法体切り出された小麦膨化食品について、テクスチャーアナライザーを用いた押し込み試験により測定した。
テクスチャーアナライザーとしては、テクスチャーアナライザー(TA.XT plus型)(英弘精機株式会社製)を用いて、測定治具:HDP/BSG(ギロチン型)、温度:25℃、Mode:Measure Force in compression、Option:Returen to start、Pre−test speed:5mm/s、Post−test speed:1mm/sとし、Triggar force:5g、Distance:30mmとして測定した。
また、上記の測定方法で押込荷重及び押込距離を測定する際、上記のギロチン型の測定治具で小麦膨化食品を押し込んでいき、最終的に破断される点を押込最大荷重とした。
5.スポンジケーキの食感評価
26歳から、63歳の男女10名のパネルにより、上記製法で作製し、4.5時間経過後のスポンジケーキを実際に食してもらい、食感について官能評価を実施した。
本実施例では、「口溶け」、「ふんわり感」、「風味」の各項目について、以下の評価基準で食感を評価した。なお、10人のパネラーのうち、最も多かった回答を、評価結果とした。
◎:スポンジケーキとして、非常に良く感じられる。
○:スポンジケーキとして、適度に感じられる。
△:スポンジケーキとして、やや物足りないが、実用上問題のない程度。
×:スポンジケーキとして、物足りない。
6.食パンの食感評価
26歳から、63歳の男女10名のパネルにより、上記製法で作製し、2時間経過後の食パンを実際に食してもらい、食感について官能評価を実施した。
本実施例では、「口溶け」、「ふんわり感」、「しっとり感」、「風味」の各項目について、以下の評価基準で食感を評価した。なお、10人のパネラーのうち、最も多かった回答を、評価結果とした。
◎:食パンとして、非常に良く感じられる。
○:食パンとして、適度に感じられる。
△:食パンとして、やや物足りないが、実用上問題のない程度。
×:食パンとして、物足りない。
[製造例1]セルロースAの製造
市販SPパルプを裁断後、4N塩酸中で40℃、48時間,低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径30cm)で撹拌(撹拌速度5rpm)しながら加水分解した(重合度200)。加水分解後、水洗・濾過・中和を行い、90Lのポリバケツに入れ、スリーワンモーター(HEIDEN製、タイプ1200G、8M/M、翼径5cm)で撹拌(撹拌速度50rpm)しながら、濃度18%のセルロース粒子の分散体とした。これを噴霧乾燥(液供給速度6L/hr、入口温度180〜220℃、出口温度50〜70℃)してセルロースAを得た。
セルロースAの平均重合度は210、平均粒径は44μmであった。
[実施例1]
1.スポンジケーキの製造方法
全卵を260g、上白糖を160.8g、起泡性乳化剤を13.4g、水を64.3g、薄力粉を134.0g、ベーキングパウダーを2.7g、セルロースAを5.9g仕込み、下記に示す製造方法にて、共立法にて4号型のスポンジケーキを同時に4つずつ作製した。
(1)全卵を撹拌した。(ケンミックスKM−800:3速=360rpm、30秒)
(2)次いで、上白糖、起泡性乳化剤(リョートーエステルSP−A(ショ糖脂肪酸エステル)、三菱化学フーズ(株)製)、及び水を加えて撹拌した。(ケンミックスKM−800:3速=360rpm、30秒)
(3)次いで、薄力粉、ベーキングパウダー、及びセルロースAを加えて撹拌した。(ケンミックスKM−800:3速=360rpm)
生地の攪拌時間は10分と設定した。ただし、撹拌途中に生地密度が0.37g/cmに達した場合は、その時点で攪拌を停止し、次の工程へ進んだ。
(4)次いで、4号型(12cm)の金属製焼き型の底と側面に型紙を敷いて、(3)で得た生地を104g流し込んだ。
(5)オーブンで焼成した。(160℃、40分)
(6)焼成後0.5時間放冷後、型からスポンジケーキ取り出し、網バット上に載せた。
2.評価
焼成後のスポンジケーキ中の固形分換算での卵タンパク質の配合率、固形分換算でのセルロースの配合率、スポンジケーキ密度、押込荷重が10Nを超える押込距離、押込最大荷重、高さ収縮率、及び官能評価結果を下記表1に示す。
[実施例2]
全卵の仕込み量を193gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表1に示した。
[実施例3]
全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表1に示した。
[実施例4]
全卵の仕込み量を128gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表1に示した。
[実施例5]
全卵の仕込み量を107gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表1に示した。
[実施例6]
全卵の仕込み量を78gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表1に示した。
[実施例7]
全卵の仕込み量を160g、セルロースAの仕込み量を0.4gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[実施例8]
全卵の仕込み量を160g、セルロースAの仕込み量を1.2gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[実施例9]
全卵の仕込み量を160g、セルロースAの仕込み量を9.5gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[実施例10]
全卵の仕込み量を160g、セルロースAの仕込み量を19.0gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[製造例2]セルロースBの製造
セルロースとして、セルロースB(粉末セルロース、平均重合度1500)を下記の方法で調製した。
市販DPパルプを裁断後、ナイフミル(ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製、商品名グラインドミックスGM300)を使用し、500g仕込み、3000rpmで3分間処理した。その後、気流式粉砕機((株)セイシン企業製、商品名シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用して粉砕圧力4.0MPa、粉体供給速度10kg/hで粉砕し、セルロースBを得た。
セルロースBの平均重合度は1000、平均粒子径は36μmであった。
[実施例11]
セルロースとして、セルロースBを使用し、全卵の仕込み量を160gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[製造例3]セルロースCの製造
製造例1で得た結晶セルロースAを、さらに、気流式粉砕機((株)セイシン企業製、商品名シングルトラックジェットミルSTJ−200型)を使用して粉砕圧力4.0MPa、粉体供給速度10kg/hで粉砕し、セルロースCを得た。
セルロースCの平均重合度は210、平均粒径は21μmであった。
[実施例12]
セルロースとして、セルロースCを使用し、全卵の仕込み量を160gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[製造例4]セルロースDの製造
市販SPパルプを裁断後、4N塩酸中で40℃、48時間,低速型攪拌機(池袋琺瑯工業(株)製、30LGL反応器、翼径30cm)で撹拌(撹拌速度5rpm)しながら加水分解した(重合度200)。加水分解後、水洗・濾過・中和を行い、90Lのポリバケツに入れ、スリーワンモーター(HEIDEN製、タイプ1200G、8M/M、翼径5cm)で撹拌(撹拌速度50rpm)しながら濃度19%のセルロース粒子の分散体とした。これを噴霧乾燥(液供給速度6L/hr、入口温度180〜220℃、出口温度50〜70℃)してセルロースDを得た。
セルロースDの平均重合度は215、平均粒径は90μmであった。
[実施例13]
セルロースとして、セルロースDを使用し、全卵の仕込み量を160gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[製造例5]セルロースEの製造
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い固形分が50質量%のウェットケーキ状の結晶セルロースを作製した。ウェットケーク状のセルロースと市販のキサンタンガムと市販のショ糖を用意し、プラネタリーミキサー(品川工業所製、「5DM−03−R」、撹拌羽はフック型を使用)の容器に、セルロース/キサンタンガム/ショ糖の質量比が80/10/10となるように投入し、固形分濃度が45質量%となるよう加水して、216rpmで30分間混練し、セルロース複合体の中間体を得た。混練後の中間体をさらに糸状に押し出した後、80℃のオーブン中で一夜乾燥し、粉砕して、結晶セルロース複合体であるセルロースEを得た。
セルロースEの平均重合度は160、平均粒径は8μmであった。
[実施例14]
セルロースとして、セルロースEを使用し、全卵の仕込み量を160gとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表2に示した。
[比較例1]
セルロースを0g(配合なし)とし、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表3に示した。
[比較例2]
セルロースAの仕込み量を0.3gとし、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表3に示した。
[比較例3]
セルロースAの仕込み量を22.0gとし、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表3に示した。
[比較例4]
仕込み量を実施例3と同じとし、生地の攪拌を1.5分で停止し、生地の密度を0.47g/cmとした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表3に示した。
[比較例5]
セルロースの替わりに、ステアリン酸モノグリセリド2.65gとジグリセリンモノパルミテート2.65gとを仕込み、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表4に示した。
[比較例6]
セルロースの替わりに、全脂大豆粉(アルファプラスHS600、日清オイリオ製)を5.3g仕込んだ以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表4に示した。
[比較例7]
セルロースの替わりに、全脂大豆粉(アルファプラスHS600、日清オイリオ製)を5.3g仕込み、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表4に示した。
[比較例8]
セルロースの替わりに、サイリウムシードガム3.8gとタマリンドシードガム1.5gと仕込み、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表4に示した。
[比較例9]
全脂大豆粉(アルファプラスHS600、日清オイリオ製)を5.9g追加で仕込み、全卵の仕込み量を160gにした以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製し、評価を行った。その結果を下記表4に示した。
[実施例15]
実施例3と同じ配合量でスポンジケーキの生地を作製後、8号の型の一つに生地を440g流し込んだ以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製した。その結果を下記表5に示した。
[比較例10]
比較例2と同じ配合量でスポンジケーキの生地を作製後、8号の型の一つに生地を440g流し込んだ以外は、実施例1と同様の方法を用いてスポンジケーキを作製した。その結果を下記表5に示した。ただし、この場合、窯落ちが発生し、スポンジケーキの中央部分は膨らまずに凹んでしまったので、中央部の最も凹んだ部分の高さを測定した。
Figure 0006877135
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Figure 0006877135
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[考察]
卵タンパク質の配合量の影響を、実施例1〜6の結果から検討した。実施例1の場合は卵タンパク質の量が多めであり、気泡膜の強度がやや強く、そのためソフト感が若干実施例2〜5よりも劣ったが、実用的には許容されるものが得られた。
卵タンパク質の配合量が固形分換算で3.0〜6,9質量%にある実施例2〜5の場合、スポンジケーキの密度は0.20g/cm以下と小さくなり、口どけ感、ソフト感が良好であった。実施例2〜5では、卵タンパク質の量が適度で、かつセルロースの効果で適度な強度を示すためと推察された。
実施例6では卵タンパク質の配合量が低めのため、気泡膜を形成しにくくなり、スポンジケーキの密度はやや高めとなるが、セルロースを配合することで、実用的には許容されるレベルのものが得られた。
また、セルロースを配合しない場合の影響を、比較例1の結果から検討した。その結果、比較例1は、同じ卵タンパク質配合量の実施例3と比較して、スポンジケーキに窯落ちが見られ、出来上がりの密度が大きくなった。また、スポンジケーキの押込荷重が10Nを超える時の押込距離が13mm未満になり、かつスポンジケーキの押込最大荷重が50Nを超えた。その結果、スポンジケーキの口どけ感やソフト感が悪くなった。卵タンパク質配合量が少ない場合には、セルロースを配合しないと、膨化時に気泡膜が耐え切れずに壊れ、窯落ちを起こすためと考えられた。さらに、4時間後の高さ収縮率が実施例3と比べて大きく、経時的にも収縮しやすかった。
また、セルロースの配合量による影響を、実施例3、実施例7〜10、及び比較例2、3の結果から検討した。セルロースの配合量が0.1%に満たない比較例2の場合、窯落ちを充分に抑制することができず、セルロース無配合の場合と同様に、押込荷重が10Nを超える時の押込距離が13mm未満になり、かつスポンジケーキの押込最大荷重が50Nを超えた。その結果口どけ感やソフト感が悪くなった。
また、実施例3、実施例5、実施例7、実施例8の結果から、セルロースの配合量を多くするにしたがって、窯落ち抑制効果が大きくなり、スポンジケーキの密度を低くすることができ、口溶けやソフト感が向上することがわかった。
さらに、実施例9及び10のように、セルロースの配合量をさらに増やしていくと、スポンジケーキの密度は再度増加する傾向となり、比較例3のように、セルロースの配合量が5%を超えると、密度は0.25g/cmを超えて、さらに押込最大荷重が50Nを越え、口溶け、ソフト感が悪化した。セルロースの配合量が多くなりすぎると、気泡膜中のセルロースが増えすぎ、セルロース同士が焼成時に結着し、膨化を逆に抑制するためと推察された。
また、生地密度の影響を、実施例3及び比較例4の結果から検討した。卵タンパク質配合量、セルロースの配合量が適正な範囲内であっても、比較例4のように、生地の攪拌が十分ではなく、生地の密度が0.45g/cm超の状態で焼成すると、焼き上がり後のスポンジケーキの密度も大きくなり、スポンジケーキの押込荷重が10Nを超える時の押込距離が13mm未満に小さくなり、且つスポンジケーキの押込最大荷重が50Nを超えて大きくなった。その結果、口どけ感やソフト感が悪くなったと推察された。
また、セルロースの種類の影響を、実施例3、及び実施例11〜14の結果から検討した。セルロースBを用いた場合、セルロースAとほぼ同等な効果が得られたが、若干最大押込荷重が増加しソフト感が低下した。セルロースCを用いた場合も、セルロースAとほぼ同等な効果が見られたが、セルロースの粒子径がセルロースAより小さいセルロースCの場合は、ややスポンジケーキの密度が高くなり、10Nを超える時の押込距離が小さく、また押込最大荷重も上がる傾向があった。
また、セルロースの平均粒径の影響については、平均粒径が91μmと大きめのセルロースDを用いた場合は、セルロースAを用いた実施例3と同様の卵配合量、セルロース配合量ながら、ややスポンジケーキの密度が高くなり、窯落ち防止効果はやや小さくなっていた。セルロースの粒子径が大きくなり、気泡膜中のセルロースの点在する比率が低くなり、セルロースの効果が出にくくなったと推測された。また、口溶けは良かったが、口溶け後に、ややセルロースの粒のザラツキが感じられた。
平均粒径が8μmと小さいセルロースEを用いた場合は、セルロースAを用いた実施例3と同様の卵配合量、セルロース配合量ながら、スポンジケーキの密度は大きくなり、実用的には問題のない程度であったが、口溶けや、ソフト感、しっとり感が低下する傾向が見られた。
また、比較例5〜9では、セルロースに替えて、スポンジケーキの窯落ち防止に効果があるとされる物質を添加し、セルロースとの効果の差を検討した。
比較例5では、セルロースに替えて、ジグリセリン脂肪酸エステルを使用した。窯落ちはある程度抑制されたものの、同じ卵タンパク質配合量で、同じ量のセルロースを配合した実施例3と比較して、スポンジケーキの密度は高く、押込最大荷重も大きめであり、ソフト感もやや劣った。また、ジグリセリン脂肪酸エステル特有の油っぽさが感じられ、風味が実施例3と比較して明らかに悪くなっていた。
比較例6及び7では、セルロースに替えて、全脂大豆粉を使用した。比較例6及び比較例7における卵タンパク質の配合量は、それぞれ実施例1、実施例3と同じである。卵タンパク質の配合量が多い比較例7の場合、全脂大豆粉を使用すると、スポンジケーキの密度は小さくすることができ、口溶けやソフト感もあった。しかしながら、大豆特有の風味が感じられ、風味が実施例3と比較して明らかに悪くなっていた。
また、卵タンパク質の配合量が少ない比較例6の場合は、実施例1と比較して、スポンジケーキの密度は高く、押込荷重が10Nを超える時の押込距離は小さく、また押込最大荷重も大きめであり、ソフト感もやや劣った。また、大豆特有の風味が感じられ、風味が実施例1と比較して明らかに悪くなっていた。
よって、セルロースに替えて、全脂大豆粉を使用する場合は、セルロース使用時に比べて密度が高く、ソフト感に劣るスポンジケーキしか得られない上に、風味を悪化させてしまうことが確かめられた。
比較例8では、セルロースに替えて、サイリウムシードガムとタマリンドシードガムの混合物を使用した。窯落ちはある程度抑制され、同じ卵タンパク質配合量で、同じ量のセルロースを配合した実施例3に近いスポンジケーキの密度になったものの、押込強度が10Nを超える時の押込距離が小さくなり、押込最大荷重も大きめとなった。その結果、どちらかというとサクサクとした食感となり、口溶けやソフト感がやや劣った。また、口溶け後、ガム特有の風味と粘性が感じられ、風味が実施例3と比較して明らかに悪くなっていた。
比較例9では、セルロース及び大豆粉末を併用した。セルロース及び大豆粉末を併用した場合、窯落ちはある程度抑制され、同じ卵タンパク質配合量で、同じ量のセルロースを配合した実施例3に近いスポンジケーキの密度になったものの、押込強度が10Nを超える時の押込距離が小さくなり、押込最大荷重も大きめとなった。その結果、どちらかというとサクサクとした食感となり、口溶けやソフト感がやや劣った。また、大豆特有の風味が感じられ、風味が実施例3と比較して明らかに悪くなっていた。
実施例15、及び比較例10は、それぞれ実施例3、及び比較例1と同じ処方で、4号型(直径12cm)から8号型(直径24cm)へ型を大きくしたことによる影響を比較した。
セルロースを配合した実施例15では、実施例3と若干スポンジケーキの密度が大きくなった程度で、それ以外では、ほとんど差はなく、壁面部の支えが少なくなった場合にも、窯落ちが抑制されていた。
しかしながら、セルロースを配合していない比較例10の場合は、明らかな窯落ちが発生した。そのため、押込荷重が10Nを超える押込距離はさらに短く、最大押込荷重はさらに大きくなった。
よって、壁面による支えの少ない、直径の大きいスポンジケーキを作製する場合、セルロースを配合しないと、さらに窯落ちが起こりやすくなるが、セルロースを配合することで、スポンジ内部でスポンジの強度を維持できるため、直径を大きくしても窯落ちを抑制できることが示された。
[実施例16]
1.食パンの製造方法
中種の強力粉を210g、イーストフードを0.15g、イーストを6g、水を40gとし、本捏の強力粉を60g、上白糖を18g、食塩を6g、脱脂粉乳を6g、ショートニングを18g、セルロースとしてセルロースAを4g、水を96gとして、下記に示す製造方(中種法)にて、食パンを作製した。
(1)強力粉、イーストフード、イースト、及び水(5℃)をミキサー(Shinagawa Type 5DM)を用いて低速(141rpm)で1分30秒間混合し中種生地を作製した。
(2)次いで、この中種生地を生地ボックスに入れ、28℃、相対湿度85%の恒温室で4時間、中種一次発酵を行った。
(3)次いで、中種発酵の終了した生地を再び、ミキサーに投入し、さらに強力粉、セルロース(配合時のみ)、食塩、上白糖、脱脂粉乳、ショートニング、及び水(5℃)を添加し、低速(141rpm)で1分30秒間、高速(285rpm)で2分30秒間ミキシングしパン生地を得た。
(4)次いで、28℃で30分静置した後、成型モルダー(ナショナル Sheeter−moulder)を用いて成型(3/8インチ間隙で1回通し、その後三つ折後、2回通した)し、型(上縁:20.5×9.8cm、下縁:18.9×8.5cm、深さ:8cm、体積:1445cm)に詰めた。
(5)次いで、ホイロを用いて温度38℃、湿度90%の状態で型上縁2cm上に達するまで二次発酵させた。
(6)次いで、二次発酵後、オーブンの焼成温度を220℃、焼成時間を23分としてワンローフ型の食パンを製造し、食パンを得た。
得られた食パンは、腰折れを起こさずに、まっすぐな形状で、きれいに型から取り出すことができた。
2.評価
得られた食パンの固形分換算でのセルロースの配合率、密度、及び官能評価結果を下記表6に示す。
[実施例17]
1.食パンの製造方法
中種の強力粉を210g、イーストフードを0.15g、イーストを6g、水を40gとし、本捏の強力粉を60g、上白糖を18g、食塩を6g、脱脂粉乳を6g、ショートニングを18g、セルロースとしてセルロースAを4g、部分アルファー化デンプン(PCS FC−30、旭化成販売)を6g、水を96gとした以外は、実施例16と同様の方法を用いて、食パンを作製した。
得られた食パンは、腰折れを起こさずに、まっすぐな形状で、きれいに型から取り出すことができた。
2.評価
得られた食パンの固形分換算でのセルロースの配合率、密度、及び官能評価結果を下記表6に示す。
[比較例11]
セルロースを0g(セルロース添加なし)とした以外は、実施例16と同様の方法を用いて、食パンを作製した。
得られた食パンは、型の両脇の部分が凹み、腰折れを起こしていた。取り出した食パンの評価を行った結果を下記表6に示す。
Figure 0006877135
実施例16、17及び比較例11の配合は、水の添加量を多くして、より食パンの密度を小さくし、ソフトな食感と、コストダウンを図った。当該配合では、従来、生地中の水が多いため、その分気泡膜の割合が減るため、食パンの膨化を維持して腰折れを防ぐのが難しかった。
しかしながら、セルロースAを配合した実施例16では多加水にしても、腰折れを起こさずに、密度が小さく、ソフトな食感の食パンを得ることができた。
また、セルロースAに加えて、部分アルファー化デンプンPCSを配合した実施例17の場合は、PCSが適度に吸水することで、生地のベタつきを下げる効果を発揮し、さらに密度が低く、ソフトな食感の食パンを得ることができた。
一方、セルロースを添加しない比較例11では、多加水処方のため、パンの膨化時に気泡膜の強度が不足して、膨化時に気泡がつぶれて腰折れを起こし、密度が大きくなり、食感も悪くなった。
以上のことから、セルロースAを添加した実施例16及び17ではパンの腰折れが抑制された。
また、食パンの密度は、セルロースAに加えて、部分アルファー化デンプンPCSを配合した実施例17よりも、セルロースAのみを配合した実施例16の方が高く、また、実施例16及び17のいずれの配合で作製された食パンにおいても、食感は良好であった。
本発明は、小麦膨化食品に好適に利用することができる。特に、スポンジケーキ類又はパン類に好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. セルロース製剤及び卵タンパク質を含む、小麦膨化食品であって、
    前記セルロース製剤が晶セルロース粉末であり、
    前記セルロース製剤の平均粒径が15μm以上であり、
    前記セルロース製剤の配合量が、固形分換算で1.47質量%以上3質量%以下であり、
    前記卵タンパク質の配合量が、固形分換算で3.5質量%以上質量%以下であり、
    密度が0.20g/cm 以下であり、
    テクスチャーアナライザー(TA.XT plus型)を用い、測定治具:HDP/BSG(ギロチン型)、温度:25℃、Mode:Measure Force in compression、Option:Returen to start、Pre−test speed:5mm/s、Post−test speed:1mm/sとし、Triggar force:5g、Distance:30mmとして測定した、押込荷重が10Nを超える押込距離が15mm以上、かつ押込最大荷重が50N以下であり、
    前記小麦膨化食品がスポンジケーキ類である、小麦膨化食品。
  2. 前記セルロース製剤の平均粒径が30μm以上90μm未満である、請求項1に記載の小麦膨化食品。
  3. 油脂類の配合量が、固形分換算で10質量%未満である、請求項1又は2に記載の小麦膨化食品。
  4. 高さが3cm以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の小麦膨化食品。
JP2016248219A 2016-12-21 2016-12-21 小麦膨化食品 Active JP6877135B2 (ja)

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